日常編
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こんにちは、檸檬です。
ただいま応接室にいます。
恭弥に呼ばれてたから何があるのかと思いきや、何も無いと言われてブロークンハートです…。
「何それ」
『ひっ、人の心を読まないで!!』
「聞こえたんだよ」
『だ、だって…今日は花が遊びに来るって言うから早く帰ろうと思ったのに…』
「檸檬は僕とそいつ、どっちが大事なの?」
恭弥が何か寂しそうな顔で聞くから……ちょっとドキッとした。
『どっちも…』
俯いてそう答える。
「はぁ…」
恭弥はため息をついた。
何で?
何でため息!?
あたしがどっちか選べると思うの!?
『(皆が大事だって、何回言えば分かってくれるのよ…)』
あたしもため息をついた。
「……会いたかったから」
『え?』
急に恭弥がそんな事を言ったから、あたしは少し驚いた。
「会いたくて呼ぶのはダメなの?」
『えっ、と……ダメじゃないけど…』
何か恭弥にそんな事言われると恥ずかしいよ。
恭弥ってそんなキャラじゃないでしょ?
『ご、ごめんね、恭弥。お詫びに仕事手伝うよ』
「だから、今日は仕事も何にもないってば」
『(めっちゃ意味無い!!?)』
あ、でもそれって…
ホントに会いたくて呼んでくれたって事?
『へへっ』
「どしたの?」
『何でもないっ!』
ちょっと嬉しいな、なんて♪
「今日はシュークリームがあるけど」
『食べるっ!』
あたしがそう言うと、草壁さんが持って来てくれた。
『いつもありがとうございます』
軽くお辞儀をする。
草壁さんもあたしにお辞儀を返してくれた。
『あれ?恭弥の分は無いの?』
「無いよ」
何かちょっと罪悪感を感じた。
『恭弥、』
「何?」
隣に座ってあたしを見ている恭弥に、スプーンを差し出す。
『一緒に食べよ♪』
恭弥はちょっと驚いたようで、だけどすぐに微笑んだ。
「それは檸檬のでしょ。僕はいいよ」
『でも…』
「いいよ」
あたしは恭弥には勝てません。
だって、王子様フェイスなんだもんっ!!
綺麗な笑み浮かべられたりしちゃったらさ、断れないよね?
うん、そうだよね。
『じゃ、お言葉に甘えて…』
あたしはパクパクと食べ始めた。
カスタードクリームがおいしい。
生クリームもおいしい。
シュ-生地もおいしい。
生きてて良かったぁ~~~。
とろけるあたしの顔を恭弥が凝視していた事は、知らなかった。
『ごちそうさまでしたっ!』
「草壁、」
「はい」
恭弥が名前を呼んだだけで、草壁さんはあたしの食べ終わったお皿を片付けてくれた。
再びちょっと罪悪感。
「ねぇ、檸檬」
『なぁに?』
「眠くなって来た」
え?
えっと……どのような反応をしていいのか分からないんですが…
あたしが戸惑っていると、膝の上に何か乗って来た。
『ん?』
これは、膝枕、をさせられている??
『きょ、恭弥??』
「何?」
『コレは何?』
「膝枕」
間。
いやね、
そんなにさらっと答えられても…困るんですけど!!
今日は花が来るって言ってんじゃん!
聞いてなかったの!?
「聞いてたよ」
『また人の心読んで~っ!』
「でも、檸檬の膝枕で寝たかったから」
『それで呼んだの?』
「まぁね」
ツナ、ごめんね。
今日は早く帰れそうにありません。
ま、いっか。
とか思い始めた自分がいます。
「スカート、短くない?」
『長いと動きにくいのっ!』
「ふぅん…」
恭弥の髪が足に当たって少しくすぐったい。
その黒髪は、とってもふわふわしてて可愛い。
あたしは思わず恭弥の頭を撫でた。
『(可愛い~♪)』
恭弥は反応しなかった。
もう寝ちゃったのかな?いいけど。
『ふぁ~…』
あたしも眠くなって来たよ。
窓から見える夕焼けが綺麗だなぁ。
最近日が落ちるのが早くなって来たし。
ちょっとの間、寝ちゃお♪
『草壁さん、』
「はい」
『30分したら、起こしてくれませんか?』
「分かりました」
あたしは恭弥の頭を膝に乗せたまま目を閉じた。
草壁さんは、あたし達が寝てる間どうするんだろう?
