未来編②
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グローブに炎を灯し「行って来る」と一言。
リボーンには「用心しろよ」と言われ、ユニには「お願いします」と頼まれる。
そうだ、皆が頑張ってくれたんだ。
ボンゴレのボスとかやっぱり興味ないけど……俺は、手にした繋がりを切り捨てることなんてできない。
「ツナ君!」
「ツナさん!」
不安げな表情で駆け寄って来たのは、京子ちゃんとハルだった。
2人には、絶対見せたくなかった禍々しい世界・恐ろしい戦いを知られることになってしまった。
その後悔はまだ消えない。
だから、怒られようと罵られようとかまわなかった。
なのに、2人は多分、色んな気持ちを押しこめて……微笑んだ。
「「いってらっしゃい。」」
そんなことで安心している場合じゃないのはわかってる。
けれど、救われた気がして。
「ユニを頼む。」
「任せとけ。」
「それと……檸檬のことも。」
「心配すんな。お前よりずっと強い、俺の補佐だぞ。」
生意気言うな、と付け足すリボーンに少し笑って。
最大火力で、飛んだ。
吸収
「(とは言え、恐らく戦況はやべーな…)」
フゥ太の肩の上、リボーンは先ほどまで檸檬がいた方向に視線を戻す。
現在蜜柑のアニマル匣・ピグの効果で辺りには霧の幻覚空間が展開されている。
よって、周辺には蜜柑の炎の波動がたちこめているハズだ。
波動はすなわち、檸檬にとって脳に大きな負荷をかける「強力な波長」。
抜け出すことはおろか、あの空間の中でまともに戦うことさえ難しいのではないか……
時折、ナイフで銃弾を弾く音が聞こえてくる。
そうして防ぐことが、今の檸檬には精一杯なのかもしれない。
---
------
------------
同じ頃、GHOSTの吸収はいよいよ無差別攻撃を極め始め、ついにザクロもその餌食となった。
耐えかねた獄寺が叫んで尋ねる。
「おい桔梗!あいつは何者なんだ!!何でてめーまで襲われてんだ!!」
桔梗の脳裏には、白蘭から初めてGHOSTの存在を知らされた時の記憶が蘇る。
白蘭と瓜二つであるその姿から、影武者かと尋ねたが、白蘭はその推察を否定した。
パラレルワールドから連れてきた、もう一人の白蘭自身……それがGHOSTの正体だと白蘭は言った。
そして、もう一人の白蘭は、この世界にいる自分とは違った「才能」を秘めているということも。
しかし、代償もあったという。
もう一人の白蘭がいた世界はなくなり、また彼の能力テストで3隻の戦艦を沈ませてしまったことにより復讐者の牢獄に入れられた、ということ。
炎を吸いつくす才能があるのは桔梗にも理解できた。
ただ「投入されたタイミング」が理解できなかった。
「やはり実体攻撃はすり抜け、炎だけ吸収されます!!」
「リングと匣の炎が奪われて、もーヘロヘロだぜ…」
「このままでは全滅だ!いったん引くか!!」
「ダメだ!あのヤローは真っ直ぐユニの元へ向かってやがる!食い止めねーと!!」
そうは言っても、体力の低下から最早木陰に隠れて奇襲を狙うことしかできないボンゴレ勢。
GHOSTの攻撃に当たってしまっては元も子もないのだ。
そんな中、その攻撃に変化が出始める。
「曲がった…!?」
「やべぇ!!」
回避できたと思った了平と獄寺に向け、GHOSTから伸びる光線が曲がった。
