未来編②
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ズガガガン!!
並中から遠く離れた空き地で、蜜柑はピグに向かって数発撃った。
「ガアーッ!!!」
巨大化したピグの肩に乗り、言った。
「まずは白蘭かしらね。」
「ガァッ!」
「マーが既にサーチして向かってる。炎の気配を追って。」
その指示を聞いたピグは、蜜柑を乗せたまま民家の屋根まで飛び上がった。
そして、同じく蜜柑の匣アニマルであるマーの気配がある方へと駆け出した。
「ホント……手間のかかる上司だわ。」
手錠
一方、並中。
「おいおい、」
「あれって……」
『ハリネズミが…』
「手錠に…!?」
ボンゴレ匣を形態変化させた雲雀は、デイジーに向かって一言。
「覚悟はいいかい?」
その瞬間、手錠の片方の輪から針が出る。
校舎にめり込んでいたデイジーはズン、と降り立ち考えた。
「(手錠……手錠が雲の守護者のボンゴレ匣か……)」
見た所、雲の炎を帯びた棘には殺傷能力がありそうだが、単なる拘束具である。
デイジーはまだ白蘭からボンゴレ匣の情報を得ていなかったが、警戒する必要はないと判断した。
「どう考えてもそれ…僕チン向けだ。」
その言葉が、開戦の合図。
右手にトンファー、左手に手錠を持ち攻め寄る雲雀。
デイジーも体技で応戦する。
『(体技はどう見ても恭弥の方が上だけど……)』
檸檬は言い知れぬ不安を覚える。
何せ、雲雀が相手にしているデイジーは、チョイスで山本のボンゴレ匣による攻撃を受けているのだ。
それでも倒されなかった敵なのだから、雲雀のボンゴレ匣が形態変化したからと言って、一筋縄で勝てるとは思えない。
途中、手錠の棘がデイジーの頬に刺さったが、すぐに再生してしまった。
「効かない。」
そのまま殴ろうとしたデイジーの腕を、雲雀は軽々避ける。
そして、自分の方に伸ばされた右手首に手錠をかけた。
「もう逃がさないよ。」
「恭さんが…!」
『先にデイジーを捕らえた…!!』
グッと引っ張りトンファーで殴りつけようとした、その時。
デイジーは怪しく笑った。
トンファーの届く範囲に、デイジーが引き寄せられることはなかった。
手錠で捕えられていた手首が、ブチッと取れてしまったのである。
引き寄せられたのは、切り取られた手首だけ。
これには雲雀も目を丸くし、息を呑んだ。
更に驚いたことに、デイジーは手首を瞬時に再生させ、今度こそ雲雀を殴り飛ばしたのである。
『恭弥っ…!!』
「待て檸檬!手負いの身で近づくな!」
ディーノの止血をしていた檸檬が立ち上がろうとするが、ディーノとロマーリオの手により抑えられる。
「しかし何だってんだ、今のは!?」
「自分から腕を切断したのか…」
「恭さん!!」
そこで、ディーノが気付く。
デイジーがやってみせたことは、トカゲの自切に似ている、と。
「トカゲは自ら切った尾を、再生できるという…」
「だが再生が早すぎねーか?」
『しかも…手首を切り取って、また腕と手先を繋いでた…』
「奴のリングの属性を考えれば可能だ。」
デイジーは晴属性の真6弔花。
つまり、晴属性の“活性”による細胞の超活性による能力のようだ。
「修羅開匣は、能力の掛け算なんだよ。」
崩れた校舎の壁の中から立ち上がる雲雀に、デイジーが言った。
「匣アニマルの持つ特殊能力と人間の能力が掛け合わされて、あらゆる生命体のリミッターを超えた能力を生み出すことが出来るんだ。」
『リミッターを超えた能力…』
「だから、トカゲのしっぽでは考えられないことも…」
次の瞬間、雲雀の近くに落ちていた腕が雲雀の喉元に飛んできた。
そこから全身を象るスライムのようなものが生成されていく。
「千切れた腕から体が!!全身を再生できるのか!?」
雲雀は咄嗟に喉元の物体を殴り飛ばし、散り散りにする。
再び対峙した雲雀に、デイジーは続けた。
