未来編序章
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あたしは生きる。
それは前と変わらない。
だけど、
この世界で絶対に生きるって決めた。
二丁拳銃
『くっ…!』
「どうした?リズムが遅くなってるぞ!」
隼人と武が援護してくれる限り、
あたしはその負担を減らさなくちゃいけない。
お父さんのリズムを正確に読んで、
2人に的確な指示をしなきゃいけない。
なのに…
『(読めない……!)』
どんなに聞いても、究極のリズムは読めなかった。
コンビニ強盗の夜と、同じように。
あたしがモタモタしてちゃダメなのに…!!
ドガッ、
「うわっ!」
『隼人っ!!』
お父さんの手が、隼人を殴り飛ばす。
あたしはすぐに後ろに回り込んでキャッチした。
『大丈夫!?』
「あぁ、何とかな。」
「檸檬、諦めろ。あんまりしつこいと、こいつらもろとも死ぬぞ。」
死ぬのはイヤ。
諦めるのもイヤ。
だけど、2人を道連れにするのはもっとイヤ!!
『(落ち着け………)』
武と隼人は再びお父さんに向かってく。
「任せろ」って言うみたいに。
それでも、足止め出来るのは恐らく4、5秒。
もって6秒。
読まなくちゃ、
あたしが。
超えなくちゃ、
お父さんを。
「指揮者の俺に、勝てると思うか!?」
そう、アイツは指揮者。
演奏者であるあたし達は、指揮者に動かされてる。
指揮者には、何か無いの?
指揮者が従うモノ…………
---
------
もう一度、炎の壁で銃弾を防ごうとした。
が、やはり別の炎が混ざってツナに襲い掛かる。
そして、床には黒い焦げ跡。
「(やっぱり、何かが燃えてる……)」
「何度やっても無駄よ。貴方は、自分の炎に焼かれるわ。」
にやりと笑う蜜柑。
しかし、同時に雲雀が何かを感じ取る。
「……!…この匂い………」
「匂い…?」
「油………」
「あら、分かっちゃったのね。」
蜜柑は少し目を丸くする。
そこで、ツナにも全て分かった。
「銃弾に入った油が、俺の炎で熱せられたのか。」
「ま、分かっていても防げないでしょうけど。」
再び2人に撃ち込む蜜柑。
その際、一瞬だけ雲雀とツナの目が合った。
どうやらお互いがお互いを確認したらしい。
「(コイツ、分かってるのかな…)」
「(もしかして、雲雀さんも…)」
次の瞬間、
2人は左右に別れて蜜柑を挟撃した。
---
------
同じ頃、とある一室。
鏡台の前で両手を合わせ目を閉じる女が1人。
その後ろには、いつの間にか1人の赤ん坊が立っていた。
気配を感じた女は、おもむろに口を開く。
「来ると思ってたわ。」
すると、赤ん坊は真剣な声で。
「雨宮揚羽だな。」
「えぇ、そうよ。アルコバレーノのリボーンさん。」
窓から入る風が、揚羽の髪を揺らす。
「檸檬の力について聞きたい。何故お前達が恐れるのかも。」
すると揚羽はピクリと眉を動かし、リボーンに向き合うように座り直した。
「檸檬の力はね、私より強いの。世界の波長を読み取るだけじゃなく、ひずみとひずみを繋げて空間移動をする。極めれば恐らく……時空移動も。」
「その力を、恐れたか。」
リボーンの問い掛けに、揚羽はため息をついた。
「あのまま私達が育てていたら、私達のような子に育っていたわ。自分が一番大切で、その為には自分以外の全てを壊すような子。」
「赤ん坊だった檸檬に、何を視た。」
「私が視た未来では……檸檬は笑ってたわ。笑いながら、私達を殺してた。」
揚羽の表情が、少し暗くなる。
「兜が止めようとしてて、傷だらけになった蜜柑が拳を作って檸檬を睨み、私も血まみれ。何としても、それは避けなければと思ったわ。」
「………そうか。」
目深にハットをかぶり直すリボーンに、揚羽は問う。
「ねぇ、貴方はあちらに行かないの?」
「……あぁ、檸檬を守るのは、俺の教え子達の仕事だからな。」
リボーンの笑みに、揚羽は「あら、そう」とだけ返した。
---
------
「邪魔だ。」
「ぐっ!」
「うわっ!」
5秒だけ、時間が貰えた。
それで充分だった。
分かったよ、指揮者が従う唯一のモノ。
あたしに波長が読めるなら、
「檸檬、次はお前だ!!」
目を閉じて。
「檸檬っ!!」
「危ねぇっ!!」
お父さんの足音、
お父さんの呼吸、
お父さんの脈打ち、
全部聞いたら……………
「終わりだ!!檸檬!!!」
目を開けて。
『(視えたっ………!!)』
ドシュッ、
「な………に…………!?」
指揮者が従う唯一のモノ。
それは、楽譜。
楽譜無しで音楽を奏でる事は出来ない。
指揮者だってちゃんと棒をふれない。
お父さんの楽譜すなわち、お父さんの脳波。
これが読めれば、全て読めるはず!!
