黒曜編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
第2の道・餓鬼道は、
技を奪い取る能力(スキル)---
「乗っ取った上に、前世に刻まれたという能力も使えるのか。」
「クフフフ。」
俺に襲い掛かる獄寺君のダイナマイト。
リボーンが攻撃を避けながら言うと、骸は楽しそうに笑った。
俺が転がって逃げた位置の近くから、マグマが吹き出る。
見ると、辺りには何本もの火柱が立っていた。
「助けてーーー!!!」
俺には、何にも出来ないよ………。
「出来れば君は無傷で手に入れたい。」
「降伏してくれていいんですよ?」
黒曜生2人の声が聞こえる。
降伏なんてしたくない。
そもそも、何でこんなトコに来たんだっけ…………。
そうだ、そうだよ。
俺はあんなに拒んだじゃないか。
なのに、
どうして………来ちゃったんだろうなぁ…………
「も、もうダメだぁ!!」
「学習しねー奴だな。これは幻覚だぞ。」
俺の方に行こうとしたリボーンを、獄寺君が止めた。
「おっと君は………自分の心配をした方がいい。」
リボーンの周りにはダイナマイトが……!
ドガガン!
「り、リボーン!!!」
「こんなものではないはずだ、アルコバレーノ。」
骸が言うと同時に、リボーンのハットが爆風から飛び出して来た。
生きてる…!!
だが、そのハットに骸がすかさず剣を突き刺した。
「見付けましたよ。」
「あぁっ!!」
思わず叫び声を上げたけど、剣に刺さっていたのはリボーンのハットだけだった。
そして、何処からともなくそれは素早く奪い返される。
「久々に感じる実践の空気だな。」
降り立ったリボーンはかすり傷一つ負わずにハットの汚れを払っていた。
「リボーン………!!」
ホッとする俺に向かって、リボーンは再びハットをかぶりながら言った。
「俺は手ェ出せねぇんだ。ツナ、早く何とかしやがれ。」
「なっ!」
その時、またダイナマイトが飛んで来た。
必死に逃げながら反論する。
「無茶言うなよ!!俺の何とか出来るレベル超えてるよ!!」
そしたらリボーンもヨーヨーの針を避けながら、
「俺の教え子なら超えられるはずだぞ。」
って。
「そんなメチャクチャな理屈って……あるかよ!!」
俺が精一杯反論すると、骸が言った。
「クフフフ、焦っているんですよ、先生は。生徒の絶体絶命の危機に………支離滅裂になっている。」
同時にリボーンにポイズンクッキングが投げられる。
するとリボーンは、
「嘘じゃねーぞ。お前の兄貴分、ディーノも超えて来た道だぞ。」
って言うんだ。
ディーノさん………?
一瞬だけ動きが止まった俺を、再び幻覚が襲う。
「うわっ!」
確かにディーノさんもリボーンの教え子だったらしいし、俺の兄貴分だって言ってくれたけど…
でも………
俺とディーノさんとは……!!
