日常編
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『夏祭り?』
「そうだよ、行くでしょ」
『うん!行く!』
檸檬は今、応接室で雲雀と会話中。
「でもね、僕らには仕事があるんだ」
『仕事?それって風紀の?』
「うん」
大変だなぁ、とため息をつく檸檬に、雲雀は付け足した。
「それでも檸檬は浴衣着てね」
『浴衣!?』
「僕が用意したから」
雲雀がそう言うと、奥から草壁がビニールに包まれた浴衣を1着、持って来た。
山吹色の生地に、紅い花が咲いている。
檸檬は思わず口をぽかんと開けた。
『これ…恭弥が?』
「祭りには浴衣でしょ」
『わぁーっ!!ありがとうっ!』
雲雀にぎゅっと抱きつき、頬にキスをする檸檬。
「じゃぁ、すぐ着て。もう行くから」
『えっ!今!?』
「着付け、出来ない?和服屋の店員でも呼ぼうか?」
雲雀が携帯を取り出そうとするのを止め、檸檬は首を振った。
『大丈夫、こないだ着たから。その時にリボーンに教わったんだ♪』
檸檬がそう言った途端、雲雀は眉間に皺を寄せた。
「こないだ…?」
『うん、えっとねぇ…七夕の時だったかな?』
顎に手を当て、その時の事を思い出す檸檬。
雲雀が口を尖らせている事に気付くと、少しだけ目を見開いた。
『恭弥??』
「何で?」
『えっと…何が?』
「何でその時僕のトコに来なかったの?」
『え…?』
檸檬は首をかしげた。
「何で僕がいない時に浴衣着たの?」
『え?』
何?どう言う事??
恭弥は何が言いたいの?
『だ、だって、恭弥が何処にいるか分からなかったし…「携帯があるでしょ」
とりあえずの言い訳も、難無く遮られる。
『だ、だって、恭弥が忙しかったかもしれないし…「そのくらい檸檬の為なら時間空けるよ」
またまた遮られる。
『だ、だって…「言い訳はもういいよ」
恭弥がちょっと大きな声で言ったから、あたしは言葉を詰まらせた。
「何、してたの?」
『えっと…1人で歩いてたらクレープ屋のおじさんにクレープ奢ってもらって、そのお礼に店番を手伝ってたら…』
あたしは続きを言おうかどうか迷った。
「それから…?」
恭弥が聞き返した。あたしは黙り続ける。
「檸檬?」
『………ない?』
「何?」
『もうこれ以上、怒らない?』
恭弥は少しだけ目を丸くした。
「怒らないよ、多分」
『“多分”じゃイヤ』
「……いいから言ってよ」
だって、この前恭弥がディーノと会った時、凄い殺気を出してたから。
もしかしたらディーノの事嫌いなのかなって、ちょっと不安になってるの。
『ディーノに会ってね、リボーンに呼ばれたんだけど暇になったって言うから、一緒に回ってたの。その後、河原で天体観測したんだ』
最後まで言い終えたあたしは、恭弥の顔をちらっと見た。
やっぱり、眉間の皺はちょっと濃くなってた。
『………怒らないって約束した』
「怒ってないよ」
『嘘。怒ってるもん。分かるもん』
「気のせいだよ」
『気のせいじゃない。これでもずっと一緒にいたんだよ?何で怒ってるかは分かんないけど、怒ってるのは分かるよ』
あたしがそう言うと、恭弥はあたしを見つめた。
『ずっと、一緒にいたんだもん。分かるよ、恭弥』
何故か恥ずかしくなって、あたしは目を逸らした。
すると恭弥はため息を1つついて。
「もう、いいよ」
『え?』
「早く浴衣着て。奥の部屋、開けておいたから」
『恭…「早くして。お祭り、行きたいんでしょ?」
何か…やっぱりわかんないや。
けど、許してくれたって事だよね?
『…ごめんね』
「もういいってば」
あたしは草壁さんから浴衣を受け取り、奥の部屋(給湯室)に入った。
「委員長……「五月蝿い」
気に食わない。
檸檬の浴衣を最初に見たのが、あの金髪の彼だってこと。
檸檬と2人で祭りを楽しんでたってこと。
これって嫉妬?僕が?
