🎼本編
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「久しぶり柚子姉っ。」
『あ、フゥ太君!久しぶり!』
ツナさんが選んだ高そうなワンピースを着て、飛行機に搭乗したあたしは、フゥ太君と再会した。
隣には窓の外を見てはしゃぐランボ君もいる。
「嬉しいなー、柚子姉と一緒に弾けるなんて♪」
『あたしも嬉しい!けど……ランボ君って、大丈夫なの?』
言っちゃ悪いけど、かなり心配だったりする。
だって、まだ10歳なんだし…
イーピンちゃんも、確か同い年なんだよね…?
「つーか柚子、お前どこに座ってんだよ。」
『え?フゥ太君の隣ですけど……』
「お前は俺の隣に決まってんだろ。とっとと移動しろ。」
『そ、そんなぁっ!』
雲の上でもあたしはツナさんの腹黒オーラをビンビン受けなくちゃいけないんですか!!?
嫌だよー、あんまりだよー…
「何か言った?」
『いえ!只今移動を開始しますっ!!』
抗議する事すら無駄だと分かってるから、あたしは大人しくツナさんの隣に座った。
と言っても、ボンゴレの自家用ジェットは一つ一つの椅子が大きいし、肘掛けもある。
普通の飛行機みたいな密着は避けられそうなのが、何よりの救いだった。
『あの、ツナさん。』
「ん?」
『イタリアには、どれくらい滞在する予定なんですか?』
「そーだな……柚子が留まりたければ、いくらでもいいけど。」
『な、何言ってるんですかぁ!!だったら早く帰りたいですっ!』
「それは無理。」
……何か矛盾してる気がする。
「3日間の予定。つってもフライトが長いから、帰るのは4日目。」
『そうですかぁ……』
「何だよ、まだ不満な事でもあんのか?」
そ、そりゃ元から不満だらけですけど…
「へぇー。」
『読まないで下さいっ!……あの、4日分のあたしの衣類は用意されちゃったんですよね…?』
「全部特注で。」
そこ!問題はそこなんですよ!!
特注とかあり得ない!!
しかも4日分って事はかなりの費用に違いないじゃないですかぁ!!
『(あたしの財政が……)』
「いーじゃんか、給料から少しずつ出せるだろ?」
『……はーい。』
衣類の件でひたすらいじけながら、あたしは日本にしばしの別れを告げた。
途中耳が痛くなったのか、ランボ君と骸さんが騒ぎ出したけど、山本さんが買っておいた飴のおかげで何とかなった。
---
-------
------------
「ガハハハ!広いもんね!!」
「ランボ、走っちゃダメよ!はぐれちゃうでしょ!?」
「イーピンのボケぇ!!俺っち大丈夫だよっ!」
到着して荷物を受け取りながら、2人は仲がいいんだなぁ…と思う。
てか、もう既に空港から見える景色が日本と違うから、吃驚しまくってるんだけどさ。
「柚子、イタリア初めてなのか?」
『はい。父は何度か公演に来たみたいですけど。』
「へぇー!すげぇのな!!」
『いえいえっ!///』
山本さんのスマイルは、何処で見ても素敵過ぎる。
『ところで、あたし達どーやって何処に行くんですか?』
「んーっと……なぁ獄寺、今回のパーティーって確か…ディーノさんトコだよな?」
「2人揃って何で記憶が曖昧なんだよ!!キャバッローネ第一ホールだっつっただろーが!」
『あ、そう言えば!』
「だよなー♪」
「ったく…」
頭を掻く獄寺さん。
ふとその後ろから、ゆらりと黒髪が見えた。
「………ねぇ、」
「ん?どーしたんだ?雲雀。」
「…咬み殺すよ。」
『えぇええぇっ!!?』
「雲雀てめー!急に何のつもりだよ!!」
するとその後ろから、南国ヘアーと了平さんがひょっこりと顔を出す。
「クフフ…雲雀君は不機嫌なんです。」
「人が多いからな、無理もない。」
「大丈夫ですよ、僕が幻覚で誰もいない空港を見せてあげま………ぐふっ!」