リボーンの言う事はいちいち意味が分からない。
ディーノさんが超えられたからって、俺ができる保障なんてどこにもないのに。
自信満々でサラッと無茶なことばっかり…
そんな事を考えているうちに、俺の頭上にダイナマイトが散りばめられた。
---
-----
------------
“信じなくてもいい”なんて、そんなことを言われたのは初めてだった。
来日した目的は、ボンゴレ10代目の家庭教師補佐と、あたしが信頼できる人間を見つけること。
イタリアでボンゴレの色んな機関に短期で仮所属してきたあたしは、実のところそれで十分だった。
だって、死と隣り合わせの生活から解放されて、それでいて少しスリルがある生活が心地よかったから。
マフィアとして、非情さを持ちながら生きていく……そう、思ってた。
来日を言い渡されたとき、本当は少し抵抗もあって。
まるで9代目があたしに「普通の中学生に近づけ」と言っているようで……
そんな普通の感覚は、マフィアのあたしには必要ないって気持ちもあった。
だから、日本で誰も信用できなくても、イタリアの人たちが、ボンゴレ本部の人と連絡が取れれば、あたしの世界はそれで完結する……
はずだった。
温かい人たちは、あたしの中の本当の気持ちを引き出して、
大好きな友達ができるたびに、空っぽが満たされていく気がして。
---「俺達は…檸檬に出会えて幸せだよ。」
あたしの世界は、変わり始めた。
9代目に雇われる非情なマフィアとして生きながら、心から人を信頼するなんて。
そんなこと、考えられなかったのに。
帰る場所が“並盛”であればいい、とか、期待したりして。
任務じゃなくてあたしの意志で、皆のことを護りたいって思ったの。
それでも骸の言葉を受け入れてしまったのは、弱かったから。
あたしはまだ、誰かを心から信じることができなかった。
アメリカで刻まれた恐怖は、癒えていなかった。
そんなあたしの脆さのせいで、9代目のことまで疑って……
だから、償わなくちゃ。
あたしに、今できることは………
『ん……、』
目を開けて一番最初に見たのは、気を失っている恭弥の姿だった。
---「檸檬が泣かないように、ココにいる」
---「泣きたいときは、我慢しなくていいから。」
あたしに無償の優しさをたくさんくれた人。
あたしに居場所を指し示してくれた人。
その強引さが、あたしを動かしてくれたんだ。
あたしの世界を変えてくれたんだ。
なのに、あたしは……簡単に疑って切り捨てようとして。
けれど恭弥には分かってたのかな。
結局あたしは、並盛でもらった温かさを捨てきれないんだってこと。
『恭弥……ごめんね…』
ひどいことを言ったのに、それでもここまで来てくれて、骸と戦ってくれて……
「うわあっ!!」
罪悪感から泣きそうになるあたしを我に返らせたのは、向こうから聞こえてきた叫び声だった。
『(あれは…!?)』
信じられない。
隼人が、ツナに向かってボムを投げたみたい。
骸は倒れている。
なのに、どうして戦いが終わってないの…?
爆風で飛ばされたツナは尻餅をついていた。
そこに歩み寄るのは、骸の槍を持った千種。
「さぁ、お喋りはこのぐらいにして終わりにしましょう。」
「ひいいっ!!来たぁぁぁ!!」
待って、おかしい。
千種なのに、喋り口調は骸みたい。
ま、まさか…!
…だとしたら、止めなくちゃ!!
---
------
走り寄って来る骸に、俺は動けないまま。
もう終わりかと思ったその時………
ドサッ、
ヨーヨー使いは急に倒れて、その手にあった剣は別の骸に渡った。
「なぁに、よくある事です。」
剣を拾いながら骸は言う。
「いくら乗っ取って全身を支配したと言っても、肉体が壊れてしまっていては動きませんからねぇ。」
は?
何言ってんの………?
