黒曜編
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それは、ある日の出来事。
『ツナ、あたしちょっと行って来る』
「へ?」
『恭弥にこれ、渡しておいて』
「手紙??」
『じゃっ!行ってきまーす♪』
それっきり、檸檬は帰って来なかった。
================
翌晩9時。
「うっ、ぐはっ!」
「弱ぇー弱ぇー、風紀委員恐るるに足らーず!」
「貴様ら…何者だ…」
「んあー?」
ボロボロになった風紀委員の問い掛けに、ふざけ半分に答えるのは、前髪をピンで止めた男。
「遠征試合にやってきた、隣町ボーイズ?」
「それ、つまんないよ。早く済ましてよ、犬」
静かにツッコミを入れたのは、ニット帽に眼鏡の男。
「こいつ、何本だっけか?ちょっくら頂いてくびょーん!」
そう言ってペンチを取り出した、“ピン留め”の男。
「なっ、何をする気だ!?」
「恨まないでね~、上の命令だから♪」
「待て、や、やめ……!!」
震える風紀委員に、ペンチを向ける。
「ほい」
「うぎゃあああ!!」
その悲鳴は、しばらく辺りに響き続けたと言う。
=================
翌朝。
「並中、大丈夫なの?」
「……何それ?」
奈々の問い掛けに、ぼーっとするツナ。
「この土日で、並盛中の風紀委員8人が重傷で発見されたんだぞ。やられたヤツは何故か、歯を抜かれているんだ」
「え~!!?マジでーー!?」
リボーンの言葉に驚くツナ。
奈々は、護身用に格闘技を習う事を勧める。
「余計なお世話だよ!つーか俺、関係ないから!不良同士の喧嘩だよっ。やられてるのは、風紀委員ばっかなんだろ?」
「まーな」
「それより、檸檬は?金曜からいなくなったまんまなの?」
ツナの問いに、リボーンは少し考え込んだ。
「さぁな…」
「じゃ、行ってきまーす。」
「あ、ツっ君!これ、通学途中に見ておいてね。」
そう言って奈々が渡したのは、大量の格闘技チラシ。
「俺は関係ないって言ってるのに~!!」
「フゥ太がいれば、ツナに向いた格闘技ランキング作れるのにな。」
「いらないよ、そんなランキング!」
「それか、了平のボクシング部に入れ。」
「冗談じゃないよ!スパルタで殺されるよ!」
リボーンとそんな会話をしていたツナは、通学路の異変に気がつく。
「風紀委員だ!!あそこにも……!やっぱり、不良同士の喧嘩なのかな…?」
「違うよ。」
殆ど独り言だった言葉に返答され、少し驚くツナ。
恐る恐る振り返ると…
「雲雀さん!!」
「ちゃおっス。」
ツナは一気に青ざめる。
「いや……僕は通学してるだけでして…「身に覚えのない悪戯だよ。」
「(へ?)」
雲雀が自分の言葉を遮って話すので、ツナはまた驚く。
「勿論、降り掛かる火の粉は、元から絶つけどね。」
「(や、やっぱ雲雀さん怖ぇーっ!……じゃなくて!)あ、あの!」
「何だい?」
ツナは自分のカバンをごそごそと漁る。
雲雀は首をかしげつつそれを見ている。
「これ、あの、檸檬からです!雲雀さんに渡してくれって……」
「檸檬から…?」
金曜の夕方に託された手紙を雲雀に渡し、ツナはその場から消えようとした。
が、
---「緑~たなびく並盛の~~大なく小なく並~がいい~~……」
「(うちの校歌??……雲雀さんの着うたーー!!!?)」
ぴっ
雲雀が話している間に、今度こそ逃げようとしたツナ。
しかし、
「君の知り合いじゃなかったっけ。」
「え?」
「笹川了平……やられたよ。」
「(な、何だって!!?)」
雲雀に一礼した後、ツナは大至急並盛病院に向かった。
「ふぅん……檸檬から手紙……」
とりあえず封筒を開けてみる雲雀。
中には、一枚の便せん。
---『恭弥へ 私情の為、しばらく学校に行けません。ごめんね。ツナの家にもいないので、あと、携帯にも多分出れないから……でも、心配しないで!なるべく早く帰って来るから!じゃ! 檸檬』
「何これ…」
ムシャクシャした雲雀は、その手紙を丸めて捨てそうになるが、檸檬からの手紙なのでやめておく。
「何してんだか…」
空に向かって、ため息をついた。
とにかく、今は風紀を乱したヤツらを見付けて咬み殺さなければならない。
「……檸檬…」
