黒曜編
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あたしの役目は、
皆を護る事。
その為なら、
どんな痛みも………
=================
立ち上がったツナから、離れる千種。
一方ツナとリボーンは、突如様子を急変させた檸檬に目を向ける。
その檸檬は妖しい笑みを見せ、『まずは聞かせてもらいましょうか』と。
どうやら骸の憑依が檸檬にまで及んでいるらしい。
『その頭部の闘気………なるほど、特殊弾が命中していたのですね。しかし、ランチアと戦っていた時にはもっと荒々しかったようですが…………』
「小言弾は、ツナの静なる闘志を引き出すんだ。」
リボーンが言う。
『フッ、僕には戦意喪失し、意気消沈しているようにしか見えませんがね。どの道、僕の能力の前では君は敵ではない。』
檸檬が言い終わると同時に、犬が飛びかかる。
だが、ツナはいとも簡単に返り打ちにした。
『おやおや…』
しかし、
「まだですよ。」
今度は千種のヘッジホッグがツナを襲う。
すると、ツナは千種がいる方とは別方向に走り出した。
「(そこだ!)」
ドカッ、
何もない所を殴ったツナ。
そこから殴られた千種が現れ、同時に彼の持っていた剣は壁の隙間に挟まる。
「バカな……」
「奴は地獄道の幻覚を見破れなかったはず……。」
『どんなからくりなのでしょうかね。』
獄寺とビアンキが言った。
すると、リボーンが得意気に答える。
「これこそ小言弾の効果だぞ。ツナの内に眠る“ボンゴレの血”が目覚めたんだ。…まだグローブの使い方がなっちゃいねーがな。」
「おっと、忘れてしまったワケではありませんよねぇ?これは仲間の体ですよ。手をあげられるんですか?」
獄寺に憑依した骸がそう言って、ツナに攻め寄った。
「クフフ、出来ますか?」
「がっ!」
「出来るんですか?」
「ぐはっ!」
ビアンキと獄寺が2人がかりでツナを殴る。蹴る。サンドバッグ状態だ。
『やはり何もできない…滑稽ですね。』
「違ぇぞ。ツナは今…自分の体で攻撃をいなして、二人の体を守ってんだ。」
『そんな技術が…?』
次の瞬間
トンッ、
ツナが獄寺とビアンキの首の後ろを叩いた。
神経が麻痺した2人は、体が動かなくなり、そのまま倒れる。
「くそ…」
「待たせてごめん………」
リボーンに処置を頼むツナ。
そして………
未だ観戦態勢を貫いていた檸檬に視線を向けた。
『出来る事なら……使いたくなかったんですがね。』
「骸……!」
『クフフフ、まぁいいでしょう。この力を使えば君程度の存在、簡単に落とせる。』
目の前にいる檸檬の笑みは、いつもの笑顔とは程遠いもので。
ツナはぐっと拳を握る。
「何故だ。」
『何がですか?』
「今まで檸檬を使わなかったのに、どうして急に…」
『保険ですよ。いざと言う時の為のね。』
「保険……?」
『初めて檸檬の力を見たとき、僕はある種の感動を覚えた。人間の能力をここまで“自らの意思”で引き出せるものなのか、とね。』
「それで利用しようと檸檬のマインドコントロールを画策し、それが破られたから今度は憑依か。」
『ええ。彼女の力は僕の計画に必要ですから。』
違いますよ、檸檬。
本当に、使いたくなかった。
そうは言ってももう、この言葉を信じてもらうことも叶いませんが。
分かっています。
僕はそれだけのことをしている。
君を手に入れようと、君の心を壊した。
君を繋ぎとめようと、君の身体を奪った。