「残念だけど、君のボンゴレ匣は僕チンと相性最悪さ。もう諦めてユニ様の居場所を吐いちゃいなよ。それとも、ダーク渡す?」
「……いらないな。」
雲雀が返した一言に、デイジーだけでなく檸檬やディーノも疑問符を浮かべた。
「その程度ならトンファーはいらない。」
「………ん?」
見ると、雲雀は両手の人差し指に手錠をかけて回していた。
「あれ!?手錠が…」
「いつの間にか2つに…」
「君の罪は重いよ。並中で暴れて校舎を壊した上、僕の檸檬を気に入らない名前で呼んだ。」
『…恭弥……』
「君は、僕が逮捕する。」
その手元を見て、全員が驚いた。
「手錠が4つ!!」
「あいつ…何をする気だ!?」
『まさか…雲の増殖で…?だけど、』
「面白い手品だね。いくつ手錠を増やしても…同じだよ!!」
デイジーは躊躇いなく雲雀に向かっていく。
「僕も同感さ。」
雲雀はそう言ってデイジーの攻撃を軽やかにかわしていく。
そして、かわす度に手錠をかけていった。
「10や、20ならね。」
4つかけた所で、雲雀のリングが光る。
その瞬間、雲のボンゴレ匣が真価を発揮した。
ガシャシャシャシャシャ…
ガシャシャシャ…
みるみるうちにデイジーを捕える手錠の輪が増えていき、
やがてそれは鎖つきの全身拘束具となった。
「ぼっ!!?」
「てっ、手錠が拘束具のように!!」
「自切するスピードを上回る雲属性の増殖!!……にしても…こんな形態になるのか!!」
草壁だけでなく、この数日間家庭教師をしていたディーノすらも驚く形態。
身動きが取れなくなったデイジーは焦って叫ぶ。
「こんなの……聞いてない!!」
「君……死にたがってたみたいだけど、そんな甘えは許されないよ。」
「え?」
「絞め上げよう。」
雲雀がそう言った途端、手錠の輪が小さくなっていく。
それはデイジーの全身に食い込んでいくようで、あらゆる部位から血が噴き出した。
「し!!しまるぅ!!!」
『(うわ…結構痛そ……)』
雲雀による制裁を受けるデイジーを、少しばかり哀れに思う檸檬。
「聞いてない!!白蘭様に聞いてないよ!!手錠がこんな風になるなんて!!!」
血反吐を吐きながら断末魔を発するデイジーを前に、ディーノは確信した。
「(お前の思惑通りだぜ、入江正一……)」
入江が“この世界で”白蘭を倒そうとしていた理由。
それは、他のパラレルワールドで作られなかったボンゴレ匣は、
白蘭に攻略されていない唯一の武器であるから。
「ぼ……ばふっ…」
デイジーはついに、泡を吹いて倒れた。
雲雀はゆっくりと近づいて、気絶した彼に言う。
「思ったより情けないね。君が死にたくても死ねないのは、晴の活性の炎が体内を巡ってるからだろ?」
そして、デイジーの右手からマーレリングを外した。
「これは風紀委員が没収する。」
「う…」
みるみるうちに普通の人間に戻っていくデイジーを見て、ディーノはホッと一息。
「リングを取っちまえば真6弔花と言えど…ただの人間も同然だ。」
「やりましたね恭さん!!さすが委員長!!」
草壁が歓喜しながら駆け寄って行く。
「さて、ツナ達に報告しねーとな。」
『うんっ!』
「何だ?檸檬、やけに嬉しそうじゃねーか?」
『えっ…うん、やっぱり恭弥はすごいなーって思って♪』
自分のことのように喜び笑顔を見せる檸檬に、ディーノもふっと微笑んだ。
「でもよボス、近くに敵がいたらやべーんじゃねーか?」
『とりあえずー………うん、いないみたい!』
波長で辺りを見回した檸檬の言葉を聞き、ディーノは言った。
「んじゃ、校庭にいちゃ目立つからな、校舎内に…」
「部外者は立ち入り禁止だよ。」
『恭弥!!』
「ったくおめーは…こんな時までそれかよ。」
『ここは10年後の世界なんだから、あたし達だってただの元生徒で、今は部外者でしょ?』
「恭さん、一先ず待機するためにも…」