でも、さっきの檸檬の言葉に免じて、今日は許してあげる。
---『ずっと一緒にいたんだもん。分かるよ。』
===================
『着替えたよーっ!』
ガチャ
『に、似合うかな?』
「僕が選んだんだから、似合うに決まってるでしょ」
『ふふ、ありがとうっ!』
「じゃぁ行こうか」
『うんっ!』
「コレ履いてね」
『はーい』
恭弥が用意してくれた可愛い下駄を履いて、あたしは神社へと向かった。
---
------
-----------
神社にて。
『わーっ!!見て見てっ、すっごく綺麗!!』
「走らない方がいいよ」
『大丈夫だも…わわっ!』
慣れない下駄で走っていたあたしは、石につまずいた。
グイッ
「だから言ったでしょ。走らないでね」
『恭弥…ありがと』
「折角浴衣着てるんだから、汚さないでよ」
『気を付けます…』
あたしは恭弥に手を繋がれ、大人しく後に付いて行く。
『ところで恭弥、“仕事”って何?』
「あぁ……集金だよ」
『何の?』
「ショバ代」
『ショバ代!!?』
「ここは僕の土地だからね、払ってもらう事になってるんだ。」
ウソ、みんな可哀想……。
でも、とりあえず付いて行く。
綿飴とか、タコ焼きとかを買って食べながら。
『ねぇ恭弥、』
「何?」
『楽しいねっ!』
美味しくて、嬉しくて、あたしは笑顔になる。
すると恭弥は目を丸くして「そうだね」と、一言。
その言葉さえも嬉しくて、あたしは恭弥の少しひんやりした手を握り直した。
「次はあっちだよ」
『うん』
恭弥は1つの屋台から5万円ずつ徴収している。
活動費だ、とか言っていた。
少し飽きて来たあたしが、辺りをキョロキョロ見回していると、聞き覚えのある声がした。
「ありがとーございます」
「ホラよ」
「あい、3つね」
『(あれ…?)』
まさか…
『恭弥、あたしちょっとチョコバナナ買って来る!』
「はい、お金」
『ありがと!』
恭弥からお小遣いを貰い、チョコバナナを買いに行くと、
そこにはやっぱり……
『ツナ!隼人!武!』
「「「檸檬!?」」」
『な、何でお店だしてるの!?凄くない!?』
「ちょっと色々あって…」
「檸檬、笹川とかと一緒じゃねーのか?」
『えっと…うん』
だって、恭弥がいるんだもん。
「で?買うのか?買わねーのか?」
『買うっ!』
お金を渡して、隼人からチョコバナナを受け取った。
「京子ちゃん達と一緒じゃないって事は、檸檬…1人で来たの?」
『え?!ち、違うの……実は、その……』
もうすぐ恭弥がここにも来る。
そしたらツナ達からも5万円徴収するはずだ。
『あのね、今日はね……「檸檬、何してるの?」
来ちゃった…。
「ひ、雲雀さんーーー!!?」
ツナってば、めっちゃ驚いてるよ。
「てめー何しに来やがった!」
「まさか、」
「ショバ代って風紀委員にーーー!?」
『……そうなの』
あぁ、ちょっと申し訳ない気がする。
「払えないなら、屋台を潰す」
『ちょ、恭弥!!』
この……我が儘王子っ!
『あ、あのね!恭弥は潰すって言ったらホントに潰すから……払って、くれない?』
ここはなるべく穏便に!
「いくら、ですか?」
「5万だよ」
『ごめんね、みんな…』
「何で檸檬が謝るの?」
『ちょっと罪悪感感じたからだよっ!』
ツナ達はきちんと5万円払ってくれた。
後でお礼と謝罪しておかなくちゃ。
それから、全部の屋台を回って、5万円ずつ徴収した。
その度に罪悪感が募っていった。
「あの建物の中で集計するよ」
『うんっ!』
と言っても、徴収したお金であたしに色々買ってくれた恭弥。
その分を差し引いて計算するのは少し大変だと思う。
『(今のうちに食べたもの全部思い出しておかなくっちゃ。)』
あたしは1つずつ思い出していた。
すると、
「ねぇねぇ、もうすぐ花火やるんだってー。」
「えーっ!見よう見よう!」
とかいう会話が聞こえて来たもんだから、すっかりその気になって。
『恭弥、』
「何?」
『花火見たいっ!!』
「…分かったよ」
『わーいっ!』
あたしは恭弥の腕にくっついた。
そうだ!どうせだから“超五感”でも使って情報収集してみようっと!
