ヴァリアー編
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「なぁ!?俺以外にも指輪配られたのー!!?」
隣の部屋にいるツナの声が、響いて来る。
「そうだぞ。ボンゴレの伝統だからな。」
ボンゴレリングは初代ボンゴレファミリーの中核だった7人が、ボンゴレファミリーの証として後世に残したもの。
そして、ファミリーは代々必ず7人の中心メンバーが7つのリングを受け継ぐという掟がある。
「それで後継者の証とかってー!?」
再び絶叫するツナの横で、獄寺が叫ぶ。
「10代目!!有り難き幸せっス!!身の引き締まる思いっス!!」
「(めっさ喜んでるよ!!)」
それは、
そんなに甘いモノじゃないのに。
その片割れは、
“彼ら”が持ってるのに。
ツナ達の会話が筒抜けで、あたしはどんどんつらくなる。
その間に、リボーンがそれぞれのリングについて説明していた。
全てに染まりつつ全てを飲み込み包容する
---大空のリング
全てを洗い流す恵みの村雨
---雨のリング
荒々しく吹き荒れる疾風
---嵐のリング
なにものにもとらわれず我が道を行く浮雲
---雲のリング
明るく大空を照らす日輪
---晴のリング
実体の掴めぬ幻影
---霧のリング
激しい一撃を秘めた雷電
---雷のリング
===============
「ちょっ、ストーップ!!」
リボーンの話を遮るツナ。
「とにかく俺はいらないから!!」
「あの、わりーんだけどさ………俺も野球やるから指輪はつけねーなー。」
「(味方が出来たー!!)」
ツナと同じように、リングを返そうとする武。
そうだよね、持ってない方がいいよ。
あたしが1つ助言をするなら、
『リングを持たないで』
って言うよ。
「それに……そんなの持ってたら昨日のロン毛がまた狙って来るんだよ!?」
そうそう…危ないんだよ。
あたしが言いたい事をツナが言ってくれて、少しホッとした。
だけど、
途端に壁の向こうの空気が変わった。
『(え………?)』
もしかして……!
「やばいでしょ!?しかも下手したらたった10日でだよ!!」
「あいつ…来んのか……」
「10日………」
ちょっと待ってよ、まさか…
戦うってゆーの!?
次の瞬間あたしは、部屋を飛び出していた。
「これ、俺のだよな。やっぱもらってくわ。」
「えっ!!?」
「負けたまんまじゃいられねー質みてーだな、俺。」
走り去ろうとする武を呼び止めた。
『待って、武!!』
「「「檸檬!?」」」
武だけじゃなく、ツナも隼人も驚いてた。
『聞いて!』
あたしは武の服をぎゅっと掴んだ。
呼吸を落ち着けて、ゆっくり話す。
『あのね………危ないの!』
「檸檬………急にどうしたんだよ?」
『お願いだからやめて!無茶しないでよ…。』
知ってるの。
アロちゃん達が、どんだけ強いか。
『あたし……もう武や隼人に、怪我して欲しくないよぉ…。』
あたしが俯くと、武は大きな手の平をあたしの頭に乗せた。
「あのさ、よくわかんねぇけど……譲れねぇんだよな。」
『えっ…!?』
驚いて、顔をあげる。
武はいつもみたいに笑っていた。
「よくわかんねぇけど…檸檬がそんな顔してんのは、間違ってると思うからさ。」
『武…』
「アイツが危ねぇ奴だってのは分かってる。一応、戦ったしな。檸檬も苦戦したんだろ?」
『そ、それは……!!』
相手がアロちゃんだったから、本気出せなかっただけで…
「檸檬がそんな不安そうな顔してんのって、俺がアイツに勝てないって分かってるからじゃね?」
『え………?』
「だったらさ!俺、強くなるから。檸檬に護られるんじゃなくて、檸檬を守れるように。」
『武っ……!』
「だから、笑顔で見送ってくんね?」
あたしの頭をポンと叩く武。
何で?
何で笑ってるの?
「俺さ、檸檬の笑った顔、大好きなんだよなー。」
あぁ、そうか……。
誰かを笑顔にするには、
自分が笑顔にならなきゃね。
その強い意志は、
何処から出るの??
