🎼本編
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『鶏肉買った、にんじん買った……』
こんにちは!柚子です。
只今夕飯の為の買い出し中です。
今日はチキンカレーにしようと思ってます♪
『よしっ!』
エコバックの中身を確認し終わったあたし。
ふと、背中をツンとつつかれる。
『ん?』
「ガハハ!柚子発見だもんね!!」
『ら、ランボ君っ!』
「俺っち、柚子にコレあげる!」
『えっ?』
差し出された拳に首を傾げると、「はーやーくー!」と急かすランボ君。
しょうがないから拳の下に手の平を出す。
「はい!ランボさんに感謝しろーっ!!」
『あ、ありがとう……』
「ガハハハハ!!」
『あのっ、コレ何っ……………行っちゃった…』
この近くに住んでるんだろうか。
まぁ、商店街は街のほぼ中心だからいても不思議じゃないけどさ。
にしても…
『どーしよ…』
手の平に置かれたのは、20個入りとかで売ってそうな四角いチョコ1つ。
個別包装されてて良かったけどさ、何でまた突然くれたんだろう…?
『ま、いっか。』
とりあえず早く帰ろうと思い、あたしは7号館へと急いだ。
---
-----
------------
『よし、一段落かな。』
夕飯の仕込みを終えて時計を見ると、5時ちょっと過ぎだった。
今日は皆さん帰りが遅めだなー…
そー言えば、何か重要な会議があるとか無いとか。
何だか暇になってしまったあたし。
お掃除だって、今日は雲雀さんのお部屋やったし、
お洗濯は皆さんが帰って来てからまとめてやりたいし、
夕飯の準備出来ちゃったし………
『そーだ!』
裏口の掃き掃除でもしようっと♪
そうと決めたらエプロンを取りに自室へ向かう。
ふと、鏡台の上に置いた、ランボ君からのお菓子が目に留まった。
う~~~ん…
ちょっと甘いもの控えてるんだけどなー…
『半分だけっ!』
自分に言い聞かせて、あたしは半分だけかじった。
あ、中にコーヒーヌガー入ってる…!
美味しい~っ♪
それを口の中でゆっくり溶かしながら、裏口に向かった。
『ふんふふ~ん♪』
久々のスイーツにちょっとだけご機嫌になりながら、箒を滑らせる。
鼻歌なんて歌い始め、ツナさんが今帰って来ませんように…なんて思う。
どーせ「柚子うるさい」とか言われちゃうから。
ところが、異変は突如起こった。
フラッ、
『わっ…と、』
急に頭が重くなって、ふらつく。
何とか足で持ちこたえたものの、視界がぼやける。
『あ……れ………?』
箒が……伸びてる?
天井が……高くなってる?
廊下が……長くなってる?
玄関が……広くなってく……?
……違う。
あたしが、おかしいの…?
変な感覚に襲われて、混乱して来たその時。
ガチャ、
「ただいま…」
聞き慣れた声に、あたしは振り向いた。
『おかえりなさ………えぇ!?』
振り向いたままのポーズで固まる。
だって、明らかにおかしかった。
『あれ…?雲雀さん、ですよね??』
「……君、誰。」
『え!?あ、あたしです!柚子です!!』
「柚子…?」
疑念満々で眉間に皺を寄せる雲雀さん。
でも、あたしだって疑念満々だ。
だって……
『(雲雀さん、こんなに背高かったっけ…?)』
もしかして、
もしかしするとあたし……
「ホントに、柚子?」
『あの、そうなんですけど……でも…』
「でも、何。」
何て摩訶不思議な出来事。
あたしはどうやら……
『ち、縮んじゃったみたいです……』
「…………ふざけてるの?」
『いや!ホントです!!何かよく分からないけど突然箒が伸び始めて…』
自分がどんだけ電波なこと言ってるかなんて、承知の上。
だけどホントに言い表せなくて。
『雲雀さ~~~ん……信じてくださ~~い……』
「…もし柚子なら、今日は僕の部屋を掃除したよね。」
『はい!しました!!』
「何か配置を変えた物があるなら、今ココで言いなよ。僕が確認して合致してたら話を聞く。」
『配置、ですか……』
雲雀さんの部屋は、いつも自分で整頓してるのか、基本的に何も動かさない。
あ、でも!
