未来編②
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応接室のドアが開き、雲雀は殺気を放った。
「…勝手に入って来ないでくれる?」
「檸檬は…まだ起きてねーか…」
保健室での治療を終えたディーノが、ロマーリオと草壁と共にやって来たのだ。
ソファで眠り続ける檸檬を見て、眉を下げる。
「檸檬さん……一体何故、今になって…」
「さっきまでピンピンしてたってのによぉ…」
草壁はグッと拳を握り、ロマーリオは頭を掻いた。
連携
「なぁ恭弥、お前、何か心当たりあるんだろ。」
「だったら何。」
「ほ、本当ですか!?恭さん!」
「うるさい。」
「す、すみません…」
雲雀の一言で黙らされる草壁。
その態度に対し、ディーノはため息をつく。
「お前が言いたくねーってんなら無理に聞かねぇが……1つ言っておくぜ。檸檬に何があっても、支えてやれよ。」
「…そんなの、言われるまでもないよ。」
雲雀の返事を聞き、ディーノはロマーリオと草壁と共に応接室をあとにした。
眠る檸檬の手を握り、雲雀は目を細める。
「檸檬……」
---
--------
--------------
同じ頃、川平不動産付近にて。
γとユニのいる上空へ移動していたツナを見て、桔梗とブルーベルは驚く。
「しまった!!」
「ボンゴレのヤツ、いつの間にあんな所まで!」
「俺のスピードを甘く見るな。」
「ハハン、チョイスで勝てなかった相手を前によく言えますね。」
桔梗が笑みを見せると同時に、ツナに殴られダメージを負っていたトリカブトが再生した。
「哀しき者よ。」
言いながら、彼はマントを脱ぎ、リングに炎を灯す。
地上にいるフゥ太とリボーンが、その胸に匣が埋まっているのを視認した。
「アレが、ディーノから連絡のあった修羅開匣だな。」
「いきますか、トリカブト…」
「息止めるから待った!」
匣に炎が注入されると、辺りに衝撃波が広がり……
「ぐっ、」
「……あれは!!」
巨大な蛾の羽を付けたトリカブトが、現れた。
「終焉の時。」
そして、突如強力な幻覚空間が生み出され、ツナ達は景色が回りだす感覚に襲われる。
「この幻覚…!!チョイスの時より強い!!」
「修羅開匣とは、人間と匣兵器の能力を掛け合わせたもの。蛾の擬態を進化させたトリカブトの目玉模様を見た者は、一瞬にして五感を狂わされ真実を見失うのです。」
トリカブトはツナの視界から消え、地上にいる京子たちも、ユニを抱えたγも天地を掴めず混乱する。
ツナは目を閉じ超直感でトリカブトを見つけようとしたが、桔梗の言う通り見つけることが出来ない。
「(ハハン……あとはユニ様を確保したとの連絡を待つだけです…)」
桔梗が余裕の表情でそう考えていた、その時。
「ボス!大空の娘の右側!!」
地上からの指示にツナが従ってユニの右側に攻撃を加えると、確かに手ごたえが。
桔梗は驚き地上を見下ろす。
と、その指示がクロームからのものだと分かった。
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夢の中で、カシスに首を締め付けられる檸檬。
もがいてみるが、逃れられる気配はない。
苦しみのあまりギュッと目を閉じた檸檬の耳に、カシスの声が近づいてくる。
「さぁ、誓って。第六感はいらない、そう言いなさい。」
『い……いや、よ……』
「私に逆らえると思ってるの?」
『あ…あたし……は……!』
檸檬がうっすらと目を開けると、カシスに押し倒された状態で首を絞められていた。
目の前には、怒り一色に染まったカシスの表情。
ここで負けたら、折れてしまったら、約束を守れない。
この時代の雲雀と同じ思いを、過去から来た雲雀に味わわせないために、自分は慎重に修業をしてきたのだ。
過去からきた自分も、未来の自分と同じように視界を失えば、意味が無い。
何が何でも、勝たなければ……カシスを説得しなければ…
そう思った瞬間、檸檬はカシスの手首を思いきり掴んだ。
