未来編序章
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男は、
生まれながらに天性のリズム感を持っていた。
女は、
生まれながらに未来を視る能力を持っていた。
巫女だった彼女は、
鳥居の前に座っている彼を見つけた。
彼の周りには、
たくさんの負傷者が転がっていた。
---「何をなさってるの?」
---「誰だ。」
それが、2人の出会い。
巫女と暴君
とあるカジノの最上階・プライベートルーム。
「『ふぎゃあああ……!!』」
「はいはい、今行くから……」
ベッドに駆け寄る女。
「まだ黙らないのか?」
後からゆっくり歩いて来る男。
女は振り返り、面倒臭そうに言う。
「ミルクだそうよ。」
「ったく、世話の焼ける…。」
予め作っておいた、瓶2本のミルクを持って来る男。
ベッドに寝かされているのは、生まれて間もない2人の赤ん坊だった。
「放っておくのはダメなのか?」
「殺人罪よ、ソレ。ま、そーしたいのは山々だけどね。」
「面倒だな。」
赤ん坊を1人ずつ抱えて、ソファに座る2人。
「そう言えば、」
男が思い出したように問いかける。
「お前、コイツらに関する未来視したか?」
「この子達の?いいえ、まだよ。」
「一応やっておけ。」
「はいはい。」
女は赤ん坊を2人とも男に預け、向かい合うように座った。
そして、2人の赤ん坊の額に手の平を当てる。
「倒れた時は、お願いね。」
「分かってる。」
深呼吸を1つして、女は黙って目を閉じた。
男はそれをじっと見ている。
女の脳裏には、しだいに何かが聞こえ始めた。
---『アハハハ……アハハハハ…………』
---「やめなさい………っ!!」
---「憎い……憎い憎い憎い…………」
---「やめろ……やめろ檸檬!!!」
ドクンッ、
「あっ……!!」
「揚羽!!?」
突然声を上げ、女は倒れた。
男はため息をつき、赤ん坊をベッドに戻し、女をきちんとソファに寝かせる。
ミルクを飲み終えた2人の娘は、今は静かに寝息を立てていた。
---
------
------------
4年前。
---「何をなさってるの?」
---「誰だ。」
男の目は、冷たい光を持っていた。
女の顔は、美しいが彫刻のようだった。
互いが互いに見入った後、女は男に言った。
---「手の傷を、治しましょうか?」
男はほんの一瞬驚き、すぐに返した。
---「こんな傷、3日で治る。」
---「では、1日で治しましょう。」
女は、巫女だった。
適切な薬草を男に飲ませ、24時間で傷を消した。
男は、暴君だった。
女の力を目の当たりにした瞬間、口走った。
---「俺と来ないか?」
女は笑う。
---「私が行って、何の得がありますか?」
---「その力が欲しい。」
---「では、1つだけ審査を。」
---「審査?」
女は男の手を握る。
そしてゆっくり目を閉じた。
女が再び目を開けるまで、
数秒とかからなかった。
---「ねぇ、」
---「何だ。」
---「この神社を壊して。」
---「巫女がそんな事を言っていいのか?」
---「私が居るべき場所は此所じゃない。あなたの、隣よ。」
女の言っている意味が、男には分からなかった。
ただ、付いて行くという事実だけ理解した。
---「壊して、いいんだな?」
---「跡形もなく。」
その夜、神社はなくなった。
---「ありがとう。」
---「お前は、何をした?何を考えた?」
微笑む女に、男は問うた。
---「未来を…貴方と私の最高の未来を……視て来ただけよ。」
そう言って女は男の頬にキスを落とした。
---
------
------------
「ん……?」
「起きたか。」
「兜…………そうだわ!大変よ!!」
女は飛び起き、赤ん坊のベッドに駆け寄る。
そして、片方を見つめながら言った。
「この娘…私の力を持ってったみたいなの。」
「未来視か?」
男の言葉に、女は首を横に振る。
「もっと強力よ。普通の人間ではない、という事は確かね。それに、その力によって私達は破滅の道を歩むことになるわ。」
「“破滅”だと!!?」
聞き返す男に、女は静かに言った。
「私達は……この娘に殺される。」
驚きを隠せない男。
深刻そうに俯く女。
「やはりこのガキ………殺す!!」
「いいえ、この娘が消えても、恐らく次の存在は現れるわ……」
女が止めると、男は舌打ちをした。
「1つ……回避する方法が。」
「何だ!!?」
女は目を閉じ、思い出すように話し始める。
「この娘の力は…人を想う心に比例して強くなる。」
「心、だと……?」
「他人を助けたい、護りたいと思う程、能力が目覚めていくわ。」
“もう分かったでしょ?”
