🎼本編
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「たっだいまー♪」
「遅かったじゃないのよベルちゃん!………あら!?」
『こ、こんにちは!ルッスーリアさん、お久しぶりですっ。』
「んまぁ柚子ちゃんじゃない!可愛いわぁ~♪ね?レヴィ。」
「う、うむ……」
パーディーが行われるキャバッローネ第一ホールに来たハズなんですが……
何故か最初に出会ったのはルッスーリアさんとレヴィさん。
「ししっ♪やっぱ王子センス抜群だね。そーだ、沢田綱吉どこー?」
「彼らだったら、4階の控え室にいるわよ♪」
「うっし!マーモン、スクアーロ、行くぜ。」
「うん。」
「う"お"ぉい!待てぇ!!」
スクアーロさん、ごめんなさい…
あたしのせいで大量の荷物持って4階分上がるはめになるなんて……ホントごめんなさいっ!
とは言え、あたし自身、ベルさんに引っ張られながら4階分上がってかなり疲れた。
息を整える暇も与えられないまま、一番奥の部屋の前に立たされて。
「開けるよ、柚子ちゃん。」
『あ、あのちょっと待っ……』
バンッ、
「ん?」
『あ……///』
ちょうどトイレに行こうとしていたのか何だか知らないけど、
ドア開けた目の前にツナさんが立ってた。
目をパチクリしながら上から下まで見るツナさん。
あたしの方はと言うと、かなり短いスカートを履いてる事に心臓バクバクでして。
『(ど、どうしよ……変とかケバいとか言われたら…)』
「お帰り、柚子。」
『…………へ?』
きょとん、とツナさんを見上げるあたし。
するとベルさんは「じゃ、王子はコレでー♪」と去ってしまう。
マーモンさんはその肩に乗って、スクアーロさんは荷物をどさっと放置して引き返して行った。
「うわ、こんなに買ったんだ。」
『違いますっ!あ、違わないけど……でもあたし、買いたいとは言ってません!ベルさんが…どんどん買ってしまいまして……』
「楽しかった?」
『あ、えと……はいっ!』
何か、ツナさんがあたしのお父さんみたいに尋ねる。
楽しかったのは確かだから、思い切り頷いた。
「クフフ……それにしてもいいですね…そのスカート……」
『ひええっ!!』
「おや、恥ずかしがらなくていいんですよ?僕は大歓迎ですから♪」
『あたしが嫌なんですっ!!///』
骸さんが中腰姿勢で迫って来る。
必死にスカートを抑えながら後退りしていると、ツナさんが静かに言った。
「………雲雀さん、お願いします。」
ゴッ、
「クハッ…!」
あ、コレいつものパターンだ……。
雲雀さんが骸さんをトンファーで殴って気絶させ、それを獄寺さんが引きずっていく。
でもってあたしは……
「大丈夫だった?柚子。」
『だ、大丈夫ですから!!』
ツナさんの腕の中に連行されるんだよ、ね……。
「まったく、柚子だって悪いんだからな?そんな誘いオーラ放出する服着てるし。」
『こ、これはベルさんが……!』
ピシッ…
あ、あれ?何だろう……
急に空気が冷たくなっt……
「ベルフェゴールが、何?」
『(ぎゃああああ!!!腹黒スマイルMAXモードーー!!!!)』
「うるさいよ、質問に答えて。」
『あ、えと、ベルさんがあたしの着てた服を返してくれなくて……コレ着て街歩けって言われて……!』
「ずっと、その格好で?」
『あ、はい…』
怒られるのかな…
怒られる道一直線なのかな…
「まーまー!アイツが言ってた通り、柚子は可愛くなったんだからいーじゃねーか、なっ?」
「………そうだけど、」
山本さぁぁぁん!!!
貴方はまさに救世主です!神様!大好き!!
「へぇ…俺は?」
『(ぎくっ…)』
「聞こえてたよ?脳内告白なんてズルいなぁ……俺は?柚子。」
『つ、ツナ様は………えと……』
ど、どうしよう……
ピンチじゃない!?
これって何気なくピンチじゃない!?
