🎼本編
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「おや、起きてたようだね。着いたよ、降りな。」
手は縛られたまま、足のロープだけ外されて、あたしは車を降りた。
『(おっきーい……やっぱマフィアって凄いんだなぁ。)』
あたしの心は、相変わらず場違いな感想を持つ。
ふと見ると、運転していた男の人は20番目に演奏していた人で。
あたし、この人の演奏は正直ちょっとどーかな……って思ってたんだよなー。
まさか潜入マフィアだったなんて。
まぁ…割と納得だけど。
「ココに居ろ。」
見張りの人が1人ついて、あたしは奥にある一室に閉じ込められた。
外側から鍵がかけられて、あたしは手を後ろで縛られたまま、見張りの人と2人きり。
『(退屈ー…)』
何でかとっても落ち着いていて、
気になったのは演奏者控え室に置きっ放しのフルートの事で、
あたしの頭はやっぱり場違いだなぁ、なんて思った。
---
-----
------------
「恐らくカルカッサの仕業だな。どーだ獄寺、ヒットしたか?」
駐車場のリムジンに戻ったツナ達。
備え付きのパソコンを操る獄寺は、リボーンの問いに「もう少しです」と。
「ったく…何で柚子がっ……!直接俺の方に来ればいーじゃねーかっ…」
「ツナ、落ち着けって。向こうだってそう簡単に柚子を傷つけたりしねーと思うぜ?」
眉間に皺を寄せっ放しのツナを、山本が宥める。
「出ました10代目!!リボーンさんの勘の通り、犯人はカルカッサの一味です!!」
「カルカッサ…」
「つっても、本拠イタリアにいるボスは先日、他のマフィアとの抗争で療養中……今回のは日本支部の下っ端による独断である可能性が高いかと…」
「そっか、ありがと獄寺君。」
「で、日本支部は何処だ?この近くにあんのか?」
リボーンの問いかけに、獄寺は頷く。
「並盛キャンパス5号館からおよそ3キロの地点です。このコンクール会場からもそう遠くありません。」
「では、すぐにでも柚子を奪還出来る、という事ですね。」
「んじゃ、早い方がいーんじゃね?」
「そーだな、車出すぞ。」
リボーンがエンジンをかけ、アクセルを踏む。
ハルは助手席で、控え室から取って来た柚子の荷物を抱えながら、必死に無事を祈っていた。
「柚子ちゃん……」
「この車は目立つな……裏道通るからしっかり捕まっとけよ。」
「はひっ!?」
ギュルン、と勢い良く曲がり、小道に入るリムジン。
リボーンの運転に、ハルだけが慌てる。
「で、デンジャラスです~~~っ!!!」
「ハル、大丈夫だから。」
「そーだぜ!小僧はこーゆーのすんげー上手いからなっ♪」
「山本、小僧って言うなって言ってんだろーが。」
「ハハッ、わりーわりー。」
苦笑する山本の隣で、骸は口元を抑える。
「少々…つらいですね…。」
「吐くつもり?吐いたら咬み殺すから。」
「何度乗っても…君の運転には適いませんよ、アルコバレーノ………」
「どーでもいーけど、ホントに吐いたら咬み殺すからね。」
「クフフ…大丈夫ですよ、多分。」
「気絶しといた方がいいんじゃない?」
雲雀にトンファーを向けられる骸。
しかしリボーンが運転席から制止する。
「雲雀やめとけ、そのままの方が面白れーからな。骸、もうちょっと我慢しろ。」
リボーンの危険な運転は終わり、真直ぐの裏道を行くリムジン。
ようやく落ち着いたハルが、ポツリと呟く。
「柚子ちゃん、大丈夫でしょーか……」
「大丈夫だろ。」
リボーンが軽く流すも、ハルはケースに入った柚子のフルートをギュッと握って。
「だって柚子ちゃん…きっと怖がってると思いますっ……急に誘拐だなんて…」
「大丈夫なんじゃない?」
ハルの言葉を遮ったのは、雲雀だった。