『あたしはっ…みんなの笑顔のためにこの力を使うの!私利私欲なんかじゃないっ…!!』
酸欠で手の力が抜けそうになるが、ぐっと堪え、カシスの手を着実に自分の首から引き剥がしていく。
『この時代の戦いで……みんな、傷ついた……だから!それを、笑顔に戻すために…!』
「笑顔、ですって…?ふざけないで!!」
激昂したカシスは、全体重をかけるように檸檬の首を絞めにかかった。
「こんな、こんな力で笑顔が取り戻せると本気で思ってるの!?笑えない冗談言ってくれるわね!!」
『カシスっ……ま、待って…!』
「貴女は……貴女には分かってない!!一生分からない!!この力がっ……どんなに非情で残酷か…!!」
『カシス……!!?』
その時、檸檬の頬に何か生ぬるい水滴が落ちた。
ぽたぽたっと、たった2滴だったが、それは檸檬に疑問を抱かせるのに充分で。
と、次の瞬間、ぐんっと意識が引かれる感覚に襲われ、檸檬の目の前からカシスが消えた。
『(えっ…!?)』
代わりに現れたのは、イタリアの大通り……
それも、檸檬がボンゴレ9代目と過ごしていたイタリアよりもずっと古風な街並だった。
不思議なことに、檸檬の存在は通りを歩く誰にも気づかれず、すり抜けていく。
『(ここ、何処…?カシスは…?)』
-「カシス!」
誰かがカシスを呼ぶ声に、檸檬も反応して振り向いた。
その声の主は、以前一度だけ、ツナのXグローブver.Vの継承の際に目にした……
『(あれは…ボンゴレI世…!)』
---
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「下!!ずっと下!!右!!」
「クロームさん…!」
「クロームの霧フクロウが、形態変化したな。」
「ってことは…」
「あぁ、アレが初代霧の守護者の使っていた武器と同じ、ボンゴレ匣……」
実体のつかめぬ幻影と謳われた、D・スペードの魔レンズ!!!
「初代霧の守護者に魔レンズ越しに睨みつけられた者は、呪われて次の日に海に浮かんだと言われる……。」
伝承を口にするリボーンの脳裏には、初代霧についてのもう一つの情報があったが、敢えてそれは伏せておいた。
初代の霧は、クロームとは似ても似つかぬ裏切り者だったという情報だけは。
ともかく、クロームの誘導からツナがトリカブトにダメージを与え続けた結果、全員を包んでいた幻覚空間が弱まっていった。
再び同じような幻覚が作り出せぬよう、ナッツの咆哮でトリカブトの羽を燃やす。
不利になり始めたトリカブトを見て、ブルーベルが頬を膨らませた。
「聞いてない!ボンゴレ匣なんて!!」
「(厄介なのは匣兵器そのものよりも、彼らの戦い方……)手伝いましょう、トリカブト。」
「これがボンゴレファミリーの戦い方だぞ。」
サシならば勝てるのに味方のサポートが邪魔だと判断した桔梗は、トリカブトを援護しようとする。
が、それはリボーンの銃弾に阻まれた。
そのリボーン自身も、バジルの雨イルカに乗って向かって来ている。
「ボンゴレの強さは、個々ではなくファミリー同士の連携にある。」
「その通りだ!!」
桔梗の右から迫るリボーンと反対側、つまり桔梗の左サイドから、別の声。
「仲間のピンチの時こそ!!俺のリングは極限に燃える!!」
「お兄ちゃん!!」
「あいつ…無茶しやがって……」
トリカブトの援護も出来ぬまま、完全に包囲されてしまった真6弔花。
その状況にブルーベルは痺れを切らし、自分も修羅開匣をしようとした。
「もう!あったまきた!!」
「待ちなさい。」
ブルーベルを止め、桔梗は言った。
ボンゴレを全滅させるのは容易いが、ユニを確実に無傷で連れて行くには態勢を立て直す必要がある…と。
「退くのは嫌だ」と駄々をこねたブルーベルだが、ツナにトリカブトが倒されたのを見て、渋々退却を受け入れた。
と言っても、ボンゴレ側も相当なダメージを負ってしまった。
京子とハルが怪我人に声をかける。
ユニも、γと共にみんなの元へ戻った。
