ヴァリアー編
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新たな賭けも加わって、
今、
嵐戦が始まる………
プリンス・ザ・リッパー
並盛病院にて。
廊下に響く、2つの足音。
開かれる1つのドア。
「「おばさん!!」」
「まぁ、京子ちゃんハルちゃん、来てくれたの?」
「ランボちゃんは!?」
「峠は超えて安定してる。あとは意識が戻るのを待つだけよ。」
ベッドには、傷付いたランボが寝かされていた。
それを見て目を潤ませる京子とハル。
「昨日の雷が傘に落ちたらしいの………それから坂を転げ落ちちゃったみたいで………。」
「そんな、可哀想…」
「ランボちゃん…」
ランボに寄り添う京子とハル。
その横で、奈々は昨晩の事を思い出す。
---「母さん、お願いだ。ランボを頼む………今は訳を言えないんだ。」
---「言えないって、あなたたち…!?」
---「ごめん!!」
---「ツナ…!」
京子とハルに言ったのは、咄嗟に作った嘘。
本当の事は、奈々自身も知らない。
イーピンを膝の上に乗せている奈々は、ポケットから一枚の紙を取り出した。
そこには、夫からの短いメッセージが書かれていた。
“黙ってツナの力になってやってくれ 父より”
それを見て、少し眉間に皺を寄せる奈々。
「あの人、何やってんのかしら!?帰って来たらこってり絞ってやるわ!」
---
------
-----------
「じゃぁ修業の第3段階を始めるぞ。」
「うん!」
返事をしたツナは、今までとは違うキリリとした目を見せた。
「第3段階はいよいよ死ぬ気のコントロールの最終形“死ぬ気の零地点突破”だ。」
「ぜろちてん?」
「いよいよ初代にしか出来なかったと言う、幻の奥義に進むんですね!」
バジルも意気込む。
ツナは、少し不安そうにリボーンに聞く。
「それが出来ればヴァリアーより強く、ザンザスに勝てるかな?」
「さーな、あいつは強ぇからな………」
それを聞いて少しだけ俯くツナ。
バジルは心配そうにその顔を覗き込む。
「沢田殿…」
「やるよ!可能性があるならなんだって!!」
覚悟を決めたツナに、バジルとの超モードでのスパーリングを命じるリボーン。
「多少体に無理はかかりますが、理論上はこれでいけるはずです。」
そう言ってバジルは、死ぬ気丸を2つ飲んだ。
「(思ったよりキツい……)準備、完了です!」
「だ、大丈夫なの?バジル君!!」
「拙者も、あんな奴らに親方様の守って来たボンゴレを渡したくないんです!それに………檸檬殿も…///」
「バジル君……………分かった!」
「よし。」
リボーンは、ツナに小言弾を撃つ。
ボンゴレのボスとか、
リングとか、
そういうのじゃなくて、
ただ俺は…
仲間を、
檸檬を、
失いたくない。
「バジル………恩にきる。」
---
------
------------
同じ頃、並盛中保健室。
「ふー、よしっ!出来たぜ、起きろシャマル!」
「ん?」
シャマルが起きると、そこには紙飛行機を大量生産し終わった獄寺が。
「………何やってんだ?お前。」
「何って………修業じゃねーか!新技仕上げんだろ!!」
「あーもう紙飛行機はいーんだ。」
「なぁ~~~!!?」
シャマルは面倒臭そうに頭を掻く。
「仕上げるっつったのはなぁ、そいつの成果がもう十分出てるからなのさ。」
「ま、待てよ!まだ一度も飛行機撃ち落としてねーぞ!」
「だ~か~らっ!こっから先はド根性の世界じゃねぇ。ナンパと同じなのよ。」
ワケの分からないことを言いつつ、シャマルの目は鋭く光っていた。
獄寺が理解に苦しんでいると、シャマルが問いを投げかける。
「お前、ナンパで一番大事なのは何か分かるか?」
「そ、そりゃぁ………エロさ?」
獄寺の答えを聞き、がっくりと頭を垂らすシャマル。
「(やっぱ中坊だ、こいつ………)」
呆れかえって、ヒントを与える事にする。
「ったくしょーがねーなー。ここだ、ここ。」
“ここ”と言いつつ、シャマルは自分のこめかみを指で突つく。
「もてねー奴は結局頭が足んねーのさ。頭をちょいとひねってタネを仕掛けをつくりゃー、落ちねー女なんて地球に1人もいねぇ!!」
「(言い切った!)」
そして、“メモ用紙”である大量の紙を、また渡される。
痺れを切らしてシャマルに向かって「ストレートに教えろ」と怒鳴る。
そしたらシャマルは急に真剣な顔になって、こう言った。
「お前のいる世界はな、自分で自分の生き延びる術を見つけられる奴しか、生き残れねーんだ。」
「なっ…!」
「お前だって知ってんだろ?檸檬ちゃんの過去をさ。」
突然檸檬の名が出て、俺は少し吃驚した。
