🎼本編
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おはようございます、柚子です。
本日はフルートコンクール第一次予選の日です。
だから早く起きて演奏室で再確認してたら……
「おはようございますっ!柚子ちゃん♪」
ハルさんがやって来て、
ディーノさん来日の時と同じように無理矢理メイクアップさせられ、
んでもって……
『(り…リムジンキターーーー!!!)』
ないわ。
あぁないわ、コレ。
『あのですねぇ、一次予選は…』
「許可取ったっつったろ?何回言えば分かるんだよ。」
分かりたくないんですよ!
自分が今かなり酷い状況に身を置いてるってことを!!
「ごちゃごちゃ言ってないで、行くぞ。」
『はい……』
何故リムジンをチョイスしたんですか。
もっと目立たないように質素に振る舞う精神は無いんですか。
もしかして目立ちたがり屋さんですか。
「うるさいよ、柚子。」
『だから何も言ってません!!』
「全部聞こえまくってんだよ!!」
「アハハッ、おもしれーのな♪」
山本さんの笑顔とハルさんの激励に何とか励まされつつ、あたしは会場へ向かった。
そこで、
何が起こるか全く予想しないまま………
---
------
-------------
「柚子ちゃんっ!」
『何ですか?ハルさん。』
控え室に入ってもう一度楽譜を確認していると、ハルさんが明るく入って来た。
「これ、ハルが昨日作ったんです。」
そう言って渡してくれたのは、おしゃれなブレスレットだった。
とても手作りに見えない。売り物みたいだ。
『すっ、すごい!ハルさん器用なんですね!!』
「柚子ちゃんに差し上げます!だからコレつけて頑張って下さい♪」
『は…ハルさーん……(感涙)』
やばい、マジ演奏前から涙出そう。
ハルさんからそのブレスレットを受け取り、左手首に付ける。
『ホントにありがとうございますっ!あたし、絶対通過します!!』
「はい!応援してますっ♪」
ハルさんが退室した直後、あたしは呼ばれた。
いよいよ、始まる。
「21番、牧之原柚子さん、どうぞ!」
さんざん練習して来た、セシル・シャミナードの小協奏曲。
きっと、大丈夫。
絶対、大丈夫。
フルートを構える瞬間、ハルさんから頂いたブレスレットがシャランと揺れた。
---「これは“フルートの為の小協奏曲”だぞ。柚子が合わせるんじゃねーぞ。」
そう、あんなに練習したもの。
皆さんが、協力してくれたもの。
ココの音はなめらかに。
次は軽快に。
ほら、ちゃんと分かってる。
指があたしの心に付いてくる。
精一杯出し切って、絶対通過するんだ。
じゃないと……お父さんとの約束、守れないから。
---「柚子、」
---『なぁに?お父さん。』
まだお父さんが元気だった頃、
あたしがフルートを教えてもらっていた頃、
お父さんは言った。
---「柚子はきっと、いい演奏者になれるよ。」
---『ホントにーっ!?』
---「だから、頑張ろうな。いっぱい練習して、1番素敵な奏者になった姿、お父さんに見せておくれ。」
---『うんっ!柚子、頑張る!1番素敵になるーっ!!』
パチパチパチ………
『(お、終わったぁ…)』
何とか指を間違えないで演奏しきった。
とりあえず今はそれが嬉しい。
あとは、あたしが演奏に込めた気持ちをどれくらい受け取ってもらえたか……
それだけだから。
---
------
「お疲れさまでした。」
『あ、ありがとうございます…』
控え室に戻るのかと思ったら、どうやら何か説明会みたいのがあるようで。
あたしは別室に誘導されることに。
『(あっ……)』
だったらツナさん達に伝えておかなくちゃ。
帰りが遅くなっちゃうし。
それに…
終わったら何だか安心してトイレ行きたくなった!!(汗)
『あ、あの…』
「はい?」
『ちょっと先にお手洗い済ませたいんですが……』
恐る恐る申し出ると、係の人は目を丸くしてからフッと笑った。
「あぁ…どうぞ。向こうの突き当たりを左です。」
『ありがとうございます!すぐ戻ります。』
走っていく柚子の背を見つめながら、係の男は舌打ちを1つ。
そして、ポケットから無線を取り出し何者かに連絡する。
「プランBに変更だ。あの女は…トイレで捕らえる。」
---
------
『(突き当たりを左……左っと。)』
左に曲がったのはいいけど、更に長い廊下。
あぁ…神様のいじわる。
と、そこに。
「柚子、」
『あ、ツナさん!』
またまた神様のいじわる。
「上手かったじゃん。」
『ひょえ!?///』
バッタリはち合わせたと思ったら、そのまま何故か抱きしめられた。
ぎゃー!!
