未来編序章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
足に1発撃ち込まれて、
それでも銃口向けられて、
頭や胸部を庇ったら、
両腕に1発ずつ撃ち込まれて。
あぁやっぱり…
すごく正確な射撃だね、
蜜柑-------
妹の本性
ドサッ、
僕の目の前で倒れる檸檬。
その右脚と両腕から血が流れる。
『ど…して………』
できるだけ身を起こしながら、檸檬は尋ねる。
ドアの前に立つ人物、
雨宮蜜柑に。
蜜柑が両手に持つ銃は、未だ僕と檸檬に向けられていて。
そのせいで、駆け寄りたくても出来ない。
すると蜜柑はにやりと笑って、こう呟いた。
「お客さまが来るわ。」
『え…?』
次の瞬間、蜜柑は檸檬を引っ張って、部屋の真ん中に移動した。
それとほぼ同時に、ドアの所に人影が1つ。
「檸檬っ!!!」
『ツナ………!!』
走って来た沢田は、この部屋の光景を見て驚愕の表情を見せる。
僕は刺されて壁に寄り掛かってて、
檸檬は蜜柑に捕われて銃を突き付けられてる。
「雨宮…蜜柑さんですよね……。」
「…だったら?」
「檸檬を……放して下さい。」
「イ ヤ よ。」
そう答えて、蜜柑は鼻で笑った。
「動いたら、姉さんを撃つからね。」
蜜柑はあたしの腕を後ろで括り、こめかみに銃口を当てる。
金属の感触がして、冷たくて少し痛い。
『ねぇ蜜柑…どうして………?』
あたしが口を開けば、蜜柑の声が少し低くなる。
「どうして、ですって?憎いからに決まってんじゃない。」
さらりと言われたその言葉は、あたしを刺した。
憎い?
蜜柑が、あたしを、憎んでる?
どうして…?
面識なんて、ずっと無かったのに……
「ずっとずっとずーっと!私は姉さんが憎くてしょうがなかった。私は姉さんを殺す為だけに生きて来たの。」
ツナも恭弥も、何も言わない。
勿論あたしも。
部屋にはただ、蜜柑の声が響き渡る。
「どう?姉さん。信じてた人に裏切られる気分は!居場所を見出してから殺される気分は!!」
あぁ、そっか…
そういう事だったのね………
---「極上の幸せを与えてから、殺そうと思ってな。」
別に、幸せじゃなかったけどね。
あたし、家族に愛された覚えはないけどね。
でもやっぱ、蜜柑のこと信じてた。
だから………辛いよ。
「ど、どうして…」
不意に、ツナが口を開く。
「どうして檸檬を憎んでるんですか!?双子の姉妹なのに…!!」
「貴方に分かるワケないでしょう?けどまぁいいわ、教えてあげる。姉さんも、理由も分からず殺されるのは嫌だろううし?」
うっすらと笑みを浮かべる蜜柑に、ほんの少し恐怖を覚えた。
「私達の両親が、2人とも“特殊な人間”だって知ってる?」
蜜柑の言葉に、ツナは頷く。
「…そう。だったら話は早いわね。姉さんはね、両親の能力を2つまとめて受け継いだのよ。」
『え……?』
あたしが、
アイツらの能力を、
受け継いだ…………?