今日は何かあったな……
『エサ箱です!トリさんのエサ箱がベッドの上に置きっ放しだったので、近くの棚の上から2段目、左端にしまっておきました!!』
「ふぅん…」
雲雀さんは聞き終わると、あたしの手を引いた。
「来なよ。」
『は、はいっ!』
スタスタ歩く雲雀さん。
ちょっと待って、あたし今ちっちゃいんだから……
コケッ、
グイッ、
「何も無いでしょ、どうして躓くの。」
『だって…雲雀さん歩くの早いんですもんっ!』
「………はぁ。」
あ、溜め息つかれた。
と思ったら……
ひょい、
『え?』
突然足が地面から離れて吃驚。
更に、
雲雀さんの顔が急に近くなって吃驚!!!
『ひ、雲雀さんっ!?///』
「うるさい。」
いやいやいや、うるさくもなりますって!
だってだって、だって……
『(だっこされてるーーー!!!///)』
「5歳、ってトコかな。」
『な、何がでしょう…?』
「君が。重さ的に。」
『さ、左様ですか……』
何でもいいけど近い!!
ちょっともう、心臓破裂しちゃいそうですっ…!!
ギュッと目を瞑りながら抱きかかえられ、雲雀さんの部屋の前に着いた。
「エサ箱……」
『あ、ありますよね?』
無かったらヤバいからね。
「あぁ、あった。」
『(良かったーーー!)』
ホッと一息ついたら、雲雀さんはあたしの前にしゃがんだ。
「じゃあ、ホントに柚子なの。」
『はいっ!』
「何で5歳児になってるの。」
『それが分かったら苦労しません…』
だって今日も、普通に家政婦ライフ送ってただけなのに……
ん?
『あ!アレかもしれません!』
「どれ。」
『ランボ君に貰ったチョコです!』
雲雀さんが見せろって言うから、あたしは部屋からソレをダッシュで取って来た。
「あぁ、コレ…」
『ご存知なんですかっ!?』
「ボヴィーノが開発した“5歳チョコ”だよ。そっか、半分食べたから外見だけ5歳になったんだ。」
『えぇー!?』
ランボ君てば、どーしてそんな物を…(泣)
「効き目は12時間弱だから、問題ないよ。いずれ戻る。」
『い、いずれって…じゃあ今日の夕飯作れないじゃないですか!あとお洗濯も……』
あ。
洗濯で思い出した。
『雲雀さん、どうしてお一人で帰って来られたんですか?他の方は…』
「まだ会議してるよ、多分。僕はあれ以上群れたくなかったからね。」
あー、納得。
でもホントにコレからどーしよ。
だってあたし、このままじゃ………
「ねぇ柚子、」
『あ、はい!』
呼び掛けられて見上げると、雲雀さんはまたあたしを抱え上げた。
『わっ…///』
「とりあえず、広間行くよ。」
『あ、あの!でしたら自分で歩きま…』
「柚子、歩くの遅いでしょ。」
うぅ……
でもだっこは心臓にかなーり悪いです。
『あの、雲雀さん…』
「何。」
『処方箋、的な物は無いんですか?』
「知らない。」
『そんなぁ……』
しょぼーんとすると、ちょうど大広間に着いて、床に下ろされる。
ドアを開けながら、雲雀さんは言った。
「まぁいいんじゃない、そのままで。」
『よ、良くないですよ!!家政婦の仕事何一つ出来ないまんまで………』
「構わないよ。」
『わわっ!』
反論してる途中に手を引かれ、ソファに座らされる。
雲雀さんも隣にトスッと腰掛けた。
つか今、構わないって……
構わないワケないじゃんかーーー!!
あの横暴ボスが何ておっしゃるか、考えただけで恐ろしい!!
「うるさい。」
『ふぎゅっ……!』
心の叫びが聞こえたのか、雲雀さんはあたしの両頬を手の平で抑える。
少しひんやりした感触が、余計に心臓を跳ねさせて。
『ひゃ、ひゃなひてくらしゃい~っ!』
(は、放して下さい~っ!)
「大人しくしてなよ。」
『ひゃい!』
(はい!)
