未来編序章
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動き出した歯車は、
止まりはしない。
確実に破滅へと、
絶望へと、
崩壊へと、
導いて行く。
催眠
「姉さん……あの、先に帰っちゃってごめん…」
『いいの…』
あたしは床に座り込んだ。
蜜柑が心配したように覗き込む。
「どうしたの?」
『何でもない………』
あの時、
どうしてあんな事言っちゃったんだろう。
あたしには…助けを求める権利なんて無いのに。
---
-------
---------------
「私が行きましょうか?」
揚羽が突然兜に言った。
「此所から出ていいのか?」
「少しくらい平気よ。」
揚羽により、神聖な空気が保たれたその部屋。
もともと病弱な彼女は、あまり外に出る事は無い。
しかし、娘達に会う為ゆっくりと部屋を出た。
「檸檬、蜜柑、いるかしら?」
「ママ!?」
ドアの外の声に反応したのは、蜜柑だった。
扉の向こうには、長く美しい黒髪を持つ女が。
「ど、どうしてママが此処に?」
「檸檬に会いに来たの。蜜柑、外してくれないかしら。」
「分かった……。」
部屋を出る蜜柑。
反対に檸檬は、揚羽が部屋に入っても床から動こうとはしなかった。
ただ、顔を伏せてうずくまっていた。
「檸檬、」
呼び掛けられて、ピクリと反応する。
ゆっくりと顔を上げるが、その瞳は虚ろなまま。
揚羽はそっと、檸檬の額に手の平を当てた。
少しの間目を閉じて、ため息をついて言い放った。
「相変わらず、嫌な未来しか視せてくれないわね。」
檸檬は、少しだけ体を震わせた。
揚羽は言う。
「いい?今から言う事をよく聞いて。」
檸檬は小さく頷く。
「これからこの場所に、私達の未来を乱す者が現れるわ。彼らはとても危険なの。檸檬の命を脅かす者よ。」
『あたしの…命………?』
「檸檬の命を脅かす者は、どうすればいい?」
揚羽は檸檬の瞳を真直ぐ見つめた。
手の平は未だ、檸檬の額に触れている。
檸檬の唇が僅かに動いた。
『…………殺せばいい……。』
ドア越しに立つ蜜柑は、嫌な感覚を思い出していた。
かつて、自分も受けた揚羽の催眠。
檸檬はそれを受けているのだ。
これから先、恐らく檸檬の目には自分達以外の全てが敵に見えるのだろう。
「侵入者への制裁は…?」
『“死”……』
「よく出来ました。それを忘れないでね。」
にこりと微笑んだ揚羽は、すぐに部屋を出る。
外で、蜜柑と目を合わせた。
「勘違いしない事ね、蜜柑。」
「え…?」
突然話し掛けられて、蜜柑も些か驚いた。
「貴女が昨日働かなかったとしても、彼らは此処に来るの。兜が、そう仕向けているから。」
揚羽は更に言い放つ。
「貴女はそう……保険よ。」
俯きながら、蜜柑は答えた。
「……分かってる…。」
「せいぜい、兜の足手纏いにならないようにね。」
「はい…。」
揚羽は立ち去り、蜜柑は部屋に戻る。
中では、放心状態の檸檬が床に座っていた。
「姉さん……」
『蜜柑、』
呼びかけは遮られ、蜜柑は首をかしげる。
すると檸檬は、少し笑って。
『…頑張ろーね。』
まるで、影のかかったような笑みに、蜜柑は恐怖さえ覚えた。
---
------
-------------
その頃、
「黒曜?」
「あぁ、雨宮兜が襲った並盛のコンビニを、点で繋いでみると、かつて骸が潜伏してた場所を差す矢印になるんだ。」
ディーノからの電話を受けるツナの傍らには、獄寺と山本、
そして、不満気な雲雀が立っていた。
「えっと、ありがとうございます!」
「あぁ、俺は引き続き雨宮蜜柑について調べる。じゃな。」
「はい!」
電話を切ったツナに、リボーンが聞く。
「どーすんだ?行くのか?」
「当たり前でしょ。」
一番に答えたのは雲雀。
「うん!」
「行きます!」
「あぁ!」
ツナ、獄寺、山本も、はっきりと返事をする。