「柚子の精神力は相当だからね。」
「だな♪気の強さだけは一人前ってか?」
「いえいえ、3人前くらいありそうですよ?」
カルカッサ日本支部の近くにある、大型地下駐車場に入ったツナ達のリムジン。
そのまま車の中で、作戦会議を始める。
「分担言うから聞いてくれ。」
リムジンの中、皆の視線がツナに集まる。
「大事にはしたくないから、内側に潜り込んでから叩いていこうと思う。」
「けど10代目、カルカッサのアジトには正面玄関以外の出口は無いっスよ?」
獄寺はパソコンのディスプレイにカルカッサのアジトの全面図を出す。
「うん、だから正面突破する。骸、ココから幻覚で俺達の姿を不在のカルカッサメンパーに仕立て上げて欲しいんだけど……ノンストップで何分いける?」
ツナの問いかけに、骸は顎に手を当てて考える。
「そうですねぇ…監視カメラをも騙す強力な幻覚……勿論柚子の為なら力は惜しみませんが……2,3人分で休み無しとなると15~20分でしょうか。」
「よし、充分だ。んじゃ次、獄寺君はココに残ってルート案内して欲しい。」
「了解っス!……ってか10代目、ご自分で乗り込むんスか!!?」
「あぁ、うん…勿論。」
穏やかに笑うツナに、リボーンが言う。
「責任感じてんのか。確かに、柚子が拉致られたのはお前のせいだからな。アイツを選んだのはお前だぞ、ツナ。」
「分かってる。だから、俺が行くんだ。」
グッと拳を握ったツナの肩に、山本が腕を掛ける。
「んじゃ、俺はツナの護衛なっ♪」
「サンキュー山本、頼むよ。」
リボーンがドアを開け、ツナと山本は外に出る。
「ツナさん、山本さん、気をつけて…」
「あぁ。」
「大丈夫だって!」
「そうだ。雲雀さん、」
「………何。」
「雲雀さんも行きませんか?群れ、咬み殺せますよ。」
奥の席で腕組みをして座っていた雲雀に、ツナは言う。
すると雲雀は、鋭い眼光をツナに向けた。
「僕に護衛させるつもり?」
「大丈夫です。骸が幻覚でカバーしてますから、顔は割れませんよ。」
「そうですよ雲雀君♪」
ドゴッ!
「クフッ……」
「…気に食わないけど、まぁいいや。ちょうど最近、退屈してたからね。」
反対側のドアの鍵が開けられ、雲雀も外に出た。
「10代目、お気をつけてーー!!!」
「皆さんどうかご無事でー!!」
「僕の柚子をーーっ!!!」
「うるせぇぞ、おめぇら。」
リボーンの一言で3人は黙った。
---
-----
------------
困った。
暇だ。
うん、空気読めてないのは分かってる。
だけど暇なものは暇。
椅子に座らされてジーーッとしてるだけなんだもん。
『(う~~ん…せめてガムテープ外してくれたらなぁ……)』
そんな事を考えながら、窓の外を見る。
ずっと向こうに見えるのは、確か並盛キャンパス3号館の塔かな?
3号館は理系だからあんまり行った事無いなー。
「おい、お前はボンゴレのフィアンセなんだよな?」
はい!!?
突然何を聞いてくるんだ、この見張りの人は。
つーかフリです、フリ!!
アピールする為に首を横に振る。
「違う?しらを切れると思ってるのか。」
『んーっ!』
違うんですって!
フリです、フリ!!
そーだ、フリだって気付いてもらえれば解放されるかも……
「ちっ、このガムテープ邪魔だな…」
あ、剥がしてくれるの?
ラッキー♪
ビリッ、
『痛っ!』
「うっせー!ごちゃごちゃ言うな!」
『は、はい……』
あーもー、ツナさん達の所為でぺこぺこ頭下げるクセがついちゃったじゃんかー。
「で、何でさっきから否定してんだ。」
『それはですねぇ…』
聞いてくれる人が現れたー!!
…なんて感激したのは一瞬で、あたしはふと考える。
ここで“フリでした☆”なんて言ったら、
あたしは真面目に冗談抜きで消されるんじゃないの!??
