ヴァリアー編
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勝負をすれば、
勝者と敗者が必ず出る。
それがあたしの、
苦痛になる………。
晴のリングのゆくえ
「お兄さんのパンチが………決まった!!!」
「うぎゃあああ!!!」
ルッスーリアは悲鳴を上げてうずくまった。
「う、うそよぉ!メタルニーが砕かれるなんて!!」
「勝負あったね。ルッスーリアにはもう、あのパンチを防ぐ術がない。」
「笑かすよな、あのヘンタイ。」
マーモンとベルが言った。
『ルッスーリア…』
「右拳が光って見えたぜ。よくやったな了平、コラ!」
コロネロは、満足そうに笑ってた。
「さぁ帰るぜ、京子!」
「待って!まだお兄ちゃんが……!」
「もう終わりだ。俺は眠いぜ、コラ。」
京子の袖を引っ張り、コロネロは去っていく。
それに花も続いた。
一方、リングの中では、
「緊張感のあるいい戦いだったぞ。さぁ、リングを渡してくれ。」
そう言う了平さんに対し、ルッスーリアは首を横に振る。
「いやっ!いやよ!!」
『……………!!?』
何?
このイヤな雰囲気…
あたしはヴァリアーの方を見た。
『(モスカ……!!)』
腕を構えるモスカが見えた。
それだけは、
それだけはやめて………!!
ガンッ!
あたしは思いっきり、力の限り内側からカプセルを蹴った。
「檸檬!!?」
皆が不思議に思ってるだろうけど、今はそんな事構ってられない!
モスカが手から弾を発車する、その前に。
バリーンッ!
「なっ…!」
「檸檬様!!」
蹴り飛ばして、カプセルに穴を空けた。
同時にあたしはキュロットの下のナイフを取る。
「私はヴァリアーよっ、片足だって勝ってみせるわ!楽勝よ!!おほほっ。」
「何を焦っているのだ……?」
『ルッスーリアっ!!!』
「え?」
「ん?」
ルッスーリアの反射神経でギリギリ避けられる位置を目掛けて、ナイフを投げる。
『避けてーっ!!!』
「なっ!!?」
シュッ、
ルッスーリアがあたしのナイフを避ける為に、数十センチ動いた、その時だった。
どんっ、
恐れていた事が、
起こった。
ドギャッ…
『あ……………!』
ルッスーリアの背中から、夥しい量の血が吹き出た。
そしてそのまま、うつ伏せに倒れた。
「“やる時はやる”。流石ボス補佐だね、ゴーラ・モスカ。」
「あいつ…味方を!!」
「どーなってやがる……」
『ルッスーリアーっ!!!』
あたしはカプセルを何回も蹴って、半壊させた。
そして、作られた穴から飛び出す。
駆け寄る先は、ルッスーリア。
「おい!しっかりしろ!」
「近付かないで下さい。」
「なにいっ!」
チェルベッロが了平さんを足留めしてる。
『ルッスーリア!!』
あたしもそこに、駆け寄った。
「檸檬様、離れて下さい。」
『退いて。』
その瞬間、チェルベッロに悪寒が走った。
今にも自分を殺しそうな、檸檬の殺気。
「え…?あれ………檸檬…?」
檸檬が放つ殺気に、ツナ達も驚く。
「へぇ、初めて見たよ。檸檬のあんな凄い殺気。」
「強ぇーっ。」
反対に、ヴァリアー側は笑っていた。
『聞こえなかった?退いて。』
「は、はい………」
大人しく退いたチェルベッロ。
檸檬はすぐにルッスーリアに駆け寄る。
『大丈夫?ルッスーリア……』
「えぇ………平気よ、檸檬。ありがとう。」
『ごめんっ、もっと……ギリギリに投げればよかった……。』
「いいえ、アレが限界だったわ。もっとギリギリだったら……私は檸檬のナイフにも当たってた。」
檸檬の目は、涙でいっぱいになっていた。
「弱者は消す。これはヴァリアーが常に最強の部隊である所以の1つだ。」
「そ、そんな………」
檸檬は急いでルッスーリアの止血をする。
それを横目で見つつ、チェルベッロは言う。
「たった今、ルッスーリアは戦闘不能とみなされました。よって、晴のリング争奪戦は、笹川了平の勝利です。」
