黒曜編
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忘れるんだ。
捨てるんだ。
あたしにはもう、何も信じることができない。
=================
「全力で行くぞ。」
瓦礫の中から戻って来たランチアが、ツナに言った。
そして、剛球を上に放り投げる。
「玉遊びなど余技に過ぎん!俺が真に得意としているのは…」
素早くツナに詰め寄り、
「肉弾戦!!」
「うがっ!」
腹部にエルボーをきめる。
その攻撃を見て、リボーンが呟く。
「ハッタリじゃねーぞ。」
飛ばされたツナに、
「まだだぞ。」
と更に攻撃を加えるランチア。
防御する事も出来ないまま、ツナはサンドバック状態になる。
「まだだ。」
ランチアはツナの頭を地面に叩き付けた。
「ツナ!」
ビアンキが叫ぶ。
「フィニッシュだ。」
攻撃をやめ、目を閉じるランチア。同時に、先程投げられた剛球が、ツナの真上に落ちて来た。
避けようとしても、ダメージのせいで体が動かない。
ドガァッ…
ランチアは、ビアンキとリボーンの方に向き直る。
「貴様らの希望はついえた。次は……誰だ?」
ビアンキがごくりと唾を飲んだその時、
ガラガラ…ドスン、
「何!!!?」
剛球が動く音がして、
振り返った先には、
ぼろぼろになったツナが。
「バカな…こいつは化け物か?」
ランチアの頬を冷や汗が伝う。
俯いたツナの口からは、誰も予想していなかった言葉が漏れた。
「あんたは………そんなに悪い人じゃない。」
「「!?」」
ランチアとビアンキが驚く中、リボーンだけは満足そうな笑みを浮かべていた。
「ほぅ、やりますね。ボンゴレ10代目。」
「骸様、アレは……。」
千種が骸を見ると、骸は仕方なさそうにため息を漏らした。
「そうですね、もしもの時はお願いします。千種。」
「…分かりました。」
千種はその場を去った。
『千種…?』
「心配いりませんよ、檸檬。」
骸の笑みを見て、分かってしまった。
千種は戦いに行くのではなく……
「僕を軽蔑しますか?」
『ううん、特には。』
……そうだ。
こんな感覚だった。
人の不幸を望むわけでもなく、ただ、自分には関係のないことだと諦めて、目を瞑る。
あの人は悪くないのに、あたしは、見捨てる。
ついさっき一人になって怯えてたあたしを助けてくれたのに……
あたしはあの人に、手を差しのべない。
『非情なのは、あたしの方みたい。』
「檸檬に負い目はありませんよ。」
骸がそう言い、檸檬は『そうかな…』と哀しく微笑する。
しかし次の瞬間、ツナが発した一言によって檸檬は大きく動揺した。
「そんな弱い心では、死ぬ気の俺は倒せない。」
「檸檬……?」
一歩後退った檸檬に、骸が呼びかける。
が、それすらも聞こえていないような様子で檸檬はツナから目を逸らせないまま。
『……く、ない…』
「檸檬、」
『もう、弱くなんかないっ……!』
ツナの言葉は、心の奥を突き刺すようで。
隠し続けている感情に、明かりを当てるようで。
『ごめん骸、あたしちょっと、向こうにいるね…』
「…分かりました。」
逃げて隠れることしかできないあたしは、まだ、一人になれないほど弱いんだろうか。
骸に気付かされたあの時、捨てた。
仲間なんて、信頼なんて、全部ウソだから。
利用される身から脱却するって、
あたしはまた一人で強くなるんだって、
そう、決めたんだ。
『(なのに……どうして、手が震えるの…)』
---
------
檸檬が葛藤している間に、ツナとランチアの決着はついていた。
「完敗だ。お前を六道骸が警戒するのも頷ける。」
「な、何言ってるんです!?だって六道骸って、貴方の事でしょ?」
「俺は影武者だ。」
意外な事実に、ツナ達は驚きを隠せない。
ランチアは自分の過去を話した。
