未来編序章
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彼らは、悩み続ける。
彼らは、探し求める。
心を失くした彼女が、
忍び寄っている事も知らず。
夜の学校
その日の夜、並中。
「ね、姉さん……」
『静かに。』
蜜柑の口は檸檬の手で塞がれる。
彼女達がいるのは並中の校舎の裏。
父に言われた通り、壊す為にやって来た。
『変ね……誰かいる………』
「え?」
『あれは……』
超五感を使ってみると、黒スーツの男達の声が聞こえて来た。
---「ったく、何で並中を見張るんだ?」
---「しょーがねーさ、ボスの言い付けだかんな。」
知っている声。
張り込んでいるのは多分…キャバッローネ。
『蜜柑……行ける?』
「な、何をするの?」
『お父さんは、壊せと言った。だから…好きなように壊せばいい。』
檸檬は淡々と喋る。
『あたしが彼らを潰す。だから、蜜柑は行ってて。』
怯えていた蜜柑も、覚悟は決めたようで。
「わ、分かった……姉さん、気を付けて。」
そう言って、校内に潜入した。
今までお父さんに鍛えられてただけあって、蜜柑のスピードもなかなかのモノだった。
---「ん?何だ?」
---「どした?」
---「いや、あっちの方に誰か来たような…」
そして、蜜柑の気配を察知した男達の前に、あたしは姿を現す。
『こんばんは。』
「お前…檸檬!」
「無事だったんじゃねーか!」
あたしの顔を見て安堵する彼らを見て、ほんの少しだけ下を向いた。
心はいらない。
思い出は彼方に。
もう一度自分に言い聞かせてから、ナイフを握った。
『さようなら。』
キャバッローネの知り合いを、簡単に倒して気絶させた。
ところが、もう1人いたらしい。
彼はあたしが倒す前に連絡をとったようだった。
---「ボス…侵入者です!並中に援護を………!!」
---
------
--------------
「ツナ!」
同刻、ツナの家にディーノが訪ねて来た。
「ディーノさん!?どうしたんですか!?」
「並中に侵入者だ。恐らく…」
「檸檬!!?」
ディーノとツナ、リボーンは、並中へと走る。
その間にも、並中にいるキャバッローネの男達は次々と檸檬に倒されていく。
『蜜柑、上手くやってるかな……』
---
------
------------
「はっ…はっ……壊すって何なの……? 大体、パパはどうしてあんな曖昧な指示で……」
1人廊下を走る蜜柑。
その足音が大きく響く事は無く、少し荒い息遣いだけが聞こえる。
彼女には、わからなかった。
「惑わせた場所を壊せ」という父の指示の意味が。
ただ、それを聞いて檸檬が学校を選択したことで、そこに行けば姉の"大事だったもの"があるんだろうとは予想できた。
「わかんないけど……適当に荒らしておけば、いいのよね……?」
ちょうど校長室を見つけ、蜜柑は鍵をサイレンサーつきの銃で撃つ。
この学校のどこに檸檬の"大事だったもの"があるかは分からない。
けれど、破壊活動をしていれば、そこに繋がる糸口が見える気がした。
ガラッ、
ドアを開けて中に入り、一言呟いた。
「仕方ないよね…」
棚を支える金具を銃で撃ち抜けば、倒れて書類が散る。
何かの記念品が床に落ちて壊れ、ガラクタ同然になっていく。
結構な音はしているのに誰も来ないのは、檸檬の足止めがあるからだろう。
しかし…
「ねぇ、何してるの?」
「っ…!!」
不意に後ろから声をかけられ、蜜柑は動きを止めた。
音も無く近付くその人物の気配に、動けなくなったのだ。
「何してるのって聞いて…………」
蜜柑の肩は掴まれ、そのまま振り向かされる。
が、彼の言葉は途切れた。
震える蜜柑は彼の頭に銃口を向けている。
