黒曜編
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君を、助けに行くよ。
---『さようなら。』
あれが最後だなんて、
絶対に言わせない。
==============
「こいつ、バーズの鳥手なずけてやんの。」
雲雀の肩に止まる鳥を見て、犬が言う。
それを無視して、雲雀は獄寺に言った。
「じゃぁ、この雑魚2匹はいただくよ。」
「好きにしやがれ。」
その会話に反応する犬。
「死に損ないが何寝ぼけてんだ?こいつは俺が殺る。」
「言うと思った。」
素っ気無い返事を返す千種。
「徹底的にやっからさ♪」
牙をセットする犬。
「百獣の王、ライオンチャンネル。」
髪を止めていたピンが飛び、手はまさしくライオンそのものになる。
しかし、雲雀はちっとも動じない。
「ワォ、小犬かい?」
そればかりか、挑発的な言葉を返す。
「うるへー!アヒルめ!!」
罵声と同時に雲雀に詰め寄る犬。雲雀は足下に落ちていたトンファーを蹴り上げ手中に収める。
迫り来る犬に攻撃をするものの、それは軽々と避けられる。
「ひょい♪」
だが、雲雀の方が一枚上手だった。
急に動きを変え、後ろに回った犬にトンファーを叩き付ける。
しかも、それで終わりではない。
倒れそうになる犬を、更にもう1発殴る。
その勢いにより、窓を突き破って飛ばされていく犬。
「犬!」
思わぬ展開に咄嗟に叫ぶ千種。
雲雀は静かに言い放った。
「次は君を………咬み殺す。」
その頃。
「ビアンキ!!」
突然フゥ太に刺され、倒れたビアンキにツナが駆け寄った。
「ビアンキ、しっかりして!!」
振り返ると、まだ三つ又の槍を構えているフゥ太が。
「フゥ太、何やってんだよ!?」
問いかけるツナに、フゥ太は攻撃して来る。
ギリギリで避けたツナは、フゥ太に言う。
「おい……どーしたんだよ!そんな物騒なもんしまえよ!」
だが、フゥ太にはツナの言う通りにする気配は無い。
その姿を見た瞬間、ツナを嫌な予感が貫く。
「(ま、まさか…!)」
「マインドコントロールされてるみてーだな。」
「そ、そんな!目をさませ!フゥ太!!」
「うう……」
ツナの言葉はまるで耳に入らないようで、フゥ太はひたすら槍を振り降ろして来る。
「うわっ!たんま!!」
フゥ太の攻撃から逃げ回るツナを見て、骸は楽しそうに笑っていた。
「クフフフ。」
その腕の中から、檸檬もツナとフゥ太の攻防を見る。
と、不意に目が合ったツナが、檸檬に向かって叫んだ。
「檸檬!ホントにどうしちゃったんだ!?そいつといたら危ないのに…!」
「おやおや、僕はただ解放しただけですよ?」
「な、何言ってんだ!だったらどうして檸檬は…そんな悲しそうにしてるんだよ!!」
『悲しそう…?』
それまで何も言わなかった檸檬が、ツナの言葉を聞いてスッと立ち上がった。
『ふざけないでよ……』
「檸檬…?」
『そーやってまた…あたしに手を差しのべるフリして……もう騙されない、もう…うんざりなのよ!!』
檸檬の訴えに驚愕しながらも、ツナは再び刺そうとするフゥ太の刃を避ける。
そうして逃げ回っているうちに、リボーンにディーノの鞭を渡されたツナ。
「こんなもの渡されて、どーすんだよ!」
「どーするもこーするも、やらねーとお前がやられるぞ。」
「相手はフゥ太だぞ!出来るワケないだろ!?」
ボンゴレ10代目、
やはり君は…
脆いですね。
「クフフフフ、さぁどうします?ボンゴレ10代目。」
僕が話し掛けると、ボンゴレは何か思い付いたようだった。
「(直接骸を狙えば!)」
ボンゴレは、僕に向かって走って来た。その後をフゥ太が追う。
「ほう。」
鞭を構えるボンゴレ。
「やるしかない!」
『骸、』
「大丈夫ですよ。」
分かっているから。
何もダメージが来ない、という事が。
「やあ!!!」
ボンゴレは鞭を振るった。
だが、案の定それは自分に当たり自分に巻き付いて、倒れる始末。
「あいたー!」
「クハハハハ!君にはいつも驚かされる。ほらほら後ろ、危ないですよ?」
僕の助言に、振り向くボンゴレ。
後ろには、後を追っていたフゥ太が絡まっていた。
落とした槍を拾おうと手を伸ばしている。
「わっ、わっ、やめろ!フゥ太!!」
「ううう……!」
---
------
------------
分かったんだ。
フゥ太の瞳が、ランチアさんの瞳と同じだって事が。
ランチアさんは骸に操られて、知らないうちにたくさん人殺しをさせられたって言ってた。
もしかしたら…
フゥ太も……!!!!
