未来編②
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「最後の戦い?」
「はい。」
聞き返すツナに説明するユニ。
「白蘭も焦っています。この戦いに全てを懸けてきます。」
「その予知は…確かなんだろうな…」
「勝敗は…予知できないのかい?」
ラルに対して頷いたユニだが、正一の問いには首を振った。
「私が昔から見ていたのは、皆さんとこうして話す光景と、この森で戦いが始まる様子までです……」
「え?この光景を知ってたの…?」
目を丸くするツナの横から、ハルが不安そうに尋ねた。
「あ、あの……戦いに勝ったら…私たち、元の世界へ戻れるんでしょうか?」
「白蘭は他のパラレルワールドの自分と考えや知識を共有できますが、裏を返せば全て繋がっていて実体は一つしかない、ということなんです。」
「実体は一つ……」
「つまり、一人を倒せば全てが消滅する。もう恐ろしい未来の待つことのない、平和な過去へ帰れるはずです。」
ユニの答えを聞き、喜ぶハル、京子、イーピン、クローム。
「最大のピンチは最大のチャンスでもあるワケだな。」
「この戦いに勝てば、ついに皆で平和な過去へ帰れる…!!」
夜明け
「勝てば、だがな。」
「なっ!嫌な言い方!!」
ラルの冷静なツッコミに、リボーンも同意する。
「今んとこ何とかボンゴレ匣で凌げているが、奴らの力はあんなもんじゃねぇはずだ。厳しい戦いになるぞ。」
「ひいっ!……ていうか…夜明け? 夜明けって……考えてみたらほとんど時間ないじゃん!!」
「今さら何言ってんだ、バカ。」
「作戦も何も考えてないしヤバいよ~~!!」
突如焦り始めるツナに、γ、太猿、野猿は疑問符を浮かべる。
「姫を救ったのと同じ男とは思えねーな……どーなってんだ?」
「10代目は分かりやすく現状を説明してくださってんだ!」
「ふむ……こういう守りの作戦を立てるのは、入江正一・元メローネ基地隊長が向いてるんじゃねーのか?」
「え!?ぼ、僕!?」
「ふざけんな!!作戦を立てるのは10代目だ!!」
「獄寺君の言う通りだ。僕はチョイスで失敗していてその資格はない。この戦いはボンゴレのボスである綱吉君が決めるべきだ。」
ところがツナ本人はボスじゃないと慌てふためき、リボーンに銃を向けられる。
γのコメントに獄寺が噛みつくように突っかかり、京子とユニがそれぞれクスッと笑みをこぼした。
「じゃあ、あの…一緒に作戦を立ててくれませんか、正一君!力を貸してほしいんです!!」
「うん。ボスの命令ってことなら、喜んで協力させてもらうよ。」
正一はゆっくりと起き上がり、みんなに向けて話し始める。
「ではまず今の戦力の確認だけど、負傷をしていて前線で戦えそうにないのが、獄寺君にバジル君、ラル・ミルチに了平君に、野猿に太猿だね。」
「いいや!!」
「俺たちは戦えるぞ!!」
「何のこれしき!!」
「うるせぇぞ。」
前線で戦えない、と言われたメンバーが騒ぐのを、リボーンが銃声一発で黙らせる。
入江は苦笑して、次に匣兵器の確認に入った。
---
------
----------
“第六感に希望がある”
“自分はそう信じてる”――……
檸檬が放ったその力強い言葉に、戸惑いを隠せないカシス。
カシスにとって檸檬は、これまでの能力者と違った存在であった。
10年後の世界で第六感を完成させた檸檬とも、全く違う存在。
『第六感を使ってみんなを護る。それで、一緒に過去に帰ってまたみんなで笑える日常を取り戻す。それを、あなたとの約束にしたい。』
「私との、約束…?」
大きく頷き、カシスの手を取る檸檬。
『だから、あたしから第六感を奪わないで欲しいの。あたしにはまだ、この力が必要なの。』
「けれど力を使い続ければ、いつか必ず貴女は……」
『一回でいい!あたしを……あなたの直系子孫であるあたしを信じて!チャンスをちょうだい!』
檸檬の真剣な眼差しに、カシスは思わず目を逸らした。
もう既に檸檬の第六感のレベルは、かなり高い所まで来ている。
ここで止めなければ、檸檬から力を取り上げなければ、強くなりすぎた力が悲劇を引き起こすかも知れない。
しかし……
「…1つ、条件があるわ。」
『条件?』
尋ね返す檸檬に、カシスはゆっくりと頷いた。
「貴女が第六感で笑顔を生み出せるというなら、私はその瞬間を見てみたい……だから、代償は取らないでいてあげる。」
