ヴァリアー編
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知らなかった、
君がそんなに、
つらかったなんて。
決戦前
「うわぁああ!!ヴァリアーが来たぁ!!」
朝。
汗をかいて、飛び起きるツナ。
『ツナ、大丈夫?』
「檸檬…」
『もう、朝ご飯出来てるよ。早く着替えて降りておいで。』
「う、うん。///」
檸檬のさらっとした態度に、一瞬全てが夢だったのかと考えるツナ。
「夢なワケねーだろ。」
「9代目の勅命、額入ってるーっ!!リングも指についてるしーっ!!!」
「家光はバジルと情報収集に出たぞ。」
「そんな…じゃぁやっぱり、アレは夢じゃなかったんだ……。」
思い出すのは、昨日の晩の出来事。
---
------
----------
「同じリングを持つ者同士の、ガチンコバトル~~っ!!?」
「あぁ。あとは指示を待て、と書いてある。」
家光がそう言った次の瞬間、
「お待たせしました。」
何処からか、2人の女が現れた。
同じ色の髪の毛、
同じような服装、
そして、まるで顔を隠すように目に仮面を付けている。
「今回のリング争奪戦では、我々が審判を務めます。」
突然の登場に、その場にいる全員の注目が集まる。
「我々は、9代目直属のチェルベッロ機関の者です。リング争奪戦において、我々の決定は9代目の決定だと思って下さい。」
そう言って、チェルベッロの1人が死炎印付きの紙を見せた。
「9代目は、これがファミリー全体を納得させる為のギリギリの措置だとおっしゃってます。異存はありませんか?ザンザス様。」
チェルベッロの問いに、ザンザスは無言で応える。
「………ありがとうございます。」
そこに、家光が異議を唱えたが、
「我々は9代目直属であって、あなたの力の及ぶ存在ではない。」
と、却下された。
そして、チェルベッロがリングについて説明を始める。
「本来、7つのハーフボンゴレリングは、ボスの持つ1組と門外顧問の持つ1組、計2組存在し、跡継ぎの際、合体させて継承される物なのです。」
そう、今回は異例の事態。
2人が別々の後継者を選んだ。
「9代目が認めたザンザス様率いる7名と、家光氏が認めた綱吉氏率いる7名です。」
『(ヴァリアーとツナ達の扱いが違う………。)』
檸檬はうっすらとそれを感じ取った。
恐らくチェルベッロは、ツナ達に不利なように公正な審判をする為に来た者……。
どうして9代目がそんな奴らを送りだしたかは分からないけど。
「そこで、真にリングに相応しいのはどちらなのか、命を賭けて証明してもらいます。」
チェルベッロの言葉に、ツナ達はごくりと唾を飲む。
「場所は深夜の並盛中学校。詳しくは追って説明致します。」
「え?並中でやんの!!?」
ツナの言葉を無視して、チェルベッロは檸檬の方に向き直った。
「檸檬様、」
『何?』
「「「(“様”!!?)」」」
ツナ達は静かに驚く。
「9代目から、伝言を預かっております。」
そう言って、チェルベッロはもう1つ巻物を取り出した。
『……………読んで。』
「畏まりました。」
---檸檬、元気にしているかね?
