黒曜編
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君を手に入れようと思った。
君の視線が僕だけのものになれば、と。
たとえそれが、
君の涙を経なければ叶わなかったとしても。
==================
「生きたまま捕獲は出来なかったが、仕方ねーな。」
俺達の前には、自分に銃を撃ち倒れた骸がいた。
檸檬のマインドコントロールもとけたみたいだし、全部終わったはずなのに、俺には何か嫌な感じが残ってる。
すると、
「ついに……骸を倒したのね。」
「姉貴!」
「良かった!ビアンキの意識が戻った!」
「無理すんなよ。」
フゥ太に刺されて倒れていたビアンキが起き上がった。
嬉しい事なのに、
「肩貸してくれない?」
「(あれ…?)」
変な感じがする。
「しょーがねーなー……きょ、今日だけだからな。」
ビアンキに手を差し伸べる獄寺君に、俺は咄嗟に叫んだ。
「獄寺君!!行っちゃダメだ!」
「え?」
「ん?」
「どうかしたの?ツナも肩を貸して……」
あれ?
何言ってんだ、俺。
ビアンキだよ、
目の前にいるのはビアンキなのに。
「いいっスよ、10代目は。これくらいの怪我、大丈夫っスから。」
「すまないわね、隼人。」
「ほら、手。」
獄寺君が差し伸べた手を、ビアンキが握ろうとしたその時。
俺の嫌な予感が的中したんだ。
ビッ、
ビアンキの手には何故か骸の槍の先端が握られていて、それが獄寺君の頬に傷を付けた。
獄寺君はすぐに一歩引く。
「なっ、何しやがんだ!!」
でもビアンキは、自分でも驚いたように、
「まぁ、私ったら……!!」
って言ったんだ。
やっぱり変だ。
いつものビアンキじゃない。
雰囲気が違う!!
俺が頭を悩ませていると、リボーンが俺の後ろから飛び出して、ビアンキの目の前に立った。
「何やってんだ、ビアンキ。しっかりしろ、刺したのは弟だぞ。」
そう言ってビアンキの鼻をペチッと叩くリボーン。
ビアンキもギュッと目を瞑って、
「私、なんて事を……………したのかしら。」
言い終わるか終わらないかという時に、ビアンキは再び槍を振り降ろした。
リボーンはくるっと後ろに回って避ける。
「こいつは厄介だな。」
シュタッと降り立ったリボーンに、獄寺が聞く。
「まさか……マインドコントロール!?」
「ちげーな。何かに憑かれてるみてーだ。」
「それって呪いスか?」
「そんな事が…」
「だが事実だ。」
きっぱりと言うリボーンに、反論するビアンキ。
「何言ってるの?私よ。」
それを見て、思った。
…やっぱり違う。
ビアンキじゃない。
それに、俺は知ってる…
この、不自然な感じを…
この不自然さは、
寒気のするような雰囲気は……
もしかして、
「………ろくどう……むくろ…?」
自分で口走ってしまった言葉に驚く。
すると、ビアンキはゆるりと口角を上げて。
「クフフ…」
ゆっくりと顔を上げた。
「また会えましたね。」
その右目には、“六”の文字が刻まれていた。
途端に俺達は大騒ぎする。
「で、出たーーー!!」
「祟りだーーー!!」
「そんなバカな事あるワケねーぞ。」
リボーンに完全否定され、俺は骸の死体の方を向く。
「やっぱり死んでる!!」
すると、骸(ビアンキ)はすっと立ち上がって、
「クフフ、まだ僕にはやるべき事がありましてね。地獄の底から舞い戻って来ましたよ。」
って言ったんだ。
やっぱり、
祟りや怨霊なのかー!?
でもそんな、それに死んだ魂が生きてる人間をこんな簡単に操れるもんなのか…!?
