黒曜編
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君の笑顔は眩しくて、
俺はちっとも及ばないし、
ドキッとしちゃうだけだけど、
だからこそ、
敵のままは嫌なんだ。
戻って来てよ、
皆望んでるよ?
接触
ドガッ、
「あっ。」
「んぎゃーー!!」
リボーンに押し出された勢いで、バーズを殴ってしまったツナ。
「おーいて、おーいて、おのれー許さんぞー!ガキの分際で~~!!」
殴られて倒れこんだバーズは、頬を摩りながらツナを睨む。
「ヂヂ&ジジ!!何をしている!!こうなれば、みんな殺してしまえ!!」
「え"え"!?」
モニターの向こうでは、突然現れたシャマルに挨拶する京子と怪しく思う花がいた。
「今日は素早く帰る事をお勧めするよ、レディ達。俺の戦いっぷりを見たら、惚れて眠れなくなっちまうぜ♪」
「「「(何言ってんだ、あのエロオヤジ!!)」」」
ツナ、獄寺、山本の心が1つになった瞬間だった。
モニターの向こうの花も同じように思ったらしく、京子の手を引いて逃げて行った。
すると、シャマルはゆるりと口角を上げて。
「さー、やろーか。にしてもつくづくお前、乙女達には刺激が強過ぎる野郎だな。」
シャマルの言葉と同時に、奇声をあげながらヂヂが襲い掛かる。
「ああ、一応医者として言っておくが、お前は振動症候群にかかっちまった。あんまり激しく動かん方がいいぞ。………つってももう遅かったか。」
声色1つ変えずにつらつらと言葉を並べるシャマル。
いつの間にかその回りには、一匹の蚊が飛び回っていた。
ゆっくりと相手に背を向け、白衣のポケットに手を突っ込み歩き出す。
隙なんていくらでも作って構わない。
もはや、
相手は戦えないのだから。
「発病だ。」
.後ろからシャマルに攻撃をしようとしていた殺人双子の片割れは、次の瞬間全身から血を吹き出して、倒れていった。
「おのれシャマル!!こうなったらもう一方だけでもぶっ殺せ!!」
モニターにアップにされるのは、これまた状況を理解していないハル。
「はひー!何の騒ぎですか?」
「俺達が来たからもう大丈夫ですよ。」
「ほぇ?」
大人ランボの言葉にますます戸惑うハル。
すると、大人イーピンがちらっと横目でランボを見ながら言った。
「ランボ、ハルさんお願いね。」
「OK、さぁハルさん、ここはイーピンに任せて安全な場所へ。」
ランボはイーピンに背を向けてハルを誘導し始めた。
「(ランボ、戦わないのー!!?)」
ツナは少しだけショックを受ける。
構えるイーピンに、容赦なく襲い掛かるジジ。
その攻撃を華麗に避け、電柱に足を付いてそこからジジに向かって飛ぶイーピン。
「白、撥、中、」
掛け声と共に足と腕を使ってジジを拘束する。
「高三元!!」
次の瞬間、ジジの体の至る所が音を立てて折れていった。
それを見たバーズは唖然。
「奴らは双子の悪魔と呼ばれた連続殺人鬼だぞ!こんな事が……!!やっぱ六道さんのミッションはレベルが高い。くわばらくわばら。」
「何処へ行くんだ?」
逃げようとするバーズに、蹴りを入れる獄寺。
「ひげっ!」
「げっ、1発でのしちまった。」
「命令する本人は、大した事ねーのな。」
倒れてしまったバーズに、獄寺と山本は呆れまくり。
「つーか一体何なの!?こんな刺客聞いてないぞー!!」
「こいつらは骸と一緒に脱獄した連中だな。」
リボーンは写真を見せながら、脱獄囚が7人だった事をツナに教える。
「まさか骸のもとに来ていたとはな。」
「“まさか”じゃないよ!」
「だってだって、ディーノが“こいつらは関係ねーな”って言ったんだもんっ。」
口を尖らせて可愛い子ぶるリボーンに、ツナは叫んでツッコむ。
「キャラ変えてごまかすな!」
そして、再確認。
