未来編②
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地面を真直ぐに突き破って現れたそれは、桔梗の統率する恐竜の頭の1つで。
突然のことに対処できなかった雲雀の片腕が容赦なく肩ごと喰われてしまう。
「土の中から…!!」
「使ってならぬルールなどありましたか?貴方たちに時間を割けられないのです。先を急ぐことをお許しください。」
桔梗が言うと同時に、雲雀に向かってなお多数のスピノサウルスが襲い掛かる。
「ロール…防御だ。」
見えている攻撃には対応ができている雲雀だが、その足元、地中から再び桔梗の操るスピノサウルスが迫っていることは分からない。
それらが雲雀にダメージを与え、ロールの防御が緩む。
その隙が見逃されるはずもなく、彼はスピノサウルスの大群に押しつぶされる形になった。
「ああっ!」
「ヒバリィィ!!!」
バジルと了平が青ざめ叫んだのとほぼ同時に、“その気配”がユニとツナ、そして檸檬の脳裏を過った。
窮地
「(この感じ!!今、何かが…何かが起きた!!)」
『(この波長は…!?)』
いつか感じたことのある、少し懐かしい波長……
「余所見なんて、舐められたものね。」
『わっ…』
足を撃ち抜く軌道を描いた銃弾に、あたしは咄嗟に回避する。
さっきまで目元を押さえていた蜜柑が、最大サイズのピグを従えてあたしを睨んでいた。
『目、平気なの?』
「ご心配なく。連動したコンタクトに砂嵐が映ったから取り除いただけよ。」
蜜柑の返答を聞いが入江が「そうか…」と呟き、リボーンが反応する。
「どうした?正一。」
「いや、蜜柑さんが正確に檸檬さんの出現するポイントを読めたカラクリは、コンタクトにあったんだと思ってね。」
「それって、俺がXバーナーのためにスパナに作ってもらったものみたいな…?」
「ああ。蜜柑さんには今使っている”ピグ”の他に”マー”という匣アニマルがいてね……その眼球は高精度のサーモグラフィーになっているそうなんだ。」
「つまり、温度変化で檸檬の出現ポイントを解析できるワケだな。」
「その映像をコンタクトに投影させて分析することで、ピグに的確な指示を送れてたんだ。」
やっぱり凄い人だ、信じられないよ……と入江は蜜柑を見る。
「まぁ普通はあり得ねぇからな。常に背後からの視覚情報を得ながら、目の前の光景も認識するなんてこと、常人じゃ方向感覚が混乱しちまう。」
「でも今、その”マー”って匣アニマルを檸檬が封じたなら、もしかして…」
「そーだな、戦況は檸檬有利に少し傾いたってことだぞ。」
リボーンがそう言った直後、蜜柑は鼻で笑った。
「おめでたいわね、アルコバレーノ。姉さん、まさか本当に戦況が有利に傾いただなんて思ってるのかしら?」
『背後の攻撃を読まれなくなったから、ちょっとはマシかなぐらいは思ってるよ。』
「100%が95%に変わっただけ。悲観しておいた方がいいわ。」
『平和に話し合える可能性が0%から5%になってくれたんなら、あたしは大満足だけど?』
「…減らず口ね。ピグ、行くわよ。」
「ガァッ!」
蜜柑とピグが同時に地を蹴り、檸檬もセレネにナイフから炎をチャージする。
『宜しくね、セレネ!』
「みっ!」
ドガゴゴオオオ…
直後、遠くから響く激しい戦闘音。
それは、ヴァリアーとザクロ・ブルーベルの戦いが激しさを増している証だった。
「一体どんな戦いを……」
「ヴァリアーは超精鋭だ。この地球上でもっとも強い暗殺部隊だろう。だが相手は人間を超えた真6弔花……どっちが勝っても不思議じゃねぇな。」
---