『いってらっしゃい!頑張ってね♪』
信じるよ。
強くなってね、武。
「おう!」
武は今度こそ走り去ってしまった。
「気に食わねーけどよぉ、」
隼人の声が後ろから聞こえる。
振り向いたあたしの目を、隼人は真直ぐ見つめて。
「今回は野球バカの言った通りだぜ。」
『隼人…』
コツコツとあたしに歩み寄り、拳で額をコツンと叩いた。
『うっ。』
「檸檬にそんな顔させるつもりはサラサラねぇ。だから……笑ってろ。」
無茶言わないでよ、
あたしは…心配してるのに。
皆が殺されないか不安で仕方ないのに。
俯くあたしの横を通り過ぎる隼人。
『隼人…!』
「見てろよ、檸檬。次は奴をぶっ飛ばすからよ。」
『なっ……!』
「じゃぁ、10代目!お先に失礼します!!」
隼人も走り去ってしまった。
あたしだけでなく、ツナも唖然としていた。
「やるなーツナ。獄寺と山本は鍛える気満々になったみたいだぜ。」
「え"ー!!そんな~~~!洒落になんないって!」
『そうだよ!本当にヴァリアーを迎え撃つ気なの!?』
あたしの問いに、リボーンが答える。
「あたりめーだ。ボンゴレの10代目ボスはツナだからな。」
『リボーン……』
「ちなみにもうすぐ晴のリングを持つ奴が来るぞ。」
「えっ?晴…?」
そう言いながらリボーンは、象の着ぐるみをかぶり、ボクシングのグローブを付けた。
「『まさか………』」
「パオパオ老師!!」
突然聞こえて来た知っている声。
あたしとツナが振り向くと、そこには予想通りの人物が。
「俺を鍛え直してくれるというのは、まことか!!?」
「きょっ、京子ちゃんのお兄さんー!!?」
『了平さんっ!!』
ツナが状況を分かっているのか聞いてみると…
「昨日の出来事、10日後の事、指輪の話も全部聞いたぞ…。」
「(ちゃんと分かってる…)」
「全部忘れたがな!!」
「たちまち意味ねーー!!」
『(あちゃー…)』
ため息をつくと同時に、ふと気が軽くなっている事に気が付く。
さっきまで、
あんなにつらかったのに。
「檸檬、」
『ディーノ…』
「この仲間なら、何とかなるって思えねぇか?」
『………………うん、そうだね…。』
大丈夫だよね、きっと。
「ところで、今日は俺の為に幼馴染みを呼んで頂いたとか。」
「腐れ縁だぞ。」
途端に、リボーンのおしゃぶりが光る。
もしかして……!!
「久しぶりだな、コラ!!」
「こ、この声……」
『コロネロっ!!!』
ファルコと一緒に飛んでやって来たコロネロ。
次の瞬間、檸檬はコロネロに抱きついた。
『コロネローっ!!』
「なっ!檸檬っ!!放せコラ!!///」
「相変わらずファンの扱い方は下手だな。」
「うるせーぞ、リボーン!コラ!!」
『あたしの名前覚えててくれたんだぁーっ♪嬉しーっ!』
コロネロに頬擦りする檸檬の横で、ツナが聞く。
「何でコロネロが此処に?」
「今回は時間がねーから俺1人じゃ鍛えられねーんだ。だから、リングを持つ奴それぞれに、専属の家庭教師をつける事にしたんだ。」
「かっ、家庭教師!!?」
と、ここで、檸檬から解放されたコロネロが尋ねる。
「話にあったボクサー小僧はどいつだコラ!」
「俺だ!!」
コロネロは了平さんの体をライフルでペチペチ叩いて、何かを確認してるみたいだった。
そして…
「こいつは面白い奴を見付けたな、コラ!もし10日間俺のトレーニングについてこれれば、他の6人なんてぶち抜くぜコラ!」
そう言ってコロネロは、“02”の札が付いたバンダナを了平さんに差し出した。
「その代わり厳しいぜ、やるか?コラ!」
「望む所だ!俺は負けん!!」
「よし、付いて来いコラ!」
「おう!!」
了平さんとコロネロは行ってしまった。
『いってらっしゃい…』
あたしは小さく呟いた。
すると、今度はディーノが。
「じゃ、俺もそろそろ鍛えに行くかな。」
「え!?ディーノさんも家庭教師!?」
ディーノは同盟があるから手を出せないもんね…。
でも、一体誰の……?