と言うように、女は男の顔を覗き込んだ。
男はそれに応えるかのように、口角をあげる。
「つまり……やる事は1つだな。」
「えぇ。」
「人を嫌いにさせればいい。」
実の両親の会話も知らず、
ベッドでスヤスヤと眠る2人の娘。
「人を信じないように育てればいいのよ。」
「そうすれば、他人を護ろうとも思わない。」
「すなわち、力は目覚めない。」
「俺達の“破滅への道”は、途絶えるって事か。」
顔を見合わせて幸せそうに笑う夫妻。
しかしその笑みは、
1人の少女を確実に絶望へ導く前兆。
「では…ストリートファイト場にでも捨てようか。自我が芽生えれば、自分で生きていけるだろう。」
「スパルタですこと。」
「俺は、俺とお前が幸せならば、それでいい。」
「ふふ、嬉しいわ。」
にこりと微笑む女の肩を、男が抱く。
そして、赤ん坊の1人に向かって言い放った。
「檸檬………俺達の未来の為に、お前には消えてもらう…。」
「ホントに、全部信じてくれるのね。私の未来視を。」
「当たり前だ。揚羽の未来視こそ、このカジノの繁栄の最大の理由。」
「あら、貴方が此処にいた不良をやっつけてくれたおかげじゃなくて?喧嘩上手さん。」
女は男の胸に頭を預ける。
すると男は嬉しそうに、
「喧嘩じゃない、音楽だよ。何にせよ、雑魚のリズムは聞き飽きた。」
と。
それから3年後。
3歳となった彼らの娘の片方は、ストリートファイト場に放り込まれる。
そこで、自分だけが生き延びなければならない現実と、
敵しかいない環境、
そして、
父親と同じ戦い方を学ぶのだ。
いつしか彼女は“CRAZY DANCER”と呼ばれるようになり、マフィア・ボンゴレファミリーに引き取られる。
そして、そこで他人を想う心を知り、関わりを知り、
彼女の両親が恐れていた能力が少しずつ開花されてゆく事になるのだが、
それはまた別の語。
生まれながらに天性のリズム感を持っていた。
女は、
生まれながらに未来を視る能力を持っていた。
巫女だった彼女は、
鳥居の前に座っている彼を見つけた。
彼の周りには、
たくさんの負傷者が転がっていた。
---「何をなさってるの?」
---「誰だ。」
それが、2人の出会い。
巫女と暴君
とあるカジノの最上階・プライベートルーム。
「『ふぎゃあああ……!!』」
「はいはい、今行くから……」
ベッドに駆け寄る女。
「まだ黙らないのか?」
後からゆっくり歩いて来る男。
女は振り返り、面倒臭そうに言う。
「ミルクだそうよ。」
「ったく、世話の焼ける…。」
予め作っておいた、瓶2本のミルクを持って来る男。
ベッドに寝かされているのは、生まれて間もない2人の赤ん坊だった。
「放っておくのはダメなのか?」
「殺人罪よ、ソレ。ま、そーしたいのは山々だけどね。」
「面倒だな。」
赤ん坊を1人ずつ抱えて、ソファに座る2人。
「そう言えば、」
男が思い出したように問いかける。
「お前、コイツらに関する未来視したか?」
「この子達の?いいえ、まだよ。」
「一応やっておけ。」
「はいはい。」
女は赤ん坊を2人とも男に預け、向かい合うように座った。
そして、2人の赤ん坊の額に手の平を当てる。
「倒れた時は、お願いね。」
「分かってる。」
深呼吸を1つして、女は黙って目を閉じた。
男はそれをじっと見ている。
女の脳裏には、しだいに何かが聞こえ始めた。
---『アハハハ……アハハハハ…………』
---「やめなさい………っ!!」
---「憎い……憎い憎い憎い…………」
---「やめろ……やめろ檸檬!!!」
ドクンッ、
「あっ……!!」
「揚羽!!?」
突然声を上げ、女は倒れた。
男はため息をつき、赤ん坊をベッドに戻し、女をきちんとソファに寝かせる。
ミルクを飲み終えた2人の娘は、今は静かに寝息を立てていた。
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4年前。
---「何をなさってるの?」
---「誰だ。」
男の目は、冷たい光を持っていた。
女の顔は、美しいが彫刻のようだった。
互いが互いに見入った後、女は男に言った。
---「手の傷を、治しましょうか?」
男はほんの一瞬驚き、すぐに返した。