------
------------
森の中、空中を浮遊して移動するブルーベルを追うのは、ベルとレヴィ、そしてルッスーリアだった。
彼らは木の枝から枝へ飛び移るように追いながら、ブルーベルに攻撃をする。
「こんのっ、」
ベルがナイフを投げると同時に、
「SUPER・LEVI・VOLTA!!」
レヴィが雷撃を向ける。
しかしそれらの強力な攻撃は、ブルーベルの“クラゲ・バリア(バリエーラ・メドゥーサ)”によって全て防がれ、無効化されてしまった。
「あの女、何て強力な防御壁を……アレを何とかしないと勝てんぞ!!」
「おいレヴィ、俺を雷エイに乗せな。」
「俺のエイに…!?」
「どーせお前乗れねーじゃん。」
ベルに何か作戦があることを察し、レヴィは渋々承諾する。
雷エイに乗ったベルは、自らの匣アニマル・嵐ミンクに指示を出した。
「よっしゃミンク♪炎最大だ。」
「キイッ、」
雷エイの先端を覆うほどの嵐の炎。
それは、“分解”による特攻を仕掛けるための準備だった。
「ゆけ!レヴィダイブ!!」
「ベルダイブだっつの。」
「キャアア!来たぁ!!」
触れただけで対象物を分解し尽す嵐ミンクの炎は、ブルーベルの防御壁を見事に突破した。
そして……
「防御壁が破れたわ!!今よ!」
「仕留めてやる!!」
攻め寄ったヴァリアー幹部3人が全員…
その動きを止めた。
「にゅっ、バーカ!」
「何!?」
「体が…!」
「動かないわ!!」
べっ、と舌を出して笑うブルーベル。
彼女がクラゲ・バリアを展開したのは作戦の一部であり、その内側にあるのが“本当の絶対防御領域”。
「私が纏ってる透明で純度100%の雨の炎のフィールド……“鎮静”によって全ての分子の運動を停止に近付けるわ。」
「マジヤバ…」
「まさかここまで出来るとは!!」
「強すぎるわ!」
抵抗することも出来ず、動けない彼らはブルーベルの“領域”内で爆発してしまう。
それを察知したザンザスとザクロは、こちらも互いに空中を移動しながら言葉を交わす。
「どーだ?バーロー。部下が殺られた気分は。」
「てめぇはいちいちアリンコの死に動揺するか?」
ザンザスは3人の方は見向きもせずにザクロへと炎の銃を放つ。
同時にベスタ―も彼に牙を立てた。
「強ぇ奴が生き残る…それだけだ。」
「グハハハ!!ならばやはり死ぬのは……てめーだ!!」
刹那、ザンザスの胴体に背後から忍び寄っていた雲スピノサウルスの牙が食い込んだ。
「ハハン…貴方は私のいるポイントに誘い出されていたのです。戦場では、10手も20手も先を読む者が勝つのですよ。」
---
------
-----------
一方、窪地での檸檬と蜜柑の戦いは、しばしの膠着状態を迎えていた。
檸檬が攻めを焦らなくなったことと、蜜柑が100%の読みを失いピグを自分から遠ざけなくなったことが主な要因だった。
「…本気でもたせるつもりのようね。」
『蜜柑が何発持ってても、あたしが一人で対応するワケじゃないから。』
「話し合いで解決するなんて、どうしたらそんな楽観的になれるのかしら。あの未来は……絶対よ。」
『蜜柑ってそんなにお母さん信者だったっけ?』
「うるさい!視せられていないからそんなことが言えるんだわ!」
時折感情を爆発させた口調になる蜜柑に、檸檬は少なからず希望を抱きつつあった。
蜜柑が自分の意志で殺しに来るなら、それでも構わない。受けて立つ。
しかし……蜜柑は姉殺しこそが自分の存在意義だと“思い込まされて”生きてきたのだ。
それだけは何としても、変えたかった。
『ねぇ蜜柑…あたしを殺したら、その先はどうするの?』
