ヴァリアー編
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どんなに傷付こうとも、
この想いだけは、
ゆずれない…
了平の右
「お兄さんが起き上がった!!」
コロネロの言葉を聞き、起き上がった了平さん。
あたしも少しホッとする。
でも…
まだ不利な事に変わりはない。
「灼熱のライトの中では、もうもたないでしょうに。」
ルッスーリアの言う通り。
了平さんの体からは、物凄い量の汗が蒸発している。
「さっさと死んで、私の死体コレクションになりなさいな。」
「いいや………!まだだ!!」
ルッスーリアの言葉に反発し続ける了平さん。
「あなたのパンチは通用しないわよ?」
「あぁ、確かに通用しなかった……………左はな。」
了平さんの言葉に、その場にいる皆が少しだけ反応する。
「そーいや、フゥ太達を助けた時から、左しか撃ってねーな。」
「そうだ。右は一度も撃ってねーぜ、コラ!」
理由は2つ………
1つは、細胞を休めてベストな状態に持っていく為。
もう1つは、
了平さんが、晴の守護者だから。
「この右拳は、圧倒的不利を跳ね返す為にある!!」
『圧倒的不利………』
今、この瞬間がまさに、
“圧倒的不利な状況”
それを打破出来る力があるとすれば…
すなわち…
「これは傑作だわ!滑稽だわ!」
「何が可笑しい!」
「あなたの温存してるパンチがどれ程のモノか知らないけど、当たらないと意味がないのよvV」
ルッスーリアの、フットワークが了平さんを翻弄する。
「お兄さん、ただでさえ見えないのに………!!」
もしも、
もしも了平さんが、
強くなっているのだとしたら、
ガッ、
「お兄さん!!」
「大丈………夫だ……」
何度も何度も立ち上がって、
「いくぞ………」
「へぇー。」
「なかなか雰囲気があるよ。」
「あれが奴の右………」
「(ゴクリ…)」
ルッスーリアを気配で追って、
「そこか!」
必ず捕らえる。
「極限太陽(マキシマムキャノン)!!!」
.了平さんのパンチの威力で、
ルッスーリアのサングラスが割れた。
「や、やった!!」
ツナが喜んでる。
けど、
ルッスーリアはそれで倒れるような人じゃない。
空中で一回転して、綺麗に着地する。
「クリーンヒットしてたら、ちょっとヤバかったかしら?」
「そんなぁ…あと少しだったのに………」
でも、
「いいや、確かに当てたぞ。」
了平さんの言葉に、あたしは透視を使って辺りを探る。
『(ライトが………!)』
ピシピシ…
パリーン!
「しょ、照明が!!」
「うおおお!!!」
了平さんがパンチを放つ度、光はどんどん消えていく。
「これでやっと貴様とイーブンの状態でやり合えそうだな。」
そう、
ライトが割れたと言う事は……
「刮目!!!」
了平さんの視覚が回復するという事。
「芝生頭のやつ!!」
「これで見える!」
「はなっから照明を狙ってやがったんだ。」
しかし、ルッスーリアは……
「目を開こうが閉じようがどうでもいいわ。それよりも信じ難いのは、照明を割る程の拳圧よ。」
『違うよ……』
「ルッスーリア、奴の体をよく見てみなよ。」
ベルと檸檬に言われ、ルッスーリアは了平の体を見る。
「なっ!!?塩!?塩の結晶ですって!!?」
「し、塩ー!!?」
ルッスーリアの言葉を聞いて、ツナも驚く。
脱水症状を起こした了平さんの汗が、照明の熱で水分を取られる。
そこで了平さんは、体の表面に残った塩を、拳に乗せて散弾のように放った。
その仕組みを理解したルッスーリアは、怪しく口角を上げる。
「なはんだ………」
「私がちょっぴりヒヤッとしたのは、拳圧で照明を割ったと思ったからよ。そんな事をしたのは、光り輝くパンチを放ったと言われる、初代の晴の守護者だけなんだもの。」
初代、かぁ………
ツナの武器であるグローブは初代のボスと同じ。
了平さんも、初代と同じようにパンチを使う。
もしかして……!!
