黒曜編
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骸が教えてくれたんだ。
だからあたしは離れると決めた。
あたしを騙していた、ボンゴレから。
=================
山本が見据える漆黒の闇の中に、鋭い眼光が現れる。
「カンゲーすんよ、山本武。」
獣だと思っていた“何か”が言葉を発し、山本は少し驚く。
「柿ピー寝たままでさー、命令ねーしやる事ねーし、超ヒマだったの。」
次第に闇から人の影が浮かび上がる。
「そこへわざわざ俺の獲物がいらっしゃったんだもんな。」
それは、光の差し込む方へ一歩一歩進んで。
「超ハッピー。」
「お?」
「あれ…人だよ!人間だよ!!」
「黒曜の制服!!」
上にいるツナ達の声に反応する犬。
「上の人達はお友達~~?待っててねーん、順番に殺ったげるから♪」
犬の台詞に、ツナはごくりと唾を飲んだ。
ところが…
「ハハハハ!」
何故か笑い出す山本。犬は首をかしげる。
「お前、見かけによらず器用なんだな!さっきの死んだ犬の人形、すげーリアルだったぜ!」
山本はぐっと親指を立てた。
「(まだ遊びだと思ってるーー!)」
呆れるツナと獄寺。犬も少し引いている。
「もしかして天然?まっ、いいけど。」
犬が戦闘体勢に入る。
「よーい…ドン!」
物凄い速さで山本に詰め寄る犬。山本はその突進を避ける。
犬はそのままジャンプして、壁に足を一歩。そこから山本の頭上を飛び越えた。
「何あれ!」
「人間技じゃねぇ!」
犬は反対側の壁まで移り、山本目掛けて急降下した。
「いったらっきまーす!!」
「なっ!」
山本は詰め寄られるその瞬間、バッドを取り出し盾にした。
ガキンッ!
犬の牙が山本のバッドを折った。
「ヒャホーゥ!!」
くるっと後ろに着地する犬。
その口からは、恐ろしい言葉が。
「次は喉を抉るびょん♪」
言葉と同時に、山本のバッドの欠片がぼろぼろとこぼれ落ちて来る。
ツナ達は、木や檻を抉ったのは犬だという事を察した。
そんな中山本は…
「なるほど、マフィアごっこってのは、手加減せずに相手をぶっ倒していーんだな。……そういうルールな。」
「山本、怖がるどころか…」
「あいつ、あー見えて負けん気強ぇからな。バッドを折られて心中穏やかじゃねーぞ。」
休む間もなく戦いは再開する。
コングチャンネルを使う犬に対し、ドーピングと勘違いする山本。
そんな彼を、犬は容赦なく投げ飛ばす。
「いつつ、あんにゃろ……。」
起き上がりながら右肩を気にする山本。
それでも犬は、休む暇を与えない。
暗闇の中から挑発するような声が聞こえて来る。
「何処に逃げてもすぐに分かっからね。お前に付けた犬の血の臭いが、ウルフチャンネルの俺には……」
警戒して、周りを見回す山本。
「プンプン臭ってくるんだよーん!!」
その瞬間、山本に犬の鋭い爪が襲い掛かる。山本は再びギリギリで避ける。
それから、犬の攻撃をひたすら避け続ける山本。
犬はそのうち攻めの手を緩め始めた。
「逃げてばっかじゃん。もしかして、俺相手に持久戦に持ち込もうとしてんの?」
進展のない戦いに痺れを切らし、山本に尋ねる犬。
「いやー、そーゆーワケじゃねーんだが……秋にはマフィアごっこ以外にも大事なモンがあってよ。」
「ワケ分かんねーぞ、ボケ。」
頬を搔く山本に対し、
犬は再び爪と牙を向ける。
上では、心配したツナが野球大会のことに気付きあわあわし始めていた。
「そんなに心配なら、お前が助ければいいだろ?行って来い。」
「うわぁ!」
リボーンに蹴飛ばされたツナは、真直ぐ落ちていく。
「うぎゃあああ!!!げふっ!」
「ツナ!」
「いでー……死んだかと思ったぁ…」
「んあ?雑魚のお友達れすか?」
犬は落ちてきたツナを見るなり、にやりと笑った。
「よーし、山本逃げるし、先にウサギを狩っとくかな~~。」
「な!」
驚く山本。
「いったらっきまーす!!」
犬は容赦なくツナに襲い掛かる。
「うぎゃー!来たーー!!食べられるーーー!!!」
と、その時。
ガッ!