「檸檬……?」
「え……?」
姉の知合い、なのか。
よりにもよって、ファーストネームで呼ぶ程度には近しい間柄の。
「こんなトコで何してるの、どうしてこんな事して……」
「い、イヤっ!」
一瞬緩んだ彼の手を振り払い、蜜柑は走った。
だが、彼は諦めるはずもなく追い掛けて来る。
「(あの人、学生よね…?こんな夜更けに単独で学校に……?)」
銃をしまい、振り向いて、蜜柑は言った。
「待って!私は檸檬じゃないの!!」
---
------
------------
その頃、校舎内に潜入したツナ達。
「でも…どうして檸檬が……?」
「わからんが……何かあったのは確かだな。」
走りながらの会話の中、リボーンが問う。
「ディーノ、雲雀はどーした?」
「連絡つかねーんだ。こりゃもしかしたら………」
広い廊下を走り回り、檸檬を探し続ける3人。
「檸檬ーっ!」
「檸檬、何処だ!?」
すると、廊下の向こうから妙な音が聞こえて来た。
カン、カン、カン……
「ひいっ!」
「びびんな、ツナ。」
「誰か来るぞ!!」
前方は暗闇。
窓から差す月明かりが、廊下の一部を照らしている。
カン、という音は、いつしか
カツン、という靴音に変わって。
闇の中から現れたのは、
同じように黒い服を着た檸檬。
「檸檬!!」
一瞬だけホッとするツナ。
しかし、その瞳を見た瞬間硬直する。
『自分から来るなんて……バカだね。』
それは、虚ろ過ぎる瞳で、
それを見てホントに動けなくなって、
ふと思い出したのは、
監視カメラに映ったBeetleの顔で、
一瞬でも似てると思ってしまった自分が、
悔しくて疎ましくて仕方なかった。
「何してんだ、檸檬。」
リボーンの威厳のある声に、檸檬は緩やかな笑みを浮かべて答えた。
『壊しに来た。』
「ど、どうしてっ……!」
『……父さんの、命令だから。』
檸檬の言葉にまた固まる。
檸檬は…お父さんが嫌いなんじゃなかったっけ?
なのに、どうして??
「厄介な事になったな…。」
リボーンの呟きが聞こえた。
目の前に立つ檸檬は、
虚ろな瞳でナイフを握る………
---
------
--------------
校長室前。
「私は……檸檬姉さんの双子の妹、蜜柑っていうの。」
やっと檸檬を見つけたと思ったのに、双子の妹?
そんなの知らない。
またいつかみたいに、遠ざけようとしているんじゃなくて?
「あなたは…姉さんの知り合いなのよね?だから檸檬って呼んだのよね?」
焦るように話す彼女の右目の下に、泣きぼくろを見つけた。
「…だったら何?」
「あの、お願いが……」
俯く蜜柑の声は、
本当に檸檬そっくりで。
「助けて…欲しい……」
檸檬は、助けを求めたりしない。
「姉さんは今、パパに脅されてる……だから…」
触れようとしたのを、自分で止める。
こっちは檸檬じゃない。
「お願い!姉さんを……姉さんを助けて!!このままじゃ…元に戻れなくなるの………!」
僕の目の前で啜り泣く雨宮蜜柑が、
檸檬に見えた。
蜜柑のSOSが、
檸檬のSOSに聞こえた。
---「助けて」
檸檬はその言葉を、僕に言った事がない。
だから、蜜柑の姿に檸檬が重なったのかもしれない。
「分かったから、早くどっか行って。」
「え……?」
「早く行け。」
「は、はい……。」
窓から逃げ帰って行く蜜柑。
これ以上、彼女といるワケにはいかない。
自分がどれだけ混乱してるか、分からないワケじゃない。
だから、追い払った。
あれは檸檬じゃないのに。
あれは檸檬じゃないのに。
声を聞くうちに、
顔を見るうちに、
どんどん檸檬に見えてきて。
「檸檬は、違う………」
しばらく、壁にもたれていた。
彼らは、探し求める。
心を失くした彼女が、