『隼人か武の家庭教師?』
「いーや。更なる問題児だな、ありゃ。」
『え……?』
ディーノのその言葉で、
何となくピンと来てしまった。
その頃。
家に帰って来た山本は、父に相談した。
「なー、オヤジ。」
「どしたい?」
「剣道、教えてくんね?」
---
-------
-----------
「何だ、隼人じゃん。」
並盛中保健室前。
獄寺はシャマルに会いに来ていた。
「頼みがある。」
「何だって?恋愛相談か~~?アドバイスとしてはまず…触れ!」
「ちげーよ!!なぁ、シャマル……俺を弟子にしてみねーか?」
その瞬間、シャマルの表情が険しくなる。
「やーなこった!クソガキのおもりなんてしてられっか!」
「毎日ちょっとだけ、稽古つけてくれりゃあいーんだ!」
必死に頼む獄寺に、シャマルは背を向けた。
「おめーにゃもう懲りてんだよ。そーゆー話なら、帰れ!!」
---
-------
------------
あたしの手をひっぱるディーノ。
『ちょっ…何で!?』
「だってアイツ、俺の話聞かなそうだしよぉ。」
『まぁそれは……そうだけど。』
何たって我が儘王子だもんねぇ。
『けどあたし……!』
「檸檬の話なら聞いてくれるかもしれねーし。」
ってか、絶対聞くよなー。
アイツも檸檬の事気に入ってるしよ。
そしてやって来たのは、応接室。
コンコン、
「誰?」
『2の「入っていいよ。」
いつもみたいな即答。
何だか少し気が抜ける。
『失礼しまーす。』
ドアを開けると、目の前のソファに恭弥が座ってる。
そしたら何だかいつものクセが出て。
『おはようっ!恭弥!』
チュッ、
「おはよう、檸檬。」
あ、こんな事してる場合じゃなかった。
恭弥の手にはやっぱり、指輪が握られていた。
『恭弥、それ……』
「ところで、何でアイツがいるの?」
『アイツ……?ディーノの事?』
そう言えば面識あったんだっけ。
(42話参照)
.「よぉ!久しぶりだな。」
「ムカつくんだけど。」
『あっ、あのね!ディーノはね、恭弥にそのリングの話をする為に………』
「リング?あぁ、これ。」
恭弥はリングを手の平の上で転がした。
「別に、興味ないんだけどな。」
『それね、とっても大事なモノで……!』
「どーでもいーよ。檸檬、早くそいつ帰して。」
「おいおい……」
こんの…………我が儘王子めーっ!!
あたしはスッと立ち上がる。
「「檸檬?」」
ディーノも一緒に驚いてたけど、そこはお構い無し。
恭弥に向かって宣戦布告。
『恭弥、屋上来て!あたしとバトルしようっ♪』
「急に何?別にいいけど。」
こうするしかないのかな?
多分、恭弥のプライド砕いちゃうけどさ。
---
------
------------
「雲雀さんにも指輪がー!?」
ツナは思わず道で絶叫。
「あの人群れるの嫌いなのに入るワケないだろー!!」
「だからこそ雲のリングがふさわしいんだ。あとはディーノと檸檬に任せとけ。」
「ディーノさんと檸檬が雲雀さんの家庭教師!?」
「っても、檸檬は話をするだけだけどな。」
「へ!?」
リボーンの言葉に、疑問符を浮かべるツナ。
「とにかく、お前は人の心配をしてる暇はねーぞ。ヴァリアーの強さは超死ぬ気モードのお前より上だ。よっぽどみっちり鍛えねーとな。」
「ちょっ、俺はまだ納得しねねーって!」
「レオンが大量にこしらえてくれたぞ。見ろ。」
リボーンの体には、大量の銃弾が備え付けられていた。
ツナは少しぞっとする。
「まさかそれ…………全部死ぬ気弾?」
「そーだぞ。そんじゃぁ修業の第1段階を始めるからな。」
次の瞬間、銃声が1つして、ツナは死ぬ気モードになる。
「ふっかーつ!死ぬ気で鍛える!!」
走って行くツナの背中を見つつ、リボーンは呟いた。
「もし後継者争いに破れたら、お前だけじゃない、お前の仲間も皆殺しにされちまうんだからな。」
その頃。
並盛中学屋上。
「んじゃぁ、始めるぜ。」
『オッケー♪』
審判はディーノ、目の前には恭弥。
あたしは恭弥のトンファーのリズムを適当に思い出す。
「来ないなら行くよ。」
『じゃぁ、行く。』
でも、あの日とは違う戦いを。
キュロットの下からナイフを2本取り出し、両手に持つ。
恭弥のトンファーはスルッと避けて、後ろに回る。
「普通だね。」
『そうかしら?』
俊足を発動させ、再び前に。
それでも恭弥の反射神経はあたしについて来ている。
『本気で行くから。』
ごめんね、恭弥。
でもこうすればきっと、
強くなってくれるよね?