---「もう僕、帰れない。」
思い出したんだ。
フゥ太が寂しそうな、哀しそうな顔をしてたって事を。
俺がそう考えているうちに、フゥ太の手に再び槍が握られた。
それを振り降ろして来るフゥ太。
「わっ、わ"ーーー!!!」
それでも、その目は俺に何かを訴えてた。
フゥ太…
「お前は悪くないぞ。」
俺がそう言ったら、フゥ太の動きが止まった。
だって、だってさ、フゥ太は言ったんだ。
「帰れない」って。
自分でそう思ってるだけなんだ。
そんな事ないのに。
「全然お前は悪くないんだ。」
悪いのは骸だよ。
お前をどんな風に痛めつけたのか、分からないけど、
「みんなフゥ太の味方だぞ。安心して帰って来いよ!」
その時、フゥ太の表情が歪んだのが分かった。
「(ほう……マインドコントロールを解く“一番望む事”を言い当てましたか。)」
『(フゥ太くんの方から動きを止めるなんて…)』
フゥ太の目は、涙で滲んでいく。
「………ツナ兄……」
最後に小さく俺を呼んで、フゥ太は目を閉じ倒れた。
その鼻からは、血が溢れ出している。
「フゥ太!?おい!!」
俺がフゥ太に駆け寄ると、骸が言った。
「君が余計な事をするから、彼、クラッシュしちゃったみたいですね。」
「そんな!フゥ太!?」
気を失ったフゥ太の耳からも、血が溢れ出す。
「彼はこの10日間、ほとんど眠っていないようでしたしね。思えば最初から手のかかる子でした。」
骸がつらつらと話す。
「我々はボンゴレ10代目の所在のあたりをつけて日本に来たのですが、特定には至らなかった。そこでフゥ太君を呼んだのですが、“沈黙の掟”を貫き通しだんまりでしてねぇ。更にはランキング能力まで失ってしまった。」
「何だって!!」
青ざめるツナ。
すると、今まで黙っていたリボーンが口を開いた。
「それで仕方なく、以前に作られた並盛の喧嘩ランキングを使い、ツナとファミリーをあぶり出そうとしたんだな。」
「えぇ、その通りです。ですが、その前にボンゴレの方から単独で刺客がやって来た。」
「単独の刺客って……………まさか!!」
「ええ、ここにいる檸檬のことです。しかし彼女は、ボンゴレに利用されていただけでした。ですから僕は…」
「嘘だ!檸檬、どうして言ってくれなかったんだよ…何で一人で先に行っちゃうんだ…もし、話してくれてたら……!」
『話してたら、どうなったの?』
「え…?」
『あたしは、また便利な戦闘員として傍にいたはずだね。』
「ち、違う…檸檬、何言って、」
『帰って来い、だなんて……そんな甘ったれた言葉並べて、またフゥ太くんを飼い慣らすの?あたしは……あたしはもう戻らない……』
「おい檸檬、」
リボーンも呼び掛けるが、檸檬は自分に言い聞かせるように続ける。
『弱くなったのはあたし自身のせい……甘さと温かさに騙された、あたしに隙があった…』
「お前は弱くねぇぞ。誰がそんなこと言ってんだ。」
『前のあたしはチャンピオンだった!!それが失墜したのは、マフィアに関わってからでしょ!!』
そうだ、これでいいんだ。
断ち切れ、あたしを弱くする関係性を、全て。
『言ったでしょ?もう、うんざりなの。あたしには……貴方たちとの絆なんて、いらないから。』
…おかしいな。
何で、こんなに視界がぼやけるの。
あたしは正しい結論に至ったはずなのに。
どうして、ボンゴレ10代目はそんな憐れむような顔をするの。
「(やべーな…檸檬のやつ、心が壊れちまってやがる……)」
「リボーン…檸檬は、マインドコントロールとか…されてない、よな…」
「ああ。今の言葉全部、アイツが自分で発した言葉だ……けど、本心じゃねぇはずだぞ。」
間違った解釈を生むような感覚を植え付けたのは六道骸である…
そう確信はしていても、どう修正すべきか見当もつかない。
戸惑うツナとリボーンを前に、六道骸が高らかに笑い始めた。