素直に返事をすると、解放してくれた。
そして、雲雀さんはゴソッとポケットを漁る。
『どしたんですか?』
「アレ。」
『……どれでしょう?』
首を傾げるあたしに、雲雀さんは差し出した。
「いつものだよ。」
『あっ……笛ラムネ!下さるんですか!?』
「僕は食べないからね。」
『ありがとーございますっ♪』
何だかんだで優しいなぁ♪
コレがあたしの好物だって事、覚えててくれてるんだもん。
ピューッ♪
『ふふふっ、』
その音を楽しんでると、頭の上に何か乗った。
『ほえ?』
見ると、それは雲雀さんの手の平で。
ゆっくりゆっくり、撫で撫でされる。
『ひ、雲雀さんっ?///』
「大人しく食べてなよ。」
『は、はい…』
そんな事を言われても、どうしようもなく気になって。
それ以上に、どうしようもなくドキドキしてしまって。
あたしったら、不謹慎。
雲雀さんが余りにも美人さんだから?
いつも素っ気ないのに優しくしてくれるから?
それとも……
何だか、雲雀さんが微笑んでるように見えるから……?
ガチャ、
「ただいまー。」
不意に、ツナさんの声が聞こえる。
『あ、お帰りなさーいっ!』
いつものクセで、玄関まで走って行こうとする。
と、雲雀さんが腕を掴んで。
「おいで、柚子。」
『えっ…?///』
返事を聞かないうちに、雲雀さんはあたしを引き寄せ抱え上げる。
玄関まで運んでくれてる、のかな…///
にしても、雲雀さんは美人さんだから、やっぱり心臓に悪い。
赤くなるのを必死に抑えながら玄関まで行くと……
「あぁ雲雀さん、先に帰ってたんですk………!??」
ツナさんがフリーズした。
『つ、ツナさん…?』
「柚子、下ろすよ。」
『あ、はい!ありがとうございますっ。』
恥ずかしかったけど、という言葉は何とか飲み込んだ。
そして、ツナさんの方を向く。
『あのですね、何からお話すればいいか分からないんですけど…とりあえず今夕食の準備が半分ほど残っておりまして、どうすればいいやら……』
「柚子、」
『あ、はいっ!』
“縮んだせいで、家政婦のお仕事が出来ません”
そう伝えようとしたら、ツナさんはビシッと遮って、あたしを抱え上げた。
『つ、ツナさんっ!?///』
だからだっこされると顔が近いから無駄に緊張しちゃうんだってばーーー!!
「っつー事は、雲雀さんにもだっこされ続けてたって事?」
『(聞こえてた!!)』
「当たり前。」
『だって…あたしが歩くの遅くて雲雀さんに追いつけなくて……そしたら持ち上げられて…』
ツナさんの部屋にて、ベッドに座らされた。
いつもより小さい膝を抱え込んで、ツナさんの不機嫌度を窺う。
『つ、ツナさ…』
「柚子は、ガード緩すぎんだよ。」
『ガード、ですか?そんな雲雀さんの攻撃防ぐとか無理に決まってんじゃないですか!!』
拳を握って反論すると、ツナさんはその拳をキュッと包み込むように握った。
あ……手、大きい…
「バカ柚子。」
『きゅ、急に何なんですか!』
「5歳チョコなんてどーやって手に入れたんだよ。」
『ランボ君に商店街で会いまして…その時に。』
「はぁ……あっそ。」
ため息をつきながらネクタイだけ外すツナさん。
『そ言えば今日、会議でしたよね?お疲れ様です。』
「あーホント疲れた。もうしんどくてヤバい。ったく、帰ったら柚子の夕飯食えると思ってたのに、何か変なモン食ってるし。」
え?
今とんでもなく目玉が落ちるような台詞を聞いたような……
『ごめん、なさい……』
「柚子?」
疑問符を浮かべるツナさんの前で、
あたしは顔を両手で覆った。
泣いてるんじゃなくて、
落ち込んでるんじゃなくて、
ただ……
---「帰ったら柚子の夕飯食えると思ってたのに、」
あぁ、ダメだ。
また振り回される。
自分でも驚くくらい、嬉し過ぎて。
「どしたんだよ、柚子。」
ポン、と乗った優しい手は、雲雀さんのソレにも似てて。
余計に、顔が熱くなった。
『ツナさん、』
「何だよ。」
『あたしの作った料理って…美味しいんですか?』
顔を隠したまま尋ねると、手の平は離れて、ツナさんが背を向けたのが分かった。
でも、返って来たのは最高級の言葉。
「………マズいワケないだろ、バカ柚子。」
今日見た優しい仕草、
貰った優しい言葉、
全部全部夢じゃなければ良いのに。
あたしが5歳の姿だから同情されたとか、
そんな理由じゃなければ良いのに。
ツナさんの背中を見ながら、
そんな乙女チックな事を考えてしまった。
ヌガー
期待なんてしちゃいけない、だってあたしは家政婦だもの。
continue...