『あっ!』
「あ。」
骸さんが喋ってるってのに、雲雀さんは八つ当たり(?)で殴った。
結構痛そう……
「ひ、酷いじゃないですか雲雀君!!僕が折角…」
「頼んでないし、君が喋ってるだけでムカツキが増す。」
お、恐ろしや…
今まさに戦闘が始まろうとした、その時。
「う"お"ぉぉい!!!」
『え?』
「おっ。」
「迎えが来たな。」
『リボーンさんっ!』
ニッと笑うリボーンさんの横で、ツナさんが手を振る。
「こっちでーす。」
すると、さっき叫んだ銀髪の人……スクアーロさんがドタドタ走って来た。
「う"おぉいガキ共!仕方ねぇから迎えに来てやったぜぇ!!」
「ご苦労だったな、スクアーロ。」
『ありがとうございますっ!』
「向こうにリムジンがある。それに乗れぇ。」
「さっすがヴァリアーなのな!」
というワケで、特別顧客専用出口に停めてあった長い長い長いリムジンに、荷物ごと乗る。
雲雀さんはまだ不機嫌なようで、ことあるごとに話しかけようとする骸さんを殴りまくってる。
それを見て笑ってる了平さんは凄いと思う。
「おいスクアーロ、直接キャバッローネまで行くのか?」
「あたりめーだろ爆弾小僧!寄り道なんつー面倒くせぇ事するかぁ!!」
「寄り道の必要なんてねーよな、柚子のドレスはもう着いてるだろうから。」
『つ、ツナさん!!///』
何だかもう、凄い事になってる。
長ーいリムジンの前の方に座ってるあたしには、一番奥に座ってるランボ君やフゥ太君が、余計に小さく見える。
「でもさー、メイドの柚子ちゃんちょっとくらい変身させたくね?」
『へっ?』
「ん?」
「う"お"っ…!」
今まで明らかにいなかった人が、助手席から顔を覗かせた。
『べ、ベルさんっ…!!』
「う"お"ぉいベル!!何でいやがるっ!!てめーあんだけ面倒くせぇとか言って…」
「気分♪つーか暇だったし。」
不思議な事に、一番驚いてるのはスクアーロさんで、ツナさんとかリボーンさんは何事も無かったかのようにコーヒーを啜る。
獄寺さんは、「また厄介なのが…」とか呟いてた。
「で、どういう事?俺の柚子を変身って。」
『“俺の”って何ですかぁっ!!』
「そのままの意味。」
『うっ…違いますから!///』
「はいはい痴話喧嘩ストーップ。だから、ぜっっってー可愛くアレンジするから、俺とマーモンにメイドの柚子ちゃん貸してって事♪」
この人…今何と言いました!?
ツッコミどころがあり過ぎて逆にツッコめない!!
「う"お"ぉい!マーモンもいんのかぁ!?」
「いるよ。」
『きゃっ…!』
ベルさんの後ろから飛び出して来たマーモンさんは、あたしの頭の上に乗った。
「勿論、君達に費用は負担させないよ。僕らの身勝手だからね。」
「うんうん。」
「て、てめーら!そんな勝手な事…!」
『そーですよ!大体あたし、いくらアレンジしたってそんな可愛くなり得ませんから!!』
これ以上のお金の無駄遣いは…
本当に心が痛むからやめて欲しいです、ハイ。
「うーん………」
ツナさん?
どーして顎に手を当てて悩んでらっしゃるの??
信じてますからね、
暗殺部隊×2とあたしを3人きりにしてしまうなんて、そんな恐ろしい事しないって、信じてますから!!
「………いいよ。」
『えぇっ!!?』
「やりぃー♪」
「太っ腹だね。」
『つ、ツナさんっ!どーしてですか!?暗殺部隊さんですよ!!しかも、お洋服あるんですよね!?何の得も無いですって!!』
「ただし、2時間な。」
あたしはスルーですか!!
「いーから行って来いよ、柚子。」
『な、何でですかぁ…』
怖いし萎縮するし無駄遣いだし怖いし……
嫌なのにーっ!!
「あぁ、そんなに俺と離れたくない?」
『ち、違いますっ!』
「じゃあ行け。」
もはや命令…!