今更、何を言っても無駄なのでしょう。
『始めますよ。CRAZY DANCER & six abilities…』
「くっ!」
「まずいな。」
『クフフ…遅い、遅いですね。君の動きが手に取るように分かりますよ、ボンゴレ。』
檸檬に憑依した骸を相手に、苦戦するツナ。
傍から見ても一方的に押されているのは明らかである。
『さぁ、アルコバレーノ。君の生徒はもうすぐ僕の手に落ちますよ!』
「ぐはっ!」
骸が言うと同時に、ツナはその蹴りを食らって吹っ飛んだ。
だが、リボーンは深刻な顔つきをしていた。
『どうしたんですか?生徒の危機に、意気消沈ですか。』
挑発する骸に、リボーンは言った。
「早く憑依をやめた方がいいぞ、骸。」
「リボーン…?」
起き上がったツナも、その言葉に首をかしげる。
だが、骸は嘲笑うだけだった。
『クハハハハ!それはそうでしょうねぇ。このままでは生徒がやられてしまいますからねぇ!』
「それだけじゃねーぞ。」
『何を言っても無駄です。檸檬の力を借りて、僕はボンゴレを手に入れます。』
先程ツナが折った剣の刃を持って、骸は攻めて来た。
当たれば憑依を許すことになるその刃を、ツナはかろうじて避けるので精一杯だった。
『さぁ!反撃しないんですか?ボンゴレ10代目。』
「くっ……!!」
『無理もありませんねぇ、君が回避から攻撃に移るタイミングすら、僕には読めるのだから。』
何度後ろに回っても、檸檬の俊足がそれをかわす。
パワーでは剛腕に負け、最早ただ避ける事しか出来ない。
と、次の瞬間。
ドガッ、
「ぐあっ!!」
ツナの鳩尾に、剛腕を使ったパンチが決まった。
『終わりです。』
ダメージを受けたツナの首を地面に抑え付け、骸は上から剣の片割れを振り降ろした。
と、その時。
グンッ、
『なっ……!』
「!!?」
骸が憑依している檸檬の動きが止まった。
『何だ!どうなって……『何してんのよ、骸。』
ツナが感じた限り、骸の言葉を遮ったのは、恐らく檸檬自身。
だが、それはあり得ない事。
憑依弾の支配から抜け出す事なんて、誰も出来なかった。
『ツ……ナ……』
「檸檬、なのか?」
剣を振り降ろす恰好のまま止まっている檸檬は、左手を徐々に動かし、剣を両手で握った。
そして、ゆっくりと口を開く。
『ど、いて………』
ツナは素早く檸檬から離れる。
まだ完全に檸檬自身に戻っていない事は、ツナにも分かっていたのだ。
ツナが退いたのを確認すると、檸檬はその体勢のまま話し始めた。
『やってくれたじゃん……骸…』
「檸檬、無理すんじゃねーぞ。」
リボーンの呼びかけに、檸檬は軽く頷く。
ゆっくりと顔をあげた檸檬の表情はとても柔らかく、綺麗な笑みを浮かべていた。
「檸檬っ…!?」
その瞬間、ツナは何かを直感する。
『ごめんね、ツナ。』
檸檬は、両手で握っていた剣の欠片を、更に強く握り締めた。
「『やめろ!!檸檬!!』」
ツナと同時に叫んだのは、憑依した骸だった。
だが、無情にも剣は振り降ろされる。
他ならぬ、檸檬自身に。
ドシュッ、
嫌な音が聞こえた。
.腹部に剣を突き刺した檸檬の唇からは、深紅の液体が流れ出る。
プシャッ、
奥深くまで突き刺した檸檬は、今度は剣を引き抜き、それを投げ捨てた。
カンカラカーン………
『檸檬っ!!!』
憑依した骸の叫びが、檸檬の口から放たれる。
そして、檸檬が自分で刺した傷口を、骸はしっかりと押さえさせた。
何故………
何故こんな事を………!