「檸檬ちゃんだってストリートファイトの世界で、あの戦い方を自分で身に付けた。だからチャンプになったんだ。」
「自分で…」
「足んねー頭絞りだせ。俺は意味もなく5日間も飛行機飛ばしてたんじゃねーぜ。」
シャマルはそう言って、トライデントモスキートを一匹飛ばした。
それが、シャマルの周りをプーンと飛んでる。
「第一、おめーが弱ぇと教えた俺がカッコつかねーんだ。」
「結局自分の為じゃねーか!?」
俺が驚いてると、シャマルは更にとんでもねー事言い出しやがった。
「技が出来ねー限り、勝負には行かせねーからな。」
「ふざけんなよ!何だよそれ!!」
「このまま行きゃ、無駄死にするだけだ。」
「な!!?」
「お前の相手のベルフェゴールって奴な、あのヴァリアーの中でも一番の天才なんだとよ。」
シャマルの言葉に、俺は一瞬固まった。
---
------
------------
同じ頃、ヴァリアーの宿舎近くの裏路地。
スパッ、
血が吹き出し、男が1人倒れる。
その向こうには、今夜勝負を控えたヴァリアー側の嵐の守護者・ベルフェゴールが立っていた。
「派手にやってるね、ベル。」
「また覗き見かよ、マーモン。」
突如隣に現れたのは、霧の守護者・マーモン。
「任務の度にご当地の殺し屋消して遊ぶの良くないよ。裏社会の政治が無駄にこんがらがるだろ?」
「政治なんて知ったこっちゃないって。だって俺、王子だもん♪」
ベルはそう言うとにっこり笑う。白い歯が、綺麗に並んでいる。
するとそこに…
「ヴァリアー!貴様、よくも弟を!!」
「おっ、来た来た。弟をやれば来ると思ったんだよね。売り出し中の殺し屋兄弟だし。」
少しだけ嬉しそうに言うベルに、走って来た男は棒に太い針が付いた武器を向ける。
「死ねや!!」
だが、それがベルに当たる事はなく。
「ん、こいつ期待外れだな。」
ベルは少しだけ口を“ヘの字”に曲げる。
そして、キラリと光る薄型のナイフを取り出した。
「これ、俺の武器ね。」
その台詞が言われてから相手が倒れるまで、5秒と掛からなかった……。
「とっころで、」
「ム?」
「何しに来たのさ、殺し合いしに?」
「まさか。それじゃぁベルが今夜戦えなくなるだろ?」
「は?王子はチビに負けないから。」
ナイフを向けるベルに、冷静に返すマーモン。
「ベル、僕に感謝した方がいいよ。」
「何言って………」
『マーモンーっ!何処行っちゃったのぉー??』
突然聞こえて来た声は、聞き間違えるはずのない檸檬の声。
ベルは思わず固まった。
反対に、マーモンは得意気な顔をしている。
「OK、今日は感謝しとくよ♪」
「後でお金ちょうだいね。」
「ししし♪考えとく。」
ベルがそう言うと、マーモンは姿を消した。
と、その時。
『あっ!ベル~っ!!』
「どしたの?檸檬。こんなトコに来て。」
『マーモンとお出かけしてたんだけど………迷子になっちゃって。多分あたしが。』
ぺろっと舌を出す檸檬を見て、ベルもししっと笑った。
ふと、檸檬が足下の死体に気が付く。
『きゃあっ!!』
「ん?」
『これ、ベルがやったの?』
「まぁね。」
『も~~っ!簡単に人殺すの、イヤって言った。』
「予行練習♪」
ベルの言葉に、檸檬はため息をつく。
『確かに、日本の殺し屋はイタリアと違ってイイ人はほとんどいないけど。』
「じゃぁいいじゃん♪」
『でも…』
檸檬は、死体に向かって軽く十字をきった。
『帰ろ、ベル。あたし、この辺分かんなくて。』
「うしし♪しょーがないなー、ハイ。」
『え?』
突然差し出された、ベルの綺麗な手。
首をかしげるあたしに、ベルは言う。
「お手をどうぞ、姫君♪」
『…ありがとう。』
きゅっとベルの手を握ると、ベルは強く握り返して来た。
適度にあったかくて、思わず笑みがこぼれる。
「どしたの?お姫さま。」
『何でもないよ、王子様♪』
「そうそう、王子以外と手ぇ繋いじゃダメだからね。」
『何言ってんのよ、我が儘王………………子………………っ!!』
「ん?」
しょうがないよね。
だって、
我が儘王子って…
『(恭弥…………)』
思い出しちゃった。
今はヴァリアーにいるのに。
あたしって最低。
「どしたの?檸檬。」
『ううんっ!何でもなっ………!!?』
言葉が途切れたのは、
急に抱き締められたから。
『ベ………ル………?』
腕の中で、顔を上げる。
「嘘付くのナシ。」
『へ?』
「分かるよ。だって俺…」
“王子だもん♪”
そう来ると思ってた。
のに。
「檸檬の事、愛してるもん。」
『え………?』
一瞬、何て言われたか分からなかった。
ゆっくりゆっくり反芻して、やっと理解し始める。
ア、イ、シ、テ、ル?