「クハハハ!素晴らしいですよボンゴレ10代目、君のお陰で早く済みました。」
「な、何のことだ…?」
ソファから立ち上がった骸は、思いもよらない自分の涙に困惑する檸檬の手を引く。
『骸…?』
「よくできましたね、檸檬。君はこれから…僕のものです。」
『えっ…?』
「六」と書かれた骸の瞳に見つめられ、見つめ返した檸檬は……
直後に、全身の力が抜けたようにその場に倒れこんだ。
「檸檬っ!?」
「クフフフ、礼を言いますよ、ボンゴレ。」
倒れこんだ檸檬を抱きしめるように支えながら、骸は笑う。
「な、一体どーゆーこと…!?」
「フゥ太みてーな非戦闘員のガキはともかく、檸檬ほどの実力者が簡単にマインドコントロールされるワケねぇだろ。」
「おっしゃる通りです。マインドコントロールをかけようにも檸檬には強固な信頼と絆が巣食っていた……よって、それを自ら手放してもらったんです。」
「信じてたものを信じられなくなった檸檬の心は、ズタボロになっちまった。」
「ええ。だからこうして、僕のマインドコントロールが100%機能したんですよ。」
「そ、そんな…!」
「檸檬を操るために精神の弱体化を目論むなんて、随分手がこんでるな。」
「当然ですよ。彼女ほど脆く扱いやすいのは非常に珍しかったのでね。それに……強く、美しい。」
気を失っている檸檬のこめかみにキスを落とす骸。
「……檸檬を放せ。」
「何か、言いましたか?」
「六道骸……お前、人を何だと思ってるんだよ!!」
俺が叫んでそう問うと、骸はまたうっすら笑った。
「おもちゃ………ですかね?」
ムカツク……
頭に血が上る感覚が、初めて分かった。
「ふざけんな!!」
ダメツナな自分に何が出来るか分からない。
だけど、俺は鞭を持って骸に攻め寄った。
「まさか、僕が直接手を下す事になるとはね。」
何を言ったかなんて知らない。
とにかく、ムカついたんだ!
「うおお!!」
その時、骸の右目が動いた事を、リボーンは見逃さなかった。
“六”と書かれていたのが、“四”に変わった。
そして、ツナとすれ違うその瞬間、持っていた棒を振り上げた。
トン、
「え?」
何もなかった事に、一瞬目を見開くツナ。
しかし、次の瞬間。
「いて…」
ツナの頬に傷が出来る。
と、
「いででで!痛いーっ!!」
腕や足の至る所に傷が出来ていく。
その悲鳴を聞いて、骸は静かに振向いた。
「どうか……しましたか?」
その右目には、今までなかったオーラがあった。
「うわあっ……何がどーなってんの?」
痛みにより膝を付くツナに、リボーンが言った。
「すれ違いざまに凄まじい攻撃を浴びせたんだぞ。」
すると骸はフゥ太の元に歩み寄り、落ちていた槍を拾いながら言った。
「流石アルコバレーノ、その通りです。」
槍は、骸が持っていた棒の先端に装着される。
やっと骸の方を向いたツナに、右目のオーラが見えた。
「目から……死ぬ気の炎!?」
「ほう、見えますか?」
骸は、緩い笑みを浮かべながら言った。
「このオーラこそ、第四の道・修羅道で身に付けた格闘能力(スキル)のオーラ。」
「しゅらどう………?スキル………?」
疑問符を浮かべるツナに、骸は説明する。
「六道輪廻という言葉を、ご存知ですか?」
「人は死ぬと生まれ変わって、地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅道・人間道・天界道のいずれかへ行く、というヤツだな。」
リボーンがスラスラ答えた。
「僕の体には前世に六道全ての冥界を回った記憶が刻まれていましてね、6つの冥界から6つの戦闘能力を授かった。」
「何………言ってんだ?」
話が見えないツナに対し、リボーンは深刻そうに言う。
「それが本当なら、おめーはバケモンだな。」
「君に言われたくありませんよ。呪われた赤ん坊、アルコバレーノ。」
リボーンに言い放った骸は、ツナの方に向き直る。