混乱する僕の脳裏に浮かんだのは、
先程のアルコバレーノの言葉だった。
---「早く憑依をやめた方がいいぞ。」
あれは………
こういう意味だったのか、
アルコバレーノには分かっていたと言うのか。
檸檬が、自分で自分を刺すという事が。
『檸檬……『骸、』
呼び掛ければ、遮られる。
『あたし使って…ツナ倒そうなんて…1億年早いのよ……』
その言葉に驚いていると、今度はボンゴレが近付いて来る。
「檸檬から出て行け、骸。」
『くっ………!!』
為す術なく檸檬への憑依を解くと、途端にその体は前方に倒れ、ボンゴレが支えた。
「檸檬……どうしてこんな……」
ゆっくりとツナに寝かせられる檸檬。
リボーンが傷口を見る。
「檸檬、無理すんなって言っただろ。致命傷ギリギリだぞ。」
『あったり前じゃん………狙ったんだもん…』
言葉と同時に、うっすらと笑みを見せた。
「狙ったって…!」
ツナが驚く。
「これだけ際どい場所に損傷があると、いつ出血多量になるか分からねぇからな。骸もこれじゃ使えねーはずだ。」
「だからって……こんな!」
「安心しろ、意識も息もあるんだからな。」
『そうだよ…ツナ。心配、しないで……』
それでも、力ない檸檬の微笑みに、
ツナは胸を締め付けられた。
「檸檬……ごめん……」
『ツナが…謝らないで。』
荒い息の中、檸檬は言う。
『悪いのは……あたし。勝手に此処に乗り込んで、皆を疑った、あたしなんだから…』
「そんな事…!!」
『ねぇ…ツナ、』
檸檬の呼びかけに、ツナは少しだけ身を乗り出す。
『お願いがあるの……』
我が儘でごめんね、
だけど、1つだけ………
『骸を………助けてあげて。』
言い終わると同時に、檸檬は苦しそうに目を閉じた。
それは、か細くて、弱々しくて、小さな声。
ツナは、思わず唇を噛み締めた。
「分かった………やってみるよ、檸檬。」
そして、拳を握り直し、骸本人が倒れている方へ顔を向け、立ち上がる。
その瞳には、ほんの少し憎悪も混ざっていたかも知れない。
「出て来い骸、生きてるんだろう?」
ツナが呼び掛けると、骸はすっと立ち上がった。
しかし、その表情は何処か浮かない。
「アルコバレーノ、君は分かっていたのですか?」
「確信は無かったがな、檸檬ならお前の憑依を自力で破ると思ってたぞ。」
「そうですか……」
少し俯いた骸は、覚悟を決めたように顔を上げた。
「僕が1つだけ、能力を発動していない事にお気付きですか?」
「第5の道・人間道だな。」
「その通り。この能力は出来れば発動させたくなかった…」
言うと同時に、骸は手を右目の中に入れる。
「この能力は最も醜く…………」
少し苦痛の表情を出しながらも、指を動かして、眼球を回す。
「最も危険な能力ですからね。」
その瞬間、どす黒いオーラが骸を包んだ。
右目からは、血が溢れ出ている。
そのままツナに攻め寄る骸。
その攻撃を受け止めきれず、押されるツナ。
少しだけ押されたその時、骸の拳が腹部に入る。
「がはっ!」
「君と僕では、力の差があり過ぎる。」
同時に、骸の持っていた棒で殴られ、飛ばされるツナ。
激突した壁は崩れて行く。
「クハハハハ!脆いですね。ウォーミングアップのつもりだったのですが。」
骸が笑うと、瓦礫の中から声が聞こえて来た。
「…………でなくっちゃな。」
「なっ!」
ボォッ!!