咄嗟のことで対応が遅れた彼ら。
そこに駆け付けたのは……
「山本!!」
「なんか大変なことになっちまってんな…!」
炎を纏った時雨金時が、何とかGHOSTの攻撃を防いだ。
しかし防御をしながら、異常なまでに疲労を促す吸収力を山本も体感する。
「それでも何とかあの巨人を止めねーとな!!」
「跳ね馬にスクアーロ!!」
続いてやって来たディーノと、彼に肩を貸してもらいながら歩いて来るスクアーロに、ザンザスも振り向く。
「遅ぇぞカスが!!」
「ぐっ……すまねーなあ!!」
その他ヴァリアーの面々は、通常通り。
スクアーロの生存を本気で喜んだり残念がったり。
直後、GHOSTの纏う電撃が激しさを増す。
辺りはさらなる緊張状態に包まれた。
---
------
------------
ピグが造り出した真っ白な幻覚空間の中で、あたしとセレネ、そしてヘリオスはその場を動けずにいた。
何も見えない、聞こえない。
第六感で波長を辿ろうとしても、辺り一帯は蜜柑の波動に覆われていて、正確な発動の邪魔をする。
時々出てくる炎弾は、雲尾刃で対処する。
銃弾への対応はヘリオスも手伝ってくれる。
一人じゃない……
それが、あたしにとって何より心強いことだった。
「(やはり……あの晴リスは雲ヒナを白鳥に成長させるためだけの匣…)」
外側から見ていた蜜柑は、檸檬の晴リスがセレネの活性以外の役割を果たさないと判断した。
だが、晴属性の“活性”が匣の成長を促すだけの効果でないことも事実。
「(晴の炎を使えば傷の回復も可能……そのためにずっと展開させ、炎を蓄積させているのだとしたら…)」
霧に紛れながら時折攻撃を仕掛けるピグに、蜜柑は指示を出した。
「あれを先に葬るわよ。」
「ガァッ!」
蜜柑が数発撃てば、ピグは最大級までその姿を肥大化させる。
そして同時に、炎変換で造られた幻覚空間が消滅し始めた。
『(見つけた…!)』
蜜柑の姿を捉えた檸檬は、セレネの尾羽をまた1枚手に取る。
それに自らの雲の波動を乗せ、複数の刃を展開させようとした、その時だった。
蜜柑の口元に浮かべられた、妖しい笑み。
「ピグ……C to “T”“H”、炎投。」
『2色…!?』
背後にピグが構えていたのは分かっていた。
それでも、セレネがいるので防御は可能であると踏んでいた。
だが、2色の炎……しかも雷と嵐の炎となれば、話は変わってくる。
『(あの複合属性は……まるで隼人の赤炎の雷!)』
嵐の分解と雷の硬化による最強の炎弾であることは、充分に察せた。
普通に食らっては、セレネの紫翼幕では防ぎきれない、と。
『回避してセレネ!』
白鳥になった今のセレネならば、上空に回避することができる。
もちろんその場合、檸檬自身が炎弾に対処しなければならないが。
『(まだナイフには容量がある、回避しなくても……この炎弾は8割方吸収できる…!)』
複合属性の炎弾が放たれ、セレネは檸檬の指示通りに上空へ回避した。
その炎が吸収しきれない量だとは分かっていたが……
覚悟を決め、檸檬はナイフを握る。
---「君が死なない限り、僕は死なない。」
『(うん…あたしも死なないよ……恭弥。)』
脳裏に過る言葉に勇気をもらう。
が、その直後だった。
「愚かね。」
蜜柑の2丁拳銃は、上空のセレネに向けられていて。
「道具を奪うのが先に決まってるでしょう?」
ズガガガンッ!