恭弥のトンファーをナイフで受け止める。
剛腕で弾き返せば、恭弥であろうと一歩下がる。
隙を狙って正面からナイフを投げる。
恭弥の目を狙って。
それをトンファーで弾こうとすれば、一瞬だけ視界が埋まる。
その隙に、あたしは俊足でまた背後に…
「(後ろ……?)」
恭弥が片手だけ後ろに回したその瞬間、
あたしは既に前にいる。
あとは、恭弥のもう一方のトンファーを片手で抑えて、
もう片方の手で恭弥にナイフを突き立てればいいだけ。
「勝負、あったな。」
あたしのナイフは、恭弥の首筋スレスレにあった。
恭弥は、ほんの少しだけ驚いてるようだった。
.『ごめんね。』
一言だけ言う。
『あたし、恭弥に嘘ついてたの。』
「嘘?」
『まだ、本当の事は言えないけど……1つだけ言っておくね。』
落ち着いて。
大丈夫だから。
『あたし、マフィアなの。』
恭弥は無言で少し目を見開いた。
「檸檬、もうやめとけ。」
ディーノがあたしと恭弥の間に入った。
あたしはナイフを下ろす。
『恭弥、強くなって。』
雲のリングの保持者として。
『あたしに追い付いて、追い越してよ♪』
恭弥は何にも言わなかった。
『じゃーねっ!』
俊足で、屋上から立ち去った。
色んな屋根を飛び越えて、あたしは遠くへ逃げる。
これで、ディーノと修業してくれるよね?恭弥。
---
------
-----------
屋上に残された雲雀とディーノ、ロマーリオ。
意外にも、先に口を開いたのは雲雀だった。
「あなたは……知ってるの?」
「ん?」
「本当の檸檬の事……」
「んー………まぁな。」
「ふぅん。」
そこで会話は途切れた。
「んじゃ、始めっか!」
ディーノの声が、屋上で少し響いた。
隣の部屋にいるツナの声が、響いて来る。
「そうだぞ。ボンゴレの伝統だからな。」
ボンゴレリングは初代ボンゴレファミリーの中核だった7人が、ボンゴレファミリーの証として後世に残したもの。
そして、ファミリーは代々必ず7人の中心メンバーが7つのリングを受け継ぐという掟がある。
「それで後継者の証とかってー!?」
再び絶叫するツナの横で、獄寺が叫ぶ。
「10代目!!有り難き幸せっス!!身の引き締まる思いっス!!」
「(めっさ喜んでるよ!!)」
それは、
そんなに甘いモノじゃないのに。
その片割れは、
“彼ら”が持ってるのに。
ツナ達の会話が筒抜けで、あたしはどんどんつらくなる。
その間に、リボーンがそれぞれのリングについて説明していた。
全てに染まりつつ全てを飲み込み包容する
---大空のリング
全てを洗い流す恵みの村雨
---雨のリング
荒々しく吹き荒れる疾風
---嵐のリング
なにものにもとらわれず我が道を行く浮雲
---雲のリング
明るく大空を照らす日輪
---晴のリング
実体の掴めぬ幻影
---霧のリング
激しい一撃を秘めた雷電
---雷のリング
===============
「ちょっ、ストーップ!!」
リボーンの話を遮るツナ。
「とにかく俺はいらないから!!」
「あの、わりーんだけどさ………俺も野球やるから指輪はつけねーなー。」
「(味方が出来たー!!)」
ツナと同じように、リングを返そうとする武。
そうだよね、持ってない方がいいよ。
あたしが1つ助言をするなら、
『リングを持たないで』
って言うよ。
「それに……そんなの持ってたら昨日のロン毛がまた狙って来るんだよ!?」
そうそう…危ないんだよ。
あたしが言いたい事をツナが言ってくれて、少しホッとした。
だけど、
途端に壁の向こうの空気が変わった。
『(え………?)』
もしかして……!
「やばいでしょ!?しかも下手したらたった10日でだよ!!」
「あいつ…来んのか……」
「10日………」
ちょっと待ってよ、まさか…
戦うってゆーの!?
