既に激しい戦闘が繰り広げられたその地点は、焼け野原のようになっていた。

そんな中、目の前に現れた人物に獄寺は驚きを隠せない。


「ＸＡＮＸＵＳ！！」

「…沢田に伝えろ。ボンゴレ9代目直属、独立暗殺部隊ヴァリアーは…ボンゴレの旗の下、ボンゴレリングを所持する者共を援護する！！」



それはつまり、ツナ達ファミリーを助けに来たということ。










一撃










俄かに信じがたい事態に安堵と困惑のまじる表情になる獄寺。

と、それまで獄寺を支えていたベルが飽きたように獄寺を落とす。


「ししし、情けねーの！それでも嵐の守護者かよ。」

「でっ…ナイフ野郎！」

「それよりスクアーロ何処にいるか知ってるかしら？」

「……アイツは殺られて…今、山本達が捜索してる……」



伝えづらいニュースに口が重くなる獄寺だったが、それを聞いたザンザスは一言。

「ハッ、死んだか。」と。


それに続いてレヴィも「ハッ、死んだか」とニヤリと笑い、

ルッスーリアは「ってことは次期作戦隊長、私かしらｖ」と、

ベルは「これでど突かれなくて済む♪」とそれぞれ嬉しそうに笑った。


そんな反応に唖然とする獄寺に対し、真６弔花は「面白くない」という反応を示す。



「何あいつら？変なの出てきた。」

「ボンゴレの独立暗殺部隊ヴァリアーだ。どのみち消すだけだがな。」



ザクロの挑発的な言葉に、ザンザスは憤怒の炎を光らせる。


「やってみろ、カス。」

「聞けザンザス…！！奴らはパラレルワールドを使い、お前たちの技を既に攻略している……型のある技は使わない方がいい！！」

「るせぇっ。」

「なっ、人が親切に…！」



獄寺の忠告など一切気にしない様子で、ザンザスはベスターに指示を出した。

「かっ消せ。」

「にゅ！」
「こいっ、バーロー！！」





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時を同じくして、向かい合った檸檬と蜜柑の戦闘も始まろうとしていた。



「言いたいことは山ほどあるんでしょうけど、一切聞く気はないわ。」

『…みたいだね。』



話し合って和解したい…檸檬はその思いだけでここまで来た。

しかし蜜柑は、檸檬を殺すことしか考えていない。



「檸檬さん…」

『大丈夫よ、ユニ。あたしは蜜柑を殺さない。終わらせるよ、こんな戦いは。』


前を見てそう言う檸檬を見つめながら、ユニはきゅっと拳を握る。

まるで、これから先訪れる未来に対して祈りを捧げるように。

一方の蜜柑は嘲笑しながら返した。


「そうね、今日で全て終わる。姉さんが、いなくなるんだから。」


そして、一瞬で表情を憎悪一色に戻し、右手中指のリングに炎を灯した。


「出し惜しみはしないわよ。」


蜜柑しか持ちえない、曲げられた波動と炎。

大空の推進力を兼ね備えていながらも、特性は雲属性の増殖を有している、オレンジ色の炎。

それが注入された匣からは、檸檬がもう何度も苦しめられた匣アニマル・ピグが出て来る。


「キィーッ！」

ズガガガンッ、


ピグを出して早々に数発を撃ち込む蜜柑。

京子やハルは肩を震わせたが、ピグはその炎を増幅させ、サイズも人と変わらないまでになった。


「ガアァーッ！」

「すごい…チャージ式巨大化プログラム…」


蜜柑が開発した匣技術を初めて生で見た入江は、思わず感心してしまう。



『じゃ、同じく出し惜しみナシで。』


檸檬は右腿のナイフを一本取り、スッと目を閉じた。

次の瞬間、ナイフに鮮やかな紫色の炎が灯る。


『おいで、セレネ！』

「みぃっ！」


「アレが檸檬の匣アニマル…！？」


チョイスの時には自分も戦闘中だったため見なかったツナが、目を丸くした。



「ピグ、分かってるわね？」

「ガァッ！」


蜜柑とピグが二方向に別れて檸檬に攻め寄り、戦闘が始まった。




その瞬間、獄寺のいる地点から轟音が鳴り響く。



「あっちの戦闘が激しくなってる！！」

-「聞こえますか、１０代目！」

「獄寺君！？」


直後に無線から聞こえてきた獄寺の声。

ツナは、ヴァリアーが味方側で参戦していることを知った。



「ザンザスの強さはお前が一番知ってるはずだ。心強い援軍だな。」

「…うん！！」



と、安堵したのも束の間。

今度は逆の方向、湖がある地点からの戦闘音。


「あっちは確か…」

「了平兄、バジル兄、太猿に野猿……それにランボが守ってるはずだよ！！」

「ランボ…！！」




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「ハハン、これほどの敵が待ち伏せているとは、正直驚きましたよ。」