こんなトコで捕まってる暇ないのにーっ!
「ま、俺の婚約者として当然…」
『わあああああ!!!///』
「………何だよ。」
『サラッと恥ずかしいこと言わないで下さいっ!!』
それに、フリですから!
なんて付け足すとツナさんは怒るから、グッと飲み込む。
『あ、あの、まだ集まりあるみたいなんですけど…』
「あぁ、構わないよ、別に。」
『えっ?でもあの、遅くなるかもなので先にお帰りになってても……』
迷惑はかけられないよなー、とか思って言ってみると、ツナさんは遮るようにあたしの頭を引き寄せる。
『ほえ?』
「待ってるよ、柚子。」
あぁもうこの人は……!
耳元で囁くのは反則ですっ!!///
「だから早く帰って、夕飯の支度しろよな?」
『わ、わかりましたからぁ!!』
結局それが目的かいっ!
いや、別に特別な意味なんて期待するつもりもないですけど。
とりあえず解放されるやいなや、あたしは走り出した。
『(もうっ…ツナさんてば……///)』
無駄にカッコいいんですから!
プレイボーイ自主規制して欲しいです!!
トイレに駆け込んで、真っ赤な顔を確認する。
ピシッと両頬を叩いてから、トイレを済ませて手を洗う。
『まったく、あの横暴ボスは………ん?』
ギィ、
トイレのドアが開いて、サングラスをかけた女の人が入って来た。
『(派手な人……)』
ヒョウ柄のブーツを見て、そう思う。
ふと、その人があたしをジッと見ている事に気がついた。
『ど、どーも……』
ペコリとお辞儀をすると、彼女はコツコツ歩み寄って来て………
『あ、あの、何か………………ふぐっ!!?』
気がついたら、何でか後ろを取られていて、
分厚い布を鼻と口に当てられる。
『んんーっ…!!』
ちょっと抵抗してみるけど、全然ダメ。
『ん……ぅ……』
何秒と経たないうちに、簡単に意識を持ってかれた。
----
--------
-------------
特別優待室にて。
集まりがあると言っていた柚子を待ち始めて、30分が経った。
「遅いな、柚子。」
「迷ってんじゃねーの?」
時計を見ながらの呟きに、山本が反応する。
隣では、獄寺君がイライラしていた。
「あのバカ…10代目が待って下さってんのに……」
「ふぁーあ、まだなの?」
「おや雲雀君、おねむですか?」
ニヤニヤしながら尋ねる骸に、次の瞬間トンファーが振り掛かる。
キィンッ…
それを難なくトライデントで受け止める骸。
「怖いですねぇ、いきなりは酷いですよー。」
「黙れ、咬み殺す。」
「まーまー、雲雀も骸も落ち着けって。」
いつもみたいに山本が仲裁に入って、2人は渋々武器をしまった。
にしても、本当に遅い。
「俺、ちょっと見てくる。」
「あ、ハルも行きます!」
「あぁ、サンキュ。」
俺とハルが部屋から出る。
と、
「おや?沢田さん…」
「あ、どうも。」
コンクールの主催者が、ちょうどそこを通りかかった。
「本日はお越し下さり、本当にありがとうございます。」
「いえ、こちらも無理を言ってしまい…」
深々と頭を下げる人のいい主催者に俺が挨拶を返すと、ハルが横から質問した。
「あの、まだ集まりって終わらないんですか?」
「はい…?」
「私たち21番の柚子ちゃんを待ってるんですけど、帰って来なくて……」
「そ、そんなハズは……演奏の皆さんは、先程解散しましたよ?」
「な…!?」
主催者の言葉に、俺とハルは絶句した。
まさか…
まさか柚子……
「そう言えば、21番さんはその場にいらっしゃいませんでした。ただ……20番の方が“自分が伝えておきます”と…」
「20番の演奏者…?」
状況を頭の中で整理し、俺はある結論を導き出す。
「ハル、」
「はひ?」
「女子トイレ、見て来てくれるか?」
「は、はいですっ!!」
急いで走って行くハルを見送り、今度は、目の前で唖然としている主催者に頼む。
「あの、演奏者名簿見せて頂けませんか?」
「あ、はい…構いませんが……」
持って来てもらった名簿を受け取り、皆がいる部屋に戻る。
「どした?顔色わりーぞ、ツナ。」
「柚子が……消えた。」
「ほ、ホントっスか!!?」
ざわつく皆をしずめ、これまで聞いた状況を説明する。
テーブルに名簿を置き、20番目の演奏者の名前を探した。
そいつの名は……
「“rail (ライル)”か……」
「ん?フツーじゃね?」
「いいえ、“嘘つき”ですね……。」
緩やかな笑みを浮かべつつ言う六道に、山本は首を傾げる。
「綴りだよ。逆さから読むと、そいつの名前は“liar”………つまり“嘘つき”だ。」
「にしても、もう柚子に狙いが行くとは……」
拳を握る獄寺君。
と、その時。
「ツナさんっ……!」
勢い良くドアを開けて、ハルが戻って来た。
「ハル、何かあったのか?」
「コレ……ハルが柚子ちゃんにあげたブレスレットです!!化粧台のトコに落ちてました!!」
そう言って、アクアマリンが付いたブレスレットを俺に差し出す。
受け取って、ギュッと握りしめた。
「柚子っ………」
---
------
------------
激しい揺れを感じて、あたしは目を覚ました。
『(ん…)』
何だろ……車の中…?