いつもだったら“嫌いじゃないです”で逃げられるけどさ、
今は無理じゃない!?
だって、嫌いじゃないって言ったら……
--「山本は“好き”なのに、俺は“嫌いじゃない”って……どーゆー事?俺の方が下なの?」
みたいな詰問をされる可能性150%!!!
「答えろよ、柚子。」
『えーっとですねぇ……』
“好き”って言うしかない、の…?
でもそしたら……何か違う意味に取られちゃうんじゃ……
「おっ!いたいた。ツナ!柚子!」
『へ…?』
「あ。」
絶体絶命の大ピンチに、更なる救世主が現れた。
『ディーノさんっ…!』
「よっ、元気してたか?つか、おめーら皆ココにいたんだな。」
「あ!ディーノ兄だ!!」
「あ~そ~べ~っ!」
「おわっ…!!」
フゥ太君やランボ君も部屋の奥から飛び出して来て、辺りが騒がしくなる。
こんな中じゃさすがのツナさんも、あんな事訊かないよね?
「柚子、」
『は、はい…』
「後でもっかい訊くから、覚えとけよ?」
破滅への道が開かれてる!!!
どうしよう!後でっていつ…!?
あたふたしまくるあたしに、ディーノさんが言う。
「そーだ柚子、向こうの部屋に今晩の衣装が届いてたぜ。」
『えっ、それって……』
ツナさんの方を向くと、得意気な笑みが返された。
あぁ…特注品ってヤツだ。
あたしの財政を削る根源だ。
「それとツナ、バジルが音合わせしたいっつってんだが…時間あるか?」
「はい、俺達はいつでもいいですよ。」
「10代目!骸のヤツは起こしますか?」
「あー、うん。一応起こしといて。そーだ、了平さん。」
「ぬ、どうした?」
イーピンちゃんと格闘技の話で盛り上がっていた了平さんが、ツナさんに呼ばれてこっちに来る。
「ジャージ持って来てましたよね?柚子に貸してやってくれませんか?」
「おお!構わんぞ!」
『ツナさん……』
もしかして、骸さんがまたこのミニスカに反応しないように…?
やっぱり、優しい人……なんだなぁ…。
---
------
-----------
トイレにて、あたしが了平さんに借りたジャージに着替えている間に、
ヴァリアーの皆さんも4階の控え室に来たみたいだった。
どうやら、一緒に最終音合わせをやるらしい。
『お待たせしましたー…』
「あれ?メイドの柚子ちゃん、着替えちゃったのー?」
「折角のミニだったのにぃ~、惜しいわね…」
『あ、すみません……これも骸さん予防なんです……』
「……なら仕方ねぇなぁ…」
それでも口を尖らせるベルさんもう一度頭を下げた。
「うぅっ…僕の……僕の柚子がぁ…」
『な、何で泣いてるんですか…骸さん。』
「あんなに綺麗な生足を見せてくれていたのに……」
「もう1回気絶させておこうか、沢田。」
「それが良いかも知れませんね。」
ホントにこの人は……何で殴られるの承知で変態発言するんだろう…
ちょっとは防衛本能とか無いのかなー…?
「それは柚子も同じだろ。」
『へっ…?』
何か心の声に反応されたよ、とか思ってたら……
後ろからツナさんに抱きしめられていた。
『つ、ツナさんっ…!??』
吃驚し過ぎて固まるあたし。
ツナさんは、あたしが抵抗出来ないのを良い事に、壁の方へ追いつめる。
「俺が普段どんだけ苦労してるか、分かってる?」
『えっと…お、お仕事大変なんですよね?毎日お疲れなのはあたしも分かってるつもりでs……』
「違う。」
違うよ柚子、と溜め息混じりに言いながら、ツナさんはあたしの肩に頭を乗せた。
え、何コレ……一体どーすれば…
てかどーして皆さん見て見ぬフリ…!?
どうにかしてドアの外まで逃げられないか、
そんな事を考えながらドアの方を向いていた。
その時。
ギィ…
『(え?)』
入って来たのは、ザンザスさんだった。
当然ドアをガン見していたあたしと目が合うワケで。
「…………チッ、」
『(舌打ちーーーっ!!!!)』
イタリアで久々に会ったって言うのに舌打ちだよ!!
