🎼本編
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さてさて、何だかすっかり平和な感じが戻って来ましたが…
相変わらずお掃除は大変です。
「おっ、柚子!」
『山本さん!お帰りなさいっ!』
「ただいま♪掃除してんのかー、偉いのな!」
『えっ、いえいえ!家政婦ですから!』
そう、私は家政婦私は家政婦。
ちょっと前に婚約者役やらされただけだもん、
絶対それ以上になるもんか!
山本さんからユニフォームを預かって、洗濯機の方へと歩き始めた、その時。
ピーンポーン…
『あ、はいっ!!』
突然鳴らされるチャイム。
あたしは急いで洗い物を洗濯機に入れて、玄関へと走る。
『お待たせして申し訳ありません、どちら様で………すか…?』
ドアを開けたあたしの目の前にいたのは、
大きな目と可愛いマフラーの少年と、黒髪パーマに角(?)が付いている男の子。
「こんにちは!ツナ兄いますか?」
「ガハハ!ランボさん、ツナと遊びに来てやったんだもんね!!」
『あ、あの…今外出してるんですけど…とりあえず、中でお待ちになりますか?』
「あ、お願いします!」
ペコリと頭を下げる彼は、パッと見中学生くらいだろうか。
そしてこっちの…
「ガハハハ!広ーい!!!」
「ランボ!走ったら危ないよ!」
「フゥ太のアホー!大丈夫だもんね……っ」
コケッ、
ズベベーッ…
『あ!あの、大丈夫ですか!?』
「ぐっ……が…ま…ん…………うわぁぁぁん!!!」
「だから言わんこっちゃない…。」
角(?)が付いてる子は…小学生くらいかなぁ…?
ってゆーか…
『ランボさん!膝、擦りむいてます!』
「うぐっ…」
「あーあ、しょうがないなぁ。」
『あたし、お薬取って来ま…』
「大丈夫です、僕が持ってますから。」
その子は、どうやらしっかり者のようで。
あたしは思わず感心する。
「そうだ、まだお名前聞いてませんでしたよね?僕はフゥ太です。」
『あ、牧之原柚子と言います!どうぞ宜しく!』
あたしがお辞儀すると、フゥ太君もランボさんの手当をしながらぺこっと頭を下げた。
「じゃあ、柚子姉って呼んでもいいですか?」
『あ、はい!私はフゥ太君、でいいでしょうか?』
あたしが聞くと、フゥ太君はうーんと唸ってからこう言った。
「僕の方が年下だから、敬語とかいらないです。」
『えっ?じゃ、じゃあ!フゥ太君もあたしには敬語無しで。』
あたしが笑顔で提案すると、フゥ太君は目を丸くして。
「いいんですか?」
『うんっ!』
「ありがと柚子姉っ!」
何だかなぁ…
少年って癒しだ…。
あ、決してそんなやましい事を考えてるのではなくて!
萌えとかでもなくて!!
(骸さんとキャラかぶっちゃう!)
ただ…
この頃腹黒ボスを見慣れてしまったものですから…
「何だって?柚子。」
『ひょええ!!』
吃驚して振り向いたあたし。
そこに立っていたのは…
『山本さんですかぁ……』
「ん?」
いや、マジで心臓止まるかと思いましたよ。
台詞が軽くツナさん系統だったもん。
吃驚させないで下さいよー。
「あ!武兄!」
「お、フゥ太じゃねーか!久しぶりだな♪」
『あ、お知り合いだったんですか!』
「そりゃーツナの弟みたいなモンだしな♪」
山本さんはワシャワシャっとフゥ太君の頭を撫でる。
「コラーッ!俺っちを無視するなーっ!!」
『ぎょわっ!』
いつの間に立ち上がったのか、ランボさんがあたしの首に後ろから腕を回す。
…ちょいと苦しい……
「あっ!ランボ!柚子姉が困ってるだろ!?」
「無視したのが悪いんだもんねーっ。」
「ランボ!!」
『いーのフゥ太君、これくらい…大丈夫だから。』
…ちょいと苦しいけど……(泣)
首に抱きつかれてるから後ろが見えない。
仕方がないからそのまま手探りでランボさんのモジャモジャ髪の毛を撫でる。
『ごめんね、貴方にも自己紹介しなくちゃね。』
「ん?」
『あたし、牧之原柚子。柚子でいーよ。』
「俺っちは、ランボさんだもんね!!」
『宜しくねっ♪』
出来るだけ後ろを向いて笑いかけると、ランボさんも笑ってるのが見えた。
ランボ君、でもいいかな?