「この程度の猿芸なら、私にも出来るわ。」
俊敏な動きで了平さんに近付き、パンチをくり出すルッスーリア。
了平さんは辛うじてそれをかわす。
と、その次の瞬間、
バリーン!
「なっ!!?」
音を立てて、背後のライトが割れた。
「芝生頭の塩をかすめて………」
「同じ技を!?」
「いいや、それ以上のテクニックを要するぞ。」
リボーンが言う。
ルッスーリアは、パンチを避けた了平さんの体の塩を拳圧で吹き飛ばしたんだ。
「まさに、ヴァリアークオリティだな。」
「ヴァリアー……クオリティ………?」
これはまた、懐かしい響き。
人間業では到底クリア出来ないと言われる殺しを完璧に遂行する殺しの天才集団、
それがヴァリアー。
人々は、ヴァリアーの悪魔の所業とも言われる殺しの能力の高さを、畏怖の念を込めて言う。
“ヴァリアークオリティ”と。
「分かったかしら?私達とあなた達では実力差があり過ぎて、遊びにはなっても戦いにはならないのよvV」
にっこり笑って言うルッスーリアに、了平さんは返す。
「遊びかどうかは、この右拳を受けてから言うんだな。」
『了平さん………』
あたしは思わずカプセルの中で立ち上がった。
すると、了平さんはこちらを見て。
「檸檬、俺は先程言ったはずだ。“任せとけ”と。」
『はい………。』
「だから、檸檬も見ていろ。コロネロ師匠から頂いた、この拳を!!」
『はいっ!』
不思議。
ぼろぼろなのは了平さんの方なのに、
闘気に満ちあふれてるのも、了平さんの方だよ。
でも、
ルッスーリアだって、一流の格闘家。
「んもう、分からない子ね。そのパンチはさっきマネしてみせたでしょ?見切ったわ。」
「何っ!!」
多分、見切ったのは本当。
でも了平さんは、ぐっと構え直して。
「やってみなければ、分からん!」
「んもう、諦めの悪い………。」
その時。
ふっと何かを感じた。
ルッスーリアの、相手を小馬鹿にするような笑み。
『(まさか………!)』
右拳も潰す気だ。
お得意の、メタルニーで。
---
------
-----------
---『ねぇねぇ、ルッスーリア。』
---「なぁに?檸檬。」
約1年前の、任務もない長閑な日。
---『ルッスーリアの左膝、固いよね?』
---「メタルニーって言うのよvV」
---『メタル…………鉄!!?』
---「そう、コレさえあれば、どんな物からも身を守れるわ。だって、鉄よりも強いのなんて無いでしょ?」
クリームソーダを啜る檸檬に、ルッスーリアは得意気に言った。
でもその時、檸檬には何かモヤモヤしたものが残っていたのだ。
---『コレ……………“さえあれば”??』
---
------
-----------
「よく言ったぜ、了平。それでこそ俺の弟子だ、コラ!」
「そんな………コロネロ!!いいのかよ!?」
不安そうなツナ。
コロネロは了平にアドバイスをする。
「極限太陽は全身の細胞のエネルギーを放つ技だが、まだエネルギーが完全には拳に伝わってないぜ。」
「師匠…………」
「勝機があるとすればそこだ!!もっと力を拳に凝縮させろ、コラ!!」
「おう!!ゆくぞ極限!!!」
了平さんはルッスーリアに立ち向かっていく。
「超えられない壁ってのを教えてあげるわ。」
ルッスーリアは余裕の表情で。
『(了平さん………!)』
拳がメタルニーとぶつかったら、右もダメージを受ける……!
「(見えた………!!)うおおお!!!」
了平さんの拳の細胞………まだベストじゃない!!