信じられない!!
まぁ確かにこの図は舌打ちされるに値しますけれども!
あたしだって早く脱したいけれども!!
「柚子、うるさい。」
『だ、だってツナさん、意味が分かりませんもん…』
「“婚約者”に寄り添って、何が悪い?」
『や、やめて下さいっ……あたしは…!』
否定しようとして、気がついた。
ココには…あたしがツナさんの婚約者だと信じ切ってる人達が大量にいらっしゃる!
そっか…だから皆見ないフリしてるんだ……!
このイチャつきが自然な事だと思われてるんだぁぁ!!
「やっと分かったか、否定したらどうなるか。」
『うぅ……ツナさんの鬼ぃ~っ。』
「これは予行練習。パーティー会場では冗談抜きで柚子は婚約者扱いされるから、今のうちに慣れて欲しいと思って。」
『……はい…』
大人しく返事だけしたら、ツナさんは満足そうに離れた。
あたしはホッと一息つく。
だって、さっきまで近過ぎて心臓敗れちゃうかと思ったもん。
「さて、そろそろ来るかな。」
『へ?どなたがですか?』
「……もう忘れたのかよ、アホ柚子。」
けなされたから少しムッとして、記憶の糸を手繰り寄せる。
えーっと、ヴァリアーさん以外で、ランボ君とフゥ太君とイーピンちゃん以外で、ディーノさんは違うから……
『あ…!バジルさん!!』
「正解、いい子いい子。」
『こっ、子供扱いはやめて下さいっ!』
コンコン、
「失礼します!」
「おっ!来たなっ。」
バジルさんってどんな人だろう?
結構ワクワクし始めるあたし。
山本さんが内側からドアを開けて、招き入れたのは……
「お久しぶりです!皆様!!」
『(あ、あれ…?)』
何故か袴姿の外人さんだった。
あたし達と同い年くらい、かな…?
「おおバジル!極限に決まってるな!!」
「ありがとうございます!了平殿!!」
『(“殿”!?)』
「つかてめぇ…何で和装なんだよ……」
「親方様に言われたのですが……何処か変でしょうか?獄寺殿。」
『(“親方”!?)』
顔立ちと服装や口調にギャップがあり過ぎて困惑するあたしに、ツナさんが横で言った。
「色々ツッコミどころあるけど、スルーしろ。」
『………りょ、了解です。』
と、それまで他の皆さんと話していたバジルさんが、こちらを向いた。
そして何故か顔をパアッと輝かせる。
「沢田殿っ!!」
「やぁ、似合ってるね、バジル君。」
「ありがとうございます!!沢田殿も、いつになくボスらしいです!!」
挨拶を終えて、あたしに目を向ける。
外国の方の袴姿という光景が、未だにあたしを唖然とさせていた。
「あ、あの…こちらはまさか……」
「うん、そうだよ。」
「やはりそうでしたか!!お会い出来て光栄です、バジルと申します。どうぞ宜しくお願いします!」
深々と頭を下げられる。
これは…ちゃんと挨拶返すべきだよね。
『どうも、牧之原柚子と言います。こちらこそ、宜しくお願いします。』
「柚子殿とおっしゃるのですね!素敵なお名前です。」
『あ、ありがとうございますっ。』
うわぁ、バジルさんって……笑顔可愛いなぁ…
「沢田殿、今回はお誘い下さりありがとうございます!」
「いいんだよ、皆で弾いた方が楽しいからさ。ね、柚子。」
『はい。』
それはまぁ、そうなんだけど……
「あっ!拙者はハープ担当です!」
『はぁ……』
って、ちょっと待ったぁ!!
今、“拙者”って言った!?言ったよね!?
そのルックスで一人称拙者って……
えええぇぇええぇ!!?