今回、檸檬にとって非常に耐え難い状況となってしまったのは、私も十分承知している。
しかし、どちらが10代目に相応しいか、決めなければならないもの事実。
そして、私直属である檸檬の今後を決めなければならないのも事実だ。
よって、この決闘の間は、家庭教師補佐としての任務を中止し、檸檬には中立を守って貰う。
そして、決闘の勝者が沢田綱吉である場合は中止した任務を続行し、XANXUSである場合は、
ヴァリアー本入隊を義務とする。---
「んなっ!?」
「檸檬が…」
「ヴァリアーに…」
「本入隊だと!!?」
口々に驚く並盛メンバーに対し、ゆるりと口角を上げるヴァリアー達。
檸檬はただただ黙っていた。
その表情は、ツナ達にも、ヴァリアーにも見えなかった。
だが突然、覚悟を決めたようにぐっと顔を上げて。
『分かった、承諾する。』
「「「「檸檬!!」」」」
「ありがとうございます。」
チェルベッロが礼をした。
「では明晩、並中にて。」
「え!?ちょっ…」
ツナが引き止めようとすると、ザンザスが睨んだ。
「うわああ!!」
『ねぇ、ボス。』
檸檬がザンザスの注意をツナから逸らす。
「……………あ?」
『あの部屋は、どうなってる?』
「……そのままだ。」
「みんなで交代で掃除もしてるのよんvV」
ルッスーリアが付け足す。
すると檸檬は輝くように笑って。
『ありがとうっ!』
その笑顔を見たヴァリアーは、一瞬表情が弛んだように、ツナには見えた。
そして、くるっと背を向け去って行った。
「檸檬…『ツナ。』
ツナの呼びかけを遮る檸檬。
「へ?」
『もう夕飯だって、奈々さんが言ってたよ。』
「え…あ…うん……ありがとう………。」
『あたし、先に帰るね。』
檸檬は振り向かないまま俊足で去ってしまった。
「き、消えたぞ!?」
「やっぱ早ぇな、檸檬は。」
「でも、どうなってんスかねぇ。まるで檸檬も争奪戦の賞品みてーに……」
「仕方ねぇ事だぞ。」
「リボーン…」
リボーンはそれだけ言うと、スタスタ歩き始めた。
「今夜は遅い。もうお前らも帰れよ。ツナ、夕飯に帰るぞ。」
「あ、うん。じゃぁね、みんな。」
「はい。」
「じゃな。」
「おう。」
リボーンは少し早歩きをしているようで、俺は小走りになった。
何となく分かってた事だけど、
その日檸檬は、なかなか帰ってこなかった。
---
------
-----------
思い出しただけで体が震えるんだ。
絶対絶対適うワケないよ!!
俺がそう思っていると、
「学校には行けよ…」
って言って、リボーンは部屋を出て行った。
「リボーン!」
「何だ?」
「あのさ…檸檬は……?」
「部屋にいるぞ。今日は学校に行けそうにないな。」
「え…?」
ツナは急いで着替えて1階の檸檬の部屋の前に立った。
「あの……檸檬?」
『ツナ…?どしたの?』
さっきとはまるで違う、何だか弱々しい声。
「えっと…大丈夫?」
『そうだなー………ダメかもね。』
直後に聞こえる、乾いた笑い声。
違う、いつもの檸檬じゃない……。
『ツナ、黙っててごめんね。』
「え…?」
『あたし、イタリアにいた頃ね、ヴァリアーに仮入隊したんだ。だから、ヴァリアーはあたしにとって、敵じゃないの。むしろ………仲間なの。』
「檸檬…。」
俺が戸惑っていると、ゆっくりとドアが開いた。
「檸檬っ!!?」
檸檬は、ぽろぽろと涙を流していた。
『ツナぁ、あたし………わかんないの。』
「え?」
『どんな顔してればいいのか、わかんないの。』
そっか、
俺達に向かって笑えば、ヴァリアーを敵視する事になるし、
ヴァリアーに向かって笑えば、俺達を敵視する事になるんだ。
『どうして……どうして大好きな人達が決闘するのを………止められないの?』
「檸檬…」
『ねぇ…ツナ………』
檸檬は俺のベストを少し握る。
『どうやったら、誰も傷付かずに済むかなぁ?あたしは……何処にいればいいのかなぁ?』
その姿を見てると、何だか胸が締め付けられて。
俺はそうっと檸檬の背中をさすった。
「檸檬……俺の方こそごめん。檸檬がつらいの、全然分からなくて…昨日の夜も、檸檬に助けられて………」
俺達を助けるって事は、
ヴァリアーの敵になるって事。
そんなの、檸檬は絶対嫌だったはずなのに。
俺達が、弱いせいで。
「本当に………ごめんね。」
俺がもう1回謝ると、檸檬は小さく首を振った。
『あたしはいいの、ツナ達が無事なら。』
こんなにつらい状況でも、君は笑うんだ。
『ボスがツナ達に傷を負わせるのが、耐えられなかっただけ。』
ボスって…ザンザスの事だよね……
『あ、それと!』
「え?」
『ザンザスの事をボスって呼んじゃうのは、10代目だからとかじゃなくて……ヴァリアーにいた頃、そう呼んでたからで………』
別にツナよりザンザスが10代目に相応しいとか思ってるワケじゃないよ!