「大丈夫だって。柚子は俺のなんだから、いくらでも可愛くなるよ。」
『なっ…何言ってるんですかぁ!!///』
「んじゃ、沢田綱吉の許可も下りたし、行くぜマーモン。」
「ウム、じゃあ2時間後ね。」
『えっ…今走行中……』
バンッ、
『上っ…!?』
「そ♪こっから出る。」
「あ、そうそう、スクアーロも来なよ。」
「何でだぁ!!?」
「は?荷物持ちに決まってんじゃん。拒否ったらこの場で切り刻むぜ?」
言いながらベルさんはあたしを担いでリムジンの上に上る。
マーモンさんもピョイッと続いた。
脅されたスクアーロさんも渋々上って。
「ガキ共、キャバッローネに着いたらヴァリアーに連絡しろぉ。」
「分かりました。柚子を頼みます。」
『ツナさんっ…!』
ヒラヒラ手を振るツナさんに、最後まで不安を目で訴えてたのに、ダメだった。
パタンと閉められたリムジンの天窓。しかも走行中。
目が回りそうだったからギュッと閉じて、未だあたしを担いでいるベルさんの服を握った。
「あ、あの店とかいんじゃね?」
「まぁ手始めに見てみようか。」
「う"お"ぉい!降りるんなら早くしろぉ!!」
そして、一瞬空を飛んだような感覚がやって来て、
次の瞬間あたしは、歩行者道路に立たされていた。
---
------
「いーのか?ツナ。」
「まぁ少しは心配だけど…いい。」
「10代目!あいつら何しでかすか……」
「分かったから、さ。」
微笑したツナに、周りは耳を傾ける。
「ベルフェゴールが柚子を連れ出したかった、本当の理由が。」
「本当の理由、ですか…?」
それでもなお首を傾げる獄寺に、ツナは「心配ないよ」と言った。
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------------
「でさー、そん時の相手の驚いた顔!俺がひんむく前に目玉飛び出しそうだったんだぜ?超ウケたしー!」
『そ、そこはウケちゃいけないような気が…』
助けて下さい。
さっきからベルさんの暗殺話5連発目です…。
普通に聞いてるマーモンさんとか、つまらなそーに溜め息ついてるスクアーロさんとか、意味分かりません!!
「あ、コレいんじゃね?」
『へ?』
ふとベルさんが立ち止まり、ショーウィンドウの奥のミニスカを見る。
え、あの……さすがに短過ぎじゃありませんか!!?
「スクアーロー、カード。」
「ばっ…自分の使えぇ!!俺は荷物持ちであって財布じゃあねぇハズだぁ!!」
『(荷物持ちはいいんだ…)』
スクアーロさんって、面白い人だなぁ。
ツナさんの腹黒加減を分かってくれてる人だもんね、話とか合うかもしれない。
「ま、いーや。こないだパクったのあるし。」
「う"お"ぉい!!何でそれをてめぇが持ってやがる!!」
「気づかなかったのかい?スクアーロ。」
「買って来よーっと♪」
「う"お"ぉい!!!」
結局、ベルさんが以前くすねたスクアーロさんのカードで全部支払ってしまい、
しかもあたしはそれを着てショッピングを続ける事になってしまい、
『あ、あの~…』
「ム?どうかしたのかい?」
『やっぱりこのミニスカ……スースーするんですけど…』
いくらタイツはいてるとは言え、恥ずかしいモンは恥ずかしい。
「いーじゃん、似合ってんだからさー。」
「可愛くなってると思うよ?」
「メイドの柚子ちゃん大変身~♪あ、じゃあ次メーク変えなくちゃね。」
『えぇ!?そこまでするんですかっ!?』
「ったりめーじゃん♪」
「楽しみだね。」
ベルさんはあたしの手を引いて、スタスタ足を進める。
マーモンさんは肩に乗って来るし……うんまぁ、これはこれで可愛くていいんだけど、
スクアーロさんには申し訳ないと思った。
だって……あたしが今まで着てた物は、袋に入れてスクアーロさんに持たせちゃってるんだもん…。
---
------
「このインナー良くねー?」
『え、あ、はい!可愛いと思います。』
「じゃあ購入~♪」
『ベルさんっ!?』
さっきからこんな感じで、どんどん荷物が増えてます。
美容室に行くまでの服屋さんを片っ端から見て回ってるからだと思うけど……
てゆーか、あたしが「可愛いと思う」って言ったらアウトか!!
それは全部「買います」に変換されちゃうみたいだしね……。
何このプレッシャーかかるショッピング…
「お、着いた着いた。」
「ここでイメチェンしてもらうよ、柚子。」
『う……はい…』
絶対コレ、一流セレブが通うトコだよ!!