---
------
片手ずつ銃を向け、撃った蜜柑。
しかし、
ボタボタッ、
油入りの弾は雲雀の方へ。
ジュッ、
普通の弾丸がツナの作る炎の壁にあたる。
「……やっぱり、そうだったか。」
雲雀がぽつりと呟いた。
「なっ…!」
蜜柑が少し焦りの声を漏らした。
油の弾がツナの方にさえ行かなければ、余計な心配をする必要はない。
右手は油の弾、
左手は普通の弾、
雲雀もツナも、それを見切っていたのだ。
「終わらせようか。」
「きゃ…きゃああっ!!!」
目を瞑って乱射をする蜜柑。
しかし、数発撃ったところで落ち着いたように目を開ける。
「……………なーんて、言うと思った?」
チュインッ!
次の瞬間、雲雀の方に普通の弾、ツナの方に油の弾が撃たれた。
「私ね、一番最後の弾は入れ替えておくのがクセなの。」
ボウッ、
「つっ……!」
当然、ツナに再び普通の炎が襲い掛かる。
しかし…
「僕がそいつを、いたわると思ったのかい?」
雲雀は構わずトンファーを蜜柑に向けた。
しかし、蜜柑が新しい弾を入れる方が早かった。
チュインッ!
「手負いのスピードじゃ、私には勝てないって言ったでしょ?」
「ちっ…」
「分かってるわよ、貴方の性格くらい。私だってバカじゃないから。貴方が大切にしてるのは、姉さんなのよね?」
「(まさか……!!)」
蜜柑の左手の銃が向いた先には、
兜に攻撃しようとしている檸檬。
「さよなら、姉さん。」
そう言う蜜柑の右手の銃は、雲雀に向けられている。
さっきの炎の不意打ちで、ツナはほんの少し深手を負って反応が鈍っている。
檸檬を守る者は-------
「「(間に合わない………!)」」
ズガンッ、
無情にも、引き金は引かれる。
「檸檬っ!!」
雲雀が思わず叫んだ、その時。
キィンッ!
「あら。」
「卑怯じゃねーか?そんなトコから狙ってさ。」
銃弾を弾いたのは、山本の刀だった。
蜜柑は目を丸くし、ツナは思わず声をあげる。
「山本…分かってたのか!」
「いんや、獄寺が教えてくれてさ♪」
ニカッと笑う山本を見て、蜜柑はため息をついた。
「また殺り損ねちゃったわ。」
しかし、再びゆるりと口角を上げて。
「じゃぁ、新しい弾、使ってみましょうか。」
「新しい………弾……?」
---
-------
『(読める……読める!!)』
お父さんの動きが少しずつ分かってきた。
それでもイマイチ決定打に欠けるのは、やっぱりお父さんが強いからなんだと思う。
でもまるで、
世界が波長だけになったみたいに、
あたしには波長しか視えなくなってきた。
アルファ線、
ベータ線、
ガンマ線、
紫外線、
赤外線、
これが…
………第六感……。
その中で、お父さんの脳に流れる電気信号の波長を探る。
次の指令は、体をどう動かすのか。
その次は、どんな攻撃をするのか。
今まで聞いていたのと全然違うリズムなのに、
何故だかすぐに受け入れられた。
ほら、
あたしの後ろに回って、
蹴りを入れると見せ掛けて、
反対側から拳がやって来る。
パシッ、
「なにっ!!?」
『(-----剛腕-----)』
お父さんの腕を掴んで、そのまま投げ飛ばした。
---
------
「あら…?」
ふと目を閉じた揚羽。
リボーンが疑問符を浮かべる。
「どうした?」
「まさか…………檸檬……!!」
見開かれた揚羽の瞳は、驚愕の色に染まる。
「未来が……変わった…………」
「本当か?」
リボーンの問い掛けに答えず、揚羽は立ち上がった。
部屋を出て、真直ぐ戦闘が行なわれている部屋へと向かう。
「おい、揚羽。」
「変わったわ……今までもその兆候が微かにあったけど、今それが、確実なモノになった…。」
「行って、何する気だ。」
「伝えるのが、私の役目よ。それに……この変化は…私達にとって良い変化じゃない。」
次第に小走りになる揚羽に、リボーンはなおも問いをぶつける。
「なら、檸檬にとってはどーなんだ。」
すると揚羽は、冷たい瞳を向けて。
「それは檸檬次第。そもそも私たちには関係ないわ。」
と。
---
------
チュインッ!