あるファミリーに拾われた事。
六道骸の世話をしていた事。
ファミリーの残殺事件が起き、その犯人が自分であった事。
それから、六道骸の影となって数々の殺人をしてきた事。
「何て奴だ六道骸……人間のする事じゃない。」
「ぶっ倒しましょう!10代目!!」
副作用の発作が引いた獄寺が、ツナに言った。
ツナが心配する横で、ビアンキが胸を撫で下ろす。
「いいか、よく聞けボンゴレ………」
ランチアが口を開いた。
「骸の、本当の目的は………………どけっ!!」
次の瞬間、ヘッジホッグの針がランチアを襲った。
「一撃離脱か……目的は口封じだな。」
「そ、そんな……!」
ツナはランチアに駆け寄る。
「散々な人生だったぜ…。」
「あ、貴方の本当の名前は!?」
ツナの問い掛けに、少し戸惑いつつ答える。
「俺は………ランチア。」
「し、しっかりして下さい!ランチアさん!!」
ツナがそう言うと、ランチアは少しだけ笑みを浮かべた。
「その名で呼ばれると………思い出すぜ……俺の…昔の……ファミリー……。」
その目には、涙が溜まっていた。
「これで…皆の元に……行けるな……。」
生温い雫を頬に流しながら、彼は目を閉じた。
「そんなー!!ランチアさーーん!!!」
「さんざん利用しておいて不様になった途端……クソッ!これがあいつらのやり方かよっ!!」
「人を何だと思ってるの!?六道骸…!」
ツナは黙って立ち上がった。
「やっぱりアイツ、ムカツクよ。行こう、骸の所へ。」
「だが、最後の切り札は使っちまったぞ。」
「分かってる………だけど……六道骸だけは何とかしないと!!」
ツナの目に、出発前の迷いはなかった。
その拳は、ぎゅっと握られていた。
「山本は無理だな。」
「安全な場所に移しましょう。」
剛球の攻撃を受けて気を失った山本を、皆で運んだ。
「ごめんね、山本。すぐ戻って来るから……」
「ったく、これからって時によぉ。」
すると……
「バーズヤラレタ!バーズヤラレタ!」
さっきまで静かだったバーズの鳥が、飛び立った。
それは、真直ぐある建物に向かっていく。
「あの建物に!!」
「つー事は…」
「あそこに六道骸が…」
「いよいよだな。」
4人が見据える先には、一つの大きな建物が。
ツナ達からは見えないが、その最上階の窓からは、骸が彼らをじっと見つめていた。
---
------
-----------
アメリカで教わったことを思い出して、
父親に叩き込まれた教訓を反芻した。
『ならば強くなれ……』
守りたいものを守るために、強く。
自分の命だけは、守らなくちゃって思った。
そのためには、何でもした。
裏社会で行われるストリートファイトは、フェアを貫く輩の方が少なかった。
鉄パイプを持ち込まれたり、刃物や飛び道具だって、
あたしは身一つで対処しなければならなかった。
ルールは、有って無いようなものだった。
みんな、それだけ必死だったから。
全員が、自分の命と財産を賭けて戦っていたから。
『(…そうだった、)』
あたしに守れるものは、所詮、この手の中に収まるものだけ。
それ以上の世界を、知りすぎたんだね。
美しくて、
温かくて、
優しい世界だった。
たとえ、ウソで塗り固められた世界だったとしても、
大好きだった。
---「今日からボンゴレのみんなが、檸檬の家族だ。」
そんなステキな世界が、あたしに微笑んでくれるハズがなかったんだ。
何で、気付かなかったんだろう。
最初から、信じていい言葉なんて……
1つもなかったんだ。
関わってはいけない人達に関わったせいで、
あたしの強さは脆くなった。
楽しかったけど、
それはあたしをボンゴレに繋ぎ止めておくための虚構。
嬉しかったけど、
それはあたしの心を手懐けてくためのエサ。
忘れて、捨てて、生きろ。
昔のあたしに、戻るために。