理解し始めると同時に、顔が熱くなっていく。
それでも、ベルから目を逸らす事が出来ない。
ただその金髪を、
見開いた目で見つめる。
『あっ…あの………あたし………///』
「檸檬のいない世界なんてつまんない。檸檬に俺だけを見て欲しい。」
『え…?』
「俺のホンネ♪」
うししっと笑って、ベルはまたあたしを抱きしめた。
さっきより、きつく。
「分かってるよ、檸檬は仲間全員大好きなんだよね。けど、俺の“好き”は違うの。」
ベルの表情が、見えない。
「つまり、俺の中の特別な一番が、檸檬なワケ。」
『と…くべつ………?』
「特別一緒にいたくて、特別笑顔が見たくて、特別大事ってコト。」
それが………あたし?
「俺はいっつもハラハラしてたの。檸檬がみーんなに“大好き”って言うからさ。」
『それはっ………!』
“好き”
と
“愛してる”
は
別物だと思って使ってたから。
「檸檬は天然じゃなくて鈍感なんだよね。」
『なっ……!///』
「だからって、気付かせたところで振り向くワケでもないっしょ?」
恥ずかしいけど………当たり。
だって今まで、全然そーゆー事考えてなかったから。
みんなの事が大事で、
だから傷付いて欲しくない
それだけだったから。
あたしの一番は…
決まってない………
決めようともしてない
「そこでさ、1つ提案♪」
『え?』
ベルは腕を少し緩めて、あたしは恐る恐る上を向く。
『(あ。白い歯、綺麗。)』
そんな事を一瞬考えて、ベルの言葉に集中する。
………恥ずかしいけど。
「あのね、リング争奪戦でヴァリアーが勝ったとするじゃん。」
『う…うん……。』
そんな事、考えたくないけど。
「そしたらさ、本当にお姫さまになって欲しいんだ♪」
『どーゆー事?』
聞き返さなくても、何となく分かったような、そうでないような。
ベルの表情、ほんの少しだけ真剣さが増してた。
「俺の、俺だけの、彼女になって欲しいワケ♪♪」
何となく、
時間が止まった、
そんな気がした。
「どう?檸檬。」
俺的にはさ、ホントは
“今夜俺が勝ったら”
って言いたかったんだけど、それじゃぁ決まるの早いしね♪
王子優しーっ♪
『でっ…でもあたし………まだ…その………///』
俺の目の前で顔を真っ赤にしてる檸檬。
超可愛いし。
『その………ベルの事、その特別一番大好きって、決まってないのに………?』
あー、そんな事気にしてたの?
「大丈夫♪俺の彼女になれば、俺の事好きになるから♪」
『そ、そーゆーもん?』
「そーゆーもん。」
檸檬は暫く俯いて、何か必死に考えてる。
ちゃんとコクられたの、初めてだったんじゃん?
