日常編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
とある日の授業中。
ガラッ、
突然開くドア。
「沢田はおりますか?」
みんながそちらを見ると、そこには了平がいた。
「(京子ちゃんのお兄さん!!?)」
「いつもと雰囲気が違わねーか?」
「やけに神妙だ…」
檸檬はと言うと、
『ZZZ...』
寝ていた。
「ぼ、ボクシング部の笹川じゃないか。授業中に何か用か?」
先生が迷惑そうに聞く。
「はい。実は話は一昨日に遡…いやおとつい……?おととい?……ええいまどろっこしい!!沢田を出せ!!」
最初静かに話していた了平は、先生の胸ぐらを掴んで怒鳴った。
「(やっぱいつもと一緒だーーーっ!)」
仕方なくツナは了平の前へ。
「あ、あの…何か……」
「おお沢田!実は頼みがあってな………ええいまどろっこしい!!説明は後だ!!」
「(何しに来たのーーー!?)」
『うーん……(うるさいなぁ…)』
目を覚ました檸檬。
途端にクラスが騒ぎ出す。
「雨宮さんが起きてしまったわ!」
「雨宮、まだ寝てていいぜ」
「もう騒ぎの元は過ぎ去ったから」
『……え…?』
首をかしげ、周りを見回す檸檬。
そして気付いた。
『………ツナがいない』
ぼそっと呟くと、隣の山本が答えた。
「ツナな、今ボクシング部の主将に連れてかれてな、何か深刻そうだったぜ」
「「「「(山本のバカッ!そんな言い方したら雨宮さんがまた追いかけて行っちゃう!!)」」」」
『そーなの?ふぁ~…追い掛けよっかな…』
「「「「(ほら~~~!!!)」」」」
『…………眠いからいいや』
そう言ってまた机に突っ伏した檸檬。
クラス中がホッとしたと言う。
「おい…雨宮」
『今度は何ですか…?』
「授業中に堂々と寝るとは、いい度胸じゃないか。これを解け」
『はーい…ってコレ、証明問題じゃん。黒板書くんですか?』
「そうだ。目も覚めるだろ」
「「「「(雨宮さんになんて事を……!!)」」」」
クラスの心の声も知らず、檸檬はゆっくりと席を立って黒板まで歩く。
『えーっと……中点連結定理か』
サラサラ…
『………証終っと。はい、出来ました』
さっと席につく檸檬。
そしてまた、腕を枕にして眠り始める。
「………完璧だ」
綺麗に書かれた黒板の文字達は、檸檬の頭の良さを示していた。
「流石雨宮さん!」
「檸檬ちゃん凄いわ!」
ひっそりと騒ぎ始めるクラスのみんな。
そんな中、山本は隣で眠る檸檬の可愛い寝顔をじっと見ていた。
---
------
------------
放課後。
「檸檬ーっ!」
呼ばれて振り向いた先には、
『武』
下駄箱に向かって歩き出そうとしていた足を止める。
『どしたの?』
「あのさ、今日一緒に帰らね?」
『いいよ。そう言えばこないだ(バレンタインデー参照)、一緒に帰る約束したよね。ごめんね、あの次の日は何か恭弥に引き止められちゃって…』
申し訳なさそうにする檸檬。
「いんだよ!今日は平気なんだろ?」
『うんっ!』
「あのさ、俺、ちょっと部活あんだけどいいかな?」
『待ってるよ♪』
檸檬はにっこり笑った。
山本も、少し赤くなりつつ笑顔を返す。
「じゃぁ、グラウンドの近くでいいか?」
『うん』
檸檬は、グラウンド近くのコンクリートのひな壇に座って待つ事にした。
『(こっからだと、良く見えるなぁ)』
ぼーっとしながらグラウンドを見る檸檬。
野球部の練習風景が目に映る。
走ったり、ボール投げたり打ったり、取ったり、声張り上げたり…
『カッコいいなぁ…』
武ってさ、
好きな事に一生懸命で、努力を苦労と思わないで、
周りから見れば、ホントに大変な事なのに。
いつも爽やかに笑って、逆に癒しをくれる。
“爽やかなカッコよさ”だよね。
あたしはココまで強くなるのに、すごく辛い事もたくさんあったから。
もうやめたい、なんて、何回思ったか分からない。
ここまで来てからやっと、『あぁ、よかった。』って思う。
武はいいなぁ。
好きな事の為なら、努力は苦にならないの?