『だから言ったじゃん………メタルニーが壊れたらどうするのって…………』
「そうね……檸檬、ホントにごめんなさいね。それと、ホントにありがとう。」
それは、小さな小さな会話。
「今宵はこれで終わりますが、今回より決戦後に次回の対戦カードを発表します。」
「え!!もう分かっちゃうの!?」
「明晩の対戦は………雷の守護者同士の対決です。」
雷………
ランボちゃんとレヴィ。
「こいつ戦えんの~~~!!?」
疲れて眠ってるランボちゃんを見て、ツナが叫んだ。
「それでは、明晩お会いしましょう。」
「わあぁっ!!」
チェルベッロが何かのスイッチを押すと、照明を支えていた棒が倒れた。
立ち篭める砂埃の中、モスカがあたしの前に現れる。
『モスカ…』
モスカは何も言わず、ルッスーリアを抱えた。
あたしも一緒に立ち上がる。
「じゃぁね………檸檬。」
『お、お大事にね!ちゃんと治してね!!』
「分かってるわ………」
最後に、ルッスーリアは力無く笑っていた。
あたしは、その額に軽いキスをした。
早く治りますように…
すると、モスカがあたしに晴のハーフボンゴレリングを渡した。
『ありがと、モスカ。』
あたしが受け取ったのを確認すると、モスカは飛んで行ってしまった。
やがて、視界がハッキリとしてきて、
気がついたら、あたしの前には了平さんがいた。
『これ、どうぞ。』
「あぁ、ありがとな。」
『いえ………。』
了平さんにリングを手渡したその時。
「ツナ君!!」
「待ちなよ京子!何かヤバいって!」
向こうから、京子と花が駆けて来た。
「きょ、京子ちゃん!!」
「ツナ君、本当の事教えて?お兄ちゃん、何やってるの?」
京子に迫られて、戸惑うツナ。
すると、
「「「相撲大会だぜ!」」」
隼人と武とリボーンが、一斉に言った。
「リングでやる、ハイブリッド相撲大会やってんだ。」
「密かにブームなんだぜ。今日もいい取り組みだったな、小僧!」
「あぁ。」
「そ、それじゃあホントに………」
「相撲大会だと言っただろう。帰るぞ、京子!」
「うん!」
京子が納得したところで、了平さんはリングをツナに差し出す。
「2つの欠片を1つにするんだな。」
「ツナ、リングボックスだぞ。」
「え、あ、うん。」
完成した晴のボンゴレリングを、ボックスに入れるツナ。
「1つ………埋まった…!」
「よっしゃ先勝!幸先いいっスよ!」
「このままいこーぜ!」
「その通りだ!行くぞ、沢田!!」
そう言って、みんな帰っていった。
ツナは、ボーッと立ち尽くす。
あたしも、リングの中からまだ動けずにいた。
あたしは………
やっぱり見てる事しか出来なかった………
悲しくて、
悔しくて、
しょうがない。
『うっ………ふぇっ………』
大声で、泣いてしまいたい。
でも、泣いたところで、何も変わらない。
だったら泣かない方がいい。
ぐっと堪えて、涙を止める。
「檸檬殿、」
『え?』
不意に呼ばれて、振り向くと、そこにはバジルが立っていた。
見れば、リングの外ではツナと家光さんが話している。
『バジル…あたし………』
「何も言わないで下さい。分かってますから………」
バジルは、ゆっくりとあたしの横に並ぶ。
あたしは俯いたままだった。
「檸檬殿、拙者は………思うんです。」
『え?』
「檸檬殿は、その優しさ故につらいのだと。」
優しい?
あたしは、酷い奴だよ。
優しかったら、こんな戦い、死んでも止めてるよ。
『優しくなんかないよ。あたしは、結局何も出来ないんだから。』
「ヴァリアーと並盛、どちらの為に笑い、どちらの為に涙を流せばいいのか、檸檬殿は迷ってるんでしょう?」
『それは……まぁ…そうだけど…………。』
あたしが目を逸らすと、バジルは優しく微笑んだ。
「檸檬殿、迷う必要はありません。」
『え?』
「勝った者の為に笑い、負けた者の為に泣けばいいんです。どちらの感情も押し込めてつらくなるより、どちらも表明した方がいいですよ。」
『バジル…』
そんな事をして………
いいの?
