日常編
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「なっ…何で……!」
『喧嘩が下手だよ?もっと一緒に踊りたかったのに、残念だなぁ』
腰を抜かす男達に、檸檬は無機質に笑ってみせた。
「お前、一体……!」
『あたしは…』
檸檬が名乗ろうとしたその時、奥のドアが開いて、先ほどの金髪男が出て来た。
「雨宮檸檬だろ?さすが、ストリートファイト全米チャンピオン」
『…知ってたの?ってことは、貴方があたしをココに招いた人?』
「いいや、俺は最終試験の相手だ」
『最終試験?あなたに勝てば、あたしはココで働ける?』
あの世界から…出られるかな。
戻らなくて、済むのかな。
「そう言うワケじゃねーけど、まぁ、そんなトコかな」
男はニカッと笑った。
その笑顔を見ると、何だか目を逸らしたくなった。
何であんなに楽しそうなんだろう。
生きてるのが、嬉しいみたいに笑ってる。
「俺の名前はディーノ」
『ディーノ?』
「あぁ、それじゃ、始めようぜ!」
こうして、最終試験が始まった。
ディーノは強かった。
武器が鞭であるせいか、リズムが掴みにくい。
檸檬の戦法はいたって簡単だ。
まず相手の動きの“リズム”を把握する。
それにより相手の攻撃をかわし続ける。
相手が疲れたところで一気に攻め勝つ。
しかし、鞭を使うディーノは激しく動かない為、なかなかスタミナが削れない。
進展の無い攻防戦に飽きて来た檸檬は、口を開いた。
『ねぇディーノ、どうしてそんなに頑張るの?』
「ん?」
『そんなに…あたしをボンゴレファミリーってのに入れたくない?』
「そう言うワケじゃないけどよ、俺にも負けられない理由があるからさ」
『理由…?』
「檸檬が俺の部下を倒しちまったからよ、俺は勝たなくちゃいけねぇ」
真剣味を帯びたディーノの言葉に、檸檬は危うく立ち止まりそうになった。
その動揺を隠すかのように、問い直す。
『ど、どうして!?ディーノの部下があたしに負けたのは、あたしの方が強かったからでしょ?ディーノが責任負う必要なんて、何処にも無いはず!』
檸檬の言葉に、ディーノは一瞬驚いたようだった。
しかし、正面から向き合って答える。
「負わなくちゃいけねーんだよ…。それが、マフィアのファミリーってやつだから」
息が、詰まった。
あたしには、護るモノなんて、自分の命しかなかったから。
「おいっ、檸檬!?」
勝つ為に、踊り続けようとしたけど、無理だった。
あたしの動きは、とっくに止まっていた。
涙が溢れ出して、その場に座り込む。
ディーノは鞭を置いて、駆け寄って来た。
「おい檸檬!大丈夫か?どうしたんだよ!?」
『……もいい』
「……お前、何て…」
『あたし……もう、負けてもいいや』
手も足も、動かない。
ただ、涙が溢れ出すだけ。
黙るディーノを前に、頭に浮かんだ言葉をそのまま口から漏らしていった。
『3歳の頃に連れて行かれたのは、薄暗くて汚い所だった』
---「今日から此処が檸檬の家だ」
---『ここ?』
『あたしはそれから毎日殴られ、蹴られ、刺され、っていう生活を送るようになった。』
そこは、ストリートファイトの世界。
『痛い、しか感じられない。他のモノは何一つ無い。』
もう嫌だ、痛いのは嫌だ。
『6歳になってやっと、あたしは父に聞くことが出来たの………何でこんなトコに連れて行ったのかって』
---「檸檬、痛いのは嫌か?」
---『嫌だ』
---「ならば強くなれ。誰にも負けないよう、強く」
---『強く?』
『護りたいモノを護る為には、強くなくちゃいけない。それが、あたしがあの父親から貰った、最初で最後の教訓』
ディーノは黙って檸檬の話を聞き続けていた。
檸檬の涙が止まる事は無い。
『それからあたしは頑張り始めた。図書館に通い詰めて、人間を倒す為の“ツボ”を覚えて……パワーじゃ絶対勝てなかったから、反射神経、瞬発力、跳躍力、同体視力、そして洞察力。その全てを磨いた』
男達は倒れていく。
あたしは勝てるようになって来ている。
でも、何か足りない、足りないんだ。
『ある日、気付いたの。人は皆、知らないうちにリズムに乗って攻撃してるんだって』
唐突に聞こえて来た、相手の奏でる音楽が。
だったらそれを理解して、相手の動きを読めばいい。
あたしは踊っているだけでいい。