「もういねーよな?」
「いるわ。」
ビアンキの即答に、ツナ、獄寺、山本は一斉に振り向いた。
森の方を向いているビアンキ。
「隠れてないで出て来たら?」
「な!!?」
驚くツナ。
「そこにいるのは分かってるのよ?来ないのなら、こっちから行くわよ。」
ポイズンクッキングを用意するビアンキ。
すると、森の奥から聞き覚えのある声が………
「ま、待って。僕だよ。」
木の影から現れたのは…
「フゥ太!!」
ランキングブックを抱え込んだ少年、フゥ太が立っていた。
ツナは驚きながらもホッとする。
「みんないるからもう大丈夫だぞ!!さぁ、一緒に帰ろーぜ!」
ところが、
フゥ太の口からは予想外な言葉が飛び出して来た。
「来ないでツナ兄。」
「え……?」
眉間に皺を寄せ、申し訳なさそうにフゥ太は言う。
「僕…もう皆の所には戻れない。僕、骸さんに付いていく……。」
「な、何言ってんだ…?」
戸惑うツナ達。
「さよなら……」
フゥ太は森の奥へと駆けていく。
「ちょっ、待てよフゥ太!!」
「10代目!!深追いは危険です!!」
止めようとする獄寺。だが、ツナはそのままフゥ太を追った。
そして、獄寺達の前には新たな刺客が迫っていた。
---
------
------------
「フゥ太ーー!何処ーー!?」
森の中を彷徨い続けるツナ。しかし、フゥ太の姿が見える事はなかった。
「やっぱさっきんトコ右だったかな…?」
生い茂る木の枝を掻き分けながら呟く。
と、
不意に土に足を取られ、少しだけ滑る。
「おっとっと。」
ザザッ、
滑ったツナは、足下を確認する。
その視界に、誰かの靴の先端が入った。
「え?」
驚いて顔をあげると、目の前に黒曜の制服を着た男が立っていた。
木漏れ日の中、2人はほんの数秒だけ見つめ合う。
「おや?」
「ひいっ!黒曜生ーー!」
敵に遭遇したと思い、頭を抱え込み叫ぶツナ。
ところが、彼はツナに微笑みかけた。
「助けに来てくれたんですね!」
「え?」
「いやー、助かったー。もう一生ここから出られないと思いましたよー。」
「え~~~!?」
敵から聞くはずのない言葉に、ツナは戸惑った。
“助け出すという行為に感謝している”と言う彼に、ビアンキやリボーンの存在をさらっと明かしてしまった。
「へぇ~、すごい赤ちゃんだなー!まさか、戦うとすごく強いとか?」
「ま、まさか!赤ん坊が戦うワケないじゃないですか。いや…実際今回直接戦ってくれたらどんなに良いかとは思うんですけどね。」
ツナの小さな呟きを、彼は聞き逃さなかった。
「というと、間接的に何かするんですか?」
「えぇ、まぁ、詳しくは言えないんですが……」
言葉を濁したツナは、思い出したように話題を変える。
「あの、雲雀さんって並中生、知りませんか?」
「ここの建物の何処かに幽閉されています。」
「やっぱりここにー!!あ、それと!」
もう1つ、
俺がここに来る事を決めた原因が…
「檸檬っていう女の子、知りませんか?」
「檸檬?」
「あの、今はちょっと様子が変なんですけど、檸檬も並中生で、ちゃんとした仲間なんです!」
その時、彼の表情が少しだけ歪んだのが、ツナには分かった。
「あ、あの…「今聞いているのは僕ですよ。」
ツナの言葉を遮り、彼は問うた。
「その赤ん坊は、間接的に何をするんですか?」
その時、前髪で隠れていた彼の右目が、ツナに見えた。
無気味な赤。
左目の青とは全く違う。
ツナは、そこで初めて彼がオッドアイの持ち主だと知る。
「ひっ!」
その無気味さは、ツナの体を震わせる。
「(何か、感じが変わった!!)」
彼の放つ異様なオーラに耐えきれなくなり、
「また来ます!」
と走ってその場を離れていくツナ。
「クフフフ。」
彼、六道骸はツナの背中を見送りつつ笑い声を漏らす。