そう言って、檸檬は恥ずかしそうに目を逸らした。
「うん、分かってる。」
『ツナ…』
分かってるよ、
檸檬が誰より優しいって事。
分かってるよ、
だから今、すっごくつらいんだって事。
「大丈夫だから。檸檬、俺達……頑張るから。」
そんな自信ないけど、檸檬の涙はもうみたくないから。
「な、何とかなるよ。きっと。」
『ツナ…』
檸檬は深呼吸を1つして、涙を止めた。
「(相変わらずすげーっ!)」
『ありがとう、ツナ。応援してる。』
そう言って、檸檬は笑顔を見せた。
多分、本物。
『学校、遅れちゃうよ?』
「あ"っ!!じゃ、行って来るね!」
『行ってらっしゃい♪』
俺は走って学校に向かった。
まだ檸檬は精神的に参ってるだろうから、学校には行けないんだろうな…。
そんな事を考えていると、後ろから肩を掴まれた。
「や、山本!!」
「おっす、ツナ。檸檬は一緒じゃねーの?」
「今日はちょっと…」
「そか……」
山本も、何となく分かってるようだった。
「でもさ、これ、俺だけの戦いじゃねーんだよな。」
「え?」
「皆が揃った時、思ったんだ。俺達の戦いだって……。ツナ、皆で勝とーぜ。」
「山本…」
と、その時。
「ったりめえーだ!!」
「獄寺君!!!」
静岡みかんのダンボールを持った獄寺君が、突然現れた。
「あんな奴らにボンゴレも檸檬も任せられるか!!勝つのは俺達です。任せて下さい、10代目!!」
またいつものパターンだーっ!!
2人の根拠のない盛り上がりに巻き込まれて行くーーっ!!
でも…
2人にそう言われると、何とかなるような気がして来るから不思議だな。
俺がそう思っていると、山本が獄寺君の持ってた箱を開けた。
「紙飛行機??」
「修業に使うんスよ。実はまだ完成してなくて……今から山に行くんス。」
紙飛行機の修業にちょっと疑問を持ったけど、シャマルは何か考えてんだろうな……。
「にしても、霧の奴は何してんスかね?この大事な時に顔も見せずに!!」
「雲雀もいなかったよな。アイツと手合わせしてーんだけど……。」
「アイツはきっと寝てるぜ、応接室で。」
「でも、ディーノさんと修業してるはずだけど………。」
---
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同じ頃、並中屋上。
砕けた壁、
滴る血。
無言で向かい合う雲雀とディーノは、お互い傷だらけのぼろぼろだった。
---
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学校に着いたツナは、クラスの皆にサボリで休んでたと疑われる。
「(その方がどれだけ良かったか……)」
そう思ってため息をつく俺。
すると…
「ツナ君、おはよ。良かった、風邪治ったんだね。」
「京子ちゃん!おはよう!///」
挨拶をかわした後、京子ちゃんは少し俯いた。
「あのね、最近お兄ちゃん、ボクシング以外の事に夢中みたいで様子が変なの。ツナ君、何か心当たりない?」
「(お兄さん、今回の事、京子ちゃんに言ってないんだ…!)」
俺が巻き込んだせいで、京子ちゃんにこんなに心配かけて…
「お兄ちゃんたら、コロネロ君までどっかに連れ出してるみたいで…」
「京子ちゃん、コロネロ知ってんの!!?」
「うん、ずっとうちに泊まってるよ。」
京子ちゃんちに泊まり…
いーなーコロネロ……
じゃなくて!!