「にしても、まさかこんなお綺麗な方が来るとは思いませんでしたよ…!」
「当たり前、だって俺のだし。」
いやいやそんなバジルさん、あたし全然綺麗じゃないですよ…
お願いだからキラキラした目で見つめないで下さい。
ってゆーかツナさん!!
『何言ってるんですかぁ!やめて下さいっ!!///』
「え、だって柚子は俺のだろ?」
『(あ"……)』
そうだった…!
否定したら後で虐められるのあたしなんだ…!!
『ひ、人前でそんな恥ずかしい事っ……///』
あーん!
これがあたしの精一杯の演技ですっ!!
ぶっちゃけ100%演技ってワケでもない。
恥ずかしいってのは本当だし。
「こ、これは失礼しました!柚子殿が照れ屋だとは知らず…」
「違うって、本当は嬉しいんだろ?柚子。」
うわーん!ツナさんのバカーっ!!
何でそうあたしを虐めるのが得意なんですか!?
人を追いつめて楽しいですか!?
うぅっ…絶対いつか逃れてやるっ…!
「おい、」
「あ。」
「わっ…!」
『へ?』
急に呼びかけられて、3人でそちらを向く。
そこには、不機嫌オーラを放つザンザスさんが立っていた。
「あ、もう音合わせします?」
「失礼!拙者も急いで準備します!!」
袴でハープ弾くのかと思うと、ちょっと複雑な気持ちになる。
まぁ…個人の自由だけどさ……
絶対バジルさんだったらスーツとか燕尾服の方が似合うって。
「沢田綱吉、そいつ貸せ。」
「柚子、ですか?」
『えぇ!?』
「ラストの4小節、弾いて聞かせろ。」
『あ、あたしがですかっ!?他の方でも……』
いいんじゃないかなー、と思ったけど、ザンザスさんに睨まれた。
ダメだ、この赤い瞳には勝てません。
ツナさんの腹黒スマイルと同じくらい強い。
「それならいいですよ。使って下さい。」
「あぁ。」
『ツナさんっ!?』
「俺、バイオリンの準備あるから。」
こんな時は丸投げするんだ。
この意地悪ボスめ!
軽く恨みながらザンザスさんの譜面台のトコまで行く。
『えと、最後の4小節でしたよね?』
「ああ。」
あーもー緊張するなぁ……
ザンザスさんてば眼力半端ないんだもん。
でも、前にも同じような事があったせいか、そこまで緊張せずに指を動かせた。
『……こんな感じです。フィナーレなのでクレッシェンドでお願いします。』
「ああ…」
ザンザスさんはコントラバスの弓を手に取る。
もういいかな、とあたしも自分の席に着こうと方向転換した、その時。
「おい、」
『え?』
ザンザスさんの低い声に呼び止められて、何だかぞくりと嫌な予感。
でもって……
「………直ってねぇ…」
その一言だけで、最初は何の事だかさっぱりだった。
けど、ハッと思い出す。
---『えと…もし宜しければ………またコントラバス聞かせて下さいねっ!』
---「……てめぇはうるせぇのを直しとけ。」
そうだったー!!!
ザンザスさんは読心術属性で、
だからあたしの心の声は丸聞こえで、
それが五月蝿いから黙れって……
「……だからてめぇ、」
『ご、ごめんなさいっ…!』
ずっと、ずーーーっと聞こえてたんだろうな…
あたしってば、色んな文句を念じてたから…
『イタリア滞在が終わるまでには直しますっ!』
「……はんっ、」
あ、今“どーせ出来ねぇだろ”ってゆー目で見られた…。
うん、あたしも思います。
無理です、直せません。
「おい、おめーら準備出来たか?」
「リボーン真ん中ズルいもんね!!」
「ランボ、静かにして。」
「こっちはいいぜぇ。」
「王子もー。」
「極限問題無いぞ!」
「私もOKよ♪」
「僕の柚子の生足……」
「まだ言ってるの?咬み殺すよ。」
「柚子さん、頑張りましょうね!」
『うんっ、イーピンちゃんも。』
それから、最後の予行練習が始まった。
相変わらず皆さんの音は、とってもとっても綺麗だった。
ムーブメント
あたしの婚約者役ミッションも、第1楽章がスタートした
continue...