動き出す直前に、彼女の名前を呟いた。
---
-------
その頃、了平のお見舞いに行ったツナは、5本抜かれた歯を見て、京子の涙を見て、パニクっていた。
「何でお兄さんがやられてんの!?一体どーなってんのー!?」
「そう思ってんのはツナだけじゃねーみてーだぞ。」
リボーンに言われ、病院をよく見ると、
「並中生ばかりーーー!!?」
がく然とするツナ。
と、そこに…
「おお、ダメツナ。大変な事になってんな!」
クラスメイトが話しかけて来た。
「どーしたの?誰かのお見舞い?」
「あぁ…剣道部の先輩、持田さんが襲われた。」
「ええ!?持田先輩も~~!?」
クラスメイトの話によると、風紀委員でない人も襲われていると言う。
「並中生が無差別に襲われてんだよ!!」
「うそーーー!!何でそんな恐ろしい事にー!!」
会話している間に、あたふたし始める2人。
すると、クラスメイトがいきなりツナの頭を押さえ付けた。
「なっ……」
「風紀委員副委員長の草壁さんだ。」
ちらっと見ると、周りの並中生はみんな頭を下げていた。
---「では、委員長の姿が見えないのだな。」
---「ええ、いつものように恐らく敵の尻尾を掴んだかと…。これで犯人側の壊滅は時間の問題です。」
---「そうか。」
そんな会話を聞いて…
「雲雀さん、敵やっつけに行ったって!」
「雲雀さんは無敵だぜ!!これで安心だ。」
はしゃぐツナ達。
「雲雀さんと同じ中学で良かったー!!」
「あとは頼みます!神様!雲雀様!!」
病院内は、歓喜に満ちあふれていたと言う…。
「それにしても、檸檬は何処に…」
ツナ達が喜んでいる間に、リボーンはぽつりと呟いた。
---
------
-----------
今や、廃虚となった黒曜センター。
その建物の最上階から、2人の声が聞こえて来る。
『あ……、ああ…』
「怖い思いをさせましたね、すみません。」
『何で……あたし、は…』
両手で顔を覆い泣き崩れている彼女を、目の前にいる男・六道骸はそっと抱き寄せる。
「彼らは、檸檬の傷を利用したんです。そして…その傷を更に広げようとした。」
カタカタと震える彼女は、何も答えない。
ただその耳に、心に、骸の言葉が染み込んでいく。
「僕は、ボンゴレに君と言う存在があると知り……助けたいと思った。」
『どう、して…?』
「クフフ……強いていうならば、同情…ですかね。」
徐々に震える体を落ち着かせていく彼女・檸檬に、骸は優しく微笑む。
その穏やかな笑みは、檸檬の頬をほんのり熱くした。
『……骸、さん…』
「骸、でいいですよ。」
『あたしは……もう…』
檸檬の頬に残る涙の跡をこすりながら、骸は目を細めた。
「ハッキリ言います。檸檬、君は……もう戻らない方がいい。」
『……でも、』
「幻想だったんです、全てね。もう、昔のような思いは嫌でしょう?」
今度は、檸檬の髪を優しく撫でる骸。
諭すように、あやすように。
その指先の感触に檸檬は瞼を閉じ、骸の肩に顔を埋める。
『うっ……あぁあ……』
「大丈夫です。君はアメリカで最強の名を欲しいままにした。また、取り戻せばいいんですよ。」
『最強の名を…?』
「ええ。ただ生温い環境に騙されていた君が、元の君に戻るまでには時間がかかる。少し、心の痛みも伴うかもしれません。ですから…」
『?』
「それまでは…僕が君の涙を拭いますよ。君のそばで、こうして。」
『骸……』
優しく微笑む骸の指が、檸檬の目尻をそっとなぞる。
その仕草に頬を染める檸檬は、哀しく、穏やかに、表情を緩ませた。
『ありがと…骸……』
「いえ、君の力になれて良かった。……それと、もう一つ。」
『何…?』
「約束してください。君はもうマフィアからの離脱を決意した人間です。これから僕が行う制裁には、口出し無用ですよ?」
『……うん、分かった…。』
だが次の瞬間、檸檬は体を震わせる。
その異変に首をかしげる骸。
「どうか、しましたか?」
『何か……ううん、誰かが来る!』
檸檬はソファから立ち上がって、キュロットの下のナイフを構えた。
僕の周りの治安を乱したヤツのアジトを突き止めた。
だから、今そこで首謀者を探しているトコ。
それにしても、弱いね。
弱すぎるよ。
そんなんで僕に喧嘩売ったの?