「さぁ、次の能力をお見せしましょう。」
---
-----
-----------
眼鏡かけてたヤツも倒した。
早く、檸檬のトコに行かなくちゃ。
そこに転がってる爆弾男は放っておこうと思ってた。
けど、
「おい。」
急に話し掛けられたから、仕方なく振り向く。
「何?」
「これ、飲め。」
そいつはポケットから白い袋を取り出して、僕に投げた。
「何、コレ。」
「いいから飲め。悪くはならねぇからよ。」
正直、不信感を抱いた。
だって普通そうでしょ?
いきなり袋投げられて、中の薬飲めだなんて。
「前に変な医者に変な病気かけられただろ?それの処方箋だ。」
ふぅん…本当なのかな。
処方箋渡すくらいなら、最初からかけるなって話だけど。
ゴクリ、
飲み込んでも、大して変化は感じられなかった。
そして、今度こそ行こうとすると、
「おい。」
また呼び止められた。
「………今度は何?」
「薬、やったろ?だから、その……俺を上までつれてってくんねーか。」
爆弾男が、僕に頼みごとしてきた。
「交換条件、って事?」
「あぁ…」
そんな体でどうするんだか。
ま、そんなの僕が知った事じゃないしね。
「分かった、いいよ。」
今日だけ、今だけ、
自分にも言い聞かせながら、僕は肩を貸した。
待っててね、檸檬。
もうすぐ行くから。
---『さようなら。』
あれが最後だなんて、
絶対に言わせない。
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「こいつ、バーズの鳥手なずけてやんの。」
雲雀の肩に止まる鳥を見て、犬が言う。
それを無視して、雲雀は獄寺に言った。
「じゃぁ、この雑魚2匹はいただくよ。」
「好きにしやがれ。」
その会話に反応する犬。
「死に損ないが何寝ぼけてんだ?こいつは俺が殺る。」
「言うと思った。」
素っ気無い返事を返す千種。
「徹底的にやっからさ♪」
牙をセットする犬。
「百獣の王、ライオンチャンネル。」
髪を止めていたピンが飛び、手はまさしくライオンそのものになる。
しかし、雲雀はちっとも動じない。
「ワォ、小犬かい?」
そればかりか、挑発的な言葉を返す。
「うるへー!アヒルめ!!」
罵声と同時に雲雀に詰め寄る犬。雲雀は足下に落ちていたトンファーを蹴り上げ手中に収める。
迫り来る犬に攻撃をするものの、それは軽々と避けられる。
「ひょい♪」
だが、雲雀の方が一枚上手だった。
急に動きを変え、後ろに回った犬にトンファーを叩き付ける。
しかも、それで終わりではない。
倒れそうになる犬を、更にもう1発殴る。
その勢いにより、窓を突き破って飛ばされていく犬。
「犬!」
思わぬ展開に咄嗟に叫ぶ千種。
雲雀は静かに言い放った。
「次は君を………咬み殺す。」
その頃。
「ビアンキ!!」
突然フゥ太に刺され、倒れたビアンキにツナが駆け寄った。
「ビアンキ、しっかりして!!」
振り返ると、まだ三つ又の槍を構えているフゥ太が。
「フゥ太、何やってんだよ!?」
問いかけるツナに、フゥ太は攻撃して来る。
ギリギリで避けたツナは、フゥ太に言う。
「おい……どーしたんだよ!そんな物騒なもんしまえよ!」
だが、フゥ太にはツナの言う通りにする気配は無い。
その姿を見た瞬間、ツナを嫌な予感が貫く。
「(ま、まさか…!)」
「マインドコントロールされてるみてーだな。」
「そ、そんな!目をさませ!フゥ太!!」
「うう……」
ツナの言葉はまるで耳に入らないようで、フゥ太はひたすら槍を振り降ろして来る。
「うわっ!たんま!!」
フゥ太の攻撃から逃げ回るツナを見て、骸は楽しそうに笑っていた。
「クフフフ。」
その腕の中から、檸檬もツナとフゥ太の攻防を見る。
と、不意に目が合ったツナが、檸檬に向かって叫んだ。
「檸檬!ホントにどうしちゃったんだ!?そいつといたら危ないのに…!」