『ホントに…!?ありがとう!あたし、絶対に…』
「だけど、私との契約の証は必要よ。」
『契約の…証って……?』
戸惑う檸檬と真っ直ぐ向き合ったカシスは、スッと手を伸ばし、人差し指を檸檬の左目に向けた。
「左目の視力を、差し出してもらうわ。」
『し、視力を…!?ちょっと待って!それじゃこの時代のあたしと変わらな……』
「誤解しないで。見えなくなるのは左目だけ、右目はこれまでと同じく普通の世界を見れるわ。」
檸檬の力が自分を超え得るものであると、カシスは感じ取っていた。
それゆえ、背負うリスクやリバウンドの大きさも、自分が体感してきた比ではなくなるだろう…と。
これまでカシスがしてきたことは、第六感を目覚めさせた能力者が驕らないための警告だった。
警告に怯えた能力者からは第六感を奪い、動じずに力を保持し続けようとした者からは代償を取ってきた。
「私は…貴女が証明してくれると信じたい……けれど、このまま力を使い続ければ確実に、証明する前に貴女が壊れるわ。私に出来ることは…力の発動の際にかかる負荷を減らすことだけ。」
『それで…左目の視力を…?』
「片方の目から視力が無くなれば、当然第六感が左の視野をカバーする。常に左目で波長を視ていることで、発動するたびに負荷がかかることはなくなるの。」
『左目で常に波長を視る、か……』
「私の目的は第六感の断絶よ。けれど貴女の証明には興味が湧いた。私が成しえなかったこと、成し遂げてみせて頂戴。そして、この契約がなされた証として、左目の視力を差し出して。」
檸檬は緊張のあまり息を呑んだ。
しかし不思議と、安堵している自分がいることに気付く。
失うのは、左目だけ。
右目があれば、第六感を使って戦った後、笑顔になったみんなを見ることが出来る……
自分の中にある希望は、まだ潰えていないのだ。
でも少し、申し訳ない気持ちもあった。
あの我が儘王子はきっと、この決断に、契約に、ムッとしてしまうのだろう。
『……分かった。左目の視力、持ってってよ。』
そう答えた瞬間、カシスの人差し指が檸檬の左瞼に触れた。
優しくひんやりとした指を感じた直後、檸檬の意識は深い闇の中に潜り込んでいく。
途中、カシスの声が響いた。
「私は貴女の先祖だから、貴女の血の中に生きている……貴女のことを、貴女の中で見ているわ……――」
---
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-----------
匣確認がてら、雨イルカによるブレインコーティングをすることにしたツナ達。
ブレインコーティングをすることで、コンビネーション必殺技を生み出せるという。
γの提案で、全員が匣兵器を開匣した。
ツナの天空ライオンVer.V、ナッツ。
獄寺の嵐猫Ver.V、瓜。
バジルの雨イルカ、アルフィン。
クロームの霧フクロウVer.V、ムクロウ。
ランボの雷牛Ver.V、牛丼。
了平の晴カンガルーVer.V、漢我流。
ラルの雲ムカデ、ザムザ。
γの黒狐、コルルとビジェット。
「わぁー!さすがにこれだけ揃うと壮観だねー!」
「山本や雲雀さん、それに檸檬のもいないけど……」
「あとは雨イルカがブレインコーティング用の技をかけるだけだ。」
「はい!では行きます!!」
バジルが早速始めようとしたのだが、ナッツがツナの後ろに隠れて動こうとしない。
なんでも、戦う時以外はメチャクチャ臆病なのだという。
「ナッツの奴、どこからどこまでダメツナそっくりだな。」
「と…とにかく…この戦力でユニを守る作戦をしっかり練ろう。」
ツナに呼びかける入江だが、ナッツと瓜のじゃれあいに巻き込まれたツナには聞こえていない様子。
「綱吉君!!」
「は、ハイ!!」
その光景を見て呆れるγだったが、ユニは「ここまで来れたのは、この明るさあってこそだ」と微笑む。
そんなユニに、ラルは自分が持っていたコロネロのおしゃぶりを預けた。
そして、γはリボーンに呼び出され“ある重要な話”をされることになる。
---
------
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『ん……』
随分長い間、眠っていたような気がする。
カシス……本当にあたし、彼女と話してたのかな…?
