未来編②
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「ハハハ、綱吉クン!!なんて君は非力なんだろう。こんな細い首カンタンに折れちゃうよ♪」
「ぐあっ…」
首を固められたツナは白蘭の手を引きはがそうと抵抗するが、うまく力を入れられない。
だが意識だけはハッキリしており、白蘭の煽りはしっかり聞き取った。
「もう少しいい勝負になると思ったんだけど、つまんないなあ。リングから放たれる炎の大きさは覚悟の大きさだよ。君の、みんなを過去に帰そうとする覚悟はこんなものかい?」
「(違う…まだだ!!こいつを倒して…みんなで絶対に……過去へ帰るんだ!!!)」
「うーん、少し炎圧が上がったかな?じゃあ僕も上げよ♪」
「まだだ!!」
「うんうん、いい炎だ、その調子♪」
互いの大空のリングから、おびただしい炎が溢れ、放たれる。
周囲が圧倒され始めた、その時。
カァァァン……
「きた♪」
白蘭は目を輝かせ、ツナは目を見開く。
聞いたこともない妙な音が繰り返し鳴り響き、同時に、二つのリングから放たれる炎の形状が、まるで波紋のように何重にも美しい円を描き始めた。
共鳴
「何の音だ!?」
「一体どうなってんだ!?」
同じボンゴレリングを持つ守護者も状況が把握できない。
だが、少し離れた場所で観察していたディーノが呟いた。
「……リングが共鳴してるのか?」
そして同時に、森の奥にもある異変が起きていた。
---
------
-------------
「……な、……ぜ……」
蜜柑の指示でピグが放った最大級の炎弾と、形態変化(カンビオ・フォルマ)によってセレネが変化した羽ぼうきに檸檬が乗せたありったけの7属性複合炎。
その衝突は、当然ながら周囲に巨大なエネルギー波を与え、爆発が起きたかのような凄まじい風と膨大な砂埃が、ユニやリボーン、正一や京子たちに襲い掛かった。
それらがおさまるまでの十数秒、彼らはその場にうずくまり……そして、目の当たりにした。
『あたしは……もうこれ以上、蜜柑を傷つけたくないだけ。』
「冗、談も……っ、大概にっ……!」
結論から言えば、檸檬の7属性複合炎が勝利したようだった。
その証拠に、膝をつく蜜柑の傍に、本来のマーモセットのサイズに戻ったピグが倒れている。
「あの炎弾を、相殺したのか……」
「す、すごい……! 檸檬姉の炎、羽ぼうきの羽部分を覆うぐらいしかなかったのに……大きな炎弾を防ぎきった……!」
信じられないという表情の入江とフゥ太。
だがリボーンは少し考えた後、「なるほどな」と。
「おじさま?」
「修業の集大成ってやつだ。7属性の複合炎を習得してなきゃ、膝をついてたのは檸檬の方だったろーな。」
「まさかそれって……7属性の"性質"を全てあの一撃に……!?」
「そーゆーことだ。炎弾のサイズに合わせて羽部分を"構築"して"硬化"、同時に炎ごと"増殖"、相手の炎を"分解"……それら性質を一撃に"調和"させたんだな。」
「リボーンちゃん、それってあと2つ足りないですけど…」
「もしかして、今蜜柑さんを包んでる優しい感じの炎が残りの…」
京子の言う通り、膝をついている蜜柑の全身は2色の炎に覆われていた。
本人もその炎の性質と檸檬の意図に気付いているようで、一歩一歩近づく檸檬に、なおも怒りと憎しみの視線を向ける。
「どこま、で……私を、侮辱すればっ……!」
『蜜柑、もうやめよう。』
「…………は?」
『あたしは……』
カァァァァン…!
