🎼本編
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夕方になっても、柚子は帰って来なかった。
自由時間は3~4時だろ。
何で規約破ってんだよ。
そんな文句が頭の中を渦巻く。
だけど最後に出て来るのは、
柚子の表情で。
---『“家政婦”のあたしのことなんて、放っておけばいいじゃないですか!』
捜しに行ったら負けみたいな気がして、
どうしても動き出せなかった。
そんな俺の携帯が、明るく音を立てる。
ディスプレイに映った名前は…
「柚子…?」
メールだった。
外出ついでに買い出しに行くから遅くなります、
とだけ打ってあった。
返信する言葉が浮かばない。
あんな風に飛び出して行ったのに、柚子は帰って来るらしい。
勘違い?
そんなのいくらでも解いてやるよ。
今の俺がこんなに無気力になってんのは、
そんな理由じゃない。
俺は……
柚子の涙に衝撃を受けたんだ。
“笑顔も見たいけど、涙も見せてもらいたい”…
そんな口説き文句を聞いた事があるけど、
理由の分からない涙は見たくない。
慰める術を、知らないから。
「柚子…」
それでも俺は、
柚子に決めたんだ。
あの日、
俺に勇気をくれた柚子を、
愛し続けるって。
バイオリンを手に取り、ゆっくりと引き始める。
演奏室以外で弾くのは、久しぶりかもしれない。
ガチャ、
不意にドアが開き、リボーンが入って来た。
「モーツァルト、ハフナー・セレナード第7番第4楽章か?」
「……詳しいじゃんか。」
「比較的有名だしな。」
何しに来た、という目で見れば、
いつもみたいにニッと笑う。
「落ち込んでんのかと思って覗きに来たんだ。」
「悪趣味だな。」
「捜しにいかねーのか?柚子の事。」
「メールが来た、帰って来るってよ。」
「そーか…やっぱ強ぇな。」
リボーンが目深にハットをかぶる。
俺はバイオリンを引き続け、窓の外を見る。
空の低い所に、満月が出始めていた。
---
------
『あー、目が赤い…。』
近くの公衆トイレの鏡で確認すると、まだ酷かった。
ツナさんにはさっきメールしたから、規約違反には…多分なってない。
なってても、まぁ…いっか。
そうすれば辞めさせてくれそうだし…
いや、あの横暴ボスだもん。
絶対タダで辞めさせたりはしない!!
『(仕方無いなぁ…)』
あたしは7号館に戻る事を決意した。
関係無いもん、自分がどうして雇われたかなんて。
あたしはただ、家政婦の仕事をやってればいいんだから!
…今のところは。
スーパーで適当に食材を買って、7号館への道を歩き始めた。
『あれ…?』
7号館に近づくにつれ、聞こえて来るバイオリンの音。
これって…
『ツナさんのバイオリン…?』
やっぱり綺麗だなって思う。
あたしも、練習しなくちゃいけないのに…
『(よし!)』
明日また、練習頑張ろう!
裏口から、7号館に入った。
『ただいま帰りましたー!』
すると、バイオリンの音が止んだ。
やっぱりツナさんだったんだ…。
「柚子、」
『あ、えと、ただいま、です…』
雲雀さんが部屋から出て来て、あたしはビックリする。
「演奏室に集合だって。」
『へ…?』
「聞こえなかったの?」
『いえ!聞こえました!!』
あたしは買った物を急いでキッチンに持って行き、フルートを持って演奏室に向かった。
『し、失礼します…』
「柚子ーっ!」
『きゃああ!!』
骸さんの抱きつきは、だいぶ避けられるようになったと思う。
「お帰りなさい♪」
『ただいま、です…』
「柚子っ、楽譜だぜ!」
『え?』
山本さんに渡された楽譜を見て、あたしは目を見開いた。
『コレ…』
「んだよ、見た事ねぇのか?」
『そ、そりゃぁ一応フルート奏者ですからありますけど……』
でも、コレは…
今回のコンクールの曲。
『どうして…?』
「弾くぞ。」
『リボーンさん!!』
既に指揮台の上にいるリボーンさん。
あたしは慌てて譜面台の前に立つ。
「準備出来たぞ、ツナ。」
「今行く。」
バイオリンを持ったツナさんが入って来る。
何だか緊張して、目が合わせられない。
「柚子、」
『は、はい!』
リボーンさんに話しかけられ、かなり緊張。
「何処まで弾けるんだ?」
『ぜ、全部行けます!楽譜見れば、ですけど…』
「そーか、じゃあやってみるぞ。」
まさか…
皆さんであたしの練習に付き合ってくれる、とか??