数発の弾丸が、撃ち込まれた。
『セレネっ……つうっ!』
ピグの炎弾で放たれた炎のうち、8割をナイフで奪い取った檸檬。
残りの2割はやむなく食らうことになり、ふらつきながら上を見上げる。
……と、そこには思いも寄らない光景が広がっていた。
『ヘリオス…!?』
「キュルルーッ!」
檸檬の指示もない状況で、いつのまにか活性頬を発動させていたヘリオスが、セレネを庇うように飛び上がっていた。
よって蜜柑の銃弾は全て、ヘリオスに直撃していたのだ。
『な、何で…』
「持ち主が愚かなら匣も同じね。」
本来、活性頬は“炎攻撃のみ”を呑みこむ技であり、“炎を帯びた実体攻撃”は直接的ダメージとなって匣の損傷に繋がる。
つまり蜜柑の破壊の死ぬ気弾など食らえば、間違いなくヘリオスは壊れてしまうのだ。
それでも自らセレネを庇ったヘリオスに、檸檬は驚かざるを得なかった。
「ピグ、トドメを刺しなさい。」
『ヘリオス!』
追撃されないよう、咄嗟に空間移動で引き寄せる。
セレネには遥か上空へ退避するようにサインを出した。
「同情でもしてるのかしら。戦いの道具に。」
『…前も言ったよね。』
「匣兵器は侮辱するな、って話だったかしら?侮辱ではなくて、事実よ。私のピグの方が使える道具だった、それだけのこと。」
『道具じゃないっ!!!』
次の瞬間、檸檬の姿は蜜柑の視界から消える。
そして、
「なっ…」
蜜柑の目の前に姿を現した檸檬は、躊躇いなく延髄を目掛けて回し蹴りを繰り出す。
即座に左腕をガードに入れた蜜柑だったが、その凄まじい威力に吹っ飛ばされた。
「(蹴りを入れる瞬間にFブーツに炎を灯し威力を上げた…)」
「キィ、」
「うるさいわ、平気………くっ、」
『喋る暇なんてあげない。』
蜜柑が吹っ飛んだ先に、空間移動で距離を詰める檸檬。
そのナイフ裁きは先ほどより迷いのないものになっていて。
「(今までセーブしてたのね…)」
むしろ今のこの状況が、蜜柑にはしっくりきていた。
お互いに命を取り合うスレスレの攻撃を繰り出して、防いでく、そんなやり取りが。
そもそも“話し合いで解決したい”と訴える檸檬の姿は、虚構にしか見えていなかった。
なぜなら彼女は“予め見せられて”いたから。
未来視ができる母親によって、最悪の未来……檸檬によって父母と自分が憎しみの中で惨殺される未来……を、知らされていたから。
それでも、生きたいと思った。
何故かは分からない。
殺されたくなければ姉を殺せ……それはある種の摺り込み教育だったかも知れない。
しかし蜜柑にとって、それは“生きる目的”として機能した。
姉を殺すために生きる。
平穏を手に入れるために殺す。
空っぽの蜜柑には、それだけで充分だった。
---「帰って来て、欲しいんだ……何があっても、僕の所に。」
白蘭の言葉は、よく分からなかった。
真意も、理由も、感情も。
ただ、“願い”というのは等しく壊れやすいことも、知っている気がする。
例えば自分が幼い頃抱いた、最初で最後の願い……
---「お姉ちゃん……私のこと、忘れないで。」
『(動きが鈍った…!)』
すかさずナイフを首元に向けて振るった檸檬の耳に、叫び声が聞こえた。
「檸檬ちゃんやめて!!!」
「ダメです!!!」
『(京子とハルの声…?)』
どうして止めようとするのか。
何を止めようとしているのか。
分からないが、止まらなければ。
彼女たちの声は、ひどく哀しく響いた。
そうだ、このナイフ……
あたし…何を斬ろうとしてるんだっけ。
瞬きをした直後、檸檬は驚く。
目の前で蜜柑の頬に、一筋の涙が流れていた。
ぴたっ、
『はぁっ…はぁっ……』
ナイフを止めて初めて、自分が我を忘れかけていたのだと気付いた。
すなわち、本気で蜜柑を殺しかけていたのだということに。
首元スレスレでナイフを止めた檸檬に、蜜柑は無機質な瞳で尋ねた。
「殺さないの?姉さん…」
---
------
------------
「まずい!彼はここへいきなり現れた。まるでテレポーテーションでもしたかのように。」
骸の推測では、激しくなる電撃は再び起こるテレポーテーションの前触れ。
すなわち、ユニの元へ一気に到達してしまう可能性がある、ということ。
しかしそこに、今までなかった人物の声が。