「檸檬、遅い。」
『あっ…恭弥……』
声のした方を向くと、ムスッとした恭弥の顔。
手を強く握られてたみたいで、感触がまだ残ってる。
『ごめんね、お待たせ。』
笑ってみたけど、恭弥はムスッとしたまま。
急に倒れて眠りっ放しだったんだもんね、仕方ないか。
言わなくちゃ。
夢の中で、カシスに会ったこと。
あたしが、彼女と結んだ約束のこと。
『あのね……言わなくちゃ、いけないことがあるんだけど…』
「…うん。」
視界の違和感が、教えてくれる。
あの夢は、“現実”だったんだって。
あたしは確かに、左目の視力を失ったんだって。
『カシスと、話してきた。彼女はあたしの直系先祖で、その魂はあたしの血の中に生きてる。』
恭弥は、起きあがったあたしの隣に座って、静かに聞いてくれた。
カシスが第六感を断絶させようとしていること、
この時代のあたしは、カシスによって視力を奪われたこと、
そして………
『約束してきたの、カシスと。第六感を使って、みんなを平和な過去に戻す手助けをするって。笑顔を取り戻すために、あたしは力を使うって。そしたら、さ……その…』
何て言ったらいいのかな。
どんな言い方しても、きっと恭弥は怒るよね。
でも、もう夜明けが来る。
その前に伝えなくちゃ。
『左目だけは波長専用にしなさい、みたいなことになっちゃって…』
「専用…?」
『あのね、リバウンドを抑えるのと、発動負荷をかけないためなの、だから…』
「片目、見えなくなったってことだよね。」
『…うん……』
流れる沈黙。
気まず過ぎて、あたしは俯いたまま膝の上で拳を握った。
この時代のあたしが、恭弥を傷つけて突き放してしまったように……あたしも…
「……そんなことだと思った。」
『え…?』
「檸檬は僕を、少し甘く見てるんじゃない?」
『そ、そんなこと…』
「この時代の僕が、何も調べてないと思った?」
『調べる、って……第六感のこと…!?』
まるで、分かってたみたいに口ぶりの恭弥に、あたしは驚きを隠せなかった。
確かにあたしは、未来の自分が視力を失ったことを話した。
だけど、それがカシスの影響だってことは、あたし自身すらさっき知ったことだし……
「この時代の檸檬が一人で姿を消してから、色々と資料を集めてたみたいでね。ここに残ってたよ。」
応接室の鍵付き金庫の奥に、隠し空間が。
この時代の恭弥は、入れ替わった恭弥が応接室に来るって予想して…敢えてここに隠した。
あたしの力に関する、資料の数々を。
恭弥が見せてくれた1冊のファイル。
表紙には、“檸檬の異変に関して”と書いてあった。
中身を見て、更に驚く。
未来視ができるあたしのお母さんのことから、その家系を遡って、第六感やそれに似た力を使う人間についての資料ばかりだった。
「第六感を使ったり波長を視る人間には、必ず身体的な“欠陥”がランダムに生じてる。それも、生態バランス的じゃなくて、人為的にね。」
『じゃあ、恭弥……チョイスの前から知ってたの…?この時代のあたしが視界を閉ざされたのは、カシスの影響だって…』
「そのファイル、檸檬のことだけ資料がないでしょ。だから、この時代の檸檬に何が起きたかは、君に聞いて初めて知った。」
見れば確かに、お母さんから前の世代の資料しか無い。
この時代の恭弥は……あたしが視力を失った原因を、究明するために……
「だから、薄々勘付いてたよ。檸檬がどんなに慎重に修業しても、いずれ何かが起こるって。けど、止めたところで君は聞かない。」
『恭弥……』
「それにね、」
そこで恭弥は、ぎゅっとあたしを抱き寄せる。
自然とあたしも抱きしめ返して、続きを待った。
「…檸檬なら、同じ道は歩まない……そう、思ったから。」
目が熱くなって、思わず恭弥の胸に額を預けた。
どうしよう、言葉が何も、浮かばない。
『…あり、がとう……』
今、この瞬間、そればかりが溢れてる。
怒らないでいてくれて、ありがとう。
待っててくれて、ありがとう。
信じてくれて、本当にありがとう。