しかし、リボーンの表情は深刻そうで。
「兜は………強ぇぞ。」
ハットを深めにかぶるリボーン。
その言葉を聞いてすぐ、雲雀が歩き出した。
「じゃあ、僕はもう行くよ。」
「あ、雲雀さん!」
引き止めようとするツナ。
しかしリボーンは、
「獄寺、山本、お前達は先に行け。」
と。
「ん?」
「な!山本とスか!?」
「俺とツナは、雨宮蜜柑についての情報が手に入り次第合流する。」
「オッケ♪」
「わ、分かりました…。」
獄寺と山本が走って行く。
直後に、ツナがリボーンに問う。
「どうしてその…双子の妹の情報が要るんだよ。」
「念には念だ。情報はなるべく多い方がいいぞ。」
妙に説得力があって、ツナは大人しくディーノからの連絡を待つ事にした。
---
-------
-------------
「今日なのよね?姉さん…。」
『うん、お母さんがそう言ってた。』
今日、侵入者がやって来ると。
それは、あたしの命を脅かす者達だと。
あたしはナイフを装備して、
蜜柑は銃と弾を備え付けて。
『行くよ。』
「……うん。」
侵入者は敵。
命を奪おうとする者は、殺す。
例えそれが、
誰であろうとも。
「ちょっと待って!」
部屋を出て持ち場に行こうとすると、蜜柑が止まった。
「私、お祈りしてくる。」
蜜柑は銃を置いて奥の部屋に戻った。
お母さんの教えなのかな……あたしには、関係ないけど。
『ん………?』
ふと目に止まる、蜜柑の銃。
『まさかね……』
蜜柑はIQ200あるって言うし、
もしかしたら弾数はぴったり用意してあるのかもしれない。
その計算にもし…
『それはない、はずだよね……』
そう言って、自分を落ち着かせた。
でも…
---
-------
-------------
「お待たせ。行こ、姉さん。」
ドアを開ける蜜柑。
あたし達は、外に出た。
結局あたしが行き着く先は、
護るっていう言葉だった。
けど自分しか護れない、どこまでも無力で。
色々な事を考えてると、
それを全部打ち消すように、
頭の中に声が響いて来た。
---「侵入者は消しなさい………護るべきは自分………今から来るのは命を脅かす、あなたの敵よ………」
分かってる、分かってる。
此処に来た人はみんな……
殺す。
蜜柑は2階、あたしは3階で待機する事にした。
---
------
-------------
檸檬、もうすぐ君に会える。
君を、取り戻しに行くよ。
黒曜…あそこはいい思い出が何一つ無いね。
---『…怖い……………』
大丈夫だよ、僕がいるから。
---『殺されたく、ない…………』
大丈夫だよ、僕が守るから。
=========
建物の中に踏み込めば、すぐに階段が現れる。
上ってみると、たくさんの敵。
それらに囲まれるけど、ちらりと見える、女の影。
「手早く殺って。」
「君、此処にいたの……」
それは、檸檬の面影を持つ、別人。
「ごめんなさい。私も……パパには逆らえない………!」
「って事は、コイツが噂の……」
「双子の妹か!」
兜の手下が僕らに襲い掛かる。
そんな中、蜜柑は援護射撃をするように、僕らを狙い続けていた。
それは、的確過ぎるほど的確。
「やっぱすげぇな。」
「呑気な事言ってんじゃねぇ!」
爆弾男に怒鳴られながら、野球男は言った。
「雲雀、」
「……何。」
「俺ら、二階の奴ら片付けっからさ、檸檬トコ行っていーぜ♪」
「…言われなくても、そうするつもりだよ。」
「けっ、檸檬取り戻せなかったら、ぶっ殺すからな!」
「取り戻すよ。」
僕は階段を駆け上がった。
後ろで、あの2人が引き止めてるのが分かる。
「追え!!」
「おっと、」
「てめーらの相手は俺らがやるぜ。」
山本と獄寺を見つめつつ、蜜柑は弾を補充した。
「(姉さん………)」
---
-------
--------------
3階に昇って部屋を覗くと、
シュッ…
ドスドスッ!