それは裏切りに、
ならないの?
「檸檬殿になら、出来ますよ。みんな檸檬殿を大切に思ってるんです。ですから、自分の為に檸檬殿が意志表明をしてくれれば、それは嬉しい事ですよ?」
バジルの言葉に、
目を見開くほかなかった。
『バジル…』
「はい。」
『ありがとうっ!』
バジルにギュッと抱きついた。
救われた気がしたんだ。
中立を言い渡された時は、
自分の感情を表に出しちゃいけないモノだと思ったから。
「あのっ…檸檬殿!!///」
『あ、ごめんね!あの、嬉しかったからさ。』
「良かった。」
『え?』
「檸檬殿、笑顔が戻りましたね。」
そう言ってバジルは、また微笑んだ。
『うんっ!』
あたしは大きく頷いた。
「おーい、バジルーっ。」
「あ!待って下さい、親方様!!では檸檬殿、また。」
『うん!』
あたしはリングから降りた。
「父さん暫く帰らないけど、いい子でな!」
「ちょっ、困るよ!逃げんなよ~~~!!」
ランボちゃんを抱えたツナは、家光さんに向かって叫んでいた。
『ツナ、』
「あ、檸檬!その…大丈夫?」
『うん!平気だよ♪』
あたしがそう答えると、ツナはホッとしたようだった。
でも、ランボちゃんを見て思い出したように言った。
「そうだよ!ランボ棄権させなきゃ!」
『レヴィには棄権は通用しないよ。』
「え?」
「アイツは女だろーが子供だろーが完膚なきまでに打ちのめす奴なんだ。」
「見た目まんまだー!!!」
それから、リボーンは第3段階の修業について話しかけたところで、寝てしまった。
「ったく~~~!!」
『まぁまぁ、あたしがリボーン連れてくから。』
「あ、ありがと、檸檬。」
---
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-----------
夜中。
「ランボのボスもなんでOKするかな~~。ランボ5歳だぞ、どーすんの?殺されちゃうんだぞ!」
独り言を言いながら、風呂から出るツナ。
ふと目に止まるのは、奥にある檸檬の部屋。
帰ってすぐ、
『お風呂は明日の朝イチで入るから』
と言って、寝てしまった檸檬。
「檸檬………つらかったんだろうな………。」
---『ルッスーリアーっ!!』
あんなに相手の事、心配してた。
あんなに叫んで…
あんなに泣いて……
「あ~~~っ!どーすればいいんだよ~~~っ!!」
頭を抱えるツナは、キッチンの明かりがついてるのに気が付く。
「こんな時間に………誰?」
ひょこっと覗くと………
「お久しぶりです、若きボンゴレ。」
「大人ランボ!!」
どうやら、寝相の悪かった5歳のランボが10年バズーカを寝ながら爆発させたようだ。
大人ランボを見て、ツナはパッと閃く。
「そーだよ!大人ランボが戦えばいいんだ!!」
「やれやれ…メモにあったリング争奪戦の事ですね。」
「えっ!??」
話を聞いたところ、大人ランボは1週間前に父さんからメモと、ボロボロの角を渡されていたようだった。
だったら戦って欲しいと思ったんだけど…
「考えてみてください。もし子供の俺が殺されるのなら、10年後の俺は存在しないはずです。」
「じゃぁ、明日ランボは勝つんだ!!」
「ところがそうも言い切れない。」
ランボは、何だかよく分からない、“パラレルワールド説”を語りだした。
「じゃぁまだどうなるか分からないって事~~!?」
「えぇ………そして最大の問題は、子供の俺が死ななかったとしても、10年後のこの俺が戦って死ぬかもしれないって事です。」
「(そうでしたー!!)」
「ってワケで、子供の俺にくれぐれも10年バズーカは使わないように言ってくれますか?」
「な!(このヘタレ戦わない気だーー!!!)」
ランボは突然立ち上がった。
「何言ってんの!?子供の自分見捨てるの!?」
「痛いのイヤなんです!俺は10年後から見守ってます。」
「うおい!」
見守るって………何だよそれ~~っ!!
