未来編②
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獄寺の放った赤竜巻の矢は、それまで片腕で攻撃をいなしてきたザクロに初めて回避をさせた。
恐竜の皮膚を削る威力を持っていた獄寺の攻撃を、ザクロは回避せざるを得なかったのだ。
「逃がすかよ!!」
飛び跳ねてかわそうとしたザクロを追って照準を合わせようとした獄寺だが、突如感じる背中の痛み。
動きが鈍くなり、ザクロに攻撃を当て損ねてしまう。
「バーロー!こっちだ!!」
「くそっ…」
「遅ぇぞバーロー!!」
相手の動きに合わせた瞬時の方向転換ができない獄寺は、ザクロに翻弄され、そして…
ガッ、
殴り飛ばされ、宙へ浮いた。
激突
「おっと、俺としたことが、ザコ相手に本気になっちまったぜ。」
余裕の笑みで吹っ飛んだ獄寺を見るザクロ。
しかし、獄寺は空中からも弦を引く。
「果てろ!!ガトリング・アロー!!!」
「てめえっ!!」
両腕に2本ずつ嵐の矢が刺さるも、ザクロは怒りに任せてそれを粉砕する。
体にまとう嵐の炎がそれを可能にしているようだ。
「バーロー!!ぶっ殺してやる!!」
ザクロの怒りが頂点に達したのは、獄寺の計算の上だった。
そのまま真っ直ぐ突っ込んでくれば、確実にダメージを与えられる……という算段だったのだ。
しかし、その計算は早くも狂わされる。
「至近距離でぶっ放せば、勝てるとでも思ってんだろ?」
「(読まれてやがる…)」
「本気になればまともに食らっても屁でもないが、まんまと策略にハマるのは面白くねぇ。」
次の瞬間、ザクロはトップスピードで獄寺の背後に回った。
「あっけなく死ね!!」
「(しまった、後ろを取られた!!腰が回らねぇ、間に合わない!!くそっ…)」
後ろさえ向ければ、
後ろを向いてくれ、
獄寺が強く願った瞬間、Gの弓矢の右サイドから炎が大きく噴射した。
その勢いで、獄寺の体は180度の方向転換をする。
「(サンキュー相棒!!)」
「だとしても無駄だ!!消えろ!!」
「(この距離なら…果てろ!!)」
大きな爆発が、辺りを炎の海に、そして焼け野原へと変えた。
---
------
-----------
『あっ…』
「何?」
『大きな炎がぶつかってて、その波長がきたの…。』
「みたいだね、微かに爆発音もした。」
自分の横を走りながらそう答える雲雀を、檸檬はジッと見つめる。
「どうかした?檸檬。」
『…ううん、何でもないの。ただ…怖くて。』
「別に、無理やりあの妹と戦いに行かなくて…」
『違うの。怖いのは…戦うことじゃなくて……失うこと…』
「失う?」
雲雀は問い返してから、溜め息を一つ。
「まさか、僕が負けて死ぬとでも思ってるの?」
『可能性がゼロじゃない限り心配だし…!あたしだって…不安にもなるもん…』
強いことは知っているし、勝利を信じている。
しかし、拭いきれない不安はある。
「檸檬、少し止まって。」
『恭弥?』
立ち止まった檸檬の頭を、雲雀はそっと一撫でした。
ぽっと頬を紅潮させる檸檬に、優しい笑みを見せ、一言。
「君が死なない限り、僕は死なない。」
『えっ…』
聞き覚えのある“その言葉”は、檸檬の思考を一瞬停止させた。
が、言った当人は再び走り出す。
「だから、行くよ。」
『あ、ちょっ、待って恭弥…』
根拠はないけれど絶対信頼できる……
そう思わせてくれる魔法の呪文のような“その言葉”は、
メローネ基地突入前に、この時代の雲雀が檸檬に言ったものと全く同じ。
『(恭弥……おんなじ、なんだね……)』