お勧めスポットとか口走ってそうだし。
あたしは目を閉じ、開いた。
---「あっちの土手で見ようよ!」
---「おい、そっちは危ないって!!」
---「あーっ!久しぶりぃ。」
---「お好み焼きーっ、お好み焼きだよーっ!」
---「花火ーっ?あの辺から良く見えるってお母さんが言ってたよ」
---「元気そうだなぁ、ツナさんよぉ」
---「ライフセイバーの先輩!!?」
『(ツナ!!?)』
次の瞬間、あたしは恭弥の服をぎゅっと掴んでいた。
「檸檬?」
『恭弥……あたし、ツナを助けに行かなくちゃ!』
恭弥は一瞬驚いた顔をした。
「どうして?」
『ひったくりの主犯に掴まってるの!しかも……多分大人数。あたし、行かなくちゃ!』
「浴衣でどうやって戦うの?」
あ、そう言えばそうだった。
『恭弥ぁ~っ!!』
「(はぁ)分かったよ。ひったくりの金を貰いに行こうか」
『ありがとうっ!恭弥大好きっ!!』
あたしは恭弥のホッペにキスをした。
すると…
ふわっ
『え?』
「走りにくいでしょ」
またまた姫だっこーーーっ!!?
すごい…恥ずかしいっ!!
風が、耳の横をすり抜けてく。
“超五感”を発動させているせいか、その音は大きく伝わった。
「どっち?」
『階段の上!恭弥、あたし下ろして先に行って!』
「大丈夫だよ」
恭弥はあたしを抱えたまま、階段を登って行く。
すごい…あっという間に上に辿り着いた。
恭弥は、目の前のヤツから順番にトンファーで殴り倒して行く。
流石♪
「うわ!」
やられた人が、叫び声を上げた。
すると、人だかりが割れて、中心にいるツナが見えた。
『ツナっ!!』
「檸檬っ!!?雲雀さん!!」
「嬉しくて身震いするよ。うまそうな群れを見付けたと思ったら、追跡中のひったくり集団を大量捕獲」
ワォ、何かカッコいい台詞放ったよ、恭弥ってば。
そんな事を考えていると、中心にいたライフセイバーの先輩と目が合った。
「いつかの可愛い子ちゃんじゃねーか。遊びに来たのかぁ?」
『いつかの使えないライフセイバーじゃないですか。クビにでもなりました?』
「んだとぉ……」
見れば、あたしの方にも変な輩が攻め寄って来ていた。
『しょうがないなぁ』
あたしはぐっと背伸びをして、次の瞬間高く飛んだ。
ツナはいつの間にか死ぬ気弾を撃たれていた。
『(そろそろ着地かな)』
スタッ、
人と人の間に降りる。そしてまたふわりと飛び上がった。
『あたしを捕まえるなんて、100年早いよ♪』
不良達は、檸檬のその不敵な笑みにさえ見愡れたと言う。
いつの間にか隼人と武も参戦していた。
「雲雀と初の共同戦線だな」
「冗談じゃない。ひったくった金は僕が貰う」
「なぁ?」
「やらん!」
「当然っス」
『も~っ!恭弥ってばぁ……』
あたしは彼らの攻撃を避けるだけ。
それだけだった……のに。
『きゃっ!』
下駄だって事を忘れてた。
バランスを崩したあたしに、後ろから鉄の棒が振り下ろされる。
『やばっ!』
無理矢理“剛腕”でも発動させようとしたその時。
「うぉりゃあ!!」
『ツナ!』
殴られて、倒れる不良。
ツナはあたしの手を引っ張った。
「檸檬!こっちだ!」
『えっ!?』
「ここにいろ!」
『う、うん…』
あたしは、ツナ・隼人・武・恭弥の輪の中心に立たされた。
『(う、わぁ……)』
周りの敵が、あたしが何にもしないまま倒されて行く。
