🎼本編
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恐怖の共同練習から3日。
昨日はあれからボーッとしながらもカーテンを洗い終え、帰って来た山本さんに掛け直してもらった。
『(ツナさん…何の事を言ってたんだろ……)』
気になっちゃって仕方ない。
いつか言うって、一体何を??
「おい、柚子。」
『あ、はいっ!』
「ボーッとしてんじゃねぇ。準備は出来たのか?」
『え?あ…すみません、まだです!』
朝食で使った食器を物凄いスローペースで洗っていたあたし。
リボーンさんは溜め息をつく。
「着るもんは心配すんな、俺とツナが特注で頼んどいたからな。」
『えぇ!?』
だってあたし、サイズとか言ってな……
「見りゃ分かる。」
『凄過ぎですよ!てか逆に嫌です、そのスキル!!』
「何か言ったか?」
『何でもございません…』
銃を向けるリボーンさんに謝り、話題を戻す。
『でも、パジャマとかは無いですよね?』
「何言ってんだ?柚子の着るもんは“全て”俺とツナが特注で頼んだって言ったじゃねーか。」
『て事はまさか……』
「ここに一着届くから、明日はそれ着て出かけるんだぞ。他は向こうに届くよう手配した。」
そーゆー配慮は他に使って下さいませぇぇぇ!!!
「うるせぇぞ、文句あるのか?」
『うっ……ありません…』
「じゃ、俺からはそれだけだ。」
ちゃお、と言ってリボーンさんはキッチンを後にしてしまった。
うん、不安なのはこっからだよ。
どんな服が来るかはもうこの際どーでもいい。
お2人は、骸さんと違って普通のセンスを持ってるって信じる。
けどさ……
「あ、いたいた。柚子、」
『つ、ツナさん……』
「何身構えてんだよ。そんな簡単に襲わねーっての。」
『さらっと何言ってんですかぁ!!///』
にやっと笑ったツナさんに、スポンジを投げる。
それはひょいっと避けられて、壁に泡が付いた。
「『あ。』」
「ったく…後で綺麗にしとけよ。」
『何で避けるんですか!』
「普通避けるだろ?柚子は当たりに行くか?」
『……いえ…』
「つーか、こんな事しに来たんじゃねんだよ。リボーンから聞いた?」
『お洋服の事ですか?でしたら先ほど。』
「それは良かった。はい、コレ。」
『え?』
差し出されたのは、レシートの束。
ご丁寧にホッチキスで留めてある。
「柚子もちな。」
『なっ……!!』
うん、こーゆー展開になると思ってた。
薄々感づいていたんですよ。
だけど、ね…
『だったらどーして特注にするんですかーーっ!!!』
ボンゴレへのあたしの借金増やしたいとか!?
そんな意地悪な理由があるんですか!?
「どーしてって…当然だろ?」
『へっ…?』
ツナさんが突然グッと距離を詰めて来て、あたしの髪が風圧で浮いた。
ポチャンと一滴、蛇口から水が垂れる音。
『つ、ツナさん…?』
「柚子は、俺の婚約者なんだから。」
いつもみたいに、掬い上げられる毛先。
その先端に唇を落として、ツナさんは続ける。
「俺の柚子に、他と同じドレスなんか着せるかよ。」
『なっ……あたしは…べ、別に……』
「勿論、今のジャージ姿でも可愛いけどさ。」
『だから!そーゆー台詞をホイホイ言うのやめて下さいっ!!///』
くるりと背を向け、食器洗い再開。
そしたらツナさんは、構わずあたしを抱きしめる。
『ちょっ……食器洗えないですってば!!』
「いーよ、別に。」
『まだあたし、イタリア行く準備してないんです!!』
「で?」
いや、「で?」って言われても……
『ですから、早く終わらせて準備しなくちゃ…』
「俺との時間より、そっちが大事?」
『家政婦やれって言ったのはツナさんです!それに、イタリア行くって言ったのもツナさんです!』
大体“俺との時間”って……!
あたしは別にツナさんの恋人でも何でも無いのに…!!