「パパからはリズム感、ママからは……………第六感。」
『ちょっと待ってよ…あたしはそんな………』
反論しようとすると、銃口を更に強く当てられる。
『つっ…!』
「黙っててよ。とにかく、自覚はなくても受け継いでるのよ。その証拠はすぐ側にある。」
「証拠……?」
まさかそれって…
「姉さんの、6つの能力よ。」
「でもアレは、イタリアで身につけたモノだって…」
「そーよ。覚醒には時間が掛かるの。同時に、ある条件が出て来る。」
「条件…?」
恭弥の声が聞こえて、一瞬だけホッとした。
「ママの場合、第六感は自分の為にしか発動出来なかった。だけど、姉さんは逆。他人を想うことで能力が開花する。」
『他人………??』
「まぁ、それはどーでもいいわ。6つの能力のトレーニング法……アレは他の人がやっても決して同じ効果を示さない。」
「檸檬には、第六感があるから備わったって事なの?」
「そーよ。ママが持つ第六感っていうのは、すなわち“波長を読む力”。」
『波長………?』
と、その時。
「10代目!片付きました!!」
「雲雀!檸檬!無事か!?」
「獄寺君!山本!」
階段を駆け上がって、隼人と武が姿を現した。
それを見て、蜜柑は言う。
「随分とたくさんお友達がいるのね、姉さん。」
『………っ!お願いっ…みんなには手を出さないで………』
すると蜜柑はにっこりと笑って。
「大丈夫よ。私の目的は姉さんの命だけだから。」
「なっ!何言ってやがるてめぇ!!」
「外野は黙ってて!波長が読めれば何でも出来るのよ!!姉さんの6つの能力だってそう!」
『どういう、こと?』
聞き返すあたしに、蜜柑は嘲笑うように答えた。
「ホントに何も分かってなかったのね。姉さんの6つの能力は、体中のエネルギーのほとんどを強制的かつ意識的に一点に集中させる、一種の空間移動能力。体内で波長のひずみを無理矢理繋げる、第六感の応用よ。」
『何、それ………』
あたし、知らないうちに…
そんな人間離れした事してたの!?
そんなのまるで………
『化け物みたいじゃない………』
あたしの呟きを聞いて、蜜柑はまた嘲笑った。
「化け物?第六感の価値を知らないからそんな事言えるのよ」
「価値って…何だよソレ。」
聞き返す武を蜜柑は睨む。
「言葉の通りよ。ママの第六感は勿論、パパのリズム感だって、“単体なら”素晴らしい力になる。」
そして、あたしに憎悪の目を向けた。
「なのに姉さんは!2つ一緒に受け継いだ!そしてそれが脅威になった!!」
「脅威って……」
「世界の脅威よ!!空間のひずみを見つけて繋げるなんて、どんな科学技術でも不可能!それを、簡単にやってのける力を持ってるんだから。」
こめかみにグリグリと当たる銃口。
髪を引っ張られて蜜柑の方に顔を向けられる。
「姉さん、1つでも私に分けてくれれば、姉さんはストリートファイト場なんかに捨てられなかった。私は隔離されて成長することなんてなかった。」
脚も、両腕も、今更痛みだした。
「私達姉妹の運命を狂わせたのは、他ならぬ貴女なの」
そっか…
それで蜜柑は怒ってるのね。
あたしが両親の能力を奪ったから。
2つとも奪ったから。
あたしのせいで蜜柑は隔離されて生きて来たから。
でも、でも…
『………んで…ない………』
「何?」
『あたし…そんな力……望んでないよ………』
その瞬間、蜜柑の表情が歪んだのが分かった。
「うるさいっ!!私だって望んでない!!普通に生きていたかったわ!!なのに……姉さんが狂わせたんじゃない!!!」
そう、あたしが全部奪った。
父さんのリズム感と、
母さんの第六感。
あたしが持ってった。
母さんはそれを視た。
そして“人を想わないように”ストリートファイト場へ捨てた。
蜜柑は多分…戦闘用の駒として育てられた。
その射撃の腕からして、随分前から習ってたんだろう。
そして、蜜柑の部屋にあった小さい窓は、遠距離射撃用の窓。
アレも、トレーニングの一部だった。
力が2つ、あたしに流れて来たせいで、
あたしも蜜柑も、
とんでもない生活を強いられたんだ。
「そんなの!」
「『!?』」
突然大きな声が聞こえて、あたしと蜜柑はそちらを向いた。
隼人も武も恭弥も、そっちを向いていた。
みんなの視線の先には、肩を震わせたツナが。
「そんなの、間違ってる!!」
『ツナ……』
「蜜柑さんが辛い過去を持ってるのは分かった……檸檬の力がスゴイって事も分かった………だけど!」
ぐっと握られる拳。
瞳はしっかり、蜜柑を捉えて。
「それで檸檬を恨むのは間違ってる!!!」
部屋には、沈黙が流れる。
「貴方なんかに…」
『…蜜柑………?』
「貴方なんかに言われる筋合いはないわ!!!」
蜜柑がすごい剣幕で怒鳴る。
ツナは思わず一歩引いた。
「力を持たない私じゃパパにもママにも逆らえない!だから…言われた通り、姉さんを憎んで恨んで殺してやるしかないじゃない!!」
「そ、それって、作られた恨みなんじゃ……」
「最初はそうだったかもね。だけどもう私には姉さんに対して憎悪しかない。こうして殺す瞬間を、ずーっと心待ちにしてたわ。」
「だったら、此所で檸檬殺しちまったら終わるんじゃねーか?」
「そうかもね、それでもいいわ。スッキリするのは間違いないでしょうし。」
思えば、出会った時から蜜柑の瞳は、灰色だった。
何処か濁ってた。
それはきっと、“恨み”っていう汚れが蜜柑を包んでいるから。
ねぇ、あたしを殺したら、それは無くなるの?