目の前にツナ、
右には隼人、
左には恭弥、
後ろには武、
すごく、すごく心強かった。
そして、見事あたし達は勝利をおさめたのであった。
『恭弥!待ってよ、恭弥!!』
「何?檸檬」
『ツナ達のお金、返してあげて』
あたしが頼むと、恭弥は目を逸らした。
「僕はひったくった金は全部貰うって言ったんだけど」
『でも!ツナ達は私利私欲でお店を出したんじゃないの!そのお金が無いと、町内の人に迷惑がかかるの!だから、お願い!』
あたしは両手をパチンと合わせた。
すると…
「じゃあ、この箱は檸檬にあげるよ」
『えっ?』
「勘違いしないでね。僕は“檸檬に”あげるんだから」
『恭弥……ありがとうっ!!』
ちゅ
恭弥の頬にキスをして、あたしはツナ達に駆け寄る。
『はいっ、コレ!』
「檸檬……ありがと!」
『んーん』
あたしが笑うと、ツナ達は少しだけ顔を赤くして。
「檸檬、その…浴衣似合ってるよ」
「だな!俺もそう思ってたぜ」
「おぅ……」
『ありがとっ!あ、ツナ、さっきはホントにありがとう』
「へ?」
『ツナ、カッコよかったよ!』
言いながら、ちょっと照れてしまった。
ツナも顔を赤くして。
『じゃぁ、あたしはコレで』
「う、うん」
「じゃなっ!」
「あばよ」
あたしは恭弥の方に駆けて行った。
『恭弥、花火!』
「分かってるよ」
『へへっ』
恭弥の腕にくっつく。
そのまま神社の中にある小さな建物に入り、集めたお金の集計を始めた。
『花火は?』
「もうすぐ見れるよ」
『ん?』
パアンッ!
『あっ!』
小さい坊主が雑巾がけをしているような廊下に出ると、綺麗な花火が視界いっぱいに広がった。
『キレー……』
「ここからが、何処よりも綺麗に見えるんだよ。ま、一般人は立ち入り禁止だけどね。寺の本陣だし」
『うわぁ~っ、本当にありがとう!恭弥っ!!』
その日見た花火は絶対忘れない、
そう思った檸檬でした。
「そうだよ、行くでしょ」
『うん!行く!』
檸檬は今、応接室で雲雀と会話中。
「でもね、僕らには仕事があるんだ」
『仕事?それって風紀の?』
「うん」
大変だなぁ、とため息をつく檸檬に、雲雀は付け足した。
「それでも檸檬は浴衣着てね」
『浴衣!?』
「僕が用意したから」
雲雀がそう言うと、奥から草壁がビニールに包まれた浴衣を1着、持って来た。
山吹色の生地に、紅い花が咲いている。
檸檬は思わず口をぽかんと開けた。
『これ…恭弥が?』
「祭りには浴衣でしょ」
『わぁーっ!!ありがとうっ!』
雲雀にぎゅっと抱きつき、頬にキスをする檸檬。
「じゃぁ、すぐ着て。もう行くから」
『えっ!今!?』
「着付け、出来ない?和服屋の店員でも呼ぼうか?」
雲雀が携帯を取り出そうとするのを止め、檸檬は首を振った。
『大丈夫、こないだ着たから。その時にリボーンに教わったんだ♪』
檸檬がそう言った途端、雲雀は眉間に皺を寄せた。
「こないだ…?」
『うん、えっとねぇ…七夕の時だったかな?』
顎に手を当て、その時の事を思い出す檸檬。
雲雀が口を尖らせている事に気付くと、少しだけ目を見開いた。
『恭弥??』
「何で?」
『えっと…何が?』
「何でその時僕のトコに来なかったの?」
『え…?』
檸檬は首をかしげた。
「何で僕がいない時に浴衣着たの?」
『え?』
何?どう言う事??
恭弥は何が言いたいの?