「ボンゴレにこの角あげますよ。不吉なんで。」
「いらないよ!!」
大人ランボは俺に角を押し付けた瞬間、子供に戻ってしまった。
「あぁっ!ランボ!!」
しかも、子供のランボはスヤスヤ眠ってるし……
「どーすんだよ!?結局なんも解決してねー!」
俺が頭を抱えたトコで、何も変わらないんだけどさー……。
---
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「どーしたんだ、ツナ?」
翌日は雨だった。
「てんで身が入ってねーぞ。」
「沢田殿………」
「特殊弾には死のリスクがあるんだ。そんなんじゃ死ぬぞ。」
リボーンに言われ、俯いていたツナは顔を上げる。
「そんな事言われたってしょうがないだろ!!今日の勝負が気になって………」
ツナの言葉を聞くと、リボーンは少し考えてからこう言った。
「………第3段階はおあずけだ。帰るぞ。」
「え!?」
戸惑いながらもツナとバジルは、リボーンに付いていった。
---
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-----------
『あ!お帰りツナ、バジル、リボーン。』
「ただいま、檸檬。」
『あーあ、ずぶ濡れじゃん。タオル持って来るね♪』
「あ、ありがと。」
檸檬はパタパタと駆けて行った。
「檸檬殿、少しだけ元気になったようですね。」
「うん。でも…………やっぱりつらいんだよね、まだ。」
『はい!タオル。』
「ありがと、檸檬。」
「ありがとうございます。」
『いーえ。あ、リボーン!エスプレッソ入れておいたよ♪』
「サンキュー。」
リボーンはパッパと拭くと、キッチンに向かった。
『ねぇ、ツナ。』
「ん?」
『あたしはもう大丈夫だから、心配しないで。ツナは、仲間の事を考えてて。』
「だ、だったら!檸檬だって、俺達の仲間だよ!」
「沢田殿……」
俺がそう言うと、檸檬はいつもみたいに笑った。
『違うよ。』
「え……………?」
『あたしは中立だから、今はちゃんとした仲間じゃないよ。』
「檸檬殿っ…!」
『だから、あたしの事は二の次でいいよ。』
「檸檬…」
最後に檸檬はすごく哀しい笑みを見せ、俺とバジル君の前から立ち去った。
「どうして……」
「沢田殿?」
「どうしてこんな事になったんだろう……」
どうして檸檬はあんなに冷めてるんだろう。
檸檬が持って来てくれたタオルは、
俺の手の中で、
こんなにあったかいのに。
---
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「長ぐつ~~~ぐっつぐつ~~~♪」
「何とか棄権出来ないかな~~。」
夜になると、雨は更に激しくなって、雷を伴ってきた。
「心配すんな、ツナ。いざとなったら俺達が割って入っから。」
「で、でも………」
山本の言葉に反論しようとすると、上からチェルベッロの声がした。
「そのような行為は失格とし、阻止します。」
「そして助けようとした者、助けられた者、2人分のリングが相手の物となります。」
「やっぱり…」
俺は改めてため息を付いた。
「ところで…」
「へ?」
「檸檬様はどちらに?」
「え!?後ろに……いない!!?」
俺達がキョロキョロしてると、何処からか檸檬の声がした。
『こっちだよ、チェルベッロ。』
「檸檬様!!」
「「「「檸檬!」」」」
檸檬は、チェルベッロの後ろに立っていた。
「な、何故こちらに?」
『聞きたい事があったの。』
「私達にですか?」
『うん。』
そう言うと檸檬は、チェルベッロ達に何か耳打ちした。
するとチェルベッロは、ヒソヒソと何か檸檬に返答した。
『そう………分かった!ありがとね。』
俺達は首をかしげるばかりだった。
そしたら今度はチェルベッロが、俺達に向かって言った。
「あちらを御覧下さい。」
「あれが今宵の戦闘フィールドです。」
「屋上!?」
見上げた先に、普通の屋上は無かった。
何か、変な柱がたくさん立っている。
「ぐぴゃっ!!」
「な、何あれ~!!?」
ランボが酷い怪我しなきゃいいけど………
俺は益々不安になった。
勝者と敗者が必ず出る。
それがあたしの、
苦痛になる………。
晴のリングのゆくえ
「お兄さんのパンチが………決まった!!!」
「うぎゃあああ!!!」
ルッスーリアは悲鳴を上げてうずくまった。
「う、うそよぉ!メタルニーが砕かれるなんて!!」
「勝負あったね。ルッスーリアにはもう、あのパンチを防ぐ術がない。」
「笑かすよな、あのヘンタイ。」
マーモンとベルが言った。
『ルッスーリア…』
「右拳が光って見えたぜ。よくやったな了平、コラ!」
コロネロは、満足そうに笑ってた。
「さぁ帰るぜ、京子!」
「待って!まだお兄ちゃんが……!」
「もう終わりだ。俺は眠いぜ、コラ。」
京子の袖を引っ張り、コロネロは去っていく。
それに花も続いた。
一方、リングの中では、
「緊張感のあるいい戦いだったぞ。さぁ、リングを渡してくれ。」
そう言う了平さんに対し、ルッスーリアは首を横に振る。
「いやっ!いやよ!!」
『……………!!?』
何?