あたふたする俺に、獄寺君が言った。
「10代目、ここは俺に!!」
「だけど相手は………!」
反論しようとしたけど、獄寺君は手を変な風に構えて、
「臨、兵、闘、者!!」
………って言い出した。
まさかの魔よけ!!
獄寺君ソレ何処で習ったんだよ!!
効くわけないって俺の予想とは逆に、ビアンキはそれで苦しみ出した。
「うっ…うう……!」
「皆、陣、列!!」
うそーっ!!
効いてんのーーーー!!?
散々苦しんだ挙げ句に、ビアンキはバタッと倒れた。
急に静かになる。
「ど、どうしよう。演技って事も………」
「分かんねーな。」
俺は恐る恐るビアンキに近付いた。
「び、ビアンキ……?」
そしたら、後ろから影が落ちて来て。
「え?」
振り向くと、獄寺君が立っていた。
「俺、やりましょーか?」
いつもの笑顔で……
「獄寺く…………」
いつもの、
…………笑顔??
違うっ!!
「骸!!」
何でかは分からない。
けど、直感したんだ。
笑顔で話しかけてきた獄寺君は、次の瞬間、何の前触れもなく俺に骸の槍を振り降ろして来た。
「わあ!!!」
咄嗟に転がって避ける俺に対して、骸(獄寺君)が言った。
「ほう、まぐれではないようですね。初めてですよ、憑依した僕を一目で見抜いた人間は……。つくづく君は面白い。」
その目にも、“六”の文字があった。
「そんな………ど、どーなってんの~~!!?」
「間違いねーな。」
ビビる俺の隣で、リボーンが言った。
「自殺と見せ掛けて撃ったのは、あの弾だな。」
その言葉に、骸は怪しい笑みを見せた。
リボーンの声が厳かになる。
「憑依弾は禁弾のはずだぞ。何処で手に入れやがった。」
ひょういだん??
首をかしげる俺に対して、骸はまた笑った。
「クフフ、気付きましたか。これが特殊弾による憑依だと。」
「え?特殊弾って……死ぬ気弾や嘆き弾の事?」
「そうだ。憑依弾は、その名の通り他人の肉体にとりついて自在に操る弾だぞ。」
「何だってーー!!?」
リボーンは、その弾がすごく危険だからなくなったはずの物だって言った。
そしたら骸は嬉しそうに言ったんだ。
「マインドコントロールの比ではありませんよ。操るのではなくのっとる、頭のてっぺんから爪先までね。つまりこの体は………」
骸が自分の首に爪で傷を付けた。
そこからは血が流れ出る。
「僕のものだ。」
「や………やめろ!!」
「さぁ、次は君に憑依する番です。ボンゴレ10代目。」
「お、俺!?」
いきなりの言葉に吃驚する。
「やはりお前の目的は……」
「クフフ、目的ではなく手段ですよ。彼を手中に収めてから、僕の復讐劇は始まる。」
「な、何言ってんの~~!?」
ダメダメでいいトコない俺を乗っ取る!!?
思わず後ずさりした俺に、リボーンが言った。
「ヤツの剣に気をつけろ。あの剣で傷つけられると、憑依を許す事になるぞ。」
「そ、そんな!」
当然、俺には骸の剣を避け続ける自信なんて無い。
「よくご存知で。」
獄寺君が剣を投げる。
「わっ!」
そしたら、俺の後ろにいたビアンキがそれを受け取った。
「その通りです。」
そう言いながら、ビアンキは側に倒れていた雲雀さんにも傷を付けた。
「ま、まさか………!!」
雲雀さんの中にまで!?