『ダメっ…!』
「極限太陽!!」
ガッ、
拳と膝が、ぶつかった。
スローモーションのように、時間が流れる。
だが、次の瞬間。
「うわあああ!!」
『あ…!』
右腕からも血が吹き出し、その場に崩れる了平さん。
「あああ!!」
「そんなっ………!右手まで!!」
「んー、いい響きだったわ~~~っvvV」
満足そうに笑うルッスーリアと、
真剣な瞳で了平さんを見るコロネロ。
「(細胞のエネルギー伝達率90%とうところだぜ。今のトレーニング時間じゃこれが限界か………。)」
その時、アロちゃんが叫んだ。
「う"お"ぉい!!いつまで待たせんだぁ!!」
「んもう、せっかちねぇ。言われなくても締めるわよ。」
もう…終わりなの?
ううん!
そんな事じゃないよ!
了平さんが、このままじゃ殺されちゃうっ!!!
『だ、ダメ………』
あたしの声は、震えて小さくなっていた。
と、その時。
「お兄ちゃん………?」
『(この声…)』
「きょ、京子ちゃん!!?なっ、何で此処に~!!?」
「娘さん達がコロネロを探してたんで、エスコートしたんだ。」
絶叫するツナに、答えたのは、
「父さん!!」
『家光さん………』
何も知らない京子は、ボロボロの了平さんを見て、ゆっくりと歩み寄る。
後ろには、花もいた。
「お兄ちゃん……」
「何か………ヤバいよ京子、これ……」
そして、リングのギリギリまで駆け寄る。
『京子ダメ!リングに近寄っちゃ!』
「檸檬ちゃん………!??」
「(ど、どーしよー……見つかった………)」
京子はあたしがいる事にも驚いたみたいだけど、了平さんの姿にショックを受けてるようだった。
「お兄ちゃん、どうして!?傷だらけだよ!」
『近寄っちゃダメ!』
リングのロープは電熱線で熱せられてるから…
「檸檬ちゃんも……どうして?」
「何やってんのよ、檸檬……そのカプセル………」
京子と花があたしに聞くと、ルッスーリアがすかさず言った。
「あらまぁ、あなた、この坊やの妹なの?お兄ちゃんはねぇ、私との戦いに破れ、殺されるのよvV」
「………!」
「そ、れ、に、どうやら檸檬の友達らしいけど、檸檬はもうすぐイタリアに帰るの。日本に戻る事は、もう無いわ。」
「お兄ちゃん!檸檬ちゃん!やめて!!」
『京子……』
「喧嘩はしないって、約束したじゃない!!!」
「(普通の喧嘩だと思ってるー!!!)」
「檸檬ちゃんも、またケーキ食べに行こうって約束したじゃない!!!」
京子の言葉に、ただ俯く事しか出来なかった。
あたしには、
了平さんを止める事も、
ルッスーリアを止める事も、
出来ないから………。
すると、
「あぁ、確かに額を割られた時………もう喧嘩はしないと約束した………」
『(了平さん…?)』
右も左も潰された了平さんは、ゆっくりと京子を諭すように語りかける。
「だが、こうも言ったはずだ。」
---「それでも、俺も男だ。どうしても喧嘩をしなくちゃならない時が来るかもしれない。しかし京子がそれ程泣くのなら、もう俺は……………」
「負けんと………!!!」
「『立った…!』」
それだけじゃない。
今までとは目つきが違う。
更に闘志を込めた、鋭い瞳。
そして、もう一度挑む。
「見さらせ!!!これが本当の………」
「まったく、しつこいわねぇ。これで終わりにしましょ♪」
「極限!!」
『あっ…!!』
その時あたしには、
確実に見えた。
こんな過酷な状況で、
傷だらけの細胞が、
何より強い思いを託し、
1つの拳に…………
「太陽!!!」
「(妹を思う気持ちが、細胞エネルギー伝達率を100%にしたぜ!!!コラ!!!)」
初代のパンチは、
光り輝くモノだったという。
だったら、
あたしが見ているパンチは、
限り無く初代のモノに近いだろう。
---
------
-----------
---『ねぇねぇ、ルッスーリア。』
---「なぁに?檸檬。」
---『そのメタルニーが壊れたら、どうするの?』
---「壊れるワケないじゃない♪そんなの杞憂よ、檸檬vV」
---
------
------------
ピシピシ…
バキャッ!!
「ぎゃあ!!!」
ねぇ、
どうするの?