「檸檬っ…!!」
『あ、お疲れさま』
武が走って来てくれて、ちょっと嬉しかった。
優しいなぁ……だからモテるんだよ。
『帰ろっか』
「あぁ」
街の中に吹く風は、まだ少し冷たい。
『寒いね~』
「大丈夫か?」
『うん、平気。学ランって、あったかいんだよ♪』
檸檬は腕を広げて風紀の学ランを山本に見せる。
「それって…」
『誕生日にね、恭弥に貰ったの!ほら、風紀の腕章付き』
左腕に付いている腕章を指差す。
「じゃぁ……何で下はスカートなんだ?(ある意味危ないような…)」
『動きにくいから』
「?」
『だって…』
「おい!そこの女、並盛の風紀だな!?」
檸檬の言葉は、突然現れた不良によって遮られた。
山本と檸檬の視線は、そちらへ動く。
『そうだけど、何か用ですか?』
「この間はよくもやってくれたな…仕返しに来たぜ」
『こないだ?あぁ、その時あたし欠席してて…無関係なんですけど……』
さらっと答える檸檬に、不良は更に怒りを増す。
「じゃぁ大人しくボコられろっ!!!」
ゾロゾロとやって来たのは、ざっと30人。
「なぁ!?」
山本も一緒に囲まれる。
『こうなるからさぁ、すぐ動ける服がいいんだよね。ズボンだと、空気抵抗があって……』
さっきの山本の問いに答える檸檬。
「隣の男も一緒にやっちまえ!!」
『武は関係ないでしょっ!風紀でもないしっ!』
怒鳴る檸檬に、不良は言う。
「仲間はやっとけ、コレが俺達のルールだ」
『………最低』
「褒め言葉、ありがとよ」
ニヤニヤと笑う不良達。
『O.K. やってやろーじゃん』
檸檬の声のトーンが落ちたのを、山本は聞き逃さなかった。
「檸檬、助太刀するぜ」
『ありがと 武♪』
「てめーら、2人でどーにかなると思ってんのか!!?」
不良の言葉を聞き、嘲笑う檸檬。
『思ってるから身構えてるのよ?』
「どうやらやられてーみてーだな……」
『それはそっちでしょ?』
檸檬は静かに目を閉じた。
そして、フッと開ける。
そこには、それまでとは違う空気が流れる。
『Are you ready? Now, listen to my music!』
パチンと指を鳴らした。
「一斉にかかれっ!!」
「「「「おおーっ!!」」」」
『one two three four five six seven and eight!』
数を数えて、空中で舞い踊る。
「ははっ!すげーな、檸檬!」
一緒にいた山本も驚くような、その身のこなし。
確実に相手の弱点をつき、1発で倒して行く。
そのくせ、自分は相手の攻撃を確実に避け、かすりもさせない。
『みんな、リズムが遅いんだよっ!』
敵が全員倒れたのは、1分後の事だった。
檸檬は20人、山本は10人倒した。
「うぅ…」
『コレに懲りたら、並中の風紀に関わらない事ね。関わる時があったら、大人しく従いなさい。少なくともあたしと恭弥には、絶対勝てないから』
にっこりと黒い笑みを見せる檸檬。
『じゃ、行こっ!武』
「おぅ」
檸檬と山本は再び歩き始めた。
『ごめんね、変なのに巻き込んで』
「いいって!弱かったしな。にしても檸檬、お前ホント強ぇーのな!」
『そんな事ないよ~……まぁ、ちょっとやそっとじゃ負けないけどねっ!』
イヒヒ、と笑う檸檬。
そんな悪戯な笑みも可愛い、と山本は思った。
「なぁ、檸檬」
『ん?なぁに?』
「檸檬は……どーして強くなったんだっけ?」
『自分の命を守る為』
檸檬はきりりと答えた。
「そっか……何かいいなぁ!檸檬は目的があってさ!」
『へ!?』
檸檬が思ったより大きなリアクションをとって、俺も驚いた。
「どした?」
『いや、あたしは…武の方が頑張ってると思うよ?武は、野球とかホント一生懸命でさ、カッコいいと思う』
赤くなりながらそう言う檸檬。
んな顔で、んな事言われたら、誰だって照れる。
「そ…そーか?」
『だってだって、武みたいにさ、努力しても笑ってられる人、ホントに凄いと思うもん。あたしは、嫌になる事も何回もあった。その度に父親殴られて、思い知らされるの。“あたしには、強くなるほかに道は無い”って』