忍び寄っている事も知らず。
夜の学校
その日の夜、並中。
「ね、姉さん……」
『静かに。』
蜜柑の口は檸檬の手で塞がれる。
彼女達がいるのは並中の校舎の裏。
父に言われた通り、壊す為にやって来た。
『変ね……誰かいる………』
「え?」
『あれは……』
超五感を使ってみると、黒スーツの男達の声が聞こえて来た。
---「ったく、何で並中を見張るんだ?」
---「しょーがねーさ、ボスの言い付けだかんな。」
知っている声。
張り込んでいるのは多分…キャバッローネ。
『蜜柑……行ける?』
「な、何をするの?」
『お父さんは、壊せと言った。だから…好きなように壊せばいい。』
檸檬は淡々と喋る。
『あたしが彼らを潰す。だから、蜜柑は行ってて。』
怯えていた蜜柑も、覚悟は決めたようで。
「わ、分かった……姉さん、気を付けて。」
そう言って、校内に潜入した。
今までお父さんに鍛えられてただけあって、蜜柑のスピードもなかなかのモノだった。
---「ん?何だ?」
---「どした?」
---「いや、あっちの方に誰か来たような…」
そして、蜜柑の気配を察知した男達の前に、あたしは姿を現す。
『こんばんは。』
「お前…檸檬!」
「無事だったんじゃねーか!」
あたしの顔を見て安堵する彼らを見て、ほんの少しだけ下を向いた。
心はいらない。
思い出は彼方に。
もう一度自分に言い聞かせてから、ナイフを握った。
『さようなら。』
キャバッローネの知り合いを、簡単に倒して気絶させた。
ところが、もう1人いたらしい。
彼はあたしが倒す前に連絡をとったようだった。
---「ボス…侵入者です!並中に援護を………!!」
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「ツナ!」
同刻、ツナの家にディーノが訪ねて来た。
「ディーノさん!?どうしたんですか!?」
「並中に侵入者だ。恐らく…」
「檸檬!!?」
ディーノとツナ、リボーンは、並中へと走る。
その間にも、並中にいるキャバッローネの男達は次々と檸檬に倒されていく。
『蜜柑、上手くやってるかな……』
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「はっ…はっ……壊すって何なの……? 大体、パパはどうしてあんな曖昧な指示で……」
1人廊下を走る蜜柑。
その足音が大きく響く事は無く、少し荒い息遣いだけが聞こえる。
彼女には、わからなかった。
「惑わせた場所を壊せ」という父の指示の意味が。
ただ、それを聞いて檸檬が学校を選択したことで、そこに行けば姉の"大事だったもの"があるんだろうとは予想できた。
「わかんないけど……適当に荒らしておけば、いいのよね……?」
ちょうど校長室を見つけ、蜜柑は鍵をサイレンサーつきの銃で撃つ。
この学校のどこに檸檬の"大事だったもの"があるかは分からない。
けれど、破壊活動をしていれば、そこに繋がる糸口が見える気がした。
ガラッ、
ドアを開けて中に入り、一言呟いた。
「仕方ないよね…」
棚を支える金具を銃で撃ち抜けば、倒れて書類が散る。
何かの記念品が床に落ちて壊れ、ガラクタ同然になっていく。
結構な音はしているのに誰も来ないのは、檸檬の足止めがあるからだろう。
しかし…
「ねぇ、何してるの?」
「っ…!!」
不意に後ろから声をかけられ、蜜柑は動きを止めた。
音も無く近付くその人物の気配に、動けなくなったのだ。
「何してるのって聞いて…………」
蜜柑の肩は掴まれ、そのまま振り向かされる。
が、彼の言葉は途切れた。
震える蜜柑は彼の頭に銃口を向けている。
「檸檬……?」
「え……?」
姉の知合い、なのか。