山本が投げた石が、犬の後頭部にクリーンヒットした。
「んあ?」
少々不機嫌そうな声で反応する犬。
それでも、山本は笑顔で対応。
「お前の相手は俺だろ?」
その手には、石がもう1つ。
「来いよ、こいつぶち当ててゲームセットだ。」
「ほへー、挑戦状だ。面白そーじゃん。んじゃ俺も本気を見せちゃおっかな。」
犬は、歯を取り替える。
「チーターチャンネル!」
言うと同時に、物凄い速さで走り出す。
唖然とするツナ。
山本は持っていた石を投げる。が、
「はずれっ!……いたらき!!」
石を避けた犬は、そのまま山本の左腕に噛み付いた。
「山本!」
ツナが青ざめると同時に、山本は歯を食いしばった。
「そいつは……お互い様だぜ!!」
メキメキと音を立てて左腕を噛まれつつ、右手でバッドの柄の部分をしっかり握り締めた。
そして、それは犬に思いっきり打ちつけられる。
「キャンッ!」
強い衝撃により、吹っ飛ばされた犬。
山本の左腕からは、大量の血が流れた。
------
------
「ご、ごめん山本!!」
引き上げられた後、ツナは山本に頭を下げた。
「俺のせいで腕を……野球あんのに!!大会あんのに!!」
すると山本はニカッと笑って。
「おいおい、勘弁してくれよ、ツナ。いつの話してんだ?」
「へ?」
「ダチより野球を大事にするなんて、お前と屋上ダイブする前までだぜ。」
山本の優しい表情を見て、ツナは感動で目を潤ませる。
「や、山本…。」
「それに、このくらいの怪我じゃ、余裕で野球出来るぜ。」
「すげぇ!!!」
山本は左手をぐっぱっと動かしたが、その拍子に少しだけ血が垂れた。
「ところで、だな。」
「ん?」
リボーンが一枚の写真を取り出す。
「ディーノの情報によると、今倒したのが主要メンバーの城島犬だ。」
「こ、これが例の3人組?!」
そこには、獄寺と戦った眼鏡の男と、今の金髪の男、
そして、もう1人頬に傷がある男が写されていた。
「あぁ、真ん中の奴が六道骸だ。」
---
------
-----------
その頃。
『(これで……良かったんだよね…)』
ボンゴレが来た。
その知らせを聞いただけで、こんなに胸がざわつくなんて。
それほどあたしは、依存していたんだ。
あたしの心は、ボンゴレに乗っ取られて、蝕まれていたんだ。
でも、もう大丈夫。
あの頃のように、一人でも生きていけるようになれる。
もう一度、あたしは“強さ”を手に入れるんだ…。
---
------
-----------
---「…さて、始めましょうか。」
フゥ太君を助けようと一人で乗り込んだあの日、あたしは能力の使いすぎで倒れた。
駆け寄って来たフゥ太君は、城島犬と柿本千種に一回引き離された。
けど、六道骸のトライデントが地面を叩くと、遠ざかってたハズのフゥ太君の声が戻って来た。
---「檸檬姉っ!しっかりして!!」
ごめんね、ごめんね、
あたしが…弱いせいで。
殺されるのかな……それも仕方ないかな……
---「骸さん、お願いです…!」
---「おやおや、この期に及んで一体何を懇願しようというのです?フゥ太。」
---「これ以上……これ以上、檸檬姉に……」
いいの、いいんだよ…
フゥ太君……お願いだから、逃げて……
あたしのことは、もう…
---「これ以上、檸檬姉に報われない戦いをさせるのはやめて下さい!!」
え……?
---「檸檬姉は……望んでマフィアの手駒になってるワケじゃないんです!!」
手駒…?
何?どういうこと?
一体、何を言ってるの…!??
---『フゥ太くん…?何、言って…』
6つの能力を使いすぎて、細胞はボロボロだった。
それでも、フゥ太君が妙なことを言ってるのは理解できた。
そんなあたしの混乱を見抜くように、フゥ太君はハッキリと告げる。
---「檸檬姉、僕は……骸さんについていくよ。だって、ボンゴレは…僕を利用するだけして…捨てるつもりだから。」
---『何を…言ってるの!?ツナが、そんなこと…』
反論しようとするあたしの言葉を遮るフゥ太君。
---「僕、知ってるよ。檸檬姉、一人だったんだよね?だから、無償で支えてくれたボンゴレの人に忠誠を誓ったんだよね?」
---『そう……あたしを受け入れてくれたみんなだから、あたしも命をかけて…』
---「ボンゴレの目的が、ただの戦力確保だって、知らないんだよね?」
---『……え?』
どうして、どうしてそんなこと言うの?