「やはりあの赤ん坊、アルコバレーノ。」
木の影から出て来たのは、すっかり回復した千種。
笑みを浮かべたまま、骸は答える。
「そのようですね。そして赤ん坊は戦列には加わらないが、何か手の内を隠している。ボンゴレ10代目に手をかけるのは、それを解明してからにしましょう。」
「…………嬉しそうですね。」
「実際に対面してみて、呆気に取られているんですよ。」
骸の笑いは絶えない。
「神の采配とうたわれ人を見抜く力に優れているボンゴレ9代目が後継者に選んだのは、僕の予想を遥かに超えて弱く小さな男だった……。何なんだろうね、彼は…」
クフフフフ、
という笑い声を、千種は黙って聞いている。
「まぁどちらにせよ、あのアルコバレーノの手の内はすぐに見れますよ。彼らの手には負えないでしょうからね。」
木漏れ日を顔に受けながら、骸は言う。
「“あちらの六道骸”は。」
しかし…
気に入らなかった。
---「檸檬って女の子、知りませんか?」
---「ちゃんとした仲間なんです!」
あそこまで突き放されて、まだ檸檬を信じると言うのか。
檸檬の心はもう、壊れ始めている。
ボンゴレという組織に対して純粋に抱いていた敬愛と信頼を、ゆっくりと憎悪に変換させながら。
そしていずれ、砕けた彼女の心は……
僕のものとなる。
あの弱い男に取り返せるはずがない。
辿々しい物言いで、檸檬の心を修復することなど不可能だ。
檸檬は僕の言葉を信じ、孤独を望み続ける。
そして、
心が壊れるその痛みに耐えかねた時、
彼女にはもう、僕以外に頼るものがいなくなっているのだ。
『はぁっ…はぁっ……』
気配を感じて、超五感で耳を研ぎ澄まさせる。
骸を、早く見付けたい。
さっきの人が「骸と合流しろ」って言ったから。
それより、一刻も早く誰かに会いたい。
じゃなきゃまた、動けなくなりそう。
あたしは走り続けた。
右も左も分からない、深い森の中を。
『骸…』
今だけ、そばにいて欲しい……
そんな風に願うことは自分勝手だって、分かってた。
涙を拭うと言ってくれた骸への、甘えなのだと。
それでも今は、一人で森の中を走り続けるのが、怖くて怖くて仕方ない。
『あ…っ!!』
2人、見付けた。
『骸っ!!千種っ!!』
「檸檬……?」
『よ、良かった…!』
息を切らせて駆け寄れば、骸は背中をさすってくれた。
こんなことでも安心してしまうあたしは、きっとまだまだ弱いんだろう。
「どうしたんですか?」
『……あたし、一人はまだ、ダメで…』
いつの間にか、千種は消えていた。
ツナ達の戦いを見に行ったみたい。
『あたし……1人でいると、動けなくなるの。まだ、克服できてなかった……』
「そうでしたか……ここまではどうやって?」
『右頬に傷のある人が、こっちに行けば骸に会えるって教えてくれた。だから走って……』
言葉は、途切れる。
骸に突然抱き締められて、ビックリした。
『あ、の……骸…?』
「すみませんでした。」
『えっ…?』
「君の涙を拭うと約束したのに。一番つらい時に側にいれませんでしたね…」
『そ、そんなこと…!』
「檸檬にそんな性質がついてしまったのも、ボンゴレの罪でしょうか。」
『罪…』
「生温さの産物、ということですよ。」
『そうかも、知れない……』
僕は檸檬の頬に手を添え、ゆっくりとこちらを向かせる。
檸檬の目には、まだ迷いがあった。
ボンゴレの連中をまだ信じたいと、心のどこかで縋っている瞳。
「檸檬、僕は強く美しい君に惹かれました。」
『骸……』
「人を道具のように扱うマフィアとは違う……君は、マフィアとして生きるには勿体ないんです。」
僕が檸檬に笑みを向ければ、
檸檬も僅かに微笑み返す。
『あ、ありがと…』
僕はいつから、この生温い空気を受け入れる様になったのか。