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夢の中で、突如現れたイタリアの街。
檸檬と同じように振り向いたカシスは、ボンゴレI世の姿を見て目を丸くし、呆れるように言った。
-「ジョット…また抜け出してきたの?」
-「お前の入れるコーヒーが飲みたくなった。」
-「あら。Gに怒られても知らないわよ?」
-「大丈夫さ。荷物、半分俺が持つ。」
-「じゃあ…お言葉に甘えようかしら。」
ユニの言っていた通り、カシスが初代ボンゴレの繁栄に協力したという事実はあったらしい。
二人が親密な関係であることは、そのやり取りですぐに分かった。
幸せそうに歩いていく二人をぼーっと見ていた檸檬だったが、そこから今度は止めどなく頭の中に記憶が流れ込んできた。
それは、カシスとボンゴレI世に関わる、様々な記憶。
-「あなたはっ…私と居てはダメ!!」
そう言ってボンゴレI世の手を振り払い、走り去るカシスの姿。
-「お前のいないまま平坦な道を行くより、お前と共に荊の道を歩みたい……そのくらいの覚悟、とうに出来ている。」
震えるカシスをあやすように抱きしめる、ボンゴレI世の姿。
-「ジョット……わ、私ね……私も、あなたのこと………好きよ。」
頬を紅潮させながら、微笑んで言うカシスの姿。
-「少しだけ、お前に触れてもいいか?」
-「けど、もし何か視えたら…」
-「一度でいい……お前の唇を、俺にくれないか…?」
その言葉に、躊躇いながらもカシスは目を閉じる。
しかし…
-「カシス…?」
-「な、何でもないの!ごめんなさい、私…お店に戻るわ。」
唇を重ねた後、逃げるように個室にこもり、泣き崩れるカシスの姿。
そして……
『何?ここ……港?』
最後に檸檬の目の前に広がったのは、抗争最中の港の光景だった。
初代ボンゴレファミリーが、武器の密売人と戦っているようだ。
不意に、物陰から短剣を持った敵の一人が飛び出す。
彼は完全にボンゴレI世の死角をつき、そして……
-「死ね!ボンゴレ!!」
ボンゴレの創始者にその短剣を突き刺そうとした……ハズだった。
-「ダメっ!!」
-「なっ…!」
『え…?』
同じく物陰から飛び出し盾となったのは、抗争の場に相応しくないワンピース姿の女。
白いエプロンに赤いシミがみるみるうちに広がっていき、女は力なくその場に倒れこんだ。
-「カシス……カシス!!!」
-「…ジョット……無事、よね…?」
自分を抱き起こすボンゴレI世に、カシスは安堵の笑みを見せる。
ボンゴレI世の方は、抗争の場に彼女が現れ戸惑いを隠せないようだった。
-「カシス…何故お前が……いや、今は喋るな。すぐ治療を…」
-「ごめんなさい、ジョット……私、知ってた、の………キス、した時……視えた、から…」
-「いい、喋るな…!出血が…!」
-「お願いジョット……聞いて……ここが、私たちの…お終い、の、場所…なの……」
-「頼む…もう喋るな…」
-「…貴方に、会えて……本当に、私……」
『(カシスは…ボンゴレI世の未来を視て、それを変えるために……)』
そこで、檸檬の意識はまた急激に引っ張られていく。
気付けば、カシスに首を絞められている状況に戻っており、その手の力は先ほどより強まっていた。
『(そっか……今のは全部、カシスの記憶……)』
檸檬は目の前のカシスを見つめる。
その目尻には、僅かながら光るものが残っていた。
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日本国内、とあるホテル。
解熱のシートを額に貼り体温計を銜えた白蘭は、マシュマロを抱えながら報告を聞きいれた。
「ふぅん、デイジーにトリカブトまでやられちゃったかー。あ、蜜柑、もう一袋マシマロ持ってきて♪」
「…畏まりました。」
蜜柑が立ち去るとほぼ同時に、ザクロが床を叩く。
川平の幻覚で遠くへと誘導された彼は、自分の失態を悔いていた。