並盛も舐められたモンだね。
でももう、好きにはさせない。
並盛は“僕だけの街”だから。
階を1つ1つ上がって行けば、首謀者に会えるはずだ。
かかって来るのは雑魚ばかり。
あぁ、あの奥の部屋で最後みたいだ。
コツン…コツン…
革靴を鳴らして歩く。
「オラァァ!!」
飛び出してきた輩(恐らく黒曜生)も、とりあえず軽く片付ける。
ズザッ…
彼が飛んでった先には、もう1つ部屋があった。
そこに入ろうとしたその時。
シュッ、
キィンッ…!
「(誰…?)」
飛んで来たナイフをトンファーで弾き、そちらを向いた。
何…?
何で、いるの?
こんな所で…
何してるの?
「檸檬……」
そこに立っていたのは、殺気を放ち、ナイフを構える檸檬だった。
そこに、檸檬がいる事だけで驚いてるのに、
僕にナイフを投げた?
檸檬の口がゆっくりと開く。
何故か、聞かない方がいい気がした。
『……信じてたあたしが…バカだったんだね……』
見れば、その瞳は拭いきれない困惑と、抑えきれない憎悪と悲哀に満ちていて。
君が、そんな瞳を僕に向ける理由が分からなかった。
「檸檬、何言って…」
「檸檬、こちらへ。」
僕の言葉を遮って、奥から聞こえて来た声。
『うん…』
檸檬は方向転換をして、僕から離れて行く。
そして、奥のソファにいるヤツの隣に座った。
「(ふぅん…)」
全部は分からないけど、
これだけは分かったよ。
君が、敵のトップだね。
「やあ。」
「よく来ましたね。」
声をかけた僕に、檸檬の隣に座る彼が応答した。
薄く浮かべている笑みが、僕をイラつかせる。
「随分探したよ。君が悪戯の首謀者?」
「クフフ、そんなところですかね。」
「…どうして、檸檬はそっちにいるの?」
尋ねると、檸檬は顔をしかめた。
『そっちに、いられなくなったから……』
僕を見ることもなく、顔をそむけたまま小さくそう返す。
「檸檬どうして、」
「君にはもう、彼女に話しかける権利などありませんよ。」
遮ってそう言った男は、檸檬の肩を抱き寄せた。
檸檬、どうして抵抗しないの?
僕は、君が言うほど寛大じゃないんだ。
僕以外の誰かが、君にそんな風に触れるのは、許せない。
「君は…何なの?」
早く檸檬を取りかえさなくちゃ。
初めて“欲しい”と思った存在を。
「君の街の新しい秩序ですよ。そして…檸檬の恋人、とでも言っておきましょうかねぇ。」
『むっ、骸!?あ、あたし…!』
「いけませんか?僕は、決して檸檬を裏切らないと誓ったんですよ?君の側にいると。」
『う、うん…』
赤くなって俯く檸檬。
ダメだよ、
そいつにそんな顔見せないで。
「寝ぼけてるの?並盛に2つ秩序はいらないし、檸檬に2人の恋人はいらないよ。」
僕がそう言うと、“骸”と呼ばれた彼は、再びクフフと笑った。
檸檬は隣でつらそうに目をギュッと瞑る。
聞きたくない、とでも言うように。
「全く同感です。両方とも僕がなるから、君はいらない。」
あぁ、そういう事。
君の言いたいことは大体分かったよ。
けどね、檸檬が大人しく隣に座ってる理由が分からない。
僕が分からないワケじゃなさそうだ。
まるで……出会ってすぐの頃に時々見せていた“あの表情”が、戻ってきたみたいで。
そして、
あの寂しげな、苦しげな表情を引き戻させた原因は……
間違いなくこの男。
だから…
「それは叶わないよ。君はここで…………咬み殺す。」
トンファーの仕込み針を出して、構えた。
---
------
------------
その頃…
ブチッ、
「ひっ!何だこりゃーーーっ!!」
病院内に響くツナの叫び。
その足下には、変なものがピチピチと魚のように動いていた。
「レオンの尻尾が切れたな。」
「ひーっ!キモい~~!」
若干引くツナの横で、リボーンはそれを拾い上げ、目をキラリと光らせた。
「これが起こるって事は……不吉だ。」
『ツナ、あたしちょっと行って来る』
「へ?」
『恭弥にこれ、渡しておいて』
「手紙??」
『じゃっ!行ってきまーす♪』
それっきり、檸檬は帰って来なかった。
================
翌晩9時。
「うっ、ぐはっ!」