フゥ太君が“君”なのに、ランボ“さん”じゃおかしいもんね。
「ところでフゥ太、何かあったのか?」
「うん、ツナ兄に聞きたい事があって…」
フゥ太君は3枚の楽譜を取り出した。
『Summer mvt 3 Presto……ヴィヴァルディの…』
「課題曲なんだ、すっごく難しくてツナ兄にお手本聞かせてもらおうと思って…」
フゥ太君、バイオリンやってるんだぁ。
Summer mvt 3 Presto…
訳すと“夏の嵐”。
タイトルの通り、穀物をなぎ倒して行く嵐を表現してる曲だけど、なかなかテンポが速い。
というか…あたしはバイオリン専門じゃないから詳しい難易度は分からないんだけど…。
「そっかー、ツナだったらすぐ弾けるもんな!」
「それで、僕がツナ兄のトコに行くって言ったらランボが付いて来て…」
『あ、だったらお菓子でも持って来ようか?』
「ホント!?柚子姉!」
『うんっ♪待っててね。』
あたしはキッチンへと駆けて行った。
その間に、山本さんがフゥ太君とランボ君を通しておいてくれるそうだ。
『(何がいいかな~?)』
とりあえず棚の中にしまってあったお客様用のクッキーを取り出す。
お皿に綺麗に乗せてオレンジジュースと一緒にお盆を乗せる。
ってゆーか…オレンジジュースって…
一体誰が、何の為に買ったの??
ココにいる人達の性格上、フゥ太君達が来るのを予想して…なんて事はなさそうだし。
とにかく大広間に戻ろうとした、その時。
「ただいまー。」
『あ、ツナさん!』
まったく、何てタイミングがいいんだろうか、この人は。
『お帰りなさいっ♪』
「あぁ柚子、ただいま。」
『大広間に2人お客様が来てますよ。』
「客…?」
首を傾げたツナさんは、あたしが持ってたクッキーとジュースを見て納得したようだった。
「フゥ太とランボ?」
『凄いです!よく分かりましたね!』
「当たり前。」
ツナさんはそのままあたしと大広間へ向かった。
『お待たせしました、お菓子持って来ましたよ♪』
「わーっ!柚子姉、ありがとうっ!」
「久しぶり、フゥ太、ランボ。」
「ツナ兄!お帰りなさい!」
「ガハハ!ツナみっけ!」
びゅーんっていう効果音が付く感じでツナさんに抱きつくランボ君。
何だか…意外だ。
あんなに腹黒横暴ボスなのに…
「何か言った?柚子。」
『いっ、いえ!!』
……ほら。
あたしにだけなのかな?
うわ、哀しいというか虚しい…。
うーん…でも、これだけ周りの信頼を集めてるって事は………
マフィアのボスって、ちょっと腹黒いくらいがちょうどいいのかも…
「さっきから随分と失礼な事を考えてるようだけど、」
ひょえええ!!!
『ご、ごめんなさいっ!』
「ま、それは後でいいや。それを弾けばいいんだよな?フゥ太。」
「うん、お願い!」
「分かった、ちょっと待ってろな。」
着替える為か、大広間を出ようとするツナさん。
すると、ランボ君が付いて行こうとする。
「ツナーっ!ランボさんも連れてけーっ!」
「おっと、ランボもちょっと待ってよーな♪」
「サンキュ、山本。」
その時、ツナさんが山本さんに向けたのは、
紛れもなく普通の笑みで。
『(う……///)』
何だろ、
“普通の優しい大学生”に見えた……。
『ねぇねぇ、』
「なに?柚子姉。」
山本さんがランボ君と戯れている間、あたしはそっとフゥ太君に聞く。
『ツナさんに、いつも教えてもらってるの?』
「いつもってワケじゃないけど、僕が分からない所は自分で弾いて教えてくれるんだ。」
『怖くない?』
「え?全然怖くないよ。ちょっと前にツナ兄が楽器を始めて、僕も一緒に始めたんだ!ツナ兄はすぐに上手くなったけど、僕はなかなか…」
苦笑いを見せるフゥ太君。
やっぱり、フゥ太君にとっては優しいお兄ちゃんみたいな存在なんだ……。
「柚子姉は?」
『ほえ?』
「どうしてココでメイドさんしてるの?」
『めっ、メイドじゃないよ!///家政婦!!!』
「あ、そうなんだぁ。で、どうして?」
『えっと…騙された、のかな?』
「誰に?」
キョトンとして丸い目を向けるフゥ太君に、それ以上の事は言えなかった。
『いや、えっと……あたしも楽器やってるから、ココで一緒にやらないかって誘われて…。』
「そうなんだ!」
それからあたしとフゥ太君は、お互いの楽器について話していた。
10分後、あたし達は演奏室に向かった。
あたしは掃除をしなくちゃとか思ってたんだけど、
山本さんが「今日くらいいーじゃねーか♪」っておっしゃるんだもん…。
それに、
ツナさんのバイオリン聞くの好きだし…♪
「何処から?全部弾けばいい?」
「あ、うん!」
「ランボさんもーっ!!」
『あ、あの!ジッとしてて、ね?』
「う~~~っ。」
広い演奏室を走り回ろうとするランボ君を、何とか椅子に座らせる。
目を閉じて、軽く深呼吸をするツナさん。
そして、演奏が始まった。
ヴィヴァルディの『四季』より、
“夏 -第3楽章(夏の嵐)-”
始まりからグッと引き込まれる旋律。
そして、特徴的な力強さ。
曲自体にも吃驚だけどやっぱり…
それを一発で弾けちゃうツナさんに吃驚。
コンクールとかには出ないのかな?