一方、ユニを連れ去れず謝罪する桔梗に、白蘭は問いかける。
「ボンゴレ匣はどう?脅威になりそうかい?」
「いいえ。確かに少々驚きましたが、戦力としては大したことありません。やられたデイジーとトリカブトも、我々の中では弱い部類ですし。」
「ハハハッ、そうだね。君達は彼らとは出来が違う。次は僕も行くつもりだし、全然悲観してないよ。今回の戦闘で、ユニちゃんを手に入れるには最後の手段が必要だって分かったしね。」
言いながら、白蘭は何処かに電話をかける。
出たのは、メローネ基地の戦いで重傷を負っていたアイリスだった。
「やっぱりアレを出すことにしたから行ってあげて。30分前に復讐者と取引はしてあるから。」
「ヴィンディチェ!?」
「まさか!!」
「待ってくれ、白蘭様!!」
“復讐者”という単語を聞き、動揺する真6弔花の3人。
彼らに向けて静かにするよう「しー」と言ってから、白蘭は電話を続ける。
「うん、僕はあと半日もすれば元気になる。急いでこっちに送り届けてよ。あ、彼の取り扱いには気をつけてね。」
-「ハッ!」
電話を切った直後、マシュマロの袋と解熱剤、コップ1杯の水を持った蜜柑が戻って来る。
「GHOSTを使うんですか?」
「うん、まぁね♪……って、蜜柑、僕はマシマロしか頼んでないよ。」
「電話でおっしゃっていた通り“半日で”全回復なさるためには、必要です。」
マシュマロの袋を白蘭に手渡し、テーブルに水と薬を置きながら、蜜柑は言った。
「白蘭の回復力は僅かながら以前より落ちています。お飲みになることを推奨します。」
「う~ん、蜜柑が言うなら仕方ないか。」
白蘭は渋々薬を口に入れた。
---
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ヨーロッパ、復讐者の牢獄にて。
雪が積もる中、アイリスはため息をついた。
「やはりアレを出所させるそーだよ。」
「そんな…俺達、生きて帰れるんだろうな……」
「アタイの悪運もここまでかねぇ…」
アイリスとホワイトスペルの隊員2人は、復讐者の門の前に立つ。
「開けな!!白蘭様の使いの者だ!最後の真6弔花…GHOSTをもらいに来た!!」
「…勝手に入って来ないでくれる?」
「檸檬は…まだ起きてねーか…」
保健室での治療を終えたディーノが、ロマーリオと草壁と共にやって来たのだ。
ソファで眠り続ける檸檬を見て、眉を下げる。
「檸檬さん……一体何故、今になって…」
「さっきまでピンピンしてたってのによぉ…」
草壁はグッと拳を握り、ロマーリオは頭を掻いた。
連携
「なぁ恭弥、お前、何か心当たりあるんだろ。」
「だったら何。」
「ほ、本当ですか!?恭さん!」
「うるさい。」
「す、すみません…」
雲雀の一言で黙らされる草壁。
その態度に対し、ディーノはため息をつく。
「お前が言いたくねーってんなら無理に聞かねぇが……1つ言っておくぜ。檸檬に何があっても、支えてやれよ。」
「…そんなの、言われるまでもないよ。」
雲雀の返事を聞き、ディーノはロマーリオと草壁と共に応接室をあとにした。
眠る檸檬の手を握り、雲雀は目を細める。
「檸檬……」
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同じ頃、川平不動産付近にて。
γとユニのいる上空へ移動していたツナを見て、桔梗とブルーベルは驚く。
「しまった!!」
「ボンゴレのヤツ、いつの間にあんな所まで!」
「俺のスピードを甘く見るな。」
「ハハン、チョイスで勝てなかった相手を前によく言えますね。」
桔梗が笑みを見せると同時に、ツナに殴られダメージを負っていたトリカブトが再生した。
「哀しき者よ。」
言いながら、彼はマントを脱ぎ、リングに炎を灯す。
地上にいるフゥ太とリボーンが、その胸に匣が埋まっているのを視認した。
「アレが、ディーノから連絡のあった修羅開匣だな。」
「いきますか、トリカブト…」
「息止めるから待った!」