「私、“もしもの話”はしない主義よ。」
檸檬が踏み込もうとすると、途端に蜜柑は銃弾の雨を降らせ、ピグに炎弾の指示を出す。
『セレネ!』
「防げるかしら?C to “H”」
『(“H”…ってことは、嵐属性!)増殖ストップ!』
「遅いわ。」
檸檬が指示を出した時には既に、蜜柑は檸檬との距離を縮めていた。
防御壁を瞬時に生成できるセレネの増殖に一つ欠点があるとするなら、檸檬の視界が利かなくなってしまうこと。
そして、防御壁に対して相性の悪い嵐または雷属性の炎が来ると判断し、檸檬が指示を取りやめた場合、その一瞬の不認知が命取りになりかねない…ということだった。
そして檸檬は、未来の世界に来て初めて、蜜柑に直接蹴りを食らわされた。
『がっ…!』
「肉弾戦は消費エネルギーが激しいけど…奇襲にはいいわね。」
腹部を押さえてよろめく檸檬に、蜜柑は再度蹴りを食らわせるため足を浮かせる。
今度はその軌道を檸檬の頭部に向けて。
『つっ、』
間一髪、後ろに一歩距離を取ったが、蜜柑のヒールの先端が掠ったのか、檸檬の頬には赤い弧が滲んだ。
その様子を見てリボーンが小さく零す。
「…檸檬の奴、まだ迷ってやがる。」
「でもっ…それは檸檬ちゃんが優しいからで…」
「優しさと甘さは違ぇんだぞ。特に、戦ってる人間においては、な…」
反論しようとした京子は再び口を噤み、ハルも不安げな瞳を向ける。
そちらを一瞥した蜜柑は、反撃をして来ない檸檬に対し溜息をついた。
「いい加減理解したら?私たちは、一方が他方を殺す運命なのよ。」
『そんなもの…決まってない…。』
「……どうやら甘い考えを捨てきれないようね。“人間の闇”であるクセに。散々呼ばれて来たでしょう?…DARQ。」
『…!』
僅かに動揺を見せた檸檬に呆れながら、蜜柑は続けた。
「本気で殺し合うつもりがないなら、キッカケでもあげましょうか。」
『キッカケ…?』
「ピグ、行きなさい。」
蜜柑が目配せした直後、ピグはトップスピードで突っ込んでいった。
檸檬ではなく、入江たちの方へ。
「怪我人と一般人なら、20秒いらないわね。」
『なっ…!』
蜜柑の冷やかな笑みに、檸檬は目を見開き、そして……
「ガァーッ!!」
「うわぁ!」
「はひ!」
「うそ…!」
入江と、彼を快方のため傍にいたハル・京子が、襲い掛かるピグの爪に青ざめる。
キィンッ、
『それはさすがにルール違反でしょ、蜜柑…』
「「「檸檬(さん/ちゃん)…!」」」
ユニの傍にいたリボーンやツナが対応する前に、檸檬の咄嗟の空間移動が間に合った。
巨大化したピグの爪は、一本のナイフに受け止められ、ピグはそのまま檸檬によって蹴り飛ばされる。
だが蜜柑はその対応など織り込み済みとでも言うように、顔色一つ変えずに返した。
「ルール?生憎今回は、どこにもチェルベッロなんていないわよ?」
『これはあたし達の問題のハズだけど。』
「そうね。けれど私には巻き込まないで戦う義務はない。」
『……そう、分かった…。』
ピリッと震えた檸檬の空気に、京子とハルが呼びかけようとする。
が、その前に檸檬の方から振り向いた。
『ごめんね、もう巻き込まないから……大丈夫だよ♪』
ふぅ、と一息吐いた檸檬は、雲の炎が灯ったナイフを握り直す。
『面倒なんだよね、これ。第9段階なんだけどさ…』
「(やっと来たわね、第六感の真価…)」
蜜柑が警戒心を強めた、その直後。
檸檬の持っていたナイフに灯る炎……その色が、突如黄色へと変化する。
そして、檸檬は躊躇いなくその炎をセレネとは別の匣……
日本に帰って来てから、ディーノに渡された匣へと注入した。