「弱ぇー弱ぇー、風紀委員恐るるに足らーず!」
「貴様ら…何者だ…」
「んあー?」
ボロボロになった風紀委員の問い掛けに、ふざけ半分に答えるのは、前髪をピンで止めた男。
「遠征試合にやってきた、隣町ボーイズ?」
「それ、つまんないよ。早く済ましてよ、犬」
静かにツッコミを入れたのは、ニット帽に眼鏡の男。
「こいつ、何本だっけか?ちょっくら頂いてくびょーん!」
そう言ってペンチを取り出した、“ピン留め”の男。
「なっ、何をする気だ!?」
「恨まないでね~、上の命令だから♪」
「待て、や、やめ……!!」
震える風紀委員に、ペンチを向ける。
「ほい」
「うぎゃあああ!!」
その悲鳴は、しばらく辺りに響き続けたと言う。
=================
翌朝。
「並中、大丈夫なの?」
「……何それ?」
奈々の問い掛けに、ぼーっとするツナ。
「この土日で、並盛中の風紀委員8人が重傷で発見されたんだぞ。やられたヤツは何故か、歯を抜かれているんだ」
「え~!!?マジでーー!?」
リボーンの言葉に驚くツナ。
奈々は、護身用に格闘技を習う事を勧める。
「余計なお世話だよ!つーか俺、関係ないから!不良同士の喧嘩だよっ。やられてるのは、風紀委員ばっかなんだろ?」
「まーな」
「それより、檸檬は?金曜からいなくなったまんまなの?」
ツナの問いに、リボーンは少し考え込んだ。
「さぁな…」
「じゃ、行ってきまーす。」
「あ、ツっ君!これ、通学途中に見ておいてね。」
そう言って奈々が渡したのは、大量の格闘技チラシ。
「俺は関係ないって言ってるのに~!!」
「フゥ太がいれば、ツナに向いた格闘技ランキング作れるのにな。」
「いらないよ、そんなランキング!」
「それか、了平のボクシング部に入れ。」
「冗談じゃないよ!スパルタで殺されるよ!」
リボーンとそんな会話をしていたツナは、通学路の異変に気がつく。
「風紀委員だ!!あそこにも……!やっぱり、不良同士の喧嘩なのかな…?」
「違うよ。」
殆ど独り言だった言葉に返答され、少し驚くツナ。
恐る恐る振り返ると…
「雲雀さん!!」
「ちゃおっス。」
ツナは一気に青ざめる。
「いや……僕は通学してるだけでして…「身に覚えのない悪戯だよ。」
「(へ?)」
雲雀が自分の言葉を遮って話すので、ツナはまた驚く。
「勿論、降り掛かる火の粉は、元から絶つけどね。」
「(や、やっぱ雲雀さん怖ぇーっ!……じゃなくて!)あ、あの!」
「何だい?」
ツナは自分のカバンをごそごそと漁る。
雲雀は首をかしげつつそれを見ている。
「これ、あの、檸檬からです!雲雀さんに渡してくれって……」
「檸檬から…?」
金曜の夕方に託された手紙を雲雀に渡し、ツナはその場から消えようとした。
が、
---「緑~たなびく並盛の~~大なく小なく並~がいい~~……」
「(うちの校歌??……雲雀さんの着うたーー!!!?)」
ぴっ
雲雀が話している間に、今度こそ逃げようとしたツナ。
しかし、
「君の知り合いじゃなかったっけ。」
「え?」
「笹川了平……やられたよ。」
「(な、何だって!!?)」
雲雀に一礼した後、ツナは大至急並盛病院に向かった。
「ふぅん……檸檬から手紙……」
とりあえず封筒を開けてみる雲雀。
中には、一枚の便せん。
---『恭弥へ 私情の為、しばらく学校に行けません。ごめんね。ツナの家にもいないので、あと、携帯にも多分出れないから……でも、心配しないで!なるべく早く帰って来るから!じゃ! 檸檬』
「何これ…」
ムシャクシャした雲雀は、その手紙を丸めて捨てそうになるが、檸檬からの手紙なのでやめておく。
「何してんだか…」
空に向かって、ため息をついた。
とにかく、今は風紀を乱したヤツらを見付けて咬み殺さなければならない。
「……檸檬…」
動き出す直前に、彼女の名前を呟いた。
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-------
その頃、了平のお見舞いに行ったツナは、5本抜かれた歯を見て、京子の涙を見て、パニクっていた。