このイヤな雰囲気…
あたしはヴァリアーの方を見た。
『(モスカ……!!)』
腕を構えるモスカが見えた。
それだけは、
それだけはやめて………!!
ガンッ!
あたしは思いっきり、力の限り内側からカプセルを蹴った。
「檸檬!!?」
皆が不思議に思ってるだろうけど、今はそんな事構ってられない!
モスカが手から弾を発車する、その前に。
バリーンッ!
「なっ…!」
「檸檬様!!」
蹴り飛ばして、カプセルに穴を空けた。
同時にあたしはキュロットの下のナイフを取る。
「私はヴァリアーよっ、片足だって勝ってみせるわ!楽勝よ!!おほほっ。」
「何を焦っているのだ……?」
『ルッスーリアっ!!!』
「え?」
「ん?」
ルッスーリアの反射神経でギリギリ避けられる位置を目掛けて、ナイフを投げる。
『避けてーっ!!!』
「なっ!!?」
シュッ、
ルッスーリアがあたしのナイフを避ける為に、数十センチ動いた、その時だった。
どんっ、
恐れていた事が、
起こった。
ドギャッ…
『あ……………!』
ルッスーリアの背中から、夥しい量の血が吹き出た。
そしてそのまま、うつ伏せに倒れた。
「“やる時はやる”。流石ボス補佐だね、ゴーラ・モスカ。」
「あいつ…味方を!!」
「どーなってやがる……」
『ルッスーリアーっ!!!』
あたしはカプセルを何回も蹴って、半壊させた。
そして、作られた穴から飛び出す。
駆け寄る先は、ルッスーリア。
「おい!しっかりしろ!」
「近付かないで下さい。」
「なにいっ!」
チェルベッロが了平さんを足留めしてる。
『ルッスーリア!!』
あたしもそこに、駆け寄った。
「檸檬様、離れて下さい。」
『退いて。』
その瞬間、チェルベッロに悪寒が走った。
今にも自分を殺しそうな、檸檬の殺気。
「え…?あれ………檸檬…?」
檸檬が放つ殺気に、ツナ達も驚く。
「へぇ、初めて見たよ。檸檬のあんな凄い殺気。」
「強ぇーっ。」
反対に、ヴァリアー側は笑っていた。
『聞こえなかった?退いて。』
「は、はい………」
大人しく退いたチェルベッロ。
檸檬はすぐにルッスーリアに駆け寄る。
『大丈夫?ルッスーリア……』
「えぇ………平気よ、檸檬。ありがとう。」
『ごめんっ、もっと……ギリギリに投げればよかった……。』
「いいえ、アレが限界だったわ。もっとギリギリだったら……私は檸檬のナイフにも当たってた。」
檸檬の目は、涙でいっぱいになっていた。
「弱者は消す。これはヴァリアーが常に最強の部隊である所以の1つだ。」
「そ、そんな………」
檸檬は急いでルッスーリアの止血をする。
それを横目で見つつ、チェルベッロは言う。
「たった今、ルッスーリアは戦闘不能とみなされました。よって、晴のリング争奪戦は、笹川了平の勝利です。」
『だから言ったじゃん………メタルニーが壊れたらどうするのって…………』
「そうね……檸檬、ホントにごめんなさいね。それと、ホントにありがとう。」
それは、小さな小さな会話。
「今宵はこれで終わりますが、今回より決戦後に次回の対戦カードを発表します。」
「え!!もう分かっちゃうの!?」
「明晩の対戦は………雷の守護者同士の対決です。」
雷………
ランボちゃんとレヴィ。
「こいつ戦えんの~~~!!?」
疲れて眠ってるランボちゃんを見て、ツナが叫んだ。
「それでは、明晩お会いしましょう。」
「わあぁっ!!」