『力を貸して……ヘリオス。』
---
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------------
「これで…ボンゴレ側の守備は全滅ですね。」
「バーロー当然だ。この圧倒的強さこそが、真6弔花なんだからな。」
「では参りましょう、ユニ様の元へ。」
桔梗・ザクロ・ブルーベルが移動しようとした、その時。
奇妙な音を立て、桔梗の雲スピノサウルスの頭部が変形する。
それは、雲雀・バジル・了平・ベル・レヴィ・ルッスーリア・ザンザス…と現れ、更には真6弔花に攻撃を加え始めた。
「どあぁ!!どーなってんだ桔梗!?」
「こんなことが……幻覚か!」
桔梗はその結論に至ると同時に、それまで無かった殺気を感じ取る。
「(そこか!!)」
雲桔梗の葉で攻撃したその場所から爆発音。
そして……
「あれー?師匠、今なにげに一歩前に出ましたねー。すぐに真ん中に立とうとするんですからー。」
「クフフフ…何を言っているのです、おチビさん。……お前の頭が邪魔だからですよ。」
「そーやっておいしいトコ持ってくんですよねー。」
現れたのは、それまで霧の幻覚で姿を消していた六道骸と、その幻術の弟子でありながらヴァリアーに所属するフランだった。
更に、真6弔花に倒されたはずの守護者やヴァリアーの面々もほぼ無傷で現れる。
「もういいかい?何勝手に殺してんの?」
「幻覚とやらは終わったのか?」
「10秒貸せっつーから待ってやったが…このクソガエル。」
「30秒もオーバーしてんじゃないの!!」
「ち……あっ、舌打ちしちゃいましたー。」
そのやり取りを見る真6弔花の表情はみるみるうちに驚愕から焦燥に変わる。
「奴らを倒したのは、全部幻覚!!?」
「クフフフ……ウォーミングアップは済みました。」
突然のことに対処できなかった雲雀の片腕が容赦なく肩ごと喰われてしまう。
「土の中から…!!」
「使ってならぬルールなどありましたか?貴方たちに時間を割けられないのです。先を急ぐことをお許しください。」
桔梗が言うと同時に、雲雀に向かってなお多数のスピノサウルスが襲い掛かる。
「ロール…防御だ。」
見えている攻撃には対応ができている雲雀だが、その足元、地中から再び桔梗の操るスピノサウルスが迫っていることは分からない。
それらが雲雀にダメージを与え、ロールの防御が緩む。
その隙が見逃されるはずもなく、彼はスピノサウルスの大群に押しつぶされる形になった。
「ああっ!」
「ヒバリィィ!!!」
バジルと了平が青ざめ叫んだのとほぼ同時に、“その気配”がユニとツナ、そして檸檬の脳裏を過った。
窮地
「(この感じ!!今、何かが…何かが起きた!!)」
『(この波長は…!?)』
いつか感じたことのある、少し懐かしい波長……
「余所見なんて、舐められたものね。」
『わっ…』
足を撃ち抜く軌道を描いた銃弾に、あたしは咄嗟に回避する。
さっきまで目元を押さえていた蜜柑が、最大サイズのピグを従えてあたしを睨んでいた。
『目、平気なの?』
「ご心配なく。連動したコンタクトに砂嵐が映ったから取り除いただけよ。」
蜜柑の返答を聞いが入江が「そうか…」と呟き、リボーンが反応する。
「どうした?正一。」
「いや、蜜柑さんが正確に檸檬さんの出現するポイントを読めたカラクリは、コンタクトにあったんだと思ってね。」
「それって、俺がXバーナーのためにスパナに作ってもらったものみたいな…?」
「ああ。蜜柑さんには今使っている”ピグ”の他に”マー”という匣アニマルがいてね……その眼球は高精度のサーモグラフィーになっているそうなんだ。」