檸檬は少し俯いた。
『だから、努力って辛いものだと思ってた。なのに武は、あたしのその考えを根底からひっくり返しちゃうんだもん』
「あれは努力って言わねーよ。自分が好きで、楽しんでやってっからさ!」
きっと、
きっと檸檬みたいに、
嫌な事も頑張れるのが、
努力なんじゃないか、と俺は思う。
きっと、
好きな事をもっと極めたくて、
その為にはどんな事も頑張って、
自分では好きだから苦に思わないのが
本当の努力なんじゃないか、ってあたしは思う。
「『ホント、凄いよなぁ…』」
武とハモって、2人で顔を見合わせる。
そして次の瞬間、笑いの波がやって来た。
しばらく笑い続けた。
これはきっと、お互いが認めあってるんだなと、2人とも思っていた。
『武、今日は楽しかった。ありがとう』
「俺も、楽しかったぜ」
ツナの家の前。また明日会えるはずなのに、別れを惜しむ2人。
『じゃぁね』
ちゅ、
「おぅっ♪」
ちゅ、
お互いの頬にキスを落とし、にっこりと微笑み合う。
檸檬は、回れ右をしてツナの家のドアを開けた。
山本も、回れ右をして家路につく。
『ただいま帰りましたー』
最後に、檸檬の声が聞こえた。
---
------
-----------
「おかえりなさい、檸檬ちゃん」
『ただいまです、奈々さん』
「檸檬ーーーっ!」
『ランボちゃん、ただいま』
ちゅ、
「ガハハ!今日“どーじょー”に行ったもんね!」
『道場?何で?』
「イーピンと行ったんだよ!」
『イーピンちゃんも!?』
ランボちゃんの話じゃさすがに良く分からないから、ツナに聞いてみる。
「実は……京子ちゃんのお兄さんと道場破りを倒しに行って…そこにイーピンとランボが乱入して、まぁとにかく追い払う事は出来たんだけど……」
『ツナ、道場破り倒したの!?すごーいっ!やっぱ成長したんだね!感激!!』
パアアッと顔を輝かせる檸檬に、ツナは驚愕する。
「(えぇーー!そっちーーー!!?)」
『良かった良かった!家庭教師補佐として誇らしいわ♪』
「そ、そう……」
ツナの汗にも気がつかず。
檸檬は御機嫌なまま自分の部屋に戻りましたとさ。
ガラッ、
突然開くドア。
「沢田はおりますか?」
みんながそちらを見ると、そこには了平がいた。
「(京子ちゃんのお兄さん!!?)」
「いつもと雰囲気が違わねーか?」
「やけに神妙だ…」
檸檬はと言うと、
『ZZZ...』
寝ていた。
「ぼ、ボクシング部の笹川じゃないか。授業中に何か用か?」
先生が迷惑そうに聞く。
「はい。実は話は一昨日に遡…いやおとつい……?おととい?……ええいまどろっこしい!!沢田を出せ!!」
最初静かに話していた了平は、先生の胸ぐらを掴んで怒鳴った。
「(やっぱいつもと一緒だーーーっ!)」
仕方なくツナは了平の前へ。
「あ、あの…何か……」
「おお沢田!実は頼みがあってな………ええいまどろっこしい!!説明は後だ!!」
「(何しに来たのーーー!?)」
『うーん……(うるさいなぁ…)』
目を覚ました檸檬。
途端にクラスが騒ぎ出す。
「雨宮さんが起きてしまったわ!」
「雨宮、まだ寝てていいぜ」
「もう騒ぎの元は過ぎ去ったから」
『……え…?』
首をかしげ、周りを見回す檸檬。
そして気付いた。
『………ツナがいない』
ぼそっと呟くと、隣の山本が答えた。
「ツナな、今ボクシング部の主将に連れてかれてな、何か深刻そうだったぜ」
「「「「(山本のバカッ!そんな言い方したら雨宮さんがまた追いかけて行っちゃう!!)」」」」
『そーなの?ふぁ~…追い掛けよっかな…』
「「「「(ほら~~~!!!)」」」」
『…………眠いからいいや』
そう言ってまた机に突っ伏した檸檬。
クラス中がホッとしたと言う。
「おい…雨宮」
『今度は何ですか…?』
「授業中に堂々と寝るとは、いい度胸じゃないか。これを解け」
『はーい…ってコレ、証明問題じゃん。黒板書くんですか?』
「そうだ。目も覚めるだろ」
「「「「(雨宮さんになんて事を……!!)」」」」
クラスの心の声も知らず、檸檬はゆっくりと席を立って黒板まで歩く。