蜜柑も、綺麗に笑えるようになるのかな?
だったら、
だったらあたしは…
『……撃っていいよ。』
「檸檬!!?」
あたしは蜜柑を見つめる。
『撃ちなよ、蜜柑。』
「な、何言ってるんだよ檸檬!!」
「てめっ、正気か!!?」
「おい檸檬っ!!」
ツナと隼人と武が叫ぶけど、あたしは蜜柑の方を見続ける。
『あたしが撃たれて死んで、それで蜜柑の気が済むなら構わない。』
すると、蜜柑はにやりと笑って。
「ふっ…ふふっ………」
『蜜柑?』
「何処までも愚かね!!そんなに殺されたいなんて!かわいそうだから最期の言葉を言う時間をあげるわ。ほら、何か言いなさいよ!」
最期の言葉、かぁ…
「檸檬っ………!」
『ツナ、さっきは庇ってくれてありがとう。すっごく嬉しかった。』
「バカか檸檬!」
『隼人、助けに来てくれてありがとう。嬉しかったよ。』
「檸檬やめろよ!」
『武、あたしの為に戦ってくれてありがとう。嬉しかったよ。』
「……………」
『恭弥、さっきはホントにごめんなさい。それでも来てくれて嬉しかった。ありがとう。』
「終わったかしら?」
『蜜柑、頼みがあるの。』
「……何よ。」
『あたし以外は、絶対殺さないで。あと、両親に大嫌いって伝えておいて。』
「………いいわ。」
『ありがと。』
言い終わった檸檬は、とても穏やかに微笑んでいた。
「檸檬っ…!」
「動いたら、貴方達も撃つからね。」
そして、
ゆっくりと、
引き金が、
引かれた。
カチ、
「……え…?」
カチ、カチ、カチ、
「なっ!一体………!」
部屋に響くは、引き金を引く音。
しかし、弾が入っていない音。
「た、弾切れ…!?そんなこと………」
焦る蜜柑の隣で、檸檬は腕を縛るロープを剛腕で千切る。
そして、
『ごめんね、蜜柑………』
床に両手をつき、そのまま回って脚を伸ばし、蜜柑の鳩尾を蹴りあげた。
「がっ………!!」
その勢いで、奥の壁に衝突する蜜柑。
口からは血が滴り落ちる。
「くっ…!」
しかし同時に、
ドガアッ!