俺はごくりと唾を飲んだ。
---
------
雲雀君の体に憑依して目を開けると、そこには気を失っている檸檬がいた。
その頬には、涙の跡が残っている。
あぁこれは………
僕が流させた涙か。
君とボンゴレ達を敵対させた罰なのか。
雲雀君の体は怪我が酷く、動きにくかった。
それでも僕は立ち上がった。
「檸檬……」
君を手に入れようと、僕はマインドコントロールをかけた。
強固な絆と信頼を精神の糧としていた檸檬を弱らせて、僕の手中に収めたはずだった。
ボンゴレが来る前に槍で傷はつけていたから、このまま乗っ取ることもできる。
しかし……
どうしても君だけは、君のままで側にいて欲しいと、
それが、どれだけ愚かな願いかも分かっていた。
分かっていても……どうしようもなく。
檸檬のマインドコントロールを完全なものとしてもなお、
僕は檸檬の「本当の望み」を見つけられなかった。
強くなりたいこと、
誰かを信じたいこと、
それでも信じることが怖いということ、
見つけられる感情は多々あったにも関わらず、その根幹には至らなかったように思う。
それを見つけたのは、今まさに僕が憑依しているこの男……
雲雀恭弥だった。
---「いつでも君を呼ぶ。信じなくてもいい。」
言葉を証明する唯一は行動であり、彼は常に檸檬に対して行動で示してきたということなのだろう。
だからこそ檸檬は彼に心を許し、マインドコントロールを破ってまで彼の言葉を受け入れた…。
しかし、今となってはもう、関係ありませんね。
檸檬、君は僕のものになるんですから。
---
-----
雲雀さんが攻撃して来るのかと思ってたら、違った。
すっと立った雲雀さんは、隣で気を失っていた檸檬を抱き上げて、俺がいる方とは逆に歩き出した。
「なっ………骸!!檸檬をどうする気だよ!!?」
俺の問い掛けには答えずに、骸はゆっくりと振り向いた。
「彼女は、マフィアにしておくには勿体ないのでね。」
「なっ…」
骸(雲雀さん)はそのまま奥にあるソファまで檸檬を運び、ゆっくりとそこに寝かせる。
「もうすぐ終わらせますからね。」
そっと檸檬の髪を撫でる骸を見た時、
何となくだけど、分かったんだ。
分かっちゃったんだ。
多分骸は、マフィアのこととか関係なく、単純に………
---『おはようっ!ツナ♪』
初めて檸檬を見た時の、明るい笑顔が一瞬浮かんだ。
「おい、ツナ。」
「えっ!?」
「ボーッとすんな。また獄寺かビアンキに憑依するぞ。」
「そ、そんな……!」
ふと見ると、雲雀さんは檸檬を運び終わって、また倒れていた。
骸の気配が消えてたんだ。
ホッとしたのも束の間。
獄寺君とビアンキが一気に立ち上がった。
「んなっ!」
驚くのはまだ早かった。
バキャン、
窓が割れて入って来たのは、獄寺君が倒したって言ってた2人。
「奴らも、だな。」
「む、骸が4人……!?」
腰が抜けそうになった。
「同時に4人に憑依するなんて、聞いた事ねーぞ。」
流石のリボーンも驚いてる様子。
「それだけでは………ありませんよ。」
言い終わると同時に、獄寺君がダイナマイトを投げた。
俺は頑張って逃げる。
「憑依した奴の技まで使えんのか。」
リボーン!!
悠長に分析してる場合じゃないって!!