崩れ落ちそうな自分の身体を必死に腕の力で支える蜜柑に、檸檬が手を差し伸べた、その時だった。
「ユニちゃんどうしたの!?」
「この音は何!?」
「おしゃぶりが鳴ってる!!」
「私にもわかりません……あっ! 大空のおしゃぶりが…沢田さんと白蘭の大空のリングに…共鳴してる……?」
ユニがその可能性を察知した次の瞬間、彼女は大空の炎の結界に包まれて宙に浮いた。
「どんどん行っちゃう!!」
「待ちやがれ!!」
追いかけようとするリボーンだが、彼さえも結界は突破できずに弾かれる。
そして突如出現した強力な炎のエネルギーに、檸檬の脳にも負荷がかかり、膝をついた。
「檸檬っ!?」
『だい、じょうぶ……先に、ユニを追って……!』
「……ああ、行くぞお前達。」
リボーンの後に続いて、それぞれがユニを追う。
だがその先で……ユニの結界はツナと白蘭を包む巨大な結界と融合してしまった。
「ようこそユニちゃん♪」
「ユニ…! 来ちゃダメだ……」
「どうだい、驚いただろう? 73の大空は、とてつもない炎を放出し合うとこんな特別な状態になるんだ。これで誰にも邪魔されない3人だけの舞台ができたね。と言っても綱吉クンにはもう用がないから、すぐに僕とユニちゃんだけの2人っきりの舞台になるけどね。」
ツナの首をしめてみせる白蘭に、「やめて!」と叫ぶユニ。
だが白蘭は批判する。
ボンゴレには勝ち目のない戦いだと分かっていながら自分を守らせた自分勝手なユニに、制止する権利などない、と。
すると、何も返さないユニの代わりに反論するように、マントの内側からいくつもの光がこぼれ、動いた。
「今のは何だい? 何かを隠してるね。」
「ダメです…まだダメ……」
「まだ?」
動きを止めようとするユニだったが、それらはその手を抜けて地に落ちた。
「あれは、アルコバレーノのおしゃぶり!!」
「あっ、おしゃぶりの表面から何か飛びだしている!!」
ここで追いついたリボーンが、その様子を見て分析した。
「アルコバレーノの肉体の再構成が始まろーとしてんな。」
「再構成!?」
「わかりやすく言えば、"復活(リ・ボーン)"だ。」
藍のおしゃぶりからは、マーモンのフード。
緑のおしゃぶりからは、ヴェルデのメガネ。
青のおしゃぶりからは、コロネロのバンダナ。
紫のおしゃぶりからは、スカルのヘルメット。
赤のおしゃぶりからは、風の結われた髪。
「大空のアルコバレーノの力をもってすれば、仮死状態のアルコバレーノを生き返らせることができると聞いたことがある…。だがまさか、おしゃぶりからとはな…」
「……まさか、ユニ様の逃亡の狙いは最初から…」
「そうです。ユニはミルフィオーレの謀略により抹殺されたアルコバレーノの復活の時間を作るために、沢田綱吉に自分と仲間のおしゃぶりを守って欲しいと、懇願したのです。」
そして、そう語る骸がチョイス会場からの離脱するツナ達を援護したのも、ユニの目的を知っていたため。
アルコバレーノが復活すれば、世界の秩序が回復するのに加え、白蘭を倒すための戦力にもなる。
「確かに今この中で復活されると面倒くさそーだなー。でもその様子じゃ、へたすりゃあと1時間はかかりそうだね。」
白蘭の鋭い眼光が、ユニをたじろがせる。
「図星だね。」
にこりと笑い、白蘭はついにツナの首に力を込めた。
嫌な音が周りに聞こえるほど響き、ツナの額の炎は消え、そのまま地に臥せってしまう。
「10代目!!」
「ツナ!」
「沢田さん!!」
「この頑丈な結界の中にはもう誰も来やしないよ。コレで君は僕のもの♪泣いても叫んでも無駄だよ。もうアルコバレーノも僕を倒してはくれない。」
「その通りだ。」
絶望をつきつけるような白蘭の言葉に同意したのは、リボーンだった。
「お前を倒すのはアルコバレーノじゃねぇ。俺の生徒――ツナだ。」
この期に及んで、真剣な目で、何を言うのかと思えば。
今さっき僕が首を捻って失神させた綱吉クンに、どこまでも過度な期待をして。
アルコバレーノ復活だとか、世界の秩序の回復だとか、そんな茶番に付き合ってるヒマは無いんだ。
だって、ユニちゃんがこっちに引っ張られてきたことで、確信したから。
森の向こうの炎の流れがほぼ止まった。
つまり……檸檬チャンと蜜柑の戦闘が終わった。
それも恐らく、僕の意にそぐわない結末で。
あんなに膨れ上がっていた憎悪の炎が、
檸檬チャンを殺すためだけに捻じ曲げられて作られた蜜柑だけの特別な大空の波動が、
数分前から全く伝わってこない。