ツナの頭部にあるオーラが、弾けて見える。
それを見て、リボーンは少し笑った。
「分かって来たみてーだな。グローブの意味が。」
「お前の力がこんなものなら、拍子抜けだぜ。」
頭部のオーラは、両手にも宿っていた。
それを見て、骸はやはり笑みを浮かべる。
「クフフフフ、まったく君は、楽しませてくれる。」
皆を護る事。
その為なら、
どんな痛みも………
=================
立ち上がったツナから、離れる千種。
一方ツナとリボーンは、突如様子を急変させた檸檬に目を向ける。
その檸檬は妖しい笑みを見せ、『まずは聞かせてもらいましょうか』と。
どうやら骸の憑依が檸檬にまで及んでいるらしい。
『その頭部の闘気………なるほど、特殊弾が命中していたのですね。しかし、ランチアと戦っていた時にはもっと荒々しかったようですが…………』
「小言弾は、ツナの静なる闘志を引き出すんだ。」
リボーンが言う。
『フッ、僕には戦意喪失し、意気消沈しているようにしか見えませんがね。どの道、僕の能力の前では君は敵ではない。』
檸檬が言い終わると同時に、犬が飛びかかる。
だが、ツナはいとも簡単に返り打ちにした。
『おやおや…』
しかし、
「まだですよ。」
今度は千種のヘッジホッグがツナを襲う。
すると、ツナは千種がいる方とは別方向に走り出した。
「(そこだ!)」
ドカッ、
何もない所を殴ったツナ。
そこから殴られた千種が現れ、同時に彼の持っていた剣は壁の隙間に挟まる。
「バカな……」
「奴は地獄道の幻覚を見破れなかったはず……。」
『どんなからくりなのでしょうかね。』
獄寺とビアンキが言った。
すると、リボーンが得意気に答える。
「これこそ小言弾の効果だぞ。ツナの内に眠る“ボンゴレの血”が目覚めたんだ。…まだグローブの使い方がなっちゃいねーがな。」
「おっと、忘れてしまったワケではありませんよねぇ?これは仲間の体ですよ。手をあげられるんですか?」
獄寺に憑依した骸がそう言って、ツナに攻め寄った。
「クフフ、出来ますか?」
「がっ!」
「出来るんですか?」
「ぐはっ!」
ビアンキと獄寺が2人がかりでツナを殴る。蹴る。サンドバッグ状態だ。
『やはり何もできない…滑稽ですね。』
「違ぇぞ。ツナは今…自分の体で攻撃をいなして、二人の体を守ってんだ。」
『そんな技術が…?』
次の瞬間
トンッ、
ツナが獄寺とビアンキの首の後ろを叩いた。
神経が麻痺した2人は、体が動かなくなり、そのまま倒れる。
「くそ…」
「待たせてごめん………」
リボーンに処置を頼むツナ。
そして………
未だ観戦態勢を貫いていた檸檬に視線を向けた。
『出来る事なら……使いたくなかったんですがね。』
「骸……!」
『クフフフ、まぁいいでしょう。この力を使えば君程度の存在、簡単に落とせる。』
目の前にいる檸檬の笑みは、いつもの笑顔とは程遠いもので。
ツナはぐっと拳を握る。
「何故だ。」
『何がですか?』
「今まで檸檬を使わなかったのに、どうして急に…」
『保険ですよ。いざと言う時の為のね。』
「保険……?」
『初めて檸檬の力を見たとき、僕はある種の感動を覚えた。人間の能力をここまで“自らの意思”で引き出せるものなのか、とね。』
「それで利用しようと檸檬のマインドコントロールを画策し、それが破られたから今度は憑依か。」
『ええ。彼女の力は僕の計画に必要ですから。』
違いますよ、檸檬。
本当に、使いたくなかった。
そうは言ってももう、この言葉を信じてもらうことも叶いませんが。
分かっています。
