黒曜編
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「フゥ太だけでなく雲雀さんも掴まってたなんて…。」
森の中を走り回りながら、2人を心配するツナ。
そして、ふと思う。
「(黒曜生の人質だった人、変わってたな…。)」
同じ頃、バットを盾にして無事だった山本が、何とか起き上がる。
獄寺は発作で立てないまま、ビアンキはその側に付いている。
「抵抗するとは愚かな。無駄な足掻きは惨死を招くぞ。」
ランチアは剛球を再び放り投げ、
「千蛇烈覇!!」
山本に向けて放った。
「見切ってやるさ……こいつでな!」
山本はバットを地面に擦り付け、砂を巻き上げた。
すると、向かって来る剛球の周りに飛んだ砂が、綺麗に渦を捲いたのだ。
「剛球の周りに…!!」
「気流だわ!」
全てを吹き飛ばしそうなその風に、山本は危機感を覚える。
「やべぇっ!ぐおっ!」
逃げようとした山本の足を風や砂が捉えて、転ばせる。
どだっ、
「ふー、転ばなきゃ危なかったぜ。剛球の周りに、風が起きてやがる。」
「剛球の表面に彫られた蛇に秘密があるな。」
「理解したとて、攻略にはならぬ。………暴蛇烈覇!!」
再び剛球が放たれた。
「基本に忠実に行くぜ。(確実に避けて、投げた直後の隙をつく!)」
「……無駄だ。」
その言葉と同時に、剛球の回転が激しくなった。
「回転!!ぐっ、うああ!!」
山本の体は風により浮き上がり、その腹部に剛球がヒットした。
「「山本ー!!」」
獄寺とビアンキの叫びも虚しく、山本は木に叩き付けられる。
「言ったはずだ。希望は捨てろ、と。約束通り惨死をくれてやる。」
ランチアは剛球を引きずり山本の前に立つ。
直後に獄寺の発作が酷くなり、動けなくなる。
「させないわ。」
ビアンキが山本とランチアの間に立った。手にはポイズンクッキングを持って。
「俺はまだ三割の力も出していない。貴様に万に一つの勝機もない。諦めろ。」
その鋭い言葉と目つきに、ビアンキの頬に冷や汗が流れた。
「確かここら辺だったような……発見!」
森で迷っていたツナは、やっと皆の姿を見付けた。
しかし、すぐにその姿が敵のモノだと判明する。
「あれって………写真で見た六道骸だ~~!!」
右頬の傷が全てを物語っている。
途端にツナは恐怖を感じる。
しかし…
「獄寺君!!山本!!ビアンキが、山本を庇って…!!」
その視界に入って来るものに驚き、その光景を作り上げた六道骸に怒りを覚えた。
「(あいつ…)コラァ!!!何やってんだーーー!!!」
思わず叫んだツナ。
ランチアとビアンキは、同時にツナの方を向く。
「あ"。(何やってんだ俺!!何でランボ叱るみたいにナチュラルに六道骸叱ってんのー!!?)」
ランチアは鋭い目でツナを睨みながら言う。
「降りて来い、ボンゴレ。」
「ひっ!(どーしよー!!)」
「女を殺して待つ。」
非情にも、ビアンキに向けて剛球が放たれた。
「ビアンキ!」
「死ぬ気になるのは、今しかねーぞ。」
リボーンが咄嗟に銃を取る。
「暴れて来い、ラスト1発だ。」
ズガン、
ビアンキに迫る剛球。手に持っていたポイズンクッキングは一瞬にして吹き飛んでいき、無防備にさせる。
ゴォォォォ……
あまりの恐怖に、目を瞑る事も出来ない。
今、剛球が当たろうとしたその時、
ガッ、
逞しいとは言えない手が、剛球を捕らえた。
ズザザザッ、
引きずられるような音。
物凄い勢いがあったはずの剛球は、その動きを止めていた。
そして、ビアンキと剛球との僅かな隙間に、小さな人陰が一つ。
「ツナ……!」
ビアンキがその名を呼ぶ。
ランチアの方は、少しだけ目を見開く。