「やっぱり、此処にいた。」
投げられたナイフは、僕の真横を通り過ぎて、壁に刺さった。
昨晩より瞳が冷たく暗くなってるのは、
多分気のせいじゃない。
『貴方が、あたしの敵………』
その証拠に、僕の名を呼ばない。
「味方だよ。」
一言返して、僕はトンファーを構えた。
檸檬も無言でナイフを構える。
僕は、何としても取り戻すよ。
君の思い出を、
君の心を、
そして君のあの……
綺麗な笑顔を。
止まりはしない。
確実に破滅へと、
絶望へと、
崩壊へと、
導いて行く。
催眠
「姉さん……あの、先に帰っちゃってごめん…」
『いいの…』
あたしは床に座り込んだ。
蜜柑が心配したように覗き込む。
「どうしたの?」
『何でもない………』
あの時、
どうしてあんな事言っちゃったんだろう。
あたしには…助けを求める権利なんて無いのに。
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「私が行きましょうか?」
揚羽が突然兜に言った。
「此所から出ていいのか?」
「少しくらい平気よ。」
揚羽により、神聖な空気が保たれたその部屋。
もともと病弱な彼女は、あまり外に出る事は無い。
しかし、娘達に会う為ゆっくりと部屋を出た。
「檸檬、蜜柑、いるかしら?」
「ママ!?」
ドアの外の声に反応したのは、蜜柑だった。
扉の向こうには、長く美しい黒髪を持つ女が。
「ど、どうしてママが此処に?」
「檸檬に会いに来たの。蜜柑、外してくれないかしら。」
「分かった……。」
部屋を出る蜜柑。
反対に檸檬は、揚羽が部屋に入っても床から動こうとはしなかった。
ただ、顔を伏せてうずくまっていた。
「檸檬、」
呼び掛けられて、ピクリと反応する。
ゆっくりと顔を上げるが、その瞳は虚ろなまま。
揚羽はそっと、檸檬の額に手の平を当てた。
少しの間目を閉じて、ため息をついて言い放った。
「相変わらず、嫌な未来しか視せてくれないわね。」
檸檬は、少しだけ体を震わせた。
揚羽は言う。
「いい?今から言う事をよく聞いて。」
檸檬は小さく頷く。
「これからこの場所に、私達の未来を乱す者が現れるわ。彼らはとても危険なの。檸檬の命を脅かす者よ。」
『あたしの…命………?』
「檸檬の命を脅かす者は、どうすればいい?」
揚羽は檸檬の瞳を真直ぐ見つめた。
手の平は未だ、檸檬の額に触れている。
檸檬の唇が僅かに動いた。
『…………殺せばいい……。』
ドア越しに立つ蜜柑は、嫌な感覚を思い出していた。
かつて、自分も受けた揚羽の催眠。
檸檬はそれを受けているのだ。
これから先、恐らく檸檬の目には自分達以外の全てが敵に見えるのだろう。
「侵入者への制裁は…?」
『“死”……』
「よく出来ました。それを忘れないでね。」
にこりと微笑んだ揚羽は、すぐに部屋を出る。
外で、蜜柑と目を合わせた。
「勘違いしない事ね、蜜柑。」
「え…?」
突然話し掛けられて、蜜柑も些か驚いた。
「貴女が昨日働かなかったとしても、彼らは此処に来るの。兜が、そう仕向けているから。」
揚羽は更に言い放つ。
「貴女はそう……保険よ。」
俯きながら、蜜柑は答えた。
「……分かってる…。」
「せいぜい、兜の足手纏いにならないようにね。」
「はい…。」
揚羽は立ち去り、蜜柑は部屋に戻る。
中では、放心状態の檸檬が床に座っていた。
「姉さん……」
『蜜柑、』
呼びかけは遮られ、蜜柑は首をかしげる。
すると檸檬は、少し笑って。
『…頑張ろーね。』
まるで、影のかかったような笑みに、蜜柑は恐怖さえ覚えた。
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その頃、
「黒曜?」
「あぁ、雨宮兜が襲った並盛のコンビニを、点で繋いでみると、かつて骸が潜伏してた場所を差す矢印になるんだ。」
ディーノからの電話を受けるツナの傍らには、獄寺と山本、
そして、不満気な雲雀が立っていた。
「えっと、ありがとうございます!」
「あぁ、俺は引き続き雨宮蜜柑について調べる。じゃな。」
「はい!」
電話を切ったツナに、リボーンが聞く。
「どーすんだ?行くのか?」
「当たり前でしょ。」
一番に答えたのは雲雀。
「うん!」
「行きます!」
「あぁ!」
ツナ、獄寺、山本も、はっきりと返事をする。
しかし、リボーンの表情は深刻そうで。
「兜は………強ぇぞ。」
ハットを深めにかぶるリボーン。
その言葉を聞いてすぐ、雲雀が歩き出した。