僕はそれだけのことをしている。
君を手に入れようと、君の心を壊した。
君を繋ぎとめようと、君の身体を奪った。
今更、何を言っても無駄なのでしょう。
『始めますよ。CRAZY DANCER & six abilities…』
「くっ!」
「まずいな。」
『クフフ…遅い、遅いですね。君の動きが手に取るように分かりますよ、ボンゴレ。』
檸檬に憑依した骸を相手に、苦戦するツナ。
傍から見ても一方的に押されているのは明らかである。
『さぁ、アルコバレーノ。君の生徒はもうすぐ僕の手に落ちますよ!』
「ぐはっ!」
骸が言うと同時に、ツナはその蹴りを食らって吹っ飛んだ。
だが、リボーンは深刻な顔つきをしていた。
『どうしたんですか?生徒の危機に、意気消沈ですか。』
挑発する骸に、リボーンは言った。
「早く憑依をやめた方がいいぞ、骸。」
「リボーン…?」
起き上がったツナも、その言葉に首をかしげる。
だが、骸は嘲笑うだけだった。
『クハハハハ!それはそうでしょうねぇ。このままでは生徒がやられてしまいますからねぇ!』
「それだけじゃねーぞ。」
『何を言っても無駄です。檸檬の力を借りて、僕はボンゴレを手に入れます。』
先程ツナが折った剣の刃を持って、骸は攻めて来た。
当たれば憑依を許すことになるその刃を、ツナはかろうじて避けるので精一杯だった。
『さぁ!反撃しないんですか?ボンゴレ10代目。』
「くっ……!!」
『無理もありませんねぇ、君が回避から攻撃に移るタイミングすら、僕には読めるのだから。』
何度後ろに回っても、檸檬の俊足がそれをかわす。
パワーでは剛腕に負け、最早ただ避ける事しか出来ない。
と、次の瞬間。
ドガッ、
「ぐあっ!!」
ツナの鳩尾に、剛腕を使ったパンチが決まった。
『終わりです。』
ダメージを受けたツナの首を地面に抑え付け、骸は上から剣の片割れを振り降ろした。
と、その時。
グンッ、
『なっ……!』
「!!?」
骸が憑依している檸檬の動きが止まった。
『何だ!どうなって……『何してんのよ、骸。』
ツナが感じた限り、骸の言葉を遮ったのは、恐らく檸檬自身。
だが、それはあり得ない事。
憑依弾の支配から抜け出す事なんて、誰も出来なかった。
『ツ……ナ……』
「檸檬、なのか?」
剣を振り降ろす恰好のまま止まっている檸檬は、左手を徐々に動かし、剣を両手で握った。
そして、ゆっくりと口を開く。
『ど、いて………』
ツナは素早く檸檬から離れる。
まだ完全に檸檬自身に戻っていない事は、ツナにも分かっていたのだ。
ツナが退いたのを確認すると、檸檬はその体勢のまま話し始めた。
『やってくれたじゃん……骸…』
「檸檬、無理すんじゃねーぞ。」
リボーンの呼びかけに、檸檬は軽く頷く。
ゆっくりと顔をあげた檸檬の表情はとても柔らかく、綺麗な笑みを浮かべていた。
「檸檬っ…!?」
その瞬間、ツナは何かを直感する。
『ごめんね、ツナ。』
檸檬は、両手で握っていた剣の欠片を、更に強く握り締めた。
「『やめろ!!檸檬!!』」
ツナと同時に叫んだのは、憑依した骸だった。
だが、無情にも剣は振り降ろされる。
他ならぬ、檸檬自身に。
ドシュッ、
嫌な音が聞こえた。
.腹部に剣を突き刺した檸檬の唇からは、深紅の液体が流れ出る。
プシャッ、
奥深くまで突き刺した檸檬は、今度は剣を引き抜き、それを投げ捨てた。
カンカラカーン………
『檸檬っ!!!』
憑依した骸の叫びが、檸檬の口から放たれる。
そして、檸檬が自分で刺した傷口を、骸はしっかりと押さえさせた。
何故………
何故こんな事を………!