「ねぇ、」
『えっ…!?』
「あ。」
「お楽しみのところ悪いんだけど、」
そう言って、入り口付近の壁に寄りかかっていたのは……
「あぁ、雲雀さん。」
『た、楽しんでなんかいませんからーーっ!!!』
今のどこが楽しんでるように見えたんですか!?
少なくともあたしは嫌々オーラ出しまくってたのに!!
「うるさいよ柚子。」
『す、すみません…』
だって、だって雲雀さんがぁーっ…
「どうしたんですか?」
「これ、自家用ジェット離陸許可証。航空会社から今届いたよ。」
「ありがとうございます。」
「パイロットは向こうが用意してくれるって。」
「それは良かった、あのくらい積めば航空会社も動くんですね。」
「みたいだね。」
今、自家用ジェットって…おっしゃいました?
何なんでしょうか、この人達。
普通に飛行機の時間調べてチケット取ればいいじゃないですか。
もっと節約の精神というものを……
「何か言ってる?」
『いえ何も!!』
大人しく食器を洗うあたし。
離陸許可証のおかげで、ツナさんは腕を解いてくれたから、もう自由の身。
「じゃあメンバー確認と、楽器もちゃんと用意しとかないといけませんね。」
「ここにある楽器はいいとして、他のがまだだよ。」
「バイオリンをもう1つに…シンバルとファゴットか。」
『え?他の方も一緒なんですか??』
「全員柚子と面識あるから大丈夫。」
『はぁ……』
ボレロの為のメンバーは、どうやら7号館とヴァリアーさんだけじゃないらしい。
誰なんだろう……
少しワクワクしながらも、食器洗いを終わらせた。
---
-----
-----------
『えーっと、着るもの以外だから……あとは何を持てば良いんだろ。』
部屋の中を見回してみるけど、あとは愛用のフルートを入れるだけで良さそうだ。
7号館の掃除は昨日からちまちまやって終わらせたし、もう出発を待つばかり。
『あ、授業さぼる事になるのかなぁ……』
「それは大丈夫みたいだぜ!」
『山本さんっ!』
「よっ、準備終わったか?柚子。」
『はい!』
山本さん曰く、ツナさんの強大な圧力により、欠席扱いされないらしい。
ボンゴレって……ホントに恐ろしいです。
『ところで山本さん、何か用事があったんじゃ…』
「ん?ああ、そーだった!柚子、買い物行こうぜっ!」
『へっ?』
きょとん、というか……
正直キュンと来ました!!
山本さんがわざわざあたしの部屋まで来て下さって、しかも一緒に買い物に…!?
う、嬉しすぎる!!
「明日は長ぇフライトだからさ、飴とかいるんじゃねーかって。」
『飴?どなたか耳が痛くなっちゃう人、いるんですか??』
「あぁ実は…ランボが結構泣くんだよな。」
アレは参るぜ、と苦笑する山本さん。
え?ランボ君…??
『まさか一緒にボレロを…!?』
「そーみたいだぜっ!ランボとイーピン、それにフゥ太もな!」
『フゥ太君もですか!』
それでツナさん、あたしも面識ある人だって……
「あ、もしかして柚子、今忙しかったりするか?」
『いえいえいえ!!ヒマMAXですよ!行きましょう、買い物!』
「そりゃ良かった!」
というワケで!