チェルベッロが何かのスイッチを押すと、照明を支えていた棒が倒れた。
立ち篭める砂埃の中、モスカがあたしの前に現れる。
『モスカ…』
モスカは何も言わず、ルッスーリアを抱えた。
あたしも一緒に立ち上がる。
「じゃぁね………檸檬。」
『お、お大事にね!ちゃんと治してね!!』
「分かってるわ………」
最後に、ルッスーリアは力無く笑っていた。
あたしは、その額に軽いキスをした。
早く治りますように…
すると、モスカがあたしに晴のハーフボンゴレリングを渡した。
『ありがと、モスカ。』
あたしが受け取ったのを確認すると、モスカは飛んで行ってしまった。
やがて、視界がハッキリとしてきて、
気がついたら、あたしの前には了平さんがいた。
『これ、どうぞ。』
「あぁ、ありがとな。」
『いえ………。』
了平さんにリングを手渡したその時。
「ツナ君!!」
「待ちなよ京子!何かヤバいって!」
向こうから、京子と花が駆けて来た。
「きょ、京子ちゃん!!」
「ツナ君、本当の事教えて?お兄ちゃん、何やってるの?」
京子に迫られて、戸惑うツナ。
すると、
「「「相撲大会だぜ!」」」
隼人と武とリボーンが、一斉に言った。
「リングでやる、ハイブリッド相撲大会やってんだ。」
「密かにブームなんだぜ。今日もいい取り組みだったな、小僧!」
「あぁ。」
「そ、それじゃあホントに………」
「相撲大会だと言っただろう。帰るぞ、京子!」
「うん!」
京子が納得したところで、了平さんはリングをツナに差し出す。
「2つの欠片を1つにするんだな。」
「ツナ、リングボックスだぞ。」
「え、あ、うん。」
完成した晴のボンゴレリングを、ボックスに入れるツナ。
「1つ………埋まった…!」
「よっしゃ先勝!幸先いいっスよ!」
「このままいこーぜ!」
「その通りだ!行くぞ、沢田!!」
そう言って、みんな帰っていった。
ツナは、ボーッと立ち尽くす。
あたしも、リングの中からまだ動けずにいた。
あたしは………
やっぱり見てる事しか出来なかった………
悲しくて、
悔しくて、
しょうがない。
『うっ………ふぇっ………』
大声で、泣いてしまいたい。
でも、泣いたところで、何も変わらない。
だったら泣かない方がいい。
ぐっと堪えて、涙を止める。
「檸檬殿、」
『え?』
不意に呼ばれて、振り向くと、そこにはバジルが立っていた。
見れば、リングの外ではツナと家光さんが話している。
『バジル…あたし………』
「何も言わないで下さい。分かってますから………」
バジルは、ゆっくりとあたしの横に並ぶ。
あたしは俯いたままだった。
「檸檬殿、拙者は………思うんです。」
『え?』
「檸檬殿は、その優しさ故につらいのだと。」
優しい?
あたしは、酷い奴だよ。
優しかったら、こんな戦い、死んでも止めてるよ。
『優しくなんかないよ。あたしは、結局何も出来ないんだから。』
「ヴァリアーと並盛、どちらの為に笑い、どちらの為に涙を流せばいいのか、檸檬殿は迷ってるんでしょう?」
『それは……まぁ…そうだけど…………。』
あたしが目を逸らすと、バジルは優しく微笑んだ。
「檸檬殿、迷う必要はありません。」
『え?』
「勝った者の為に笑い、負けた者の為に泣けばいいんです。どちらの感情も押し込めてつらくなるより、どちらも表明した方がいいですよ。」
『バジル…』
そんな事をして………
いいの?