ルッスーリア………
この想いだけは、
ゆずれない…
了平の右
「お兄さんが起き上がった!!」
コロネロの言葉を聞き、起き上がった了平さん。
あたしも少しホッとする。
でも…
まだ不利な事に変わりはない。
「灼熱のライトの中では、もうもたないでしょうに。」
ルッスーリアの言う通り。
了平さんの体からは、物凄い量の汗が蒸発している。
「さっさと死んで、私の死体コレクションになりなさいな。」
「いいや………!まだだ!!」
ルッスーリアの言葉に反発し続ける了平さん。
「あなたのパンチは通用しないわよ?」
「あぁ、確かに通用しなかった……………左はな。」
了平さんの言葉に、その場にいる皆が少しだけ反応する。
「そーいや、フゥ太達を助けた時から、左しか撃ってねーな。」
「そうだ。右は一度も撃ってねーぜ、コラ!」
理由は2つ………
1つは、細胞を休めてベストな状態に持っていく為。
もう1つは、
了平さんが、晴の守護者だから。
「この右拳は、圧倒的不利を跳ね返す為にある!!」
『圧倒的不利………』
今、この瞬間がまさに、
“圧倒的不利な状況”
それを打破出来る力があるとすれば…
すなわち…
「これは傑作だわ!滑稽だわ!」
「何が可笑しい!」
「あなたの温存してるパンチがどれ程のモノか知らないけど、当たらないと意味がないのよvV」
ルッスーリアの、フットワークが了平さんを翻弄する。
「お兄さん、ただでさえ見えないのに………!!」
もしも、
もしも了平さんが、
強くなっているのだとしたら、
ガッ、
「お兄さん!!」
「大丈………夫だ……」
何度も何度も立ち上がって、
「いくぞ………」
「へぇー。」
「なかなか雰囲気があるよ。」
「あれが奴の右………」
「(ゴクリ…)」
ルッスーリアを気配で追って、
「そこか!」
必ず捕らえる。
「極限太陽(マキシマムキャノン)!!!」
.了平さんのパンチの威力で、
ルッスーリアのサングラスが割れた。
「や、やった!!」
ツナが喜んでる。
けど、
ルッスーリアはそれで倒れるような人じゃない。
空中で一回転して、綺麗に着地する。
「クリーンヒットしてたら、ちょっとヤバかったかしら?」
「そんなぁ…あと少しだったのに………」
でも、
「いいや、確かに当てたぞ。」
了平さんの言葉に、あたしは透視を使って辺りを探る。
『(ライトが………!)』
ピシピシ…
パリーン!
「しょ、照明が!!」
「うおおお!!!」
了平さんがパンチを放つ度、光はどんどん消えていく。
「これでやっと貴様とイーブンの状態でやり合えそうだな。」
そう、
ライトが割れたと言う事は……
「刮目!!!」
了平さんの視覚が回復するという事。
「芝生頭のやつ!!」
「これで見える!」
「はなっから照明を狙ってやがったんだ。」
しかし、ルッスーリアは……
「目を開こうが閉じようがどうでもいいわ。それよりも信じ難いのは、照明を割る程の拳圧よ。」
『違うよ……』
「ルッスーリア、奴の体をよく見てみなよ。」
ベルと檸檬に言われ、ルッスーリアは了平の体を見る。
「なっ!!?塩!?塩の結晶ですって!!?」
「し、塩ー!!?」
ルッスーリアの言葉を聞いて、ツナも驚く。
脱水症状を起こした了平さんの汗が、照明の熱で水分を取られる。
そこで了平さんは、体の表面に残った塩を、拳に乗せて散弾のように放った。
その仕組みを理解したルッスーリアは、怪しく口角を上げる。
「なはんだ………」
「私がちょっぴりヒヤッとしたのは、拳圧で照明を割ったと思ったからよ。そんな事をしたのは、光り輝くパンチを放ったと言われる、初代の晴の守護者だけなんだもの。」
初代、かぁ………
ツナの武器であるグローブは初代のボスと同じ。
了平さんも、初代と同じようにパンチを使う。
もしかして……!!