山本さんとお買い物です~~~♪
いつも骸さんと買い出しに出てるけど、やっぱり山本さんだと何か違うな~♪
爽やかなんだよね、全体的に。
骸さんは……うん、ノーコメントで。
「柚子さ、」
『え?』
「こないだ何か言われたんだって?」
不意に、山本さんが切り出した話題。
初めは意味が分からなくて、ただグルグル考えていた。
『ま、まさか……ツナさんが言ってたあの…』
「それそれ。ツナがこぼしてたんだ、“堪えきれなくて言っちまった”ってな。」
『堪えきれなくて…?』
あたしには、何も分からない。
ツナさんがあの時、何を我慢してたのか。
どうしていきなり、あんな事を言ったのか。
『山本さんは、ご存知なんですか!?その……ツナさんが“いつか言う”って言ってた内容…』
「………さぁな。」
『え…』
初めてだった。
山本さんが、ぼやかしたのは。
いつも明るくて、爽やかで、白黒ハッキリな山本さんが、
曖昧な返事をした。
その事にただ、あたしの思考回路はフリーズしてしまった。
しばらくの沈黙の後、山本さんは言う。
「俺が言える事じゃねーんだ、悪ぃ。」
『どうしてですか…?』
「俺も、聞いただけだからさ。」
真直ぐ前を見ながら、山本さんは遠い昔を思い出すように話す。
『どっ、どんな事なんですか!?どーゆージャンルですか!?』
「ジャンル?そーだなー……割と暗いかもな。」
『暗いん、ですか……』
「けど、明るいぜ。」
『そ、それって真逆じゃないですかぁ…』
よく分からないまま脱力するあたしの頭に、山本さんはいつもみたいに手を乗せて。
「あぁ、真逆なんだ。」
『え?』
「暗くて明るくて、真っ暗で眩しい………ツナが言いたいのは、そーゆー話だ。だから、」
くしゃっと髪を撫でながら、山本さんは爽やかスマイルを投げかける。
「話すのが難しーんだってさ!」
『はぁ……』
それで、“今はまだ”なんて言ったのかな。
話し方とか、どこから話せば良いのかとか、分からないのかな?
あのツナさんが?
色々疑問なトコはあるけど、考えるのをやめた。
『分かりました。』
「柚子…」
『あたしは、山本さんを信じてます♪』
あの横暴集団を理解してる、唯一の非・横暴な方だもん。
その山本さんが、ここまで説明してくれた。
だから……
『どーせあたしが聞いたって話してくれませんよ、ツナさんは。だったら……待ちます。』
「…………そっか。」
言いながら山本さんは、ふっと柔らかい笑みを見せてくれた。
陽光に彩られて、屋敷内で見るよりも素敵に見えた。
---
------
-----------
「ただいまー♪」
『ただいま帰りましたー。』
「僕の柚子ーっ!お帰りなさい!!」
『きゃあああ!!』
バッと山本さんの後ろに隠れると、骸さんは急ブレーキをかける。
「山本君、少しどいてくれませんか?」
『ダメです山本さん!お願いですからこの状態を維持して下さい!!』
「お、おいおい…」
「僕は柚子に用があるんです!!」
『このままお聞きします!!』
山本さんの後ろから顔半分だけ覗かせる。
骸さんは仕方なさそうに話し始めた。
「実は…僕は飛行機に乗ると耳が痛くなるんです。ですから一緒に飴を買いに……」
『なんだ、今買いに行ってたんですよ。』
「な、何ですと!?」
『ねっ、山本さん!』
「ん?ああ!」
すると骸さんは、パアアッと顔を輝かせて。
「やはり柚子は僕の事をよく分かってくれてるんですね!!嬉しいです…僕は本当に嬉し」
『買いに行こうって誘ってくれたのは、山本さんですけど。』
「………じょ、冗談はやめて下さ」
『それに!元はと言えばランボ君達の為に買いに行ったんですけど。』
「そ、そんな……」
瞳を潤ませる骸さんに、あたしと山本さんは顔を見合わせ苦笑した。
「あ、お帰り山本。何袋買った?」
「10くらいだぜっ♪」
『ランボ君って、そんなに泣くんですか…?』
「まぁ、な……」
あ、困り顔のツナさん初めて見た。
レアかも。
「そーだ柚子、もう獄寺君が演奏室の鍵閉めるから、忘れ物無いか確認しとけよ。」
『あ、はいっ!』
もしかしたら、ボレロの楽譜置きっぱなしかも知れない!
そう思ったあたしは、急いで3階の演奏室までダッシュする。
「……山本、言っといてくれた?」
「ああ、何とかな。」
「そっか…ホントにありがとう。」
「礼なら、柚子に言った方がいんじゃねーか?」
その言葉に小首を傾げたツナに、山本は小さく告げた。
「“待ってる”……ってさ。」
ツナの目は、見開かれた。
そして、哀しそうに愛しそうに、柚子が駆け上がって行った階段を見つめた。
-------
『獄寺さーん!待って下さい!!』
「柚子!てめー楽譜置いたままにしてんじゃねぇよ!!」
『はうっ!すみませんっ!!』
マフィア
悪い人達じゃないのは知ってる。ただ、彼らは横暴なだけ。
continue…
昨日はあれからボーッとしながらもカーテンを洗い終え、帰って来た山本さんに掛け直してもらった。
『(ツナさん…何の事を言ってたんだろ……)』
気になっちゃって仕方ない。
いつか言うって、一体何を??
