黒曜編
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「Xグローブは死ぬ気弾と同じ素材で出来ていて、死ぬ気の炎を灯す事が出来るんだぞ。」
「フッ、まるで手を逆立てて体を大きく見せようとする猫ですね。だが、いくら闘気の見てくれを変えてところで無意味だ。」
「死ぬ気の炎は闘気じゃない。」
「ほう、面白い事を言う。ならば見せて……もらいましょうか!!」
骸は先程と同じように棒を回してツナに攻め寄る。
だが、ツナはいとも簡単に受け止めた。
そして、ツナに握られた棒の一部は、溶けるようにしてグニャリと曲がったのだ。
「なっ…!」
骸が怯んだ一瞬の隙をついて、ツナは拳を振るう。
かろうじてかわす骸だが、グローブに灯っていた炎がその頬をかすった。
「(熱い……!!)」
思わず顔を歪ませる骸に、リボーンが言う。
「死ぬ気の炎と闘気では、エネルギーの密度が違うからな。限られた人間にしか見えない闘気と違って、死ぬ気の炎はそれ自体が破壊力を持つ、超圧縮エネルギーだ。」
「そのグローブは焼ごてと言うワケか……」
「それだけじゃない。」
今度はツナが骸に攻め寄った。
「くっ、」
真正面から走って来るツナに、骸は攻撃しようとするが、その棒は空を切る。
「消えた?」
と、次の瞬間、骸の背後にツナの姿が現れた。
その気配に気付き、慌てて振り返る骸。
「いつの間に!!?」
棒で防いでダメージは軽減したものの、何メートルも飛ばされた骸。
「何だ、今のは……奴は何をしたんだ?」
ツナはその問いに答える事なく、挑発の言葉を口にする。
「ウォーミングアップはまだ終わらないのか?」
「くっ、クフフ……クハハハハハハッ!!」
突然笑い出す骸。
「ここまでとは嬉しい誤算だ。君の肉体を手に入れれば、知略を張り巡らさずとも直接ファミリーに殴り込み、マフィア間の抗争を起こせそうだ。」
その目論見の一部が、口に出された。
ツナは少しだけ目を大きくする。
「マフィア間の抗争が、お前の目的か。」
リボーンが問う。
「クフフ………まさか。僕はそんなちっぽけな男ではありませんよ。」
先程の焦った表情とは反対に、いつもの妖しい笑みを浮かべて、
「僕はこれから世界中の要人の体を乗っ取るつもりです。」
ゆっくりと立ち上がり、
「そして彼らを操り、この醜い世界を………純粋で美しい血の海に変える。」
笑みがこぼれるのを抑えるように、手を口元に当てる。
「世界大戦……なんて、ベタすぎますかねぇ?」
その言葉に、より真剣な顔つきになるツナ。
表情を全く変えずにいるリボーン。
更に骸は言った。
「だが、手始めはやはりマフィア………マフィアの殲滅からだ。」
忌々しい記憶があるのか、骸の顔から笑みが消える。
「何故マフィアにこだわる。」
「恨みか。」
「おっと、これ以上話すつもりはない。君達にも、僕の問いに答えてもらいますよ。」
骸の顔は、真剣だった。
「どうして………檸檬が僕の憑依を破ったのか。」
骸の視線は、ツナが立っている後ろに寝かされている、檸檬に移った。
「こんな事は初めてでしてねぇ、是非知りたくなったんですよ。」
「初めて、か……」
リボーンが呟く。
「そりゃそうだろうな。あんな事が出来るのは、世界中を探したって、檸檬しかいねーぞ。」
「どう言う事です?」
「檸檬の能力の秘密、教えてやる。ツナ、お前もよく聞いとけ。」
「……分かった。」
「人間の運動は、随意運動と不随意運動に分かれる。重い物を持つ時力を入れたり、何か食べようと口を動かしたり、自分の意志による運動が随意運動。心臓の鼓動や瞬きみたいに、意志に関係なく体が行う運動が不随意運動だ。」
「それが何か………関係あるのですか?」
「大アリだぞ。檸檬がイタリアで積んできた修業はな、不随意運動を随意運動にする修業。つまり、自分の意志で、自分の身体の全てを操る修業だ。」
「自分の身体を……自分の意志で……?」
反復する骸に、リボーンは頷く。
「檸檬が持つ6つの能力は、その原則に従っている。例えば、俊足。普段走る時よりも筋細胞を活性化させ、人並外れたスピードを出す。剛腕、超五感も同じような原理だ。超五感の場合、神経が活性化されるけどな。」