「この程度の猿芸なら、私にも出来るわ。」
俊敏な動きで了平さんに近付き、パンチをくり出すルッスーリア。
了平さんは辛うじてそれをかわす。
と、その次の瞬間、
バリーン!
「なっ!!?」
音を立てて、背後のライトが割れた。
「芝生頭の塩をかすめて………」
「同じ技を!?」
「いいや、それ以上のテクニックを要するぞ。」
リボーンが言う。
ルッスーリアは、パンチを避けた了平さんの体の塩を拳圧で吹き飛ばしたんだ。
「まさに、ヴァリアークオリティだな。」
「ヴァリアー……クオリティ………?」
これはまた、懐かしい響き。
人間業では到底クリア出来ないと言われる殺しを完璧に遂行する殺しの天才集団、
それがヴァリアー。
人々は、ヴァリアーの悪魔の所業とも言われる殺しの能力の高さを、畏怖の念を込めて言う。
“ヴァリアークオリティ”と。
「分かったかしら?私達とあなた達では実力差があり過ぎて、遊びにはなっても戦いにはならないのよvV」
にっこり笑って言うルッスーリアに、了平さんは返す。
「遊びかどうかは、この右拳を受けてから言うんだな。」
『了平さん………』
あたしは思わずカプセルの中で立ち上がった。
すると、了平さんはこちらを見て。
「檸檬、俺は先程言ったはずだ。“任せとけ”と。」
『はい………。』
「だから、檸檬も見ていろ。コロネロ師匠から頂いた、この拳を!!」
『はいっ!』
不思議。
ぼろぼろなのは了平さんの方なのに、
闘気に満ちあふれてるのも、了平さんの方だよ。
でも、
ルッスーリアだって、一流の格闘家。
「んもう、分からない子ね。そのパンチはさっきマネしてみせたでしょ?見切ったわ。」
「何っ!!」
多分、見切ったのは本当。
でも了平さんは、ぐっと構え直して。
「やってみなければ、分からん!」
「んもう、諦めの悪い………。」
その時。
ふっと何かを感じた。
ルッスーリアの、相手を小馬鹿にするような笑み。
『(まさか………!)』
右拳も潰す気だ。
お得意の、メタルニーで。
---
------
-----------
---『ねぇねぇ、ルッスーリア。』
---「なぁに?檸檬。」
約1年前の、任務もない長閑な日。
---『ルッスーリアの左膝、固いよね?』
---「メタルニーって言うのよvV」
---『メタル…………鉄!!?』
---「そう、コレさえあれば、どんな物からも身を守れるわ。だって、鉄よりも強いのなんて無いでしょ?」
クリームソーダを啜る檸檬に、ルッスーリアは得意気に言った。
でもその時、檸檬には何かモヤモヤしたものが残っていたのだ。
---『コレ……………“さえあれば”??』
---
------
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「よく言ったぜ、了平。それでこそ俺の弟子だ、コラ!」
「そんな………コロネロ!!いいのかよ!?」
不安そうなツナ。
コロネロは了平にアドバイスをする。
「極限太陽は全身の細胞のエネルギーを放つ技だが、まだエネルギーが完全には拳に伝わってないぜ。」
「師匠…………」
「勝機があるとすればそこだ!!もっと力を拳に凝縮させろ、コラ!!」
「おう!!ゆくぞ極限!!!」
了平さんはルッスーリアに立ち向かっていく。
「超えられない壁ってのを教えてあげるわ。」
ルッスーリアは余裕の表情で。
『(了平さん………!)』
拳がメタルニーとぶつかったら、右もダメージを受ける……!
「(見えた………!!)うおおお!!!」
了平さんの拳の細胞………まだベストじゃない!!