「(暴蛇烈覇を……止めただと?)」
荒い息遣いの後に聞こえて来るのは、聞き慣れた言葉。
「復!!」
その額に炎を宿して。
「活!!!!」
その気迫で服が破かれて。
「六道骸……死ぬ気でお前を倒す!!」
死ぬ気弾を撃たれたツナが、骸の前に立ちはだかっていた。
銃をしまって、リボーンは言った。
「最後の切り札だぞ。しっかり骸と決着を付けて来い。」
その様子を見ていた骸、千種、そして檸檬。
「剛球を止めるなんて…」
『…ツナ。』
窓際で眺めている千種と檸檬。
椅子に座って、盗聴器で音声を聞いている骸。
「凄いのは彼ではありませんね。」
「あの赤ん坊、アルコバレーノが早撃ちで放ったのは恐らく特殊弾…」
「ええ。しかし最後の1発だったとは、まんまと術中にはまってくれましたね。」
骸はイヤホンを外した。
「これでまた一歩、ボンゴレ10代目の略奪に近付きましたよ。」
『…どういう事?』
「檸檬には、直接関係のないことです。いえ、直接関係がなくなる…ですかね。」
『そっか…そうだね。』
「君はボンゴレに利用された身。何なら僕が、君の復讐も兼ねて彼らに制裁を加えましょう。」
クフフ…と笑う骸に、檸檬は何も返さなかった。
その視線の先には、剛球に真っ向から挑んでいくツナ。
「(まだ、捨てきれていないようですね…。)」
檸檬を手にいれるためには、その愛着を根こそぎ取り払わなければならない。
なぜなら、これはほんの序章に過ぎないのだから。
これは僕らの長きに渡る復讐だ。
僕らを闇へ葬ったマフィアへの、
そして、
この世界への……。
『骸、あたしは……どうやったら克服できるんだろ…』
「檸檬が一番強かった頃のことを、思い出してみてはいかがですか?」
『あたしが一番強かった…?それって……』
「ええ、ストリートファイトで生きていた頃ですね。」
反射的に、体が強張る。
「その頃は何を考え、何のために戦っていたのか。」
…ダメだ。
「その頃、絶対に抗えずに従っていたのはどんなルールか。」
…それは、思い出したくない。
「その頃、生き残るためにどんなことをしてきたのか。」
…それを思い出したら、あたしは……!!
『や、やめてっ…!』
「檸檬…?」
『はぁっ…はぁっ……』
疑問符を浮かべる千種の傍らで、檸檬は突如膝をついた。
骸はスッと立ち上がり、檸檬の前にしゃがむ。
「大丈夫ですか、檸檬…」
『うっ……あ、…ひぐっ…』
ぽろぽろと涙を流す檸檬に、骸は「すみません、」と肩を抱く。
しかし、
『だ、いじょ、ぶ……』
「檸檬…?」
『これ、ぐらい……耐えなきゃ、ね。』
深呼吸1つで涙を止めた檸檬は、少し不格好な笑顔を見せた。
「骸様。」
ボンゴレとランチアの勝負を観戦し続けていた千種が口を開いた。
「どうしました?」
「…押されています。」
「おやおや。」
僕も窓際に歩み寄る。
「うぉぉぉりゃああぁ!!!」
ボンゴレは、ランチアが放った剛球を受け止め、逆にランチアに向けて投げ返した。
「ぐはっ!」
ドガッ、
『あっ…』
「檸檬、君が仕えていた男はなかなかタフですねぇ……しかし、あの程度では、僕の先輩だった男は倒せませんよ。」
僕が言い終わるか終わらないかのうちに、ランチアは瓦礫の中から出て来た。
「貴様になら全力を出せそうだ。」
歓喜に包まれかけていたボンゴレサイドは、当然驚く。
骸、檸檬、千種は、それぞれの思いを抱えながらに無言で観戦していた。
僕の望みは、
マフィアへの復讐。
それを知った今、
檸檬はこの先僕らとどんな距離をとるのだろうか。
再び僕に、
綺麗な笑みを向けてくれる日は来るのだろうか。
そんな事を考えながら、
虚ろな瞳で観戦を続ける檸檬を、
少しの間見つめていた。