前を走るその背を見つめ、檸檬は愛おしそうに微笑んだ。
『……って、ちょっと恭弥!どっち行くの!?ユニはこっち…』
「僕はムカつく奴らを咬み殺しに行くんだ。そっちは関係ないよ。」
『ええーっ!!?』
ツナやユニが待機しているであろう方向とは真逆……つまり、6弔花との戦いが行われている方向に、雲雀は走っていく。
檸檬は小さくため息をついて雲雀に呼びかけた。
『恭弥っ、』
立ち止まって振り向く雲雀に、とびきりの笑顔を見せて。
『恭弥が死なない限り、あたしも死なないよ!だから…お互い頑張ろーね♪』
「…うん。」
二人は、同時に反対方向へ駆け出した。
檸檬は、ツナやユニが待機している森の奥へ。
雲雀は、6弔花と守護者たちが戦っている地点へ。
戦いを終わらせ、因縁を断ち切り、平和な過去へ帰ることを、
暗黙の約束として。
『(大丈夫、頑張れる。あたしは蜜柑と…絶対に和解する…!)』
---
-------
-----------
煙が晴れ、ザクロはゆっくりと起きあがった。
ふと左半身に走る痛みに、目線を送る。
と…
「ぐあ"あ"あ"!!!」
左腕から左わき腹まで、ごっそりと無くなっていた。
獄寺の赤炎の矢の“分解”で削られていたのだ。
「くそぅあのガキィィ!!バァロォォオ!!!」
怒りのままに叫ぶザクロの十数メートル後方。
先ほどの攻撃の反動で吹っ飛んでいた獄寺は、ダメージにより上体を起こしきれていなかった。
しかし、そのままの体勢で照準をザクロに合わせる。
「(トドメだぜ…果てやがれ……)」
ところが、次の瞬間。
無数のアンモナイトが飛んでくる。
雨の炎を帯びたソレは、昨日川平不動産での襲撃でも使われていた……
ズォォォン!
爆発物を避けられないまま、獄寺はその場に倒れ込んだ。
---
------
-----------
森の奥。
ボンゴレ勢が拠点にしている広場は、周囲を岩壁に囲まれた広い窪地だった。
時折聞こえる爆発音に、ツナたちは不安になりながらもそちらの方向に顔を向けていた。
と、不意にリボーンが何かを察知したように後ろを向く。
「リボーン、どうかした?」
「らしくねぇな、コソコソ隠れるような真似なんて。」
ツナの問いかけに答えず、リボーンは岩壁の上の森に呼びかけた。
が、向こうからは返事どころか物音ひとつ返って来ない。
「おいリボーン、誰に向かって…」
「黙ってれば俺を誤魔化せると思ってんのか?お前の殺気はそう簡単に隠れるもんじゃねーぞ、蜜柑。」
「えぇっ!?」
蜜柑の名前が出たことに驚くツナ。
すると今度は、ガサッと音がして…
「さすが、アルコバレーノと言ったところかしら。」
「あっ…蜜柑さん…!!」
呼びかけられた人物が姿を現し、岩壁の上から降り立った。
ツナを始め、京子やハル、正一にフゥ太、そしてユニも驚く。
中でも京子は、一度だけ出会ったことがあったため、目を見開いた。
「あの時の…!」
「また会ってしまったわね。」
「はひ?京子ちゃん、知ってるんですか!?」
「う、うん…前に会った時ね、檸檬ちゃんに似てると思ったんだけど…ちょっと違う気がして……」
ハルに対して小さく答える京子。
と、寝かされていた正一が力を振り絞って起きあがる。
「蜜柑さん、まさか……ユニを捜しにここまで…!」
「それは6弔花の仕事。私には関係ない。」
「へ…?」
「だろーな。お前がここに来たのは、ユニを攫いに来たワケでも、俺たちを殺しにきたワケでもねーんだろ。」
リボーンの言葉に、蜜柑は無言を通した。
それは、肯定と捉えられるには充分だった。