「遅かったじゃないのよベルちゃん!………あら!?」
『こ、こんにちは!ルッスーリアさん、お久しぶりですっ。』
「んまぁ柚子ちゃんじゃない!可愛いわぁ~♪ね?レヴィ。」
「う、うむ……」
パーディーが行われるキャバッローネ第一ホールに来たハズなんですが……
何故か最初に出会ったのはルッスーリアさんとレヴィさん。
「ししっ♪やっぱ王子センス抜群だね。そーだ、沢田綱吉どこー?」
「彼らだったら、4階の控え室にいるわよ♪」
「うっし!マーモン、スクアーロ、行くぜ。」
「うん。」
「う"お"ぉい!待てぇ!!」
スクアーロさん、ごめんなさい…
あたしのせいで大量の荷物持って4階分上がるはめになるなんて……ホントごめんなさいっ!
とは言え、あたし自身、ベルさんに引っ張られながら4階分上がってかなり疲れた。
息を整える暇も与えられないまま、一番奥の部屋の前に立たされて。
「開けるよ、柚子ちゃん。」
『あ、あのちょっと待っ……』
バンッ、
「ん?」
『あ……///』
ちょうどトイレに行こうとしていたのか何だか知らないけど、
ドア開けた目の前にツナさんが立ってた。
目をパチクリしながら上から下まで見るツナさん。
あたしの方はと言うと、かなり短いスカートを履いてる事に心臓バクバクでして。
『(ど、どうしよ……変とかケバいとか言われたら…)』
「お帰り、柚子。」
『…………へ?』
きょとん、とツナさんを見上げるあたし。
するとベルさんは「じゃ、王子はコレでー♪」と去ってしまう。
マーモンさんはその肩に乗って、スクアーロさんは荷物をどさっと放置して引き返して行った。
「うわ、こんなに買ったんだ。」
『違いますっ!あ、違わないけど……でもあたし、買いたいとは言ってません!ベルさんが…どんどん買ってしまいまして……』
「楽しかった?」
『あ、えと……はいっ!』
何か、ツナさんがあたしのお父さんみたいに尋ねる。
楽しかったのは確かだから、思い切り頷いた。
「クフフ……それにしてもいいですね…そのスカート……」
『ひええっ!!』
「おや、恥ずかしがらなくていいんですよ?僕は大歓迎ですから♪」
『あたしが嫌なんですっ!!///』
骸さんが中腰姿勢で迫って来る。
必死にスカートを抑えながら後退りしていると、ツナさんが静かに言った。
「………雲雀さん、お願いします。」
ゴッ、
「クハッ…!」
あ、コレいつものパターンだ……。
雲雀さんが骸さんをトンファーで殴って気絶させ、それを獄寺さんが引きずっていく。
でもってあたしは……
「大丈夫だった?柚子。」
『だ、大丈夫ですから!!』
ツナさんの腕の中に連行されるんだよ、ね……。
「まったく、柚子だって悪いんだからな?そんな誘いオーラ放出する服着てるし。」
『こ、これはベルさんが……!』
ピシッ…
あ、あれ?何だろう……
急に空気が冷たくなっt……
「ベルフェゴールが、何?」
『(ぎゃああああ!!!腹黒スマイルMAXモードーー!!!!)』
「うるさいよ、質問に答えて。」
『あ、えと、ベルさんがあたしの着てた服を返してくれなくて……コレ着て街歩けって言われて……!』
「ずっと、その格好で?」
『あ、はい…』
怒られるのかな…
怒られる道一直線なのかな…
「まーまー!アイツが言ってた通り、柚子は可愛くなったんだからいーじゃねーか、なっ?」
「………そうだけど、」
山本さぁぁぁん!!!
貴方はまさに救世主です!神様!大好き!!
「へぇ…俺は?」
『(ぎくっ…)』
「聞こえてたよ?脳内告白なんてズルいなぁ……俺は?柚子。」
『つ、ツナ様は………えと……』
ど、どうしよう……
ピンチじゃない!?
これって何気なくピンチじゃない!?