だったら嬉しいし♪
でもさ、檸檬は絶対俺のだから。
俺、絶対誰よりも檸檬の事愛してるもん♪
『ヴァリアーが、勝ったらだよね………?』
「しし、そーだよ♪」
それだけ聞くと、また俯いて何か色々考え始める檸檬。
もどかしいけど、ここでちゃんと檸檬の意志を尊重してあげないとね♪
無理矢理出来ないこともないけど、んな事したら檸檬に嫌われるかもしんないし。
それだけはヤだし。
だから、一種の賭け的な感じで、ね♪
目の前にいる檸檬。
何考えてんだろー?
俺が檸檬の顔を覗き込もうとしたら、檸檬が急に顔を上げた。
『あのね、ベル!あの、あたしっ………』
---
-------
-------------
夜の並盛。
ツナとバジル、リボーンは、戦場である学校へと向かっていた。
初めての超死ぬ気モードで疲れたバジルを、ツナは少し心配していた。
「いよいよ獄寺の勝負だな。」
リボーンが呟く。
「獄寺君ならきっと大丈夫だよね。」
半ば自分に言い聞かせるように言うツナに、リボーンが言った。
「獄寺の相手はベルフェゴールって奴でな、“プリンス・ザ・リッパー”って通り名なんだ。」
「プリン………?」
「切り裂き王子って意味だぞ。」
「え!?あの王子!?」
「あぁ、本当に王族の血を引いてるらしいんだ。だが、その常人離れした戦闘センスを持て余し、自らヴァリアーに入隊した変わり種だ。」
リボーンの情報に、付け足すバジル。
「拙者も親方様から聞きました。こと戦闘においてだけなら、ヴァリアーで最も才能があるのはベルフェゴールだと。」
すると、ツナの不安は一気に大きくなる。
「獄寺君、そんな恐ろしいのと………」
「厳しい勝負になる事は間違いねーな。」
会話が一段落したところで、並中に着いた。
そこには、山本と了平がいたが、獄寺はいなかった。
「あれ?獄寺君は?」
「何だ、ツナ達と一緒に来るんだと思ってたんだけどな。」
「まだ来てないぞ。」
するとリボーンが、
「もしかしてシャマルに止められてるのかもな。」
と。
シャマルは、勝機のない戦いに弟子を送りだす事はしない。
だから、新技が完成してないかもしれない。
リボーンがそう言って、俺はますます不安になった。
とりあえず、今回のフィールドである3階に上がったツナ達。
目の前のヴァリアーの中に、檸檬が溶け込んでいるのが見えた。
「檸檬………」
「檸檬はヴァリアーにいたんだ。仲が良くても納得出来るぞ。」
「でもよぉ、やっぱ腑に落ちねぇよな。」
「うむ。」
山本と了平に、リボーンはさらっと返す。
「それが、中立だ。」
と。
「う"お"ぉい檸檬、昼間は何処行ってたんだぁ?」
『えっとね……マーモンとお出かけしてたの。』
「では何故ベルと帰って来たんだ?」
『それはですねぇ………途中でベルと遭遇して、マーモンは勝手に帰っちゃって。』
「ってかレヴィもスクアーロもさ、あんまり詮索しないでくんない?ね、お姫さま♪」
『うぅ…///』
少し頬を赤らめて俯く檸檬に、スクアーロとレヴィは首をかしげた。
「それにしても、相手の嵐の守護者、来ないね。」
「逃げてどーすんだか。どーせ殺されんのに。」
『そっ、そんな事言わないでよ……。』
言葉を濁す檸檬に、チェルベッロが言った。
「檸檬様、本日もカプセルに入って頂きます。」
『うん、分かってる。』
「すぐ出してあげるからね、檸檬♪」
『ありがと。頑張ってね、ベル。』
ベルに微笑み、檸檬はカプセルの前に立った。
獄寺が来ないと勝負が始まらない。
来ないのにカプセルに入ったら、リングは完成しないまま、カプセルから出にくくなる。
(いざとなったら蹴破るつもりだが)
「あの時計の針が11時をさした時点で、獄寺隼人を失格とし、ベルフェゴールの不戦勝とします。」
秒針が、動いて行く。
『(隼人…)』
来なくてもいいよ。
傷付くだけなら。
でも来なかったら…
1勝3敗で後がなくなっちゃうよ。
あと3秒、
2秒、
1秒、
シュルルル…
ドガァン!