帰ってきて、って言ったのに。
この世界の君は、僕にとって最後の蜜柑なのに。
早く、取り返しに行かなくちゃ。
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------------
-「君が死なない限り、僕は死なない。」
呪文のように、その言葉を繰り返してた。
結果的にいつも無茶してしまうあたしの思考を、この時代の恭弥はとてもよく分かってたんだと思う。
傷ついて、傷つけてばかりで、あたしはやっぱりあたしのことが許せない。
蜜柑に言われた"人間の闇"って評価も、正直頷けるとさえ思っちゃう。
だけどね……、
『(ねぇカシス、見ててくれた…?)』
あたし、初めて、人の怪我を治すことができたよ。
それはあたしが元々持っている雲の波動じゃ、為しえなかった。
カシスから譲り受けた第六感があったから、
複合炎が使えるようになったから、できたんだよ。
「いい加減、ちゃんと、答えなさいよっ……!」
『あたしは、蜜柑を殺したくない。だけどあたしは、大人しく殺されたくもない。それだけだよ。』
そう、だから……残りの2属性の性質は、まとめて蜜柑に届かせた。
晴の"活性"は蜜柑の負傷部位に送り、同時に雨の"鎮静"で全身を包む。
そんな状態でここまで長く意識を保ち続けている蜜柑の精神力は、本当に大したものなんだけど。
「そうやって……どこまでも……見下して……」
『蜜柑、お願いだからココで休んでて。あたしは絶対に蜜柑に危害を加えない。だけどあたしの大切な人たちを護るために、白蘭と真6弔花はどうにか止めなくちゃいけないの。』
白蘭の名前を出したら、項垂れていた蜜柑はピクリと肩を震わせた。
けれどその直後にとうとう限界がきたようで、鎮静の効果によって倒れ込む。
『全部が終わったら、あたし達は過去に帰る。もちろん、過去の蜜柑を始末しに行ったりもしない。関わらないようにするから……赦して、とまでは、言えないけど……』
「姉、さ……ん、待っ……」
必死に睡魔に抗うような呼吸の中で、蜜柑があたしを引き留めるような言葉を使う。
それを最後まで聞いちゃうと泣きそうだったから、わざと遮った。
『今までごめんね。あたしが蜜柑と双子として生まれたせいで、いっぱい苦しませてしまったこと……本当に、ごめん。』
サヨナラは言いたくなくて、あたしはそのまま背を向け駆けだした。
蜜柑の波動は完全に鎮静化して、睡眠状態に入ったのがわかった。
だからあたしは、知らなかった。
この鎮静によって、蜜柑が深い眠りに落ちたことによって、"ある変化"が起きたことを。
「(…姉さんの……うそつき………)」
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「ぐあっ…」
首を固められたツナは白蘭の手を引きはがそうと抵抗するが、うまく力を入れられない。
だが意識だけはハッキリしており、白蘭の煽りはしっかり聞き取った。
「もう少しいい勝負になると思ったんだけど、つまんないなあ。リングから放たれる炎の大きさは覚悟の大きさだよ。君の、みんなを過去に帰そうとする覚悟はこんなものかい?」
「(違う…まだだ!!こいつを倒して…みんなで絶対に……過去へ帰るんだ!!!)」
「うーん、少し炎圧が上がったかな?じゃあ僕も上げよ♪」
「まだだ!!」
「うんうん、いい炎だ、その調子♪」
互いの大空のリングから、おびただしい炎が溢れ、放たれる。
周囲が圧倒され始めた、その時。
カァァァン……
「きた♪」
白蘭は目を輝かせ、ツナは目を見開く。
聞いたこともない妙な音が繰り返し鳴り響き、同時に、二つのリングから放たれる炎の形状が、まるで波紋のように何重にも美しい円を描き始めた。
共鳴
「何の音だ!?」
「一体どうなってんだ!?」
同じボンゴレリングを持つ守護者も状況が把握できない。
だが、少し離れた場所で観察していたディーノが呟いた。
「……リングが共鳴してるのか?」
そして同時に、森の奥にもある異変が起きていた。
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「……な、……ぜ……」
蜜柑の指示でピグが放った最大級の炎弾と、形態変化(カンビオ・フォルマ)によってセレネが変化した羽ぼうきに檸檬が乗せたありったけの7属性複合炎。