「何でお兄さんがやられてんの!?一体どーなってんのー!?」
「そう思ってんのはツナだけじゃねーみてーだぞ。」
リボーンに言われ、病院をよく見ると、
「並中生ばかりーーー!!?」
がく然とするツナ。
と、そこに…
「おお、ダメツナ。大変な事になってんな!」
クラスメイトが話しかけて来た。
「どーしたの?誰かのお見舞い?」
「あぁ…剣道部の先輩、持田さんが襲われた。」
「ええ!?持田先輩も~~!?」
クラスメイトの話によると、風紀委員でない人も襲われていると言う。
「並中生が無差別に襲われてんだよ!!」
「うそーーー!!何でそんな恐ろしい事にー!!」
会話している間に、あたふたし始める2人。
すると、クラスメイトがいきなりツナの頭を押さえ付けた。
「なっ……」
「風紀委員副委員長の草壁さんだ。」
ちらっと見ると、周りの並中生はみんな頭を下げていた。
---「では、委員長の姿が見えないのだな。」
---「ええ、いつものように恐らく敵の尻尾を掴んだかと…。これで犯人側の壊滅は時間の問題です。」
---「そうか。」
そんな会話を聞いて…
「雲雀さん、敵やっつけに行ったって!」
「雲雀さんは無敵だぜ!!これで安心だ。」
はしゃぐツナ達。
「雲雀さんと同じ中学で良かったー!!」
「あとは頼みます!神様!雲雀様!!」
病院内は、歓喜に満ちあふれていたと言う…。
「それにしても、檸檬は何処に…」
ツナ達が喜んでいる間に、リボーンはぽつりと呟いた。
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今や、廃虚となった黒曜センター。
その建物の最上階から、2人の声が聞こえて来る。
『あ……、ああ…』
「怖い思いをさせましたね、すみません。」
『何で……あたし、は…』
両手で顔を覆い泣き崩れている彼女を、目の前にいる男・六道骸はそっと抱き寄せる。
「彼らは、檸檬の傷を利用したんです。そして…その傷を更に広げようとした。」
カタカタと震える彼女は、何も答えない。
ただその耳に、心に、骸の言葉が染み込んでいく。
「僕は、ボンゴレに君と言う存在があると知り……助けたいと思った。」
『どう、して…?』
「クフフ……強いていうならば、同情…ですかね。」
徐々に震える体を落ち着かせていく彼女・檸檬に、骸は優しく微笑む。
その穏やかな笑みは、檸檬の頬をほんのり熱くした。
『……骸、さん…』
「骸、でいいですよ。」
『あたしは……もう…』
檸檬の頬に残る涙の跡をこすりながら、骸は目を細めた。
「ハッキリ言います。檸檬、君は……もう戻らない方がいい。」
『……でも、』
「幻想だったんです、全てね。もう、昔のような思いは嫌でしょう?」
今度は、檸檬の髪を優しく撫でる骸。
諭すように、あやすように。
その指先の感触に檸檬は瞼を閉じ、骸の肩に顔を埋める。
『うっ……あぁあ……』
「大丈夫です。君はアメリカで最強の名を欲しいままにした。また、取り戻せばいいんですよ。」
『最強の名を…?』
「ええ。ただ生温い環境に騙されていた君が、元の君に戻るまでには時間がかかる。少し、心の痛みも伴うかもしれません。ですから…」
『?』
「それまでは…僕が君の涙を拭いますよ。君のそばで、こうして。」
『骸……』
優しく微笑む骸の指が、檸檬の目尻をそっとなぞる。
その仕草に頬を染める檸檬は、哀しく、穏やかに、表情を緩ませた。
『ありがと…骸……』
「いえ、君の力になれて良かった。……それと、もう一つ。」
『何…?』
「約束してください。君はもうマフィアからの離脱を決意した人間です。これから僕が行う制裁には、口出し無用ですよ?」
『……うん、分かった…。』
だが次の瞬間、檸檬は体を震わせる。
その異変に首をかしげる骸。
「どうか、しましたか?」
『何か……ううん、誰かが来る!』
檸檬はソファから立ち上がって、キュロットの下のナイフを構えた。
僕の周りの治安を乱したヤツのアジトを突き止めた。
だから、今そこで首謀者を探しているトコ。
それにしても、弱いね。
弱すぎるよ。
そんなんで僕に喧嘩売ったの?