自分でも分からない。
ただ1つ分かるのは、
僕も檸檬を手に入れたいと望んでしまったという事。
「さぁ檸檬、戻りましょう。」
『うん…』
同情だと、言い聞かせた。
マフィアに利用される身であり続けるのは、大きな痛みを伴う。
それは、僕たちが誰よりよく知っている。
ただ、彼女は利用されているだけではなく……
本当に、ボンゴレに関わるあらゆる人物に愛されていることも分かった。
だからこそ、奪い去ってしまいたいという欲求が強まったのかもしれない。
---
------
-------------
その頃、ツナを追おうとして足止めを食らっていた獄寺達。
「さっさと終わらすぞ、怪力ヤロー!」
ダイナマイトを出して戦闘体勢に入る獄寺。
「無駄だ。」
相手は、言葉を発しながら帽子を取る。
「俺には勝てん。」
現れたその顔を見て、3人とも驚く。
「お前は!!」
「写真の!」
「六道骸!!」
「ぐっ…!!」
「獄寺!?」
突然倒れこむ獄寺に、駆け寄るビアンキ。
その額に手を当てると、物凄い熱が伝わって来る。
「(シャマルが言ってたトライデントモスキートの副作用だわ!!)」
剛球を振り回し威嚇する相手の目の前に、山本が他を庇うように立つ。
「お前の相手は俺がするぜ。」
その言葉が聞こえたのか否か、相手は容赦なく攻撃を開始した。
「千蛇烈覇!!」
掛け声と同時に剛球が放たれた。
「(遅い…)」
さっと避けた山本。
しかし…
ぐんっ、
「がっ!!」
剛球に吸い込まれるように山本の体は引っ張られ、見事に当てられてしまった。
「山本!!」
同じ頃、
「あれ?こっちじゃなかった……」
未だに森を彷徨っていて、戻れなくなったツナ。
「みんな、何処~~~?」
叫びも虚しく、ツナの行く手は木々達が覆い隠す。
そして、
「やべーな、こいつは強ぇぞ。」
剛球の技を見たリボーンは、銃に死ぬ気弾を装填したのだった。
俺はちっとも及ばないし、
ドキッとしちゃうだけだけど、
だからこそ、
敵のままは嫌なんだ。
戻って来てよ、
皆望んでるよ?
接触
ドガッ、
「あっ。」
「んぎゃーー!!」
リボーンに押し出された勢いで、バーズを殴ってしまったツナ。
「おーいて、おーいて、おのれー許さんぞー!ガキの分際で~~!!」
殴られて倒れこんだバーズは、頬を摩りながらツナを睨む。
「ヂヂ&ジジ!!何をしている!!こうなれば、みんな殺してしまえ!!」
「え"え"!?」
モニターの向こうでは、突然現れたシャマルに挨拶する京子と怪しく思う花がいた。
「今日は素早く帰る事をお勧めするよ、レディ達。俺の戦いっぷりを見たら、惚れて眠れなくなっちまうぜ♪」
「「「(何言ってんだ、あのエロオヤジ!!)」」」
ツナ、獄寺、山本の心が1つになった瞬間だった。
モニターの向こうの花も同じように思ったらしく、京子の手を引いて逃げて行った。
すると、シャマルはゆるりと口角を上げて。
「さー、やろーか。にしてもつくづくお前、乙女達には刺激が強過ぎる野郎だな。」
シャマルの言葉と同時に、奇声をあげながらヂヂが襲い掛かる。
「ああ、一応医者として言っておくが、お前は振動症候群にかかっちまった。あんまり激しく動かん方がいいぞ。………つってももう遅かったか。」
声色1つ変えずにつらつらと言葉を並べるシャマル。
いつの間にかその回りには、一匹の蚊が飛び回っていた。
ゆっくりと相手に背を向け、白衣のポケットに手を突っ込み歩き出す。
隙なんていくらでも作って構わない。
もはや、
相手は戦えないのだから。
「発病だ。」
.後ろからシャマルに攻撃をしようとしていた殺人双子の片割れは、次の瞬間全身から血を吹き出して、倒れていった。
「おのれシャマル!!こうなったらもう一方だけでもぶっ殺せ!!」