こんなに上手いのに勿体ない気がする。
マフィアのボスだから、表舞台には立っちゃいけないって事、なのかな…?
5分に満たない第3楽章を、あたし達は真剣に聞いていた。
まるで、本当の嵐がやって来ているかのように息を飲みながら。
---
------
-----------
パチパチパチ…
やっぱり何度聞いても素敵で、
どんな曲でも綺麗で、
あたしはツナさんのバイオリンが好き。
「これで分かった?」
「ありがとうツナ兄!イメージが湧いたよ!!」
『良かったね、フゥ太君♪』
「うんっ!」
あぁ…可愛い……
そして癒しだぁ……
「柚子姉もありがとう。お菓子とジュース、おいしかったよ♪」
『いえいえ、また来てね!』
その時、時計の鐘が3時である事を知らせる。
あ!演奏出来る時間だっ♪
『(さーてとっ、)』
あたしが部屋をそうっと出ようとした、
その時。
「待てよ、柚子。」
『ぅ…』
ちょっと、いや…
とてつもな~く嫌な予感……
「フゥ太達が来てから掃除してないだろ?その分仕事続行。」
き、キターーー!!!
ツナさん十八番の横暴発言!!!
「誰が。」
『すみません!』
必死に頭を下げるけど、やっぱりお掃除はしなくちゃいけないようで。
『(あー…あたしの演奏時間がぁ…(泣)』
よし、今日は勇気を出して反論!
『い、いつもちゃんとしてるんですから、今日くらいいいじゃないですかぁ!』
「ふーん…俺に口答えするワケ?」
『う…だって……3時から4時はお休みタイムですもんっ!ツナさんが言ったんじゃないですかぁ!』
「そうだけど………じゃあ、1ついい事教えてあげようか。」
『へ?』
ツナさんが“いい事”って言うんだから、
あたしにとって“いい事”であるハズが無い!!
身構えるあたしに、ツナさんは笑顔で言った。
「柚子がフゥ太達に出したあのオレンジジュース、骸専用なんだよね。本人にバレたら……何かされるんじゃ…」
『おっ、お掃除頑張って来まーす!!!』
「宜しく♪」
あぁーっ、ツナさんのバカ!!
つーか何で骸さん!!?
あの人何でそんな幼稚な味覚なの!?
あ、でもこないだビターチョコレート食べてた……
うーん、謎。
---
その光景を横で見ていたフゥ太は、山本に問いかける。
「柚子姉って…もしかしてツナ兄のお気に入り?」
「ん?あぁ…そーらしいぜ!」
「ふーん…」
「それがどーかしたのか?」
「え?んーん、別に何でもないよ。」
ツナ兄のお気に入りじゃなかったら僕が貰ってたのに、
なんていうフゥ太の黒い考えは、
ツナはおろか、柚子が知る由もなく。
『(骸さんのバカーっ!)』
「ただいま帰りましたよー、僕の柚子ーっ♪」
『お、お帰りなさい!骸さん!(汗)』
「おや?表情が引きつってませんか?そんなに僕が好きですか?」
『………え"?』
「大丈夫ですよ、恥ずかしがらなくても。僕はいつでも柚子を愛して……」
『(この人がポジティブで良かった…。)』
ソレイユ
太陽のような笑みの下、しっかりと腹黒が受け継がれているとは誰も知らず。
continue...