緊張しまくりなあたしを差し出して、ベルさん達はどっか行ってしまった。
30分掛かると店員さんに言われて、20分にしろと脅してた。
ああごめんなさい、本当にごめんなさい。
ベルさんに代わってあたしが謝ります、心の中で。
-----
20分後。
「ムム、いいんじゃないかい?」
「うししっ♪やっぱ王子の目に狂いはねーって事♪」
『あ、あの……派手じゃないですか?』
「んなこたぁ無いぜぇ。」
あたし、こんな派手なアイメイクしたこと無いし、何か後ろ髪とかエクステで長くなってるし……
リップ濃過ぎじゃないですか…?
「うっし、じゃあ次!」
『あ、あの!』
「ん?」
思い切って、ベルさんを引き止めた。
「どしたのー?」
『えと、ですね……スクアーロさんが…』
「スクアーロー…?」
見れば、いくつもの袋を持って後ろからしかめ面で歩いて来るスクアーロさん。
さすがにそろそろ休憩を入れたくて。
『公園か何処かで、一休みしませんか?』
「……ま、いーけど。メイドの柚子ちゃん、マジお人好しーっ。」
『そ、そーですか?』
通りを抜けた先の広場にあるベンチに座って、一休みする事になった。
ベルさんとマーモンさんは、「ちょっと待ってて」とどっかに行ってしまった。
スクアーロさんが荷物を全部降ろして、ドカッと座り込む。
『あの、すみません……あたしの荷物なのに…』
「あぁ"?気にすんなぁ、アイツの我が儘はいつもの事だしなぁ。」
『スクアーロさんって、面倒見がいいんですね。』
「はぁ"ぁっ!?///」
言いながらクスッと笑ったら、スクアーロさんはやけにビクッとして目をそらした。
かと思ったら、今度は呆れたようにこっちを向いて言う。
「おめーなぁ…着飾ってんだから自覚しろぉ。」
『え…?あー、やっぱり似合ってないですよね、こんなミニスカ。』
「違ぇよ!このアホがぁ!!」
『あ、アホって…!』
「だから!きっ…綺麗になってんだから自覚しろっつってんだぁ!!!///」
ぷいっとそっぽ向いてしまったスクアーロさん。
あたしの方はというと、言われた台詞にただ吃驚するばかりで。
それから2人で、黙って待つしか出来なかった。
「おっ待たせー♪はい、柚子ちゃん。」
『え?』
「一応スクアーロのも買って来たよ。」
「つか、俺のカードだろぉ。」
「細かい事は気にしない方がいいよ。」
差し出されたそれは、コーンの上にたっぷり盛られたジェラート。
『わぁっ…!』
「うめーから食べてみ?」
『はいっ!いただきます!!』
刺さってたスプーンを使って、パクリと一口。
シンプルなバニラ味がたまらない。
『はぅぅ~…///』
「どう?」
『すっごく美味しいです!さすが本場っ!』
「うししっ♪とーぜんっしょ。」
「だね。」
得意そうに笑みを見せる2人が、何だか可愛く思えて。
あたしってば、暗殺の人だから…って、あんなにビクビクしてたのに。
『ありがとうございますっ!ベルさん、マーモンさん。』
「ししっ、初のイタリア散歩はどーだった?」
そんなの、決まってる。
『とっても楽しかったです!皆さんのおかげですっ!』
「やりぃー♪」
「ウム、目的達成だね。」
『“目的”…?』
「う"お"ぉい…てめぇらまさか……」
「え、スクアーロってば今頃気づいたワケ?」
良く分からないままジェラートを食べて考えるあたしをよそに、ベルさんはスクアーロさんをバカにする。
「だっせー!分かんねーまま荷物持ってたんだ!!」
「鈍過ぎるね。」
「うるせぇ!!大体てめーら登場からおかしかっただろーがぁ!!」
「はぁ?インパクトって大事じゃん。ね、柚子ちゃん…………あ。」
『へ?』
あたしの顔を見て何かに気づくベルさん。
と、次の瞬間。
「もーらいっ♪」
『わっ…』
ペロッと、あたしの口の真横を軽く舐めた。
『べ、ベルさn……』
「う"お"ぉいっ!ベルてめっ…何してやがんだぁ!!」
「んでスクアーロが怒るワケー?意味分かんねぇし。」
「アイス付けてた柚子も悪いよ。」
『は、はい……///』
マーモンさんにそう言われ、何も返せなかった。
今日のこの2時間は、何ともベルさん至上主義なショッピングだったと思う。
だけど、とっても有意義で、あたしは少しイタリアに馴染めたような、そんな気がした。
ミーイズム
無理矢理な旅行だったのに、楽しく過ごせるような気がして。
continue...