そんな疑問を残しつつ、あたしはゆっくりと眠りの世界に落ちて行った。
---
------
いつも君の無邪気な行動に、振り回されてる僕だから、
たまにはいいでしょ?僕に振り回されててよ。
今日はこのくらいで勘弁してあげるけど、
いつか……
いつかもっと、檸檬に近付けるように。
檸檬が僕だけを見るように。
そう、思ってるよ。
周りは簡単に諦めると思うけど、
檸檬は簡単に振り向かないと思うから、
僕の我が儘を聞きながら、少しずつ近付ければいい。
『…や、恭弥………』
「何?」
寝言??
『くすぐったい……』
頭乗せてるから?
それっきり、檸檬は何も言わなかった。
面白い寝言だね。
覚えておくよ。
眠かったのは本当。
だけど、檸檬に膝枕させた瞬間、それは覚めた。
檸檬に気付かれないように起き上がる。
「草壁、」
「はい」
「行っていいよ」
「はい」
草壁が退室するのを見届け、僕はそっと檸檬に近づく。
そして、気付かれないように、頬にキスをした。
2人きりになるのは簡単だけど、
君に近づくのは、本当に難しいね。
「……君が初めてだよ、檸檬…」
僕の独占欲を、こんなにもかき立てるのは。
すやすや眠る檸檬に、自分の学ランをかけた。
30分後。
「檸檬……檸檬……」
『ん…?』
ゆっくりと目を開ければ、そこには恭弥の顔。
『ぅ、わっ!』
一番始めに王子様フェイスなんて!!
心臓に悪いよ…
「おはよう、檸檬」
『お、おはよう…って、もう30分経ったの!!?』
「うん」
あたしはバッと立ち上がった。
『帰らなくちゃ!』
目をこすって、恭弥の方を向く。
『恭弥、シュークリームありがとう!それと、休ませてくれてありがとう!あと、学ランもありがとう!』
「別に」
いつもみたいに素っ気無い返事。
だけど、恭弥は優しいって知ってるもん。
『また明日ね!』
「うん」
あたしは応接室を飛び出た。
家に急がなくちゃ!
花、帰っちゃったかなぁ?
出来る限り速く走った。
---
------
------------
その頃。
なんて事だろう……
10年前に来たと思ったら、こんな恰好になっているなんて。
しかも、遊びに来ていた長い黒髪のお嬢さんには初対面で嫌われるし……
どうなってるんだ?
『たっだいまーっ!!』
あ、檸檬さんの声だ。
「お帰り、檸檬」
『ツナ、花は帰っちゃった?』
「うん、少し前に…」
『あぁ~…』
ペタンという音がし、檸檬さんが廊下に座り込んだのが分かった。
『花、ちゃんとランボちゃんに会えた??』
「うん、それが…」
若きボンゴレは言葉を濁している。
それもそのはず。
10年バズーカの故障で、こんな事になっているんだから。
『どうしたの?ツナ』
「檸檬、とりあえず俺の部屋に来てよ。そしたら分かるから」
階段を登る足音が、2つ聞こえる。
俺は部屋の隅で小さくなってうずくまっていた。
ガチャ、
「ランボー?」
『ここにいるの?』
「あれ?ランボーっ」
見られたくない…
でも、その望みは絶たれた。
『ランボちゃん発見!!』
「いつもと違う、でしょ?」
部屋の隅にいた俺を、檸檬さんは抱え上げた。
若きボンゴレは苦笑いをしながら言う。
「10年バズーカが壊れちゃってさ、今のランボ、精神だけ大人ランボなんだよ」
『えっ!?そーなの!!?』
そうなんですよ、
出来れば檸檬さん、あなたにこんな醜態はさらしたくなかった…。
『可愛い~~~っ!!!!』
「「え!?」」
『なーんかいつもより可愛いなって思ってたのよね~。そっかぁ、中身は大人ランボちゃんなんだぁ』
檸檬さんはまじまじと俺を見た。
『ねぇねぇ、何かしゃべって』
期待した瞳。