いつもだったら“嫌いじゃないです”で逃げられるけどさ、
今は無理じゃない!?
だって、嫌いじゃないって言ったら……
--「山本は“好き”なのに、俺は“嫌いじゃない”って……どーゆー事?俺の方が下なの?」
みたいな詰問をされる可能性150%!!!
「答えろよ、柚子。」
『えーっとですねぇ……』
“好き”って言うしかない、の…?
でもそしたら……何か違う意味に取られちゃうんじゃ……
「おっ!いたいた。ツナ!柚子!」
『へ…?』
「あ。」
絶体絶命の大ピンチに、更なる救世主が現れた。
『ディーノさんっ…!』
「よっ、元気してたか?つか、おめーら皆ココにいたんだな。」
「あ!ディーノ兄だ!!」
「あ~そ~べ~っ!」
「おわっ…!!」
フゥ太君やランボ君も部屋の奥から飛び出して来て、辺りが騒がしくなる。
こんな中じゃさすがのツナさんも、あんな事訊かないよね?
「柚子、」
『は、はい…』
「後でもっかい訊くから、覚えとけよ?」
破滅への道が開かれてる!!!
どうしよう!後でっていつ…!?
あたふたしまくるあたしに、ディーノさんが言う。
「そーだ柚子、向こうの部屋に今晩の衣装が届いてたぜ。」
『えっ、それって……』
ツナさんの方を向くと、得意気な笑みが返された。
あぁ…特注品ってヤツだ。
あたしの財政を削る根源だ。
「それとツナ、バジルが音合わせしたいっつってんだが…時間あるか?」
「はい、俺達はいつでもいいですよ。」
「10代目!骸のヤツは起こしますか?」
「あー、うん。一応起こしといて。そーだ、了平さん。」
「ぬ、どうした?」
イーピンちゃんと格闘技の話で盛り上がっていた了平さんが、ツナさんに呼ばれてこっちに来る。
「ジャージ持って来てましたよね?柚子に貸してやってくれませんか?」
「おお!構わんぞ!」
『ツナさん……』
もしかして、骸さんがまたこのミニスカに反応しないように…?
やっぱり、優しい人……なんだなぁ…。
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トイレにて、あたしが了平さんに借りたジャージに着替えている間に、
ヴァリアーの皆さんも4階の控え室に来たみたいだった。
どうやら、一緒に最終音合わせをやるらしい。
『お待たせしましたー…』
「あれ?メイドの柚子ちゃん、着替えちゃったのー?」
「折角のミニだったのにぃ~、惜しいわね…」
『あ、すみません……これも骸さん予防なんです……』
「……なら仕方ねぇなぁ…」
それでも口を尖らせるベルさんもう一度頭を下げた。
「うぅっ…僕の……僕の柚子がぁ…」
『な、何で泣いてるんですか…骸さん。』
「あんなに綺麗な生足を見せてくれていたのに……」
「もう1回気絶させておこうか、沢田。」
「それが良いかも知れませんね。」
ホントにこの人は……何で殴られるの承知で変態発言するんだろう…
ちょっとは防衛本能とか無いのかなー…?
「それは柚子も同じだろ。」
『へっ…?』
何か心の声に反応されたよ、とか思ってたら……
後ろからツナさんに抱きしめられていた。
『つ、ツナさんっ…!??』
吃驚し過ぎて固まるあたし。
ツナさんは、あたしが抵抗出来ないのを良い事に、壁の方へ追いつめる。
「俺が普段どんだけ苦労してるか、分かってる?」
『えっと…お、お仕事大変なんですよね?毎日お疲れなのはあたしも分かってるつもりでs……』
「違う。」
違うよ柚子、と溜め息混じりに言いながら、ツナさんはあたしの肩に頭を乗せた。
え、何コレ……一体どーすれば…
てかどーして皆さん見て見ぬフリ…!?
どうにかしてドアの外まで逃げられないか、
そんな事を考えながらドアの方を向いていた。
その時。
ギィ…
『(え?)』
入って来たのは、ザンザスさんだった。
当然ドアをガン見していたあたしと目が合うワケで。
「…………チッ、」
『(舌打ちーーーっ!!!!)』
イタリアで久々に会ったって言うのに舌打ちだよ!!