湖に予め仕掛けられていたトラップを難なく回避したのは、真６弔花のリーダー・桔梗だった。

ブーツから紫色の炎を出して飛ぶ彼は、空中からボンゴレ勢を見下ろす。




「くそう、一撃で仕留められなかった……」

「ちっくしょ～～！！」

「よくやったぞ、太猿！野猿！！」

「ここからは拙者たちに任せて下さい！！」


桔梗に大したダメージを与えられなかった太猿と野猿を下がらせる了平とバジル。

しかし、太猿は納得いかない表情で返す。


「お前達も怪我をしているではないか！第一…こんなチビまで連れてきちまってどういうつもりだ！！」


その視線の先には、「タザル知らないの？ランボさん強いんだよ！！」と陽気に笑うランボ。

守護者であるから、とリボーンに戦闘員としてカウントされたのだ。



「ランボを戦わせるつもりはない！！」

「桔梗は我々が倒してみせます！！」

「ぐぴゃ？」



その強気な宣誓に反応したのは桔梗だった。


「私を倒すですって？もしや戦士の数が上回っていれば勝てるとでも？」

「何！？」

「貴方達にはこの匣一つで充分です。ユニ様を一刻も早くお連れしたいので、早速失礼しますよ。」


ミルフィオーレの紋章がついた匣を開ける桔梗。

中から出てきたのは…

雲ヴェロキラプトル、古いＤＮＡから作られた恐竜型の匣アニマルだった。



「なんて数！！」

「ぎゃああ！！！」

「野猿っ！！」

「おのれ…うおお！！」



野猿が一撃で吹っ飛ばされ、了平とバジルが応戦するも、一体一体の能力値が高いことを察する。


「恐竜タイプの匣兵器は動物タイプよりはるかに強力でしてね。この匣兵器一つで最新装備の軍隊一個師団以上の戦闘能力を誇っています。」


桔梗が余裕の笑みを見せる中、ランボが雲ヴェロキラプトルの尾に弾き飛ばされる。


「ぐぴゃっ！」

「ランボ！！いかん！向こうに恐竜たちが！！」


青ざめる了平。

しかしランボは恐竜に噛まれる直前に引き寄せられ、庇われる。

代わりに、引き寄せた太猿の左肩が餌食となってしまった。


「ぬお"ぉお！！！何故こんなチビを連れてきた！！」

「(それは…)」



了平は思いだす。

戦闘が始まる前夜の、リボーンの言葉を。






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「ランボを戦わせる！？そんなの反対だよ！！」

「俺も反対だ！！」


ツナと了平がリボーンに反対する傍で、ランボは「いくいく！戦う！」と何も分かっていない様子。



「ランボってこんなにチビなんだぞ！！」

「チビじゃないもんね！！」

「ランボはアホでうざいチビだが、リングを継承したれっきとしたボンゴレの守護者だ。選ばれたことには意味があるんだ。」

「ガハハ！！やっとランボさんの凄さに気付いたなリボーン！！」

「おいリボーンっ、調子に乗せるなって！」



普段は一撃喰らわせるようなランボの言葉も、この時のリボーンは流して話を進めた。


「ボンゴレが本当の力を出すには守護者全員の力が必要なんだ。第一、負けちまったらアホ牛も何もかもがお終いなんだぞ。」

「リボーン……でも、やっぱり俺は反対だよ…」

「……沢田、俺が極限に責任を持ってランボの面倒をみる！！それならいいだろう？」

「お兄ちゃん…！」
「お兄さん…」


ツナの不安を拭い去り、全員で戦えるようにと名乗り出た了平。


「要は勝てばいいのだからな！大丈夫だ！！」

「その通りだ了平。」



リボーンはちょこんと了平の肩に乗り、ランボについて“ある事”を教えてくれた。

ランボが力を発揮し得る、スイッチについて。





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---「本当にヤバい時に叫んでみろ。」


「(それは…今だ！！)」


了平は大きく息を吸い、太猿に抱えられるランボに向かって叫んだ。


「どうしたランボ！！！沢田のママンに会いたくないのか！！？」



その単語を聞いたランボはみるみるうちに目に涙を浮かべ…


「ママン……どこ…？ママンに会いたい～～！！！」


もじゃもじゃの髪の毛の中に持っていた匣とリングを取りだし、覚悟の炎を出した。



「ぎゅうど～ん！！！」

「牛丼が、形態変化を…！！」



初代雷の守護者は大地主の息子で、若く我儘で世間知らずな臆病者だった。

しかしボンゴレI世は、敢えて彼に戦場で先陣を切らせたという。


先陣を切った臆病者…その矛盾がランボのボンゴレ匣にも表れている。


「あの武器こそ…」


激しい一撃を秘めた雷電と謳われた、ランポウの盾！！！