その衝突は、当然ながら周囲に巨大なエネルギー波を与え、爆発が起きたかのような凄まじい風と膨大な砂埃が、ユニやリボーン、正一や京子たちに襲い掛かった。
それらがおさまるまでの十数秒、彼らはその場にうずくまり……そして、目の当たりにした。
『あたしは……もうこれ以上、蜜柑を傷つけたくないだけ。』
「冗、談も……っ、大概にっ……!」
結論から言えば、檸檬の7属性複合炎が勝利したようだった。
その証拠に、膝をつく蜜柑の傍に、本来のマーモセットのサイズに戻ったピグが倒れている。
「あの炎弾を、相殺したのか……」
「す、すごい……! 檸檬姉の炎、羽ぼうきの羽部分を覆うぐらいしかなかったのに……大きな炎弾を防ぎきった……!」
信じられないという表情の入江とフゥ太。
だがリボーンは少し考えた後、「なるほどな」と。
「おじさま?」
「修業の集大成ってやつだ。7属性の複合炎を習得してなきゃ、膝をついてたのは檸檬の方だったろーな。」
「まさかそれって……7属性の"性質"を全てあの一撃に……!?」
「そーゆーことだ。炎弾のサイズに合わせて羽部分を"構築"して"硬化"、同時に炎ごと"増殖"、相手の炎を"分解"……それら性質を一撃に"調和"させたんだな。」
「リボーンちゃん、それってあと2つ足りないですけど…」
「もしかして、今蜜柑さんを包んでる優しい感じの炎が残りの…」
京子の言う通り、膝をついている蜜柑の全身は2色の炎に覆われていた。
本人もその炎の性質と檸檬の意図に気付いているようで、一歩一歩近づく檸檬に、なおも怒りと憎しみの視線を向ける。
「どこま、で……私を、侮辱すればっ……!」
『蜜柑、もうやめよう。』
「…………は?」
『あたしは……』
カァァァァン…!
崩れ落ちそうな自分の身体を必死に腕の力で支える蜜柑に、檸檬が手を差し伸べた、その時だった。
「ユニちゃんどうしたの!?」
「この音は何!?」
「おしゃぶりが鳴ってる!!」
「私にもわかりません……あっ! 大空のおしゃぶりが…沢田さんと白蘭の大空のリングに…共鳴してる……?」
ユニがその可能性を察知した次の瞬間、彼女は大空の炎の結界に包まれて宙に浮いた。
「どんどん行っちゃう!!」
「待ちやがれ!!」
追いかけようとするリボーンだが、彼さえも結界は突破できずに弾かれる。
そして突如出現した強力な炎のエネルギーに、檸檬の脳にも負荷がかかり、膝をついた。
「檸檬っ!?」
『だい、じょうぶ……先に、ユニを追って……!』
「……ああ、行くぞお前達。」
リボーンの後に続いて、それぞれがユニを追う。
だがその先で……ユニの結界はツナと白蘭を包む巨大な結界と融合してしまった。
「ようこそユニちゃん♪」
「ユニ…! 来ちゃダメだ……」
「どうだい、驚いただろう? 73の大空は、とてつもない炎を放出し合うとこんな特別な状態になるんだ。これで誰にも邪魔されない3人だけの舞台ができたね。と言っても綱吉クンにはもう用がないから、すぐに僕とユニちゃんだけの2人っきりの舞台になるけどね。」
ツナの首をしめてみせる白蘭に、「やめて!」と叫ぶユニ。
だが白蘭は批判する。
ボンゴレには勝ち目のない戦いだと分かっていながら自分を守らせた自分勝手なユニに、制止する権利などない、と。
すると、何も返さないユニの代わりに反論するように、マントの内側からいくつもの光がこぼれ、動いた。
「今のは何だい? 何かを隠してるね。」
「ダメです…まだダメ……」
「まだ?」
動きを止めようとするユニだったが、それらはその手を抜けて地に落ちた。
「あれは、アルコバレーノのおしゃぶり!!」
「あっ、おしゃぶりの表面から何か飛びだしている!!」
ここで追いついたリボーンが、その様子を見て分析した。
「アルコバレーノの肉体の再構成が始まろーとしてんな。」
「再構成!?」
「わかりやすく言えば、"復活(リ・ボーン)"だ。」
藍のおしゃぶりからは、マーモンのフード。
緑のおしゃぶりからは、ヴェルデのメガネ。
青のおしゃぶりからは、コロネロのバンダナ。
紫のおしゃぶりからは、スカルのヘルメット。
赤のおしゃぶりからは、風の結われた髪。
「大空のアルコバレーノの力をもってすれば、仮死状態のアルコバレーノを生き返らせることができると聞いたことがある…。だがまさか、おしゃぶりからとはな…」
「……まさか、ユニ様の逃亡の狙いは最初から…」
「そうです。ユニはミルフィオーレの謀略により抹殺されたアルコバレーノの復活の時間を作るために、沢田綱吉に自分と仲間のおしゃぶりを守って欲しいと、懇願したのです。」