「おい、柚子。」
『あ、はいっ!』
「ボーッとしてんじゃねぇ。準備は出来たのか?」
『え?あ…すみません、まだです!』
朝食で使った食器を物凄いスローペースで洗っていたあたし。
リボーンさんは溜め息をつく。
「着るもんは心配すんな、俺とツナが特注で頼んどいたからな。」
『えぇ!?』
だってあたし、サイズとか言ってな……
「見りゃ分かる。」
『凄過ぎですよ!てか逆に嫌です、そのスキル!!』
「何か言ったか?」
『何でもございません…』
銃を向けるリボーンさんに謝り、話題を戻す。
『でも、パジャマとかは無いですよね?』
「何言ってんだ?柚子の着るもんは“全て”俺とツナが特注で頼んだって言ったじゃねーか。」
『て事はまさか……』
「ここに一着届くから、明日はそれ着て出かけるんだぞ。他は向こうに届くよう手配した。」
そーゆー配慮は他に使って下さいませぇぇぇ!!!
「うるせぇぞ、文句あるのか?」
『うっ……ありません…』
「じゃ、俺からはそれだけだ。」
ちゃお、と言ってリボーンさんはキッチンを後にしてしまった。
うん、不安なのはこっからだよ。
どんな服が来るかはもうこの際どーでもいい。
お2人は、骸さんと違って普通のセンスを持ってるって信じる。
けどさ……
「あ、いたいた。柚子、」
『つ、ツナさん……』
「何身構えてんだよ。そんな簡単に襲わねーっての。」
『さらっと何言ってんですかぁ!!///』
にやっと笑ったツナさんに、スポンジを投げる。
それはひょいっと避けられて、壁に泡が付いた。
「『あ。』」
「ったく…後で綺麗にしとけよ。」
『何で避けるんですか!』
「普通避けるだろ?柚子は当たりに行くか?」
『……いえ…』
「つーか、こんな事しに来たんじゃねんだよ。リボーンから聞いた?」
『お洋服の事ですか?でしたら先ほど。』
「それは良かった。はい、コレ。」
『え?』
差し出されたのは、レシートの束。
ご丁寧にホッチキスで留めてある。
「柚子もちな。」
『なっ……!!』
うん、こーゆー展開になると思ってた。
薄々感づいていたんですよ。
だけど、ね…
『だったらどーして特注にするんですかーーっ!!!』
ボンゴレへのあたしの借金増やしたいとか!?
そんな意地悪な理由があるんですか!?
「どーしてって…当然だろ?」
『へっ…?』
ツナさんが突然グッと距離を詰めて来て、あたしの髪が風圧で浮いた。
ポチャンと一滴、蛇口から水が垂れる音。
『つ、ツナさん…?』
「柚子は、俺の婚約者なんだから。」
いつもみたいに、掬い上げられる毛先。
その先端に唇を落として、ツナさんは続ける。
「俺の柚子に、他と同じドレスなんか着せるかよ。」
『なっ……あたしは…べ、別に……』
「勿論、今のジャージ姿でも可愛いけどさ。」
『だから!そーゆー台詞をホイホイ言うのやめて下さいっ!!///』
くるりと背を向け、食器洗い再開。
そしたらツナさんは、構わずあたしを抱きしめる。
『ちょっ……食器洗えないですってば!!』
「いーよ、別に。」
『まだあたし、イタリア行く準備してないんです!!』
「で?」
いや、「で?」って言われても……
『ですから、早く終わらせて準備しなくちゃ…』
「俺との時間より、そっちが大事?」
『家政婦やれって言ったのはツナさんです!それに、イタリア行くって言ったのもツナさんです!』
大体“俺との時間”って……!
あたしは別にツナさんの恋人でも何でも無いのに…!!