3人相手に引けを取らない蜜柑。
その素早さと正確な早撃ちに、内心驚く3人。
しかし、銃という武器には弾切れというモノがあり、
「くっ……!」
カートリッジを取り替える蜜柑に、3人は一斉に攻め寄る。
「行くぜっ!」
山本が刀を振り上げたと同時に、蜜柑は新しい弾を撃った。
抜群の反射神経で、それを弾く山本。
しかし…
ズンッ、
「あり……?」
「さよなら。」
何故か刀の振りが遅くなった山本に、蜜柑は続けて撃とうとする。
「山本!」
ボウッ、
「サンキュ、ツナ!」
かろうじてツナが銃弾を溶かしてカバーした。
「何か、急に重くなったな……」
首をかしげながら山本が見てみると、
刀の先に蜜柑の撃った銃弾がくっついていた。
「これって……!」
「刀を武器にしてる人物に撃つ為の弾よ。貴方が刀で弾けば弾く程、貴方の刀は重くなっていくの。」
にやりと笑う蜜柑の真横に、雲雀が回り込んだ。
「さっきよりは速いわね。」
「うるさい。」
銃弾を弾く音。
時折油の匂いが漂う。
「ねぇ、その弾ムカツク。」
「だって、またそこの彼が炎でガードしちゃったらイヤじゃない?だから、ガードしたら燃えるように。」
「………ふぅん……頭はキレるみたいだね。」
「どーも。」
蜜柑と雲雀が戦っている間に、ツナは山本の刀についた銃弾を見てみた。
「これは…磁石………?」
「すんげっ、取れねーな。」
参ったな、と笑う山本。
と、その時。
「やっぱり遅いわ。」
ズキュンッ!
「つっ………!」
雲雀の左腕が撃ち抜かれた。
---
------
「やったぜ!」
『はっ……はぁっ………』
檸檬に駆け寄る獄寺。
壁に叩き付けられた兜は、砂埃の中から出る気配を見せない。
疲労により、床にぺたりと座り込む檸檬。
「檸檬……へ、平気か?」
目を逸らしつつも手を差し伸べる獄寺に、檸檬は息を落ち着かせながら笑顔を見せた。
『うんっ♪』
しっかりと手を握り、立ち上がる。
だがやはり、そう簡単には勝たせてくれなかった。
「檸檬………許さんぞ……」
『……!!』
「へっ、まだ生きてやがったのかよ!!」
ボムを用意する獄寺の前に、檸檬は左手を伸ばして制止させる。
「檸檬?」
『待って…』
イヤな感じがする…
『隼人、ボムじゃなくて煙幕をお願い。』
「けどよっ……」
『ヤツの視界がきいてたら、まずい気がするの………。』
檸檬の真剣な表情を見て、獄寺が煙幕を出そうとしたその時。
「兜!!」
壊れたドアの向こうから、聞き覚えのある声がした。
兜はすぐに反応し、声のした方を見る。
その視線の先には、
「はぁっ……はぁっ………」
走ったのか、すっかり息を切らした揚羽が立っていた。
「揚羽………」
それは前と変わらない。
だけど、
この世界で絶対に生きるって決めた。
二丁拳銃
『くっ…!』
「どうした?リズムが遅くなってるぞ!」
隼人と武が援護してくれる限り、
あたしはその負担を減らさなくちゃいけない。
お父さんのリズムを正確に読んで、
2人に的確な指示をしなきゃいけない。
なのに…
『(読めない……!)』
どんなに聞いても、究極のリズムは読めなかった。
コンビニ強盗の夜と、同じように。
あたしがモタモタしてちゃダメなのに…!!