「では、千種の毒を受けても倒れなかったのは?」
「第5能力・解毒はな、体内に入った毒の抗生物質を、必要に応じて瞬時に生成するんだ。檸檬の意志が体内に命令し、身体は忠実に従う。」
「……なるほど。」
「お前の憑依を破ったのは、第6能力・抵抗だぞ。」
「抵抗……?」
ツナが疑問符を浮かべる。
「抵抗は、6つの能力の中で最も基本に倣っていて、最も難しい能力だ。」
「基本……?」
「“自分の身体は自分で動かす”、それが能力の基本だ。抵抗はそれをそのまま利用してるんだぞ。」
「どう言う事です?」
「つまりだ、いかなる他の干渉も受けず、自分の意志を貫き通す。それが、第6能力・抵抗。そして、最も単純で最も困難であるこの能力を持つ事が……」
ハットの下に隠れていたリボーンの目が、きらりと光る。
「檸檬が超一流のマフィアと言われる所以なんだ。」
沈黙が流れた。
それは、仕方がない事なのかも知れない。
「9代目が孫娘のように可愛がっている娘……か。」
骸の口が開かれた。
それでも、
欲しいと思ってしまった。
愛しいと、
思ってしまったんだ………。
「檸檬…」
その名を口に出せば、君との思い出が蘇る。
---『……また会えたら、嬉しい。』
あぁ、檸檬…
どうして僕の前に現れた。
どうして僕を迷わせる。
こんなに苦しいのは、君のせいだ。
「クフフフフ、分かりました。では、もうお喋りはやめにしましょう。」
骸は表情を元に戻す。
「君は僕の最強形態によって、僕の物になるのですから………見るがいい!!」
骸から、分身のような黒い影が飛び出す。
それは真直ぐツナに向かっていく。
「幻覚だ。こんな物で…」
ところが、ツナの横を通り過ぎるその瞬間、ツナに激痛が与えられる。
「くぅ………」
「幻覚につぶてを潜ませたな。油断しやがって、バカツナめ。」
痛みにより身を屈ませるツナの上から、本物の骸が攻撃しようとする。
「(もらった-------!!)」
「ツナ。」
「分かってる!!」
ツナのグローブが大きな炎を纏う。
次の瞬間、ツナは骸の背後に姿を現した。
「また……!!?」
驚く骸に、ツナは渾身の一撃を食らわせた。
床に思いっきり打ち付けられる骸。
そのダメージは、測り知れないものだった。
---
-----
『ん………』
「起きたか、檸檬。」
『リボーン………今、物凄い音が…』
「ツナの奴、やっと分かってきやがった。」
『あのグローブ…?』
「ああ。」
ゆっくりと起き上がる檸檬。
「大丈夫なのか?」
『平気。ちょっと危険だけど、心臓の鼓動弱めたから……血圧で血管の破裂とかはないよ。』
「そうか。」
それでもダメージは酷いらしく、檸檬は這うようにしてツナと骸の方へ近付いて行った。
---
------
「その甘さが命取りだ。」
リボーンと檸檬が話している間に、背を向けたツナを骸が捕らえていた。
「骸……お前……!!」
「おっと、君の妙な技が手の炎の力で起きているのは分かっている。手を封じれば怖くありませんよ。」
骸はツナに思いっきり頭突きをした。
ツナはがくんと頭を垂らす。
「何故多くの刺客に君を狙わせたか分かりますか?」
今度は膝で背中を蹴りあげる。
「ぐっ!」
「君の能力を充分に引き出してから乗っ取る為だ。ご苦労でしたね………」
『骸っ!!』
その声に、骸だけでなくツナも驚いた。
視線を向ければ、息を荒くしながら近付いて来る檸檬の姿。
「檸檬……」
『もう……やめて。』
苦しくなったのか、檸檬はその場に止まる。
右手で傷口をしっかりと抑えて。
途端に、骸の表情が歪んだ。
迷い--------
その感情が、骸の表情を覆う。
「何故です、檸檬…」
『え…?』
骸は、捕らえているツナの両手首をきつく握りしめる。
「どうして僕の前に現れた!!!」
檸檬を見つめる骸の瞳は、怒りと言うより哀しみの色に染まっていた。
それを、真直ぐに見つめる檸檬。
暫く骸を見つめ、小さく返す。
『会わなきゃ、良かったね。』
その言葉に、少し反応する骸。
檸檬は続ける。
『そしたら多分、あたしは皆を疑わなかったし、骸はそんなに迷わなかった…』
「迷う?一体何を…」
『骸が今、酷い事してるって、分かってる。マフィアである立場上、許しちゃいけない事だって、分かってる。だけど…』