モニターにアップにされるのは、これまた状況を理解していないハル。
「はひー!何の騒ぎですか?」
「俺達が来たからもう大丈夫ですよ。」
「ほぇ?」
大人ランボの言葉にますます戸惑うハル。
すると、大人イーピンがちらっと横目でランボを見ながら言った。
「ランボ、ハルさんお願いね。」
「OK、さぁハルさん、ここはイーピンに任せて安全な場所へ。」
ランボはイーピンに背を向けてハルを誘導し始めた。
「(ランボ、戦わないのー!!?)」
ツナは少しだけショックを受ける。
構えるイーピンに、容赦なく襲い掛かるジジ。
その攻撃を華麗に避け、電柱に足を付いてそこからジジに向かって飛ぶイーピン。
「白、撥、中、」
掛け声と共に足と腕を使ってジジを拘束する。
「高三元!!」
次の瞬間、ジジの体の至る所が音を立てて折れていった。
それを見たバーズは唖然。
「奴らは双子の悪魔と呼ばれた連続殺人鬼だぞ!こんな事が……!!やっぱ六道さんのミッションはレベルが高い。くわばらくわばら。」
「何処へ行くんだ?」
逃げようとするバーズに、蹴りを入れる獄寺。
「ひげっ!」
「げっ、1発でのしちまった。」
「命令する本人は、大した事ねーのな。」
倒れてしまったバーズに、獄寺と山本は呆れまくり。
「つーか一体何なの!?こんな刺客聞いてないぞー!!」
「こいつらは骸と一緒に脱獄した連中だな。」
リボーンは写真を見せながら、脱獄囚が7人だった事をツナに教える。
「まさか骸のもとに来ていたとはな。」
「“まさか”じゃないよ!」
「だってだって、ディーノが“こいつらは関係ねーな”って言ったんだもんっ。」
口を尖らせて可愛い子ぶるリボーンに、ツナは叫んでツッコむ。
「キャラ変えてごまかすな!」
そして、再確認。
「もういねーよな?」
「いるわ。」
ビアンキの即答に、ツナ、獄寺、山本は一斉に振り向いた。
森の方を向いているビアンキ。
「隠れてないで出て来たら?」
「な!!?」
驚くツナ。
「そこにいるのは分かってるのよ?来ないのなら、こっちから行くわよ。」
ポイズンクッキングを用意するビアンキ。
すると、森の奥から聞き覚えのある声が………
「ま、待って。僕だよ。」
木の影から現れたのは…
「フゥ太!!」
ランキングブックを抱え込んだ少年、フゥ太が立っていた。
ツナは驚きながらもホッとする。
「みんないるからもう大丈夫だぞ!!さぁ、一緒に帰ろーぜ!」
ところが、
フゥ太の口からは予想外な言葉が飛び出して来た。
「来ないでツナ兄。」
「え……?」
眉間に皺を寄せ、申し訳なさそうにフゥ太は言う。
「僕…もう皆の所には戻れない。僕、骸さんに付いていく……。」
「な、何言ってんだ…?」
戸惑うツナ達。
「さよなら……」
フゥ太は森の奥へと駆けていく。
「ちょっ、待てよフゥ太!!」
「10代目!!深追いは危険です!!」
止めようとする獄寺。だが、ツナはそのままフゥ太を追った。
そして、獄寺達の前には新たな刺客が迫っていた。
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「フゥ太ーー!何処ーー!?」
森の中を彷徨い続けるツナ。しかし、フゥ太の姿が見える事はなかった。
「やっぱさっきんトコ右だったかな…?」
生い茂る木の枝を掻き分けながら呟く。
と、
不意に土に足を取られ、少しだけ滑る。
「おっとっと。」
ザザッ、
滑ったツナは、足下を確認する。
その視界に、誰かの靴の先端が入った。
「え?」
驚いて顔をあげると、目の前に黒曜の制服を着た男が立っていた。
木漏れ日の中、2人はほんの数秒だけ見つめ合う。
「おや?」
「ひいっ!黒曜生ーー!」
敵に遭遇したと思い、頭を抱え込み叫ぶツナ。
ところが、彼はツナに微笑みかけた。
「助けに来てくれたんですね!」