「それって…………怪我で動かない体を無理矢理動かしてるって事………?」
「それで雲雀には憑依しなかったんだな。」
リボーンが付け足した。
「クフフフ、千種はもう少し……行けそうですね。」
よろめきながら、ヨーヨー使いは立ち上がった。
ってゆうか………
骸が無理矢理立ち上がらせたんだ。
「あ……無理矢理動かしたりしたら……怪我が…………!!」
「クフフフ、平気ですよ。」
フラフラになりながら骸は言った。
「僕は痛みを、感じませんからねぇ。」
そう言う体からは、血が滴っていた。
「な、何言ってんの!?仲間の体なんだろ!!?」
俺が怒鳴っても、骸は平然と言う。
「違いますよ、憑依したら僕の体です。壊れようが息絶えようが、僕の勝手だ。」
『違う…!』
突如聞こえた声に、俺も骸も振り返る。
「…随分と早い回復ですね。さすが、といったところでしょうか。」
「檸檬…!」
『骸…もう、やめて。』
ふらつきながら立ち上がった檸檬は、骸に近づいていく。
「檸檬!あ、危ないよ…!」
『大丈夫。この場の人間のリズムは把握してる…』
「なるほど。君は無傷で生き残れる、という算段ですか。」
「ダメだよ檸檬!起きたばっかりでそんな…」
「クフフ、他人の心配をしている暇があるんですか?」
「自分が殺られるという時に……」
「君は面白い男だが、マフィア向きではありませんね。」
獄寺君とビアンキが近付いて来る。
俺の目線は、当然2人の傷口に。
「(あんなに血が…………!)」
これ以上、見ていられなくなった。
「頼む!!やめてくれ!!このままじゃ死んじゃうよ!!」
俺がそう叫ぶと、骸は嬉しそうに笑った。
「思い出しましたよ。君はバーズとの戦いでガールフレンドの為に自分にナイフを突き立てようとしたんでしたね。」
ま、まさか……!
「それでいきましょう。君はその甘さ故、僕に乗っ取られる。いいですか?君の仲間をこれ以上傷つけられたくなければ、逃げずに大人しく契約して下さい。勿論檸檬も含め、ですよ。」
「そ、そんな……!」
俺は戸惑いながら、後ずさりする。
『やめて…これ以上……つぅっ、』
「無駄な体力の消費ですよ、檸檬。マインドコントロールから逃れたとはいえ、今の君は自分の体をひどく重く感じているはずです。一度脳が壊れたのですから。」
「檸檬っ…!」
俺達の方に近づこうとする檸檬が、頭を抱えながら膝を折る。
歩くことも、話すことも、つらそうだった。
『はぁっ……はぁっ…』
「クフフ……前のように身軽に戦うことはできませんねぇ。今の君ならば憑依した僕でも一捻りですよ。さぁ…どうします?ボンゴレ10代目。」
「そ、そんな…」
「やはり迷うのですね。どの道、君のような人間はこの世界では生き残れない。ボンゴレ10代目には不適格です。さぁ、体を明け渡してもらいましょう。」
骸は、剣を持って俺にゆっくり歩み寄る。
このままじゃ、俺だけじゃない。
獄寺君もビアンキも、雲雀さんも檸檬も……皆が、傷だらけのボロボロなのに、更に傷つくことになる…
そんなの嫌だ、だけど、
俺にできることなんて……
「ど、どうしよう………」
俺はリボーンがいる方を向いた。
「リボーン!どうしよう!!」
「俺は何もしてやれねーぞ。自分で何とかしろ。」
突き放すようなリボーンの言葉に、目が霞んで来る。
「いつも助けてくれるじゃないか!!見捨てないでよ、リボーン!!」
すると……
ドカッ、
「ブフッ!」
「情けねぇ声出すな。」
リボーンが俺の顎を蹴り上げた。
「だって、俺どうしたら…………」
「いいか、ツナ。」
俺の胸ぐらを掴んで、リボーンは言った。
「お前は誰よりもボンゴレ10代目なんだ。お前が気持ちを吐き出せば、それがボンゴレの答えだ。」
「お、俺の……気持ち………?」
戸惑う俺に、骸が言う。
「クフフ、家庭教師もサジを投げましたか。彼の気持ちは“逃げ出したい”ですよ。」
………違うんだ。
ホントはね、
こんな所、絶対来たくなかった。
けど……
.『骸……もう、やめて…』
檸檬がぐっと立ち上がり、剣を持った骸の手に触れようとする。
けどその手はかわされ、代わりに別の骸が檸檬の首を絞めた。
『あぐっ…!』
「君は本当に往生際が悪いですね…諦めなさい。僕の計画は揺るがない。君の信じるものの脆弱さを見届けるがいい。」
『そんな、こと…できない……あたしはもう、諦め、られない…!』
そうだ、諦めるわけにはいかないんだ。
骸の事は許せない。
骸が檸檬にした事を、許すワケにはいかない。
檸檬を不安にさせて、
心を壊してマインドコントロールして、
流さなくていい涙をたくさん流させたんだ。
俺がどうしてここに来たかって?