『それからは、誰にも負けなくなった。あたしはリズムに合わせて踊るだけ。それだけで、皆に勝てた。』
あたしにしか聞こえない、貴方のリズム。
それが貴方を負けさせる。
『そうして去年、初めてチャンピオンになった。そしたら、今までさんざんあたしの存在を無視して来た最低な両親が、あたしが稼いだ賞金を使いに来たの』
檸檬の顔は瞬時に怒りに満ちる。
しかし涙はまだ、止まらない。
『断ったら、殺されそうになった。実の父親にだよ?もう呆れちゃうよね』
悲しく、乾いた笑い声がいた。
『でも、ココの偉い人が助けてくれた。今年も優勝したあたしの噂を聞いて、アメリカから出してくれたの』
檸檬の表情が、少し和らぐ。
『でも、あたしには護るモノが無いの。自分の命しか無いの。もしマフィアのファミリーってのが結束を大事にする組織なら……あたしにはっ…』
更に激しく溢れ出す涙。
黙って聞いていたディーノは、檸檬の頭の上に手を乗せた。
「今まで、よく頑張ったな。」
檸檬は一瞬目を見開き、再び目を細め大粒の涙を流す。
「これからは、ボンゴレの皆が檸檬の家族だ」
ディーノの言葉を聞く度に、檸檬の涙は激しさを増す。
「もう、1人じゃないんだぜ?」
そうっと顔を上げてみる。
『……本…当?』
質問の答えは、あの笑顔。
「勿論、同盟ファミリーの俺も、檸檬の仲間だからな」
仲間……
その言葉がどんなに嬉しかったか。今まで聞いた事の無い言葉だったから。
自分には、縁の無い言葉だと思っていたから。
「檸檬の両親には大金を払ってボンゴレの9代目が手を打ってくれた」
『そう、だったんだ…』
「今まで知らなかった事は、ココで覚えてきゃいーんだ。図書館で勉強した時みてーになっ!」
何で、どうして、あたしに笑いかけてくれるの?
何で、ちゃんと向き合ってくれるの?
あたし……本当に“仲間”に入っていいの?
「ほら、立てるか?」
『うんっ…』
差し出された手を、握る。
初めて、こんなあったかい手に引っ張られた。
『……ディーノ、』
「ん?」
『あり、がと…』
あたしは必死にその言葉を絞り出した。
そしたらディーノは、ぺしっとあたしの頭を軽く叩いて。
「そのセリフは、笑顔で言うもんなんだぜ?」と。
俯いていたあたしは、ぎゅっと涙を拭って、出来る限りの笑顔で応えた。
『ありがとう』
『喧嘩が下手だよ?もっと一緒に踊りたかったのに、残念だなぁ』
腰を抜かす男達に、檸檬は無機質に笑ってみせた。
「お前、一体……!」
『あたしは…』
檸檬が名乗ろうとしたその時、奥のドアが開いて、先ほどの金髪男が出て来た。
「雨宮檸檬だろ?さすが、ストリートファイト全米チャンピオン」
『…知ってたの?ってことは、貴方があたしをココに招いた人?』
「いいや、俺は最終試験の相手だ」
『最終試験?あなたに勝てば、あたしはココで働ける?』
あの世界から…出られるかな。
戻らなくて、済むのかな。
「そう言うワケじゃねーけど、まぁ、そんなトコかな」
男はニカッと笑った。
その笑顔を見ると、何だか目を逸らしたくなった。
何であんなに楽しそうなんだろう。
生きてるのが、嬉しいみたいに笑ってる。
「俺の名前はディーノ」
『ディーノ?』
「あぁ、それじゃ、始めようぜ!」
こうして、最終試験が始まった。
ディーノは強かった。
武器が鞭であるせいか、リズムが掴みにくい。
檸檬の戦法はいたって簡単だ。
まず相手の動きの“リズム”を把握する。
それにより相手の攻撃をかわし続ける。
相手が疲れたところで一気に攻め勝つ。
しかし、鞭を使うディーノは激しく動かない為、なかなかスタミナが削れない。
進展の無い攻防戦に飽きて来た檸檬は、口を開いた。
『ねぇディーノ、どうしてそんなに頑張るの?』
「ん?」
『そんなに…あたしをボンゴレファミリーってのに入れたくない?』
「そう言うワケじゃないけどよ、俺にも負けられない理由があるからさ」
『理由…?』
「檸檬が俺の部下を倒しちまったからよ、俺は勝たなくちゃいけねぇ」
真剣味を帯びたディーノの言葉に、檸檬は危うく立ち止まりそうになった。
その動揺を隠すかのように、問い直す。
『ど、どうして!?ディーノの部下があたしに負けたのは、あたしの方が強かったからでしょ?ディーノが責任負う必要なんて、何処にも無いはず!』
檸檬の言葉に、ディーノは一瞬驚いたようだった。
しかし、正面から向き合って答える。