「やめろ……」
それ以上、言うな。
『だけどあたし、分かったこともある。』
「言うな………」
これ以上、苦しめるな。
『骸が、優しい人だって。』
「やめろ!!!」
これ以上、迷わせないでくれ。
『大きな誤解を作ったのは骸だけど……骸の同情は、あたしにはあったかかった。』
「どこまでも…君は、おめでたい人間だ…!」
分かっている。
僕は檸檬が好きだ。
僕が今やっている事は、檸檬を苦しめる。
檸檬が止めに入れば、やめてしまうかも知れない。
しかし………僕には目的がある。
誓いがある。
決して忘れてはいけない、過去がある。
檸檬の望みと、
僕の決意は、
食い違う運命にあるものだ…
「……そうですね、」
『骸……「檸檬、」
呼びかけを遮られた檸檬は、そのまま黙る。
骸は、ゆっくりと檸檬に顔を向け、言い放った。
「もう…手遅れですよ。」
『骸…!』
「ボンゴレ、君はもう休んでいいですよ!!」
ツナを蹴り飛ばした骸。
その先にあるのは………先程突き刺さった憑依の為の剣だった。
『ツナっ!!』
「大丈夫だぞ。」
『リボーン…』
「行け、ツナ!」
リボーンの掛け声の直後に、ツナは手に力を込める。
「うおおお!!」
すると、Xグローブから大きな炎が噴射された。
「炎を………逆噴射だと!!?」
「そーだぞ。さっき瞬時にお前の背後に回ったのは、死ぬ気の炎の推進力を使った高速移動だ。」
『すごい……!』
ツナはそのまま骸の方へ向かって行く。
あまりの驚きに、動けない骸。
次の瞬間、ツナのグローブが骸の頭を捕らえた。
「うあぁあああ!!!!」
その炎の熱さのせいか、骸は悲鳴をあげる。
だが、それも一時の痛み。
「…………あぁ……あ……」
人間道の発動による体の紋様が、徐々に消えて行く。
苦しむ表情は、だんだんと安らかになって。
『骸………』
一瞬だけ、目が合った気がした。
そこにはやっぱり、僅かだけど温かさと寂しさがあって。
『骸のオーラが……』
「死ぬ気の炎で、浄化されたんだな。」
ツナが骸から手を離した時、骸はもう気を失っていた。
同時に、壁に刺さっていた骸の剣が、ヒビを作って砕け散った……。
「フッ、まるで手を逆立てて体を大きく見せようとする猫ですね。だが、いくら闘気の見てくれを変えてところで無意味だ。」
「死ぬ気の炎は闘気じゃない。」
「ほう、面白い事を言う。ならば見せて……もらいましょうか!!」
骸は先程と同じように棒を回してツナに攻め寄る。
だが、ツナはいとも簡単に受け止めた。
そして、ツナに握られた棒の一部は、溶けるようにしてグニャリと曲がったのだ。
「なっ…!」
骸が怯んだ一瞬の隙をついて、ツナは拳を振るう。
かろうじてかわす骸だが、グローブに灯っていた炎がその頬をかすった。
「(熱い……!!)」
思わず顔を歪ませる骸に、リボーンが言う。
「死ぬ気の炎と闘気では、エネルギーの密度が違うからな。限られた人間にしか見えない闘気と違って、死ぬ気の炎はそれ自体が破壊力を持つ、超圧縮エネルギーだ。」
「そのグローブは焼ごてと言うワケか……」
「それだけじゃない。」
今度はツナが骸に攻め寄った。
「くっ、」
真正面から走って来るツナに、骸は攻撃しようとするが、その棒は空を切る。
「消えた?」
と、次の瞬間、骸の背後にツナの姿が現れた。
その気配に気付き、慌てて振り返る骸。
「いつの間に!!?」
棒で防いでダメージは軽減したものの、何メートルも飛ばされた骸。
「何だ、今のは……奴は何をしたんだ?」
ツナはその問いに答える事なく、挑発の言葉を口にする。
「ウォーミングアップはまだ終わらないのか?」
「くっ、クフフ……クハハハハハハッ!!」
突然笑い出す骸。
「ここまでとは嬉しい誤算だ。君の肉体を手に入れれば、知略を張り巡らさずとも直接ファミリーに殴り込み、マフィア間の抗争を起こせそうだ。」
その目論見の一部が、口に出された。
ツナは少しだけ目を大きくする。
「マフィア間の抗争が、お前の目的か。」
リボーンが問う。
「クフフ………まさか。僕はそんなちっぽけな男ではありませんよ。」
先程の焦った表情とは反対に、いつもの妖しい笑みを浮かべて、
「僕はこれから世界中の要人の体を乗っ取るつもりです。」