「実は、お兄さんは…」
「相撲大会だ!!」
「え?」
「獄寺や山本達と相撲勝負をするから特訓をしているだけだ。」
突然現れたお兄さん。
「沢田も出場するんだぞ。コロネロも相撲を見るのが好きでな。」
「何だ、そうだったの?」
京子ちゃんはホッとしたみたいだけど…
「沢田、シコを踏みに行くぞ!!」
「え?ちょっ……」
俺は、お兄さんに外へ連れ出された。
立ち去る2人を見て、花が京子に言う。
「なーんか怪しくない?」
「花…?」
---
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------------
外の渡り廊下。
俺とお兄さんは並んで立っている。
「すまんな、沢田。京子の奴、喧嘩絡みの事となると、異常に心配するんでな。」
「え"?」
お兄さんは、額の傷を指差す。
「この傷な、俺と京子がまだ小学生だった頃に付けた傷だ。」
お兄さんの話だと、近所にお兄さんを敵対視する中学生がいて、京子ちゃんを使ってお兄さんを呼び出したそうだ。
そして、お兄さんは袋叩きにあって、頭を割られて重傷を負った…
「京子は未だ、それを自分のせいだと思ってるんだ。」
「………それで……」
「なーに!どのみち京子に黙っていても問題はない!」
お兄さんはいつもの明るい声で言った。
「俺は勝つからな、任せとけ!」
「お兄さん…」
何だか、
自分が喝を入れられたような気がした。
---
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その夜、ヴァリアーの宿泊所。
「なぁ、マーモン。」
「ム?何だい?ベル。」
「檸檬、可愛くなったと思わねー?」
ベルの言葉に、マーモンは小さくため息をつく。
「またその話かい?もう4回目だよ。」
「だってさー、」
ベルは椅子をギィギィ揺らしながら言う。
「可愛かったんだもん♪1年前も確かに可愛かったけどさ、もっと綺麗になってたし♪」
「確かにそうだね。」
「早くおしゃべりしたいなー。俺の可愛いお姫さまと♪♪」
そう言って、窓の外を見つめるベル。
彼のティアラは、月明かりにより金色に輝いた。
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「ボス、そろそろ出発の時間です。」
「うるせぇ、行ってろ。」
「……分かりました。」
部屋の外にいるレヴィを追い払い、ザンザスはソファにどかっと座る。
その脳裏に蘇るのは、昨晩見た檸檬の笑顔。
---『ありがとうっ!』
「檸檬…」
相変わらず温い奴だった。
相変わらず高い声だった。
きっと、相変わらず狂ったように踊るんだろう。
ザンザスは受話器を取る。
---「もしもし。」
「俺だ。」
---「ザンザス様、御用件は。」
「戦いを始める前に、檸檬の戦闘能力を試せ。」
---「畏まりました。」
かけた相手は、チェルベッロ。
月に向かって、ザンザスはにやりと笑った。
---
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同刻、沢田家。
「大体何で俺がこんな状況に巻き込まれなきゃならないんだよ!!他に強い人いるだろ!?」
「勘違いすんな。家光はザンザス達を阻む為にお前にリングを託したワケじゃねーぞ。」
「え?」
「お前が後継者に相応しいと思ったから託したんだ。」
リボーンの言葉に、ツナは少しだけ目を見開いた。
「もう行くぞ。」
「う、うん。」
それでもまだ弱気なツナ。
ランボを抱えて部屋のドアを開ける。
「あっ…!」
『ツナ、一緒に行こう♪』
「檸檬!!その…大丈夫なの?」
『とりあえず。』
檸檬は苦笑いを見せた。
「ランボさん、檸檬と一緒に行くーっ!!」
『おいで、ランボちゃん♪』
ランボは無邪気に檸檬の肩に乗る。
檸檬はその頭を優しく撫でた。
そして…
「つ、ついに来ちゃった…」
『うん…。』
並盛の校門を前に、一瞬足を止める檸檬とツナ。
「あ、皆だ!」
「よぉ!」
「オス。」
「10代目!」
「遅くなってごめん……ランボがかくれんぼ始めちゃって…」