「それはさせない!!」
遥か向こうの上空から、こちらに向かってやって来るオレンジ色の炎。
「あれは…!」
「俺達のボス!」
「ボンゴレ…X世…」
「沢田綱吉…」
近づくツナも身を持って感じる、GHOSTの吸収力。
離れていても吸われるというのなら、と、ツナも空中で構える。
「あの構えは、敵の炎を奪い取る!」
「死ぬ気の零地点突破・改!」
「沢田殿も炎を吸収する気だ!!」
GHOSTから放たれる吸収の光線は、全てツナの手元に集まってゆく。
そのツナの額の炎も、GHOSTの方へなびいたまま。
「吸収対吸収…!?一体どうなるというのだ!!」
桔梗が声を荒げたのと同時に、その異常な様子は直感としてユニの元へと届いた。
「(沢田さん…!)」
爆音と共に、辺りはまばゆい光に包まれた。
リボーンには「用心しろよ」と言われ、ユニには「お願いします」と頼まれる。
そうだ、皆が頑張ってくれたんだ。
ボンゴレのボスとかやっぱり興味ないけど……俺は、手にした繋がりを切り捨てることなんてできない。
「ツナ君!」
「ツナさん!」
不安げな表情で駆け寄って来たのは、京子ちゃんとハルだった。
2人には、絶対見せたくなかった禍々しい世界・恐ろしい戦いを知られることになってしまった。
その後悔はまだ消えない。
だから、怒られようと罵られようとかまわなかった。
なのに、2人は多分、色んな気持ちを押しこめて……微笑んだ。
「「いってらっしゃい。」」
そんなことで安心している場合じゃないのはわかってる。
けれど、救われた気がして。
「ユニを頼む。」
「任せとけ。」
「それと……檸檬のことも。」
「心配すんな。お前よりずっと強い、俺の補佐だぞ。」
生意気言うな、と付け足すリボーンに少し笑って。
最大火力で、飛んだ。
吸収
「(とは言え、恐らく戦況はやべーな…)」
フゥ太の肩の上、リボーンは先ほどまで檸檬がいた方向に視線を戻す。
現在蜜柑のアニマル匣・ピグの効果で辺りには霧の幻覚空間が展開されている。
よって、周辺には蜜柑の炎の波動がたちこめているハズだ。
波動はすなわち、檸檬にとって脳に大きな負荷をかける「強力な波長」。
抜け出すことはおろか、あの空間の中でまともに戦うことさえ難しいのではないか……
時折、ナイフで銃弾を弾く音が聞こえてくる。
そうして防ぐことが、今の檸檬には精一杯なのかもしれない。
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同じ頃、GHOSTの吸収はいよいよ無差別攻撃を極め始め、ついにザクロもその餌食となった。
耐えかねた獄寺が叫んで尋ねる。
「おい桔梗!あいつは何者なんだ!!何でてめーまで襲われてんだ!!」
桔梗の脳裏には、白蘭から初めてGHOSTの存在を知らされた時の記憶が蘇る。
白蘭と瓜二つであるその姿から、影武者かと尋ねたが、白蘭はその推察を否定した。
パラレルワールドから連れてきた、もう一人の白蘭自身……それがGHOSTの正体だと白蘭は言った。
そして、もう一人の白蘭は、この世界にいる自分とは違った「才能」を秘めているということも。
しかし、代償もあったという。
もう一人の白蘭がいた世界はなくなり、また彼の能力テストで3隻の戦艦を沈ませてしまったことにより復讐者の牢獄に入れられた、ということ。
炎を吸いつくす才能があるのは桔梗にも理解できた。
ただ「投入されたタイミング」が理解できなかった。
「やはり実体攻撃はすり抜け、炎だけ吸収されます!!」
「リングと匣の炎が奪われて、もーヘロヘロだぜ…」
「このままでは全滅だ!いったん引くか!!」
「ダメだ!あのヤローは真っ直ぐユニの元へ向かってやがる!食い止めねーと!!」
そうは言っても、体力の低下から最早木陰に隠れて奇襲を狙うことしかできないボンゴレ勢。
GHOSTの攻撃に当たってしまっては元も子もないのだ。
そんな中、その攻撃に変化が出始める。
「曲がった…!?」
「やべぇ!!」
回避できたと思った了平と獄寺に向け、GHOSTから伸びる光線が曲がった。
咄嗟のことで対応が遅れた彼ら。
そこに駆け付けたのは……
「山本!!」
「なんか大変なことになっちまってんな…!」