「お、お久しぶりです……若き檸檬さん」
『きゃーっ!!』
「(えぇーーーっ!!?)」
檸檬さんは俺をぎゅっと抱きしめた。
少し、苦しいぐらいに。
『可愛いっ!ランボちゃん、可愛いっ!!』
「あのー…檸檬?」
『ツナ!あたし、このランボちゃんが元に戻るまで、面倒見てていい?』
「えっ、あ、別にいいけど……」
『やったーっ!!』
俺を抱えたまま飛び跳ねる檸檬さん。
『あたし、ちょっと着替えて来るね』
やっと俺を下ろして、檸檬さんは1階の自分の部屋へと駆けて行った。
残された若きボンゴレと俺の間に沈黙が流れる。
「これは…どう言う事でしょうか…?」
「檸檬は気に入ったんじゃない?良かったじゃん、大人ランボ」
檸檬さんは、ずっと俺と一緒にいてくれた。
『ランボちゃん、ご飯ちゃんと食べれる?』
『ランボちゃん、トイレのドア開けられる?』
『ランボちゃん、階段上れる?』
嬉しかった。
檸檬さんが俺だけに構ってくれるのが、本当に嬉しかった。
子供の姿のままでもいいと、思ってしまうくらいに。
『ランボちゃん、ブドウジュース飲む?』
「あの…紅茶で……」
『あ、そっか!大人ランボちゃんだもんね。』
ごめんね、と言いつつぺロッと舌を出す檸檬さんは、本当に可愛かった。
『ランボちゃん、おいで』
手招きされて、側に行くと、肩に乗せられる。
檸檬さん曰く、5歳の俺はいつもそこに座っているらしい。
檸檬さんの肩の上…一番近くじゃないか。
こんな近くで檸檬さんの顔が見れるなんて、本当に幸せだ。
『5歳のランボちゃんも、これくらい大人しいといいのにねー。あ!でも、はしゃぎ回るランボちゃんも、あたしは好きだよっ』
そう言って、すぐ隣にいる俺に笑いかける。
綺麗な笑顔だった。
5歳の俺がココを定位置にしているのは、コレが理由だろうか。
いや、そんな事は微塵も考えていないだろう。
だから哀しい。
何の躊躇いもなく檸檬さんに近付けるのに、何もしようとしないから。
10年後では、遅いのに。
何かしようと思っても、躊躇いなくして近づけないのに。
「檸檬さん…」
『なぁに?』
「先日は、バレンタインのチョコを下さって、ありがとうございました」
檸檬さんはきょとんとした。
『そっか!大人ランボちゃんにあげたんだよね!なーんか今のランボちゃん小さいからさ、ちょっと吃驚しちゃった』
へへっと笑った後、『もう1つ作っておくべきだったかな?』と俺に聞く。
檸檬さんに何の感情も抱いていない5歳の俺に、檸檬さんの心がこもったチョコなんていらない。
全部俺に下さい。
そうすれば、子供の時に貰うより、何倍も嬉しさを感じる事が出来ますから。
「ホワイトデーには、必ずお返しします」
『10年後のあたしに?』
「出来れば、今の檸檬さんに」
俺がそう言うと、檸檬さんは目を丸くした。
『ありがとうっ!ランボちゃん!』
お礼を言うべきはこっちなんです。
あなたのその笑顔に何度励まされたか。
何度救われたか。
何度幸せを貰ったか。
そして、檸檬さんは再び俺を抱きしめた。
俺も、小さい手で出来る限り抱きしめ返した。
大好きです、檸檬さん。
---
--------
1週間経つと、ランボちゃんは元に戻ってしまった。
「ガハハハハ!!」
今日もその声が絶えない。
「檸檬ー、アメちょうだい!!」
『はい、ランボちゃん』
「檸檬、あんまり甘やかしちゃダメだよ
『あははっ、ツナは本当にお兄さんみたいだねっ!』
「嬉しくないよ!!」
このランボちゃんも確かに可愛いけどさ、
あのランボちゃんも可愛かったな。
また故障すればいいのに、とは思わないけど、
せめて、ホワイトデーの約束は守ってくれるかな?