---「こんな傷、3日で治る。」
---「では、1日で治しましょう。」
女は、巫女だった。
適切な薬草を男に飲ませ、24時間で傷を消した。
男は、暴君だった。
女の力を目の当たりにした瞬間、口走った。
---「俺と来ないか?」
女は笑う。
---「私が行って、何の得がありますか?」
---「その力が欲しい。」
---「では、1つだけ審査を。」
---「審査?」
女は男の手を握る。
そしてゆっくり目を閉じた。
女が再び目を開けるまで、
数秒とかからなかった。
---「ねぇ、」
---「何だ。」
---「この神社を壊して。」
---「巫女がそんな事を言っていいのか?」
---「私が居るべき場所は此所じゃない。あなたの、隣よ。」
女の言っている意味が、男には分からなかった。
ただ、付いて行くという事実だけ理解した。
---「壊して、いいんだな?」
---「跡形もなく。」
その夜、神社はなくなった。
---「ありがとう。」
---「お前は、何をした?何を考えた?」
微笑む女に、男は問うた。
---「未来を…貴方と私の最高の未来を……視て来ただけよ。」
そう言って女は男の頬にキスを落とした。
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「ん……?」
「起きたか。」
「兜…………そうだわ!大変よ!!」
女は飛び起き、赤ん坊のベッドに駆け寄る。
そして、片方を見つめながら言った。
「この娘…私の力を持ってったみたいなの。」
「未来視か?」
男の言葉に、女は首を横に振る。
「もっと強力よ。普通の人間ではない、という事は確かね。それに、その力によって私達は破滅の道を歩むことになるわ。」
「“破滅”だと!!?」
聞き返す男に、女は静かに言った。
「私達は……この娘に殺される。」
驚きを隠せない男。
深刻そうに俯く女。
「やはりこのガキ………殺す!!」
「いいえ、この娘が消えても、恐らく次の存在は現れるわ……」
女が止めると、男は舌打ちをした。
「1つ……回避する方法が。」
「何だ!!?」
女は目を閉じ、思い出すように話し始める。
「この娘の力は…人を想う心に比例して強くなる。」
「心、だと……?」
「他人を助けたい、護りたいと思う程、能力が目覚めていくわ。」
“もう分かったでしょ?”
と言うように、女は男の顔を覗き込んだ。
男はそれに応えるかのように、口角をあげる。
「つまり……やる事は1つだな。」
「えぇ。」
「人を嫌いにさせればいい。」
実の両親の会話も知らず、
ベッドでスヤスヤと眠る2人の娘。
「人を信じないように育てればいいのよ。」
「そうすれば、他人を護ろうとも思わない。」
「すなわち、力は目覚めない。」
「俺達の“破滅への道”は、途絶えるって事か。」
顔を見合わせて幸せそうに笑う夫妻。
しかしその笑みは、
1人の少女を確実に絶望へ導く前兆。
「では…ストリートファイト場にでも捨てようか。自我が芽生えれば、自分で生きていけるだろう。」
「スパルタですこと。」
「俺は、俺とお前が幸せならば、それでいい。」
「ふふ、嬉しいわ。」
にこりと微笑む女の肩を、男が抱く。
そして、赤ん坊の1人に向かって言い放った。
「檸檬………俺達の未来の為に、お前には消えてもらう…。」
「ホントに、全部信じてくれるのね。私の未来視を。」
「当たり前だ。揚羽の未来視こそ、このカジノの繁栄の最大の理由。」
「あら、貴方が此処にいた不良をやっつけてくれたおかげじゃなくて?喧嘩上手さん。」
女は男の胸に頭を預ける。
すると男は嬉しそうに、
「喧嘩じゃない、音楽だよ。何にせよ、雑魚のリズムは聞き飽きた。」
と。
それから3年後。
3歳となった彼らの娘の片方は、ストリートファイト場に放り込まれる。
そこで、自分だけが生き延びなければならない現実と、
敵しかいない環境、
そして、
父親と同じ戦い方を学ぶのだ。
いつしか彼女は“CRAZY DANCER”と呼ばれるようになり、マフィア・ボンゴレファミリーに引き取られる。
そして、そこで他人を想う心を知り、関わりを知り、
彼女の両親が恐れていた能力が少しずつ開花されてゆく事になるのだが、
それはまた別の語。