「じゃあ、僕はもう行くよ。」
「あ、雲雀さん!」
引き止めようとするツナ。
しかしリボーンは、
「獄寺、山本、お前達は先に行け。」
と。
「ん?」
「な!山本とスか!?」
「俺とツナは、雨宮蜜柑についての情報が手に入り次第合流する。」
「オッケ♪」
「わ、分かりました…。」
獄寺と山本が走って行く。
直後に、ツナがリボーンに問う。
「どうしてその…双子の妹の情報が要るんだよ。」
「念には念だ。情報はなるべく多い方がいいぞ。」
妙に説得力があって、ツナは大人しくディーノからの連絡を待つ事にした。
---
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「今日なのよね?姉さん…。」
『うん、お母さんがそう言ってた。』
今日、侵入者がやって来ると。
それは、あたしの命を脅かす者達だと。
あたしはナイフを装備して、
蜜柑は銃と弾を備え付けて。
『行くよ。』
「……うん。」
侵入者は敵。
命を奪おうとする者は、殺す。
例えそれが、
誰であろうとも。
「ちょっと待って!」
部屋を出て持ち場に行こうとすると、蜜柑が止まった。
「私、お祈りしてくる。」
蜜柑は銃を置いて奥の部屋に戻った。
お母さんの教えなのかな……あたしには、関係ないけど。
『ん………?』
ふと目に止まる、蜜柑の銃。
『まさかね……』
蜜柑はIQ200あるって言うし、
もしかしたら弾数はぴったり用意してあるのかもしれない。
その計算にもし…
『それはない、はずだよね……』
そう言って、自分を落ち着かせた。
でも…
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「お待たせ。行こ、姉さん。」
ドアを開ける蜜柑。
あたし達は、外に出た。
結局あたしが行き着く先は、
護るっていう言葉だった。
けど自分しか護れない、どこまでも無力で。
色々な事を考えてると、
それを全部打ち消すように、
頭の中に声が響いて来た。
---「侵入者は消しなさい………護るべきは自分………今から来るのは命を脅かす、あなたの敵よ………」
分かってる、分かってる。
此処に来た人はみんな……
殺す。
蜜柑は2階、あたしは3階で待機する事にした。
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檸檬、もうすぐ君に会える。
君を、取り戻しに行くよ。
黒曜…あそこはいい思い出が何一つ無いね。
---『…怖い……………』
大丈夫だよ、僕がいるから。
---『殺されたく、ない…………』
大丈夫だよ、僕が守るから。
=========
建物の中に踏み込めば、すぐに階段が現れる。
上ってみると、たくさんの敵。
それらに囲まれるけど、ちらりと見える、女の影。
「手早く殺って。」
「君、此処にいたの……」
それは、檸檬の面影を持つ、別人。
「ごめんなさい。私も……パパには逆らえない………!」
「って事は、コイツが噂の……」
「双子の妹か!」
兜の手下が僕らに襲い掛かる。
そんな中、蜜柑は援護射撃をするように、僕らを狙い続けていた。
それは、的確過ぎるほど的確。
「やっぱすげぇな。」
「呑気な事言ってんじゃねぇ!」
爆弾男に怒鳴られながら、野球男は言った。
「雲雀、」
「……何。」
「俺ら、二階の奴ら片付けっからさ、檸檬トコ行っていーぜ♪」
「…言われなくても、そうするつもりだよ。」
「けっ、檸檬取り戻せなかったら、ぶっ殺すからな!」
「取り戻すよ。」
僕は階段を駆け上がった。
後ろで、あの2人が引き止めてるのが分かる。
「追え!!」
「おっと、」
「てめーらの相手は俺らがやるぜ。」
山本と獄寺を見つめつつ、蜜柑は弾を補充した。
「(姉さん………)」
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3階に昇って部屋を覗くと、
シュッ…
ドスドスッ!
「やっぱり、此処にいた。」
投げられたナイフは、僕の真横を通り過ぎて、壁に刺さった。
昨晩より瞳が冷たく暗くなってるのは、
多分気のせいじゃない。
『貴方が、あたしの敵………』
その証拠に、僕の名を呼ばない。
「味方だよ。」
一言返して、僕はトンファーを構えた。
檸檬も無言でナイフを構える。
僕は、何としても取り戻すよ。
君の思い出を、
君の心を、
そして君のあの……
綺麗な笑顔を。