ドガッ、
「うわっ!」
『隼人っ!!』
お父さんの手が、隼人を殴り飛ばす。
あたしはすぐに後ろに回り込んでキャッチした。
『大丈夫!?』
「あぁ、何とかな。」
「檸檬、諦めろ。あんまりしつこいと、こいつらもろとも死ぬぞ。」
死ぬのはイヤ。
諦めるのもイヤ。
だけど、2人を道連れにするのはもっとイヤ!!
『(落ち着け………)』
武と隼人は再びお父さんに向かってく。
「任せろ」って言うみたいに。
それでも、足止め出来るのは恐らく4、5秒。
もって6秒。
読まなくちゃ、
あたしが。
超えなくちゃ、
お父さんを。
「指揮者の俺に、勝てると思うか!?」
そう、アイツは指揮者。
演奏者であるあたし達は、指揮者に動かされてる。
指揮者には、何か無いの?
指揮者が従うモノ…………
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もう一度、炎の壁で銃弾を防ごうとした。
が、やはり別の炎が混ざってツナに襲い掛かる。
そして、床には黒い焦げ跡。
「(やっぱり、何かが燃えてる……)」
「何度やっても無駄よ。貴方は、自分の炎に焼かれるわ。」
にやりと笑う蜜柑。
しかし、同時に雲雀が何かを感じ取る。
「……!…この匂い………」
「匂い…?」
「油………」
「あら、分かっちゃったのね。」
蜜柑は少し目を丸くする。
そこで、ツナにも全て分かった。
「銃弾に入った油が、俺の炎で熱せられたのか。」
「ま、分かっていても防げないでしょうけど。」
再び2人に撃ち込む蜜柑。
その際、一瞬だけ雲雀とツナの目が合った。
どうやらお互いがお互いを確認したらしい。
「(コイツ、分かってるのかな…)」
「(もしかして、雲雀さんも…)」
次の瞬間、
2人は左右に別れて蜜柑を挟撃した。
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同じ頃、とある一室。
鏡台の前で両手を合わせ目を閉じる女が1人。
その後ろには、いつの間にか1人の赤ん坊が立っていた。
気配を感じた女は、おもむろに口を開く。
「来ると思ってたわ。」
すると、赤ん坊は真剣な声で。
「雨宮揚羽だな。」
「えぇ、そうよ。アルコバレーノのリボーンさん。」
窓から入る風が、揚羽の髪を揺らす。
「檸檬の力について聞きたい。何故お前達が恐れるのかも。」
すると揚羽はピクリと眉を動かし、リボーンに向き合うように座り直した。
「檸檬の力はね、私より強いの。世界の波長を読み取るだけじゃなく、ひずみとひずみを繋げて空間移動をする。極めれば恐らく……時空移動も。」
「その力を、恐れたか。」
リボーンの問い掛けに、揚羽はため息をついた。
「あのまま私達が育てていたら、私達のような子に育っていたわ。自分が一番大切で、その為には自分以外の全てを壊すような子。」
「赤ん坊だった檸檬に、何を視た。」
「私が視た未来では……檸檬は笑ってたわ。笑いながら、私達を殺してた。」
揚羽の表情が、少し暗くなる。
「兜が止めようとしてて、傷だらけになった蜜柑が拳を作って檸檬を睨み、私も血まみれ。何としても、それは避けなければと思ったわ。」
「………そうか。」
目深にハットをかぶり直すリボーンに、揚羽は問う。
「ねぇ、貴方はあちらに行かないの?」
「……あぁ、檸檬を守るのは、俺の教え子達の仕事だからな。」
リボーンの笑みに、揚羽は「あら、そう」とだけ返した。
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「邪魔だ。」
「ぐっ!」
「うわっ!」
5秒だけ、時間が貰えた。
それで充分だった。
分かったよ、指揮者が従う唯一のモノ。
あたしに波長が読めるなら、
「檸檬、次はお前だ!!」
目を閉じて。
「檸檬っ!!」
「危ねぇっ!!」
お父さんの足音、
お父さんの呼吸、
お父さんの脈打ち、
全部聞いたら……………
「終わりだ!!檸檬!!!」
目を開けて。
『(視えたっ………!!)』
ドシュッ、
「な………に…………!?」
指揮者が従う唯一のモノ。
それは、楽譜。
楽譜無しで音楽を奏でる事は出来ない。
指揮者だってちゃんと棒をふれない。
お父さんの楽譜すなわち、お父さんの脳波。
これが読めれば、全て読めるはず!!