管弦楽団じゃないから、少し感じが違うけど、
あたしは精一杯フルートを合わせる。
「柚子、」
リボーンさんが、指揮をしながら言った。
「これは“フルートの為の小協奏曲”だぞ。柚子が合わせるんじゃねーぞ。」
あ、そっか。
あたしは軽く頷いて、自分の演奏をする。
いつも振り回されてる人達に向かって、
“あたしの演奏に合わせて!”
なーんて表現をするのは、少し変な気分。
演奏が終わると、山本さんが頭を撫でてくれた。
「楽しかったな、柚子!」
『はいっ!』
「そろそろ飯の時間だな。」
『あ、すぐ用意します!』
あたしはパタパタ階段を駆け下りる。
その日の夕飯時も、ツナさんとは目が合わせられなかった。
だって、あたしってば怒鳴っちゃったんだもん…
別に喧嘩した覚えはないし、
元々仲良しってワケじゃない…と思うけど、
何か気まずいっていうか……。
このモヤモヤが何なのか、
あたしには分からない。
何がこんなに気まずいのかも、理解不能。
『どーすればいーんだろー…』
ボーッと考え事をしながら、夕飯後に食器を洗う。
すると…
「柚子、」
『はい?』
突然ツナさんが呼ぶ声がして、あたしは振り向く。
けどそこにはツナさんの姿は無い。
『(あ…)』
廊下の床に、人影。
ツナさんが壁越しに立っているんだと分かった。
『何ですか?ツナさん。』
ちょっと緊張するけど、いつものように答える。
「あのさ…ハルは違うから。」
『え?』
「何を勘違いしたか知らないけど、俺は……柚子を危険に晒したりしないから。」
『ツナ、さん……?』
唐突過ぎて、分からない。
あたしはとりあえず食器洗いを続ける。
「それと、柚子を辞めさせるつもりもない。」
『え、あの……怒鳴ってしまったのを怒ってるなら…謝ります…。』
「違ぇよ。」
『じゃあ一体…』
壁越しなのがどーしても気に入らなくて、あたしは方向転換しようとする。
けど、それは呆気なく阻止された。
素早くあたしの後ろに回って抱きしめるツナさん。
そのせいで、動けなくなってしまった。
『ちょ、あの、ツナさん!??///』
すっごーく恥ずかしいのですが…
ツナさんは、何にも言わない。
ただ後ろから抱きしめて、あたしの肩に頭を預けるだけ。
『ツナさ…』
「柚子は…俺が嫌い?」
『い、今更何言って…』
「いいから答えろ。」
うぅ…横暴ボスめ。
えっと、えっと……
『嫌い、じゃないと思います。』
「……俺もだよ。」
間。
『……はい?』
「俺も、柚子が好きだよ。」
突然の言葉に、あたしは驚いて固まる。
いやいや、だってこの会話の流れからしてまず告白じゃないだろう。
何とか落ち着きを取り戻そうとするあたしに、ツナさんは続ける。
「俺のフィアンセは楽器弾けるヤツって決めてんだよ。だからハルは違う。」
『な…何ですかその条件…。』
聞き返す柚子に、ツナは腕を解いて付け加える。
「っつーワケで、柚子は候補だよ。」
『なっ…あたしは嫌ですーっ!家政婦ですから!!』
走り去って行く彼女は、
それが自分を示す為に設けられた条件とは知らず。
「柚子、」
『こ、今度は何ですか…?』
「好きだよ。」
その言葉が、
自分のみに贈られる愛の告白とは気付かず。
『ぅ……プレイボーイは嫌われますよ!!///』
真っ赤になって自室へと走る柚子を見送りながら、ツナは呟いた。
「お前にしか言わねぇっての、バカ柚子。」
セレナーデ
この安心が何処から来たのか、あたしにはまだ分からないけれど。
continue…
自由時間は3~4時だろ。
何で規約破ってんだよ。
そんな文句が頭の中を渦巻く。
だけど最後に出て来るのは、
柚子の表情で。
---『“家政婦”のあたしのことなんて、放っておけばいいじゃないですか!』
捜しに行ったら負けみたいな気がして、
どうしても動き出せなかった。
そんな俺の携帯が、明るく音を立てる。
ディスプレイに映った名前は…
「柚子…?」
メールだった。
外出ついでに買い出しに行くから遅くなります、
とだけ打ってあった。
返信する言葉が浮かばない。
あんな風に飛び出して行ったのに、柚子は帰って来るらしい。
勘違い?