『(この音……!)』
間違いない、ダイナマイトの音。
その証拠に、時計は爆破されている。
「え?」
「ん?」
ツナとベルの視線の先には…
「お待たせしました、10代目!!」
あぁ、来たんだね……
「獄寺隼人、いけます。」
無意識に作った祈りのポーズ、
何の為かは、自分でも分からぬまま。
嵐戦が、始まる------
今、
嵐戦が始まる………
プリンス・ザ・リッパー
並盛病院にて。
廊下に響く、2つの足音。
開かれる1つのドア。
「「おばさん!!」」
「まぁ、京子ちゃんハルちゃん、来てくれたの?」
「ランボちゃんは!?」
「峠は超えて安定してる。あとは意識が戻るのを待つだけよ。」
ベッドには、傷付いたランボが寝かされていた。
それを見て目を潤ませる京子とハル。
「昨日の雷が傘に落ちたらしいの………それから坂を転げ落ちちゃったみたいで………。」
「そんな、可哀想…」
「ランボちゃん…」
ランボに寄り添う京子とハル。
その横で、奈々は昨晩の事を思い出す。
---「母さん、お願いだ。ランボを頼む………今は訳を言えないんだ。」
---「言えないって、あなたたち…!?」
---「ごめん!!」
---「ツナ…!」
京子とハルに言ったのは、咄嗟に作った嘘。
本当の事は、奈々自身も知らない。
イーピンを膝の上に乗せている奈々は、ポケットから一枚の紙を取り出した。
そこには、夫からの短いメッセージが書かれていた。
“黙ってツナの力になってやってくれ 父より”
それを見て、少し眉間に皺を寄せる奈々。
「あの人、何やってんのかしら!?帰って来たらこってり絞ってやるわ!」
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「じゃぁ修業の第3段階を始めるぞ。」
「うん!」
返事をしたツナは、今までとは違うキリリとした目を見せた。
「第3段階はいよいよ死ぬ気のコントロールの最終形“死ぬ気の零地点突破”だ。」
「ぜろちてん?」
「いよいよ初代にしか出来なかったと言う、幻の奥義に進むんですね!」
バジルも意気込む。
ツナは、少し不安そうにリボーンに聞く。
「それが出来ればヴァリアーより強く、ザンザスに勝てるかな?」
「さーな、あいつは強ぇからな………」
それを聞いて少しだけ俯くツナ。
バジルは心配そうにその顔を覗き込む。
「沢田殿…」
「やるよ!可能性があるならなんだって!!」
覚悟を決めたツナに、バジルとの超モードでのスパーリングを命じるリボーン。
「多少体に無理はかかりますが、理論上はこれでいけるはずです。」
そう言ってバジルは、死ぬ気丸を2つ飲んだ。
「(思ったよりキツい……)準備、完了です!」
「だ、大丈夫なの?バジル君!!」
「拙者も、あんな奴らに親方様の守って来たボンゴレを渡したくないんです!それに………檸檬殿も…///」
「バジル君……………分かった!」
「よし。」
リボーンは、ツナに小言弾を撃つ。
ボンゴレのボスとか、
リングとか、
そういうのじゃなくて、
ただ俺は…
仲間を、
檸檬を、
失いたくない。
「バジル………恩にきる。」
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同じ頃、並盛中保健室。
「ふー、よしっ!出来たぜ、起きろシャマル!」
「ん?」
シャマルが起きると、そこには紙飛行機を大量生産し終わった獄寺が。
「………何やってんだ?お前。」
「何って………修業じゃねーか!新技仕上げんだろ!!」
「あーもう紙飛行機はいーんだ。」
「なぁ~~~!!?」
シャマルは面倒臭そうに頭を掻く。
「仕上げるっつったのはなぁ、そいつの成果がもう十分出てるからなのさ。」
「ま、待てよ!まだ一度も飛行機撃ち落としてねーぞ!」
「だ~か~らっ!こっから先はド根性の世界じゃねぇ。ナンパと同じなのよ。」
ワケの分からないことを言いつつ、シャマルの目は鋭く光っていた。
獄寺が理解に苦しんでいると、シャマルが問いを投げかける。
「お前、ナンパで一番大事なのは何か分かるか?」
「そ、そりゃぁ………エロさ?」
獄寺の答えを聞き、がっくりと頭を垂らすシャマル。
「(やっぱ中坊だ、こいつ………)」
呆れかえって、ヒントを与える事にする。
「ったくしょーがねーなー。ここだ、ここ。」
“ここ”と言いつつ、シャマルは自分のこめかみを指で突つく。
「もてねー奴は結局頭が足んねーのさ。頭をちょいとひねってタネを仕掛けをつくりゃー、落ちねー女なんて地球に1人もいねぇ!!」
「(言い切った!)」
そして、“メモ用紙”である大量の紙を、また渡される。
痺れを切らしてシャマルに向かって「ストレートに教えろ」と怒鳴る。
そしたらシャマルは急に真剣な顔になって、こう言った。
「お前のいる世界はな、自分で自分の生き延びる術を見つけられる奴しか、生き残れねーんだ。」