---
------
片手ずつ銃を向け、撃った蜜柑。
しかし、
ボタボタッ、
油入りの弾は雲雀の方へ。
ジュッ、
普通の弾丸がツナの作る炎の壁にあたる。
「……やっぱり、そうだったか。」
雲雀がぽつりと呟いた。
「なっ…!」
蜜柑が少し焦りの声を漏らした。
油の弾がツナの方にさえ行かなければ、余計な心配をする必要はない。
右手は油の弾、
左手は普通の弾、
雲雀もツナも、それを見切っていたのだ。
「終わらせようか。」
「きゃ…きゃああっ!!!」
目を瞑って乱射をする蜜柑。
しかし、数発撃ったところで落ち着いたように目を開ける。
「……………なーんて、言うと思った?」
チュインッ!
次の瞬間、雲雀の方に普通の弾、ツナの方に油の弾が撃たれた。
「私ね、一番最後の弾は入れ替えておくのがクセなの。」
ボウッ、
「つっ……!」
当然、ツナに再び普通の炎が襲い掛かる。
しかし…
「僕がそいつを、いたわると思ったのかい?」
雲雀は構わずトンファーを蜜柑に向けた。
しかし、蜜柑が新しい弾を入れる方が早かった。
チュインッ!
「手負いのスピードじゃ、私には勝てないって言ったでしょ?」
「ちっ…」
「分かってるわよ、貴方の性格くらい。私だってバカじゃないから。貴方が大切にしてるのは、姉さんなのよね?」
「(まさか……!!)」
蜜柑の左手の銃が向いた先には、
兜に攻撃しようとしている檸檬。
「さよなら、姉さん。」
そう言う蜜柑の右手の銃は、雲雀に向けられている。
さっきの炎の不意打ちで、ツナはほんの少し深手を負って反応が鈍っている。
檸檬を守る者は-------
「「(間に合わない………!)」」
ズガンッ、
無情にも、引き金は引かれる。
「檸檬っ!!」
雲雀が思わず叫んだ、その時。
キィンッ!
「あら。」
「卑怯じゃねーか?そんなトコから狙ってさ。」
銃弾を弾いたのは、山本の刀だった。
蜜柑は目を丸くし、ツナは思わず声をあげる。
「山本…分かってたのか!」
「いんや、獄寺が教えてくれてさ♪」
ニカッと笑う山本を見て、蜜柑はため息をついた。
「また殺り損ねちゃったわ。」
しかし、再びゆるりと口角を上げて。
「じゃぁ、新しい弾、使ってみましょうか。」
「新しい………弾……?」
---
-------
『(読める……読める!!)』
お父さんの動きが少しずつ分かってきた。
それでもイマイチ決定打に欠けるのは、やっぱりお父さんが強いからなんだと思う。
でもまるで、
世界が波長だけになったみたいに、
あたしには波長しか視えなくなってきた。
アルファ線、
ベータ線、
ガンマ線、
紫外線、
赤外線、
これが…
………第六感……。
その中で、お父さんの脳に流れる電気信号の波長を探る。
次の指令は、体をどう動かすのか。
その次は、どんな攻撃をするのか。
今まで聞いていたのと全然違うリズムなのに、
何故だかすぐに受け入れられた。
ほら、
あたしの後ろに回って、
蹴りを入れると見せ掛けて、
反対側から拳がやって来る。
パシッ、
「なにっ!!?」
『(-----剛腕-----)』
お父さんの腕を掴んで、そのまま投げ飛ばした。
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「あら…?」
ふと目を閉じた揚羽。
リボーンが疑問符を浮かべる。
「どうした?」
「まさか…………檸檬……!!」
見開かれた揚羽の瞳は、驚愕の色に染まる。
「未来が……変わった…………」
「本当か?」
リボーンの問い掛けに答えず、揚羽は立ち上がった。
部屋を出て、真直ぐ戦闘が行なわれている部屋へと向かう。
「おい、揚羽。」
「変わったわ……今までもその兆候が微かにあったけど、今それが、確実なモノになった…。」
「行って、何する気だ。」
「伝えるのが、私の役目よ。それに……この変化は…私達にとって良い変化じゃない。」
次第に小走りになる揚羽に、リボーンはなおも問いをぶつける。
「なら、檸檬にとってはどーなんだ。」
すると揚羽は、冷たい瞳を向けて。
「それは檸檬次第。そもそも私たちには関係ないわ。」
と。
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チュインッ!