そんなのいくらでも解いてやるよ。
今の俺がこんなに無気力になってんのは、
そんな理由じゃない。
俺は……
柚子の涙に衝撃を受けたんだ。
“笑顔も見たいけど、涙も見せてもらいたい”…
そんな口説き文句を聞いた事があるけど、
理由の分からない涙は見たくない。
慰める術を、知らないから。
「柚子…」
それでも俺は、
柚子に決めたんだ。
あの日、
俺に勇気をくれた柚子を、
愛し続けるって。
バイオリンを手に取り、ゆっくりと引き始める。
演奏室以外で弾くのは、久しぶりかもしれない。
ガチャ、
不意にドアが開き、リボーンが入って来た。
「モーツァルト、ハフナー・セレナード第7番第4楽章か?」
「……詳しいじゃんか。」
「比較的有名だしな。」
何しに来た、という目で見れば、
いつもみたいにニッと笑う。
「落ち込んでんのかと思って覗きに来たんだ。」
「悪趣味だな。」
「捜しにいかねーのか?柚子の事。」
「メールが来た、帰って来るってよ。」
「そーか…やっぱ強ぇな。」
リボーンが目深にハットをかぶる。
俺はバイオリンを引き続け、窓の外を見る。
空の低い所に、満月が出始めていた。
---
------
『あー、目が赤い…。』
近くの公衆トイレの鏡で確認すると、まだ酷かった。
ツナさんにはさっきメールしたから、規約違反には…多分なってない。
なってても、まぁ…いっか。
そうすれば辞めさせてくれそうだし…
いや、あの横暴ボスだもん。
絶対タダで辞めさせたりはしない!!
『(仕方無いなぁ…)』
あたしは7号館に戻る事を決意した。
関係無いもん、自分がどうして雇われたかなんて。
あたしはただ、家政婦の仕事をやってればいいんだから!
…今のところは。
スーパーで適当に食材を買って、7号館への道を歩き始めた。
『あれ…?』
7号館に近づくにつれ、聞こえて来るバイオリンの音。
これって…
『ツナさんのバイオリン…?』
やっぱり綺麗だなって思う。
あたしも、練習しなくちゃいけないのに…
『(よし!)』
明日また、練習頑張ろう!
裏口から、7号館に入った。
『ただいま帰りましたー!』
すると、バイオリンの音が止んだ。
やっぱりツナさんだったんだ…。
「柚子、」
『あ、えと、ただいま、です…』
雲雀さんが部屋から出て来て、あたしはビックリする。
「演奏室に集合だって。」
『へ…?』
「聞こえなかったの?」
『いえ!聞こえました!!』
あたしは買った物を急いでキッチンに持って行き、フルートを持って演奏室に向かった。
『し、失礼します…』
「柚子ーっ!」
『きゃああ!!』
骸さんの抱きつきは、だいぶ避けられるようになったと思う。
「お帰りなさい♪」
『ただいま、です…』
「柚子っ、楽譜だぜ!」
『え?』
山本さんに渡された楽譜を見て、あたしは目を見開いた。
『コレ…』
「んだよ、見た事ねぇのか?」
『そ、そりゃぁ一応フルート奏者ですからありますけど……』
でも、コレは…
今回のコンクールの曲。
『どうして…?』
「弾くぞ。」
『リボーンさん!!』
既に指揮台の上にいるリボーンさん。
あたしは慌てて譜面台の前に立つ。
「準備出来たぞ、ツナ。」
「今行く。」
バイオリンを持ったツナさんが入って来る。
何だか緊張して、目が合わせられない。
「柚子、」
『は、はい!』
リボーンさんに話しかけられ、かなり緊張。
「何処まで弾けるんだ?」
『ぜ、全部行けます!楽譜見れば、ですけど…』
「そーか、じゃあやってみるぞ。」
まさか…
皆さんであたしの練習に付き合ってくれる、とか??