それじゃあまるで、ボンゴレが悪いみたいじゃない。
あたしは、9代目に人の温かさを教えてもらったの。
ディーノに、仲間の大切さを教えてもらったの。
リボーンやツナ達に、支え合うことを教えてもらったの。
それを全部、否定するかのような言い方…!
---『どうしちゃったの……フゥ太、君……』
---「おやおや、無理をしない方がいいのでは?」
六道骸の言葉を無視して、あたしはグッと腕に力を込めて起きあがった。
違う、違うよ、フゥ太君。
ボンゴレは……そんな非情な組織じゃないハズだよ…
だって9代目は……あたしを、アメリカから出してくれたんだよ?
ストリートファイトの世界から、解放してくれたんだよ?
大嫌いだった両親と、話をつけてくれて……
それで、
ボンゴレのみんなが、あたしの家族だって……
---「檸檬姉、信じてよ。僕の情報力、檸檬姉なら知ってるでしょ?」
---『う、うそ……』
---「僕のこと、信じてくれないの…?」
---『で、でも…そんなのっ……』
---「人間は、自分のことしか考えないんだ。マフィアの人だって、みんなそうだ。檸檬姉なら、分かってくれるよね?」
---『そんなの……そんなの違う…!』
---「アメリカでは、そうだったんでしょ?」
---『やめてっ…!!』
あたしは必死に、フゥ太君の手をぎゅっと握る。
けど、フゥ太君はすぐにその手を振り払った。
---「僕の言葉を信じてくれないなら、檸檬姉と一緒にいる価値なんてない。」
---『フゥ太、くん…?』
---「さようなら、檸檬姉。」
どこに持っていたのか、フゥ太君はあたしにナイフを振り下ろした。
うそ、どうして…?
フゥ太君の言ってることは……本当なの?
あたしは、騙されてたの…?
ボンゴレは……ツナ達は…嘘を、ついてたの……?
---『そんな……、』
いやだ、いやだよ…
信じていたのに、裏切られるなんて。
ボンゴレのみんなが、アメリカであたしを苦しめた奴らと同等なんて……
そんなこと、思いたくないよっ……!
お願い、お願いフゥ太君…
嘘だって、言って…。
放心状態のあたしには、襲いかかる刃を避けようと構えることすら出来なかった。
だからあたしは離れると決めた。
あたしを騙していた、ボンゴレから。
=================
山本が見据える漆黒の闇の中に、鋭い眼光が現れる。
「カンゲーすんよ、山本武。」
獣だと思っていた“何か”が言葉を発し、山本は少し驚く。
「柿ピー寝たままでさー、命令ねーしやる事ねーし、超ヒマだったの。」
次第に闇から人の影が浮かび上がる。
「そこへわざわざ俺の獲物がいらっしゃったんだもんな。」
それは、光の差し込む方へ一歩一歩進んで。
「超ハッピー。」
「お?」
「あれ…人だよ!人間だよ!!」
「黒曜の制服!!」
上にいるツナ達の声に反応する犬。
「上の人達はお友達~~?待っててねーん、順番に殺ったげるから♪」
犬の台詞に、ツナはごくりと唾を飲んだ。
ところが…
「ハハハハ!」
何故か笑い出す山本。犬は首をかしげる。
「お前、見かけによらず器用なんだな!さっきの死んだ犬の人形、すげーリアルだったぜ!」
山本はぐっと親指を立てた。
「(まだ遊びだと思ってるーー!)」
呆れるツナと獄寺。犬も少し引いている。
「もしかして天然?まっ、いいけど。」
犬が戦闘体勢に入る。
「よーい…ドン!」
物凄い速さで山本に詰め寄る犬。山本はその突進を避ける。
犬はそのままジャンプして、壁に足を一歩。そこから山本の頭上を飛び越えた。
「何あれ!」
「人間技じゃねぇ!」
犬は反対側の壁まで移り、山本目掛けて急降下した。
「いったらっきまーす!!」
「なっ!」
山本は詰め寄られるその瞬間、バッドを取り出し盾にした。
ガキンッ!