相変わらずお掃除は大変です。
「おっ、柚子!」
『山本さん!お帰りなさいっ!』
「ただいま♪掃除してんのかー、偉いのな!」
『えっ、いえいえ!家政婦ですから!』
そう、私は家政婦私は家政婦。
ちょっと前に婚約者役やらされただけだもん、
絶対それ以上になるもんか!
山本さんからユニフォームを預かって、洗濯機の方へと歩き始めた、その時。
ピーンポーン…
『あ、はいっ!!』
突然鳴らされるチャイム。
あたしは急いで洗い物を洗濯機に入れて、玄関へと走る。
『お待たせして申し訳ありません、どちら様で………すか…?』
ドアを開けたあたしの目の前にいたのは、
大きな目と可愛いマフラーの少年と、黒髪パーマに角(?)が付いている男の子。
「こんにちは!ツナ兄いますか?」
「ガハハ!ランボさん、ツナと遊びに来てやったんだもんね!!」
『あ、あの…今外出してるんですけど…とりあえず、中でお待ちになりますか?』
「あ、お願いします!」
ペコリと頭を下げる彼は、パッと見中学生くらいだろうか。
そしてこっちの…
「ガハハハ!広ーい!!!」
「ランボ!走ったら危ないよ!」
「フゥ太のアホー!大丈夫だもんね……っ」
コケッ、
ズベベーッ…
『あ!あの、大丈夫ですか!?』
「ぐっ……が…ま…ん…………うわぁぁぁん!!!」
「だから言わんこっちゃない…。」
角(?)が付いてる子は…小学生くらいかなぁ…?
ってゆーか…
『ランボさん!膝、擦りむいてます!』
「うぐっ…」
「あーあ、しょうがないなぁ。」
『あたし、お薬取って来ま…』
「大丈夫です、僕が持ってますから。」
その子は、どうやらしっかり者のようで。
あたしは思わず感心する。
「そうだ、まだお名前聞いてませんでしたよね?僕はフゥ太です。」
『あ、牧之原柚子と言います!どうぞ宜しく!』
あたしがお辞儀すると、フゥ太君もランボさんの手当をしながらぺこっと頭を下げた。
「じゃあ、柚子姉って呼んでもいいですか?」
『あ、はい!私はフゥ太君、でいいでしょうか?』
あたしが聞くと、フゥ太君はうーんと唸ってからこう言った。
「僕の方が年下だから、敬語とかいらないです。」
『えっ?じゃ、じゃあ!フゥ太君もあたしには敬語無しで。』
あたしが笑顔で提案すると、フゥ太君は目を丸くして。
「いいんですか?」
『うんっ!』
「ありがと柚子姉っ!」
何だかなぁ…
少年って癒しだ…。
あ、決してそんなやましい事を考えてるのではなくて!
萌えとかでもなくて!!
(骸さんとキャラかぶっちゃう!)
ただ…
この頃腹黒ボスを見慣れてしまったものですから…
「何だって?柚子。」
『ひょええ!!』
吃驚して振り向いたあたし。
そこに立っていたのは…
『山本さんですかぁ……』
「ん?」
いや、マジで心臓止まるかと思いましたよ。
台詞が軽くツナさん系統だったもん。
吃驚させないで下さいよー。
「あ!武兄!」
「お、フゥ太じゃねーか!久しぶりだな♪」
『あ、お知り合いだったんですか!』
「そりゃーツナの弟みたいなモンだしな♪」
山本さんはワシャワシャっとフゥ太君の頭を撫でる。
「コラーッ!俺っちを無視するなーっ!!」
『ぎょわっ!』
いつの間に立ち上がったのか、ランボさんがあたしの首に後ろから腕を回す。
…ちょいと苦しい……
「あっ!ランボ!柚子姉が困ってるだろ!?」
「無視したのが悪いんだもんねーっ。」
「ランボ!!」
『いーのフゥ太君、これくらい…大丈夫だから。』
…ちょいと苦しいけど……(泣)
首に抱きつかれてるから後ろが見えない。
仕方がないからそのまま手探りでランボさんのモジャモジャ髪の毛を撫でる。
『ごめんね、貴方にも自己紹介しなくちゃね。』
「ん?」
『あたし、牧之原柚子。柚子でいーよ。』
「俺っちは、ランボさんだもんね!!」
『宜しくねっ♪』
出来るだけ後ろを向いて笑いかけると、ランボさんも笑ってるのが見えた。
ランボ君、でもいいかな?