「え?」
「いやー、助かったー。もう一生ここから出られないと思いましたよー。」
「え~~~!?」
敵から聞くはずのない言葉に、ツナは戸惑った。
“助け出すという行為に感謝している”と言う彼に、ビアンキやリボーンの存在をさらっと明かしてしまった。
「へぇ~、すごい赤ちゃんだなー!まさか、戦うとすごく強いとか?」
「ま、まさか!赤ん坊が戦うワケないじゃないですか。いや…実際今回直接戦ってくれたらどんなに良いかとは思うんですけどね。」
ツナの小さな呟きを、彼は聞き逃さなかった。
「というと、間接的に何かするんですか?」
「えぇ、まぁ、詳しくは言えないんですが……」
言葉を濁したツナは、思い出したように話題を変える。
「あの、雲雀さんって並中生、知りませんか?」
「ここの建物の何処かに幽閉されています。」
「やっぱりここにー!!あ、それと!」
もう1つ、
俺がここに来る事を決めた原因が…
「檸檬っていう女の子、知りませんか?」
「檸檬?」
「あの、今はちょっと様子が変なんですけど、檸檬も並中生で、ちゃんとした仲間なんです!」
その時、彼の表情が少しだけ歪んだのが、ツナには分かった。
「あ、あの…「今聞いているのは僕ですよ。」
ツナの言葉を遮り、彼は問うた。
「その赤ん坊は、間接的に何をするんですか?」
その時、前髪で隠れていた彼の右目が、ツナに見えた。
無気味な赤。
左目の青とは全く違う。
ツナは、そこで初めて彼がオッドアイの持ち主だと知る。
「ひっ!」
その無気味さは、ツナの体を震わせる。
「(何か、感じが変わった!!)」
彼の放つ異様なオーラに耐えきれなくなり、
「また来ます!」
と走ってその場を離れていくツナ。
「クフフフ。」
彼、六道骸はツナの背中を見送りつつ笑い声を漏らす。
「やはりあの赤ん坊、アルコバレーノ。」
木の影から出て来たのは、すっかり回復した千種。
笑みを浮かべたまま、骸は答える。
「そのようですね。そして赤ん坊は戦列には加わらないが、何か手の内を隠している。ボンゴレ10代目に手をかけるのは、それを解明してからにしましょう。」
「…………嬉しそうですね。」
「実際に対面してみて、呆気に取られているんですよ。」
骸の笑いは絶えない。
「神の采配とうたわれ人を見抜く力に優れているボンゴレ9代目が後継者に選んだのは、僕の予想を遥かに超えて弱く小さな男だった……。何なんだろうね、彼は…」
クフフフフ、
という笑い声を、千種は黙って聞いている。
「まぁどちらにせよ、あのアルコバレーノの手の内はすぐに見れますよ。彼らの手には負えないでしょうからね。」
木漏れ日を顔に受けながら、骸は言う。
「“あちらの六道骸”は。」
しかし…
気に入らなかった。
---「檸檬って女の子、知りませんか?」
---「ちゃんとした仲間なんです!」
あそこまで突き放されて、まだ檸檬を信じると言うのか。
檸檬の心はもう、壊れ始めている。
ボンゴレという組織に対して純粋に抱いていた敬愛と信頼を、ゆっくりと憎悪に変換させながら。
そしていずれ、砕けた彼女の心は……
僕のものとなる。
あの弱い男に取り返せるはずがない。
辿々しい物言いで、檸檬の心を修復することなど不可能だ。
檸檬は僕の言葉を信じ、孤独を望み続ける。
そして、
心が壊れるその痛みに耐えかねた時、
彼女にはもう、僕以外に頼るものがいなくなっているのだ。
『はぁっ…はぁっ……』
気配を感じて、超五感で耳を研ぎ澄まさせる。
骸を、早く見付けたい。
さっきの人が「骸と合流しろ」って言ったから。
それより、一刻も早く誰かに会いたい。
じゃなきゃまた、動けなくなりそう。
あたしは走り続けた。
右も左も分からない、深い森の中を。
『骸…』
今だけ、そばにいて欲しい……