犬の牙が山本のバッドを折った。
「ヒャホーゥ!!」
くるっと後ろに着地する犬。
その口からは、恐ろしい言葉が。
「次は喉を抉るびょん♪」
言葉と同時に、山本のバッドの欠片がぼろぼろとこぼれ落ちて来る。
ツナ達は、木や檻を抉ったのは犬だという事を察した。
そんな中山本は…
「なるほど、マフィアごっこってのは、手加減せずに相手をぶっ倒していーんだな。……そういうルールな。」
「山本、怖がるどころか…」
「あいつ、あー見えて負けん気強ぇからな。バッドを折られて心中穏やかじゃねーぞ。」
休む間もなく戦いは再開する。
コングチャンネルを使う犬に対し、ドーピングと勘違いする山本。
そんな彼を、犬は容赦なく投げ飛ばす。
「いつつ、あんにゃろ……。」
起き上がりながら右肩を気にする山本。
それでも犬は、休む暇を与えない。
暗闇の中から挑発するような声が聞こえて来る。
「何処に逃げてもすぐに分かっからね。お前に付けた犬の血の臭いが、ウルフチャンネルの俺には……」
警戒して、周りを見回す山本。
「プンプン臭ってくるんだよーん!!」
その瞬間、山本に犬の鋭い爪が襲い掛かる。山本は再びギリギリで避ける。
それから、犬の攻撃をひたすら避け続ける山本。
犬はそのうち攻めの手を緩め始めた。
「逃げてばっかじゃん。もしかして、俺相手に持久戦に持ち込もうとしてんの?」
進展のない戦いに痺れを切らし、山本に尋ねる犬。
「いやー、そーゆーワケじゃねーんだが……秋にはマフィアごっこ以外にも大事なモンがあってよ。」
「ワケ分かんねーぞ、ボケ。」
頬を搔く山本に対し、
犬は再び爪と牙を向ける。
上では、心配したツナが野球大会のことに気付きあわあわし始めていた。
「そんなに心配なら、お前が助ければいいだろ?行って来い。」
「うわぁ!」
リボーンに蹴飛ばされたツナは、真直ぐ落ちていく。
「うぎゃあああ!!!げふっ!」
「ツナ!」
「いでー……死んだかと思ったぁ…」
「んあ?雑魚のお友達れすか?」
犬は落ちてきたツナを見るなり、にやりと笑った。
「よーし、山本逃げるし、先にウサギを狩っとくかな~~。」
「な!」
驚く山本。
「いったらっきまーす!!」
犬は容赦なくツナに襲い掛かる。
「うぎゃー!来たーー!!食べられるーーー!!!」
と、その時。
ガッ!
山本が投げた石が、犬の後頭部にクリーンヒットした。
「んあ?」
少々不機嫌そうな声で反応する犬。
それでも、山本は笑顔で対応。
「お前の相手は俺だろ?」
その手には、石がもう1つ。
「来いよ、こいつぶち当ててゲームセットだ。」
「ほへー、挑戦状だ。面白そーじゃん。んじゃ俺も本気を見せちゃおっかな。」
犬は、歯を取り替える。
「チーターチャンネル!」
言うと同時に、物凄い速さで走り出す。
唖然とするツナ。
山本は持っていた石を投げる。が、
「はずれっ!……いたらき!!」
石を避けた犬は、そのまま山本の左腕に噛み付いた。
「山本!」
ツナが青ざめると同時に、山本は歯を食いしばった。
「そいつは……お互い様だぜ!!」
メキメキと音を立てて左腕を噛まれつつ、右手でバッドの柄の部分をしっかり握り締めた。
そして、それは犬に思いっきり打ちつけられる。
「キャンッ!」
強い衝撃により、吹っ飛ばされた犬。
山本の左腕からは、大量の血が流れた。
------
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「ご、ごめん山本!!」
引き上げられた後、ツナは山本に頭を下げた。
「俺のせいで腕を……野球あんのに!!大会あんのに!!」
すると山本はニカッと笑って。
「おいおい、勘弁してくれよ、ツナ。いつの話してんだ?」
「へ?」
「ダチより野球を大事にするなんて、お前と屋上ダイブする前までだぜ。」
山本の優しい表情を見て、ツナは感動で目を潤ませる。
「や、山本…。」
「それに、このくらいの怪我じゃ、余裕で野球出来るぜ。」
「すげぇ!!!」
山本は左手をぐっぱっと動かしたが、その拍子に少しだけ血が垂れた。
「ところで、だな。」
「ん?」
リボーンが一枚の写真を取り出す。
「ディーノの情報によると、今倒したのが主要メンバーの城島犬だ。」
「こ、これが例の3人組?!」
そこには、獄寺と戦った眼鏡の男と、今の金髪の男、
そして、もう1人頬に傷がある男が写されていた。
「あぁ、真ん中の奴が六道骸だ。」
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その頃。
『(これで……良かったんだよね…)』
ボンゴレが来た。
その知らせを聞いただけで、こんなに胸がざわつくなんて。
それほどあたしは、依存していたんだ。
あたしの心は、ボンゴレに乗っ取られて、蝕まれていたんだ。
でも、もう大丈夫。
あの頃のように、一人でも生きていけるようになれる。
もう一度、あたしは“強さ”を手に入れるんだ…。
---
------
-----------
---「…さて、始めましょうか。」
フゥ太君を助けようと一人で乗り込んだあの日、あたしは能力の使いすぎで倒れた。
駆け寄って来たフゥ太君は、城島犬と柿本千種に一回引き離された。
けど、六道骸のトライデントが地面を叩くと、遠ざかってたハズのフゥ太君の声が戻って来た。
---「檸檬姉っ!しっかりして!!」
ごめんね、ごめんね、
あたしが…弱いせいで。
殺されるのかな……それも仕方ないかな……
---「骸さん、お願いです…!」
---「おやおや、この期に及んで一体何を懇願しようというのです?フゥ太。」
---「これ以上……これ以上、檸檬姉に……」
いいの、いいんだよ…
フゥ太君……お願いだから、逃げて……
あたしのことは、もう…
---「これ以上、檸檬姉に報われない戦いをさせるのはやめて下さい!!」
え……?