だって…一般人なのにマフィアの顔見ちゃったし……
ダメだ、否定しちゃダメだ。
そうだよ、もし助かったとしてもツナさんに殺されるよ。
あたしに向けられるであろう黒い笑顔がくっきりと浮かんで来る。
『えーっと、ですね……』
どーすんの、あたし。
どーすればいいのーーー!?
「早く言えよ。」
『だからその……』
「まさか俺を騙そうとしたんじゃねーだろーな?あァ!?」
きゃあああ!!
怖い展開キターーー!!!
ふ、踏ん張るのよ柚子!!
きっと生きて帰れるもん、ね!
『違いますっ…ただ……』
「ただ、何だよ。」
『フィアンセじゃなくて、フィアンセ候補……みたいな。』
すんごく微妙な嘘をついてみる。
『ですからっ、10代目にはフィアンセ候補がたっっっっくさんいて、そのうちの1人なんです。あたしに決定したワケじゃなくて……』
「あぁ、そーゆー事か。」
良かった~~~っ…
かろうじて誤摩化せたよ、すごいよあたし。
「ま、んなモンどーだっていいさ。」
『え?』
「いくら候補とは言っても、ボンゴレが女1人守れないって広まれば、その名を堕とすことが出来るからな。」
あぁー、なるほど。
そういう魂胆だったんですか。
って、呑気に納得してる場合じゃないよ、あたし!!!
いくら何でもあたしのせいで、ボンゴレ全体にダメージ与えるとか……
そんな事になったら…
なったら……
マジでツナさんにシメられるーーーー!!!!(汗)
ちょ、ホント、勘弁して下さい。
別にあたしはボンゴレの心配なんてしませんし、味方もしませんから、
ツナさんの恐怖の黒笑いからは助けて下さいっ!!!
『(って、アレ?)』
ふと、目の前にあったドアを見てみる。
何だか違和感を感じた。
気のせい、かな?
「おい、汗すごいぞ。」
『あ、どーもすみません…』
ツナさんが怖くて冷や汗かいたよ、もう…。
「ところで、何見てんだ?」
『いや、あの、何だかドアが変で……』
「ドアが変?」
あたしと見張りの人は、ドアに釘付けになる。
『あっ!分かりました!!』
「何だよ、教えろ!」
『はい、ドアのぶです。』
「ドアのぶ……?」
ドアのぶがだんだん溶けていたのだ。
真っ赤になりながら。
まぁ金属で出来てるから、熱を与えれば溶けるよね。
うん。納得納得………
出来るかーーー!!!!
どーして溶けてるの!?
え、ちょ、何で!?
「一体どーなって…!」
見張りの人がドアに駆け寄ろうとしたその時、
バンッ、
大きな音とともにドアは開き、
同時に見える、一本の刀。
「攻式一の型・車軸の雨!!」
「ぐあっ!!」
『あ……。』
鳩尾に突きを決められた見張りの人は、
倒れたまんまピクリとも動かなくて。
「おっ!いたいた♪」
聞き慣れた明るい声と、
「どーやら無事みたいだな、柚子。」
半分皮肉が混ざってるっぽい声が、あたしに向けられる。
『ツナさん……山本さん………』
そして、もう1つ。
「片付いたよ。」
「ありがとうございます。」
「ん?あぁ、何ともなかったんだね。」
明らかに冷めてる声と視線。
『雲雀さん……』
「山本、柚子の手のロープ。」
「オッケ!」
持っていた刀でロープを切ってくれた山本さん。
『あ、ありがとーございますっ。』
「いやー、良かった良かった!」
ニカッと笑ってあたしの頭をわしゃわしゃする山本さんを見て、
心配させちゃったのかな、と少し反省。
と、その時。
ぐいっ、
『えっ?』
ぎゅ。
『つ、ツナさん!!?///』
「このバカ柚子、間抜け、アホ、鈍感。」
『な、何ですかソレーっ!そんなに色々言わなくても……』
「もし柚子に傷1つでも付いてたら、ココの人間みんな消してた。」
サラッと恐ろしい事をおっしゃる我が主。
やっぱり腕の力が強くて、あたしは抵抗出来ず。
『あの、大丈夫ですよ?何ともありませんから……』
だから出来れば早く放して欲しいなー…
なんて思ってるんですけれども。
「じゃあ帰ったら続きな。」
『え"……』
続きって何ですか!?