「檸檬、」
『骸…どうして、』
ツナの戦いが終わったんだろうか。
骸は、あたしの横に腰かける。
「無理をしていたのではないかと思いましてね。」
『……変なの。骸って、よくわかんない。』
「おや、僕は明言したはずですよ、同情だと。」
『でも…優しすぎる。』
今のあたしには少し沁みるんだよ、って苦笑すれば、骸はあたしの頬に手を添えて。
「涙を拭う、とも言いましたから。」
『骸……』
「理由と経緯はどうであれ、檸檬を孤立させたのは僕です。不安定な君を、放ってはおけませんよ。」
ああ、ダメだ。
あたしはまだ、弱くて脆い。
一時的だと分かっているのに、骸の言葉は薬みたい。
甘えないように、必死に目を逸らして、全然別の話題をふった。
『……骸は、どこに行くの?マフィアに復讐し終わったら、その後は…』
「さぁ、特に予定はないですねぇ。檸檬はどうするんです?君を縛るマフィアの鎖を僕が断った後は。」
『…決まってない。もっかい賞金稼ぎして、どこか遠くに行って、それで…』
「では、僕は君を迎えに行きましょう。」
『えっ…?』
思わず骸の方を見る。
彼は優しく微笑んで、今度はあたしの頭を撫でた。
「檸檬がきちんと一人で強くなったか、確かめに。どうです?」
『な、何で、そんな……』
「個人的にですが、もう一度檸檬に会えたら、と思いましてね。」
『…………ズルい。』
「そうですか?」
あたしは一人で生きるって決めたのに、
骸の提案が、再会の約束が、生き残ってくための希望になるなんて。
信じていい言葉なんてないってこと、分かってる。
でも、気付かせてくれた骸に、全てが元に戻った後で、お礼が言えるなら。
『うん…ズルいよ。だけど……また会えたら、嬉しい。』
この返答は、あたしの中に弱さが残ってる証拠だと思う。
それでも、今だけは……
「では、再会を約束しておきましょうか。」
そっと、小指を絡めた。
捨てるんだ。
あたしにはもう、何も信じることができない。
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「全力で行くぞ。」
瓦礫の中から戻って来たランチアが、ツナに言った。
そして、剛球を上に放り投げる。
「玉遊びなど余技に過ぎん!俺が真に得意としているのは…」
素早くツナに詰め寄り、
「肉弾戦!!」
「うがっ!」
腹部にエルボーをきめる。
その攻撃を見て、リボーンが呟く。
「ハッタリじゃねーぞ。」
飛ばされたツナに、
「まだだぞ。」
と更に攻撃を加えるランチア。
防御する事も出来ないまま、ツナはサンドバック状態になる。
「まだだ。」
ランチアはツナの頭を地面に叩き付けた。
「ツナ!」
ビアンキが叫ぶ。
「フィニッシュだ。」
攻撃をやめ、目を閉じるランチア。同時に、先程投げられた剛球が、ツナの真上に落ちて来た。
避けようとしても、ダメージのせいで体が動かない。
ドガァッ…
ランチアは、ビアンキとリボーンの方に向き直る。
「貴様らの希望はついえた。次は……誰だ?」
ビアンキがごくりと唾を飲んだその時、
ガラガラ…ドスン、
「何!!!?」
剛球が動く音がして、
振り返った先には、
ぼろぼろになったツナが。
「バカな…こいつは化け物か?」
ランチアの頬を冷や汗が伝う。
俯いたツナの口からは、誰も予想していなかった言葉が漏れた。
「あんたは………そんなに悪い人じゃない。」
「「!?」」
ランチアとビアンキが驚く中、リボーンだけは満足そうな笑みを浮かべていた。
「ほぅ、やりますね。ボンゴレ10代目。」
「骸様、アレは……。」
千種が骸を見ると、骸は仕方なさそうにため息を漏らした。
「そうですね、もしもの時はお願いします。千種。」
「…分かりました。」
千種はその場を去った。
『千種…?』
「心配いりませんよ、檸檬。」