信じられない!!
まぁ確かにこの図は舌打ちされるに値しますけれども!
あたしだって早く脱したいけれども!!
「柚子、うるさい。」
『だ、だってツナさん、意味が分かりませんもん…』
「“婚約者”に寄り添って、何が悪い?」
『や、やめて下さいっ……あたしは…!』
否定しようとして、気がついた。
ココには…あたしがツナさんの婚約者だと信じ切ってる人達が大量にいらっしゃる!
そっか…だから皆見ないフリしてるんだ……!
このイチャつきが自然な事だと思われてるんだぁぁ!!
「やっと分かったか、否定したらどうなるか。」
『うぅ……ツナさんの鬼ぃ~っ。』
「これは予行練習。パーティー会場では冗談抜きで柚子は婚約者扱いされるから、今のうちに慣れて欲しいと思って。」
『……はい…』
大人しく返事だけしたら、ツナさんは満足そうに離れた。
あたしはホッと一息つく。
だって、さっきまで近過ぎて心臓敗れちゃうかと思ったもん。
「さて、そろそろ来るかな。」
『へ?どなたがですか?』
「……もう忘れたのかよ、アホ柚子。」
けなされたから少しムッとして、記憶の糸を手繰り寄せる。
えーっと、ヴァリアーさん以外で、ランボ君とフゥ太君とイーピンちゃん以外で、ディーノさんは違うから……
『あ…!バジルさん!!』
「正解、いい子いい子。」
『こっ、子供扱いはやめて下さいっ!』
コンコン、
「失礼します!」
「おっ!来たなっ。」
バジルさんってどんな人だろう?
結構ワクワクし始めるあたし。
山本さんが内側からドアを開けて、招き入れたのは……
「お久しぶりです!皆様!!」
『(あ、あれ…?)』
何故か袴姿の外人さんだった。
あたし達と同い年くらい、かな…?
「おおバジル!極限に決まってるな!!」
「ありがとうございます!了平殿!!」
『(“殿”!?)』
「つかてめぇ…何で和装なんだよ……」
「親方様に言われたのですが……何処か変でしょうか?獄寺殿。」
『(“親方”!?)』
顔立ちと服装や口調にギャップがあり過ぎて困惑するあたしに、ツナさんが横で言った。
「色々ツッコミどころあるけど、スルーしろ。」
『………りょ、了解です。』
と、それまで他の皆さんと話していたバジルさんが、こちらを向いた。
そして何故か顔をパアッと輝かせる。
「沢田殿っ!!」
「やぁ、似合ってるね、バジル君。」
「ありがとうございます!!沢田殿も、いつになくボスらしいです!!」
挨拶を終えて、あたしに目を向ける。
外国の方の袴姿という光景が、未だにあたしを唖然とさせていた。
「あ、あの…こちらはまさか……」
「うん、そうだよ。」
「やはりそうでしたか!!お会い出来て光栄です、バジルと申します。どうぞ宜しくお願いします!」
深々と頭を下げられる。
これは…ちゃんと挨拶返すべきだよね。
『どうも、牧之原柚子と言います。こちらこそ、宜しくお願いします。』
「柚子殿とおっしゃるのですね!素敵なお名前です。」
『あ、ありがとうございますっ。』
うわぁ、バジルさんって……笑顔可愛いなぁ…
「沢田殿、今回はお誘い下さりありがとうございます!」
「いいんだよ、皆で弾いた方が楽しいからさ。ね、柚子。」
『はい。』
それはまぁ、そうなんだけど……
「あっ!拙者はハープ担当です!」
『はぁ……』
って、ちょっと待ったぁ!!
今、“拙者”って言った!?言ったよね!?
そのルックスで一人称拙者って……
えええぇぇええぇ!!?
「にしても、まさかこんなお綺麗な方が来るとは思いませんでしたよ…!」
「当たり前、だって俺のだし。」
いやいやそんなバジルさん、あたし全然綺麗じゃないですよ…
お願いだからキラキラした目で見つめないで下さい。
ってゆーかツナさん!!