「ただ……左目のことは、納得いかないけど。」
『し、仕方なかったの!あの時は…カシスを説得するので精一杯で……こ、この時代のあたしよりは、マシな結果になったもん!』
開き直ってそっぽを向くと、恭弥は溜め息をついて、あたしを抱きしめ直した。
「……“この時代の僕たち”よりは、マシかもね。」
『でしょ!』
すれ違い続けて、離れ離れになることもなかった。
あたしは、恭弥の傍にいることが出来てる。
「それでも納得いかない。」
『…我が儘王子……』
「何か言った?」
『い、言ってな………!!?』
慌てて上を向いた瞬間、唇が重なって、塞がれた。
もう、恭弥には敵わないよ。
優しい唇は、数秒くっついて、ゆっくりと離れる。
『……不意打ち、ズルい。』
「檸檬が可愛かったから。」
『そ、そーゆーコト言うのもズルいよ…』
ぼそぼそと返すあたしに、恭弥は満足そうに微笑した。
あたしは、恭弥の傍にいるだけでこんなに幸せな気持ちになれる。
だから…頑張るよ。
絶対に絶対に、無駄にしない。
あたしを信じてくれた恭弥のためにも、
負荷をなくしてくれたカシスのためにも、
蜜柑と、決着をつけるから。
---
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-----------
ルーティンワークのように、夜が明けた。
森の中に移動した私たちは、ボンゴレの連中に悟られないよう、ユニの潜伏場所から5キロの地点で待機していた。
「いよいよだね、ユニちゃんゲットの時。ボンゴレとの遊びはこれで終わりにしよう。」
「ハッ!」
桔梗が立てた作戦は、3方向から桔梗・ブルーベル・ザクロが同時にユニの確保に向かう、というもの。
白蘭は、ユニが無事なら全力を出しても構わない、と言った。
「それと、ダークに関してですが、川平不動産では姿を見ませんでした。いずれ合流するかと。」
「そっかー、どうする?蜜柑。」
「森と町の境界付近でマーが集音しています。ダークがこの森に現れ次第、私が迎撃を。」
「なら大丈夫だね。それじゃあみんな、行ってらっしゃい♪」
3人が、一斉に各方向へと駆け出した。
ボンゴレ匣が未知なる武器とは言え、もって十数分。
“彼らの修羅開匣”には及ばない。
「ふふっ、楽しみだなぁ♪ようやく世界が僕のものになる。」
「そうですね。」
楽しみ、という言葉とは違ったかも知れない。
けれど私はその時、いつもより自分の脈が速くなっているのを感じた。
やっと……やっと、決着がつく。
今日、この森で、私が姉さんを殺してみせる。
それが、私たちの運命なのだから。
---
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「(バーロー、一番乗りだぜ!!)」
的確に自分のルートを進んできたザクロだが、ピンと張られていた糸にかかる。
それは、相手側の攻撃開始の合図になり……
どこからか放たれた雲ムカデが彼に巻き付き、身動きを取れなくさせる。
続いてそこに、2匹の黒狐がコンビネーションアタックを叩きこむ。
血反吐を吐いたザクロに、ダメ押しの赤炎の矢。
それらの攻撃を放ったラル、γ、獄寺は、それぞれに手ごたえを感じていた。
……が、雄たけびをあげながらもザクロはマーレリングに炎を灯して。
「俺はデイジーやトリカブトとは…格が違うぜ!バーロー!!」
胸に埋め込まれた匣に、炎を注入した。
「はい。」
聞き返すツナに説明するユニ。
「白蘭も焦っています。この戦いに全てを懸けてきます。」
「その予知は…確かなんだろうな…」
「勝敗は…予知できないのかい?」
ラルに対して頷いたユニだが、正一の問いには首を振った。
「私が昔から見ていたのは、皆さんとこうして話す光景と、この森で戦いが始まる様子までです……」
「え?この光景を知ってたの…?」
目を丸くするツナの横から、ハルが不安そうに尋ねた。
「あ、あの……戦いに勝ったら…私たち、元の世界へ戻れるんでしょうか?」