それは裏切りに、
ならないの?
「檸檬殿になら、出来ますよ。みんな檸檬殿を大切に思ってるんです。ですから、自分の為に檸檬殿が意志表明をしてくれれば、それは嬉しい事ですよ?」
バジルの言葉に、
目を見開くほかなかった。
『バジル…』
「はい。」
『ありがとうっ!』
バジルにギュッと抱きついた。
救われた気がしたんだ。
中立を言い渡された時は、
自分の感情を表に出しちゃいけないモノだと思ったから。
「あのっ…檸檬殿!!///」
『あ、ごめんね!あの、嬉しかったからさ。』
「良かった。」
『え?』
「檸檬殿、笑顔が戻りましたね。」
そう言ってバジルは、また微笑んだ。
『うんっ!』
あたしは大きく頷いた。
「おーい、バジルーっ。」
「あ!待って下さい、親方様!!では檸檬殿、また。」
『うん!』
あたしはリングから降りた。
「父さん暫く帰らないけど、いい子でな!」
「ちょっ、困るよ!逃げんなよ~~~!!」
ランボちゃんを抱えたツナは、家光さんに向かって叫んでいた。
『ツナ、』
「あ、檸檬!その…大丈夫?」
『うん!平気だよ♪』
あたしがそう答えると、ツナはホッとしたようだった。
でも、ランボちゃんを見て思い出したように言った。
「そうだよ!ランボ棄権させなきゃ!」
『レヴィには棄権は通用しないよ。』
「え?」
「アイツは女だろーが子供だろーが完膚なきまでに打ちのめす奴なんだ。」
「見た目まんまだー!!!」
それから、リボーンは第3段階の修業について話しかけたところで、寝てしまった。
「ったく~~~!!」
『まぁまぁ、あたしがリボーン連れてくから。』
「あ、ありがと、檸檬。」
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夜中。
「ランボのボスもなんでOKするかな~~。ランボ5歳だぞ、どーすんの?殺されちゃうんだぞ!」
独り言を言いながら、風呂から出るツナ。
ふと目に止まるのは、奥にある檸檬の部屋。
帰ってすぐ、
『お風呂は明日の朝イチで入るから』
と言って、寝てしまった檸檬。
「檸檬………つらかったんだろうな………。」
---『ルッスーリアーっ!!』
あんなに相手の事、心配してた。
あんなに叫んで…
あんなに泣いて……
「あ~~~っ!どーすればいいんだよ~~~っ!!」
頭を抱えるツナは、キッチンの明かりがついてるのに気が付く。
「こんな時間に………誰?」
ひょこっと覗くと………
「お久しぶりです、若きボンゴレ。」
「大人ランボ!!」
どうやら、寝相の悪かった5歳のランボが10年バズーカを寝ながら爆発させたようだ。
大人ランボを見て、ツナはパッと閃く。
「そーだよ!大人ランボが戦えばいいんだ!!」
「やれやれ…メモにあったリング争奪戦の事ですね。」
「えっ!??」
話を聞いたところ、大人ランボは1週間前に父さんからメモと、ボロボロの角を渡されていたようだった。
だったら戦って欲しいと思ったんだけど…
「考えてみてください。もし子供の俺が殺されるのなら、10年後の俺は存在しないはずです。」
「じゃぁ、明日ランボは勝つんだ!!」
「ところがそうも言い切れない。」
ランボは、何だかよく分からない、“パラレルワールド説”を語りだした。
「じゃぁまだどうなるか分からないって事~~!?」
「えぇ………そして最大の問題は、子供の俺が死ななかったとしても、10年後のこの俺が戦って死ぬかもしれないって事です。」
「(そうでしたー!!)」
「ってワケで、子供の俺にくれぐれも10年バズーカは使わないように言ってくれますか?」
「な!(このヘタレ戦わない気だーー!!!)」
ランボは突然立ち上がった。
「何言ってんの!?子供の自分見捨てるの!?」
「痛いのイヤなんです!俺は10年後から見守ってます。」
「うおい!」
見守るって………何だよそれ~~っ!!