「ハハン、何に変わるかと思えば物言わぬ盾ですか。それでは雲ヴェロキラプトルを倒すことはできませんよ。」

「だがアレでランボ殿の命が守られるならベストなのかも…」

「いいや！！雷のボンゴレ匣はそんな甘っちょろい兵器ではないぞ！！」


了平の言う通り、ランボのボンゴレ匣が緑の炎をどんどん蓄積していき、激しく光り出す。


「ママ～～～ン！！！雷の角(ｺﾙﾅ･ﾌｰﾙﾐﾈ)！！！」


そして次の瞬間、四方に放たれた雷電が無数の雲ヴェロキラプトルを突き刺した。




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左サイドから来るのは、お決まりになった破壊の死ぬ気弾・追尾型。

右サイドからはピグが来てるから、物理攻撃と炎弾の両方を警戒しなくてはいけない。


「みぃっ…」

『大丈夫、かわせるよ。』


手始めに破壊の死ぬ気弾から炎を奪い、あたしのＦブーツに灯した。

大空の推進力を使って、ピグの攻撃を避けながら宙に舞う。



話し合いをするためには、蜜柑の動きを封じるのが一番手っ取り早い。


『(だったら…！)』


あたしが取るべき先方は一つ。

背後から確実に、蜜柑の麻痺のポイントを仕留めること。


『(いくら蜜柑の五感が鋭くても、背後からの攻撃を完全に読み切るのは不可能なハズ…！)』


攻撃を避けて空中に舞い上がった状態から、即座に空間移動を使う。

蜜柑の背後に回って、首の後ろを…！



「そう来ると思ったわ。」

『なっ…！』


後ろを取られても余裕な態度を崩さない蜜柑に、ハッとする檸檬。

始めに撃たれていたものとは違う破壊の死ぬ気弾・追尾型が、真横から迫っていた。



「みぃっ！」


咄嗟にセレネが増殖をして防御壁を作り、銃弾から檸檬を守った。


『ありがとセレネっ♪』

「みっ！」

「ガアァーッ！」

『おっ、と！』



振り降ろされるピグの爪を避けながら、蜜柑とピグから距離を取る檸檬。


「チョイスの時にも使った戦法だけど…もう忘れたの？」

『やっぱ一筋縄じゃいかないね…』

「当然よ。姉さんが空間移動を使ったとして、私には次に姉さんが何処に現れるか９５％読める。」



つまり、背後を取ろうにもそのタイミングが読まれていては話にならない。

背後を取る意味は、一撃与えられて初めて得られるのだ。


『(背後に回ってから一撃入れるためには…タイミングを読まれちゃいけない……それなら、)』



トントンッと爪先で地面を叩く檸檬。

それを見た蜜柑は、より殺気を強くし、警戒心を高めた。


「…来るわよ、ピグ。」

「ガァ…」

「姉さん十八番の…究極のリズムが。」



元の動きのリズムどころか、転調のタイミング、その後の変化すら、他人には決して理解しえないという究極のリズム。

そもそも、人が戦闘する際のリズムを感じ取れるのは、蜜柑の知る限り檸檬とその父親だけなのだが。


とにもかくにも檸檬が究極のリズムを使って動きを転調していけば、蜜柑の予測不可能なタイミングで後ろを取ることなど容易い……

ハズだった。



『(取った…！)』

「甘く見ないでくれる？」


ガッ、

次の瞬間、檸檬が降り降ろした手刀は蜜柑の腕によってきっちりと防がれていて。

これには、遠目で観戦していたツナ達も驚く。


「ピンポイントで止めた！？」

「後ろにも目があるとしか思えねぇな…」


リボーンの見る限り、蜜柑の動きは気配を察知していたというより、完全に見えていた攻撃を止めただけだった。

だが当然、真後ろからの、しかもタイミングを掴めない攻撃にそんな反応が出来るわけがない。


「今度はこっちよ。ピグ、Ｌ４７。」

『えっ…？』


蜜柑の指示が飛んだ瞬間、ピグが檸檬の後ろに回り込み、その肩に乗るセレネへ炎弾を放った。





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同じ頃。

激しい戦闘音のする方へ１人走って向かっていた雲雀は、何かの気配に足を止めた。


「……誰？」



気配のする方へ呼びかけると、サラサラと現れる二つの影。


「あーあ、やっぱ気付かれましたよー。師匠、腕落ちましたー？」

「黙りなさい。」



“師匠”と呼ばれた人物を見た瞬間、雲雀は武器を構える。


「君…」

「すみません、今は君と武器を交えている時ではないのです。」

「ホントすいませーん、師匠今、病み上がりなんでー……あ、確認ですけど、檸檬さんの彼氏さんですよねー？」


緩い口調の人物が、雲雀に向かってつらつらと喋る。



「ミーたち今から幻覚作るんで、ちょっと時間くれませんかー？」