そして、そう語る骸がチョイス会場からの離脱するツナ達を援護したのも、ユニの目的を知っていたため。
アルコバレーノが復活すれば、世界の秩序が回復するのに加え、白蘭を倒すための戦力にもなる。
「確かに今この中で復活されると面倒くさそーだなー。でもその様子じゃ、へたすりゃあと1時間はかかりそうだね。」
白蘭の鋭い眼光が、ユニをたじろがせる。
「図星だね。」
にこりと笑い、白蘭はついにツナの首に力を込めた。
嫌な音が周りに聞こえるほど響き、ツナの額の炎は消え、そのまま地に臥せってしまう。
「10代目!!」
「ツナ!」
「沢田さん!!」
「この頑丈な結界の中にはもう誰も来やしないよ。コレで君は僕のもの♪泣いても叫んでも無駄だよ。もうアルコバレーノも僕を倒してはくれない。」
「その通りだ。」
絶望をつきつけるような白蘭の言葉に同意したのは、リボーンだった。
「お前を倒すのはアルコバレーノじゃねぇ。俺の生徒――ツナだ。」
この期に及んで、真剣な目で、何を言うのかと思えば。
今さっき僕が首を捻って失神させた綱吉クンに、どこまでも過度な期待をして。
アルコバレーノ復活だとか、世界の秩序の回復だとか、そんな茶番に付き合ってるヒマは無いんだ。
だって、ユニちゃんがこっちに引っ張られてきたことで、確信したから。
森の向こうの炎の流れがほぼ止まった。
つまり……檸檬チャンと蜜柑の戦闘が終わった。
それも恐らく、僕の意にそぐわない結末で。
あんなに膨れ上がっていた憎悪の炎が、
檸檬チャンを殺すためだけに捻じ曲げられて作られた蜜柑だけの特別な大空の波動が、
数分前から全く伝わってこない。
帰ってきて、って言ったのに。
この世界の君は、僕にとって最後の蜜柑なのに。
早く、取り返しに行かなくちゃ。
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-「君が死なない限り、僕は死なない。」
呪文のように、その言葉を繰り返してた。
結果的にいつも無茶してしまうあたしの思考を、この時代の恭弥はとてもよく分かってたんだと思う。
傷ついて、傷つけてばかりで、あたしはやっぱりあたしのことが許せない。
蜜柑に言われた"人間の闇"って評価も、正直頷けるとさえ思っちゃう。
だけどね……、
『(ねぇカシス、見ててくれた…?)』
あたし、初めて、人の怪我を治すことができたよ。
それはあたしが元々持っている雲の波動じゃ、為しえなかった。
カシスから譲り受けた第六感があったから、
複合炎が使えるようになったから、できたんだよ。
「いい加減、ちゃんと、答えなさいよっ……!」
『あたしは、蜜柑を殺したくない。だけどあたしは、大人しく殺されたくもない。それだけだよ。』
そう、だから……残りの2属性の性質は、まとめて蜜柑に届かせた。
晴の"活性"は蜜柑の負傷部位に送り、同時に雨の"鎮静"で全身を包む。
そんな状態でここまで長く意識を保ち続けている蜜柑の精神力は、本当に大したものなんだけど。
「そうやって……どこまでも……見下して……」
『蜜柑、お願いだからココで休んでて。あたしは絶対に蜜柑に危害を加えない。だけどあたしの大切な人たちを護るために、白蘭と真6弔花はどうにか止めなくちゃいけないの。』
白蘭の名前を出したら、項垂れていた蜜柑はピクリと肩を震わせた。
けれどその直後にとうとう限界がきたようで、鎮静の効果によって倒れ込む。
『全部が終わったら、あたし達は過去に帰る。もちろん、過去の蜜柑を始末しに行ったりもしない。関わらないようにするから……赦して、とまでは、言えないけど……』
「姉、さ……ん、待っ……」
必死に睡魔に抗うような呼吸の中で、蜜柑があたしを引き留めるような言葉を使う。
それを最後まで聞いちゃうと泣きそうだったから、わざと遮った。
『今までごめんね。あたしが蜜柑と双子として生まれたせいで、いっぱい苦しませてしまったこと……本当に、ごめん。』
サヨナラは言いたくなくて、あたしはそのまま背を向け駆けだした。
蜜柑の波動は完全に鎮静化して、睡眠状態に入ったのがわかった。
だからあたしは、知らなかった。
この鎮静によって、蜜柑が深い眠りに落ちたことによって、"ある変化"が起きたことを。
「(…姉さんの……うそつき………)」
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