「なっ…!」
「お前だって知ってんだろ?檸檬ちゃんの過去をさ。」
突然檸檬の名が出て、俺は少し吃驚した。
「檸檬ちゃんだってストリートファイトの世界で、あの戦い方を自分で身に付けた。だからチャンプになったんだ。」
「自分で…」
「足んねー頭絞りだせ。俺は意味もなく5日間も飛行機飛ばしてたんじゃねーぜ。」
シャマルはそう言って、トライデントモスキートを一匹飛ばした。
それが、シャマルの周りをプーンと飛んでる。
「第一、おめーが弱ぇと教えた俺がカッコつかねーんだ。」
「結局自分の為じゃねーか!?」
俺が驚いてると、シャマルは更にとんでもねー事言い出しやがった。
「技が出来ねー限り、勝負には行かせねーからな。」
「ふざけんなよ!何だよそれ!!」
「このまま行きゃ、無駄死にするだけだ。」
「な!!?」
「お前の相手のベルフェゴールって奴な、あのヴァリアーの中でも一番の天才なんだとよ。」
シャマルの言葉に、俺は一瞬固まった。
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同じ頃、ヴァリアーの宿舎近くの裏路地。
スパッ、
血が吹き出し、男が1人倒れる。
その向こうには、今夜勝負を控えたヴァリアー側の嵐の守護者・ベルフェゴールが立っていた。
「派手にやってるね、ベル。」
「また覗き見かよ、マーモン。」
突如隣に現れたのは、霧の守護者・マーモン。
「任務の度にご当地の殺し屋消して遊ぶの良くないよ。裏社会の政治が無駄にこんがらがるだろ?」
「政治なんて知ったこっちゃないって。だって俺、王子だもん♪」
ベルはそう言うとにっこり笑う。白い歯が、綺麗に並んでいる。
するとそこに…
「ヴァリアー!貴様、よくも弟を!!」
「おっ、来た来た。弟をやれば来ると思ったんだよね。売り出し中の殺し屋兄弟だし。」
少しだけ嬉しそうに言うベルに、走って来た男は棒に太い針が付いた武器を向ける。
「死ねや!!」
だが、それがベルに当たる事はなく。
「ん、こいつ期待外れだな。」
ベルは少しだけ口を“ヘの字”に曲げる。
そして、キラリと光る薄型のナイフを取り出した。
「これ、俺の武器ね。」
その台詞が言われてから相手が倒れるまで、5秒と掛からなかった……。
「とっころで、」
「ム?」
「何しに来たのさ、殺し合いしに?」
「まさか。それじゃぁベルが今夜戦えなくなるだろ?」
「は?王子はチビに負けないから。」
ナイフを向けるベルに、冷静に返すマーモン。
「ベル、僕に感謝した方がいいよ。」
「何言って………」
『マーモンーっ!何処行っちゃったのぉー??』
突然聞こえて来た声は、聞き間違えるはずのない檸檬の声。
ベルは思わず固まった。
反対に、マーモンは得意気な顔をしている。
「OK、今日は感謝しとくよ♪」
「後でお金ちょうだいね。」
「ししし♪考えとく。」
ベルがそう言うと、マーモンは姿を消した。
と、その時。
『あっ!ベル~っ!!』
「どしたの?檸檬。こんなトコに来て。」
『マーモンとお出かけしてたんだけど………迷子になっちゃって。多分あたしが。』
ぺろっと舌を出す檸檬を見て、ベルもししっと笑った。
ふと、檸檬が足下の死体に気が付く。
『きゃあっ!!』
「ん?」
『これ、ベルがやったの?』
「まぁね。」
『も~~っ!簡単に人殺すの、イヤって言った。』
「予行練習♪」
ベルの言葉に、檸檬はため息をつく。
『確かに、日本の殺し屋はイタリアと違ってイイ人はほとんどいないけど。』
「じゃぁいいじゃん♪」
『でも…』
檸檬は、死体に向かって軽く十字をきった。
『帰ろ、ベル。あたし、この辺分かんなくて。』
「うしし♪しょーがないなー、ハイ。」
『え?』
突然差し出された、ベルの綺麗な手。
首をかしげるあたしに、ベルは言う。
「お手をどうぞ、姫君♪」
『…ありがとう。』
きゅっとベルの手を握ると、ベルは強く握り返して来た。
適度にあったかくて、思わず笑みがこぼれる。
「どしたの?お姫さま。」
『何でもないよ、王子様♪』
「そうそう、王子以外と手ぇ繋いじゃダメだからね。」
『何言ってんのよ、我が儘王………………子………………っ!!』
「ん?」
しょうがないよね。
だって、
我が儘王子って…
『(恭弥…………)』
思い出しちゃった。
今はヴァリアーにいるのに。
あたしって最低。
「どしたの?檸檬。」
『ううんっ!何でもなっ………!!?』
言葉が途切れたのは、
急に抱き締められたから。
『ベ………ル………?』
腕の中で、顔を上げる。
「嘘付くのナシ。」
『へ?』
「分かるよ。だって俺…」
“王子だもん♪”
そう来ると思ってた。
のに。
「檸檬の事、愛してるもん。」
『え………?』
一瞬、何て言われたか分からなかった。
ゆっくりゆっくり反芻して、やっと理解し始める。
ア、イ、シ、テ、ル?