心臓に悪いからやめて欲しいのに!!
「ホラ、行くぞ柚子。」
『あ、はい!』
手を引っぱられて、アジトから脱出した。
途中、何だか可哀想なくらいボコボコにされた人達を跨いでいった。
『ツナさん、あの、あたしの荷物…』
「ハルが持ってる。」
『そうですか、良かったぁ…。』
これで一安心。
つか、結局最後まで怖がったり焦ったりしなかった気がする。
「柚子、」
『はい?』
「………ごめんな。」
前を歩くツナさんの表情は、まるで分からない。
多分、あたしの後ろを歩く山本さんと雲雀さんにも、分かってないだろう。
『あの、えーっと……気にしないで下さい!ね?ほら、あたし何ともありませんから。』
何だか元気なさげなツナさんは、ちょっと嫌で。
謝られた時の、その一瞬だけ、
“黒くてもいいから元気でいて欲しい”
とか思っちゃったから。
「………そっか。ならいーや、これからも婚約者頑張れよ。」
『ぎょえっ。』
後悔しても、もう遅い。
だって、見せられた笑みは真っ黒。
でもその時、分かった気がした。
拉致られても全然平気で落ち着きまくっていられたのは、
この横暴ボスが、“自分の所有物”にしている家政婦を簡単に手放すワケない……
そんなヘンテコな確信があったから、
なのかもしれない。
-----
「お帰りなさい僕の柚子ーっ!!」
『ぎゃあああ!!』
「骸、柚子は俺のだから。」
『やめて下さいっ!///』
「はひっ!電撃プロポーズですっ!!」
『ハルさんっ!///違いますからーっ!!』
ナイト
いつもより少し強かった腕、いつもより少し高鳴った鼓動
continue…
手は縛られたまま、足のロープだけ外されて、あたしは車を降りた。
『(おっきーい……やっぱマフィアって凄いんだなぁ。)』
あたしの心は、相変わらず場違いな感想を持つ。
ふと見ると、運転していた男の人は20番目に演奏していた人で。
あたし、この人の演奏は正直ちょっとどーかな……って思ってたんだよなー。
まさか潜入マフィアだったなんて。
まぁ…割と納得だけど。
「ココに居ろ。」
見張りの人が1人ついて、あたしは奥にある一室に閉じ込められた。
外側から鍵がかけられて、あたしは手を後ろで縛られたまま、見張りの人と2人きり。
『(退屈ー…)』
何でかとっても落ち着いていて、
気になったのは演奏者控え室に置きっ放しのフルートの事で、
あたしの頭はやっぱり場違いだなぁ、なんて思った。
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「恐らくカルカッサの仕業だな。どーだ獄寺、ヒットしたか?」
駐車場のリムジンに戻ったツナ達。
備え付きのパソコンを操る獄寺は、リボーンの問いに「もう少しです」と。
「ったく…何で柚子がっ……!直接俺の方に来ればいーじゃねーかっ…」
「ツナ、落ち着けって。向こうだってそう簡単に柚子を傷つけたりしねーと思うぜ?」
眉間に皺を寄せっ放しのツナを、山本が宥める。
「出ました10代目!!リボーンさんの勘の通り、犯人はカルカッサの一味です!!」
「カルカッサ…」
「つっても、本拠イタリアにいるボスは先日、他のマフィアとの抗争で療養中……今回のは日本支部の下っ端による独断である可能性が高いかと…」
「そっか、ありがと獄寺君。」
「で、日本支部は何処だ?この近くにあんのか?」
リボーンの問いかけに、獄寺は頷く。
「並盛キャンパス5号館からおよそ3キロの地点です。このコンクール会場からもそう遠くありません。」
「では、すぐにでも柚子を奪還出来る、という事ですね。」
「んじゃ、早い方がいーんじゃね?」
「そーだな、車出すぞ。」