ぼんやりとした頭に、響いてくる2つの声。
--「コイツで合ってんの?」
--「あぁ、間違いない。ボンゴレ10代目のフィアンセだ。」
--「ふーん、あんなにナヨナヨしたのが、ねぇ…」
『(…………え?)』
ちょっと待て。
今この人達、何て言った…??
--「しかし、こんなに容易い仕事だとは。情けないわね、ボンゴレも。」
--「仕方無いさ。ボンゴレは9、10代目と穏健派らしいからな。敵に対する警戒が足りない。」
めっさボンゴレの話してる……
って事はつまり、
あたしは婚約者だからこーなってるって事、なの?
--「何でもいーけどさ、ボンゴレの婚約者の割にはフツーの女よね。」
--「そーゆー趣味なんじゃないか?」
だ、
だ、
だからフリなんですってばーーー!!!
ガムテープを貼られている口では、当然叫ぶ事なんて出来るハズもなく。
後部座席に寝かされたまま、手足を動かす事もままならない。
あーもー!
どーしてこーなるんですかーーーっ!!!
フロントガラスの向こうに見えてきたのは、
ずっしりと構えられた要塞のような屋敷だった。
トラップ
覚悟なんてする暇もないまま、確実に巻き込まれていく。
continue...
本日はフルートコンクール第一次予選の日です。
だから早く起きて演奏室で再確認してたら……
「おはようございますっ!柚子ちゃん♪」
ハルさんがやって来て、
ディーノさん来日の時と同じように無理矢理メイクアップさせられ、
んでもって……
『(り…リムジンキターーーー!!!)』
ないわ。
あぁないわ、コレ。
『あのですねぇ、一次予選は…』
「許可取ったっつったろ?何回言えば分かるんだよ。」
分かりたくないんですよ!
自分が今かなり酷い状況に身を置いてるってことを!!
「ごちゃごちゃ言ってないで、行くぞ。」
『はい……』
何故リムジンをチョイスしたんですか。
もっと目立たないように質素に振る舞う精神は無いんですか。
もしかして目立ちたがり屋さんですか。
「うるさいよ、柚子。」
『だから何も言ってません!!』
「全部聞こえまくってんだよ!!」
「アハハッ、おもしれーのな♪」
山本さんの笑顔とハルさんの激励に何とか励まされつつ、あたしは会場へ向かった。
そこで、
何が起こるか全く予想しないまま………
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「柚子ちゃんっ!」
『何ですか?ハルさん。』
控え室に入ってもう一度楽譜を確認していると、ハルさんが明るく入って来た。
「これ、ハルが昨日作ったんです。」
そう言って渡してくれたのは、おしゃれなブレスレットだった。
とても手作りに見えない。売り物みたいだ。
『すっ、すごい!ハルさん器用なんですね!!』
「柚子ちゃんに差し上げます!だからコレつけて頑張って下さい♪」
『は…ハルさーん……(感涙)』
やばい、マジ演奏前から涙出そう。
ハルさんからそのブレスレットを受け取り、左手首に付ける。
『ホントにありがとうございますっ!あたし、絶対通過します!!』
「はい!応援してますっ♪」
ハルさんが退室した直後、あたしは呼ばれた。
いよいよ、始まる。
「21番、牧之原柚子さん、どうぞ!」
さんざん練習して来た、セシル・シャミナードの小協奏曲。
きっと、大丈夫。
絶対、大丈夫。
フルートを構える瞬間、ハルさんから頂いたブレスレットがシャランと揺れた。
---「これは“フルートの為の小協奏曲”だぞ。柚子が合わせるんじゃねーぞ。」