『だ、だって、恭弥が何処にいるか分からなかったし…「携帯があるでしょ」
とりあえずの言い訳も、難無く遮られる。
『だ、だって、恭弥が忙しかったかもしれないし…「そのくらい檸檬の為なら時間空けるよ」
またまた遮られる。
『だ、だって…「言い訳はもういいよ」
恭弥がちょっと大きな声で言ったから、あたしは言葉を詰まらせた。
「何、してたの?」
『えっと…1人で歩いてたらクレープ屋のおじさんにクレープ奢ってもらって、そのお礼に店番を手伝ってたら…』
あたしは続きを言おうかどうか迷った。
「それから…?」
恭弥が聞き返した。あたしは黙り続ける。
「檸檬?」
『………ない?』
「何?」
『もうこれ以上、怒らない?』
恭弥は少しだけ目を丸くした。
「怒らないよ、多分」
『“多分”じゃイヤ』
「……いいから言ってよ」
だって、この前恭弥がディーノと会った時、凄い殺気を出してたから。
もしかしたらディーノの事嫌いなのかなって、ちょっと不安になってるの。
『ディーノに会ってね、リボーンに呼ばれたんだけど暇になったって言うから、一緒に回ってたの。その後、河原で天体観測したんだ』
最後まで言い終えたあたしは、恭弥の顔をちらっと見た。
やっぱり、眉間の皺はちょっと濃くなってた。
『………怒らないって約束した』
「怒ってないよ」
『嘘。怒ってるもん。分かるもん』
「気のせいだよ」
『気のせいじゃない。これでもずっと一緒にいたんだよ?何で怒ってるかは分かんないけど、怒ってるのは分かるよ』
あたしがそう言うと、恭弥はあたしを見つめた。
『ずっと、一緒にいたんだもん。分かるよ、恭弥』
何故か恥ずかしくなって、あたしは目を逸らした。
すると恭弥はため息を1つついて。
「もう、いいよ」
『え?』
「早く浴衣着て。奥の部屋、開けておいたから」
『恭…「早くして。お祭り、行きたいんでしょ?」
何か…やっぱりわかんないや。
けど、許してくれたって事だよね?
『…ごめんね』
「もういいってば」
あたしは草壁さんから浴衣を受け取り、奥の部屋(給湯室)に入った。
「委員長……「五月蝿い」
気に食わない。
檸檬の浴衣を最初に見たのが、あの金髪の彼だってこと。
檸檬と2人で祭りを楽しんでたってこと。
これって嫉妬?僕が?
でも、さっきの檸檬の言葉に免じて、今日は許してあげる。
---『ずっと一緒にいたんだもん。分かるよ。』
===================
『着替えたよーっ!』
ガチャ
『に、似合うかな?』
「僕が選んだんだから、似合うに決まってるでしょ」
『ふふ、ありがとうっ!』
「じゃぁ行こうか」
『うんっ!』
「コレ履いてね」
『はーい』
恭弥が用意してくれた可愛い下駄を履いて、あたしは神社へと向かった。
---
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神社にて。
『わーっ!!見て見てっ、すっごく綺麗!!』
「走らない方がいいよ」
『大丈夫だも…わわっ!』
慣れない下駄で走っていたあたしは、石につまずいた。
グイッ
「だから言ったでしょ。走らないでね」
『恭弥…ありがと』
「折角浴衣着てるんだから、汚さないでよ」
『気を付けます…』
あたしは恭弥に手を繋がれ、大人しく後に付いて行く。
『ところで恭弥、“仕事”って何?』
「あぁ……集金だよ」
『何の?』
「ショバ代」
『ショバ代!!?』
「ここは僕の土地だからね、払ってもらう事になってるんだ。」
ウソ、みんな可哀想……。
でも、とりあえず付いて行く。
綿飴とか、タコ焼きとかを買って食べながら。
『ねぇ恭弥、』
「何?」
『楽しいねっ!』
美味しくて、嬉しくて、あたしは笑顔になる。
すると恭弥は目を丸くして「そうだね」と、一言。
その言葉さえも嬉しくて、あたしは恭弥の少しひんやりした手を握り直した。
「次はあっちだよ」
『うん』
恭弥は1つの屋台から5万円ずつ徴収している。
活動費だ、とか言っていた。
少し飽きて来たあたしが、辺りをキョロキョロ見回していると、聞き覚えのある声がした。
「ありがとーございます」
「ホラよ」
「あい、3つね」
『(あれ…?)』
まさか…
『恭弥、あたしちょっとチョコバナナ買って来る!』
「はい、お金」
『ありがと!』
恭弥からお小遣いを貰い、チョコバナナを買いに行くと、
そこにはやっぱり……
『ツナ!隼人!武!』
「「「檸檬!?」」」
『な、何でお店だしてるの!?凄くない!?』
「ちょっと色々あって…」
「檸檬、笹川とかと一緒じゃねーのか?」
『えっと…うん』
だって、恭弥がいるんだもん。
「で?買うのか?買わねーのか?」
『買うっ!』
お金を渡して、隼人からチョコバナナを受け取った。
「京子ちゃん達と一緒じゃないって事は、檸檬…1人で来たの?」
『え?!ち、違うの……実は、その……』
もうすぐ恭弥がここにも来る。
そしたらツナ達からも5万円徴収するはずだ。
『あのね、今日はね……「檸檬、何してるの?」
来ちゃった…。
「ひ、雲雀さんーーー!!?」
ツナってば、めっちゃ驚いてるよ。
「てめー何しに来やがった!」
「まさか、」
「ショバ代って風紀委員にーーー!?」
『……そうなの』
あぁ、ちょっと申し訳ない気がする。
「払えないなら、屋台を潰す」
『ちょ、恭弥!!』
この……我が儘王子っ!