匣に炎が注入されると、辺りに衝撃波が広がり……
「ぐっ、」
「……あれは!!」
巨大な蛾の羽を付けたトリカブトが、現れた。
「終焉の時。」
そして、突如強力な幻覚空間が生み出され、ツナ達は景色が回りだす感覚に襲われる。
「この幻覚…!!チョイスの時より強い!!」
「修羅開匣とは、人間と匣兵器の能力を掛け合わせたもの。蛾の擬態を進化させたトリカブトの目玉模様を見た者は、一瞬にして五感を狂わされ真実を見失うのです。」
トリカブトはツナの視界から消え、地上にいる京子たちも、ユニを抱えたγも天地を掴めず混乱する。
ツナは目を閉じ超直感でトリカブトを見つけようとしたが、桔梗の言う通り見つけることが出来ない。
「(ハハン……あとはユニ様を確保したとの連絡を待つだけです…)」
桔梗が余裕の表情でそう考えていた、その時。
「ボス!大空の娘の右側!!」
地上からの指示にツナが従ってユニの右側に攻撃を加えると、確かに手ごたえが。
桔梗は驚き地上を見下ろす。
と、その指示がクロームからのものだと分かった。
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夢の中で、カシスに首を締め付けられる檸檬。
もがいてみるが、逃れられる気配はない。
苦しみのあまりギュッと目を閉じた檸檬の耳に、カシスの声が近づいてくる。
「さぁ、誓って。第六感はいらない、そう言いなさい。」
『い……いや、よ……』
「私に逆らえると思ってるの?」
『あ…あたし……は……!』
檸檬がうっすらと目を開けると、カシスに押し倒された状態で首を絞められていた。
目の前には、怒り一色に染まったカシスの表情。
ここで負けたら、折れてしまったら、約束を守れない。
この時代の雲雀と同じ思いを、過去から来た雲雀に味わわせないために、自分は慎重に修業をしてきたのだ。
過去からきた自分も、未来の自分と同じように視界を失えば、意味が無い。
何が何でも、勝たなければ……カシスを説得しなければ…
そう思った瞬間、檸檬はカシスの手首を思いきり掴んだ。
『あたしはっ…みんなの笑顔のためにこの力を使うの!私利私欲なんかじゃないっ…!!』
酸欠で手の力が抜けそうになるが、ぐっと堪え、カシスの手を着実に自分の首から引き剥がしていく。
『この時代の戦いで……みんな、傷ついた……だから!それを、笑顔に戻すために…!』
「笑顔、ですって…?ふざけないで!!」
激昂したカシスは、全体重をかけるように檸檬の首を絞めにかかった。
「こんな、こんな力で笑顔が取り戻せると本気で思ってるの!?笑えない冗談言ってくれるわね!!」
『カシスっ……ま、待って…!』
「貴女は……貴女には分かってない!!一生分からない!!この力がっ……どんなに非情で残酷か…!!」
『カシス……!!?』
その時、檸檬の頬に何か生ぬるい水滴が落ちた。
ぽたぽたっと、たった2滴だったが、それは檸檬に疑問を抱かせるのに充分で。
と、次の瞬間、ぐんっと意識が引かれる感覚に襲われ、檸檬の目の前からカシスが消えた。
『(えっ…!?)』
代わりに現れたのは、イタリアの大通り……
それも、檸檬がボンゴレ9代目と過ごしていたイタリアよりもずっと古風な街並だった。
不思議なことに、檸檬の存在は通りを歩く誰にも気づかれず、すり抜けていく。
『(ここ、何処…?カシスは…?)』
-「カシス!」
誰かがカシスを呼ぶ声に、檸檬も反応して振り向いた。
その声の主は、以前一度だけ、ツナのXグローブver.Vの継承の際に目にした……
『(あれは…ボンゴレI世…!)』
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「下!!ずっと下!!右!!」
「クロームさん…!」
「クロームの霧フクロウが、形態変化したな。」
「ってことは…」
「あぁ、アレが初代霧の守護者の使っていた武器と同じ、ボンゴレ匣……」
実体のつかめぬ幻影と謳われた、D・スペードの魔レンズ!!!