『あ、フゥ太君!久しぶり!』
ツナさんが選んだ高そうなワンピースを着て、飛行機に搭乗したあたしは、フゥ太君と再会した。
隣には窓の外を見てはしゃぐランボ君もいる。
「嬉しいなー、柚子姉と一緒に弾けるなんて♪」
『あたしも嬉しい!けど……ランボ君って、大丈夫なの?』
言っちゃ悪いけど、かなり心配だったりする。
だって、まだ10歳なんだし…
イーピンちゃんも、確か同い年なんだよね…?
「つーか柚子、お前どこに座ってんだよ。」
『え?フゥ太君の隣ですけど……』
「お前は俺の隣に決まってんだろ。とっとと移動しろ。」
『そ、そんなぁっ!』
雲の上でもあたしはツナさんの腹黒オーラをビンビン受けなくちゃいけないんですか!!?
嫌だよー、あんまりだよー…
「何か言った?」
『いえ!只今移動を開始しますっ!!』
抗議する事すら無駄だと分かってるから、あたしは大人しくツナさんの隣に座った。
と言っても、ボンゴレの自家用ジェットは一つ一つの椅子が大きいし、肘掛けもある。
普通の飛行機みたいな密着は避けられそうなのが、何よりの救いだった。
『あの、ツナさん。』
「ん?」
『イタリアには、どれくらい滞在する予定なんですか?』
「そーだな……柚子が留まりたければ、いくらでもいいけど。」
『な、何言ってるんですかぁ!!だったら早く帰りたいですっ!』
「それは無理。」
……何か矛盾してる気がする。
「3日間の予定。つってもフライトが長いから、帰るのは4日目。」
『そうですかぁ……』
「何だよ、まだ不満な事でもあんのか?」
そ、そりゃ元から不満だらけですけど…
「へぇー。」
『読まないで下さいっ!……あの、4日分のあたしの衣類は用意されちゃったんですよね…?』
「全部特注で。」
そこ!問題はそこなんですよ!!
特注とかあり得ない!!
しかも4日分って事はかなりの費用に違いないじゃないですかぁ!!
『(あたしの財政が……)』
「いーじゃんか、給料から少しずつ出せるだろ?」
『……はーい。』
衣類の件でひたすらいじけながら、あたしは日本にしばしの別れを告げた。
途中耳が痛くなったのか、ランボ君と骸さんが騒ぎ出したけど、山本さんが買っておいた飴のおかげで何とかなった。
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「ガハハハ!広いもんね!!」
「ランボ、走っちゃダメよ!はぐれちゃうでしょ!?」
「イーピンのボケぇ!!俺っち大丈夫だよっ!」
到着して荷物を受け取りながら、2人は仲がいいんだなぁ…と思う。
てか、もう既に空港から見える景色が日本と違うから、吃驚しまくってるんだけどさ。
「柚子、イタリア初めてなのか?」
『はい。父は何度か公演に来たみたいですけど。』
「へぇー!すげぇのな!!」
『いえいえっ!///』
山本さんのスマイルは、何処で見ても素敵過ぎる。
『ところで、あたし達どーやって何処に行くんですか?』
「んーっと……なぁ獄寺、今回のパーティーって確か…ディーノさんトコだよな?」
「2人揃って何で記憶が曖昧なんだよ!!キャバッローネ第一ホールだっつっただろーが!」
『あ、そう言えば!』
「だよなー♪」
「ったく…」
頭を掻く獄寺さん。
ふとその後ろから、ゆらりと黒髪が見えた。
「………ねぇ、」
「ん?どーしたんだ?雲雀。」
「…咬み殺すよ。」
『えぇええぇっ!!?』
「雲雀てめー!急に何のつもりだよ!!」
するとその後ろから、南国ヘアーと了平さんがひょっこりと顔を出す。
「クフフ…雲雀君は不機嫌なんです。」
「人が多いからな、無理もない。」
「大丈夫ですよ、僕が幻覚で誰もいない空港を見せてあげま………ぐふっ!」
『あっ!』