炎を纏った時雨金時が、何とかGHOSTの攻撃を防いだ。
しかし防御をしながら、異常なまでに疲労を促す吸収力を山本も体感する。
「それでも何とかあの巨人を止めねーとな!!」
「跳ね馬にスクアーロ!!」
続いてやって来たディーノと、彼に肩を貸してもらいながら歩いて来るスクアーロに、ザンザスも振り向く。
「遅ぇぞカスが!!」
「ぐっ……すまねーなあ!!」
その他ヴァリアーの面々は、通常通り。
スクアーロの生存を本気で喜んだり残念がったり。
直後、GHOSTの纏う電撃が激しさを増す。
辺りはさらなる緊張状態に包まれた。
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ピグが造り出した真っ白な幻覚空間の中で、あたしとセレネ、そしてヘリオスはその場を動けずにいた。
何も見えない、聞こえない。
第六感で波長を辿ろうとしても、辺り一帯は蜜柑の波動に覆われていて、正確な発動の邪魔をする。
時々出てくる炎弾は、雲尾刃で対処する。
銃弾への対応はヘリオスも手伝ってくれる。
一人じゃない……
それが、あたしにとって何より心強いことだった。
「(やはり……あの晴リスは雲ヒナを白鳥に成長させるためだけの匣…)」
外側から見ていた蜜柑は、檸檬の晴リスがセレネの活性以外の役割を果たさないと判断した。
だが、晴属性の“活性”が匣の成長を促すだけの効果でないことも事実。
「(晴の炎を使えば傷の回復も可能……そのためにずっと展開させ、炎を蓄積させているのだとしたら…)」
霧に紛れながら時折攻撃を仕掛けるピグに、蜜柑は指示を出した。
「あれを先に葬るわよ。」
「ガァッ!」
蜜柑が数発撃てば、ピグは最大級までその姿を肥大化させる。
そして同時に、炎変換で造られた幻覚空間が消滅し始めた。
『(見つけた…!)』
蜜柑の姿を捉えた檸檬は、セレネの尾羽をまた1枚手に取る。
それに自らの雲の波動を乗せ、複数の刃を展開させようとした、その時だった。
蜜柑の口元に浮かべられた、妖しい笑み。
「ピグ……C to “T”“H”、炎投。」
『2色…!?』
背後にピグが構えていたのは分かっていた。
それでも、セレネがいるので防御は可能であると踏んでいた。
だが、2色の炎……しかも雷と嵐の炎となれば、話は変わってくる。
『(あの複合属性は……まるで隼人の赤炎の雷!)』
嵐の分解と雷の硬化による最強の炎弾であることは、充分に察せた。
普通に食らっては、セレネの紫翼幕では防ぎきれない、と。
『回避してセレネ!』
白鳥になった今のセレネならば、上空に回避することができる。
もちろんその場合、檸檬自身が炎弾に対処しなければならないが。
『(まだナイフには容量がある、回避しなくても……この炎弾は8割方吸収できる…!)』
複合属性の炎弾が放たれ、セレネは檸檬の指示通りに上空へ回避した。
その炎が吸収しきれない量だとは分かっていたが……
覚悟を決め、檸檬はナイフを握る。
---「君が死なない限り、僕は死なない。」
『(うん…あたしも死なないよ……恭弥。)』
脳裏に過る言葉に勇気をもらう。
が、その直後だった。
「愚かね。」
蜜柑の2丁拳銃は、上空のセレネに向けられていて。
「道具を奪うのが先に決まってるでしょう?」
ズガガガンッ!
数発の弾丸が、撃ち込まれた。
『セレネっ……つうっ!』
ピグの炎弾で放たれた炎のうち、8割をナイフで奪い取った檸檬。
残りの2割はやむなく食らうことになり、ふらつきながら上を見上げる。
……と、そこには思いも寄らない光景が広がっていた。
『ヘリオス…!?』
「キュルルーッ!」
檸檬の指示もない状況で、いつのまにか活性頬を発動させていたヘリオスが、セレネを庇うように飛び上がっていた。
よって蜜柑の銃弾は全て、ヘリオスに直撃していたのだ。
『な、何で…』
「持ち主が愚かなら匣も同じね。」
本来、活性頬は“炎攻撃のみ”を呑みこむ技であり、“炎を帯びた実体攻撃”は直接的ダメージとなって匣の損傷に繋がる。
つまり蜜柑の破壊の死ぬ気弾など食らえば、間違いなくヘリオスは壊れてしまうのだ。
それでも自らセレネを庇ったヘリオスに、檸檬は驚かざるを得なかった。