って、ちょっと期待してしまうあたしでした。
ただいま応接室にいます。
恭弥に呼ばれてたから何があるのかと思いきや、何も無いと言われてブロークンハートです…。
「何それ」
『ひっ、人の心を読まないで!!』
「聞こえたんだよ」
『だ、だって…今日は花が遊びに来るって言うから早く帰ろうと思ったのに…』
「檸檬は僕とそいつ、どっちが大事なの?」
恭弥が何か寂しそうな顔で聞くから……ちょっとドキッとした。
『どっちも…』
俯いてそう答える。
「はぁ…」
恭弥はため息をついた。
何で?
何でため息!?
あたしがどっちか選べると思うの!?
『(皆が大事だって、何回言えば分かってくれるのよ…)』
あたしもため息をついた。
「……会いたかったから」
『え?』
急に恭弥がそんな事を言ったから、あたしは少し驚いた。
「会いたくて呼ぶのはダメなの?」
『えっ、と……ダメじゃないけど…』
何か恭弥にそんな事言われると恥ずかしいよ。
恭弥ってそんなキャラじゃないでしょ?
『ご、ごめんね、恭弥。お詫びに仕事手伝うよ』
「だから、今日は仕事も何にもないってば」
『(めっちゃ意味無い!!?)』
あ、でもそれって…
ホントに会いたくて呼んでくれたって事?
『へへっ』
「どしたの?」
『何でもないっ!』
ちょっと嬉しいな、なんて♪
「今日はシュークリームがあるけど」
『食べるっ!』
あたしがそう言うと、草壁さんが持って来てくれた。
『いつもありがとうございます』
軽くお辞儀をする。
草壁さんもあたしにお辞儀を返してくれた。
『あれ?恭弥の分は無いの?』
「無いよ」
何かちょっと罪悪感を感じた。
『恭弥、』
「何?」
隣に座ってあたしを見ている恭弥に、スプーンを差し出す。
『一緒に食べよ♪』
恭弥はちょっと驚いたようで、だけどすぐに微笑んだ。
「それは檸檬のでしょ。僕はいいよ」
『でも…』
「いいよ」
あたしは恭弥には勝てません。
だって、王子様フェイスなんだもんっ!!
綺麗な笑み浮かべられたりしちゃったらさ、断れないよね?
うん、そうだよね。
『じゃ、お言葉に甘えて…』
あたしはパクパクと食べ始めた。
カスタードクリームがおいしい。
生クリームもおいしい。
シュ-生地もおいしい。
生きてて良かったぁ~~~。
とろけるあたしの顔を恭弥が凝視していた事は、知らなかった。
『ごちそうさまでしたっ!』
「草壁、」
「はい」
恭弥が名前を呼んだだけで、草壁さんはあたしの食べ終わったお皿を片付けてくれた。
再びちょっと罪悪感。
「ねぇ、檸檬」
『なぁに?』
「眠くなって来た」
え?
えっと……どのような反応をしていいのか分からないんですが…
あたしが戸惑っていると、膝の上に何か乗って来た。
『ん?』
これは、膝枕、をさせられている??
『きょ、恭弥??』
「何?」
『コレは何?』
「膝枕」
間。
いやね、
そんなにさらっと答えられても…困るんですけど!!
今日は花が来るって言ってんじゃん!
聞いてなかったの!?
「聞いてたよ」
『また人の心読んで~っ!』
「でも、檸檬の膝枕で寝たかったから」
『それで呼んだの?』
「まぁね」
ツナ、ごめんね。
今日は早く帰れそうにありません。
ま、いっか。
とか思い始めた自分がいます。
「スカート、短くない?」
『長いと動きにくいのっ!』
「ふぅん…」
恭弥の髪が足に当たって少しくすぐったい。
その黒髪は、とってもふわふわしてて可愛い。
あたしは思わず恭弥の頭を撫でた。
『(可愛い~♪)』
恭弥は反応しなかった。
もう寝ちゃったのかな?いいけど。
『ふぁ~…』
あたしも眠くなって来たよ。
窓から見える夕焼けが綺麗だなぁ。
最近日が落ちるのが早くなって来たし。
ちょっとの間、寝ちゃお♪
『草壁さん、』
「はい」
『30分したら、起こしてくれませんか?』
「分かりました」
あたしは恭弥の頭を膝に乗せたまま目を閉じた。
草壁さんは、あたし達が寝てる間どうするんだろう?