『えーっと……中点連結定理か』
サラサラ…
『………証終っと。はい、出来ました』
さっと席につく檸檬。
そしてまた、腕を枕にして眠り始める。
「………完璧だ」
綺麗に書かれた黒板の文字達は、檸檬の頭の良さを示していた。
「流石雨宮さん!」
「檸檬ちゃん凄いわ!」
ひっそりと騒ぎ始めるクラスのみんな。
そんな中、山本は隣で眠る檸檬の可愛い寝顔をじっと見ていた。
---
------
------------
放課後。
「檸檬ーっ!」
呼ばれて振り向いた先には、
『武』
下駄箱に向かって歩き出そうとしていた足を止める。
『どしたの?』
「あのさ、今日一緒に帰らね?」
『いいよ。そう言えばこないだ(バレンタインデー参照)、一緒に帰る約束したよね。ごめんね、あの次の日は何か恭弥に引き止められちゃって…』
申し訳なさそうにする檸檬。
「いんだよ!今日は平気なんだろ?」
『うんっ!』
「あのさ、俺、ちょっと部活あんだけどいいかな?」
『待ってるよ♪』
檸檬はにっこり笑った。
山本も、少し赤くなりつつ笑顔を返す。
「じゃぁ、グラウンドの近くでいいか?」
『うん』
檸檬は、グラウンド近くのコンクリートのひな壇に座って待つ事にした。
『(こっからだと、良く見えるなぁ)』
ぼーっとしながらグラウンドを見る檸檬。
野球部の練習風景が目に映る。
走ったり、ボール投げたり打ったり、取ったり、声張り上げたり…
『カッコいいなぁ…』
武ってさ、
好きな事に一生懸命で、努力を苦労と思わないで、
周りから見れば、ホントに大変な事なのに。
いつも爽やかに笑って、逆に癒しをくれる。
“爽やかなカッコよさ”だよね。
あたしはココまで強くなるのに、すごく辛い事もたくさんあったから。
もうやめたい、なんて、何回思ったか分からない。
ここまで来てからやっと、『あぁ、よかった。』って思う。
武はいいなぁ。
好きな事の為なら、努力は苦にならないの?
「檸檬っ…!!」
『あ、お疲れさま』
武が走って来てくれて、ちょっと嬉しかった。
優しいなぁ……だからモテるんだよ。
『帰ろっか』
「あぁ」
街の中に吹く風は、まだ少し冷たい。
『寒いね~』
「大丈夫か?」
『うん、平気。学ランって、あったかいんだよ♪』
檸檬は腕を広げて風紀の学ランを山本に見せる。
「それって…」
『誕生日にね、恭弥に貰ったの!ほら、風紀の腕章付き』
左腕に付いている腕章を指差す。
「じゃぁ……何で下はスカートなんだ?(ある意味危ないような…)」
『動きにくいから』
「?」
『だって…』
「おい!そこの女、並盛の風紀だな!?」
檸檬の言葉は、突然現れた不良によって遮られた。
山本と檸檬の視線は、そちらへ動く。
『そうだけど、何か用ですか?』
「この間はよくもやってくれたな…仕返しに来たぜ」
『こないだ?あぁ、その時あたし欠席してて…無関係なんですけど……』
さらっと答える檸檬に、不良は更に怒りを増す。
「じゃぁ大人しくボコられろっ!!!」
ゾロゾロとやって来たのは、ざっと30人。
「なぁ!?」
山本も一緒に囲まれる。
『こうなるからさぁ、すぐ動ける服がいいんだよね。ズボンだと、空気抵抗があって……』
さっきの山本の問いに答える檸檬。
「隣の男も一緒にやっちまえ!!」
『武は関係ないでしょっ!風紀でもないしっ!』
怒鳴る檸檬に、不良は言う。
「仲間はやっとけ、コレが俺達のルールだ」
『………最低』
「褒め言葉、ありがとよ」
ニヤニヤと笑う不良達。
『O.K. やってやろーじゃん』
檸檬の声のトーンが落ちたのを、山本は聞き逃さなかった。
「檸檬、助太刀するぜ」
『ありがと 武♪』
「てめーら、2人でどーにかなると思ってんのか!!?」
不良の言葉を聞き、嘲笑う檸檬。
『思ってるから身構えてるのよ?』
「どうやらやられてーみてーだな……」
『それはそっちでしょ?』
檸檬は静かに目を閉じた。
そして、フッと開ける。
そこには、それまでとは違う空気が流れる。
『Are you ready? Now, listen to my music!』