『すぐ見つけたけどね。』
「ホントにありがとう、檸檬。」
『いーえ♪』
優しく微笑む檸檬の横で、獄寺が怒る。
「10代目を煩わせやがって、アホ牛が!!」
「つっても、まだ来てない奴もいるけどな。」
『(恭弥……)』
「相変わらず霧の奴は姿を見せん。」
『(霧………誰だろ。)』
考え込む檸檬。
するとツナが、
「それにしても、静かだね……。本当に並中で良かったのかな?」
と。
「奴ら、まだ来てねーのかな。」
ツナの言葉に付け足すような獄寺の問いに、何処からか返答が。
「とっくにスタンバイしてますよ。」
「上だ!」
そこには、チェルベッロの影と、ヴァリアー達の影。
「厳正なる審査の結果、今宵の対戦カードが決まりました。」
ごくりと唾を飲む、並盛メンバー。
「第1戦は…………晴の守護者同士の対決です。」
『(って事は……了平さんと、ルッスーリア……。)』
始まってしまう。
あたしはやっぱり、どんな顔をしていいのか分からない。
ただ、見ている事しか出来ない。
自分の無力さに、腹が立った。
君がそんなに、
つらかったなんて。
決戦前
「うわぁああ!!ヴァリアーが来たぁ!!」
朝。
汗をかいて、飛び起きるツナ。
『ツナ、大丈夫?』
「檸檬…」
『もう、朝ご飯出来てるよ。早く着替えて降りておいで。』
「う、うん。///」
檸檬のさらっとした態度に、一瞬全てが夢だったのかと考えるツナ。
「夢なワケねーだろ。」
「9代目の勅命、額入ってるーっ!!リングも指についてるしーっ!!!」
「家光はバジルと情報収集に出たぞ。」
「そんな…じゃぁやっぱり、アレは夢じゃなかったんだ……。」
思い出すのは、昨日の晩の出来事。
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「同じリングを持つ者同士の、ガチンコバトル~~っ!!?」
「あぁ。あとは指示を待て、と書いてある。」
家光がそう言った次の瞬間、
「お待たせしました。」
何処からか、2人の女が現れた。
同じ色の髪の毛、
同じような服装、
そして、まるで顔を隠すように目に仮面を付けている。
「今回のリング争奪戦では、我々が審判を務めます。」
突然の登場に、その場にいる全員の注目が集まる。
「我々は、9代目直属のチェルベッロ機関の者です。リング争奪戦において、我々の決定は9代目の決定だと思って下さい。」
そう言って、チェルベッロの1人が死炎印付きの紙を見せた。
「9代目は、これがファミリー全体を納得させる為のギリギリの措置だとおっしゃってます。異存はありませんか?ザンザス様。」
チェルベッロの問いに、ザンザスは無言で応える。
「………ありがとうございます。」
そこに、家光が異議を唱えたが、
「我々は9代目直属であって、あなたの力の及ぶ存在ではない。」
と、却下された。
そして、チェルベッロがリングについて説明を始める。
「本来、7つのハーフボンゴレリングは、ボスの持つ1組と門外顧問の持つ1組、計2組存在し、跡継ぎの際、合体させて継承される物なのです。」
そう、今回は異例の事態。
2人が別々の後継者を選んだ。
「9代目が認めたザンザス様率いる7名と、家光氏が認めた綱吉氏率いる7名です。」
『(ヴァリアーとツナ達の扱いが違う………。)』
檸檬はうっすらとそれを感じ取った。
恐らくチェルベッロは、ツナ達に不利なように公正な審判をする為に来た者……。
どうして9代目がそんな奴らを送りだしたかは分からないけど。
「そこで、真にリングに相応しいのはどちらなのか、命を賭けて証明してもらいます。」
チェルベッロの言葉に、ツナ達はごくりと唾を飲む。
「場所は深夜の並盛中学校。詳しくは追って説明致します。」
「え?並中でやんの!!?」
ツナの言葉を無視して、チェルベッロは檸檬の方に向き直った。
「檸檬様、」
『何?』
「「「(“様”!!?)」」」
ツナ達は静かに驚く。
「9代目から、伝言を預かっております。」
そう言って、チェルベッロはもう1つ巻物を取り出した。
『……………読んで。』
「畏まりました。」
---檸檬、元気にしているかね?