「おやおや、僕はただ解放しただけですよ?」
「な、何言ってんだ!だったらどうして檸檬は…そんな悲しそうにしてるんだよ!!」
『悲しそう…?』
それまで何も言わなかった檸檬が、ツナの言葉を聞いてスッと立ち上がった。
『ふざけないでよ……』
「檸檬…?」
『そーやってまた…あたしに手を差しのべるフリして……もう騙されない、もう…うんざりなのよ!!』
檸檬の訴えに驚愕しながらも、ツナは再び刺そうとするフゥ太の刃を避ける。
そうして逃げ回っているうちに、リボーンにディーノの鞭を渡されたツナ。
「こんなもの渡されて、どーすんだよ!」
「どーするもこーするも、やらねーとお前がやられるぞ。」
「相手はフゥ太だぞ!出来るワケないだろ!?」
ボンゴレ10代目、
やはり君は…
脆いですね。
「クフフフフ、さぁどうします?ボンゴレ10代目。」
僕が話し掛けると、ボンゴレは何か思い付いたようだった。
「(直接骸を狙えば!)」
ボンゴレは、僕に向かって走って来た。その後をフゥ太が追う。
「ほう。」
鞭を構えるボンゴレ。
「やるしかない!」
『骸、』
「大丈夫ですよ。」
分かっているから。
何もダメージが来ない、という事が。
「やあ!!!」
ボンゴレは鞭を振るった。
だが、案の定それは自分に当たり自分に巻き付いて、倒れる始末。
「あいたー!」
「クハハハハ!君にはいつも驚かされる。ほらほら後ろ、危ないですよ?」
僕の助言に、振り向くボンゴレ。
後ろには、後を追っていたフゥ太が絡まっていた。
落とした槍を拾おうと手を伸ばしている。
「わっ、わっ、やめろ!フゥ太!!」
「ううう……!」
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分かったんだ。
フゥ太の瞳が、ランチアさんの瞳と同じだって事が。
ランチアさんは骸に操られて、知らないうちにたくさん人殺しをさせられたって言ってた。
もしかしたら…
フゥ太も……!!!!
---「もう僕、帰れない。」
思い出したんだ。
フゥ太が寂しそうな、哀しそうな顔をしてたって事を。
俺がそう考えているうちに、フゥ太の手に再び槍が握られた。
それを振り降ろして来るフゥ太。
「わっ、わ"ーーー!!!」
それでも、その目は俺に何かを訴えてた。
フゥ太…
「お前は悪くないぞ。」
俺がそう言ったら、フゥ太の動きが止まった。
だって、だってさ、フゥ太は言ったんだ。
「帰れない」って。
自分でそう思ってるだけなんだ。
そんな事ないのに。
「全然お前は悪くないんだ。」
悪いのは骸だよ。
お前をどんな風に痛めつけたのか、分からないけど、
「みんなフゥ太の味方だぞ。安心して帰って来いよ!」
その時、フゥ太の表情が歪んだのが分かった。
「(ほう……マインドコントロールを解く“一番望む事”を言い当てましたか。)」
『(フゥ太くんの方から動きを止めるなんて…)』
フゥ太の目は、涙で滲んでいく。
「………ツナ兄……」
最後に小さく俺を呼んで、フゥ太は目を閉じ倒れた。
その鼻からは、血が溢れ出している。
「フゥ太!?おい!!」
俺がフゥ太に駆け寄ると、骸が言った。
「君が余計な事をするから、彼、クラッシュしちゃったみたいですね。」
「そんな!フゥ太!?」
気を失ったフゥ太の耳からも、血が溢れ出す。
「彼はこの10日間、ほとんど眠っていないようでしたしね。思えば最初から手のかかる子でした。」
骸がつらつらと話す。
「我々はボンゴレ10代目の所在のあたりをつけて日本に来たのですが、特定には至らなかった。そこでフゥ太君を呼んだのですが、“沈黙の掟”を貫き通しだんまりでしてねぇ。更にはランキング能力まで失ってしまった。」
「何だって!!」
青ざめるツナ。
すると、今まで黙っていたリボーンが口を開いた。
「それで仕方なく、以前に作られた並盛の喧嘩ランキングを使い、ツナとファミリーをあぶり出そうとしたんだな。」