『あ、あのね!恭弥は潰すって言ったらホントに潰すから……払って、くれない?』
ここはなるべく穏便に!
「いくら、ですか?」
「5万だよ」
『ごめんね、みんな…』
「何で檸檬が謝るの?」
『ちょっと罪悪感感じたからだよっ!』
ツナ達はきちんと5万円払ってくれた。
後でお礼と謝罪しておかなくちゃ。
それから、全部の屋台を回って、5万円ずつ徴収した。
その度に罪悪感が募っていった。
「あの建物の中で集計するよ」
『うんっ!』
と言っても、徴収したお金であたしに色々買ってくれた恭弥。
その分を差し引いて計算するのは少し大変だと思う。
『(今のうちに食べたもの全部思い出しておかなくっちゃ。)』
あたしは1つずつ思い出していた。
すると、
「ねぇねぇ、もうすぐ花火やるんだってー。」
「えーっ!見よう見よう!」
とかいう会話が聞こえて来たもんだから、すっかりその気になって。
『恭弥、』
「何?」
『花火見たいっ!!』
「…分かったよ」
『わーいっ!』
あたしは恭弥の腕にくっついた。
そうだ!どうせだから“超五感”でも使って情報収集してみようっと!
お勧めスポットとか口走ってそうだし。
あたしは目を閉じ、開いた。
---「あっちの土手で見ようよ!」
---「おい、そっちは危ないって!!」
---「あーっ!久しぶりぃ。」
---「お好み焼きーっ、お好み焼きだよーっ!」
---「花火ーっ?あの辺から良く見えるってお母さんが言ってたよ」
---「元気そうだなぁ、ツナさんよぉ」
---「ライフセイバーの先輩!!?」
『(ツナ!!?)』
次の瞬間、あたしは恭弥の服をぎゅっと掴んでいた。
「檸檬?」
『恭弥……あたし、ツナを助けに行かなくちゃ!』
恭弥は一瞬驚いた顔をした。
「どうして?」
『ひったくりの主犯に掴まってるの!しかも……多分大人数。あたし、行かなくちゃ!』
「浴衣でどうやって戦うの?」
あ、そう言えばそうだった。
『恭弥ぁ~っ!!』
「(はぁ)分かったよ。ひったくりの金を貰いに行こうか」
『ありがとうっ!恭弥大好きっ!!』
あたしは恭弥のホッペにキスをした。
すると…
ふわっ
『え?』
「走りにくいでしょ」
またまた姫だっこーーーっ!!?
すごい…恥ずかしいっ!!