「白蘭は他のパラレルワールドの自分と考えや知識を共有できますが、裏を返せば全て繋がっていて実体は一つしかない、ということなんです。」
「実体は一つ……」
「つまり、一人を倒せば全てが消滅する。もう恐ろしい未来の待つことのない、平和な過去へ帰れるはずです。」
ユニの答えを聞き、喜ぶハル、京子、イーピン、クローム。
「最大のピンチは最大のチャンスでもあるワケだな。」
「この戦いに勝てば、ついに皆で平和な過去へ帰れる…!!」
夜明け
「勝てば、だがな。」
「なっ!嫌な言い方!!」
ラルの冷静なツッコミに、リボーンも同意する。
「今んとこ何とかボンゴレ匣で凌げているが、奴らの力はあんなもんじゃねぇはずだ。厳しい戦いになるぞ。」
「ひいっ!……ていうか…夜明け? 夜明けって……考えてみたらほとんど時間ないじゃん!!」
「今さら何言ってんだ、バカ。」
「作戦も何も考えてないしヤバいよ~~!!」
突如焦り始めるツナに、γ、太猿、野猿は疑問符を浮かべる。
「姫を救ったのと同じ男とは思えねーな……どーなってんだ?」
「10代目は分かりやすく現状を説明してくださってんだ!」
「ふむ……こういう守りの作戦を立てるのは、入江正一・元メローネ基地隊長が向いてるんじゃねーのか?」
「え!?ぼ、僕!?」
「ふざけんな!!作戦を立てるのは10代目だ!!」
「獄寺君の言う通りだ。僕はチョイスで失敗していてその資格はない。この戦いはボンゴレのボスである綱吉君が決めるべきだ。」
ところがツナ本人はボスじゃないと慌てふためき、リボーンに銃を向けられる。
γのコメントに獄寺が噛みつくように突っかかり、京子とユニがそれぞれクスッと笑みをこぼした。
「じゃあ、あの…一緒に作戦を立ててくれませんか、正一君!力を貸してほしいんです!!」
「うん。ボスの命令ってことなら、喜んで協力させてもらうよ。」
正一はゆっくりと起き上がり、みんなに向けて話し始める。
「ではまず今の戦力の確認だけど、負傷をしていて前線で戦えそうにないのが、獄寺君にバジル君、ラル・ミルチに了平君に、野猿に太猿だね。」
「いいや!!」
「俺たちは戦えるぞ!!」
「何のこれしき!!」
「うるせぇぞ。」
前線で戦えない、と言われたメンバーが騒ぐのを、リボーンが銃声一発で黙らせる。
入江は苦笑して、次に匣兵器の確認に入った。
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“第六感に希望がある”
“自分はそう信じてる”――……
檸檬が放ったその力強い言葉に、戸惑いを隠せないカシス。
カシスにとって檸檬は、これまでの能力者と違った存在であった。
10年後の世界で第六感を完成させた檸檬とも、全く違う存在。
『第六感を使ってみんなを護る。それで、一緒に過去に帰ってまたみんなで笑える日常を取り戻す。それを、あなたとの約束にしたい。』
「私との、約束…?」
大きく頷き、カシスの手を取る檸檬。
『だから、あたしから第六感を奪わないで欲しいの。あたしにはまだ、この力が必要なの。』
「けれど力を使い続ければ、いつか必ず貴女は……」
『一回でいい!あたしを……あなたの直系子孫であるあたしを信じて!チャンスをちょうだい!』
檸檬の真剣な眼差しに、カシスは思わず目を逸らした。
もう既に檸檬の第六感のレベルは、かなり高い所まで来ている。
ここで止めなければ、檸檬から力を取り上げなければ、強くなりすぎた力が悲劇を引き起こすかも知れない。
しかし……
「…1つ、条件があるわ。」
『条件?』
尋ね返す檸檬に、カシスはゆっくりと頷いた。
「貴女が第六感で笑顔を生み出せるというなら、私はその瞬間を見てみたい……だから、代償は取らないでいてあげる。」
『ホントに…!?ありがとう!あたし、絶対に…』
「だけど、私との契約の証は必要よ。」
『契約の…証って……?』
戸惑う檸檬と真っ直ぐ向き合ったカシスは、スッと手を伸ばし、人差し指を檸檬の左目に向けた。