「えっ、それじゃあ蜜柑さんはどうしてココに…」
「言ったハズです、貴女たちは戦うべきではないと。」
疑問符を浮かべるツナの横で、今度はユニが蜜柑に向かって口を開く。
それに対し蜜柑は、冷え切った湖面のような瞳で答えた。
「だから、何なの?」
「あなたが何を予知しているのかは知らないけれど、私はただ姉さんが憎いから殺そうとしているだけ。」
「ダメです!貴女たちは、2人で存在することに意味があるんです!」
「ふざけたこと抜かさないでくれる?」
右手中指のリングに炎を灯し、蜜柑は匣を一つ開匣する。
中から出てきたのは彼女専用の二丁拳銃。
その銃口の一つをユニに向け、蜜柑は続ける。
「誰に何を言われようと、運命は揺るがない。私は私のために姉さんを殺すわ。」
放たれる殺気に、ツナは思わず身震いをした。
京子とハル、そしてフゥ太もその尋常ではない雰囲気に息を呑む。
ユニも不安げな表情をしていたが、それは銃口を向けられていることに対してではなかった。
檸檬と蜜柑、“2人いなければならない存在”が、これから潰し合いを始めてしまうことに対する不安。
リボーンはそれを汲み取ったかのように言う。
「ユニ、大丈夫だぞ。」
「おじさま…」
「檸檬の心は、そんなにヤワじゃねぇ。」
「…はい。」
---
------
------------
爆発物が放たれた先を見上げたザクロは、そこに同じ真6弔花の姿を捉えた。
「ザクロなっさけなーい。迷子になったついでに助けちゃったわ。」
「ブルーベル!!」
「にゅ~ん♪」
ボロボロになり倒れる獄寺、γ、ラルを順に見て、ブルーベルは満足げに笑う。
「ざまーみろボンゴレー!めいっぱいトドメさーそお♪」
「待てバーロー!俺の獲物だ!!」
ザクロは自分の手柄を横取りされるのが不服で、ブルーベルに向かって怒鳴る。
彼はデイジーほどではないが再生能力を持ち、獄寺にやられた左腕周辺を完治させることができるのだ。
しかしブルーベルは「そんなの待ってられない」とマントを脱ぎ捨て修羅開匣をする。
彼女のいでたちは一見人魚のようだが、掛け合わされたのはやはり6500万年以上の怪物。
「さーて、ショニサウルスのパワーも掛け合わされた、ブルーベルの大技を見せてあげるわ。」
「待ちやがれバーロー!!7割は俺の手柄だ!!」
「にゅ…」
ザクロがあまりに激しく抗議するため、ブルーベルは横目で彼を見る。
そして、仕方なく手柄を一人占めしない方法を提示する。
「じゃあ同時に撃とうよ。」
「なに…!?」
ザクロは一瞬戸惑うが、こちらも仕方なく妥協した。
片腕ではフルパワーでトドメをさすことは出来ないが、同時撃ちならば仕留めることも可能だろう。
「よ~~し!ボンバ・アンモニーテ!!!いっちゃえー!!」
「烈火マグマ(マグマ・インフィアンマート)!!!」
ブルーベルが雨の炎から作り出した巨大なアンモナイト型の爆発物と、
ザクロが右手から噴射する強力な嵐の炎。
それらが同時に獄寺達へと襲いかかる。
「(クソ……動けねぇ…)」
先ほどのブルーベルによる不意打ちを食らい、獄寺は意識があるものの指一本動かせないでいた。
動くことが出来れば、SISTEMA C.A.Iのシールドを展開することが出来ただろう。
しかし今は、迫りくる敵の攻撃を見つめるのみ…
「(……10代目…スミマセン……)」
自分の意思を尊重して、信頼して送りだしてくれたツナ。
だが結局、敵を足止めしただけで倒すことができなかった…
そんな後悔に苛まれていた獄寺の耳に、突如聞こえてきたのは獅子の咆哮。
GAOOO!!!