そんな事を思っていると、黒曜の2人がリボーンに襲い掛かった。
「クフフ、」
「君も自分の命の心配をした方がいい、アルコバレーノ。」
鋭い爪と、針の出るヨーヨーをサッとかわすリボーン。
その間にも、俺にはダイナマイトが飛んで来る。
「ひいいっ!!」
「こいつは圧倒的にやべーぞ。」
リボーンの絶望的な台詞が聞こえた。
---
-----
檸檬、君が僕の傍で微笑む日が来るならば……
今は涙を流させる。
檸檬の「本当の望み」を言い当てた雲雀君も、これが終われば葬りますから。
君は僕に依存していればいい。
君の涙を拭うのも、
君に微笑みを向けられるのも、
君を抱きしめるのも、
君の心を壊すのも、
僕だけでいいんですから。
そこで気絶したまま、待っていてください。
僕が純粋な世界を作るまで。
君の視線が僕だけのものになれば、と。
たとえそれが、
君の涙を経なければ叶わなかったとしても。
==================
「生きたまま捕獲は出来なかったが、仕方ねーな。」
俺達の前には、自分に銃を撃ち倒れた骸がいた。
檸檬のマインドコントロールもとけたみたいだし、全部終わったはずなのに、俺には何か嫌な感じが残ってる。
すると、
「ついに……骸を倒したのね。」
「姉貴!」
「良かった!ビアンキの意識が戻った!」
「無理すんなよ。」
フゥ太に刺されて倒れていたビアンキが起き上がった。
嬉しい事なのに、
「肩貸してくれない?」
「(あれ…?)」
変な感じがする。
「しょーがねーなー……きょ、今日だけだからな。」
ビアンキに手を差し伸べる獄寺君に、俺は咄嗟に叫んだ。
「獄寺君!!行っちゃダメだ!」
「え?」
「ん?」
「どうかしたの?ツナも肩を貸して……」
あれ?
何言ってんだ、俺。
ビアンキだよ、
目の前にいるのはビアンキなのに。
「いいっスよ、10代目は。これくらいの怪我、大丈夫っスから。」
「すまないわね、隼人。」
「ほら、手。」
獄寺君が差し伸べた手を、ビアンキが握ろうとしたその時。
俺の嫌な予感が的中したんだ。
ビッ、
ビアンキの手には何故か骸の槍の先端が握られていて、それが獄寺君の頬に傷を付けた。
獄寺君はすぐに一歩引く。
「なっ、何しやがんだ!!」
でもビアンキは、自分でも驚いたように、
「まぁ、私ったら……!!」
って言ったんだ。
やっぱり変だ。
いつものビアンキじゃない。
雰囲気が違う!!
俺が頭を悩ませていると、リボーンが俺の後ろから飛び出して、ビアンキの目の前に立った。
「何やってんだ、ビアンキ。しっかりしろ、刺したのは弟だぞ。」
そう言ってビアンキの鼻をペチッと叩くリボーン。
ビアンキもギュッと目を瞑って、
「私、なんて事を……………したのかしら。」
言い終わるか終わらないかという時に、ビアンキは再び槍を振り降ろした。
リボーンはくるっと後ろに回って避ける。
「こいつは厄介だな。」
シュタッと降り立ったリボーンに、獄寺が聞く。
「まさか……マインドコントロール!?」
「ちげーな。何かに憑かれてるみてーだ。」
「それって呪いスか?」
「そんな事が…」
「だが事実だ。」
きっぱりと言うリボーンに、反論するビアンキ。
「何言ってるの?私よ。」
それを見て、思った。
…やっぱり違う。
ビアンキじゃない。
それに、俺は知ってる…
この、不自然な感じを…
この不自然さは、
寒気のするような雰囲気は……
もしかして、
「………ろくどう……むくろ…?」
自分で口走ってしまった言葉に驚く。
すると、ビアンキはゆるりと口角を上げて。
「クフフ…」
ゆっくりと顔を上げた。
「また会えましたね。」
その右目には、“六”の文字が刻まれていた。
途端に俺達は大騒ぎする。
「で、出たーーー!!」
「祟りだーーー!!」
「そんなバカな事あるワケねーぞ。」
リボーンに完全否定され、俺は骸の死体の方を向く。
「やっぱり死んでる!!」
すると、骸(ビアンキ)はすっと立ち上がって、
「クフフ、まだ僕にはやるべき事がありましてね。地獄の底から舞い戻って来ましたよ。」
って言ったんだ。
やっぱり、
祟りや怨霊なのかー!?
でもそんな、それに死んだ魂が生きてる人間をこんな簡単に操れるもんなのか…!?
あたふたする俺に、獄寺君が言った。
「10代目、ここは俺に!!」
「だけど相手は………!」
反論しようとしたけど、獄寺君は手を変な風に構えて、
「臨、兵、闘、者!!」
………って言い出した。
まさかの魔よけ!!