「ピグ、トドメを刺しなさい。」
『ヘリオス!』
追撃されないよう、咄嗟に空間移動で引き寄せる。
セレネには遥か上空へ退避するようにサインを出した。
「同情でもしてるのかしら。戦いの道具に。」
『…前も言ったよね。』
「匣兵器は侮辱するな、って話だったかしら?侮辱ではなくて、事実よ。私のピグの方が使える道具だった、それだけのこと。」
『道具じゃないっ!!!』
次の瞬間、檸檬の姿は蜜柑の視界から消える。
そして、
「なっ…」
蜜柑の目の前に姿を現した檸檬は、躊躇いなく延髄を目掛けて回し蹴りを繰り出す。
即座に左腕をガードに入れた蜜柑だったが、その凄まじい威力に吹っ飛ばされた。
「(蹴りを入れる瞬間にFブーツに炎を灯し威力を上げた…)」
「キィ、」
「うるさいわ、平気………くっ、」
『喋る暇なんてあげない。』
蜜柑が吹っ飛んだ先に、空間移動で距離を詰める檸檬。
そのナイフ裁きは先ほどより迷いのないものになっていて。
「(今までセーブしてたのね…)」
むしろ今のこの状況が、蜜柑にはしっくりきていた。
お互いに命を取り合うスレスレの攻撃を繰り出して、防いでく、そんなやり取りが。
そもそも“話し合いで解決したい”と訴える檸檬の姿は、虚構にしか見えていなかった。
なぜなら彼女は“予め見せられて”いたから。
未来視ができる母親によって、最悪の未来……檸檬によって父母と自分が憎しみの中で惨殺される未来……を、知らされていたから。
それでも、生きたいと思った。
何故かは分からない。
殺されたくなければ姉を殺せ……それはある種の摺り込み教育だったかも知れない。
しかし蜜柑にとって、それは“生きる目的”として機能した。
姉を殺すために生きる。
平穏を手に入れるために殺す。
空っぽの蜜柑には、それだけで充分だった。
---「帰って来て、欲しいんだ……何があっても、僕の所に。」
白蘭の言葉は、よく分からなかった。
真意も、理由も、感情も。
ただ、“願い”というのは等しく壊れやすいことも、知っている気がする。
例えば自分が幼い頃抱いた、最初で最後の願い……
---「お姉ちゃん……私のこと、忘れないで。」
『(動きが鈍った…!)』
すかさずナイフを首元に向けて振るった檸檬の耳に、叫び声が聞こえた。
「檸檬ちゃんやめて!!!」
「ダメです!!!」
『(京子とハルの声…?)』
どうして止めようとするのか。
何を止めようとしているのか。
分からないが、止まらなければ。
彼女たちの声は、ひどく哀しく響いた。
そうだ、このナイフ……
あたし…何を斬ろうとしてるんだっけ。
瞬きをした直後、檸檬は驚く。
目の前で蜜柑の頬に、一筋の涙が流れていた。
ぴたっ、
『はぁっ…はぁっ……』
ナイフを止めて初めて、自分が我を忘れかけていたのだと気付いた。
すなわち、本気で蜜柑を殺しかけていたのだということに。
首元スレスレでナイフを止めた檸檬に、蜜柑は無機質な瞳で尋ねた。
「殺さないの?姉さん…」
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「まずい!彼はここへいきなり現れた。まるでテレポーテーションでもしたかのように。」
骸の推測では、激しくなる電撃は再び起こるテレポーテーションの前触れ。
すなわち、ユニの元へ一気に到達してしまう可能性がある、ということ。
しかしそこに、今までなかった人物の声が。
「それはさせない!!」
遥か向こうの上空から、こちらに向かってやって来るオレンジ色の炎。
「あれは…!」
「俺達のボス!」
「ボンゴレ…X世…」
「沢田綱吉…」
近づくツナも身を持って感じる、GHOSTの吸収力。
離れていても吸われるというのなら、と、ツナも空中で構える。
「あの構えは、敵の炎を奪い取る!」
「死ぬ気の零地点突破・改!」
「沢田殿も炎を吸収する気だ!!」
GHOSTから放たれる吸収の光線は、全てツナの手元に集まってゆく。
そのツナの額の炎も、GHOSTの方へなびいたまま。
「吸収対吸収…!?一体どうなるというのだ!!」
桔梗が声を荒げたのと同時に、その異常な様子は直感としてユニの元へと届いた。
「(沢田さん…!)」
爆音と共に、辺りはまばゆい光に包まれた。