「ボンゴレにこの角あげますよ。不吉なんで。」
「いらないよ!!」
大人ランボは俺に角を押し付けた瞬間、子供に戻ってしまった。
「あぁっ!ランボ!!」
しかも、子供のランボはスヤスヤ眠ってるし……
「どーすんだよ!?結局なんも解決してねー!」
俺が頭を抱えたトコで、何も変わらないんだけどさー……。
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「どーしたんだ、ツナ?」
翌日は雨だった。
「てんで身が入ってねーぞ。」
「沢田殿………」
「特殊弾には死のリスクがあるんだ。そんなんじゃ死ぬぞ。」
リボーンに言われ、俯いていたツナは顔を上げる。
「そんな事言われたってしょうがないだろ!!今日の勝負が気になって………」
ツナの言葉を聞くと、リボーンは少し考えてからこう言った。
「………第3段階はおあずけだ。帰るぞ。」
「え!?」
戸惑いながらもツナとバジルは、リボーンに付いていった。
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『あ!お帰りツナ、バジル、リボーン。』
「ただいま、檸檬。」
『あーあ、ずぶ濡れじゃん。タオル持って来るね♪』
「あ、ありがと。」
檸檬はパタパタと駆けて行った。
「檸檬殿、少しだけ元気になったようですね。」
「うん。でも…………やっぱりつらいんだよね、まだ。」
『はい!タオル。』
「ありがと、檸檬。」
「ありがとうございます。」
『いーえ。あ、リボーン!エスプレッソ入れておいたよ♪』
「サンキュー。」
リボーンはパッパと拭くと、キッチンに向かった。
『ねぇ、ツナ。』
「ん?」
『あたしはもう大丈夫だから、心配しないで。ツナは、仲間の事を考えてて。』
「だ、だったら!檸檬だって、俺達の仲間だよ!」
「沢田殿……」
俺がそう言うと、檸檬はいつもみたいに笑った。
『違うよ。』
「え……………?」
『あたしは中立だから、今はちゃんとした仲間じゃないよ。』
「檸檬殿っ…!」
『だから、あたしの事は二の次でいいよ。』
「檸檬…」
最後に檸檬はすごく哀しい笑みを見せ、俺とバジル君の前から立ち去った。
「どうして……」
「沢田殿?」
「どうしてこんな事になったんだろう……」
どうして檸檬はあんなに冷めてるんだろう。
檸檬が持って来てくれたタオルは、
俺の手の中で、
こんなにあったかいのに。
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「長ぐつ~~~ぐっつぐつ~~~♪」
「何とか棄権出来ないかな~~。」
夜になると、雨は更に激しくなって、雷を伴ってきた。
「心配すんな、ツナ。いざとなったら俺達が割って入っから。」
「で、でも………」
山本の言葉に反論しようとすると、上からチェルベッロの声がした。
「そのような行為は失格とし、阻止します。」
「そして助けようとした者、助けられた者、2人分のリングが相手の物となります。」
「やっぱり…」
俺は改めてため息を付いた。
「ところで…」
「へ?」
「檸檬様はどちらに?」
「え!?後ろに……いない!!?」
俺達がキョロキョロしてると、何処からか檸檬の声がした。
『こっちだよ、チェルベッロ。』
「檸檬様!!」
「「「「檸檬!」」」」
檸檬は、チェルベッロの後ろに立っていた。
「な、何故こちらに?」
『聞きたい事があったの。』
「私達にですか?」
『うん。』
そう言うと檸檬は、チェルベッロ達に何か耳打ちした。
するとチェルベッロは、ヒソヒソと何か檸檬に返答した。
『そう………分かった!ありがとね。』
俺達は首をかしげるばかりだった。
そしたら今度はチェルベッロが、俺達に向かって言った。
「あちらを御覧下さい。」
「あれが今宵の戦闘フィールドです。」
「屋上!?」
見上げた先に、普通の屋上は無かった。
何か、変な柱がたくさん立っている。
「ぐぴゃっ!!」
「な、何あれ~!!?」
ランボが酷い怪我しなきゃいいけど………
俺は益々不安になった。