「つまり、温度変化で檸檬の出現ポイントを解析できるワケだな。」
「その映像をコンタクトに投影させて分析することで、ピグに的確な指示を送れてたんだ。」
やっぱり凄い人だ、信じられないよ……と入江は蜜柑を見る。
「まぁ普通はあり得ねぇからな。常に背後からの視覚情報を得ながら、目の前の光景も認識するなんてこと、常人じゃ方向感覚が混乱しちまう。」
「でも今、その”マー”って匣アニマルを檸檬が封じたなら、もしかして…」
「そーだな、戦況は檸檬有利に少し傾いたってことだぞ。」
リボーンがそう言った直後、蜜柑は鼻で笑った。
「おめでたいわね、アルコバレーノ。姉さん、まさか本当に戦況が有利に傾いただなんて思ってるのかしら?」
『背後の攻撃を読まれなくなったから、ちょっとはマシかなぐらいは思ってるよ。』
「100%が95%に変わっただけ。悲観しておいた方がいいわ。」
『平和に話し合える可能性が0%から5%になってくれたんなら、あたしは大満足だけど?』
「…減らず口ね。ピグ、行くわよ。」
「ガァッ!」
蜜柑とピグが同時に地を蹴り、檸檬もセレネにナイフから炎をチャージする。
『宜しくね、セレネ!』
「みっ!」
ドガゴゴオオオ…
直後、遠くから響く激しい戦闘音。
それは、ヴァリアーとザクロ・ブルーベルの戦いが激しさを増している証だった。
「一体どんな戦いを……」
「ヴァリアーは超精鋭だ。この地球上でもっとも強い暗殺部隊だろう。だが相手は人間を超えた真6弔花……どっちが勝っても不思議じゃねぇな。」
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森の中、空中を浮遊して移動するブルーベルを追うのは、ベルとレヴィ、そしてルッスーリアだった。
彼らは木の枝から枝へ飛び移るように追いながら、ブルーベルに攻撃をする。
「こんのっ、」
ベルがナイフを投げると同時に、
「SUPER・LEVI・VOLTA!!」
レヴィが雷撃を向ける。
しかしそれらの強力な攻撃は、ブルーベルの“クラゲ・バリア(バリエーラ・メドゥーサ)”によって全て防がれ、無効化されてしまった。
「あの女、何て強力な防御壁を……アレを何とかしないと勝てんぞ!!」
「おいレヴィ、俺を雷エイに乗せな。」
「俺のエイに…!?」
「どーせお前乗れねーじゃん。」
ベルに何か作戦があることを察し、レヴィは渋々承諾する。
雷エイに乗ったベルは、自らの匣アニマル・嵐ミンクに指示を出した。
「よっしゃミンク♪炎最大だ。」
「キイッ、」
雷エイの先端を覆うほどの嵐の炎。
それは、“分解”による特攻を仕掛けるための準備だった。
「ゆけ!レヴィダイブ!!」
「ベルダイブだっつの。」
「キャアア!来たぁ!!」
触れただけで対象物を分解し尽す嵐ミンクの炎は、ブルーベルの防御壁を見事に突破した。
そして……
「防御壁が破れたわ!!今よ!」
「仕留めてやる!!」
攻め寄ったヴァリアー幹部3人が全員…
その動きを止めた。
「にゅっ、バーカ!」
「何!?」
「体が…!」
「動かないわ!!」
べっ、と舌を出して笑うブルーベル。
彼女がクラゲ・バリアを展開したのは作戦の一部であり、その内側にあるのが“本当の絶対防御領域”。
「私が纏ってる透明で純度100%の雨の炎のフィールド……“鎮静”によって全ての分子の運動を停止に近付けるわ。」
「マジヤバ…」
「まさかここまで出来るとは!!」
「強すぎるわ!」
抵抗することも出来ず、動けない彼らはブルーベルの“領域”内で爆発してしまう。