フゥ太君が“君”なのに、ランボ“さん”じゃおかしいもんね。
「ところでフゥ太、何かあったのか?」
「うん、ツナ兄に聞きたい事があって…」
フゥ太君は3枚の楽譜を取り出した。
『Summer mvt 3 Presto……ヴィヴァルディの…』
「課題曲なんだ、すっごく難しくてツナ兄にお手本聞かせてもらおうと思って…」
フゥ太君、バイオリンやってるんだぁ。
Summer mvt 3 Presto…
訳すと“夏の嵐”。
タイトルの通り、穀物をなぎ倒して行く嵐を表現してる曲だけど、なかなかテンポが速い。
というか…あたしはバイオリン専門じゃないから詳しい難易度は分からないんだけど…。
「そっかー、ツナだったらすぐ弾けるもんな!」
「それで、僕がツナ兄のトコに行くって言ったらランボが付いて来て…」
『あ、だったらお菓子でも持って来ようか?』
「ホント!?柚子姉!」
『うんっ♪待っててね。』
あたしはキッチンへと駆けて行った。
その間に、山本さんがフゥ太君とランボ君を通しておいてくれるそうだ。
『(何がいいかな~?)』
とりあえず棚の中にしまってあったお客様用のクッキーを取り出す。
お皿に綺麗に乗せてオレンジジュースと一緒にお盆を乗せる。
ってゆーか…オレンジジュースって…
一体誰が、何の為に買ったの??
ココにいる人達の性格上、フゥ太君達が来るのを予想して…なんて事はなさそうだし。
とにかく大広間に戻ろうとした、その時。
「ただいまー。」
『あ、ツナさん!』
まったく、何てタイミングがいいんだろうか、この人は。
『お帰りなさいっ♪』
「あぁ柚子、ただいま。」
『大広間に2人お客様が来てますよ。』
「客…?」
首を傾げたツナさんは、あたしが持ってたクッキーとジュースを見て納得したようだった。
「フゥ太とランボ?」
『凄いです!よく分かりましたね!』
「当たり前。」
ツナさんはそのままあたしと大広間へ向かった。
『お待たせしました、お菓子持って来ましたよ♪』
「わーっ!柚子姉、ありがとうっ!」
「久しぶり、フゥ太、ランボ。」
「ツナ兄!お帰りなさい!」
「ガハハ!ツナみっけ!」
びゅーんっていう効果音が付く感じでツナさんに抱きつくランボ君。
何だか…意外だ。
あんなに腹黒横暴ボスなのに…
「何か言った?柚子。」
『いっ、いえ!!』
……ほら。
あたしにだけなのかな?
うわ、哀しいというか虚しい…。
うーん…でも、これだけ周りの信頼を集めてるって事は………
マフィアのボスって、ちょっと腹黒いくらいがちょうどいいのかも…
「さっきから随分と失礼な事を考えてるようだけど、」
ひょえええ!!!
『ご、ごめんなさいっ!』
「ま、それは後でいいや。それを弾けばいいんだよな?フゥ太。」
「うん、お願い!」
「分かった、ちょっと待ってろな。」
着替える為か、大広間を出ようとするツナさん。
すると、ランボ君が付いて行こうとする。
「ツナーっ!ランボさんも連れてけーっ!」
「おっと、ランボもちょっと待ってよーな♪」
「サンキュ、山本。」
その時、ツナさんが山本さんに向けたのは、
紛れもなく普通の笑みで。
『(う……///)』
何だろ、
“普通の優しい大学生”に見えた……。
『ねぇねぇ、』
「なに?柚子姉。」
山本さんがランボ君と戯れている間、あたしはそっとフゥ太君に聞く。
『ツナさんに、いつも教えてもらってるの?』
「いつもってワケじゃないけど、僕が分からない所は自分で弾いて教えてくれるんだ。」
『怖くない?』
「え?全然怖くないよ。ちょっと前にツナ兄が楽器を始めて、僕も一緒に始めたんだ!ツナ兄はすぐに上手くなったけど、僕はなかなか…」
苦笑いを見せるフゥ太君。
やっぱり、フゥ太君にとっては優しいお兄ちゃんみたいな存在なんだ……。
「柚子姉は?」
『ほえ?』
「どうしてココでメイドさんしてるの?」
『めっ、メイドじゃないよ!///家政婦!!!』
「あ、そうなんだぁ。で、どうして?」
『えっと…騙された、のかな?』
「誰に?」
キョトンとして丸い目を向けるフゥ太君に、それ以上の事は言えなかった。
『いや、えっと……あたしも楽器やってるから、ココで一緒にやらないかって誘われて…。』
「そうなんだ!」
それからあたしとフゥ太君は、お互いの楽器について話していた。
10分後、あたし達は演奏室に向かった。
あたしは掃除をしなくちゃとか思ってたんだけど、
山本さんが「今日くらいいーじゃねーか♪」っておっしゃるんだもん…。
それに、
ツナさんのバイオリン聞くの好きだし…♪
「何処から?全部弾けばいい?」
「あ、うん!」
「ランボさんもーっ!!」
『あ、あの!ジッとしてて、ね?』
「う~~~っ。」
広い演奏室を走り回ろうとするランボ君を、何とか椅子に座らせる。
目を閉じて、軽く深呼吸をするツナさん。
そして、演奏が始まった。
ヴィヴァルディの『四季』より、
“夏 -第3楽章(夏の嵐)-”
始まりからグッと引き込まれる旋律。
そして、特徴的な力強さ。
曲自体にも吃驚だけどやっぱり…
それを一発で弾けちゃうツナさんに吃驚。
コンクールとかには出ないのかな?