---「檸檬姉は……望んでマフィアの手駒になってるワケじゃないんです!!」
手駒…?
何?どういうこと?
一体、何を言ってるの…!??
---『フゥ太くん…?何、言って…』
6つの能力を使いすぎて、細胞はボロボロだった。
それでも、フゥ太君が妙なことを言ってるのは理解できた。
そんなあたしの混乱を見抜くように、フゥ太君はハッキリと告げる。
---「檸檬姉、僕は……骸さんについていくよ。だって、ボンゴレは…僕を利用するだけして…捨てるつもりだから。」
---『何を…言ってるの!?ツナが、そんなこと…』
反論しようとするあたしの言葉を遮るフゥ太君。
---「僕、知ってるよ。檸檬姉、一人だったんだよね?だから、無償で支えてくれたボンゴレの人に忠誠を誓ったんだよね?」
---『そう……あたしを受け入れてくれたみんなだから、あたしも命をかけて…』
---「ボンゴレの目的が、ただの戦力確保だって、知らないんだよね?」
---『……え?』
どうして、どうしてそんなこと言うの?
それじゃあまるで、ボンゴレが悪いみたいじゃない。
あたしは、9代目に人の温かさを教えてもらったの。
ディーノに、仲間の大切さを教えてもらったの。
リボーンやツナ達に、支え合うことを教えてもらったの。
それを全部、否定するかのような言い方…!
---『どうしちゃったの……フゥ太、君……』
---「おやおや、無理をしない方がいいのでは?」
六道骸の言葉を無視して、あたしはグッと腕に力を込めて起きあがった。
違う、違うよ、フゥ太君。
ボンゴレは……そんな非情な組織じゃないハズだよ…
だって9代目は……あたしを、アメリカから出してくれたんだよ?
ストリートファイトの世界から、解放してくれたんだよ?
大嫌いだった両親と、話をつけてくれて……
それで、
ボンゴレのみんなが、あたしの家族だって……
---「檸檬姉、信じてよ。僕の情報力、檸檬姉なら知ってるでしょ?」
---『う、うそ……』
---「僕のこと、信じてくれないの…?」
---『で、でも…そんなのっ……』
---「人間は、自分のことしか考えないんだ。マフィアの人だって、みんなそうだ。檸檬姉なら、分かってくれるよね?」
---『そんなの……そんなの違う…!』
---「アメリカでは、そうだったんでしょ?」
---『やめてっ…!!』
あたしは必死に、フゥ太君の手をぎゅっと握る。
けど、フゥ太君はすぐにその手を振り払った。
---「僕の言葉を信じてくれないなら、檸檬姉と一緒にいる価値なんてない。」
---『フゥ太、くん…?』
---「さようなら、檸檬姉。」
どこに持っていたのか、フゥ太君はあたしにナイフを振り下ろした。
うそ、どうして…?
フゥ太君の言ってることは……本当なの?
あたしは、騙されてたの…?
ボンゴレは……ツナ達は…嘘を、ついてたの……?
---『そんな……、』
いやだ、いやだよ…
信じていたのに、裏切られるなんて。
ボンゴレのみんなが、アメリカであたしを苦しめた奴らと同等なんて……
そんなこと、思いたくないよっ……!
お願い、お願いフゥ太君…
嘘だって、言って…。
放心状態のあたしには、襲いかかる刃を避けようと構えることすら出来なかった。