「ぐあっ!」
「10代目!」
「ツナ!」
『来ちゃったか………』
ドアの向こうから壁を破るような攻撃。
隼人と武は咄嗟に避けたけど、真ん中にいたツナが反応し遅れた。
こんな怪力技やってのけるのは………
「随分と楽しんでいるようじゃないか。」
『お父さん………』
ホントは、お父さんが様子を見に来る前に片付けたかったのに。
そう思いながら恭弥に駆け寄る。
『平気?!』
「ひとまずね、重要器官からは逸れてるよ。」
『そっか………ホントに、良かった……』
恭弥はぐっと立ち上がる。
ツナも、隼人と武に囲まれながら目の前の敵を見つめる。
「これはまた、いい音楽が生まれそうだ。」
そう言ってから、お父さんは蜜柑に呼び掛ける。
「死んでないか?」
「えぇ、何とか。」
「ならいい。蜜柑、援護を。」
「了解。」
本当の戦いの火蓋が、
切って落とされた-----
それでも銃口向けられて、
頭や胸部を庇ったら、
両腕に1発ずつ撃ち込まれて。
あぁやっぱり…
すごく正確な射撃だね、
蜜柑-------
妹の本性
ドサッ、
僕の目の前で倒れる檸檬。
その右脚と両腕から血が流れる。
『ど…して………』
できるだけ身を起こしながら、檸檬は尋ねる。
ドアの前に立つ人物、
雨宮蜜柑に。
蜜柑が両手に持つ銃は、未だ僕と檸檬に向けられていて。
そのせいで、駆け寄りたくても出来ない。
すると蜜柑はにやりと笑って、こう呟いた。
「お客さまが来るわ。」
『え…?』
次の瞬間、蜜柑は檸檬を引っ張って、部屋の真ん中に移動した。
それとほぼ同時に、ドアの所に人影が1つ。
「檸檬っ!!!」
『ツナ………!!』
走って来た沢田は、この部屋の光景を見て驚愕の表情を見せる。
僕は刺されて壁に寄り掛かってて、
檸檬は蜜柑に捕われて銃を突き付けられてる。
「雨宮…蜜柑さんですよね……。」
「…だったら?」
「檸檬を……放して下さい。」
「イ ヤ よ。」
そう答えて、蜜柑は鼻で笑った。
「動いたら、姉さんを撃つからね。」
蜜柑はあたしの腕を後ろで括り、こめかみに銃口を当てる。
金属の感触がして、冷たくて少し痛い。
『ねぇ蜜柑…どうして………?』
あたしが口を開けば、蜜柑の声が少し低くなる。
「どうして、ですって?憎いからに決まってんじゃない。」
さらりと言われたその言葉は、あたしを刺した。
憎い?
蜜柑が、あたしを、憎んでる?
どうして…?
面識なんて、ずっと無かったのに……
「ずっとずっとずーっと!私は姉さんが憎くてしょうがなかった。私は姉さんを殺す為だけに生きて来たの。」
ツナも恭弥も、何も言わない。
勿論あたしも。
部屋にはただ、蜜柑の声が響き渡る。
「どう?姉さん。信じてた人に裏切られる気分は!居場所を見出してから殺される気分は!!」
あぁ、そっか…
そういう事だったのね………
---「極上の幸せを与えてから、殺そうと思ってな。」
別に、幸せじゃなかったけどね。
あたし、家族に愛された覚えはないけどね。
でもやっぱ、蜜柑のこと信じてた。
だから………辛いよ。
「ど、どうして…」
不意に、ツナが口を開く。
「どうして檸檬を憎んでるんですか!?双子の姉妹なのに…!!」
「貴方に分かるワケないでしょう?けどまぁいいわ、教えてあげる。姉さんも、理由も分からず殺されるのは嫌だろううし?」
うっすらと笑みを浮かべる蜜柑に、ほんの少し恐怖を覚えた。
「私達の両親が、2人とも“特殊な人間”だって知ってる?」
蜜柑の言葉に、ツナは頷く。
「…そう。だったら話は早いわね。姉さんはね、両親の能力を2つまとめて受け継いだのよ。」
『え……?』
あたしが、
アイツらの能力を、
受け継いだ…………?