「左目の視力を、差し出してもらうわ。」
『し、視力を…!?ちょっと待って!それじゃこの時代のあたしと変わらな……』
「誤解しないで。見えなくなるのは左目だけ、右目はこれまでと同じく普通の世界を見れるわ。」
檸檬の力が自分を超え得るものであると、カシスは感じ取っていた。
それゆえ、背負うリスクやリバウンドの大きさも、自分が体感してきた比ではなくなるだろう…と。
これまでカシスがしてきたことは、第六感を目覚めさせた能力者が驕らないための警告だった。
警告に怯えた能力者からは第六感を奪い、動じずに力を保持し続けようとした者からは代償を取ってきた。
「私は…貴女が証明してくれると信じたい……けれど、このまま力を使い続ければ確実に、証明する前に貴女が壊れるわ。私に出来ることは…力の発動の際にかかる負荷を減らすことだけ。」
『それで…左目の視力を…?』
「片方の目から視力が無くなれば、当然第六感が左の視野をカバーする。常に左目で波長を視ていることで、発動するたびに負荷がかかることはなくなるの。」
『左目で常に波長を視る、か……』
「私の目的は第六感の断絶よ。けれど貴女の証明には興味が湧いた。私が成しえなかったこと、成し遂げてみせて頂戴。そして、この契約がなされた証として、左目の視力を差し出して。」
檸檬は緊張のあまり息を呑んだ。
しかし不思議と、安堵している自分がいることに気付く。
失うのは、左目だけ。
右目があれば、第六感を使って戦った後、笑顔になったみんなを見ることが出来る……
自分の中にある希望は、まだ潰えていないのだ。
でも少し、申し訳ない気持ちもあった。
あの我が儘王子はきっと、この決断に、契約に、ムッとしてしまうのだろう。
『……分かった。左目の視力、持ってってよ。』
そう答えた瞬間、カシスの人差し指が檸檬の左瞼に触れた。
優しくひんやりとした指を感じた直後、檸檬の意識は深い闇の中に潜り込んでいく。
途中、カシスの声が響いた。
「私は貴女の先祖だから、貴女の血の中に生きている……貴女のことを、貴女の中で見ているわ……――」
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匣確認がてら、雨イルカによるブレインコーティングをすることにしたツナ達。
ブレインコーティングをすることで、コンビネーション必殺技を生み出せるという。
γの提案で、全員が匣兵器を開匣した。
ツナの天空ライオンVer.V、ナッツ。
獄寺の嵐猫Ver.V、瓜。
バジルの雨イルカ、アルフィン。
クロームの霧フクロウVer.V、ムクロウ。
ランボの雷牛Ver.V、牛丼。
了平の晴カンガルーVer.V、漢我流。
ラルの雲ムカデ、ザムザ。
γの黒狐、コルルとビジェット。
「わぁー!さすがにこれだけ揃うと壮観だねー!」
「山本や雲雀さん、それに檸檬のもいないけど……」
「あとは雨イルカがブレインコーティング用の技をかけるだけだ。」
「はい!では行きます!!」
バジルが早速始めようとしたのだが、ナッツがツナの後ろに隠れて動こうとしない。
なんでも、戦う時以外はメチャクチャ臆病なのだという。
「ナッツの奴、どこからどこまでダメツナそっくりだな。」
「と…とにかく…この戦力でユニを守る作戦をしっかり練ろう。」
ツナに呼びかける入江だが、ナッツと瓜のじゃれあいに巻き込まれたツナには聞こえていない様子。
「綱吉君!!」
「は、ハイ!!」
その光景を見て呆れるγだったが、ユニは「ここまで来れたのは、この明るさあってこそだ」と微笑む。
そんなユニに、ラルは自分が持っていたコロネロのおしゃぶりを預けた。
そして、γはリボーンに呼び出され“ある重要な話”をされることになる。
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『ん……』
随分長い間、眠っていたような気がする。
カシス……本当にあたし、彼女と話してたのかな…?