今回、檸檬にとって非常に耐え難い状況となってしまったのは、私も十分承知している。
しかし、どちらが10代目に相応しいか、決めなければならないもの事実。
そして、私直属である檸檬の今後を決めなければならないのも事実だ。
よって、この決闘の間は、家庭教師補佐としての任務を中止し、檸檬には中立を守って貰う。
そして、決闘の勝者が沢田綱吉である場合は中止した任務を続行し、XANXUSである場合は、
ヴァリアー本入隊を義務とする。---
「んなっ!?」
「檸檬が…」
「ヴァリアーに…」
「本入隊だと!!?」
口々に驚く並盛メンバーに対し、ゆるりと口角を上げるヴァリアー達。
檸檬はただただ黙っていた。
その表情は、ツナ達にも、ヴァリアーにも見えなかった。
だが突然、覚悟を決めたようにぐっと顔を上げて。
『分かった、承諾する。』
「「「「檸檬!!」」」」
「ありがとうございます。」
チェルベッロが礼をした。
「では明晩、並中にて。」
「え!?ちょっ…」
ツナが引き止めようとすると、ザンザスが睨んだ。
「うわああ!!」
『ねぇ、ボス。』
檸檬がザンザスの注意をツナから逸らす。
「……………あ?」
『あの部屋は、どうなってる?』
「……そのままだ。」
「みんなで交代で掃除もしてるのよんvV」
ルッスーリアが付け足す。
すると檸檬は輝くように笑って。
『ありがとうっ!』
その笑顔を見たヴァリアーは、一瞬表情が弛んだように、ツナには見えた。
そして、くるっと背を向け去って行った。
「檸檬…『ツナ。』
ツナの呼びかけを遮る檸檬。
「へ?」
『もう夕飯だって、奈々さんが言ってたよ。』
「え…あ…うん……ありがとう………。」
『あたし、先に帰るね。』
檸檬は振り向かないまま俊足で去ってしまった。
「き、消えたぞ!?」
「やっぱ早ぇな、檸檬は。」
「でも、どうなってんスかねぇ。まるで檸檬も争奪戦の賞品みてーに……」
「仕方ねぇ事だぞ。」
「リボーン…」
リボーンはそれだけ言うと、スタスタ歩き始めた。
「今夜は遅い。もうお前らも帰れよ。ツナ、夕飯に帰るぞ。」
「あ、うん。じゃぁね、みんな。」
「はい。」
「じゃな。」
「おう。」
リボーンは少し早歩きをしているようで、俺は小走りになった。
何となく分かってた事だけど、
その日檸檬は、なかなか帰ってこなかった。
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思い出しただけで体が震えるんだ。
絶対絶対適うワケないよ!!
俺がそう思っていると、
「学校には行けよ…」
って言って、リボーンは部屋を出て行った。
「リボーン!」
「何だ?」
「あのさ…檸檬は……?」
「部屋にいるぞ。今日は学校に行けそうにないな。」
「え…?」
ツナは急いで着替えて1階の檸檬の部屋の前に立った。
「あの……檸檬?」
『ツナ…?どしたの?』
さっきとはまるで違う、何だか弱々しい声。
「えっと…大丈夫?」
『そうだなー………ダメかもね。』
直後に聞こえる、乾いた笑い声。
違う、いつもの檸檬じゃない……。
『ツナ、黙っててごめんね。』
「え…?」
『あたし、イタリアにいた頃ね、ヴァリアーに仮入隊したんだ。だから、ヴァリアーはあたしにとって、敵じゃないの。むしろ………仲間なの。』
「檸檬…。」
俺が戸惑っていると、ゆっくりとドアが開いた。
「檸檬っ!!?」
檸檬は、ぽろぽろと涙を流していた。
『ツナぁ、あたし………わかんないの。』
「え?」
『どんな顔してればいいのか、わかんないの。』
そっか、
俺達に向かって笑えば、ヴァリアーを敵視する事になるし、
ヴァリアーに向かって笑えば、俺達を敵視する事になるんだ。
『どうして……どうして大好きな人達が決闘するのを………止められないの?』
「檸檬…」
『ねぇ…ツナ………』
檸檬は俺のベストを少し握る。
『どうやったら、誰も傷付かずに済むかなぁ?あたしは……何処にいればいいのかなぁ?』
その姿を見てると、何だか胸が締め付けられて。
俺はそうっと檸檬の背中をさすった。
「檸檬……俺の方こそごめん。檸檬がつらいの、全然分からなくて…昨日の夜も、檸檬に助けられて………」
俺達を助けるって事は、
ヴァリアーの敵になるって事。
そんなの、檸檬は絶対嫌だったはずなのに。
俺達が、弱いせいで。
「本当に………ごめんね。」
俺がもう1回謝ると、檸檬は小さく首を振った。
『あたしはいいの、ツナ達が無事なら。』
こんなにつらい状況でも、君は笑うんだ。
『ボスがツナ達に傷を負わせるのが、耐えられなかっただけ。』
ボスって…ザンザスの事だよね……
『あ、それと!』
「え?」
『ザンザスの事をボスって呼んじゃうのは、10代目だからとかじゃなくて……ヴァリアーにいた頃、そう呼んでたからで………』
別にツナよりザンザスが10代目に相応しいとか思ってるワケじゃないよ!