こんにちは!柚子です。
只今夕飯の為の買い出し中です。
今日はチキンカレーにしようと思ってます♪
『よしっ!』
エコバックの中身を確認し終わったあたし。
ふと、背中をツンとつつかれる。
『ん?』
「ガハハ!柚子発見だもんね!!」
『ら、ランボ君っ!』
「俺っち、柚子にコレあげる!」
『えっ?』
差し出された拳に首を傾げると、「はーやーくー!」と急かすランボ君。
しょうがないから拳の下に手の平を出す。
「はい!ランボさんに感謝しろーっ!!」
『あ、ありがとう……』
「ガハハハハ!!」
『あのっ、コレ何っ……………行っちゃった…』
この近くに住んでるんだろうか。
まぁ、商店街は街のほぼ中心だからいても不思議じゃないけどさ。
にしても…
『どーしよ…』
手の平に置かれたのは、20個入りとかで売ってそうな四角いチョコ1つ。
個別包装されてて良かったけどさ、何でまた突然くれたんだろう…?
『ま、いっか。』
とりあえず早く帰ろうと思い、あたしは7号館へと急いだ。
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『よし、一段落かな。』
夕飯の仕込みを終えて時計を見ると、5時ちょっと過ぎだった。
今日は皆さん帰りが遅めだなー…
そー言えば、何か重要な会議があるとか無いとか。
何だか暇になってしまったあたし。
お掃除だって、今日は雲雀さんのお部屋やったし、
お洗濯は皆さんが帰って来てからまとめてやりたいし、
夕飯の準備出来ちゃったし………
『そーだ!』
裏口の掃き掃除でもしようっと♪
そうと決めたらエプロンを取りに自室へ向かう。
ふと、鏡台の上に置いた、ランボ君からのお菓子が目に留まった。
う~~~ん…
ちょっと甘いもの控えてるんだけどなー…
『半分だけっ!』
自分に言い聞かせて、あたしは半分だけかじった。
あ、中にコーヒーヌガー入ってる…!
美味しい~っ♪
それを口の中でゆっくり溶かしながら、裏口に向かった。
『ふんふふ~ん♪』
久々のスイーツにちょっとだけご機嫌になりながら、箒を滑らせる。
鼻歌なんて歌い始め、ツナさんが今帰って来ませんように…なんて思う。
どーせ「柚子うるさい」とか言われちゃうから。
ところが、異変は突如起こった。
フラッ、
『わっ…と、』
急に頭が重くなって、ふらつく。
何とか足で持ちこたえたものの、視界がぼやける。
『あ……れ………?』
箒が……伸びてる?
天井が……高くなってる?
廊下が……長くなってる?
玄関が……広くなってく……?
……違う。
あたしが、おかしいの…?
変な感覚に襲われて、混乱して来たその時。
ガチャ、
「ただいま…」
聞き慣れた声に、あたしは振り向いた。
『おかえりなさ………えぇ!?』
振り向いたままのポーズで固まる。
だって、明らかにおかしかった。
『あれ…?雲雀さん、ですよね??』
「……君、誰。」
『え!?あ、あたしです!柚子です!!』
「柚子…?」
疑念満々で眉間に皺を寄せる雲雀さん。
でも、あたしだって疑念満々だ。
だって……
『(雲雀さん、こんなに背高かったっけ…?)』
もしかして、
もしかしするとあたし……
「ホントに、柚子?」
『あの、そうなんですけど……でも…』
「でも、何。」
何て摩訶不思議な出来事。
あたしはどうやら……
『ち、縮んじゃったみたいです……』
「…………ふざけてるの?」
『いや!ホントです!!何かよく分からないけど突然箒が伸び始めて…』
自分がどんだけ電波なこと言ってるかなんて、承知の上。
だけどホントに言い表せなくて。
『雲雀さ~~~ん……信じてくださ~~い……』
「…もし柚子なら、今日は僕の部屋を掃除したよね。」
『はい!しました!!』
「何か配置を変えた物があるなら、今ココで言いなよ。僕が確認して合致してたら話を聞く。」
『配置、ですか……』
雲雀さんの部屋は、いつも自分で整頓してるのか、基本的に何も動かさない。
あ、でも!