獄寺君ソレ何処で習ったんだよ!!
効くわけないって俺の予想とは逆に、ビアンキはそれで苦しみ出した。
「うっ…うう……!」
「皆、陣、列!!」
うそーっ!!
効いてんのーーーー!!?
散々苦しんだ挙げ句に、ビアンキはバタッと倒れた。
急に静かになる。
「ど、どうしよう。演技って事も………」
「分かんねーな。」
俺は恐る恐るビアンキに近付いた。
「び、ビアンキ……?」
そしたら、後ろから影が落ちて来て。
「え?」
振り向くと、獄寺君が立っていた。
「俺、やりましょーか?」
いつもの笑顔で……
「獄寺く…………」
いつもの、
…………笑顔??
違うっ!!
「骸!!」
何でかは分からない。
けど、直感したんだ。
笑顔で話しかけてきた獄寺君は、次の瞬間、何の前触れもなく俺に骸の槍を振り降ろして来た。
「わあ!!!」
咄嗟に転がって避ける俺に対して、骸(獄寺君)が言った。
「ほう、まぐれではないようですね。初めてですよ、憑依した僕を一目で見抜いた人間は……。つくづく君は面白い。」
その目にも、“六”の文字があった。
「そんな………ど、どーなってんの~~!!?」
「間違いねーな。」
ビビる俺の隣で、リボーンが言った。
「自殺と見せ掛けて撃ったのは、あの弾だな。」
その言葉に、骸は怪しい笑みを見せた。
リボーンの声が厳かになる。
「憑依弾は禁弾のはずだぞ。何処で手に入れやがった。」
ひょういだん??
首をかしげる俺に対して、骸はまた笑った。
「クフフ、気付きましたか。これが特殊弾による憑依だと。」
「え?特殊弾って……死ぬ気弾や嘆き弾の事?」
「そうだ。憑依弾は、その名の通り他人の肉体にとりついて自在に操る弾だぞ。」
「何だってーー!!?」
リボーンは、その弾がすごく危険だからなくなったはずの物だって言った。
そしたら骸は嬉しそうに言ったんだ。
「マインドコントロールの比ではありませんよ。操るのではなくのっとる、頭のてっぺんから爪先までね。つまりこの体は………」
骸が自分の首に爪で傷を付けた。
そこからは血が流れ出る。
「僕のものだ。」
「や………やめろ!!」
「さぁ、次は君に憑依する番です。ボンゴレ10代目。」
「お、俺!?」
いきなりの言葉に吃驚する。
「やはりお前の目的は……」
「クフフ、目的ではなく手段ですよ。彼を手中に収めてから、僕の復讐劇は始まる。」
「な、何言ってんの~~!?」
ダメダメでいいトコない俺を乗っ取る!!?
思わず後ずさりした俺に、リボーンが言った。
「ヤツの剣に気をつけろ。あの剣で傷つけられると、憑依を許す事になるぞ。」
「そ、そんな!」
当然、俺には骸の剣を避け続ける自信なんて無い。
「よくご存知で。」
獄寺君が剣を投げる。
「わっ!」
そしたら、俺の後ろにいたビアンキがそれを受け取った。
「その通りです。」
そう言いながら、ビアンキは側に倒れていた雲雀さんにも傷を付けた。
「ま、まさか………!!」
雲雀さんの中にまで!?