「ねぇ、」
『えっ…!?』
「あ。」
「お楽しみのところ悪いんだけど、」
そう言って、入り口付近の壁に寄りかかっていたのは……
「あぁ、雲雀さん。」
『た、楽しんでなんかいませんからーーっ!!!』
今のどこが楽しんでるように見えたんですか!?
少なくともあたしは嫌々オーラ出しまくってたのに!!
「うるさいよ柚子。」
『す、すみません…』
だって、だって雲雀さんがぁーっ…
「どうしたんですか?」
「これ、自家用ジェット離陸許可証。航空会社から今届いたよ。」
「ありがとうございます。」
「パイロットは向こうが用意してくれるって。」
「それは良かった、あのくらい積めば航空会社も動くんですね。」
「みたいだね。」
今、自家用ジェットって…おっしゃいました?
何なんでしょうか、この人達。
普通に飛行機の時間調べてチケット取ればいいじゃないですか。
もっと節約の精神というものを……
「何か言ってる?」
『いえ何も!!』
大人しく食器を洗うあたし。
離陸許可証のおかげで、ツナさんは腕を解いてくれたから、もう自由の身。
「じゃあメンバー確認と、楽器もちゃんと用意しとかないといけませんね。」
「ここにある楽器はいいとして、他のがまだだよ。」
「バイオリンをもう1つに…シンバルとファゴットか。」
『え?他の方も一緒なんですか??』
「全員柚子と面識あるから大丈夫。」
『はぁ……』
ボレロの為のメンバーは、どうやら7号館とヴァリアーさんだけじゃないらしい。
誰なんだろう……
少しワクワクしながらも、食器洗いを終わらせた。
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『えーっと、着るもの以外だから……あとは何を持てば良いんだろ。』
部屋の中を見回してみるけど、あとは愛用のフルートを入れるだけで良さそうだ。
7号館の掃除は昨日からちまちまやって終わらせたし、もう出発を待つばかり。
『あ、授業さぼる事になるのかなぁ……』
「それは大丈夫みたいだぜ!」
『山本さんっ!』
「よっ、準備終わったか?柚子。」
『はい!』
山本さん曰く、ツナさんの強大な圧力により、欠席扱いされないらしい。
ボンゴレって……ホントに恐ろしいです。
『ところで山本さん、何か用事があったんじゃ…』
「ん?ああ、そーだった!柚子、買い物行こうぜっ!」
『へっ?』
きょとん、というか……
正直キュンと来ました!!
山本さんがわざわざあたしの部屋まで来て下さって、しかも一緒に買い物に…!?
う、嬉しすぎる!!
「明日は長ぇフライトだからさ、飴とかいるんじゃねーかって。」
『飴?どなたか耳が痛くなっちゃう人、いるんですか??』
「あぁ実は…ランボが結構泣くんだよな。」
アレは参るぜ、と苦笑する山本さん。
え?ランボ君…??
『まさか一緒にボレロを…!?』
「そーみたいだぜっ!ランボとイーピン、それにフゥ太もな!」
『フゥ太君もですか!』
それでツナさん、あたしも面識ある人だって……
「あ、もしかして柚子、今忙しかったりするか?」
『いえいえいえ!!ヒマMAXですよ!行きましょう、買い物!』
「そりゃ良かった!」
というワケで!