今日は何かあったな……
『エサ箱です!トリさんのエサ箱がベッドの上に置きっ放しだったので、近くの棚の上から2段目、左端にしまっておきました!!』
「ふぅん…」
雲雀さんは聞き終わると、あたしの手を引いた。
「来なよ。」
『は、はいっ!』
スタスタ歩く雲雀さん。
ちょっと待って、あたし今ちっちゃいんだから……
コケッ、
グイッ、
「何も無いでしょ、どうして躓くの。」
『だって…雲雀さん歩くの早いんですもんっ!』
「………はぁ。」
あ、溜め息つかれた。
と思ったら……
ひょい、
『え?』
突然足が地面から離れて吃驚。
更に、
雲雀さんの顔が急に近くなって吃驚!!!
『ひ、雲雀さんっ!?///』
「うるさい。」
いやいやいや、うるさくもなりますって!
だってだって、だって……
『(だっこされてるーーー!!!///)』
「5歳、ってトコかな。」
『な、何がでしょう…?』
「君が。重さ的に。」
『さ、左様ですか……』
何でもいいけど近い!!
ちょっともう、心臓破裂しちゃいそうですっ…!!
ギュッと目を瞑りながら抱きかかえられ、雲雀さんの部屋の前に着いた。
「エサ箱……」
『あ、ありますよね?』
無かったらヤバいからね。
「あぁ、あった。」
『(良かったーーー!)』
ホッと一息ついたら、雲雀さんはあたしの前にしゃがんだ。
「じゃあ、ホントに柚子なの。」
『はいっ!』
「何で5歳児になってるの。」
『それが分かったら苦労しません…』
だって今日も、普通に家政婦ライフ送ってただけなのに……
ん?
『あ!アレかもしれません!』
「どれ。」
『ランボ君に貰ったチョコです!』
雲雀さんが見せろって言うから、あたしは部屋からソレをダッシュで取って来た。
「あぁ、コレ…」
『ご存知なんですかっ!?』
「ボヴィーノが開発した“5歳チョコ”だよ。そっか、半分食べたから外見だけ5歳になったんだ。」
『えぇー!?』
ランボ君てば、どーしてそんな物を…(泣)
「効き目は12時間弱だから、問題ないよ。いずれ戻る。」
『い、いずれって…じゃあ今日の夕飯作れないじゃないですか!あとお洗濯も……』
あ。
洗濯で思い出した。
『雲雀さん、どうしてお一人で帰って来られたんですか?他の方は…』
「まだ会議してるよ、多分。僕はあれ以上群れたくなかったからね。」
あー、納得。
でもホントにコレからどーしよ。
だってあたし、このままじゃ………
「ねぇ柚子、」
『あ、はい!』
呼び掛けられて見上げると、雲雀さんはまたあたしを抱え上げた。
『わっ…///』
「とりあえず、広間行くよ。」
『あ、あの!でしたら自分で歩きま…』
「柚子、歩くの遅いでしょ。」
うぅ……
でもだっこは心臓にかなーり悪いです。
『あの、雲雀さん…』
「何。」
『処方箋、的な物は無いんですか?』
「知らない。」
『そんなぁ……』
しょぼーんとすると、ちょうど大広間に着いて、床に下ろされる。
ドアを開けながら、雲雀さんは言った。
「まぁいいんじゃない、そのままで。」
『よ、良くないですよ!!家政婦の仕事何一つ出来ないまんまで………』
「構わないよ。」
『わわっ!』
反論してる途中に手を引かれ、ソファに座らされる。
雲雀さんも隣にトスッと腰掛けた。
つか今、構わないって……
構わないワケないじゃんかーーー!!
あの横暴ボスが何ておっしゃるか、考えただけで恐ろしい!!
「うるさい。」
『ふぎゅっ……!』
心の叫びが聞こえたのか、雲雀さんはあたしの両頬を手の平で抑える。
少しひんやりした感触が、余計に心臓を跳ねさせて。
『ひゃ、ひゃなひてくらしゃい~っ!』
(は、放して下さい~っ!)
「大人しくしてなよ。」
『ひゃい!』
(はい!)
素直に返事をすると、解放してくれた。
そして、雲雀さんはゴソッとポケットを漁る。
『どしたんですか?』
「アレ。」
『……どれでしょう?』
首を傾げるあたしに、雲雀さんは差し出した。
「いつものだよ。」
『あっ……笛ラムネ!下さるんですか!?』
「僕は食べないからね。」
『ありがとーございますっ♪』
何だかんだで優しいなぁ♪
コレがあたしの好物だって事、覚えててくれてるんだもん。
ピューッ♪
『ふふふっ、』
その音を楽しんでると、頭の上に何か乗った。
『ほえ?』
見ると、それは雲雀さんの手の平で。
ゆっくりゆっくり、撫で撫でされる。
『ひ、雲雀さんっ?///』
「大人しく食べてなよ。」
『は、はい…』
そんな事を言われても、どうしようもなく気になって。
それ以上に、どうしようもなくドキドキしてしまって。
あたしったら、不謹慎。
雲雀さんが余りにも美人さんだから?