パチンと指を鳴らした。
「一斉にかかれっ!!」
「「「「おおーっ!!」」」」
『one two three four five six seven and eight!』
数を数えて、空中で舞い踊る。
「ははっ!すげーな、檸檬!」
一緒にいた山本も驚くような、その身のこなし。
確実に相手の弱点をつき、1発で倒して行く。
そのくせ、自分は相手の攻撃を確実に避け、かすりもさせない。
『みんな、リズムが遅いんだよっ!』
敵が全員倒れたのは、1分後の事だった。
檸檬は20人、山本は10人倒した。
「うぅ…」
『コレに懲りたら、並中の風紀に関わらない事ね。関わる時があったら、大人しく従いなさい。少なくともあたしと恭弥には、絶対勝てないから』
にっこりと黒い笑みを見せる檸檬。
『じゃ、行こっ!武』
「おぅ」
檸檬と山本は再び歩き始めた。
『ごめんね、変なのに巻き込んで』
「いいって!弱かったしな。にしても檸檬、お前ホント強ぇーのな!」
『そんな事ないよ~……まぁ、ちょっとやそっとじゃ負けないけどねっ!』
イヒヒ、と笑う檸檬。
そんな悪戯な笑みも可愛い、と山本は思った。
「なぁ、檸檬」
『ん?なぁに?』
「檸檬は……どーして強くなったんだっけ?」
『自分の命を守る為』
檸檬はきりりと答えた。
「そっか……何かいいなぁ!檸檬は目的があってさ!」
『へ!?』
檸檬が思ったより大きなリアクションをとって、俺も驚いた。
「どした?」
『いや、あたしは…武の方が頑張ってると思うよ?武は、野球とかホント一生懸命でさ、カッコいいと思う』
赤くなりながらそう言う檸檬。
んな顔で、んな事言われたら、誰だって照れる。
「そ…そーか?」
『だってだって、武みたいにさ、努力しても笑ってられる人、ホントに凄いと思うもん。あたしは、嫌になる事も何回もあった。その度に父親殴られて、思い知らされるの。“あたしには、強くなるほかに道は無い”って』
檸檬は少し俯いた。
『だから、努力って辛いものだと思ってた。なのに武は、あたしのその考えを根底からひっくり返しちゃうんだもん』
「あれは努力って言わねーよ。自分が好きで、楽しんでやってっからさ!」
きっと、
きっと檸檬みたいに、
嫌な事も頑張れるのが、
努力なんじゃないか、と俺は思う。
きっと、
好きな事をもっと極めたくて、
その為にはどんな事も頑張って、
自分では好きだから苦に思わないのが
本当の努力なんじゃないか、ってあたしは思う。
「『ホント、凄いよなぁ…』」
武とハモって、2人で顔を見合わせる。
そして次の瞬間、笑いの波がやって来た。
しばらく笑い続けた。
これはきっと、お互いが認めあってるんだなと、2人とも思っていた。
『武、今日は楽しかった。ありがとう』
「俺も、楽しかったぜ」
ツナの家の前。また明日会えるはずなのに、別れを惜しむ2人。
『じゃぁね』
ちゅ、
「おぅっ♪」
ちゅ、
お互いの頬にキスを落とし、にっこりと微笑み合う。
檸檬は、回れ右をしてツナの家のドアを開けた。
山本も、回れ右をして家路につく。
『ただいま帰りましたー』
最後に、檸檬の声が聞こえた。
---
------
-----------
「おかえりなさい、檸檬ちゃん」
『ただいまです、奈々さん』
「檸檬ーーーっ!」
『ランボちゃん、ただいま』
ちゅ、
「ガハハ!今日“どーじょー”に行ったもんね!」
『道場?何で?』
「イーピンと行ったんだよ!」
『イーピンちゃんも!?』
ランボちゃんの話じゃさすがに良く分からないから、ツナに聞いてみる。
「実は……京子ちゃんのお兄さんと道場破りを倒しに行って…そこにイーピンとランボが乱入して、まぁとにかく追い払う事は出来たんだけど……」
『ツナ、道場破り倒したの!?すごーいっ!やっぱ成長したんだね!感激!!』
パアアッと顔を輝かせる檸檬に、ツナは驚愕する。
「(えぇーー!そっちーーー!!?)」
『良かった良かった!家庭教師補佐として誇らしいわ♪』
「そ、そう……」
ツナの汗にも気がつかず。
檸檬は御機嫌なまま自分の部屋に戻りましたとさ。