「えぇ、その通りです。ですが、その前にボンゴレの方から単独で刺客がやって来た。」
「単独の刺客って……………まさか!!」
「ええ、ここにいる檸檬のことです。しかし彼女は、ボンゴレに利用されていただけでした。ですから僕は…」
「嘘だ!檸檬、どうして言ってくれなかったんだよ…何で一人で先に行っちゃうんだ…もし、話してくれてたら……!」
『話してたら、どうなったの?』
「え…?」
『あたしは、また便利な戦闘員として傍にいたはずだね。』
「ち、違う…檸檬、何言って、」
『帰って来い、だなんて……そんな甘ったれた言葉並べて、またフゥ太くんを飼い慣らすの?あたしは……あたしはもう戻らない……』
「おい檸檬、」
リボーンも呼び掛けるが、檸檬は自分に言い聞かせるように続ける。
『弱くなったのはあたし自身のせい……甘さと温かさに騙された、あたしに隙があった…』
「お前は弱くねぇぞ。誰がそんなこと言ってんだ。」
『前のあたしはチャンピオンだった!!それが失墜したのは、マフィアに関わってからでしょ!!』
そうだ、これでいいんだ。
断ち切れ、あたしを弱くする関係性を、全て。
『言ったでしょ?もう、うんざりなの。あたしには……貴方たちとの絆なんて、いらないから。』
…おかしいな。
何で、こんなに視界がぼやけるの。
あたしは正しい結論に至ったはずなのに。
どうして、ボンゴレ10代目はそんな憐れむような顔をするの。
「(やべーな…檸檬のやつ、心が壊れちまってやがる……)」
「リボーン…檸檬は、マインドコントロールとか…されてない、よな…」
「ああ。今の言葉全部、アイツが自分で発した言葉だ……けど、本心じゃねぇはずだぞ。」
間違った解釈を生むような感覚を植え付けたのは六道骸である…
そう確信はしていても、どう修正すべきか見当もつかない。
戸惑うツナとリボーンを前に、六道骸が高らかに笑い始めた。
「クハハハ!素晴らしいですよボンゴレ10代目、君のお陰で早く済みました。」
「な、何のことだ…?」
ソファから立ち上がった骸は、思いもよらない自分の涙に困惑する檸檬の手を引く。
『骸…?』
「よくできましたね、檸檬。君はこれから…僕のものです。」
『えっ…?』
「六」と書かれた骸の瞳に見つめられ、見つめ返した檸檬は……
直後に、全身の力が抜けたようにその場に倒れこんだ。
「檸檬っ!?」
「クフフフ、礼を言いますよ、ボンゴレ。」
倒れこんだ檸檬を抱きしめるように支えながら、骸は笑う。
「な、一体どーゆーこと…!?」
「フゥ太みてーな非戦闘員のガキはともかく、檸檬ほどの実力者が簡単にマインドコントロールされるワケねぇだろ。」
「おっしゃる通りです。マインドコントロールをかけようにも檸檬には強固な信頼と絆が巣食っていた……よって、それを自ら手放してもらったんです。」
「信じてたものを信じられなくなった檸檬の心は、ズタボロになっちまった。」
「ええ。だからこうして、僕のマインドコントロールが100%機能したんですよ。」
「そ、そんな…!」
「檸檬を操るために精神の弱体化を目論むなんて、随分手がこんでるな。」
「当然ですよ。彼女ほど脆く扱いやすいのは非常に珍しかったのでね。それに……強く、美しい。」
気を失っている檸檬のこめかみにキスを落とす骸。
「……檸檬を放せ。」
「何か、言いましたか?」
「六道骸……お前、人を何だと思ってるんだよ!!」
俺が叫んでそう問うと、骸はまたうっすら笑った。
「おもちゃ………ですかね?」
ムカツク……
頭に血が上る感覚が、初めて分かった。
「ふざけんな!!」
ダメツナな自分に何が出来るか分からない。
だけど、俺は鞭を持って骸に攻め寄った。
「まさか、僕が直接手を下す事になるとはね。」
何を言ったかなんて知らない。
とにかく、ムカついたんだ!