「初代霧の守護者に魔レンズ越しに睨みつけられた者は、呪われて次の日に海に浮かんだと言われる……。」
伝承を口にするリボーンの脳裏には、初代霧についてのもう一つの情報があったが、敢えてそれは伏せておいた。
初代の霧は、クロームとは似ても似つかぬ裏切り者だったという情報だけは。
ともかく、クロームの誘導からツナがトリカブトにダメージを与え続けた結果、全員を包んでいた幻覚空間が弱まっていった。
再び同じような幻覚が作り出せぬよう、ナッツの咆哮でトリカブトの羽を燃やす。
不利になり始めたトリカブトを見て、ブルーベルが頬を膨らませた。
「聞いてない!ボンゴレ匣なんて!!」
「(厄介なのは匣兵器そのものよりも、彼らの戦い方……)手伝いましょう、トリカブト。」
「これがボンゴレファミリーの戦い方だぞ。」
サシならば勝てるのに味方のサポートが邪魔だと判断した桔梗は、トリカブトを援護しようとする。
が、それはリボーンの銃弾に阻まれた。
そのリボーン自身も、バジルの雨イルカに乗って向かって来ている。
「ボンゴレの強さは、個々ではなくファミリー同士の連携にある。」
「その通りだ!!」
桔梗の右から迫るリボーンと反対側、つまり桔梗の左サイドから、別の声。
「仲間のピンチの時こそ!!俺のリングは極限に燃える!!」
「お兄ちゃん!!」
「あいつ…無茶しやがって……」
トリカブトの援護も出来ぬまま、完全に包囲されてしまった真6弔花。
その状況にブルーベルは痺れを切らし、自分も修羅開匣をしようとした。
「もう!あったまきた!!」
「待ちなさい。」
ブルーベルを止め、桔梗は言った。
ボンゴレを全滅させるのは容易いが、ユニを確実に無傷で連れて行くには態勢を立て直す必要がある…と。
「退くのは嫌だ」と駄々をこねたブルーベルだが、ツナにトリカブトが倒されたのを見て、渋々退却を受け入れた。
と言っても、ボンゴレ側も相当なダメージを負ってしまった。
京子とハルが怪我人に声をかける。
ユニも、γと共にみんなの元へ戻った。
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夢の中で、突如現れたイタリアの街。
檸檬と同じように振り向いたカシスは、ボンゴレI世の姿を見て目を丸くし、呆れるように言った。
-「ジョット…また抜け出してきたの?」
-「お前の入れるコーヒーが飲みたくなった。」
-「あら。Gに怒られても知らないわよ?」
-「大丈夫さ。荷物、半分俺が持つ。」
-「じゃあ…お言葉に甘えようかしら。」
ユニの言っていた通り、カシスが初代ボンゴレの繁栄に協力したという事実はあったらしい。
二人が親密な関係であることは、そのやり取りですぐに分かった。
幸せそうに歩いていく二人をぼーっと見ていた檸檬だったが、そこから今度は止めどなく頭の中に記憶が流れ込んできた。
それは、カシスとボンゴレI世に関わる、様々な記憶。
-「あなたはっ…私と居てはダメ!!」
そう言ってボンゴレI世の手を振り払い、走り去るカシスの姿。
-「お前のいないまま平坦な道を行くより、お前と共に荊の道を歩みたい……そのくらいの覚悟、とうに出来ている。」
震えるカシスをあやすように抱きしめる、ボンゴレI世の姿。
-「ジョット……わ、私ね……私も、あなたのこと………好きよ。」
頬を紅潮させながら、微笑んで言うカシスの姿。
-「少しだけ、お前に触れてもいいか?」
-「けど、もし何か視えたら…」
-「一度でいい……お前の唇を、俺にくれないか…?」
その言葉に、躊躇いながらもカシスは目を閉じる。
しかし…
-「カシス…?」
-「な、何でもないの!ごめんなさい、私…お店に戻るわ。」
唇を重ねた後、逃げるように個室にこもり、泣き崩れるカシスの姿。
そして……
『何?ここ……港?』
最後に檸檬の目の前に広がったのは、抗争最中の港の光景だった。
初代ボンゴレファミリーが、武器の密売人と戦っているようだ。
不意に、物陰から短剣を持った敵の一人が飛び出す。
彼は完全にボンゴレI世の死角をつき、そして……
-「死ね!ボンゴレ!!」