リボーンがエンジンをかけ、アクセルを踏む。
ハルは助手席で、控え室から取って来た柚子の荷物を抱えながら、必死に無事を祈っていた。
「柚子ちゃん……」
「この車は目立つな……裏道通るからしっかり捕まっとけよ。」
「はひっ!?」
ギュルン、と勢い良く曲がり、小道に入るリムジン。
リボーンの運転に、ハルだけが慌てる。
「で、デンジャラスです~~~っ!!!」
「ハル、大丈夫だから。」
「そーだぜ!小僧はこーゆーのすんげー上手いからなっ♪」
「山本、小僧って言うなって言ってんだろーが。」
「ハハッ、わりーわりー。」
苦笑する山本の隣で、骸は口元を抑える。
「少々…つらいですね…。」
「吐くつもり?吐いたら咬み殺すから。」
「何度乗っても…君の運転には適いませんよ、アルコバレーノ………」
「どーでもいーけど、ホントに吐いたら咬み殺すからね。」
「クフフ…大丈夫ですよ、多分。」
「気絶しといた方がいいんじゃない?」
雲雀にトンファーを向けられる骸。
しかしリボーンが運転席から制止する。
「雲雀やめとけ、そのままの方が面白れーからな。骸、もうちょっと我慢しろ。」
リボーンの危険な運転は終わり、真直ぐの裏道を行くリムジン。
ようやく落ち着いたハルが、ポツリと呟く。
「柚子ちゃん、大丈夫でしょーか……」
「大丈夫だろ。」
リボーンが軽く流すも、ハルはケースに入った柚子のフルートをギュッと握って。
「だって柚子ちゃん…きっと怖がってると思いますっ……急に誘拐だなんて…」
「大丈夫なんじゃない?」
ハルの言葉を遮ったのは、雲雀だった。
「柚子の精神力は相当だからね。」
「だな♪気の強さだけは一人前ってか?」
「いえいえ、3人前くらいありそうですよ?」
カルカッサ日本支部の近くにある、大型地下駐車場に入ったツナ達のリムジン。
そのまま車の中で、作戦会議を始める。
「分担言うから聞いてくれ。」
リムジンの中、皆の視線がツナに集まる。
「大事にはしたくないから、内側に潜り込んでから叩いていこうと思う。」
「けど10代目、カルカッサのアジトには正面玄関以外の出口は無いっスよ?」
獄寺はパソコンのディスプレイにカルカッサのアジトの全面図を出す。
「うん、だから正面突破する。骸、ココから幻覚で俺達の姿を不在のカルカッサメンパーに仕立て上げて欲しいんだけど……ノンストップで何分いける?」
ツナの問いかけに、骸は顎に手を当てて考える。
「そうですねぇ…監視カメラをも騙す強力な幻覚……勿論柚子の為なら力は惜しみませんが……2,3人分で休み無しとなると15~20分でしょうか。」
「よし、充分だ。んじゃ次、獄寺君はココに残ってルート案内して欲しい。」
「了解っス!……ってか10代目、ご自分で乗り込むんスか!!?」
「あぁ、うん…勿論。」
穏やかに笑うツナに、リボーンが言う。
「責任感じてんのか。確かに、柚子が拉致られたのはお前のせいだからな。アイツを選んだのはお前だぞ、ツナ。」
「分かってる。だから、俺が行くんだ。」
グッと拳を握ったツナの肩に、山本が腕を掛ける。
「んじゃ、俺はツナの護衛なっ♪」
「サンキュー山本、頼むよ。」
リボーンがドアを開け、ツナと山本は外に出る。
「ツナさん、山本さん、気をつけて…」
「あぁ。」
「大丈夫だって!」
「そうだ。雲雀さん、」
「………何。」
「雲雀さんも行きませんか?群れ、咬み殺せますよ。」
奥の席で腕組みをして座っていた雲雀に、ツナは言う。
すると雲雀は、鋭い眼光をツナに向けた。
「僕に護衛させるつもり?」
「大丈夫です。骸が幻覚でカバーしてますから、顔は割れませんよ。」
「そうですよ雲雀君♪」
ドゴッ!