それを察知したザンザスとザクロは、こちらも互いに空中を移動しながら言葉を交わす。
「どーだ?バーロー。部下が殺られた気分は。」
「てめぇはいちいちアリンコの死に動揺するか?」
ザンザスは3人の方は見向きもせずにザクロへと炎の銃を放つ。
同時にベスタ―も彼に牙を立てた。
「強ぇ奴が生き残る…それだけだ。」
「グハハハ!!ならばやはり死ぬのは……てめーだ!!」
刹那、ザンザスの胴体に背後から忍び寄っていた雲スピノサウルスの牙が食い込んだ。
「ハハン…貴方は私のいるポイントに誘い出されていたのです。戦場では、10手も20手も先を読む者が勝つのですよ。」
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一方、窪地での檸檬と蜜柑の戦いは、しばしの膠着状態を迎えていた。
檸檬が攻めを焦らなくなったことと、蜜柑が100%の読みを失いピグを自分から遠ざけなくなったことが主な要因だった。
「…本気でもたせるつもりのようね。」
『蜜柑が何発持ってても、あたしが一人で対応するワケじゃないから。』
「話し合いで解決するなんて、どうしたらそんな楽観的になれるのかしら。あの未来は……絶対よ。」
『蜜柑ってそんなにお母さん信者だったっけ?』
「うるさい!視せられていないからそんなことが言えるんだわ!」
時折感情を爆発させた口調になる蜜柑に、檸檬は少なからず希望を抱きつつあった。
蜜柑が自分の意志で殺しに来るなら、それでも構わない。受けて立つ。
しかし……蜜柑は姉殺しこそが自分の存在意義だと“思い込まされて”生きてきたのだ。
それだけは何としても、変えたかった。
『ねぇ蜜柑…あたしを殺したら、その先はどうするの?』
「私、“もしもの話”はしない主義よ。」
檸檬が踏み込もうとすると、途端に蜜柑は銃弾の雨を降らせ、ピグに炎弾の指示を出す。
『セレネ!』
「防げるかしら?C to “H”」
『(“H”…ってことは、嵐属性!)増殖ストップ!』
「遅いわ。」
檸檬が指示を出した時には既に、蜜柑は檸檬との距離を縮めていた。
防御壁を瞬時に生成できるセレネの増殖に一つ欠点があるとするなら、檸檬の視界が利かなくなってしまうこと。
そして、防御壁に対して相性の悪い嵐または雷属性の炎が来ると判断し、檸檬が指示を取りやめた場合、その一瞬の不認知が命取りになりかねない…ということだった。
そして檸檬は、未来の世界に来て初めて、蜜柑に直接蹴りを食らわされた。
『がっ…!』
「肉弾戦は消費エネルギーが激しいけど…奇襲にはいいわね。」
腹部を押さえてよろめく檸檬に、蜜柑は再度蹴りを食らわせるため足を浮かせる。
今度はその軌道を檸檬の頭部に向けて。
『つっ、』
間一髪、後ろに一歩距離を取ったが、蜜柑のヒールの先端が掠ったのか、檸檬の頬には赤い弧が滲んだ。
その様子を見てリボーンが小さく零す。
「…檸檬の奴、まだ迷ってやがる。」
「でもっ…それは檸檬ちゃんが優しいからで…」
「優しさと甘さは違ぇんだぞ。特に、戦ってる人間においては、な…」
反論しようとした京子は再び口を噤み、ハルも不安げな瞳を向ける。
そちらを一瞥した蜜柑は、反撃をして来ない檸檬に対し溜息をついた。
「いい加減理解したら?私たちは、一方が他方を殺す運命なのよ。」
『そんなもの…決まってない…。』
「……どうやら甘い考えを捨てきれないようね。“人間の闇”であるクセに。散々呼ばれて来たでしょう?…DARQ。」
『…!』
僅かに動揺を見せた檸檬に呆れながら、蜜柑は続けた。