ボンゴレの創始者にその短剣を突き刺そうとした……ハズだった。
-「ダメっ!!」
-「なっ…!」
『え…?』
同じく物陰から飛び出し盾となったのは、抗争の場に相応しくないワンピース姿の女。
白いエプロンに赤いシミがみるみるうちに広がっていき、女は力なくその場に倒れこんだ。
-「カシス……カシス!!!」
-「…ジョット……無事、よね…?」
自分を抱き起こすボンゴレI世に、カシスは安堵の笑みを見せる。
ボンゴレI世の方は、抗争の場に彼女が現れ戸惑いを隠せないようだった。
-「カシス…何故お前が……いや、今は喋るな。すぐ治療を…」
-「ごめんなさい、ジョット……私、知ってた、の………キス、した時……視えた、から…」
-「いい、喋るな…!出血が…!」
-「お願いジョット……聞いて……ここが、私たちの…お終い、の、場所…なの……」
-「頼む…もう喋るな…」
-「…貴方に、会えて……本当に、私……」
『(カシスは…ボンゴレI世の未来を視て、それを変えるために……)』
そこで、檸檬の意識はまた急激に引っ張られていく。
気付けば、カシスに首を絞められている状況に戻っており、その手の力は先ほどより強まっていた。
『(そっか……今のは全部、カシスの記憶……)』
檸檬は目の前のカシスを見つめる。
その目尻には、僅かながら光るものが残っていた。
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日本国内、とあるホテル。
解熱のシートを額に貼り体温計を銜えた白蘭は、マシュマロを抱えながら報告を聞きいれた。
「ふぅん、デイジーにトリカブトまでやられちゃったかー。あ、蜜柑、もう一袋マシマロ持ってきて♪」
「…畏まりました。」
蜜柑が立ち去るとほぼ同時に、ザクロが床を叩く。
川平の幻覚で遠くへと誘導された彼は、自分の失態を悔いていた。
一方、ユニを連れ去れず謝罪する桔梗に、白蘭は問いかける。
「ボンゴレ匣はどう?脅威になりそうかい?」
「いいえ。確かに少々驚きましたが、戦力としては大したことありません。やられたデイジーとトリカブトも、我々の中では弱い部類ですし。」
「ハハハッ、そうだね。君達は彼らとは出来が違う。次は僕も行くつもりだし、全然悲観してないよ。今回の戦闘で、ユニちゃんを手に入れるには最後の手段が必要だって分かったしね。」
言いながら、白蘭は何処かに電話をかける。
出たのは、メローネ基地の戦いで重傷を負っていたアイリスだった。
「やっぱりアレを出すことにしたから行ってあげて。30分前に復讐者と取引はしてあるから。」
「ヴィンディチェ!?」
「まさか!!」
「待ってくれ、白蘭様!!」
“復讐者”という単語を聞き、動揺する真6弔花の3人。
彼らに向けて静かにするよう「しー」と言ってから、白蘭は電話を続ける。
「うん、僕はあと半日もすれば元気になる。急いでこっちに送り届けてよ。あ、彼の取り扱いには気をつけてね。」
-「ハッ!」
電話を切った直後、マシュマロの袋と解熱剤、コップ1杯の水を持った蜜柑が戻って来る。
「GHOSTを使うんですか?」
「うん、まぁね♪……って、蜜柑、僕はマシマロしか頼んでないよ。」
「電話でおっしゃっていた通り“半日で”全回復なさるためには、必要です。」
マシュマロの袋を白蘭に手渡し、テーブルに水と薬を置きながら、蜜柑は言った。
「白蘭の回復力は僅かながら以前より落ちています。お飲みになることを推奨します。」
「う~ん、蜜柑が言うなら仕方ないか。」
白蘭は渋々薬を口に入れた。
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ヨーロッパ、復讐者の牢獄にて。
雪が積もる中、アイリスはため息をついた。
「やはりアレを出所させるそーだよ。」
「そんな…俺達、生きて帰れるんだろうな……」
「アタイの悪運もここまでかねぇ…」
アイリスとホワイトスペルの隊員2人は、復讐者の門の前に立つ。
「開けな!!白蘭様の使いの者だ!最後の真6弔花…GHOSTをもらいに来た!!」