そう言って、檸檬は恥ずかしそうに目を逸らした。
「うん、分かってる。」
『ツナ…』
分かってるよ、
檸檬が誰より優しいって事。
分かってるよ、
だから今、すっごくつらいんだって事。
「大丈夫だから。檸檬、俺達……頑張るから。」
そんな自信ないけど、檸檬の涙はもうみたくないから。
「な、何とかなるよ。きっと。」
『ツナ…』
檸檬は深呼吸を1つして、涙を止めた。
「(相変わらずすげーっ!)」
『ありがとう、ツナ。応援してる。』
そう言って、檸檬は笑顔を見せた。
多分、本物。
『学校、遅れちゃうよ?』
「あ"っ!!じゃ、行って来るね!」
『行ってらっしゃい♪』
俺は走って学校に向かった。
まだ檸檬は精神的に参ってるだろうから、学校には行けないんだろうな…。
そんな事を考えていると、後ろから肩を掴まれた。
「や、山本!!」
「おっす、ツナ。檸檬は一緒じゃねーの?」
「今日はちょっと…」
「そか……」
山本も、何となく分かってるようだった。
「でもさ、これ、俺だけの戦いじゃねーんだよな。」
「え?」
「皆が揃った時、思ったんだ。俺達の戦いだって……。ツナ、皆で勝とーぜ。」
「山本…」
と、その時。
「ったりめえーだ!!」
「獄寺君!!!」
静岡みかんのダンボールを持った獄寺君が、突然現れた。
「あんな奴らにボンゴレも檸檬も任せられるか!!勝つのは俺達です。任せて下さい、10代目!!」
またいつものパターンだーっ!!
2人の根拠のない盛り上がりに巻き込まれて行くーーっ!!
でも…
2人にそう言われると、何とかなるような気がして来るから不思議だな。
俺がそう思っていると、山本が獄寺君の持ってた箱を開けた。
「紙飛行機??」
「修業に使うんスよ。実はまだ完成してなくて……今から山に行くんス。」
紙飛行機の修業にちょっと疑問を持ったけど、シャマルは何か考えてんだろうな……。
「にしても、霧の奴は何してんスかね?この大事な時に顔も見せずに!!」
「雲雀もいなかったよな。アイツと手合わせしてーんだけど……。」
「アイツはきっと寝てるぜ、応接室で。」
「でも、ディーノさんと修業してるはずだけど………。」
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同じ頃、並中屋上。
砕けた壁、
滴る血。
無言で向かい合う雲雀とディーノは、お互い傷だらけのぼろぼろだった。
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学校に着いたツナは、クラスの皆にサボリで休んでたと疑われる。
「(その方がどれだけ良かったか……)」
そう思ってため息をつく俺。
すると…
「ツナ君、おはよ。良かった、風邪治ったんだね。」
「京子ちゃん!おはよう!///」
挨拶をかわした後、京子ちゃんは少し俯いた。
「あのね、最近お兄ちゃん、ボクシング以外の事に夢中みたいで様子が変なの。ツナ君、何か心当たりない?」
「(お兄さん、今回の事、京子ちゃんに言ってないんだ…!)」
俺が巻き込んだせいで、京子ちゃんにこんなに心配かけて…
「お兄ちゃんたら、コロネロ君までどっかに連れ出してるみたいで…」
「京子ちゃん、コロネロ知ってんの!!?」
「うん、ずっとうちに泊まってるよ。」
京子ちゃんちに泊まり…
いーなーコロネロ……
じゃなくて!!