来たくなかったよ。
来たくなかったのに……
---『ツナ、あたしちょっと行って来る。』
その言葉だけを残して行ってしまった君のことが、心配だったんだよ、檸檬。
いつも一人で何とかしてしまおうとする君の事が、何よりも心配だったんだ。
結果的に俺は、間に合わなかったけれど。
---『もう、うんざりなの。あたしには……貴方たちとの絆なんて、いらないから。』
骸が檸檬に何を言ったのかはわからない。
それでも、泣きながら俺達を突き放そうとした檸檬は、きっと、突き放そうとしながら一番傷ついていたんだと思う。
だから………
「骸に…………勝ちたい………………」
ツナの言葉を聞いて、少しだけ目を見開き、檸檬を放す骸。
『けほっ、けほっ…!』
「これは意外ですね。だが続きは君の体を乗っ取った後にゆっくり聞きましょう。」
その目に修羅道のオーラが表れる。
「君の手で仲間を葬った後にね。」
「こんな酷い奴に……負けたくない………」
ここに来たのは、
もう皆が傷付くのは嫌だから。
そして、
もう一度皆の、
檸檬の、
笑顔が見たいから。
「こいつにだけは、勝ちたいんだ!!!」
「終わりです。」
『ツナ…!』
骸の剣が振り降ろされると同時に、俺の隣で何かが光った。
「うわあ!!」
ネバッとした糸を放つ、その光の正体は………
「レオン!!!?」
「ついに羽化したな……」
「羽化!?」
「あの時と同じだ………」
ハットの下で、リボーンの目がキラリと光る。
「ディーノが“跳ね馬”になった時とな。」
技を奪い取る能力(スキル)---
「乗っ取った上に、前世に刻まれたという能力も使えるのか。」
「クフフフ。」
俺に襲い掛かる獄寺君のダイナマイト。
リボーンが攻撃を避けながら言うと、骸は楽しそうに笑った。
俺が転がって逃げた位置の近くから、マグマが吹き出る。
見ると、辺りには何本もの火柱が立っていた。
「助けてーーー!!!」
俺には、何にも出来ないよ………。
「出来れば君は無傷で手に入れたい。」
「降伏してくれていいんですよ?」
黒曜生2人の声が聞こえる。
降伏なんてしたくない。
そもそも、何でこんなトコに来たんだっけ…………。
そうだ、そうだよ。
俺はあんなに拒んだじゃないか。
なのに、
どうして………来ちゃったんだろうなぁ…………
「も、もうダメだぁ!!」
「学習しねー奴だな。これは幻覚だぞ。」
俺の方に行こうとしたリボーンを、獄寺君が止めた。
「おっと君は………自分の心配をした方がいい。」
リボーンの周りにはダイナマイトが……!
ドガガン!
「り、リボーン!!!」
「こんなものではないはずだ、アルコバレーノ。」
骸が言うと同時に、リボーンのハットが爆風から飛び出して来た。
生きてる…!!