そう、あんなに練習したもの。
皆さんが、協力してくれたもの。
ココの音はなめらかに。
次は軽快に。
ほら、ちゃんと分かってる。
指があたしの心に付いてくる。
精一杯出し切って、絶対通過するんだ。
じゃないと……お父さんとの約束、守れないから。
---「柚子、」
---『なぁに?お父さん。』
まだお父さんが元気だった頃、
あたしがフルートを教えてもらっていた頃、
お父さんは言った。
---「柚子はきっと、いい演奏者になれるよ。」
---『ホントにーっ!?』
---「だから、頑張ろうな。いっぱい練習して、1番素敵な奏者になった姿、お父さんに見せておくれ。」
---『うんっ!柚子、頑張る!1番素敵になるーっ!!』
パチパチパチ………
『(お、終わったぁ…)』
何とか指を間違えないで演奏しきった。
とりあえず今はそれが嬉しい。
あとは、あたしが演奏に込めた気持ちをどれくらい受け取ってもらえたか……
それだけだから。
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「お疲れさまでした。」
『あ、ありがとうございます…』
控え室に戻るのかと思ったら、どうやら何か説明会みたいのがあるようで。
あたしは別室に誘導されることに。
『(あっ……)』
だったらツナさん達に伝えておかなくちゃ。
帰りが遅くなっちゃうし。
それに…
終わったら何だか安心してトイレ行きたくなった!!(汗)
『あ、あの…』
「はい?」
『ちょっと先にお手洗い済ませたいんですが……』
恐る恐る申し出ると、係の人は目を丸くしてからフッと笑った。
「あぁ…どうぞ。向こうの突き当たりを左です。」
『ありがとうございます!すぐ戻ります。』
走っていく柚子の背を見つめながら、係の男は舌打ちを1つ。
そして、ポケットから無線を取り出し何者かに連絡する。
「プランBに変更だ。あの女は…トイレで捕らえる。」
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『(突き当たりを左……左っと。)』
左に曲がったのはいいけど、更に長い廊下。
あぁ…神様のいじわる。
と、そこに。
「柚子、」
『あ、ツナさん!』
またまた神様のいじわる。
「上手かったじゃん。」
『ひょえ!?///』
バッタリはち合わせたと思ったら、そのまま何故か抱きしめられた。
ぎゃー!!
こんなトコで捕まってる暇ないのにーっ!
「ま、俺の婚約者として当然…」
『わあああああ!!!///』
「………何だよ。」
『サラッと恥ずかしいこと言わないで下さいっ!!』
それに、フリですから!
なんて付け足すとツナさんは怒るから、グッと飲み込む。
『あ、あの、まだ集まりあるみたいなんですけど…』
「あぁ、構わないよ、別に。」
『えっ?でもあの、遅くなるかもなので先にお帰りになってても……』
迷惑はかけられないよなー、とか思って言ってみると、ツナさんは遮るようにあたしの頭を引き寄せる。
『ほえ?』
「待ってるよ、柚子。」
あぁもうこの人は……!
耳元で囁くのは反則ですっ!!///
「だから早く帰って、夕飯の支度しろよな?」
『わ、わかりましたからぁ!!』
結局それが目的かいっ!
いや、別に特別な意味なんて期待するつもりもないですけど。
とりあえず解放されるやいなや、あたしは走り出した。
『(もうっ…ツナさんてば……///)』
無駄にカッコいいんですから!
プレイボーイ自主規制して欲しいです!!