「本気で殺し合うつもりがないなら、キッカケでもあげましょうか。」
『キッカケ…?』
「ピグ、行きなさい。」
蜜柑が目配せした直後、ピグはトップスピードで突っ込んでいった。
檸檬ではなく、入江たちの方へ。
「怪我人と一般人なら、20秒いらないわね。」
『なっ…!』
蜜柑の冷やかな笑みに、檸檬は目を見開き、そして……
「ガァーッ!!」
「うわぁ!」
「はひ!」
「うそ…!」
入江と、彼を快方のため傍にいたハル・京子が、襲い掛かるピグの爪に青ざめる。
キィンッ、
『それはさすがにルール違反でしょ、蜜柑…』
「「「檸檬(さん/ちゃん)…!」」」
ユニの傍にいたリボーンやツナが対応する前に、檸檬の咄嗟の空間移動が間に合った。
巨大化したピグの爪は、一本のナイフに受け止められ、ピグはそのまま檸檬によって蹴り飛ばされる。
だが蜜柑はその対応など織り込み済みとでも言うように、顔色一つ変えずに返した。
「ルール?生憎今回は、どこにもチェルベッロなんていないわよ?」
『これはあたし達の問題のハズだけど。』
「そうね。けれど私には巻き込まないで戦う義務はない。」
『……そう、分かった…。』
ピリッと震えた檸檬の空気に、京子とハルが呼びかけようとする。
が、その前に檸檬の方から振り向いた。
『ごめんね、もう巻き込まないから……大丈夫だよ♪』
ふぅ、と一息吐いた檸檬は、雲の炎が灯ったナイフを握り直す。
『面倒なんだよね、これ。第9段階なんだけどさ…』
「(やっと来たわね、第六感の真価…)」
蜜柑が警戒心を強めた、その直後。
檸檬の持っていたナイフに灯る炎……その色が、突如黄色へと変化する。
そして、檸檬は躊躇いなくその炎をセレネとは別の匣……
日本に帰って来てから、ディーノに渡された匣へと注入した。
『力を貸して……ヘリオス。』
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「これで…ボンゴレ側の守備は全滅ですね。」
「バーロー当然だ。この圧倒的強さこそが、真6弔花なんだからな。」
「では参りましょう、ユニ様の元へ。」
桔梗・ザクロ・ブルーベルが移動しようとした、その時。
奇妙な音を立て、桔梗の雲スピノサウルスの頭部が変形する。
それは、雲雀・バジル・了平・ベル・レヴィ・ルッスーリア・ザンザス…と現れ、更には真6弔花に攻撃を加え始めた。
「どあぁ!!どーなってんだ桔梗!?」
「こんなことが……幻覚か!」
桔梗はその結論に至ると同時に、それまで無かった殺気を感じ取る。
「(そこか!!)」
雲桔梗の葉で攻撃したその場所から爆発音。
そして……
「あれー?師匠、今なにげに一歩前に出ましたねー。すぐに真ん中に立とうとするんですからー。」
「クフフフ…何を言っているのです、おチビさん。……お前の頭が邪魔だからですよ。」
「そーやっておいしいトコ持ってくんですよねー。」
現れたのは、それまで霧の幻覚で姿を消していた六道骸と、その幻術の弟子でありながらヴァリアーに所属するフランだった。
更に、真6弔花に倒されたはずの守護者やヴァリアーの面々もほぼ無傷で現れる。
「もういいかい?何勝手に殺してんの?」
「幻覚とやらは終わったのか?」
「10秒貸せっつーから待ってやったが…このクソガエル。」
「30秒もオーバーしてんじゃないの!!」
「ち……あっ、舌打ちしちゃいましたー。」
そのやり取りを見る真6弔花の表情はみるみるうちに驚愕から焦燥に変わる。
「奴らを倒したのは、全部幻覚!!?」
「クフフフ……ウォーミングアップは済みました。」