「クフッ……」
「…気に食わないけど、まぁいいや。ちょうど最近、退屈してたからね。」
反対側のドアの鍵が開けられ、雲雀も外に出た。
「10代目、お気をつけてーー!!!」
「皆さんどうかご無事でー!!」
「僕の柚子をーーっ!!!」
「うるせぇぞ、おめぇら。」
リボーンの一言で3人は黙った。
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困った。
暇だ。
うん、空気読めてないのは分かってる。
だけど暇なものは暇。
椅子に座らされてジーーッとしてるだけなんだもん。
『(う~~ん…せめてガムテープ外してくれたらなぁ……)』
そんな事を考えながら、窓の外を見る。
ずっと向こうに見えるのは、確か並盛キャンパス3号館の塔かな?
3号館は理系だからあんまり行った事無いなー。
「おい、お前はボンゴレのフィアンセなんだよな?」
はい!!?
突然何を聞いてくるんだ、この見張りの人は。
つーかフリです、フリ!!
アピールする為に首を横に振る。
「違う?しらを切れると思ってるのか。」
『んーっ!』
違うんですって!
フリです、フリ!!
そーだ、フリだって気付いてもらえれば解放されるかも……
「ちっ、このガムテープ邪魔だな…」
あ、剥がしてくれるの?
ラッキー♪
ビリッ、
『痛っ!』
「うっせー!ごちゃごちゃ言うな!」
『は、はい……』
あーもー、ツナさん達の所為でぺこぺこ頭下げるクセがついちゃったじゃんかー。
「で、何でさっきから否定してんだ。」
『それはですねぇ…』
聞いてくれる人が現れたー!!
…なんて感激したのは一瞬で、あたしはふと考える。
ここで“フリでした☆”なんて言ったら、
あたしは真面目に冗談抜きで消されるんじゃないの!??
だって…一般人なのにマフィアの顔見ちゃったし……
ダメだ、否定しちゃダメだ。
そうだよ、もし助かったとしてもツナさんに殺されるよ。
あたしに向けられるであろう黒い笑顔がくっきりと浮かんで来る。
『えーっと、ですね……』
どーすんの、あたし。
どーすればいいのーーー!?
「早く言えよ。」
『だからその……』
「まさか俺を騙そうとしたんじゃねーだろーな?あァ!?」
きゃあああ!!
怖い展開キターーー!!!
ふ、踏ん張るのよ柚子!!
きっと生きて帰れるもん、ね!
『違いますっ…ただ……』
「ただ、何だよ。」
『フィアンセじゃなくて、フィアンセ候補……みたいな。』
すんごく微妙な嘘をついてみる。
『ですからっ、10代目にはフィアンセ候補がたっっっっくさんいて、そのうちの1人なんです。あたしに決定したワケじゃなくて……』
「あぁ、そーゆー事か。」
良かった~~~っ…
かろうじて誤摩化せたよ、すごいよあたし。
「ま、んなモンどーだっていいさ。」
『え?』
「いくら候補とは言っても、ボンゴレが女1人守れないって広まれば、その名を堕とすことが出来るからな。」
あぁー、なるほど。
そういう魂胆だったんですか。
って、呑気に納得してる場合じゃないよ、あたし!!!
いくら何でもあたしのせいで、ボンゴレ全体にダメージ与えるとか……
そんな事になったら…
なったら……
マジでツナさんにシメられるーーーー!!!!(汗)
ちょ、ホント、勘弁して下さい。
別にあたしはボンゴレの心配なんてしませんし、味方もしませんから、
ツナさんの恐怖の黒笑いからは助けて下さいっ!!!
『(って、アレ?)』
ふと、目の前にあったドアを見てみる。
何だか違和感を感じた。
気のせい、かな?