「檸檬、遅い。」
『あっ…恭弥……』
声のした方を向くと、ムスッとした恭弥の顔。
手を強く握られてたみたいで、感触がまだ残ってる。
『ごめんね、お待たせ。』
笑ってみたけど、恭弥はムスッとしたまま。
急に倒れて眠りっ放しだったんだもんね、仕方ないか。
言わなくちゃ。
夢の中で、カシスに会ったこと。
あたしが、彼女と結んだ約束のこと。
『あのね……言わなくちゃ、いけないことがあるんだけど…』
「…うん。」
視界の違和感が、教えてくれる。
あの夢は、“現実”だったんだって。
あたしは確かに、左目の視力を失ったんだって。
『カシスと、話してきた。彼女はあたしの直系先祖で、その魂はあたしの血の中に生きてる。』
恭弥は、起きあがったあたしの隣に座って、静かに聞いてくれた。
カシスが第六感を断絶させようとしていること、
この時代のあたしは、カシスによって視力を奪われたこと、
そして………
『約束してきたの、カシスと。第六感を使って、みんなを平和な過去に戻す手助けをするって。笑顔を取り戻すために、あたしは力を使うって。そしたら、さ……その…』
何て言ったらいいのかな。
どんな言い方しても、きっと恭弥は怒るよね。
でも、もう夜明けが来る。
その前に伝えなくちゃ。
『左目だけは波長専用にしなさい、みたいなことになっちゃって…』
「専用…?」
『あのね、リバウンドを抑えるのと、発動負荷をかけないためなの、だから…』
「片目、見えなくなったってことだよね。」
『…うん……』
流れる沈黙。
気まず過ぎて、あたしは俯いたまま膝の上で拳を握った。
この時代のあたしが、恭弥を傷つけて突き放してしまったように……あたしも…
「……そんなことだと思った。」
『え…?』
「檸檬は僕を、少し甘く見てるんじゃない?」
『そ、そんなこと…』
「この時代の僕が、何も調べてないと思った?」
『調べる、って……第六感のこと…!?』
まるで、分かってたみたいに口ぶりの恭弥に、あたしは驚きを隠せなかった。
確かにあたしは、未来の自分が視力を失ったことを話した。
だけど、それがカシスの影響だってことは、あたし自身すらさっき知ったことだし……
「この時代の檸檬が一人で姿を消してから、色々と資料を集めてたみたいでね。ここに残ってたよ。」
応接室の鍵付き金庫の奥に、隠し空間が。
この時代の恭弥は、入れ替わった恭弥が応接室に来るって予想して…敢えてここに隠した。
あたしの力に関する、資料の数々を。
恭弥が見せてくれた1冊のファイル。
表紙には、“檸檬の異変に関して”と書いてあった。
中身を見て、更に驚く。
未来視ができるあたしのお母さんのことから、その家系を遡って、第六感やそれに似た力を使う人間についての資料ばかりだった。
「第六感を使ったり波長を視る人間には、必ず身体的な“欠陥”がランダムに生じてる。それも、生態バランス的じゃなくて、人為的にね。」
『じゃあ、恭弥……チョイスの前から知ってたの…?この時代のあたしが視界を閉ざされたのは、カシスの影響だって…』
「そのファイル、檸檬のことだけ資料がないでしょ。だから、この時代の檸檬に何が起きたかは、君に聞いて初めて知った。」
見れば確かに、お母さんから前の世代の資料しか無い。
この時代の恭弥は……あたしが視力を失った原因を、究明するために……
「だから、薄々勘付いてたよ。檸檬がどんなに慎重に修業しても、いずれ何かが起こるって。けど、止めたところで君は聞かない。」
『恭弥……』
「それにね、」
そこで恭弥は、ぎゅっとあたしを抱き寄せる。
自然とあたしも抱きしめ返して、続きを待った。
「…檸檬なら、同じ道は歩まない……そう、思ったから。」