並盛も舐められたモンだね。
でももう、好きにはさせない。
並盛は“僕だけの街”だから。
階を1つ1つ上がって行けば、首謀者に会えるはずだ。
かかって来るのは雑魚ばかり。
あぁ、あの奥の部屋で最後みたいだ。
コツン…コツン…
革靴を鳴らして歩く。
「オラァァ!!」
飛び出してきた輩(恐らく黒曜生)も、とりあえず軽く片付ける。
ズザッ…
彼が飛んでった先には、もう1つ部屋があった。
そこに入ろうとしたその時。
シュッ、
キィンッ…!
「(誰…?)」
飛んで来たナイフをトンファーで弾き、そちらを向いた。
何…?
何で、いるの?
こんな所で…
何してるの?
「檸檬……」
そこに立っていたのは、殺気を放ち、ナイフを構える檸檬だった。
そこに、檸檬がいる事だけで驚いてるのに、
僕にナイフを投げた?
檸檬の口がゆっくりと開く。
何故か、聞かない方がいい気がした。
『……信じてたあたしが…バカだったんだね……』
見れば、その瞳は拭いきれない困惑と、抑えきれない憎悪と悲哀に満ちていて。
君が、そんな瞳を僕に向ける理由が分からなかった。
「檸檬、何言って…」
「檸檬、こちらへ。」
僕の言葉を遮って、奥から聞こえて来た声。
『うん…』
檸檬は方向転換をして、僕から離れて行く。
そして、奥のソファにいるヤツの隣に座った。
「(ふぅん…)」
全部は分からないけど、
これだけは分かったよ。
君が、敵のトップだね。
「やあ。」
「よく来ましたね。」
声をかけた僕に、檸檬の隣に座る彼が応答した。
薄く浮かべている笑みが、僕をイラつかせる。
「随分探したよ。君が悪戯の首謀者?」
「クフフ、そんなところですかね。」
「…どうして、檸檬はそっちにいるの?」
尋ねると、檸檬は顔をしかめた。
『そっちに、いられなくなったから……』
僕を見ることもなく、顔をそむけたまま小さくそう返す。
「檸檬どうして、」
「君にはもう、彼女に話しかける権利などありませんよ。」
遮ってそう言った男は、檸檬の肩を抱き寄せた。
檸檬、どうして抵抗しないの?
僕は、君が言うほど寛大じゃないんだ。
僕以外の誰かが、君にそんな風に触れるのは、許せない。
「君は…何なの?」
早く檸檬を取りかえさなくちゃ。
初めて“欲しい”と思った存在を。
「君の街の新しい秩序ですよ。そして…檸檬の恋人、とでも言っておきましょうかねぇ。」
『むっ、骸!?あ、あたし…!』
「いけませんか?僕は、決して檸檬を裏切らないと誓ったんですよ?君の側にいると。」
『う、うん…』
赤くなって俯く檸檬。
ダメだよ、
そいつにそんな顔見せないで。
「寝ぼけてるの?並盛に2つ秩序はいらないし、檸檬に2人の恋人はいらないよ。」
僕がそう言うと、“骸”と呼ばれた彼は、再びクフフと笑った。
檸檬は隣でつらそうに目をギュッと瞑る。
聞きたくない、とでも言うように。
「全く同感です。両方とも僕がなるから、君はいらない。」
あぁ、そういう事。
君の言いたいことは大体分かったよ。
けどね、檸檬が大人しく隣に座ってる理由が分からない。
僕が分からないワケじゃなさそうだ。
まるで……出会ってすぐの頃に時々見せていた“あの表情”が、戻ってきたみたいで。
そして、
あの寂しげな、苦しげな表情を引き戻させた原因は……
間違いなくこの男。
だから…
「それは叶わないよ。君はここで…………咬み殺す。」
トンファーの仕込み針を出して、構えた。
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その頃…
ブチッ、
「ひっ!何だこりゃーーーっ!!」
病院内に響くツナの叫び。
その足下には、変なものがピチピチと魚のように動いていた。
「レオンの尻尾が切れたな。」
「ひーっ!キモい~~!」
若干引くツナの横で、リボーンはそれを拾い上げ、目をキラリと光らせた。
「これが起こるって事は……不吉だ。」