混乱する僕の脳裏に浮かんだのは、
先程のアルコバレーノの言葉だった。
---「早く憑依をやめた方がいいぞ。」
あれは………
こういう意味だったのか、
アルコバレーノには分かっていたと言うのか。
檸檬が、自分で自分を刺すという事が。
『檸檬……『骸、』
呼び掛ければ、遮られる。
『あたし使って…ツナ倒そうなんて…1億年早いのよ……』
その言葉に驚いていると、今度はボンゴレが近付いて来る。
「檸檬から出て行け、骸。」
『くっ………!!』
為す術なく檸檬への憑依を解くと、途端にその体は前方に倒れ、ボンゴレが支えた。
「檸檬……どうしてこんな……」
ゆっくりとツナに寝かせられる檸檬。
リボーンが傷口を見る。
「檸檬、無理すんなって言っただろ。致命傷ギリギリだぞ。」
『あったり前じゃん………狙ったんだもん…』
言葉と同時に、うっすらと笑みを見せた。
「狙ったって…!」
ツナが驚く。
「これだけ際どい場所に損傷があると、いつ出血多量になるか分からねぇからな。骸もこれじゃ使えねーはずだ。」
「だからって……こんな!」
「安心しろ、意識も息もあるんだからな。」
『そうだよ…ツナ。心配、しないで……』
それでも、力ない檸檬の微笑みに、
ツナは胸を締め付けられた。
「檸檬……ごめん……」
『ツナが…謝らないで。』
荒い息の中、檸檬は言う。
『悪いのは……あたし。勝手に此処に乗り込んで、皆を疑った、あたしなんだから…』
「そんな事…!!」
『ねぇ…ツナ、』
檸檬の呼びかけに、ツナは少しだけ身を乗り出す。
『お願いがあるの……』
我が儘でごめんね、
だけど、1つだけ………
『骸を………助けてあげて。』
言い終わると同時に、檸檬は苦しそうに目を閉じた。
それは、か細くて、弱々しくて、小さな声。
ツナは、思わず唇を噛み締めた。
「分かった………やってみるよ、檸檬。」
そして、拳を握り直し、骸本人が倒れている方へ顔を向け、立ち上がる。
その瞳には、ほんの少し憎悪も混ざっていたかも知れない。
「出て来い骸、生きてるんだろう?」
ツナが呼び掛けると、骸はすっと立ち上がった。
しかし、その表情は何処か浮かない。
「アルコバレーノ、君は分かっていたのですか?」
「確信は無かったがな、檸檬ならお前の憑依を自力で破ると思ってたぞ。」
「そうですか……」
少し俯いた骸は、覚悟を決めたように顔を上げた。
「僕が1つだけ、能力を発動していない事にお気付きですか?」
「第5の道・人間道だな。」
「その通り。この能力は出来れば発動させたくなかった…」
言うと同時に、骸は手を右目の中に入れる。
「この能力は最も醜く…………」
少し苦痛の表情を出しながらも、指を動かして、眼球を回す。
「最も危険な能力ですからね。」
その瞬間、どす黒いオーラが骸を包んだ。
右目からは、血が溢れ出ている。
そのままツナに攻め寄る骸。
その攻撃を受け止めきれず、押されるツナ。
少しだけ押されたその時、骸の拳が腹部に入る。
「がはっ!」
「君と僕では、力の差があり過ぎる。」
同時に、骸の持っていた棒で殴られ、飛ばされるツナ。
激突した壁は崩れて行く。
「クハハハハ!脆いですね。ウォーミングアップのつもりだったのですが。」
骸が笑うと、瓦礫の中から声が聞こえて来た。
「…………でなくっちゃな。」
「なっ!」
ボォッ!!
ツナの頭部にあるオーラが、弾けて見える。
それを見て、リボーンは少し笑った。
「分かって来たみてーだな。グローブの意味が。」
「お前の力がこんなものなら、拍子抜けだぜ。」
頭部のオーラは、両手にも宿っていた。
それを見て、骸はやはり笑みを浮かべる。
「クフフフフ、まったく君は、楽しませてくれる。」