管弦楽団じゃないから、少し感じが違うけど、
あたしは精一杯フルートを合わせる。
「柚子、」
リボーンさんが、指揮をしながら言った。
「これは“フルートの為の小協奏曲”だぞ。柚子が合わせるんじゃねーぞ。」
あ、そっか。
あたしは軽く頷いて、自分の演奏をする。
いつも振り回されてる人達に向かって、
“あたしの演奏に合わせて!”
なーんて表現をするのは、少し変な気分。
演奏が終わると、山本さんが頭を撫でてくれた。
「楽しかったな、柚子!」
『はいっ!』
「そろそろ飯の時間だな。」
『あ、すぐ用意します!』
あたしはパタパタ階段を駆け下りる。
その日の夕飯時も、ツナさんとは目が合わせられなかった。
だって、あたしってば怒鳴っちゃったんだもん…
別に喧嘩した覚えはないし、
元々仲良しってワケじゃない…と思うけど、
何か気まずいっていうか……。
このモヤモヤが何なのか、
あたしには分からない。
何がこんなに気まずいのかも、理解不能。
『どーすればいーんだろー…』
ボーッと考え事をしながら、夕飯後に食器を洗う。
すると…
「柚子、」
『はい?』
突然ツナさんが呼ぶ声がして、あたしは振り向く。
けどそこにはツナさんの姿は無い。
『(あ…)』
廊下の床に、人影。
ツナさんが壁越しに立っているんだと分かった。
『何ですか?ツナさん。』
ちょっと緊張するけど、いつものように答える。
「あのさ…ハルは違うから。」
『え?』
「何を勘違いしたか知らないけど、俺は……柚子を危険に晒したりしないから。」
『ツナ、さん……?』
唐突過ぎて、分からない。
あたしはとりあえず食器洗いを続ける。
「それと、柚子を辞めさせるつもりもない。」
『え、あの……怒鳴ってしまったのを怒ってるなら…謝ります…。』
「違ぇよ。」
『じゃあ一体…』
壁越しなのがどーしても気に入らなくて、あたしは方向転換しようとする。
けど、それは呆気なく阻止された。
素早くあたしの後ろに回って抱きしめるツナさん。
そのせいで、動けなくなってしまった。
『ちょ、あの、ツナさん!??///』
すっごーく恥ずかしいのですが…
ツナさんは、何にも言わない。
ただ後ろから抱きしめて、あたしの肩に頭を預けるだけ。
『ツナさ…』
「柚子は…俺が嫌い?」
『い、今更何言って…』
「いいから答えろ。」
うぅ…横暴ボスめ。
えっと、えっと……
『嫌い、じゃないと思います。』
「……俺もだよ。」
間。
『……はい?』
「俺も、柚子が好きだよ。」
突然の言葉に、あたしは驚いて固まる。
いやいや、だってこの会話の流れからしてまず告白じゃないだろう。
何とか落ち着きを取り戻そうとするあたしに、ツナさんは続ける。
「俺のフィアンセは楽器弾けるヤツって決めてんだよ。だからハルは違う。」
『な…何ですかその条件…。』
聞き返す柚子に、ツナは腕を解いて付け加える。
「っつーワケで、柚子は候補だよ。」
『なっ…あたしは嫌ですーっ!家政婦ですから!!』
走り去って行く彼女は、
それが自分を示す為に設けられた条件とは知らず。
「柚子、」
『こ、今度は何ですか…?』
「好きだよ。」
その言葉が、
自分のみに贈られる愛の告白とは気付かず。
『ぅ……プレイボーイは嫌われますよ!!///』
真っ赤になって自室へと走る柚子を見送りながら、ツナは呟いた。
「お前にしか言わねぇっての、バカ柚子。」
セレナーデ
この安心が何処から来たのか、あたしにはまだ分からないけれど。
continue…