「パパからはリズム感、ママからは……………第六感。」
『ちょっと待ってよ…あたしはそんな………』
反論しようとすると、銃口を更に強く当てられる。
『つっ…!』
「黙っててよ。とにかく、自覚はなくても受け継いでるのよ。その証拠はすぐ側にある。」
「証拠……?」
まさかそれって…
「姉さんの、6つの能力よ。」
「でもアレは、イタリアで身につけたモノだって…」
「そーよ。覚醒には時間が掛かるの。同時に、ある条件が出て来る。」
「条件…?」
恭弥の声が聞こえて、一瞬だけホッとした。
「ママの場合、第六感は自分の為にしか発動出来なかった。だけど、姉さんは逆。他人を想うことで能力が開花する。」
『他人………??』
「まぁ、それはどーでもいいわ。6つの能力のトレーニング法……アレは他の人がやっても決して同じ効果を示さない。」
「檸檬には、第六感があるから備わったって事なの?」
「そーよ。ママが持つ第六感っていうのは、すなわち“波長を読む力”。」
『波長………?』
と、その時。
「10代目!片付きました!!」
「雲雀!檸檬!無事か!?」
「獄寺君!山本!」
階段を駆け上がって、隼人と武が姿を現した。
それを見て、蜜柑は言う。
「随分とたくさんお友達がいるのね、姉さん。」
『………っ!お願いっ…みんなには手を出さないで………』
すると蜜柑はにっこりと笑って。
「大丈夫よ。私の目的は姉さんの命だけだから。」
「なっ!何言ってやがるてめぇ!!」
「外野は黙ってて!波長が読めれば何でも出来るのよ!!姉さんの6つの能力だってそう!」
『どういう、こと?』
聞き返すあたしに、蜜柑は嘲笑うように答えた。
「ホントに何も分かってなかったのね。姉さんの6つの能力は、体中のエネルギーのほとんどを強制的かつ意識的に一点に集中させる、一種の空間移動能力。体内で波長のひずみを無理矢理繋げる、第六感の応用よ。」
『何、それ………』
あたし、知らないうちに…
そんな人間離れした事してたの!?
そんなのまるで………
『化け物みたいじゃない………』
あたしの呟きを聞いて、蜜柑はまた嘲笑った。
「化け物?第六感の価値を知らないからそんな事言えるのよ」
「価値って…何だよソレ。」
聞き返す武を蜜柑は睨む。
「言葉の通りよ。ママの第六感は勿論、パパのリズム感だって、“単体なら”素晴らしい力になる。」
そして、あたしに憎悪の目を向けた。
「なのに姉さんは!2つ一緒に受け継いだ!そしてそれが脅威になった!!」
「脅威って……」
「世界の脅威よ!!空間のひずみを見つけて繋げるなんて、どんな科学技術でも不可能!それを、簡単にやってのける力を持ってるんだから。」
こめかみにグリグリと当たる銃口。
髪を引っ張られて蜜柑の方に顔を向けられる。
「姉さん、1つでも私に分けてくれれば、姉さんはストリートファイト場なんかに捨てられなかった。私は隔離されて成長することなんてなかった。」
脚も、両腕も、今更痛みだした。
「私達姉妹の運命を狂わせたのは、他ならぬ貴女なの」
そっか…
それで蜜柑は怒ってるのね。
あたしが両親の能力を奪ったから。
2つとも奪ったから。
あたしのせいで蜜柑は隔離されて生きて来たから。
でも、でも…
『………んで…ない………』
「何?」
『あたし…そんな力……望んでないよ………』
その瞬間、蜜柑の表情が歪んだのが分かった。
「うるさいっ!!私だって望んでない!!普通に生きていたかったわ!!なのに……姉さんが狂わせたんじゃない!!!」
そう、あたしが全部奪った。
父さんのリズム感と、
母さんの第六感。
あたしが持ってった。
母さんはそれを視た。
そして“人を想わないように”ストリートファイト場へ捨てた。
蜜柑は多分…戦闘用の駒として育てられた。
その射撃の腕からして、随分前から習ってたんだろう。
そして、蜜柑の部屋にあった小さい窓は、遠距離射撃用の窓。
アレも、トレーニングの一部だった。
力が2つ、あたしに流れて来たせいで、
あたしも蜜柑も、
とんでもない生活を強いられたんだ。
「そんなの!」
「『!?』」
突然大きな声が聞こえて、あたしと蜜柑はそちらを向いた。
隼人も武も恭弥も、そっちを向いていた。
みんなの視線の先には、肩を震わせたツナが。
「そんなの、間違ってる!!」
『ツナ……』
「蜜柑さんが辛い過去を持ってるのは分かった……檸檬の力がスゴイって事も分かった………だけど!」
ぐっと握られる拳。
瞳はしっかり、蜜柑を捉えて。
「それで檸檬を恨むのは間違ってる!!!」
部屋には、沈黙が流れる。
「貴方なんかに…」
『…蜜柑………?』
「貴方なんかに言われる筋合いはないわ!!!」
蜜柑がすごい剣幕で怒鳴る。
ツナは思わず一歩引いた。
「力を持たない私じゃパパにもママにも逆らえない!だから…言われた通り、姉さんを憎んで恨んで殺してやるしかないじゃない!!」
「そ、それって、作られた恨みなんじゃ……」
「最初はそうだったかもね。だけどもう私には姉さんに対して憎悪しかない。こうして殺す瞬間を、ずーっと心待ちにしてたわ。」
「だったら、此所で檸檬殺しちまったら終わるんじゃねーか?」
「そうかもね、それでもいいわ。スッキリするのは間違いないでしょうし。」
思えば、出会った時から蜜柑の瞳は、灰色だった。
何処か濁ってた。
それはきっと、“恨み”っていう汚れが蜜柑を包んでいるから。
ねぇ、あたしを殺したら、それは無くなるの?