すると、ブルーベルの放ったアンモナイトが瞬く間に石化し、粉々に砕ける。
同時に放たれていたザクロの大技も、雷エイの“硬化”シールドによって防がれた。
「にょ!?」
「何!!」
目を見開いたのはブルーベルとザクロだけではない。
獄寺も、突然腕を引かれ立ち上がらされたことに驚いていた。
「ガン首揃ってんじゃねーか……ドカス共。」
靡く黒いコート。
ピリピリと伝わる殺気。
独立暗殺部隊ヴァリアーが、参戦した。
---
------
------------
森の奥、リボーンとユニの会話を蜜柑は鼻で笑い飛ばした。
「姉さんを信じるとでも言うの?随分な大博打をするのね、アルコバレーノ・リボーン。」
「博打でも何でもねーぞ。檸檬は見つける、お前との和解の道をな。」
「…ママの未来視は絶対よ。姉さんの本能は私を殺したがっている。だから私が先に殺す。」
真剣な声色を崩さないリボーンに、蜜柑は更にドスのきいた声で返した。
「まぁ、もしかしたら姉さん、逃げたのかもね。森に入ったら真っ直ぐユニのいる場所に来ると踏んで先回りしたけれど……まだ来ないなんて。」
「いいえ、檸檬さんは来ます。」
「どうかしら。」
「檸檬さんは、貴女を避けたりしません。」
ユニがそう言ったその一瞬、蜜柑の表情が動いた。
それに気付き、京子はぽつりと呟く。
「…やっぱり、」
「はひ?」
「私…前に会った時も思ったの。蜜柑さん、まるでずーっと何かを後悔してるみたいな…そんな目をしてる……」
小さな会話だった。
しかし、五感の優れる蜜柑には容易に聞きとれていて、且つその言葉は彼女の神経を逆撫でする。
「またふざけたことを…!」
ユニに向けていた銃口を京子に向けた、その時。
『狙ってんのはあたしの命でしょ?』
突如、その場にいない人物の声が響く。
西側の岩壁の上からストッと降り立ったのは…
「檸檬!!」
「「檸檬ちゃん!!」」
「檸檬姉!」
ツナ、京子、ハル、そしてフゥ太が声をあげる。
全員に向かって笑顔を見せる檸檬。
『お待たせ、みんな♪それに…蜜柑も。』
「逃げたのかと思ったわ。」
『逃げないよ。今度こそ、ちゃんと決着つけよう。』
決意がこもった檸檬の眼差しに、蜜柑も妖しく口角を上げた。
恐竜の皮膚を削る威力を持っていた獄寺の攻撃を、ザクロは回避せざるを得なかったのだ。
「逃がすかよ!!」
飛び跳ねてかわそうとしたザクロを追って照準を合わせようとした獄寺だが、突如感じる背中の痛み。
動きが鈍くなり、ザクロに攻撃を当て損ねてしまう。
「バーロー!こっちだ!!」
「くそっ…」
「遅ぇぞバーロー!!」
相手の動きに合わせた瞬時の方向転換ができない獄寺は、ザクロに翻弄され、そして…
ガッ、
殴り飛ばされ、宙へ浮いた。
激突
「おっと、俺としたことが、ザコ相手に本気になっちまったぜ。」
余裕の笑みで吹っ飛んだ獄寺を見るザクロ。
しかし、獄寺は空中からも弦を引く。
「果てろ!!ガトリング・アロー!!!」
「てめえっ!!」
両腕に2本ずつ嵐の矢が刺さるも、ザクロは怒りに任せてそれを粉砕する。
体にまとう嵐の炎がそれを可能にしているようだ。
「バーロー!!ぶっ殺してやる!!」
ザクロの怒りが頂点に達したのは、獄寺の計算の上だった。
そのまま真っ直ぐ突っ込んでくれば、確実にダメージを与えられる……という算段だったのだ。
しかし、その計算は早くも狂わされる。
「至近距離でぶっ放せば、勝てるとでも思ってんだろ?」
「(読まれてやがる…)」
「本気になればまともに食らっても屁でもないが、まんまと策略にハマるのは面白くねぇ。」
次の瞬間、ザクロはトップスピードで獄寺の背後に回った。
「あっけなく死ね!!」