理解し始めると同時に、顔が熱くなっていく。
それでも、ベルから目を逸らす事が出来ない。
ただその金髪を、
見開いた目で見つめる。
『あっ…あの………あたし………///』
「檸檬のいない世界なんてつまんない。檸檬に俺だけを見て欲しい。」
『え…?』
「俺のホンネ♪」
うししっと笑って、ベルはまたあたしを抱きしめた。
さっきより、きつく。
「分かってるよ、檸檬は仲間全員大好きなんだよね。けど、俺の“好き”は違うの。」
ベルの表情が、見えない。
「つまり、俺の中の特別な一番が、檸檬なワケ。」
『と…くべつ………?』
「特別一緒にいたくて、特別笑顔が見たくて、特別大事ってコト。」
それが………あたし?
「俺はいっつもハラハラしてたの。檸檬がみーんなに“大好き”って言うからさ。」
『それはっ………!』
“好き”
と
“愛してる”
は
別物だと思って使ってたから。
「檸檬は天然じゃなくて鈍感なんだよね。」
『なっ……!///』
「だからって、気付かせたところで振り向くワケでもないっしょ?」
恥ずかしいけど………当たり。
だって今まで、全然そーゆー事考えてなかったから。
みんなの事が大事で、
だから傷付いて欲しくない
それだけだったから。
あたしの一番は…
決まってない………
決めようともしてない
「そこでさ、1つ提案♪」
『え?』
ベルは腕を少し緩めて、あたしは恐る恐る上を向く。
『(あ。白い歯、綺麗。)』
そんな事を一瞬考えて、ベルの言葉に集中する。
………恥ずかしいけど。
「あのね、リング争奪戦でヴァリアーが勝ったとするじゃん。」
『う…うん……。』
そんな事、考えたくないけど。
「そしたらさ、本当にお姫さまになって欲しいんだ♪」
『どーゆー事?』
聞き返さなくても、何となく分かったような、そうでないような。
ベルの表情、ほんの少しだけ真剣さが増してた。
「俺の、俺だけの、彼女になって欲しいワケ♪♪」
何となく、
時間が止まった、
そんな気がした。
「どう?檸檬。」
俺的にはさ、ホントは
“今夜俺が勝ったら”
って言いたかったんだけど、それじゃぁ決まるの早いしね♪
王子優しーっ♪
『でっ…でもあたし………まだ…その………///』
俺の目の前で顔を真っ赤にしてる檸檬。
超可愛いし。
『その………ベルの事、その特別一番大好きって、決まってないのに………?』
あー、そんな事気にしてたの?
「大丈夫♪俺の彼女になれば、俺の事好きになるから♪」
『そ、そーゆーもん?』
「そーゆーもん。」
檸檬は暫く俯いて、何か必死に考えてる。
ちゃんとコクられたの、初めてだったんじゃん?
だったら嬉しいし♪
でもさ、檸檬は絶対俺のだから。
俺、絶対誰よりも檸檬の事愛してるもん♪
『ヴァリアーが、勝ったらだよね………?』
「しし、そーだよ♪」
それだけ聞くと、また俯いて何か色々考え始める檸檬。
もどかしいけど、ここでちゃんと檸檬の意志を尊重してあげないとね♪
無理矢理出来ないこともないけど、んな事したら檸檬に嫌われるかもしんないし。
それだけはヤだし。
だから、一種の賭け的な感じで、ね♪
目の前にいる檸檬。
何考えてんだろー?