『何言ってるんですかぁ!やめて下さいっ!!///』
「え、だって柚子は俺のだろ?」
『(あ"……)』
そうだった…!
否定したら後で虐められるのあたしなんだ…!!
『ひ、人前でそんな恥ずかしい事っ……///』
あーん!
これがあたしの精一杯の演技ですっ!!
ぶっちゃけ100%演技ってワケでもない。
恥ずかしいってのは本当だし。
「こ、これは失礼しました!柚子殿が照れ屋だとは知らず…」
「違うって、本当は嬉しいんだろ?柚子。」
うわーん!ツナさんのバカーっ!!
何でそうあたしを虐めるのが得意なんですか!?
人を追いつめて楽しいですか!?
うぅっ…絶対いつか逃れてやるっ…!
「おい、」
「あ。」
「わっ…!」
『へ?』
急に呼びかけられて、3人でそちらを向く。
そこには、不機嫌オーラを放つザンザスさんが立っていた。
「あ、もう音合わせします?」
「失礼!拙者も急いで準備します!!」
袴でハープ弾くのかと思うと、ちょっと複雑な気持ちになる。
まぁ…個人の自由だけどさ……
絶対バジルさんだったらスーツとか燕尾服の方が似合うって。
「沢田綱吉、そいつ貸せ。」
「柚子、ですか?」
『えぇ!?』
「ラストの4小節、弾いて聞かせろ。」
『あ、あたしがですかっ!?他の方でも……』
いいんじゃないかなー、と思ったけど、ザンザスさんに睨まれた。
ダメだ、この赤い瞳には勝てません。
ツナさんの腹黒スマイルと同じくらい強い。
「それならいいですよ。使って下さい。」
「あぁ。」
『ツナさんっ!?』
「俺、バイオリンの準備あるから。」
こんな時は丸投げするんだ。
この意地悪ボスめ!
軽く恨みながらザンザスさんの譜面台のトコまで行く。
『えと、最後の4小節でしたよね?』
「ああ。」
あーもー緊張するなぁ……
ザンザスさんてば眼力半端ないんだもん。
でも、前にも同じような事があったせいか、そこまで緊張せずに指を動かせた。
『……こんな感じです。フィナーレなのでクレッシェンドでお願いします。』
「ああ…」
ザンザスさんはコントラバスの弓を手に取る。
もういいかな、とあたしも自分の席に着こうと方向転換した、その時。
「おい、」
『え?』
ザンザスさんの低い声に呼び止められて、何だかぞくりと嫌な予感。
でもって……
「………直ってねぇ…」
その一言だけで、最初は何の事だかさっぱりだった。
けど、ハッと思い出す。
---『えと…もし宜しければ………またコントラバス聞かせて下さいねっ!』
---「……てめぇはうるせぇのを直しとけ。」
そうだったー!!!
ザンザスさんは読心術属性で、
だからあたしの心の声は丸聞こえで、
それが五月蝿いから黙れって……
「……だからてめぇ、」
『ご、ごめんなさいっ…!』
ずっと、ずーーーっと聞こえてたんだろうな…
あたしってば、色んな文句を念じてたから…
『イタリア滞在が終わるまでには直しますっ!』
「……はんっ、」
あ、今“どーせ出来ねぇだろ”ってゆー目で見られた…。
うん、あたしも思います。
無理です、直せません。
「おい、おめーら準備出来たか?」
「リボーン真ん中ズルいもんね!!」
「ランボ、静かにして。」
「こっちはいいぜぇ。」
「王子もー。」
「極限問題無いぞ!」
「私もOKよ♪」
「僕の柚子の生足……」
「まだ言ってるの?咬み殺すよ。」
「柚子さん、頑張りましょうね!」
『うんっ、イーピンちゃんも。』
それから、最後の予行練習が始まった。
相変わらず皆さんの音は、とってもとっても綺麗だった。
ムーブメント
あたしの婚約者役ミッションも、第1楽章がスタートした
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