次の瞬間あたしは、部屋を飛び出していた。
「これ、俺のだよな。やっぱもらってくわ。」
「えっ!!?」
「負けたまんまじゃいられねー質みてーだな、俺。」
走り去ろうとする武を呼び止めた。
『待って、武!!』
「「「檸檬!?」」」
武だけじゃなく、ツナも隼人も驚いてた。
『聞いて!』
あたしは武の服をぎゅっと掴んだ。
呼吸を落ち着けて、ゆっくり話す。
『あのね………危ないの!』
「檸檬………急にどうしたんだよ?」
『お願いだからやめて!無茶しないでよ…。』
知ってるの。
アロちゃん達が、どんだけ強いか。
『あたし……もう武や隼人に、怪我して欲しくないよぉ…。』
あたしが俯くと、武は大きな手の平をあたしの頭に乗せた。
「あのさ、よくわかんねぇけど……譲れねぇんだよな。」
『えっ…!?』
驚いて、顔をあげる。
武はいつもみたいに笑っていた。
「よくわかんねぇけど…檸檬がそんな顔してんのは、間違ってると思うからさ。」
『武…』
「アイツが危ねぇ奴だってのは分かってる。一応、戦ったしな。檸檬も苦戦したんだろ?」
『そ、それは……!!』
相手がアロちゃんだったから、本気出せなかっただけで…
「檸檬がそんな不安そうな顔してんのって、俺がアイツに勝てないって分かってるからじゃね?」
『え………?』
「だったらさ!俺、強くなるから。檸檬に護られるんじゃなくて、檸檬を守れるように。」
『武っ……!』
「だから、笑顔で見送ってくんね?」
あたしの頭をポンと叩く武。
何で?
何で笑ってるの?
「俺さ、檸檬の笑った顔、大好きなんだよなー。」
あぁ、そうか……。
誰かを笑顔にするには、
自分が笑顔にならなきゃね。
その強い意志は、
何処から出るの??
『いってらっしゃい!頑張ってね♪』
信じるよ。
強くなってね、武。
「おう!」
武は今度こそ走り去ってしまった。
「気に食わねーけどよぉ、」
隼人の声が後ろから聞こえる。
振り向いたあたしの目を、隼人は真直ぐ見つめて。
「今回は野球バカの言った通りだぜ。」
『隼人…』
コツコツとあたしに歩み寄り、拳で額をコツンと叩いた。
『うっ。』
「檸檬にそんな顔させるつもりはサラサラねぇ。だから……笑ってろ。」
無茶言わないでよ、
あたしは…心配してるのに。
皆が殺されないか不安で仕方ないのに。
俯くあたしの横を通り過ぎる隼人。
『隼人…!』
「見てろよ、檸檬。次は奴をぶっ飛ばすからよ。」
『なっ……!』
「じゃぁ、10代目!お先に失礼します!!」
隼人も走り去ってしまった。
あたしだけでなく、ツナも唖然としていた。
「やるなーツナ。獄寺と山本は鍛える気満々になったみたいだぜ。」
「え"ー!!そんな~~~!洒落になんないって!」
『そうだよ!本当にヴァリアーを迎え撃つ気なの!?』
あたしの問いに、リボーンが答える。
「あたりめーだ。ボンゴレの10代目ボスはツナだからな。」
『リボーン……』
「ちなみにもうすぐ晴のリングを持つ奴が来るぞ。」
「えっ?晴…?」
そう言いながらリボーンは、象の着ぐるみをかぶり、ボクシングのグローブを付けた。
「『まさか………』」
「パオパオ老師!!」
突然聞こえて来た知っている声。
あたしとツナが振り向くと、そこには予想通りの人物が。
「俺を鍛え直してくれるというのは、まことか!!?」
「きょっ、京子ちゃんのお兄さんー!!?」
『了平さんっ!!』
ツナが状況を分かっているのか聞いてみると…
「昨日の出来事、10日後の事、指輪の話も全部聞いたぞ…。」
「(ちゃんと分かってる…)」
「全部忘れたがな!!」
「たちまち意味ねーー!!」
『(あちゃー…)』
ため息をつくと同時に、ふと気が軽くなっている事に気が付く。
さっきまで、
あんなにつらかったのに。
「檸檬、」
『ディーノ…』
「この仲間なら、何とかなるって思えねぇか?」
『………………うん、そうだね…。』
大丈夫だよね、きっと。
「ところで、今日は俺の為に幼馴染みを呼んで頂いたとか。」
「腐れ縁だぞ。」
途端に、リボーンのおしゃぶりが光る。
もしかして……!!