だが、そのハットに骸がすかさず剣を突き刺した。
「見付けましたよ。」
「あぁっ!!」
思わず叫び声を上げたけど、剣に刺さっていたのはリボーンのハットだけだった。
そして、何処からともなくそれは素早く奪い返される。
「久々に感じる実践の空気だな。」
降り立ったリボーンはかすり傷一つ負わずにハットの汚れを払っていた。
「リボーン………!!」
ホッとする俺に向かって、リボーンは再びハットをかぶりながら言った。
「俺は手ェ出せねぇんだ。ツナ、早く何とかしやがれ。」
「なっ!」
その時、またダイナマイトが飛んで来た。
必死に逃げながら反論する。
「無茶言うなよ!!俺の何とか出来るレベル超えてるよ!!」
そしたらリボーンもヨーヨーの針を避けながら、
「俺の教え子なら超えられるはずだぞ。」
って。
「そんなメチャクチャな理屈って……あるかよ!!」
俺が精一杯反論すると、骸が言った。
「クフフフ、焦っているんですよ、先生は。生徒の絶体絶命の危機に………支離滅裂になっている。」
同時にリボーンにポイズンクッキングが投げられる。
するとリボーンは、
「嘘じゃねーぞ。お前の兄貴分、ディーノも超えて来た道だぞ。」
って言うんだ。
ディーノさん………?
一瞬だけ動きが止まった俺を、再び幻覚が襲う。
「うわっ!」
確かにディーノさんもリボーンの教え子だったらしいし、俺の兄貴分だって言ってくれたけど…
でも………
俺とディーノさんとは……!!
リボーンの言う事はいちいち意味が分からない。
ディーノさんが超えられたからって、俺ができる保障なんてどこにもないのに。
自信満々でサラッと無茶なことばっかり…
そんな事を考えているうちに、俺の頭上にダイナマイトが散りばめられた。
---
-----
------------
“信じなくてもいい”なんて、そんなことを言われたのは初めてだった。
来日した目的は、ボンゴレ10代目の家庭教師補佐と、あたしが信頼できる人間を見つけること。
イタリアでボンゴレの色んな機関に短期で仮所属してきたあたしは、実のところそれで十分だった。
だって、死と隣り合わせの生活から解放されて、それでいて少しスリルがある生活が心地よかったから。
マフィアとして、非情さを持ちながら生きていく……そう、思ってた。
来日を言い渡されたとき、本当は少し抵抗もあって。
まるで9代目があたしに「普通の中学生に近づけ」と言っているようで……
そんな普通の感覚は、マフィアのあたしには必要ないって気持ちもあった。
だから、日本で誰も信用できなくても、イタリアの人たちが、ボンゴレ本部の人と連絡が取れれば、あたしの世界はそれで完結する……
はずだった。
温かい人たちは、あたしの中の本当の気持ちを引き出して、
大好きな友達ができるたびに、空っぽが満たされていく気がして。
---「俺達は…檸檬に出会えて幸せだよ。」
あたしの世界は、変わり始めた。
9代目に雇われる非情なマフィアとして生きながら、心から人を信頼するなんて。
そんなこと、考えられなかったのに。
帰る場所が“並盛”であればいい、とか、期待したりして。
任務じゃなくてあたしの意志で、皆のことを護りたいって思ったの。
それでも骸の言葉を受け入れてしまったのは、弱かったから。
あたしはまだ、誰かを心から信じることができなかった。
アメリカで刻まれた恐怖は、癒えていなかった。
そんなあたしの脆さのせいで、9代目のことまで疑って……
だから、償わなくちゃ。
あたしに、今できることは………
『ん……、』
目を開けて一番最初に見たのは、気を失っている恭弥の姿だった。
---「檸檬が泣かないように、ココにいる」
---「泣きたいときは、我慢しなくていいから。」
あたしに無償の優しさをたくさんくれた人。
あたしに居場所を指し示してくれた人。
その強引さが、あたしを動かしてくれたんだ。
あたしの世界を変えてくれたんだ。
なのに、あたしは……簡単に疑って切り捨てようとして。
けれど恭弥には分かってたのかな。
結局あたしは、並盛でもらった温かさを捨てきれないんだってこと。
『恭弥……ごめんね…』
ひどいことを言ったのに、それでもここまで来てくれて、骸と戦ってくれて……
「うわあっ!!」
罪悪感から泣きそうになるあたしを我に返らせたのは、向こうから聞こえてきた叫び声だった。
『(あれは…!?)』
信じられない。
隼人が、ツナに向かってボムを投げたみたい。
骸は倒れている。
なのに、どうして戦いが終わってないの…?