『ダメっ…!』
「極限太陽!!」
ガッ、
拳と膝が、ぶつかった。
スローモーションのように、時間が流れる。
だが、次の瞬間。
「うわあああ!!」
『あ…!』
右腕からも血が吹き出し、その場に崩れる了平さん。
「あああ!!」
「そんなっ………!右手まで!!」
「んー、いい響きだったわ~~~っvvV」
満足そうに笑うルッスーリアと、
真剣な瞳で了平さんを見るコロネロ。
「(細胞のエネルギー伝達率90%とうところだぜ。今のトレーニング時間じゃこれが限界か………。)」
その時、アロちゃんが叫んだ。
「う"お"ぉい!!いつまで待たせんだぁ!!」
「んもう、せっかちねぇ。言われなくても締めるわよ。」
もう…終わりなの?
ううん!
そんな事じゃないよ!
了平さんが、このままじゃ殺されちゃうっ!!!
『だ、ダメ………』
あたしの声は、震えて小さくなっていた。
と、その時。
「お兄ちゃん………?」
『(この声…)』
「きょ、京子ちゃん!!?なっ、何で此処に~!!?」
「娘さん達がコロネロを探してたんで、エスコートしたんだ。」
絶叫するツナに、答えたのは、
「父さん!!」
『家光さん………』
何も知らない京子は、ボロボロの了平さんを見て、ゆっくりと歩み寄る。
後ろには、花もいた。
「お兄ちゃん……」
「何か………ヤバいよ京子、これ……」
そして、リングのギリギリまで駆け寄る。
『京子ダメ!リングに近寄っちゃ!』
「檸檬ちゃん………!??」
「(ど、どーしよー……見つかった………)」
京子はあたしがいる事にも驚いたみたいだけど、了平さんの姿にショックを受けてるようだった。
「お兄ちゃん、どうして!?傷だらけだよ!」
『近寄っちゃダメ!』
リングのロープは電熱線で熱せられてるから…
「檸檬ちゃんも……どうして?」
「何やってんのよ、檸檬……そのカプセル………」
京子と花があたしに聞くと、ルッスーリアがすかさず言った。
「あらまぁ、あなた、この坊やの妹なの?お兄ちゃんはねぇ、私との戦いに破れ、殺されるのよvV」
「………!」
「そ、れ、に、どうやら檸檬の友達らしいけど、檸檬はもうすぐイタリアに帰るの。日本に戻る事は、もう無いわ。」
「お兄ちゃん!檸檬ちゃん!やめて!!」
『京子……』
「喧嘩はしないって、約束したじゃない!!!」
「(普通の喧嘩だと思ってるー!!!)」
「檸檬ちゃんも、またケーキ食べに行こうって約束したじゃない!!!」
京子の言葉に、ただ俯く事しか出来なかった。
あたしには、
了平さんを止める事も、
ルッスーリアを止める事も、
出来ないから………。
すると、
「あぁ、確かに額を割られた時………もう喧嘩はしないと約束した………」
『(了平さん…?)』
右も左も潰された了平さんは、ゆっくりと京子を諭すように語りかける。
「だが、こうも言ったはずだ。」
---「それでも、俺も男だ。どうしても喧嘩をしなくちゃならない時が来るかもしれない。しかし京子がそれ程泣くのなら、もう俺は……………」
「負けんと………!!!」
「『立った…!』」
それだけじゃない。
今までとは目つきが違う。
更に闘志を込めた、鋭い瞳。
そして、もう一度挑む。
「見さらせ!!!これが本当の………」
「まったく、しつこいわねぇ。これで終わりにしましょ♪」
「極限!!」
『あっ…!!』
その時あたしには、
確実に見えた。
こんな過酷な状況で、
傷だらけの細胞が、
何より強い思いを託し、
1つの拳に…………
「太陽!!!」
「(妹を思う気持ちが、細胞エネルギー伝達率を100%にしたぜ!!!コラ!!!)」
初代のパンチは、
光り輝くモノだったという。
だったら、
あたしが見ているパンチは、
限り無く初代のモノに近いだろう。
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---『ねぇねぇ、ルッスーリア。』
---「なぁに?檸檬。」
---『そのメタルニーが壊れたら、どうするの?』
---「壊れるワケないじゃない♪そんなの杞憂よ、檸檬vV」
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ピシピシ…
バキャッ!!
「ぎゃあ!!!」
ねぇ、
どうするの?
ルッスーリア………