俺が檸檬の顔を覗き込もうとしたら、檸檬が急に顔を上げた。
『あのね、ベル!あの、あたしっ………』
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夜の並盛。
ツナとバジル、リボーンは、戦場である学校へと向かっていた。
初めての超死ぬ気モードで疲れたバジルを、ツナは少し心配していた。
「いよいよ獄寺の勝負だな。」
リボーンが呟く。
「獄寺君ならきっと大丈夫だよね。」
半ば自分に言い聞かせるように言うツナに、リボーンが言った。
「獄寺の相手はベルフェゴールって奴でな、“プリンス・ザ・リッパー”って通り名なんだ。」
「プリン………?」
「切り裂き王子って意味だぞ。」
「え!?あの王子!?」
「あぁ、本当に王族の血を引いてるらしいんだ。だが、その常人離れした戦闘センスを持て余し、自らヴァリアーに入隊した変わり種だ。」
リボーンの情報に、付け足すバジル。
「拙者も親方様から聞きました。こと戦闘においてだけなら、ヴァリアーで最も才能があるのはベルフェゴールだと。」
すると、ツナの不安は一気に大きくなる。
「獄寺君、そんな恐ろしいのと………」
「厳しい勝負になる事は間違いねーな。」
会話が一段落したところで、並中に着いた。
そこには、山本と了平がいたが、獄寺はいなかった。
「あれ?獄寺君は?」
「何だ、ツナ達と一緒に来るんだと思ってたんだけどな。」
「まだ来てないぞ。」
するとリボーンが、
「もしかしてシャマルに止められてるのかもな。」
と。
シャマルは、勝機のない戦いに弟子を送りだす事はしない。
だから、新技が完成してないかもしれない。
リボーンがそう言って、俺はますます不安になった。
とりあえず、今回のフィールドである3階に上がったツナ達。
目の前のヴァリアーの中に、檸檬が溶け込んでいるのが見えた。
「檸檬………」
「檸檬はヴァリアーにいたんだ。仲が良くても納得出来るぞ。」
「でもよぉ、やっぱ腑に落ちねぇよな。」
「うむ。」
山本と了平に、リボーンはさらっと返す。
「それが、中立だ。」
と。
「う"お"ぉい檸檬、昼間は何処行ってたんだぁ?」
『えっとね……マーモンとお出かけしてたの。』
「では何故ベルと帰って来たんだ?」
『それはですねぇ………途中でベルと遭遇して、マーモンは勝手に帰っちゃって。』
「ってかレヴィもスクアーロもさ、あんまり詮索しないでくんない?ね、お姫さま♪」
『うぅ…///』
少し頬を赤らめて俯く檸檬に、スクアーロとレヴィは首をかしげた。
「それにしても、相手の嵐の守護者、来ないね。」
「逃げてどーすんだか。どーせ殺されんのに。」
『そっ、そんな事言わないでよ……。』
言葉を濁す檸檬に、チェルベッロが言った。
「檸檬様、本日もカプセルに入って頂きます。」
『うん、分かってる。』
「すぐ出してあげるからね、檸檬♪」
『ありがと。頑張ってね、ベル。』
ベルに微笑み、檸檬はカプセルの前に立った。
獄寺が来ないと勝負が始まらない。
来ないのにカプセルに入ったら、リングは完成しないまま、カプセルから出にくくなる。
(いざとなったら蹴破るつもりだが)
「あの時計の針が11時をさした時点で、獄寺隼人を失格とし、ベルフェゴールの不戦勝とします。」
秒針が、動いて行く。
『(隼人…)』
来なくてもいいよ。
傷付くだけなら。
でも来なかったら…
1勝3敗で後がなくなっちゃうよ。
あと3秒、
2秒、
1秒、
シュルルル…
ドガァン!
『(この音……!)』
間違いない、ダイナマイトの音。
その証拠に、時計は爆破されている。
「え?」
「ん?」
ツナとベルの視線の先には…
「お待たせしました、10代目!!」
あぁ、来たんだね……
「獄寺隼人、いけます。」
無意識に作った祈りのポーズ、
何の為かは、自分でも分からぬまま。
嵐戦が、始まる------