「うおお!!」
その時、骸の右目が動いた事を、リボーンは見逃さなかった。
“六”と書かれていたのが、“四”に変わった。
そして、ツナとすれ違うその瞬間、持っていた棒を振り上げた。
トン、
「え?」
何もなかった事に、一瞬目を見開くツナ。
しかし、次の瞬間。
「いて…」
ツナの頬に傷が出来る。
と、
「いででで!痛いーっ!!」
腕や足の至る所に傷が出来ていく。
その悲鳴を聞いて、骸は静かに振向いた。
「どうか……しましたか?」
その右目には、今までなかったオーラがあった。
「うわあっ……何がどーなってんの?」
痛みにより膝を付くツナに、リボーンが言った。
「すれ違いざまに凄まじい攻撃を浴びせたんだぞ。」
すると骸はフゥ太の元に歩み寄り、落ちていた槍を拾いながら言った。
「流石アルコバレーノ、その通りです。」
槍は、骸が持っていた棒の先端に装着される。
やっと骸の方を向いたツナに、右目のオーラが見えた。
「目から……死ぬ気の炎!?」
「ほう、見えますか?」
骸は、緩い笑みを浮かべながら言った。
「このオーラこそ、第四の道・修羅道で身に付けた格闘能力(スキル)のオーラ。」
「しゅらどう………?スキル………?」
疑問符を浮かべるツナに、骸は説明する。
「六道輪廻という言葉を、ご存知ですか?」
「人は死ぬと生まれ変わって、地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅道・人間道・天界道のいずれかへ行く、というヤツだな。」
リボーンがスラスラ答えた。
「僕の体には前世に六道全ての冥界を回った記憶が刻まれていましてね、6つの冥界から6つの戦闘能力を授かった。」
「何………言ってんだ?」
話が見えないツナに対し、リボーンは深刻そうに言う。
「それが本当なら、おめーはバケモンだな。」
「君に言われたくありませんよ。呪われた赤ん坊、アルコバレーノ。」
リボーンに言い放った骸は、ツナの方に向き直る。
「さぁ、次の能力をお見せしましょう。」
---
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-----------
眼鏡かけてたヤツも倒した。
早く、檸檬のトコに行かなくちゃ。
そこに転がってる爆弾男は放っておこうと思ってた。
けど、
「おい。」
急に話し掛けられたから、仕方なく振り向く。
「何?」
「これ、飲め。」
そいつはポケットから白い袋を取り出して、僕に投げた。
「何、コレ。」
「いいから飲め。悪くはならねぇからよ。」
正直、不信感を抱いた。
だって普通そうでしょ?
いきなり袋投げられて、中の薬飲めだなんて。
「前に変な医者に変な病気かけられただろ?それの処方箋だ。」
ふぅん…本当なのかな。
処方箋渡すくらいなら、最初からかけるなって話だけど。
ゴクリ、
飲み込んでも、大して変化は感じられなかった。
そして、今度こそ行こうとすると、
「おい。」
また呼び止められた。
「………今度は何?」
「薬、やったろ?だから、その……俺を上までつれてってくんねーか。」
爆弾男が、僕に頼みごとしてきた。
「交換条件、って事?」
「あぁ…」
そんな体でどうするんだか。
ま、そんなの僕が知った事じゃないしね。
「分かった、いいよ。」
今日だけ、今だけ、
自分にも言い聞かせながら、僕は肩を貸した。
待っててね、檸檬。
もうすぐ行くから。