ゆっくりと立ち上がり、
「そして彼らを操り、この醜い世界を………純粋で美しい血の海に変える。」
笑みがこぼれるのを抑えるように、手を口元に当てる。
「世界大戦……なんて、ベタすぎますかねぇ?」
その言葉に、より真剣な顔つきになるツナ。
表情を全く変えずにいるリボーン。
更に骸は言った。
「だが、手始めはやはりマフィア………マフィアの殲滅からだ。」
忌々しい記憶があるのか、骸の顔から笑みが消える。
「何故マフィアにこだわる。」
「恨みか。」
「おっと、これ以上話すつもりはない。君達にも、僕の問いに答えてもらいますよ。」
骸の顔は、真剣だった。
「どうして………檸檬が僕の憑依を破ったのか。」
骸の視線は、ツナが立っている後ろに寝かされている、檸檬に移った。
「こんな事は初めてでしてねぇ、是非知りたくなったんですよ。」
「初めて、か……」
リボーンが呟く。
「そりゃそうだろうな。あんな事が出来るのは、世界中を探したって、檸檬しかいねーぞ。」
「どう言う事です?」
「檸檬の能力の秘密、教えてやる。ツナ、お前もよく聞いとけ。」
「……分かった。」
「人間の運動は、随意運動と不随意運動に分かれる。重い物を持つ時力を入れたり、何か食べようと口を動かしたり、自分の意志による運動が随意運動。心臓の鼓動や瞬きみたいに、意志に関係なく体が行う運動が不随意運動だ。」
「それが何か………関係あるのですか?」
「大アリだぞ。檸檬がイタリアで積んできた修業はな、不随意運動を随意運動にする修業。つまり、自分の意志で、自分の身体の全てを操る修業だ。」
「自分の身体を……自分の意志で……?」
反復する骸に、リボーンは頷く。
「檸檬が持つ6つの能力は、その原則に従っている。例えば、俊足。普段走る時よりも筋細胞を活性化させ、人並外れたスピードを出す。剛腕、超五感も同じような原理だ。超五感の場合、神経が活性化されるけどな。」
「では、千種の毒を受けても倒れなかったのは?」
「第5能力・解毒はな、体内に入った毒の抗生物質を、必要に応じて瞬時に生成するんだ。檸檬の意志が体内に命令し、身体は忠実に従う。」
「……なるほど。」
「お前の憑依を破ったのは、第6能力・抵抗だぞ。」
「抵抗……?」
ツナが疑問符を浮かべる。
「抵抗は、6つの能力の中で最も基本に倣っていて、最も難しい能力だ。」
「基本……?」
「“自分の身体は自分で動かす”、それが能力の基本だ。抵抗はそれをそのまま利用してるんだぞ。」
「どう言う事です?」
「つまりだ、いかなる他の干渉も受けず、自分の意志を貫き通す。それが、第6能力・抵抗。そして、最も単純で最も困難であるこの能力を持つ事が……」
ハットの下に隠れていたリボーンの目が、きらりと光る。
「檸檬が超一流のマフィアと言われる所以なんだ。」
沈黙が流れた。
それは、仕方がない事なのかも知れない。
「9代目が孫娘のように可愛がっている娘……か。」
骸の口が開かれた。
それでも、
欲しいと思ってしまった。
愛しいと、
思ってしまったんだ………。
「檸檬…」
その名を口に出せば、君との思い出が蘇る。
---『……また会えたら、嬉しい。』
あぁ、檸檬…
どうして僕の前に現れた。
どうして僕を迷わせる。
こんなに苦しいのは、君のせいだ。
「クフフフフ、分かりました。では、もうお喋りはやめにしましょう。」
骸は表情を元に戻す。
「君は僕の最強形態によって、僕の物になるのですから………見るがいい!!」
骸から、分身のような黒い影が飛び出す。
それは真直ぐツナに向かっていく。
「幻覚だ。こんな物で…」
ところが、ツナの横を通り過ぎるその瞬間、ツナに激痛が与えられる。
「くぅ………」
「幻覚につぶてを潜ませたな。油断しやがって、バカツナめ。」
痛みにより身を屈ませるツナの上から、本物の骸が攻撃しようとする。
「(もらった-------!!)」
「ツナ。」
「分かってる!!」
ツナのグローブが大きな炎を纏う。
次の瞬間、ツナは骸の背後に姿を現した。
「また……!!?」
驚く骸に、ツナは渾身の一撃を食らわせた。
床に思いっきり打ち付けられる骸。
そのダメージは、測り知れないものだった。