「あ。」
骸さんが喋ってるってのに、雲雀さんは八つ当たり(?)で殴った。
結構痛そう……
「ひ、酷いじゃないですか雲雀君!!僕が折角…」
「頼んでないし、君が喋ってるだけでムカツキが増す。」
お、恐ろしや…
今まさに戦闘が始まろうとした、その時。
「う"お"ぉぉい!!!」
『え?』
「おっ。」
「迎えが来たな。」
『リボーンさんっ!』
ニッと笑うリボーンさんの横で、ツナさんが手を振る。
「こっちでーす。」
すると、さっき叫んだ銀髪の人……スクアーロさんがドタドタ走って来た。
「う"おぉいガキ共!仕方ねぇから迎えに来てやったぜぇ!!」
「ご苦労だったな、スクアーロ。」
『ありがとうございますっ!』
「向こうにリムジンがある。それに乗れぇ。」
「さっすがヴァリアーなのな!」
というワケで、特別顧客専用出口に停めてあった長い長い長いリムジンに、荷物ごと乗る。
雲雀さんはまだ不機嫌なようで、ことあるごとに話しかけようとする骸さんを殴りまくってる。
それを見て笑ってる了平さんは凄いと思う。
「おいスクアーロ、直接キャバッローネまで行くのか?」
「あたりめーだろ爆弾小僧!寄り道なんつー面倒くせぇ事するかぁ!!」
「寄り道の必要なんてねーよな、柚子のドレスはもう着いてるだろうから。」
『つ、ツナさん!!///』
何だかもう、凄い事になってる。
長ーいリムジンの前の方に座ってるあたしには、一番奥に座ってるランボ君やフゥ太君が、余計に小さく見える。
「でもさー、メイドの柚子ちゃんちょっとくらい変身させたくね?」
『へっ?』
「ん?」
「う"お"っ…!」
今まで明らかにいなかった人が、助手席から顔を覗かせた。
『べ、ベルさんっ…!!』
「う"お"ぉいベル!!何でいやがるっ!!てめーあんだけ面倒くせぇとか言って…」
「気分♪つーか暇だったし。」
不思議な事に、一番驚いてるのはスクアーロさんで、ツナさんとかリボーンさんは何事も無かったかのようにコーヒーを啜る。
獄寺さんは、「また厄介なのが…」とか呟いてた。
「で、どういう事?俺の柚子を変身って。」
『“俺の”って何ですかぁっ!!』
「そのままの意味。」
『うっ…違いますから!///』
「はいはい痴話喧嘩ストーップ。だから、ぜっっってー可愛くアレンジするから、俺とマーモンにメイドの柚子ちゃん貸してって事♪」
この人…今何と言いました!?
ツッコミどころがあり過ぎて逆にツッコめない!!
「う"お"ぉい!マーモンもいんのかぁ!?」
「いるよ。」
『きゃっ…!』
ベルさんの後ろから飛び出して来たマーモンさんは、あたしの頭の上に乗った。
「勿論、君達に費用は負担させないよ。僕らの身勝手だからね。」
「うんうん。」
「て、てめーら!そんな勝手な事…!」
『そーですよ!大体あたし、いくらアレンジしたってそんな可愛くなり得ませんから!!』
これ以上のお金の無駄遣いは…
本当に心が痛むからやめて欲しいです、ハイ。
「うーん………」
ツナさん?
どーして顎に手を当てて悩んでらっしゃるの??
信じてますからね、
暗殺部隊×2とあたしを3人きりにしてしまうなんて、そんな恐ろしい事しないって、信じてますから!!
「………いいよ。」
『えぇっ!!?』
「やりぃー♪」
「太っ腹だね。」
『つ、ツナさんっ!どーしてですか!?暗殺部隊さんですよ!!しかも、お洋服あるんですよね!?何の得も無いですって!!』
「ただし、2時間な。」
あたしはスルーですか!!
「いーから行って来いよ、柚子。」
『な、何でですかぁ…』
怖いし萎縮するし無駄遣いだし怖いし……
嫌なのにーっ!!
「あぁ、そんなに俺と離れたくない?」
『ち、違いますっ!』
「じゃあ行け。」
もはや命令…!