「おい、汗すごいぞ。」
『あ、どーもすみません…』
ツナさんが怖くて冷や汗かいたよ、もう…。
「ところで、何見てんだ?」
『いや、あの、何だかドアが変で……』
「ドアが変?」
あたしと見張りの人は、ドアに釘付けになる。
『あっ!分かりました!!』
「何だよ、教えろ!」
『はい、ドアのぶです。』
「ドアのぶ……?」
ドアのぶがだんだん溶けていたのだ。
真っ赤になりながら。
まぁ金属で出来てるから、熱を与えれば溶けるよね。
うん。納得納得………
出来るかーーー!!!!
どーして溶けてるの!?
え、ちょ、何で!?
「一体どーなって…!」
見張りの人がドアに駆け寄ろうとしたその時、
バンッ、
大きな音とともにドアは開き、
同時に見える、一本の刀。
「攻式一の型・車軸の雨!!」
「ぐあっ!!」
『あ……。』
鳩尾に突きを決められた見張りの人は、
倒れたまんまピクリとも動かなくて。
「おっ!いたいた♪」
聞き慣れた明るい声と、
「どーやら無事みたいだな、柚子。」
半分皮肉が混ざってるっぽい声が、あたしに向けられる。
『ツナさん……山本さん………』
そして、もう1つ。
「片付いたよ。」
「ありがとうございます。」
「ん?あぁ、何ともなかったんだね。」
明らかに冷めてる声と視線。
『雲雀さん……』
「山本、柚子の手のロープ。」
「オッケ!」
持っていた刀でロープを切ってくれた山本さん。
『あ、ありがとーございますっ。』
「いやー、良かった良かった!」
ニカッと笑ってあたしの頭をわしゃわしゃする山本さんを見て、
心配させちゃったのかな、と少し反省。
と、その時。
ぐいっ、
『えっ?』
ぎゅ。
『つ、ツナさん!!?///』
「このバカ柚子、間抜け、アホ、鈍感。」
『な、何ですかソレーっ!そんなに色々言わなくても……』
「もし柚子に傷1つでも付いてたら、ココの人間みんな消してた。」
サラッと恐ろしい事をおっしゃる我が主。
やっぱり腕の力が強くて、あたしは抵抗出来ず。
『あの、大丈夫ですよ?何ともありませんから……』
だから出来れば早く放して欲しいなー…
なんて思ってるんですけれども。
「じゃあ帰ったら続きな。」
『え"……』
続きって何ですか!?
心臓に悪いからやめて欲しいのに!!
「ホラ、行くぞ柚子。」
『あ、はい!』
手を引っぱられて、アジトから脱出した。
途中、何だか可哀想なくらいボコボコにされた人達を跨いでいった。
『ツナさん、あの、あたしの荷物…』
「ハルが持ってる。」
『そうですか、良かったぁ…。』
これで一安心。
つか、結局最後まで怖がったり焦ったりしなかった気がする。
「柚子、」
『はい?』
「………ごめんな。」
前を歩くツナさんの表情は、まるで分からない。
多分、あたしの後ろを歩く山本さんと雲雀さんにも、分かってないだろう。
『あの、えーっと……気にしないで下さい!ね?ほら、あたし何ともありませんから。』
何だか元気なさげなツナさんは、ちょっと嫌で。
謝られた時の、その一瞬だけ、
“黒くてもいいから元気でいて欲しい”
とか思っちゃったから。
「………そっか。ならいーや、これからも婚約者頑張れよ。」
『ぎょえっ。』
後悔しても、もう遅い。
だって、見せられた笑みは真っ黒。
でもその時、分かった気がした。
拉致られても全然平気で落ち着きまくっていられたのは、
この横暴ボスが、“自分の所有物”にしている家政婦を簡単に手放すワケない……
そんなヘンテコな確信があったから、
なのかもしれない。
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「お帰りなさい僕の柚子ーっ!!」
『ぎゃあああ!!』
「骸、柚子は俺のだから。」
『やめて下さいっ!///』
「はひっ!電撃プロポーズですっ!!」
『ハルさんっ!///違いますからーっ!!』
ナイト
いつもより少し強かった腕、いつもより少し高鳴った鼓動
continue…