「負わなくちゃいけねーんだよ…。それが、マフィアのファミリーってやつだから」
息が、詰まった。
あたしには、護るモノなんて、自分の命しかなかったから。
「おいっ、檸檬!?」
勝つ為に、踊り続けようとしたけど、無理だった。
あたしの動きは、とっくに止まっていた。
涙が溢れ出して、その場に座り込む。
ディーノは鞭を置いて、駆け寄って来た。
「おい檸檬!大丈夫か?どうしたんだよ!?」
『……もいい』
「……お前、何て…」
『あたし……もう、負けてもいいや』
手も足も、動かない。
ただ、涙が溢れ出すだけ。
黙るディーノを前に、頭に浮かんだ言葉をそのまま口から漏らしていった。
『3歳の頃に連れて行かれたのは、薄暗くて汚い所だった』
---「今日から此処が檸檬の家だ」
---『ここ?』
『あたしはそれから毎日殴られ、蹴られ、刺され、っていう生活を送るようになった。』
そこは、ストリートファイトの世界。
『痛い、しか感じられない。他のモノは何一つ無い。』
もう嫌だ、痛いのは嫌だ。
『6歳になってやっと、あたしは父に聞くことが出来たの………何でこんなトコに連れて行ったのかって』
---「檸檬、痛いのは嫌か?」
---『嫌だ』
---「ならば強くなれ。誰にも負けないよう、強く」
---『強く?』
『護りたいモノを護る為には、強くなくちゃいけない。それが、あたしがあの父親から貰った、最初で最後の教訓』
ディーノは黙って檸檬の話を聞き続けていた。
檸檬の涙が止まる事は無い。
『それからあたしは頑張り始めた。図書館に通い詰めて、人間を倒す為の“ツボ”を覚えて……パワーじゃ絶対勝てなかったから、反射神経、瞬発力、跳躍力、同体視力、そして洞察力。その全てを磨いた』
男達は倒れていく。
あたしは勝てるようになって来ている。
でも、何か足りない、足りないんだ。
『ある日、気付いたの。人は皆、知らないうちにリズムに乗って攻撃してるんだって』
唐突に聞こえて来た、相手の奏でる音楽が。
だったらそれを理解して、相手の動きを読めばいい。
あたしは踊っているだけでいい。
『それからは、誰にも負けなくなった。あたしはリズムに合わせて踊るだけ。それだけで、皆に勝てた。』
あたしにしか聞こえない、貴方のリズム。
それが貴方を負けさせる。
『そうして去年、初めてチャンピオンになった。そしたら、今までさんざんあたしの存在を無視して来た最低な両親が、あたしが稼いだ賞金を使いに来たの』
檸檬の顔は瞬時に怒りに満ちる。
しかし涙はまだ、止まらない。
『断ったら、殺されそうになった。実の父親にだよ?もう呆れちゃうよね』
悲しく、乾いた笑い声がいた。
『でも、ココの偉い人が助けてくれた。今年も優勝したあたしの噂を聞いて、アメリカから出してくれたの』
檸檬の表情が、少し和らぐ。
『でも、あたしには護るモノが無いの。自分の命しか無いの。もしマフィアのファミリーってのが結束を大事にする組織なら……あたしにはっ…』
更に激しく溢れ出す涙。
黙って聞いていたディーノは、檸檬の頭の上に手を乗せた。
「今まで、よく頑張ったな。」
檸檬は一瞬目を見開き、再び目を細め大粒の涙を流す。
「これからは、ボンゴレの皆が檸檬の家族だ」
ディーノの言葉を聞く度に、檸檬の涙は激しさを増す。
「もう、1人じゃないんだぜ?」
そうっと顔を上げてみる。
『……本…当?』
質問の答えは、あの笑顔。
「勿論、同盟ファミリーの俺も、檸檬の仲間だからな」
仲間……
その言葉がどんなに嬉しかったか。今まで聞いた事の無い言葉だったから。
自分には、縁の無い言葉だと思っていたから。
「檸檬の両親には大金を払ってボンゴレの9代目が手を打ってくれた」
『そう、だったんだ…』
「今まで知らなかった事は、ココで覚えてきゃいーんだ。図書館で勉強した時みてーになっ!」
何で、どうして、あたしに笑いかけてくれるの?
何で、ちゃんと向き合ってくれるの?
あたし……本当に“仲間”に入っていいの?
「ほら、立てるか?」
『うんっ…』
差し出された手を、握る。
初めて、こんなあったかい手に引っ張られた。
『……ディーノ、』
「ん?」
『あり、がと…』
あたしは必死にその言葉を絞り出した。
そしたらディーノは、ぺしっとあたしの頭を軽く叩いて。
「そのセリフは、笑顔で言うもんなんだぜ?」と。
俯いていたあたしは、ぎゅっと涙を拭って、出来る限りの笑顔で応えた。
『ありがとう』