「(しまった、後ろを取られた!!腰が回らねぇ、間に合わない!!くそっ…)」
後ろさえ向ければ、
後ろを向いてくれ、
獄寺が強く願った瞬間、Gの弓矢の右サイドから炎が大きく噴射した。
その勢いで、獄寺の体は180度の方向転換をする。
「(サンキュー相棒!!)」
「だとしても無駄だ!!消えろ!!」
「(この距離なら…果てろ!!)」
大きな爆発が、辺りを炎の海に、そして焼け野原へと変えた。
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『あっ…』
「何?」
『大きな炎がぶつかってて、その波長がきたの…。』
「みたいだね、微かに爆発音もした。」
自分の横を走りながらそう答える雲雀を、檸檬はジッと見つめる。
「どうかした?檸檬。」
『…ううん、何でもないの。ただ…怖くて。』
「別に、無理やりあの妹と戦いに行かなくて…」
『違うの。怖いのは…戦うことじゃなくて……失うこと…』
「失う?」
雲雀は問い返してから、溜め息を一つ。
「まさか、僕が負けて死ぬとでも思ってるの?」
『可能性がゼロじゃない限り心配だし…!あたしだって…不安にもなるもん…』
強いことは知っているし、勝利を信じている。
しかし、拭いきれない不安はある。
「檸檬、少し止まって。」
『恭弥?』
立ち止まった檸檬の頭を、雲雀はそっと一撫でした。
ぽっと頬を紅潮させる檸檬に、優しい笑みを見せ、一言。
「君が死なない限り、僕は死なない。」
『えっ…』
聞き覚えのある“その言葉”は、檸檬の思考を一瞬停止させた。
が、言った当人は再び走り出す。
「だから、行くよ。」
『あ、ちょっ、待って恭弥…』
根拠はないけれど絶対信頼できる……
そう思わせてくれる魔法の呪文のような“その言葉”は、
メローネ基地突入前に、この時代の雲雀が檸檬に言ったものと全く同じ。
『(恭弥……おんなじ、なんだね……)』
前を走るその背を見つめ、檸檬は愛おしそうに微笑んだ。
『……って、ちょっと恭弥!どっち行くの!?ユニはこっち…』
「僕はムカつく奴らを咬み殺しに行くんだ。そっちは関係ないよ。」
『ええーっ!!?』
ツナやユニが待機しているであろう方向とは真逆……つまり、6弔花との戦いが行われている方向に、雲雀は走っていく。
檸檬は小さくため息をついて雲雀に呼びかけた。
『恭弥っ、』
立ち止まって振り向く雲雀に、とびきりの笑顔を見せて。
『恭弥が死なない限り、あたしも死なないよ!だから…お互い頑張ろーね♪』
「…うん。」
二人は、同時に反対方向へ駆け出した。
檸檬は、ツナやユニが待機している森の奥へ。
雲雀は、6弔花と守護者たちが戦っている地点へ。
戦いを終わらせ、因縁を断ち切り、平和な過去へ帰ることを、
暗黙の約束として。
『(大丈夫、頑張れる。あたしは蜜柑と…絶対に和解する…!)』
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煙が晴れ、ザクロはゆっくりと起きあがった。
ふと左半身に走る痛みに、目線を送る。
と…
「ぐあ"あ"あ"!!!」
左腕から左わき腹まで、ごっそりと無くなっていた。
獄寺の赤炎の矢の“分解”で削られていたのだ。
「くそぅあのガキィィ!!バァロォォオ!!!」
怒りのままに叫ぶザクロの十数メートル後方。
先ほどの攻撃の反動で吹っ飛んでいた獄寺は、ダメージにより上体を起こしきれていなかった。
しかし、そのままの体勢で照準をザクロに合わせる。
「(トドメだぜ…果てやがれ……)」
ところが、次の瞬間。
無数のアンモナイトが飛んでくる。
雨の炎を帯びたソレは、昨日川平不動産での襲撃でも使われていた……
ズォォォン!