そんな疑問を残しつつ、あたしはゆっくりと眠りの世界に落ちて行った。
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いつも君の無邪気な行動に、振り回されてる僕だから、
たまにはいいでしょ?僕に振り回されててよ。
今日はこのくらいで勘弁してあげるけど、
いつか……
いつかもっと、檸檬に近付けるように。
檸檬が僕だけを見るように。
そう、思ってるよ。
周りは簡単に諦めると思うけど、
檸檬は簡単に振り向かないと思うから、
僕の我が儘を聞きながら、少しずつ近付ければいい。
『…や、恭弥………』
「何?」
寝言??
『くすぐったい……』
頭乗せてるから?
それっきり、檸檬は何も言わなかった。
面白い寝言だね。
覚えておくよ。
眠かったのは本当。
だけど、檸檬に膝枕させた瞬間、それは覚めた。
檸檬に気付かれないように起き上がる。
「草壁、」
「はい」
「行っていいよ」
「はい」
草壁が退室するのを見届け、僕はそっと檸檬に近づく。
そして、気付かれないように、頬にキスをした。
2人きりになるのは簡単だけど、
君に近づくのは、本当に難しいね。
「……君が初めてだよ、檸檬…」
僕の独占欲を、こんなにもかき立てるのは。
すやすや眠る檸檬に、自分の学ランをかけた。
30分後。
「檸檬……檸檬……」
『ん…?』
ゆっくりと目を開ければ、そこには恭弥の顔。
『ぅ、わっ!』
一番始めに王子様フェイスなんて!!
心臓に悪いよ…
「おはよう、檸檬」
『お、おはよう…って、もう30分経ったの!!?』
「うん」
あたしはバッと立ち上がった。
『帰らなくちゃ!』
目をこすって、恭弥の方を向く。
『恭弥、シュークリームありがとう!それと、休ませてくれてありがとう!あと、学ランもありがとう!』
「別に」
いつもみたいに素っ気無い返事。
だけど、恭弥は優しいって知ってるもん。
『また明日ね!』
「うん」
あたしは応接室を飛び出た。
家に急がなくちゃ!
花、帰っちゃったかなぁ?
出来る限り速く走った。
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その頃。
なんて事だろう……
10年前に来たと思ったら、こんな恰好になっているなんて。
しかも、遊びに来ていた長い黒髪のお嬢さんには初対面で嫌われるし……
どうなってるんだ?
『たっだいまーっ!!』
あ、檸檬さんの声だ。
「お帰り、檸檬」
『ツナ、花は帰っちゃった?』
「うん、少し前に…」
『あぁ~…』
ペタンという音がし、檸檬さんが廊下に座り込んだのが分かった。
『花、ちゃんとランボちゃんに会えた??』
「うん、それが…」
若きボンゴレは言葉を濁している。
それもそのはず。
10年バズーカの故障で、こんな事になっているんだから。
『どうしたの?ツナ』
「檸檬、とりあえず俺の部屋に来てよ。そしたら分かるから」
階段を登る足音が、2つ聞こえる。
俺は部屋の隅で小さくなってうずくまっていた。
ガチャ、
「ランボー?」
『ここにいるの?』
「あれ?ランボーっ」
見られたくない…
でも、その望みは絶たれた。
『ランボちゃん発見!!』
「いつもと違う、でしょ?」
部屋の隅にいた俺を、檸檬さんは抱え上げた。
若きボンゴレは苦笑いをしながら言う。
「10年バズーカが壊れちゃってさ、今のランボ、精神だけ大人ランボなんだよ」
『えっ!?そーなの!!?』
そうなんですよ、
出来れば檸檬さん、あなたにこんな醜態はさらしたくなかった…。
『可愛い~~~っ!!!!』
「「え!?」」
『なーんかいつもより可愛いなって思ってたのよね~。そっかぁ、中身は大人ランボちゃんなんだぁ』
檸檬さんはまじまじと俺を見た。
『ねぇねぇ、何かしゃべって』
期待した瞳。