山本さんとお買い物です~~~♪
いつも骸さんと買い出しに出てるけど、やっぱり山本さんだと何か違うな~♪
爽やかなんだよね、全体的に。
骸さんは……うん、ノーコメントで。
「柚子さ、」
『え?』
「こないだ何か言われたんだって?」
不意に、山本さんが切り出した話題。
初めは意味が分からなくて、ただグルグル考えていた。
『ま、まさか……ツナさんが言ってたあの…』
「それそれ。ツナがこぼしてたんだ、“堪えきれなくて言っちまった”ってな。」
『堪えきれなくて…?』
あたしには、何も分からない。
ツナさんがあの時、何を我慢してたのか。
どうしていきなり、あんな事を言ったのか。
『山本さんは、ご存知なんですか!?その……ツナさんが“いつか言う”って言ってた内容…』
「………さぁな。」
『え…』
初めてだった。
山本さんが、ぼやかしたのは。
いつも明るくて、爽やかで、白黒ハッキリな山本さんが、
曖昧な返事をした。
その事にただ、あたしの思考回路はフリーズしてしまった。
しばらくの沈黙の後、山本さんは言う。
「俺が言える事じゃねーんだ、悪ぃ。」
『どうしてですか…?』
「俺も、聞いただけだからさ。」
真直ぐ前を見ながら、山本さんは遠い昔を思い出すように話す。
『どっ、どんな事なんですか!?どーゆージャンルですか!?』
「ジャンル?そーだなー……割と暗いかもな。」
『暗いん、ですか……』
「けど、明るいぜ。」
『そ、それって真逆じゃないですかぁ…』
よく分からないまま脱力するあたしの頭に、山本さんはいつもみたいに手を乗せて。
「あぁ、真逆なんだ。」
『え?』
「暗くて明るくて、真っ暗で眩しい………ツナが言いたいのは、そーゆー話だ。だから、」
くしゃっと髪を撫でながら、山本さんは爽やかスマイルを投げかける。
「話すのが難しーんだってさ!」
『はぁ……』
それで、“今はまだ”なんて言ったのかな。
話し方とか、どこから話せば良いのかとか、分からないのかな?
あのツナさんが?
色々疑問なトコはあるけど、考えるのをやめた。
『分かりました。』
「柚子…」
『あたしは、山本さんを信じてます♪』
あの横暴集団を理解してる、唯一の非・横暴な方だもん。
その山本さんが、ここまで説明してくれた。
だから……
『どーせあたしが聞いたって話してくれませんよ、ツナさんは。だったら……待ちます。』
「…………そっか。」
言いながら山本さんは、ふっと柔らかい笑みを見せてくれた。
陽光に彩られて、屋敷内で見るよりも素敵に見えた。
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「ただいまー♪」
『ただいま帰りましたー。』
「僕の柚子ーっ!お帰りなさい!!」
『きゃあああ!!』
バッと山本さんの後ろに隠れると、骸さんは急ブレーキをかける。
「山本君、少しどいてくれませんか?」
『ダメです山本さん!お願いですからこの状態を維持して下さい!!』
「お、おいおい…」
「僕は柚子に用があるんです!!」
『このままお聞きします!!』
山本さんの後ろから顔半分だけ覗かせる。
骸さんは仕方なさそうに話し始めた。
「実は…僕は飛行機に乗ると耳が痛くなるんです。ですから一緒に飴を買いに……」
『なんだ、今買いに行ってたんですよ。』
「な、何ですと!?」
『ねっ、山本さん!』
「ん?ああ!」
すると骸さんは、パアアッと顔を輝かせて。
「やはり柚子は僕の事をよく分かってくれてるんですね!!嬉しいです…僕は本当に嬉し」
『買いに行こうって誘ってくれたのは、山本さんですけど。』
「………じょ、冗談はやめて下さ」
『それに!元はと言えばランボ君達の為に買いに行ったんですけど。』
「そ、そんな……」
瞳を潤ませる骸さんに、あたしと山本さんは顔を見合わせ苦笑した。
「あ、お帰り山本。何袋買った?」
「10くらいだぜっ♪」
『ランボ君って、そんなに泣くんですか…?』
「まぁ、な……」
あ、困り顔のツナさん初めて見た。
レアかも。
「そーだ柚子、もう獄寺君が演奏室の鍵閉めるから、忘れ物無いか確認しとけよ。」
『あ、はいっ!』
もしかしたら、ボレロの楽譜置きっぱなしかも知れない!
そう思ったあたしは、急いで3階の演奏室までダッシュする。
「……山本、言っといてくれた?」
「ああ、何とかな。」
「そっか…ホントにありがとう。」
「礼なら、柚子に言った方がいんじゃねーか?」
その言葉に小首を傾げたツナに、山本は小さく告げた。
「“待ってる”……ってさ。」
ツナの目は、見開かれた。
そして、哀しそうに愛しそうに、柚子が駆け上がって行った階段を見つめた。
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『獄寺さーん!待って下さい!!』
「柚子!てめー楽譜置いたままにしてんじゃねぇよ!!」
『はうっ!すみませんっ!!』
マフィア
悪い人達じゃないのは知ってる。ただ、彼らは横暴なだけ。
continue…