風が、耳の横をすり抜けてく。
“超五感”を発動させているせいか、その音は大きく伝わった。
「どっち?」
『階段の上!恭弥、あたし下ろして先に行って!』
「大丈夫だよ」
恭弥はあたしを抱えたまま、階段を登って行く。
すごい…あっという間に上に辿り着いた。
恭弥は、目の前のヤツから順番にトンファーで殴り倒して行く。
流石♪
「うわ!」
やられた人が、叫び声を上げた。
すると、人だかりが割れて、中心にいるツナが見えた。
『ツナっ!!』
「檸檬っ!!?雲雀さん!!」
「嬉しくて身震いするよ。うまそうな群れを見付けたと思ったら、追跡中のひったくり集団を大量捕獲」
ワォ、何かカッコいい台詞放ったよ、恭弥ってば。
そんな事を考えていると、中心にいたライフセイバーの先輩と目が合った。
「いつかの可愛い子ちゃんじゃねーか。遊びに来たのかぁ?」
『いつかの使えないライフセイバーじゃないですか。クビにでもなりました?』
「んだとぉ……」
見れば、あたしの方にも変な輩が攻め寄って来ていた。
『しょうがないなぁ』
あたしはぐっと背伸びをして、次の瞬間高く飛んだ。
ツナはいつの間にか死ぬ気弾を撃たれていた。
『(そろそろ着地かな)』
スタッ、
人と人の間に降りる。そしてまたふわりと飛び上がった。
『あたしを捕まえるなんて、100年早いよ♪』
不良達は、檸檬のその不敵な笑みにさえ見愡れたと言う。
いつの間にか隼人と武も参戦していた。
「雲雀と初の共同戦線だな」
「冗談じゃない。ひったくった金は僕が貰う」
「なぁ?」
「やらん!」
「当然っス」
『も~っ!恭弥ってばぁ……』
あたしは彼らの攻撃を避けるだけ。
それだけだった……のに。
『きゃっ!』
下駄だって事を忘れてた。
バランスを崩したあたしに、後ろから鉄の棒が振り下ろされる。
『やばっ!』
無理矢理“剛腕”でも発動させようとしたその時。
「うぉりゃあ!!」
『ツナ!』
殴られて、倒れる不良。
ツナはあたしの手を引っ張った。
「檸檬!こっちだ!」
『えっ!?』
「ここにいろ!」
『う、うん…』
あたしは、ツナ・隼人・武・恭弥の輪の中心に立たされた。
『(う、わぁ……)』
周りの敵が、あたしが何にもしないまま倒されて行く。
目の前にツナ、
右には隼人、
左には恭弥、
後ろには武、
すごく、すごく心強かった。
そして、見事あたし達は勝利をおさめたのであった。
『恭弥!待ってよ、恭弥!!』
「何?檸檬」
『ツナ達のお金、返してあげて』
あたしが頼むと、恭弥は目を逸らした。
「僕はひったくった金は全部貰うって言ったんだけど」
『でも!ツナ達は私利私欲でお店を出したんじゃないの!そのお金が無いと、町内の人に迷惑がかかるの!だから、お願い!』
あたしは両手をパチンと合わせた。
すると…
「じゃあ、この箱は檸檬にあげるよ」
『えっ?』
「勘違いしないでね。僕は“檸檬に”あげるんだから」
『恭弥……ありがとうっ!!』
ちゅ
恭弥の頬にキスをして、あたしはツナ達に駆け寄る。
『はいっ、コレ!』
「檸檬……ありがと!」
『んーん』
あたしが笑うと、ツナ達は少しだけ顔を赤くして。
「檸檬、その…浴衣似合ってるよ」
「だな!俺もそう思ってたぜ」
「おぅ……」
『ありがとっ!あ、ツナ、さっきはホントにありがとう』
「へ?」
『ツナ、カッコよかったよ!』
言いながら、ちょっと照れてしまった。
ツナも顔を赤くして。
『じゃぁ、あたしはコレで』
「う、うん」
「じゃなっ!」
「あばよ」
あたしは恭弥の方に駆けて行った。
『恭弥、花火!』
「分かってるよ」
『へへっ』
恭弥の腕にくっつく。
そのまま神社の中にある小さな建物に入り、集めたお金の集計を始めた。
『花火は?』
「もうすぐ見れるよ」
『ん?』
パアンッ!
『あっ!』
小さい坊主が雑巾がけをしているような廊下に出ると、綺麗な花火が視界いっぱいに広がった。
『キレー……』
「ここからが、何処よりも綺麗に見えるんだよ。ま、一般人は立ち入り禁止だけどね。寺の本陣だし」
『うわぁ~っ、本当にありがとう!恭弥っ!!』
その日見た花火は絶対忘れない、
そう思った檸檬でした。