こんなに上手いのに勿体ない気がする。
マフィアのボスだから、表舞台には立っちゃいけないって事、なのかな…?
5分に満たない第3楽章を、あたし達は真剣に聞いていた。
まるで、本当の嵐がやって来ているかのように息を飲みながら。
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パチパチパチ…
やっぱり何度聞いても素敵で、
どんな曲でも綺麗で、
あたしはツナさんのバイオリンが好き。
「これで分かった?」
「ありがとうツナ兄!イメージが湧いたよ!!」
『良かったね、フゥ太君♪』
「うんっ!」
あぁ…可愛い……
そして癒しだぁ……
「柚子姉もありがとう。お菓子とジュース、おいしかったよ♪」
『いえいえ、また来てね!』
その時、時計の鐘が3時である事を知らせる。
あ!演奏出来る時間だっ♪
『(さーてとっ、)』
あたしが部屋をそうっと出ようとした、
その時。
「待てよ、柚子。」
『ぅ…』
ちょっと、いや…
とてつもな~く嫌な予感……
「フゥ太達が来てから掃除してないだろ?その分仕事続行。」
き、キターーー!!!
ツナさん十八番の横暴発言!!!
「誰が。」
『すみません!』
必死に頭を下げるけど、やっぱりお掃除はしなくちゃいけないようで。
『(あー…あたしの演奏時間がぁ…(泣)』
よし、今日は勇気を出して反論!
『い、いつもちゃんとしてるんですから、今日くらいいいじゃないですかぁ!』
「ふーん…俺に口答えするワケ?」
『う…だって……3時から4時はお休みタイムですもんっ!ツナさんが言ったんじゃないですかぁ!』
「そうだけど………じゃあ、1ついい事教えてあげようか。」
『へ?』
ツナさんが“いい事”って言うんだから、
あたしにとって“いい事”であるハズが無い!!
身構えるあたしに、ツナさんは笑顔で言った。
「柚子がフゥ太達に出したあのオレンジジュース、骸専用なんだよね。本人にバレたら……何かされるんじゃ…」
『おっ、お掃除頑張って来まーす!!!』
「宜しく♪」
あぁーっ、ツナさんのバカ!!
つーか何で骸さん!!?
あの人何でそんな幼稚な味覚なの!?
あ、でもこないだビターチョコレート食べてた……
うーん、謎。
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その光景を横で見ていたフゥ太は、山本に問いかける。
「柚子姉って…もしかしてツナ兄のお気に入り?」
「ん?あぁ…そーらしいぜ!」
「ふーん…」
「それがどーかしたのか?」
「え?んーん、別に何でもないよ。」
ツナ兄のお気に入りじゃなかったら僕が貰ってたのに、
なんていうフゥ太の黒い考えは、
ツナはおろか、柚子が知る由もなく。
『(骸さんのバカーっ!)』
「ただいま帰りましたよー、僕の柚子ーっ♪」
『お、お帰りなさい!骸さん!(汗)』
「おや?表情が引きつってませんか?そんなに僕が好きですか?」
『………え"?』
「大丈夫ですよ、恥ずかしがらなくても。僕はいつでも柚子を愛して……」
『(この人がポジティブで良かった…。)』
ソレイユ
太陽のような笑みの下、しっかりと腹黒が受け継がれているとは誰も知らず。
continue...