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『ん………』
「起きたか、檸檬。」
『リボーン………今、物凄い音が…』
「ツナの奴、やっと分かってきやがった。」
『あのグローブ…?』
「ああ。」
ゆっくりと起き上がる檸檬。
「大丈夫なのか?」
『平気。ちょっと危険だけど、心臓の鼓動弱めたから……血圧で血管の破裂とかはないよ。』
「そうか。」
それでもダメージは酷いらしく、檸檬は這うようにしてツナと骸の方へ近付いて行った。
---
------
「その甘さが命取りだ。」
リボーンと檸檬が話している間に、背を向けたツナを骸が捕らえていた。
「骸……お前……!!」
「おっと、君の妙な技が手の炎の力で起きているのは分かっている。手を封じれば怖くありませんよ。」
骸はツナに思いっきり頭突きをした。
ツナはがくんと頭を垂らす。
「何故多くの刺客に君を狙わせたか分かりますか?」
今度は膝で背中を蹴りあげる。
「ぐっ!」
「君の能力を充分に引き出してから乗っ取る為だ。ご苦労でしたね………」
『骸っ!!』
その声に、骸だけでなくツナも驚いた。
視線を向ければ、息を荒くしながら近付いて来る檸檬の姿。
「檸檬……」
『もう……やめて。』
苦しくなったのか、檸檬はその場に止まる。
右手で傷口をしっかりと抑えて。
途端に、骸の表情が歪んだ。
迷い--------
その感情が、骸の表情を覆う。
「何故です、檸檬…」
『え…?』
骸は、捕らえているツナの両手首をきつく握りしめる。
「どうして僕の前に現れた!!!」
檸檬を見つめる骸の瞳は、怒りと言うより哀しみの色に染まっていた。
それを、真直ぐに見つめる檸檬。
暫く骸を見つめ、小さく返す。
『会わなきゃ、良かったね。』
その言葉に、少し反応する骸。
檸檬は続ける。
『そしたら多分、あたしは皆を疑わなかったし、骸はそんなに迷わなかった…』
「迷う?一体何を…」
『骸が今、酷い事してるって、分かってる。マフィアである立場上、許しちゃいけない事だって、分かってる。だけど…』
「やめろ……」
それ以上、言うな。
『だけどあたし、分かったこともある。』
「言うな………」
これ以上、苦しめるな。
『骸が、優しい人だって。』
「やめろ!!!」
これ以上、迷わせないでくれ。
『大きな誤解を作ったのは骸だけど……骸の同情は、あたしにはあったかかった。』
「どこまでも…君は、おめでたい人間だ…!」
分かっている。
僕は檸檬が好きだ。
僕が今やっている事は、檸檬を苦しめる。
檸檬が止めに入れば、やめてしまうかも知れない。
しかし………僕には目的がある。
誓いがある。
決して忘れてはいけない、過去がある。
檸檬の望みと、
僕の決意は、
食い違う運命にあるものだ…
「……そうですね、」
『骸……「檸檬、」
呼びかけを遮られた檸檬は、そのまま黙る。
骸は、ゆっくりと檸檬に顔を向け、言い放った。
「もう…手遅れですよ。」
『骸…!』
「ボンゴレ、君はもう休んでいいですよ!!」
ツナを蹴り飛ばした骸。
その先にあるのは………先程突き刺さった憑依の為の剣だった。
『ツナっ!!』
「大丈夫だぞ。」
『リボーン…』
「行け、ツナ!」
リボーンの掛け声の直後に、ツナは手に力を込める。
「うおおお!!」
すると、Xグローブから大きな炎が噴射された。
「炎を………逆噴射だと!!?」
「そーだぞ。さっき瞬時にお前の背後に回ったのは、死ぬ気の炎の推進力を使った高速移動だ。」
『すごい……!』
ツナはそのまま骸の方へ向かって行く。
あまりの驚きに、動けない骸。
次の瞬間、ツナのグローブが骸の頭を捕らえた。
「うあぁあああ!!!!」
その炎の熱さのせいか、骸は悲鳴をあげる。
だが、それも一時の痛み。
「…………あぁ……あ……」
人間道の発動による体の紋様が、徐々に消えて行く。
苦しむ表情は、だんだんと安らかになって。
『骸………』
一瞬だけ、目が合った気がした。
そこにはやっぱり、僅かだけど温かさと寂しさがあって。
『骸のオーラが……』
「死ぬ気の炎で、浄化されたんだな。」
ツナが骸から手を離した時、骸はもう気を失っていた。
同時に、壁に刺さっていた骸の剣が、ヒビを作って砕け散った……。