よりにもよって、ファーストネームで呼ぶ程度には近しい間柄の。
「こんなトコで何してるの、どうしてこんな事して……」
「い、イヤっ!」
一瞬緩んだ彼の手を振り払い、蜜柑は走った。
だが、彼は諦めるはずもなく追い掛けて来る。
「(あの人、学生よね…?こんな夜更けに単独で学校に……?)」
銃をしまい、振り向いて、蜜柑は言った。
「待って!私は檸檬じゃないの!!」
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その頃、校舎内に潜入したツナ達。
「でも…どうして檸檬が……?」
「わからんが……何かあったのは確かだな。」
走りながらの会話の中、リボーンが問う。
「ディーノ、雲雀はどーした?」
「連絡つかねーんだ。こりゃもしかしたら………」
広い廊下を走り回り、檸檬を探し続ける3人。
「檸檬ーっ!」
「檸檬、何処だ!?」
すると、廊下の向こうから妙な音が聞こえて来た。
カン、カン、カン……
「ひいっ!」
「びびんな、ツナ。」
「誰か来るぞ!!」
前方は暗闇。
窓から差す月明かりが、廊下の一部を照らしている。
カン、という音は、いつしか
カツン、という靴音に変わって。
闇の中から現れたのは、
同じように黒い服を着た檸檬。
「檸檬!!」
一瞬だけホッとするツナ。
しかし、その瞳を見た瞬間硬直する。
『自分から来るなんて……バカだね。』
それは、虚ろ過ぎる瞳で、
それを見てホントに動けなくなって、
ふと思い出したのは、
監視カメラに映ったBeetleの顔で、
一瞬でも似てると思ってしまった自分が、
悔しくて疎ましくて仕方なかった。
「何してんだ、檸檬。」
リボーンの威厳のある声に、檸檬は緩やかな笑みを浮かべて答えた。
『壊しに来た。』
「ど、どうしてっ……!」
『……父さんの、命令だから。』
檸檬の言葉にまた固まる。
檸檬は…お父さんが嫌いなんじゃなかったっけ?
なのに、どうして??
「厄介な事になったな…。」
リボーンの呟きが聞こえた。
目の前に立つ檸檬は、
虚ろな瞳でナイフを握る………
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校長室前。
「私は……檸檬姉さんの双子の妹、蜜柑っていうの。」
やっと檸檬を見つけたと思ったのに、双子の妹?
そんなの知らない。
またいつかみたいに、遠ざけようとしているんじゃなくて?
「あなたは…姉さんの知り合いなのよね?だから檸檬って呼んだのよね?」
焦るように話す彼女の右目の下に、泣きぼくろを見つけた。
「…だったら何?」
「あの、お願いが……」
俯く蜜柑の声は、
本当に檸檬そっくりで。
「助けて…欲しい……」
檸檬は、助けを求めたりしない。
「姉さんは今、パパに脅されてる……だから…」
触れようとしたのを、自分で止める。
こっちは檸檬じゃない。
「お願い!姉さんを……姉さんを助けて!!このままじゃ…元に戻れなくなるの………!」
僕の目の前で啜り泣く雨宮蜜柑が、
檸檬に見えた。
蜜柑のSOSが、
檸檬のSOSに聞こえた。
---「助けて」
檸檬はその言葉を、僕に言った事がない。
だから、蜜柑の姿に檸檬が重なったのかもしれない。
「分かったから、早くどっか行って。」
「え……?」
「早く行け。」
「は、はい……。」
窓から逃げ帰って行く蜜柑。
これ以上、彼女といるワケにはいかない。
自分がどれだけ混乱してるか、分からないワケじゃない。
だから、追い払った。
あれは檸檬じゃないのに。
あれは檸檬じゃないのに。
声を聞くうちに、
顔を見るうちに、
どんどん檸檬に見えてきて。
「檸檬は、違う………」
しばらく、壁にもたれていた。