3人相手に引けを取らない蜜柑。
その素早さと正確な早撃ちに、内心驚く3人。
しかし、銃という武器には弾切れというモノがあり、
「くっ……!」
カートリッジを取り替える蜜柑に、3人は一斉に攻め寄る。
「行くぜっ!」
山本が刀を振り上げたと同時に、蜜柑は新しい弾を撃った。
抜群の反射神経で、それを弾く山本。
しかし…
ズンッ、
「あり……?」
「さよなら。」
何故か刀の振りが遅くなった山本に、蜜柑は続けて撃とうとする。
「山本!」
ボウッ、
「サンキュ、ツナ!」
かろうじてツナが銃弾を溶かしてカバーした。
「何か、急に重くなったな……」
首をかしげながら山本が見てみると、
刀の先に蜜柑の撃った銃弾がくっついていた。
「これって……!」
「刀を武器にしてる人物に撃つ為の弾よ。貴方が刀で弾けば弾く程、貴方の刀は重くなっていくの。」
にやりと笑う蜜柑の真横に、雲雀が回り込んだ。
「さっきよりは速いわね。」
「うるさい。」
銃弾を弾く音。
時折油の匂いが漂う。
「ねぇ、その弾ムカツク。」
「だって、またそこの彼が炎でガードしちゃったらイヤじゃない?だから、ガードしたら燃えるように。」
「………ふぅん……頭はキレるみたいだね。」
「どーも。」
蜜柑と雲雀が戦っている間に、ツナは山本の刀についた銃弾を見てみた。
「これは…磁石………?」
「すんげっ、取れねーな。」
参ったな、と笑う山本。
と、その時。
「やっぱり遅いわ。」
ズキュンッ!
「つっ………!」
雲雀の左腕が撃ち抜かれた。
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「やったぜ!」
『はっ……はぁっ………』
檸檬に駆け寄る獄寺。
壁に叩き付けられた兜は、砂埃の中から出る気配を見せない。
疲労により、床にぺたりと座り込む檸檬。
「檸檬……へ、平気か?」
目を逸らしつつも手を差し伸べる獄寺に、檸檬は息を落ち着かせながら笑顔を見せた。
『うんっ♪』
しっかりと手を握り、立ち上がる。
だがやはり、そう簡単には勝たせてくれなかった。
「檸檬………許さんぞ……」
『……!!』
「へっ、まだ生きてやがったのかよ!!」
ボムを用意する獄寺の前に、檸檬は左手を伸ばして制止させる。
「檸檬?」
『待って…』
イヤな感じがする…
『隼人、ボムじゃなくて煙幕をお願い。』
「けどよっ……」
『ヤツの視界がきいてたら、まずい気がするの………。』
檸檬の真剣な表情を見て、獄寺が煙幕を出そうとしたその時。
「兜!!」
壊れたドアの向こうから、聞き覚えのある声がした。
兜はすぐに反応し、声のした方を見る。
その視線の先には、
「はぁっ……はぁっ………」
走ったのか、すっかり息を切らした揚羽が立っていた。
「揚羽………」