爆発物を避けられないまま、獄寺はその場に倒れ込んだ。
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森の奥。
ボンゴレ勢が拠点にしている広場は、周囲を岩壁に囲まれた広い窪地だった。
時折聞こえる爆発音に、ツナたちは不安になりながらもそちらの方向に顔を向けていた。
と、不意にリボーンが何かを察知したように後ろを向く。
「リボーン、どうかした?」
「らしくねぇな、コソコソ隠れるような真似なんて。」
ツナの問いかけに答えず、リボーンは岩壁の上の森に呼びかけた。
が、向こうからは返事どころか物音ひとつ返って来ない。
「おいリボーン、誰に向かって…」
「黙ってれば俺を誤魔化せると思ってんのか?お前の殺気はそう簡単に隠れるもんじゃねーぞ、蜜柑。」
「えぇっ!?」
蜜柑の名前が出たことに驚くツナ。
すると今度は、ガサッと音がして…
「さすが、アルコバレーノと言ったところかしら。」
「あっ…蜜柑さん…!!」
呼びかけられた人物が姿を現し、岩壁の上から降り立った。
ツナを始め、京子やハル、正一にフゥ太、そしてユニも驚く。
中でも京子は、一度だけ出会ったことがあったため、目を見開いた。
「あの時の…!」
「また会ってしまったわね。」
「はひ?京子ちゃん、知ってるんですか!?」
「う、うん…前に会った時ね、檸檬ちゃんに似てると思ったんだけど…ちょっと違う気がして……」
ハルに対して小さく答える京子。
と、寝かされていた正一が力を振り絞って起きあがる。
「蜜柑さん、まさか……ユニを捜しにここまで…!」
「それは6弔花の仕事。私には関係ない。」
「へ…?」
「だろーな。お前がここに来たのは、ユニを攫いに来たワケでも、俺たちを殺しにきたワケでもねーんだろ。」
リボーンの言葉に、蜜柑は無言を通した。
それは、肯定と捉えられるには充分だった。
「えっ、それじゃあ蜜柑さんはどうしてココに…」
「言ったハズです、貴女たちは戦うべきではないと。」
疑問符を浮かべるツナの横で、今度はユニが蜜柑に向かって口を開く。
それに対し蜜柑は、冷え切った湖面のような瞳で答えた。
「だから、何なの?」
「あなたが何を予知しているのかは知らないけれど、私はただ姉さんが憎いから殺そうとしているだけ。」
「ダメです!貴女たちは、2人で存在することに意味があるんです!」
「ふざけたこと抜かさないでくれる?」
右手中指のリングに炎を灯し、蜜柑は匣を一つ開匣する。
中から出てきたのは彼女専用の二丁拳銃。
その銃口の一つをユニに向け、蜜柑は続ける。
「誰に何を言われようと、運命は揺るがない。私は私のために姉さんを殺すわ。」
放たれる殺気に、ツナは思わず身震いをした。
京子とハル、そしてフゥ太もその尋常ではない雰囲気に息を呑む。
ユニも不安げな表情をしていたが、それは銃口を向けられていることに対してではなかった。
檸檬と蜜柑、“2人いなければならない存在”が、これから潰し合いを始めてしまうことに対する不安。
リボーンはそれを汲み取ったかのように言う。
「ユニ、大丈夫だぞ。」
「おじさま…」
「檸檬の心は、そんなにヤワじゃねぇ。」
「…はい。」
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爆発物が放たれた先を見上げたザクロは、そこに同じ真6弔花の姿を捉えた。
「ザクロなっさけなーい。迷子になったついでに助けちゃったわ。」
「ブルーベル!!」
「にゅ~ん♪」
ボロボロになり倒れる獄寺、γ、ラルを順に見て、ブルーベルは満足げに笑う。
「ざまーみろボンゴレー!めいっぱいトドメさーそお♪」
「待てバーロー!俺の獲物だ!!」
ザクロは自分の手柄を横取りされるのが不服で、ブルーベルに向かって怒鳴る。
彼はデイジーほどではないが再生能力を持ち、獄寺にやられた左腕周辺を完治させることができるのだ。