爆風で飛ばされたツナは尻餅をついていた。
そこに歩み寄るのは、骸の槍を持った千種。
「さぁ、お喋りはこのぐらいにして終わりにしましょう。」
「ひいいっ!!来たぁぁぁ!!」
待って、おかしい。
千種なのに、喋り口調は骸みたい。
ま、まさか…!
…だとしたら、止めなくちゃ!!
---
------
走り寄って来る骸に、俺は動けないまま。
もう終わりかと思ったその時………
ドサッ、
ヨーヨー使いは急に倒れて、その手にあった剣は別の骸に渡った。
「なぁに、よくある事です。」
剣を拾いながら骸は言う。
「いくら乗っ取って全身を支配したと言っても、肉体が壊れてしまっていては動きませんからねぇ。」
は?
何言ってんの………?
「それって…………怪我で動かない体を無理矢理動かしてるって事………?」
「それで雲雀には憑依しなかったんだな。」
リボーンが付け足した。
「クフフフ、千種はもう少し……行けそうですね。」
よろめきながら、ヨーヨー使いは立ち上がった。
ってゆうか………
骸が無理矢理立ち上がらせたんだ。
「あ……無理矢理動かしたりしたら……怪我が…………!!」
「クフフフ、平気ですよ。」
フラフラになりながら骸は言った。
「僕は痛みを、感じませんからねぇ。」
そう言う体からは、血が滴っていた。
「な、何言ってんの!?仲間の体なんだろ!!?」
俺が怒鳴っても、骸は平然と言う。
「違いますよ、憑依したら僕の体です。壊れようが息絶えようが、僕の勝手だ。」
『違う…!』
突如聞こえた声に、俺も骸も振り返る。
「…随分と早い回復ですね。さすが、といったところでしょうか。」
「檸檬…!」
『骸…もう、やめて。』
ふらつきながら立ち上がった檸檬は、骸に近づいていく。
「檸檬!あ、危ないよ…!」
『大丈夫。この場の人間のリズムは把握してる…』
「なるほど。君は無傷で生き残れる、という算段ですか。」
「ダメだよ檸檬!起きたばっかりでそんな…」
「クフフ、他人の心配をしている暇があるんですか?」
「自分が殺られるという時に……」
「君は面白い男だが、マフィア向きではありませんね。」
獄寺君とビアンキが近付いて来る。
俺の目線は、当然2人の傷口に。
「(あんなに血が…………!)」
これ以上、見ていられなくなった。
「頼む!!やめてくれ!!このままじゃ死んじゃうよ!!」
俺がそう叫ぶと、骸は嬉しそうに笑った。
「思い出しましたよ。君はバーズとの戦いでガールフレンドの為に自分にナイフを突き立てようとしたんでしたね。」
ま、まさか……!