そんな風に願うことは自分勝手だって、分かってた。
涙を拭うと言ってくれた骸への、甘えなのだと。
それでも今は、一人で森の中を走り続けるのが、怖くて怖くて仕方ない。
『あ…っ!!』
2人、見付けた。
『骸っ!!千種っ!!』
「檸檬……?」
『よ、良かった…!』
息を切らせて駆け寄れば、骸は背中をさすってくれた。
こんなことでも安心してしまうあたしは、きっとまだまだ弱いんだろう。
「どうしたんですか?」
『……あたし、一人はまだ、ダメで…』
いつの間にか、千種は消えていた。
ツナ達の戦いを見に行ったみたい。
『あたし……1人でいると、動けなくなるの。まだ、克服できてなかった……』
「そうでしたか……ここまではどうやって?」
『右頬に傷のある人が、こっちに行けば骸に会えるって教えてくれた。だから走って……』
言葉は、途切れる。
骸に突然抱き締められて、ビックリした。
『あ、の……骸…?』
「すみませんでした。」
『えっ…?』
「君の涙を拭うと約束したのに。一番つらい時に側にいれませんでしたね…」
『そ、そんなこと…!』
「檸檬にそんな性質がついてしまったのも、ボンゴレの罪でしょうか。」
『罪…』
「生温さの産物、ということですよ。」
『そうかも、知れない……』
僕は檸檬の頬に手を添え、ゆっくりとこちらを向かせる。
檸檬の目には、まだ迷いがあった。
ボンゴレの連中をまだ信じたいと、心のどこかで縋っている瞳。
「檸檬、僕は強く美しい君に惹かれました。」
『骸……』
「人を道具のように扱うマフィアとは違う……君は、マフィアとして生きるには勿体ないんです。」
僕が檸檬に笑みを向ければ、
檸檬も僅かに微笑み返す。
『あ、ありがと…』
僕はいつから、この生温い空気を受け入れる様になったのか。
自分でも分からない。
ただ1つ分かるのは、
僕も檸檬を手に入れたいと望んでしまったという事。
「さぁ檸檬、戻りましょう。」
『うん…』
同情だと、言い聞かせた。
マフィアに利用される身であり続けるのは、大きな痛みを伴う。
それは、僕たちが誰よりよく知っている。
ただ、彼女は利用されているだけではなく……
本当に、ボンゴレに関わるあらゆる人物に愛されていることも分かった。
だからこそ、奪い去ってしまいたいという欲求が強まったのかもしれない。
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その頃、ツナを追おうとして足止めを食らっていた獄寺達。
「さっさと終わらすぞ、怪力ヤロー!」
ダイナマイトを出して戦闘体勢に入る獄寺。
「無駄だ。」
相手は、言葉を発しながら帽子を取る。
「俺には勝てん。」
現れたその顔を見て、3人とも驚く。
「お前は!!」
「写真の!」
「六道骸!!」
「ぐっ…!!」
「獄寺!?」
突然倒れこむ獄寺に、駆け寄るビアンキ。
その額に手を当てると、物凄い熱が伝わって来る。
「(シャマルが言ってたトライデントモスキートの副作用だわ!!)」
剛球を振り回し威嚇する相手の目の前に、山本が他を庇うように立つ。
「お前の相手は俺がするぜ。」
その言葉が聞こえたのか否か、相手は容赦なく攻撃を開始した。
「千蛇烈覇!!」
掛け声と同時に剛球が放たれた。
「(遅い…)」
さっと避けた山本。
しかし…
ぐんっ、
「がっ!!」
剛球に吸い込まれるように山本の体は引っ張られ、見事に当てられてしまった。
「山本!!」
同じ頃、
「あれ?こっちじゃなかった……」
未だに森を彷徨っていて、戻れなくなったツナ。
「みんな、何処~~~?」
叫びも虚しく、ツナの行く手は木々達が覆い隠す。
そして、
「やべーな、こいつは強ぇぞ。」
剛球の技を見たリボーンは、銃に死ぬ気弾を装填したのだった。