「お、お久しぶりです……若き檸檬さん」
『きゃーっ!!』
「(えぇーーーっ!!?)」
檸檬さんは俺をぎゅっと抱きしめた。
少し、苦しいぐらいに。
『可愛いっ!ランボちゃん、可愛いっ!!』
「あのー…檸檬?」
『ツナ!あたし、このランボちゃんが元に戻るまで、面倒見てていい?』
「えっ、あ、別にいいけど……」
『やったーっ!!』
俺を抱えたまま飛び跳ねる檸檬さん。
『あたし、ちょっと着替えて来るね』
やっと俺を下ろして、檸檬さんは1階の自分の部屋へと駆けて行った。
残された若きボンゴレと俺の間に沈黙が流れる。
「これは…どう言う事でしょうか…?」
「檸檬は気に入ったんじゃない?良かったじゃん、大人ランボ」
檸檬さんは、ずっと俺と一緒にいてくれた。
『ランボちゃん、ご飯ちゃんと食べれる?』
『ランボちゃん、トイレのドア開けられる?』
『ランボちゃん、階段上れる?』
嬉しかった。
檸檬さんが俺だけに構ってくれるのが、本当に嬉しかった。
子供の姿のままでもいいと、思ってしまうくらいに。
『ランボちゃん、ブドウジュース飲む?』
「あの…紅茶で……」
『あ、そっか!大人ランボちゃんだもんね。』
ごめんね、と言いつつぺロッと舌を出す檸檬さんは、本当に可愛かった。
『ランボちゃん、おいで』
手招きされて、側に行くと、肩に乗せられる。
檸檬さん曰く、5歳の俺はいつもそこに座っているらしい。
檸檬さんの肩の上…一番近くじゃないか。
こんな近くで檸檬さんの顔が見れるなんて、本当に幸せだ。
『5歳のランボちゃんも、これくらい大人しいといいのにねー。あ!でも、はしゃぎ回るランボちゃんも、あたしは好きだよっ』
そう言って、すぐ隣にいる俺に笑いかける。
綺麗な笑顔だった。
5歳の俺がココを定位置にしているのは、コレが理由だろうか。
いや、そんな事は微塵も考えていないだろう。
だから哀しい。
何の躊躇いもなく檸檬さんに近付けるのに、何もしようとしないから。
10年後では、遅いのに。
何かしようと思っても、躊躇いなくして近づけないのに。
「檸檬さん…」
『なぁに?』
「先日は、バレンタインのチョコを下さって、ありがとうございました」
檸檬さんはきょとんとした。
『そっか!大人ランボちゃんにあげたんだよね!なーんか今のランボちゃん小さいからさ、ちょっと吃驚しちゃった』
へへっと笑った後、『もう1つ作っておくべきだったかな?』と俺に聞く。
檸檬さんに何の感情も抱いていない5歳の俺に、檸檬さんの心がこもったチョコなんていらない。
全部俺に下さい。
そうすれば、子供の時に貰うより、何倍も嬉しさを感じる事が出来ますから。
「ホワイトデーには、必ずお返しします」
『10年後のあたしに?』
「出来れば、今の檸檬さんに」
俺がそう言うと、檸檬さんは目を丸くした。
『ありがとうっ!ランボちゃん!』
お礼を言うべきはこっちなんです。
あなたのその笑顔に何度励まされたか。
何度救われたか。
何度幸せを貰ったか。
そして、檸檬さんは再び俺を抱きしめた。
俺も、小さい手で出来る限り抱きしめ返した。
大好きです、檸檬さん。
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1週間経つと、ランボちゃんは元に戻ってしまった。
「ガハハハハ!!」
今日もその声が絶えない。
「檸檬ー、アメちょうだい!!」
『はい、ランボちゃん』
「檸檬、あんまり甘やかしちゃダメだよ
『あははっ、ツナは本当にお兄さんみたいだねっ!』
「嬉しくないよ!!」
このランボちゃんも確かに可愛いけどさ、
あのランボちゃんも可愛かったな。
また故障すればいいのに、とは思わないけど、
せめて、ホワイトデーの約束は守ってくれるかな?
って、ちょっと期待してしまうあたしでした。