骸の笑みを見て、分かってしまった。
千種は戦いに行くのではなく……
「僕を軽蔑しますか?」
『ううん、特には。』
……そうだ。
こんな感覚だった。
人の不幸を望むわけでもなく、ただ、自分には関係のないことだと諦めて、目を瞑る。
あの人は悪くないのに、あたしは、見捨てる。
ついさっき一人になって怯えてたあたしを助けてくれたのに……
あたしはあの人に、手を差しのべない。
『非情なのは、あたしの方みたい。』
「檸檬に負い目はありませんよ。」
骸がそう言い、檸檬は『そうかな…』と哀しく微笑する。
しかし次の瞬間、ツナが発した一言によって檸檬は大きく動揺した。
「そんな弱い心では、死ぬ気の俺は倒せない。」
「檸檬……?」
一歩後退った檸檬に、骸が呼びかける。
が、それすらも聞こえていないような様子で檸檬はツナから目を逸らせないまま。
『……く、ない…』
「檸檬、」
『もう、弱くなんかないっ……!』
ツナの言葉は、心の奥を突き刺すようで。
隠し続けている感情に、明かりを当てるようで。
『ごめん骸、あたしちょっと、向こうにいるね…』
「…分かりました。」
逃げて隠れることしかできないあたしは、まだ、一人になれないほど弱いんだろうか。
骸に気付かされたあの時、捨てた。
仲間なんて、信頼なんて、全部ウソだから。
利用される身から脱却するって、
あたしはまた一人で強くなるんだって、
そう、決めたんだ。
『(なのに……どうして、手が震えるの…)』
---
------
檸檬が葛藤している間に、ツナとランチアの決着はついていた。
「完敗だ。お前を六道骸が警戒するのも頷ける。」
「な、何言ってるんです!?だって六道骸って、貴方の事でしょ?」
「俺は影武者だ。」
意外な事実に、ツナ達は驚きを隠せない。
ランチアは自分の過去を話した。
あるファミリーに拾われた事。
六道骸の世話をしていた事。
ファミリーの残殺事件が起き、その犯人が自分であった事。
それから、六道骸の影となって数々の殺人をしてきた事。
「何て奴だ六道骸……人間のする事じゃない。」
「ぶっ倒しましょう!10代目!!」
副作用の発作が引いた獄寺が、ツナに言った。
ツナが心配する横で、ビアンキが胸を撫で下ろす。
「いいか、よく聞けボンゴレ………」
ランチアが口を開いた。
「骸の、本当の目的は………………どけっ!!」
次の瞬間、ヘッジホッグの針がランチアを襲った。
「一撃離脱か……目的は口封じだな。」
「そ、そんな……!」
ツナはランチアに駆け寄る。
「散々な人生だったぜ…。」
「あ、貴方の本当の名前は!?」
ツナの問い掛けに、少し戸惑いつつ答える。
「俺は………ランチア。」
「し、しっかりして下さい!ランチアさん!!」
ツナがそう言うと、ランチアは少しだけ笑みを浮かべた。
「その名で呼ばれると………思い出すぜ……俺の…昔の……ファミリー……。」
その目には、涙が溜まっていた。
「これで…皆の元に……行けるな……。」
生温い雫を頬に流しながら、彼は目を閉じた。
「そんなー!!ランチアさーーん!!!」
「さんざん利用しておいて不様になった途端……クソッ!これがあいつらのやり方かよっ!!」
「人を何だと思ってるの!?六道骸…!」
ツナは黙って立ち上がった。
「やっぱりアイツ、ムカツクよ。行こう、骸の所へ。」
「だが、最後の切り札は使っちまったぞ。」
「分かってる………だけど……六道骸だけは何とかしないと!!」
ツナの目に、出発前の迷いはなかった。
その拳は、ぎゅっと握られていた。
「山本は無理だな。」
「安全な場所に移しましょう。」
剛球の攻撃を受けて気を失った山本を、皆で運んだ。
「ごめんね、山本。すぐ戻って来るから……」
「ったく、これからって時によぉ。」
すると……
「バーズヤラレタ!バーズヤラレタ!」