蜜柑も、綺麗に笑えるようになるのかな?
だったら、
だったらあたしは…
『……撃っていいよ。』
「檸檬!!?」
あたしは蜜柑を見つめる。
『撃ちなよ、蜜柑。』
「な、何言ってるんだよ檸檬!!」
「てめっ、正気か!!?」
「おい檸檬っ!!」
ツナと隼人と武が叫ぶけど、あたしは蜜柑の方を見続ける。
『あたしが撃たれて死んで、それで蜜柑の気が済むなら構わない。』
すると、蜜柑はにやりと笑って。
「ふっ…ふふっ………」
『蜜柑?』
「何処までも愚かね!!そんなに殺されたいなんて!かわいそうだから最期の言葉を言う時間をあげるわ。ほら、何か言いなさいよ!」
最期の言葉、かぁ…
「檸檬っ………!」
『ツナ、さっきは庇ってくれてありがとう。すっごく嬉しかった。』
「バカか檸檬!」
『隼人、助けに来てくれてありがとう。嬉しかったよ。』
「檸檬やめろよ!」
『武、あたしの為に戦ってくれてありがとう。嬉しかったよ。』
「……………」
『恭弥、さっきはホントにごめんなさい。それでも来てくれて嬉しかった。ありがとう。』
「終わったかしら?」
『蜜柑、頼みがあるの。』
「……何よ。」
『あたし以外は、絶対殺さないで。あと、両親に大嫌いって伝えておいて。』
「………いいわ。」
『ありがと。』
言い終わった檸檬は、とても穏やかに微笑んでいた。
「檸檬っ…!」
「動いたら、貴方達も撃つからね。」
そして、
ゆっくりと、
引き金が、
引かれた。
カチ、
「……え…?」
カチ、カチ、カチ、
「なっ!一体………!」
部屋に響くは、引き金を引く音。
しかし、弾が入っていない音。
「た、弾切れ…!?そんなこと………」
焦る蜜柑の隣で、檸檬は腕を縛るロープを剛腕で千切る。
そして、
『ごめんね、蜜柑………』
床に両手をつき、そのまま回って脚を伸ばし、蜜柑の鳩尾を蹴りあげた。
「がっ………!!」
その勢いで、奥の壁に衝突する蜜柑。
口からは血が滴り落ちる。
「くっ…!」
しかし同時に、
ドガアッ!
「ぐあっ!」
「10代目!」
「ツナ!」
『来ちゃったか………』
ドアの向こうから壁を破るような攻撃。
隼人と武は咄嗟に避けたけど、真ん中にいたツナが反応し遅れた。
こんな怪力技やってのけるのは………
「随分と楽しんでいるようじゃないか。」
『お父さん………』
ホントは、お父さんが様子を見に来る前に片付けたかったのに。
そう思いながら恭弥に駆け寄る。
『平気?!』
「ひとまずね、重要器官からは逸れてるよ。」
『そっか………ホントに、良かった……』
恭弥はぐっと立ち上がる。
ツナも、隼人と武に囲まれながら目の前の敵を見つめる。
「これはまた、いい音楽が生まれそうだ。」
そう言ってから、お父さんは蜜柑に呼び掛ける。
「死んでないか?」
「えぇ、何とか。」
「ならいい。蜜柑、援護を。」
「了解。」
本当の戦いの火蓋が、
切って落とされた-----