いつも素っ気ないのに優しくしてくれるから?
それとも……
何だか、雲雀さんが微笑んでるように見えるから……?
ガチャ、
「ただいまー。」
不意に、ツナさんの声が聞こえる。
『あ、お帰りなさーいっ!』
いつものクセで、玄関まで走って行こうとする。
と、雲雀さんが腕を掴んで。
「おいで、柚子。」
『えっ…?///』
返事を聞かないうちに、雲雀さんはあたしを引き寄せ抱え上げる。
玄関まで運んでくれてる、のかな…///
にしても、雲雀さんは美人さんだから、やっぱり心臓に悪い。
赤くなるのを必死に抑えながら玄関まで行くと……
「あぁ雲雀さん、先に帰ってたんですk………!??」
ツナさんがフリーズした。
『つ、ツナさん…?』
「柚子、下ろすよ。」
『あ、はい!ありがとうございますっ。』
恥ずかしかったけど、という言葉は何とか飲み込んだ。
そして、ツナさんの方を向く。
『あのですね、何からお話すればいいか分からないんですけど…とりあえず今夕食の準備が半分ほど残っておりまして、どうすればいいやら……』
「柚子、」
『あ、はいっ!』
“縮んだせいで、家政婦のお仕事が出来ません”
そう伝えようとしたら、ツナさんはビシッと遮って、あたしを抱え上げた。
『つ、ツナさんっ!?///』
だからだっこされると顔が近いから無駄に緊張しちゃうんだってばーーー!!
「っつー事は、雲雀さんにもだっこされ続けてたって事?」
『(聞こえてた!!)』
「当たり前。」
『だって…あたしが歩くの遅くて雲雀さんに追いつけなくて……そしたら持ち上げられて…』
ツナさんの部屋にて、ベッドに座らされた。
いつもより小さい膝を抱え込んで、ツナさんの不機嫌度を窺う。
『つ、ツナさ…』
「柚子は、ガード緩すぎんだよ。」
『ガード、ですか?そんな雲雀さんの攻撃防ぐとか無理に決まってんじゃないですか!!』
拳を握って反論すると、ツナさんはその拳をキュッと包み込むように握った。
あ……手、大きい…
「バカ柚子。」
『きゅ、急に何なんですか!』
「5歳チョコなんてどーやって手に入れたんだよ。」
『ランボ君に商店街で会いまして…その時に。』
「はぁ……あっそ。」
ため息をつきながらネクタイだけ外すツナさん。
『そ言えば今日、会議でしたよね?お疲れ様です。』
「あーホント疲れた。もうしんどくてヤバい。ったく、帰ったら柚子の夕飯食えると思ってたのに、何か変なモン食ってるし。」
え?
今とんでもなく目玉が落ちるような台詞を聞いたような……
『ごめん、なさい……』
「柚子?」
疑問符を浮かべるツナさんの前で、
あたしは顔を両手で覆った。
泣いてるんじゃなくて、
落ち込んでるんじゃなくて、
ただ……
---「帰ったら柚子の夕飯食えると思ってたのに、」
あぁ、ダメだ。
また振り回される。
自分でも驚くくらい、嬉し過ぎて。
「どしたんだよ、柚子。」
ポン、と乗った優しい手は、雲雀さんのソレにも似てて。
余計に、顔が熱くなった。
『ツナさん、』
「何だよ。」
『あたしの作った料理って…美味しいんですか?』
顔を隠したまま尋ねると、手の平は離れて、ツナさんが背を向けたのが分かった。
でも、返って来たのは最高級の言葉。
「………マズいワケないだろ、バカ柚子。」
今日見た優しい仕草、
貰った優しい言葉、
全部全部夢じゃなければ良いのに。
あたしが5歳の姿だから同情されたとか、
そんな理由じゃなければ良いのに。
ツナさんの背中を見ながら、
そんな乙女チックな事を考えてしまった。
ヌガー
期待なんてしちゃいけない、だってあたしは家政婦だもの。
continue...