目が熱くなって、思わず恭弥の胸に額を預けた。
どうしよう、言葉が何も、浮かばない。
『…あり、がとう……』
今、この瞬間、そればかりが溢れてる。
怒らないでいてくれて、ありがとう。
待っててくれて、ありがとう。
信じてくれて、本当にありがとう。
「ただ……左目のことは、納得いかないけど。」
『し、仕方なかったの!あの時は…カシスを説得するので精一杯で……こ、この時代のあたしよりは、マシな結果になったもん!』
開き直ってそっぽを向くと、恭弥は溜め息をついて、あたしを抱きしめ直した。
「……“この時代の僕たち”よりは、マシかもね。」
『でしょ!』
すれ違い続けて、離れ離れになることもなかった。
あたしは、恭弥の傍にいることが出来てる。
「それでも納得いかない。」
『…我が儘王子……』
「何か言った?」
『い、言ってな………!!?』
慌てて上を向いた瞬間、唇が重なって、塞がれた。
もう、恭弥には敵わないよ。
優しい唇は、数秒くっついて、ゆっくりと離れる。
『……不意打ち、ズルい。』
「檸檬が可愛かったから。」
『そ、そーゆーコト言うのもズルいよ…』
ぼそぼそと返すあたしに、恭弥は満足そうに微笑した。
あたしは、恭弥の傍にいるだけでこんなに幸せな気持ちになれる。
だから…頑張るよ。
絶対に絶対に、無駄にしない。
あたしを信じてくれた恭弥のためにも、
負荷をなくしてくれたカシスのためにも、
蜜柑と、決着をつけるから。
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ルーティンワークのように、夜が明けた。
森の中に移動した私たちは、ボンゴレの連中に悟られないよう、ユニの潜伏場所から5キロの地点で待機していた。
「いよいよだね、ユニちゃんゲットの時。ボンゴレとの遊びはこれで終わりにしよう。」
「ハッ!」
桔梗が立てた作戦は、3方向から桔梗・ブルーベル・ザクロが同時にユニの確保に向かう、というもの。
白蘭は、ユニが無事なら全力を出しても構わない、と言った。
「それと、ダークに関してですが、川平不動産では姿を見ませんでした。いずれ合流するかと。」
「そっかー、どうする?蜜柑。」
「森と町の境界付近でマーが集音しています。ダークがこの森に現れ次第、私が迎撃を。」
「なら大丈夫だね。それじゃあみんな、行ってらっしゃい♪」
3人が、一斉に各方向へと駆け出した。
ボンゴレ匣が未知なる武器とは言え、もって十数分。
“彼らの修羅開匣”には及ばない。
「ふふっ、楽しみだなぁ♪ようやく世界が僕のものになる。」
「そうですね。」
楽しみ、という言葉とは違ったかも知れない。
けれど私はその時、いつもより自分の脈が速くなっているのを感じた。
やっと……やっと、決着がつく。
今日、この森で、私が姉さんを殺してみせる。
それが、私たちの運命なのだから。
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「(バーロー、一番乗りだぜ!!)」
的確に自分のルートを進んできたザクロだが、ピンと張られていた糸にかかる。
それは、相手側の攻撃開始の合図になり……
どこからか放たれた雲ムカデが彼に巻き付き、身動きを取れなくさせる。
続いてそこに、2匹の黒狐がコンビネーションアタックを叩きこむ。
血反吐を吐いたザクロに、ダメ押しの赤炎の矢。
それらの攻撃を放ったラル、γ、獄寺は、それぞれに手ごたえを感じていた。
……が、雄たけびをあげながらもザクロはマーレリングに炎を灯して。
「俺はデイジーやトリカブトとは…格が違うぜ!バーロー!!」
胸に埋め込まれた匣に、炎を注入した。