「大丈夫だって。柚子は俺のなんだから、いくらでも可愛くなるよ。」
『なっ…何言ってるんですかぁ!!///』
「んじゃ、沢田綱吉の許可も下りたし、行くぜマーモン。」
「ウム、じゃあ2時間後ね。」
『えっ…今走行中……』
バンッ、
『上っ…!?』
「そ♪こっから出る。」
「あ、そうそう、スクアーロも来なよ。」
「何でだぁ!!?」
「は?荷物持ちに決まってんじゃん。拒否ったらこの場で切り刻むぜ?」
言いながらベルさんはあたしを担いでリムジンの上に上る。
マーモンさんもピョイッと続いた。
脅されたスクアーロさんも渋々上って。
「ガキ共、キャバッローネに着いたらヴァリアーに連絡しろぉ。」
「分かりました。柚子を頼みます。」
『ツナさんっ…!』
ヒラヒラ手を振るツナさんに、最後まで不安を目で訴えてたのに、ダメだった。
パタンと閉められたリムジンの天窓。しかも走行中。
目が回りそうだったからギュッと閉じて、未だあたしを担いでいるベルさんの服を握った。
「あ、あの店とかいんじゃね?」
「まぁ手始めに見てみようか。」
「う"お"ぉい!降りるんなら早くしろぉ!!」
そして、一瞬空を飛んだような感覚がやって来て、
次の瞬間あたしは、歩行者道路に立たされていた。
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「いーのか?ツナ。」
「まぁ少しは心配だけど…いい。」
「10代目!あいつら何しでかすか……」
「分かったから、さ。」
微笑したツナに、周りは耳を傾ける。
「ベルフェゴールが柚子を連れ出したかった、本当の理由が。」
「本当の理由、ですか…?」
それでもなお首を傾げる獄寺に、ツナは「心配ないよ」と言った。
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「でさー、そん時の相手の驚いた顔!俺がひんむく前に目玉飛び出しそうだったんだぜ?超ウケたしー!」
『そ、そこはウケちゃいけないような気が…』
助けて下さい。
さっきからベルさんの暗殺話5連発目です…。
普通に聞いてるマーモンさんとか、つまらなそーに溜め息ついてるスクアーロさんとか、意味分かりません!!
「あ、コレいんじゃね?」
『へ?』
ふとベルさんが立ち止まり、ショーウィンドウの奥のミニスカを見る。
え、あの……さすがに短過ぎじゃありませんか!!?
「スクアーロー、カード。」
「ばっ…自分の使えぇ!!俺は荷物持ちであって財布じゃあねぇハズだぁ!!」
『(荷物持ちはいいんだ…)』
スクアーロさんって、面白い人だなぁ。
ツナさんの腹黒加減を分かってくれてる人だもんね、話とか合うかもしれない。
「ま、いーや。こないだパクったのあるし。」
「う"お"ぉい!!何でそれをてめぇが持ってやがる!!」
「気づかなかったのかい?スクアーロ。」
「買って来よーっと♪」
「う"お"ぉい!!!」
結局、ベルさんが以前くすねたスクアーロさんのカードで全部支払ってしまい、
しかもあたしはそれを着てショッピングを続ける事になってしまい、
『あ、あの~…』
「ム?どうかしたのかい?」
『やっぱりこのミニスカ……スースーするんですけど…』
いくらタイツはいてるとは言え、恥ずかしいモンは恥ずかしい。
「いーじゃん、似合ってんだからさー。」
「可愛くなってると思うよ?」
「メイドの柚子ちゃん大変身~♪あ、じゃあ次メーク変えなくちゃね。」
『えぇ!?そこまでするんですかっ!?』
「ったりめーじゃん♪」
「楽しみだね。」
ベルさんはあたしの手を引いて、スタスタ足を進める。
マーモンさんは肩に乗って来るし……うんまぁ、これはこれで可愛くていいんだけど、
スクアーロさんには申し訳ないと思った。
だって……あたしが今まで着てた物は、袋に入れてスクアーロさんに持たせちゃってるんだもん…。
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「このインナー良くねー?」
『え、あ、はい!可愛いと思います。』
「じゃあ購入~♪」
『ベルさんっ!?』
さっきからこんな感じで、どんどん荷物が増えてます。
美容室に行くまでの服屋さんを片っ端から見て回ってるからだと思うけど……
てゆーか、あたしが「可愛いと思う」って言ったらアウトか!!
それは全部「買います」に変換されちゃうみたいだしね……。
何このプレッシャーかかるショッピング…
「お、着いた着いた。」
「ここでイメチェンしてもらうよ、柚子。」
『う……はい…』
絶対コレ、一流セレブが通うトコだよ!!