しかしブルーベルは「そんなの待ってられない」とマントを脱ぎ捨て修羅開匣をする。
彼女のいでたちは一見人魚のようだが、掛け合わされたのはやはり6500万年以上の怪物。
「さーて、ショニサウルスのパワーも掛け合わされた、ブルーベルの大技を見せてあげるわ。」
「待ちやがれバーロー!!7割は俺の手柄だ!!」
「にゅ…」
ザクロがあまりに激しく抗議するため、ブルーベルは横目で彼を見る。
そして、仕方なく手柄を一人占めしない方法を提示する。
「じゃあ同時に撃とうよ。」
「なに…!?」
ザクロは一瞬戸惑うが、こちらも仕方なく妥協した。
片腕ではフルパワーでトドメをさすことは出来ないが、同時撃ちならば仕留めることも可能だろう。
「よ~~し!ボンバ・アンモニーテ!!!いっちゃえー!!」
「烈火マグマ(マグマ・インフィアンマート)!!!」
ブルーベルが雨の炎から作り出した巨大なアンモナイト型の爆発物と、
ザクロが右手から噴射する強力な嵐の炎。
それらが同時に獄寺達へと襲いかかる。
「(クソ……動けねぇ…)」
先ほどのブルーベルによる不意打ちを食らい、獄寺は意識があるものの指一本動かせないでいた。
動くことが出来れば、SISTEMA C.A.Iのシールドを展開することが出来ただろう。
しかし今は、迫りくる敵の攻撃を見つめるのみ…
「(……10代目…スミマセン……)」
自分の意思を尊重して、信頼して送りだしてくれたツナ。
だが結局、敵を足止めしただけで倒すことができなかった…
そんな後悔に苛まれていた獄寺の耳に、突如聞こえてきたのは獅子の咆哮。
GAOOO!!!
すると、ブルーベルの放ったアンモナイトが瞬く間に石化し、粉々に砕ける。
同時に放たれていたザクロの大技も、雷エイの“硬化”シールドによって防がれた。
「にょ!?」
「何!!」
目を見開いたのはブルーベルとザクロだけではない。
獄寺も、突然腕を引かれ立ち上がらされたことに驚いていた。
「ガン首揃ってんじゃねーか……ドカス共。」
靡く黒いコート。
ピリピリと伝わる殺気。
独立暗殺部隊ヴァリアーが、参戦した。
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森の奥、リボーンとユニの会話を蜜柑は鼻で笑い飛ばした。
「姉さんを信じるとでも言うの?随分な大博打をするのね、アルコバレーノ・リボーン。」
「博打でも何でもねーぞ。檸檬は見つける、お前との和解の道をな。」
「…ママの未来視は絶対よ。姉さんの本能は私を殺したがっている。だから私が先に殺す。」
真剣な声色を崩さないリボーンに、蜜柑は更にドスのきいた声で返した。
「まぁ、もしかしたら姉さん、逃げたのかもね。森に入ったら真っ直ぐユニのいる場所に来ると踏んで先回りしたけれど……まだ来ないなんて。」
「いいえ、檸檬さんは来ます。」
「どうかしら。」
「檸檬さんは、貴女を避けたりしません。」
ユニがそう言ったその一瞬、蜜柑の表情が動いた。
それに気付き、京子はぽつりと呟く。
「…やっぱり、」
「はひ?」
「私…前に会った時も思ったの。蜜柑さん、まるでずーっと何かを後悔してるみたいな…そんな目をしてる……」
小さな会話だった。
しかし、五感の優れる蜜柑には容易に聞きとれていて、且つその言葉は彼女の神経を逆撫でする。
「またふざけたことを…!」
ユニに向けていた銃口を京子に向けた、その時。
『狙ってんのはあたしの命でしょ?』
突如、その場にいない人物の声が響く。
西側の岩壁の上からストッと降り立ったのは…
「檸檬!!」
「「檸檬ちゃん!!」」
「檸檬姉!」
ツナ、京子、ハル、そしてフゥ太が声をあげる。
全員に向かって笑顔を見せる檸檬。
『お待たせ、みんな♪それに…蜜柑も。』
「逃げたのかと思ったわ。」
『逃げないよ。今度こそ、ちゃんと決着つけよう。』
決意がこもった檸檬の眼差しに、蜜柑も妖しく口角を上げた。