俺はごくりと唾を飲んだ。
---
------
雲雀君の体に憑依して目を開けると、そこには気を失っている檸檬がいた。
その頬には、涙の跡が残っている。
あぁこれは………
僕が流させた涙か。
君とボンゴレ達を敵対させた罰なのか。
雲雀君の体は怪我が酷く、動きにくかった。
それでも僕は立ち上がった。
「檸檬……」
君を手に入れようと、僕はマインドコントロールをかけた。
強固な絆と信頼を精神の糧としていた檸檬を弱らせて、僕の手中に収めたはずだった。
ボンゴレが来る前に槍で傷はつけていたから、このまま乗っ取ることもできる。
しかし……
どうしても君だけは、君のままで側にいて欲しいと、
それが、どれだけ愚かな願いかも分かっていた。
分かっていても……どうしようもなく。
檸檬のマインドコントロールを完全なものとしてもなお、
僕は檸檬の「本当の望み」を見つけられなかった。
強くなりたいこと、
誰かを信じたいこと、
それでも信じることが怖いということ、
見つけられる感情は多々あったにも関わらず、その根幹には至らなかったように思う。
それを見つけたのは、今まさに僕が憑依しているこの男……
雲雀恭弥だった。
---「いつでも君を呼ぶ。信じなくてもいい。」
言葉を証明する唯一は行動であり、彼は常に檸檬に対して行動で示してきたということなのだろう。
だからこそ檸檬は彼に心を許し、マインドコントロールを破ってまで彼の言葉を受け入れた…。
しかし、今となってはもう、関係ありませんね。
檸檬、君は僕のものになるんですから。
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雲雀さんが攻撃して来るのかと思ってたら、違った。
すっと立った雲雀さんは、隣で気を失っていた檸檬を抱き上げて、俺がいる方とは逆に歩き出した。
「なっ………骸!!檸檬をどうする気だよ!!?」
俺の問い掛けには答えずに、骸はゆっくりと振り向いた。
「彼女は、マフィアにしておくには勿体ないのでね。」
「なっ…」
骸(雲雀さん)はそのまま奥にあるソファまで檸檬を運び、ゆっくりとそこに寝かせる。
「もうすぐ終わらせますからね。」
そっと檸檬の髪を撫でる骸を見た時、
何となくだけど、分かったんだ。
分かっちゃったんだ。
多分骸は、マフィアのこととか関係なく、単純に………
---『おはようっ!ツナ♪』
初めて檸檬を見た時の、明るい笑顔が一瞬浮かんだ。
「おい、ツナ。」
「えっ!?」
「ボーッとすんな。また獄寺かビアンキに憑依するぞ。」
「そ、そんな……!」
ふと見ると、雲雀さんは檸檬を運び終わって、また倒れていた。
骸の気配が消えてたんだ。
ホッとしたのも束の間。
獄寺君とビアンキが一気に立ち上がった。
「んなっ!」
驚くのはまだ早かった。
バキャン、
窓が割れて入って来たのは、獄寺君が倒したって言ってた2人。
「奴らも、だな。」
「む、骸が4人……!?」
腰が抜けそうになった。
「同時に4人に憑依するなんて、聞いた事ねーぞ。」
流石のリボーンも驚いてる様子。
「それだけでは………ありませんよ。」
言い終わると同時に、獄寺君がダイナマイトを投げた。
俺は頑張って逃げる。
「憑依した奴の技まで使えんのか。」
リボーン!!
悠長に分析してる場合じゃないって!!
そんな事を思っていると、黒曜の2人がリボーンに襲い掛かった。
「クフフ、」
「君も自分の命の心配をした方がいい、アルコバレーノ。」
鋭い爪と、針の出るヨーヨーをサッとかわすリボーン。
その間にも、俺にはダイナマイトが飛んで来る。
「ひいいっ!!」
「こいつは圧倒的にやべーぞ。」
リボーンの絶望的な台詞が聞こえた。
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檸檬、君が僕の傍で微笑む日が来るならば……
今は涙を流させる。
檸檬の「本当の望み」を言い当てた雲雀君も、これが終われば葬りますから。
君は僕に依存していればいい。
君の涙を拭うのも、
君に微笑みを向けられるのも、
君を抱きしめるのも、
君の心を壊すのも、
僕だけでいいんですから。
そこで気絶したまま、待っていてください。
僕が純粋な世界を作るまで。