緊張しまくりなあたしを差し出して、ベルさん達はどっか行ってしまった。
30分掛かると店員さんに言われて、20分にしろと脅してた。
ああごめんなさい、本当にごめんなさい。
ベルさんに代わってあたしが謝ります、心の中で。
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20分後。
「ムム、いいんじゃないかい?」
「うししっ♪やっぱ王子の目に狂いはねーって事♪」
『あ、あの……派手じゃないですか?』
「んなこたぁ無いぜぇ。」
あたし、こんな派手なアイメイクしたこと無いし、何か後ろ髪とかエクステで長くなってるし……
リップ濃過ぎじゃないですか…?
「うっし、じゃあ次!」
『あ、あの!』
「ん?」
思い切って、ベルさんを引き止めた。
「どしたのー?」
『えと、ですね……スクアーロさんが…』
「スクアーロー…?」
見れば、いくつもの袋を持って後ろからしかめ面で歩いて来るスクアーロさん。
さすがにそろそろ休憩を入れたくて。
『公園か何処かで、一休みしませんか?』
「……ま、いーけど。メイドの柚子ちゃん、マジお人好しーっ。」
『そ、そーですか?』
通りを抜けた先の広場にあるベンチに座って、一休みする事になった。
ベルさんとマーモンさんは、「ちょっと待ってて」とどっかに行ってしまった。
スクアーロさんが荷物を全部降ろして、ドカッと座り込む。
『あの、すみません……あたしの荷物なのに…』
「あぁ"?気にすんなぁ、アイツの我が儘はいつもの事だしなぁ。」
『スクアーロさんって、面倒見がいいんですね。』
「はぁ"ぁっ!?///」
言いながらクスッと笑ったら、スクアーロさんはやけにビクッとして目をそらした。
かと思ったら、今度は呆れたようにこっちを向いて言う。
「おめーなぁ…着飾ってんだから自覚しろぉ。」
『え…?あー、やっぱり似合ってないですよね、こんなミニスカ。』
「違ぇよ!このアホがぁ!!」
『あ、アホって…!』
「だから!きっ…綺麗になってんだから自覚しろっつってんだぁ!!!///」
ぷいっとそっぽ向いてしまったスクアーロさん。
あたしの方はというと、言われた台詞にただ吃驚するばかりで。
それから2人で、黙って待つしか出来なかった。
「おっ待たせー♪はい、柚子ちゃん。」
『え?』
「一応スクアーロのも買って来たよ。」
「つか、俺のカードだろぉ。」
「細かい事は気にしない方がいいよ。」
差し出されたそれは、コーンの上にたっぷり盛られたジェラート。
『わぁっ…!』
「うめーから食べてみ?」
『はいっ!いただきます!!』
刺さってたスプーンを使って、パクリと一口。
シンプルなバニラ味がたまらない。
『はぅぅ~…///』
「どう?」
『すっごく美味しいです!さすが本場っ!』
「うししっ♪とーぜんっしょ。」
「だね。」
得意そうに笑みを見せる2人が、何だか可愛く思えて。
あたしってば、暗殺の人だから…って、あんなにビクビクしてたのに。
『ありがとうございますっ!ベルさん、マーモンさん。』
「ししっ、初のイタリア散歩はどーだった?」
そんなの、決まってる。
『とっても楽しかったです!皆さんのおかげですっ!』
「やりぃー♪」
「ウム、目的達成だね。」
『“目的”…?』
「う"お"ぉい…てめぇらまさか……」
「え、スクアーロってば今頃気づいたワケ?」
良く分からないままジェラートを食べて考えるあたしをよそに、ベルさんはスクアーロさんをバカにする。
「だっせー!分かんねーまま荷物持ってたんだ!!」
「鈍過ぎるね。」
「うるせぇ!!大体てめーら登場からおかしかっただろーがぁ!!」
「はぁ?インパクトって大事じゃん。ね、柚子ちゃん…………あ。」
『へ?』
あたしの顔を見て何かに気づくベルさん。
と、次の瞬間。
「もーらいっ♪」
『わっ…』
ペロッと、あたしの口の真横を軽く舐めた。
『べ、ベルさn……』
「う"お"ぉいっ!ベルてめっ…何してやがんだぁ!!」
「んでスクアーロが怒るワケー?意味分かんねぇし。」
「アイス付けてた柚子も悪いよ。」
『は、はい……///』
マーモンさんにそう言われ、何も返せなかった。
今日のこの2時間は、何ともベルさん至上主義なショッピングだったと思う。
だけど、とっても有意義で、あたしは少しイタリアに馴染めたような、そんな気がした。
ミーイズム
無理矢理な旅行だったのに、楽しく過ごせるような気がして。
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