「久しぶりだな、コラ!!」
「こ、この声……」
『コロネロっ!!!』
ファルコと一緒に飛んでやって来たコロネロ。
次の瞬間、檸檬はコロネロに抱きついた。
『コロネローっ!!』
「なっ!檸檬っ!!放せコラ!!///」
「相変わらずファンの扱い方は下手だな。」
「うるせーぞ、リボーン!コラ!!」
『あたしの名前覚えててくれたんだぁーっ♪嬉しーっ!』
コロネロに頬擦りする檸檬の横で、ツナが聞く。
「何でコロネロが此処に?」
「今回は時間がねーから俺1人じゃ鍛えられねーんだ。だから、リングを持つ奴それぞれに、専属の家庭教師をつける事にしたんだ。」
「かっ、家庭教師!!?」
と、ここで、檸檬から解放されたコロネロが尋ねる。
「話にあったボクサー小僧はどいつだコラ!」
「俺だ!!」
コロネロは了平さんの体をライフルでペチペチ叩いて、何かを確認してるみたいだった。
そして…
「こいつは面白い奴を見付けたな、コラ!もし10日間俺のトレーニングについてこれれば、他の6人なんてぶち抜くぜコラ!」
そう言ってコロネロは、“02”の札が付いたバンダナを了平さんに差し出した。
「その代わり厳しいぜ、やるか?コラ!」
「望む所だ!俺は負けん!!」
「よし、付いて来いコラ!」
「おう!!」
了平さんとコロネロは行ってしまった。
『いってらっしゃい…』
あたしは小さく呟いた。
すると、今度はディーノが。
「じゃ、俺もそろそろ鍛えに行くかな。」
「え!?ディーノさんも家庭教師!?」
ディーノは同盟があるから手を出せないもんね…。
でも、一体誰の……?
『隼人か武の家庭教師?』
「いーや。更なる問題児だな、ありゃ。」
『え……?』
ディーノのその言葉で、
何となくピンと来てしまった。
その頃。
家に帰って来た山本は、父に相談した。
「なー、オヤジ。」
「どしたい?」
「剣道、教えてくんね?」
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「何だ、隼人じゃん。」
並盛中保健室前。
獄寺はシャマルに会いに来ていた。
「頼みがある。」
「何だって?恋愛相談か~~?アドバイスとしてはまず…触れ!」
「ちげーよ!!なぁ、シャマル……俺を弟子にしてみねーか?」
その瞬間、シャマルの表情が険しくなる。
「やーなこった!クソガキのおもりなんてしてられっか!」
「毎日ちょっとだけ、稽古つけてくれりゃあいーんだ!」
必死に頼む獄寺に、シャマルは背を向けた。
「おめーにゃもう懲りてんだよ。そーゆー話なら、帰れ!!」
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あたしの手をひっぱるディーノ。
『ちょっ…何で!?』
「だってアイツ、俺の話聞かなそうだしよぉ。」
『まぁそれは……そうだけど。』
何たって我が儘王子だもんねぇ。
『けどあたし……!』
「檸檬の話なら聞いてくれるかもしれねーし。」
ってか、絶対聞くよなー。
アイツも檸檬の事気に入ってるしよ。
そしてやって来たのは、応接室。
コンコン、
「誰?」
『2の「入っていいよ。」
いつもみたいな即答。
何だか少し気が抜ける。
『失礼しまーす。』
ドアを開けると、目の前のソファに恭弥が座ってる。
そしたら何だかいつものクセが出て。
『おはようっ!恭弥!』
チュッ、
「おはよう、檸檬。」
あ、こんな事してる場合じゃなかった。
恭弥の手にはやっぱり、指輪が握られていた。
『恭弥、それ……』
「ところで、何でアイツがいるの?」
『アイツ……?ディーノの事?』
そう言えば面識あったんだっけ。
(42話参照)
.「よぉ!久しぶりだな。」
「ムカつくんだけど。」
『あっ、あのね!ディーノはね、恭弥にそのリングの話をする為に………』
「リング?あぁ、これ。」
恭弥はリングを手の平の上で転がした。
「別に、興味ないんだけどな。」
『それね、とっても大事なモノで……!』
「どーでもいーよ。檸檬、早くそいつ帰して。」
「おいおい……」
こんの…………我が儘王子めーっ!!