さっきまで静かだったバーズの鳥が、飛び立った。
それは、真直ぐある建物に向かっていく。
「あの建物に!!」
「つー事は…」
「あそこに六道骸が…」
「いよいよだな。」
4人が見据える先には、一つの大きな建物が。
ツナ達からは見えないが、その最上階の窓からは、骸が彼らをじっと見つめていた。
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アメリカで教わったことを思い出して、
父親に叩き込まれた教訓を反芻した。
『ならば強くなれ……』
守りたいものを守るために、強く。
自分の命だけは、守らなくちゃって思った。
そのためには、何でもした。
裏社会で行われるストリートファイトは、フェアを貫く輩の方が少なかった。
鉄パイプを持ち込まれたり、刃物や飛び道具だって、
あたしは身一つで対処しなければならなかった。
ルールは、有って無いようなものだった。
みんな、それだけ必死だったから。
全員が、自分の命と財産を賭けて戦っていたから。
『(…そうだった、)』
あたしに守れるものは、所詮、この手の中に収まるものだけ。
それ以上の世界を、知りすぎたんだね。
美しくて、
温かくて、
優しい世界だった。
たとえ、ウソで塗り固められた世界だったとしても、
大好きだった。
---「今日からボンゴレのみんなが、檸檬の家族だ。」
そんなステキな世界が、あたしに微笑んでくれるハズがなかったんだ。
何で、気付かなかったんだろう。
最初から、信じていい言葉なんて……
1つもなかったんだ。
関わってはいけない人達に関わったせいで、
あたしの強さは脆くなった。
楽しかったけど、
それはあたしをボンゴレに繋ぎ止めておくための虚構。
嬉しかったけど、
それはあたしの心を手懐けてくためのエサ。
忘れて、捨てて、生きろ。
昔のあたしに、戻るために。
「檸檬、」
『骸…どうして、』
ツナの戦いが終わったんだろうか。
骸は、あたしの横に腰かける。
「無理をしていたのではないかと思いましてね。」
『……変なの。骸って、よくわかんない。』
「おや、僕は明言したはずですよ、同情だと。」
『でも…優しすぎる。』
今のあたしには少し沁みるんだよ、って苦笑すれば、骸はあたしの頬に手を添えて。
「涙を拭う、とも言いましたから。」
『骸……』
「理由と経緯はどうであれ、檸檬を孤立させたのは僕です。不安定な君を、放ってはおけませんよ。」
ああ、ダメだ。
あたしはまだ、弱くて脆い。
一時的だと分かっているのに、骸の言葉は薬みたい。
甘えないように、必死に目を逸らして、全然別の話題をふった。
『……骸は、どこに行くの?マフィアに復讐し終わったら、その後は…』
「さぁ、特に予定はないですねぇ。檸檬はどうするんです?君を縛るマフィアの鎖を僕が断った後は。」
『…決まってない。もっかい賞金稼ぎして、どこか遠くに行って、それで…』
「では、僕は君を迎えに行きましょう。」
『えっ…?』
思わず骸の方を見る。
彼は優しく微笑んで、今度はあたしの頭を撫でた。
「檸檬がきちんと一人で強くなったか、確かめに。どうです?」
『な、何で、そんな……』
「個人的にですが、もう一度檸檬に会えたら、と思いましてね。」
『…………ズルい。』
「そうですか?」
あたしは一人で生きるって決めたのに、
骸の提案が、再会の約束が、生き残ってくための希望になるなんて。
信じていい言葉なんてないってこと、分かってる。
でも、気付かせてくれた骸に、全てが元に戻った後で、お礼が言えるなら。
『うん…ズルいよ。だけど……また会えたら、嬉しい。』
この返答は、あたしの中に弱さが残ってる証拠だと思う。
それでも、今だけは……
「では、再会を約束しておきましょうか。」
そっと、小指を絡めた。