「それでいきましょう。君はその甘さ故、僕に乗っ取られる。いいですか?君の仲間をこれ以上傷つけられたくなければ、逃げずに大人しく契約して下さい。勿論檸檬も含め、ですよ。」
「そ、そんな……!」
俺は戸惑いながら、後ずさりする。
『やめて…これ以上……つぅっ、』
「無駄な体力の消費ですよ、檸檬。マインドコントロールから逃れたとはいえ、今の君は自分の体をひどく重く感じているはずです。一度脳が壊れたのですから。」
「檸檬っ…!」
俺達の方に近づこうとする檸檬が、頭を抱えながら膝を折る。
歩くことも、話すことも、つらそうだった。
『はぁっ……はぁっ…』
「クフフ……前のように身軽に戦うことはできませんねぇ。今の君ならば憑依した僕でも一捻りですよ。さぁ…どうします?ボンゴレ10代目。」
「そ、そんな…」
「やはり迷うのですね。どの道、君のような人間はこの世界では生き残れない。ボンゴレ10代目には不適格です。さぁ、体を明け渡してもらいましょう。」
骸は、剣を持って俺にゆっくり歩み寄る。
このままじゃ、俺だけじゃない。
獄寺君もビアンキも、雲雀さんも檸檬も……皆が、傷だらけのボロボロなのに、更に傷つくことになる…
そんなの嫌だ、だけど、
俺にできることなんて……
「ど、どうしよう………」
俺はリボーンがいる方を向いた。
「リボーン!どうしよう!!」
「俺は何もしてやれねーぞ。自分で何とかしろ。」
突き放すようなリボーンの言葉に、目が霞んで来る。
「いつも助けてくれるじゃないか!!見捨てないでよ、リボーン!!」
すると……
ドカッ、
「ブフッ!」
「情けねぇ声出すな。」
リボーンが俺の顎を蹴り上げた。
「だって、俺どうしたら…………」
「いいか、ツナ。」
俺の胸ぐらを掴んで、リボーンは言った。
「お前は誰よりもボンゴレ10代目なんだ。お前が気持ちを吐き出せば、それがボンゴレの答えだ。」
「お、俺の……気持ち………?」
戸惑う俺に、骸が言う。
「クフフ、家庭教師もサジを投げましたか。彼の気持ちは“逃げ出したい”ですよ。」
………違うんだ。
ホントはね、
こんな所、絶対来たくなかった。
けど……
.『骸……もう、やめて…』
檸檬がぐっと立ち上がり、剣を持った骸の手に触れようとする。
けどその手はかわされ、代わりに別の骸が檸檬の首を絞めた。
『あぐっ…!』
「君は本当に往生際が悪いですね…諦めなさい。僕の計画は揺るがない。君の信じるものの脆弱さを見届けるがいい。」
『そんな、こと…できない……あたしはもう、諦め、られない…!』
そうだ、諦めるわけにはいかないんだ。
骸の事は許せない。
骸が檸檬にした事を、許すワケにはいかない。
檸檬を不安にさせて、
心を壊してマインドコントロールして、
流さなくていい涙をたくさん流させたんだ。
俺がどうしてここに来たかって?
来たくなかったよ。
来たくなかったのに……
---『ツナ、あたしちょっと行って来る。』
その言葉だけを残して行ってしまった君のことが、心配だったんだよ、檸檬。
いつも一人で何とかしてしまおうとする君の事が、何よりも心配だったんだ。
結果的に俺は、間に合わなかったけれど。
---『もう、うんざりなの。あたしには……貴方たちとの絆なんて、いらないから。』
骸が檸檬に何を言ったのかはわからない。
それでも、泣きながら俺達を突き放そうとした檸檬は、きっと、突き放そうとしながら一番傷ついていたんだと思う。
だから………
「骸に…………勝ちたい………………」
ツナの言葉を聞いて、少しだけ目を見開き、檸檬を放す骸。
『けほっ、けほっ…!』
「これは意外ですね。だが続きは君の体を乗っ取った後にゆっくり聞きましょう。」
その目に修羅道のオーラが表れる。
「君の手で仲間を葬った後にね。」
「こんな酷い奴に……負けたくない………」
ここに来たのは、
もう皆が傷付くのは嫌だから。
そして、
もう一度皆の、
檸檬の、
笑顔が見たいから。
「こいつにだけは、勝ちたいんだ!!!」
「終わりです。」
『ツナ…!』
骸の剣が振り降ろされると同時に、俺の隣で何かが光った。
「うわあ!!」
ネバッとした糸を放つ、その光の正体は………
「レオン!!!?」
「ついに羽化したな……」
「羽化!?」
「あの時と同じだ………」
ハットの下で、リボーンの目がキラリと光る。
「ディーノが“跳ね馬”になった時とな。」