トイレに駆け込んで、真っ赤な顔を確認する。
ピシッと両頬を叩いてから、トイレを済ませて手を洗う。
『まったく、あの横暴ボスは………ん?』
ギィ、
トイレのドアが開いて、サングラスをかけた女の人が入って来た。
『(派手な人……)』
ヒョウ柄のブーツを見て、そう思う。
ふと、その人があたしをジッと見ている事に気がついた。
『ど、どーも……』
ペコリとお辞儀をすると、彼女はコツコツ歩み寄って来て………
『あ、あの、何か………………ふぐっ!!?』
気がついたら、何でか後ろを取られていて、
分厚い布を鼻と口に当てられる。
『んんーっ…!!』
ちょっと抵抗してみるけど、全然ダメ。
『ん……ぅ……』
何秒と経たないうちに、簡単に意識を持ってかれた。
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特別優待室にて。
集まりがあると言っていた柚子を待ち始めて、30分が経った。
「遅いな、柚子。」
「迷ってんじゃねーの?」
時計を見ながらの呟きに、山本が反応する。
隣では、獄寺君がイライラしていた。
「あのバカ…10代目が待って下さってんのに……」
「ふぁーあ、まだなの?」
「おや雲雀君、おねむですか?」
ニヤニヤしながら尋ねる骸に、次の瞬間トンファーが振り掛かる。
キィンッ…
それを難なくトライデントで受け止める骸。
「怖いですねぇ、いきなりは酷いですよー。」
「黙れ、咬み殺す。」
「まーまー、雲雀も骸も落ち着けって。」
いつもみたいに山本が仲裁に入って、2人は渋々武器をしまった。
にしても、本当に遅い。
「俺、ちょっと見てくる。」
「あ、ハルも行きます!」
「あぁ、サンキュ。」
俺とハルが部屋から出る。
と、
「おや?沢田さん…」
「あ、どうも。」
コンクールの主催者が、ちょうどそこを通りかかった。
「本日はお越し下さり、本当にありがとうございます。」
「いえ、こちらも無理を言ってしまい…」
深々と頭を下げる人のいい主催者に俺が挨拶を返すと、ハルが横から質問した。
「あの、まだ集まりって終わらないんですか?」
「はい…?」
「私たち21番の柚子ちゃんを待ってるんですけど、帰って来なくて……」
「そ、そんなハズは……演奏の皆さんは、先程解散しましたよ?」
「な…!?」
主催者の言葉に、俺とハルは絶句した。
まさか…
まさか柚子……
「そう言えば、21番さんはその場にいらっしゃいませんでした。ただ……20番の方が“自分が伝えておきます”と…」
「20番の演奏者…?」
状況を頭の中で整理し、俺はある結論を導き出す。
「ハル、」
「はひ?」
「女子トイレ、見て来てくれるか?」
「は、はいですっ!!」
急いで走って行くハルを見送り、今度は、目の前で唖然としている主催者に頼む。
「あの、演奏者名簿見せて頂けませんか?」
「あ、はい…構いませんが……」
持って来てもらった名簿を受け取り、皆がいる部屋に戻る。
「どした?顔色わりーぞ、ツナ。」
「柚子が……消えた。」
「ほ、ホントっスか!!?」
ざわつく皆をしずめ、これまで聞いた状況を説明する。
テーブルに名簿を置き、20番目の演奏者の名前を探した。
そいつの名は……
「“rail (ライル)”か……」
「ん?フツーじゃね?」
「いいえ、“嘘つき”ですね……。」
緩やかな笑みを浮かべつつ言う六道に、山本は首を傾げる。
「綴りだよ。逆さから読むと、そいつの名前は“liar”………つまり“嘘つき”だ。」
「にしても、もう柚子に狙いが行くとは……」
拳を握る獄寺君。
と、その時。
「ツナさんっ……!」
勢い良くドアを開けて、ハルが戻って来た。
「ハル、何かあったのか?」
「コレ……ハルが柚子ちゃんにあげたブレスレットです!!化粧台のトコに落ちてました!!」
そう言って、アクアマリンが付いたブレスレットを俺に差し出す。
受け取って、ギュッと握りしめた。
「柚子っ………」
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激しい揺れを感じて、あたしは目を覚ました。
『(ん…)』
何だろ……車の中…?
ぼんやりとした頭に、響いてくる2つの声。
--「コイツで合ってんの?」
--「あぁ、間違いない。ボンゴレ10代目のフィアンセだ。」
--「ふーん、あんなにナヨナヨしたのが、ねぇ…」
『(…………え?)』
ちょっと待て。
今この人達、何て言った…??
--「しかし、こんなに容易い仕事だとは。情けないわね、ボンゴレも。」
--「仕方無いさ。ボンゴレは9、10代目と穏健派らしいからな。敵に対する警戒が足りない。」
めっさボンゴレの話してる……
って事はつまり、
あたしは婚約者だからこーなってるって事、なの?
--「何でもいーけどさ、ボンゴレの婚約者の割にはフツーの女よね。」
--「そーゆー趣味なんじゃないか?」
だ、
だ、
だからフリなんですってばーーー!!!
ガムテープを貼られている口では、当然叫ぶ事なんて出来るハズもなく。
後部座席に寝かされたまま、手足を動かす事もままならない。
あーもー!
どーしてこーなるんですかーーーっ!!!
フロントガラスの向こうに見えてきたのは、
ずっしりと構えられた要塞のような屋敷だった。
トラップ
覚悟なんてする暇もないまま、確実に巻き込まれていく。
continue...