あたしはスッと立ち上がる。
「「檸檬?」」
ディーノも一緒に驚いてたけど、そこはお構い無し。
恭弥に向かって宣戦布告。
『恭弥、屋上来て!あたしとバトルしようっ♪』
「急に何?別にいいけど。」
こうするしかないのかな?
多分、恭弥のプライド砕いちゃうけどさ。
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「雲雀さんにも指輪がー!?」
ツナは思わず道で絶叫。
「あの人群れるの嫌いなのに入るワケないだろー!!」
「だからこそ雲のリングがふさわしいんだ。あとはディーノと檸檬に任せとけ。」
「ディーノさんと檸檬が雲雀さんの家庭教師!?」
「っても、檸檬は話をするだけだけどな。」
「へ!?」
リボーンの言葉に、疑問符を浮かべるツナ。
「とにかく、お前は人の心配をしてる暇はねーぞ。ヴァリアーの強さは超死ぬ気モードのお前より上だ。よっぽどみっちり鍛えねーとな。」
「ちょっ、俺はまだ納得しねねーって!」
「レオンが大量にこしらえてくれたぞ。見ろ。」
リボーンの体には、大量の銃弾が備え付けられていた。
ツナは少しぞっとする。
「まさかそれ…………全部死ぬ気弾?」
「そーだぞ。そんじゃぁ修業の第1段階を始めるからな。」
次の瞬間、銃声が1つして、ツナは死ぬ気モードになる。
「ふっかーつ!死ぬ気で鍛える!!」
走って行くツナの背中を見つつ、リボーンは呟いた。
「もし後継者争いに破れたら、お前だけじゃない、お前の仲間も皆殺しにされちまうんだからな。」
その頃。
並盛中学屋上。
「んじゃぁ、始めるぜ。」
『オッケー♪』
審判はディーノ、目の前には恭弥。
あたしは恭弥のトンファーのリズムを適当に思い出す。
「来ないなら行くよ。」
『じゃぁ、行く。』
でも、あの日とは違う戦いを。
キュロットの下からナイフを2本取り出し、両手に持つ。
恭弥のトンファーはスルッと避けて、後ろに回る。
「普通だね。」
『そうかしら?』
俊足を発動させ、再び前に。
それでも恭弥の反射神経はあたしについて来ている。
『本気で行くから。』
ごめんね、恭弥。
でもこうすればきっと、
強くなってくれるよね?
恭弥のトンファーをナイフで受け止める。
剛腕で弾き返せば、恭弥であろうと一歩下がる。
隙を狙って正面からナイフを投げる。
恭弥の目を狙って。
それをトンファーで弾こうとすれば、一瞬だけ視界が埋まる。
その隙に、あたしは俊足でまた背後に…
「(後ろ……?)」
恭弥が片手だけ後ろに回したその瞬間、
あたしは既に前にいる。
あとは、恭弥のもう一方のトンファーを片手で抑えて、
もう片方の手で恭弥にナイフを突き立てればいいだけ。
「勝負、あったな。」
あたしのナイフは、恭弥の首筋スレスレにあった。
恭弥は、ほんの少しだけ驚いてるようだった。
.『ごめんね。』
一言だけ言う。
『あたし、恭弥に嘘ついてたの。』
「嘘?」
『まだ、本当の事は言えないけど……1つだけ言っておくね。』
落ち着いて。
大丈夫だから。
『あたし、マフィアなの。』
恭弥は無言で少し目を見開いた。
「檸檬、もうやめとけ。」
ディーノがあたしと恭弥の間に入った。
あたしはナイフを下ろす。
『恭弥、強くなって。』
雲のリングの保持者として。
『あたしに追い付いて、追い越してよ♪』
恭弥は何にも言わなかった。
『じゃーねっ!』
俊足で、屋上から立ち去った。
色んな屋根を飛び越えて、あたしは遠くへ逃げる。
これで、ディーノと修業してくれるよね?恭弥。
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屋上に残された雲雀とディーノ、ロマーリオ。
意外にも、先に口を開いたのは雲雀だった。
「あなたは……知ってるの?」
「ん?」
「本当の檸檬の事……」
「んー………まぁな。」
「ふぅん。」
そこで会話は途切れた。
「んじゃ、始めっか!」
ディーノの声が、屋上で少し響いた。