「実は、お兄さんは…」
「相撲大会だ!!」
「え?」
「獄寺や山本達と相撲勝負をするから特訓をしているだけだ。」
突然現れたお兄さん。
「沢田も出場するんだぞ。コロネロも相撲を見るのが好きでな。」
「何だ、そうだったの?」
京子ちゃんはホッとしたみたいだけど…
「沢田、シコを踏みに行くぞ!!」
「え?ちょっ……」
俺は、お兄さんに外へ連れ出された。
立ち去る2人を見て、花が京子に言う。
「なーんか怪しくない?」
「花…?」
---
------
------------
外の渡り廊下。
俺とお兄さんは並んで立っている。
「すまんな、沢田。京子の奴、喧嘩絡みの事となると、異常に心配するんでな。」
「え"?」
お兄さんは、額の傷を指差す。
「この傷な、俺と京子がまだ小学生だった頃に付けた傷だ。」
お兄さんの話だと、近所にお兄さんを敵対視する中学生がいて、京子ちゃんを使ってお兄さんを呼び出したそうだ。
そして、お兄さんは袋叩きにあって、頭を割られて重傷を負った…
「京子は未だ、それを自分のせいだと思ってるんだ。」
「………それで……」
「なーに!どのみち京子に黙っていても問題はない!」
お兄さんはいつもの明るい声で言った。
「俺は勝つからな、任せとけ!」
「お兄さん…」
何だか、
自分が喝を入れられたような気がした。
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その夜、ヴァリアーの宿泊所。
「なぁ、マーモン。」
「ム?何だい?ベル。」
「檸檬、可愛くなったと思わねー?」
ベルの言葉に、マーモンは小さくため息をつく。
「またその話かい?もう4回目だよ。」
「だってさー、」
ベルは椅子をギィギィ揺らしながら言う。
「可愛かったんだもん♪1年前も確かに可愛かったけどさ、もっと綺麗になってたし♪」
「確かにそうだね。」
「早くおしゃべりしたいなー。俺の可愛いお姫さまと♪♪」
そう言って、窓の外を見つめるベル。
彼のティアラは、月明かりにより金色に輝いた。
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「ボス、そろそろ出発の時間です。」
「うるせぇ、行ってろ。」
「……分かりました。」
部屋の外にいるレヴィを追い払い、ザンザスはソファにどかっと座る。
その脳裏に蘇るのは、昨晩見た檸檬の笑顔。
---『ありがとうっ!』
「檸檬…」
相変わらず温い奴だった。
相変わらず高い声だった。
きっと、相変わらず狂ったように踊るんだろう。
ザンザスは受話器を取る。
---「もしもし。」
「俺だ。」
---「ザンザス様、御用件は。」
「戦いを始める前に、檸檬の戦闘能力を試せ。」
---「畏まりました。」
かけた相手は、チェルベッロ。
月に向かって、ザンザスはにやりと笑った。
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同刻、沢田家。
「大体何で俺がこんな状況に巻き込まれなきゃならないんだよ!!他に強い人いるだろ!?」
「勘違いすんな。家光はザンザス達を阻む為にお前にリングを託したワケじゃねーぞ。」
「え?」
「お前が後継者に相応しいと思ったから託したんだ。」
リボーンの言葉に、ツナは少しだけ目を見開いた。
「もう行くぞ。」
「う、うん。」
それでもまだ弱気なツナ。
ランボを抱えて部屋のドアを開ける。
「あっ…!」
『ツナ、一緒に行こう♪』
「檸檬!!その…大丈夫なの?」
『とりあえず。』
檸檬は苦笑いを見せた。
「ランボさん、檸檬と一緒に行くーっ!!」
『おいで、ランボちゃん♪』
ランボは無邪気に檸檬の肩に乗る。
檸檬はその頭を優しく撫でた。
そして…
「つ、ついに来ちゃった…」
『うん…。』
並盛の校門を前に、一瞬足を止める檸檬とツナ。
「あ、皆だ!」
「よぉ!」
「オス。」
「10代目!」
「遅くなってごめん……ランボがかくれんぼ始めちゃって…」
『すぐ見つけたけどね。』
「ホントにありがとう、檸檬。」
『いーえ♪』
優しく微笑む檸檬の横で、獄寺が怒る。
「10代目を煩わせやがって、アホ牛が!!」
「つっても、まだ来てない奴もいるけどな。」
『(恭弥……)』
「相変わらず霧の奴は姿を見せん。」
『(霧………誰だろ。)』
考え込む檸檬。
するとツナが、
「それにしても、静かだね……。本当に並中で良かったのかな?」
と。
「奴ら、まだ来てねーのかな。」
ツナの言葉に付け足すような獄寺の問いに、何処からか返答が。
「とっくにスタンバイしてますよ。」
「上だ!」
そこには、チェルベッロの影と、ヴァリアー達の影。
「厳正なる審査の結果、今宵の対戦カードが決まりました。」
ごくりと唾を飲む、並盛メンバー。
「第1戦は…………晴の守護者同士の対決です。」
『(って事は……了平さんと、ルッスーリア……。)』
始まってしまう。
あたしはやっぱり、どんな顔をしていいのか分からない。
ただ、見ている事しか出来ない。
自分の無力さに、腹が立った。