草壁の台詞を聞きながら雲雀がそっぽを向き、檸檬にはそれが嫌々ながらの承諾だと分かった。
『ディーノ、怪我の手当はどうしよっか…保健室のガーゼとか使って…』
「そんなの檸檬がやる必要ないよ。」
『恭弥ってば…』
「それに、手当が要るのは檸檬もでしょ。背中。」
『あ、あたしは…頑張れば……すぐ治るし…』
「関係無いね。」
ぼそぼそと言う檸檬の手を引き歩き出す雲雀。
本校舎に向かっているあたり、どうやら応接室が目的地のようだ。
『ちょ、ちょっと恭弥っ!せめてディーノ達と保健室行こうよ!』
「群れたくない。」
『もーっ!!』
スタスタ行ってしまう雲雀と檸檬に苦笑しながら、ディーノは無線を繋ぐ。
ツナに、雲雀がデイジーを倒したことを告げてから、ガーゼや包帯を借りに保健室へと向かった。
ディーノからの報告を受けたツナ達は、当面の危機がないと分かり安堵した。
すると、その様子を見ていた川平が「君たちには貸し一つだ」と言って店を明け渡し去ってしまった。
自分が何者か、そのことを告げないまま…。
---
------
-----------
「やはりあれは……」
山奥、森の中に、桔梗とブルーベルは空へと伸びる一筋の白い線を見つけやって来た。
そこに現れたのは、トリカブト。
「びくっ!」
「御苦労さまですトリカブト、守ってくれていたのですね。」
「あ。蜜柑もいるじゃんっ。」
「遅かったわね、桔梗、ブルーベル。」
ピグに乗ってやって来ていた蜜柑は、白蘭を見た。
白銀の楕円に近い球体の中で、羽を広げて力を使う白蘭。
不意にその球体が弾け、中にいた白蘭が荒い息遣いをしながら言う。
「見つけた……川平という、不動産屋だ。」
---
-------
同じ頃だった。
『恭弥、やっぱり先に保健室…』
「ガーゼや包帯だったら、応接室にもあるよ。」
『けど…』
檸檬が反論しようとした、その時だった。
どくんっ、
『つぅっ……!?』
「檸檬?」
突如、激しい頭痛が檸檬を襲う。
『な、何…コレ……』
「檸檬…!?」
自分を呼ぶ雲雀の声を薄れゆく意識の中で感じ取りながら、檸檬はふっと気を失った。
並中から遠く離れた空き地で、蜜柑はピグに向かって数発撃った。
「ガアーッ!!!」
巨大化したピグの肩に乗り、言った。
「まずは白蘭かしらね。」
「ガァッ!」
「マーが既にサーチして向かってる。炎の気配を追って。」
その指示を聞いたピグは、蜜柑を乗せたまま民家の屋根まで飛び上がった。
そして、同じく蜜柑の匣アニマルであるマーの気配がある方へと駆け出した。
「ホント……手間のかかる上司だわ。」
手錠
一方、並中。
「おいおい、」
「あれって……」
『ハリネズミが…』
「手錠に…!?」
ボンゴレ匣を形態変化させた雲雀は、デイジーに向かって一言。
「覚悟はいいかい?」
その瞬間、手錠の片方の輪から針が出る。
校舎にめり込んでいたデイジーはズン、と降り立ち考えた。
「(手錠……手錠が雲の守護者のボンゴレ匣か……)」
見た所、雲の炎を帯びた棘には殺傷能力がありそうだが、単なる拘束具である。
デイジーはまだ白蘭からボンゴレ匣の情報を得ていなかったが、警戒する必要はないと判断した。
「どう考えてもそれ…僕チン向けだ。」
その言葉が、開戦の合図。
右手にトンファー、左手に手錠を持ち攻め寄る雲雀。
デイジーも体技で応戦する。
『(体技はどう見ても恭弥の方が上だけど……)』
檸檬は言い知れぬ不安を覚える。
何せ、雲雀が相手にしているデイジーは、チョイスで山本のボンゴレ匣による攻撃を受けているのだ。
それでも倒されなかった敵なのだから、雲雀のボンゴレ匣が形態変化したからと言って、一筋縄で勝てるとは思えない。
途中、手錠の棘がデイジーの頬に刺さったが、すぐに再生してしまった。
「効かない。」
そのまま殴ろうとしたデイジーの腕を、雲雀は軽々避ける。
そして、自分の方に伸ばされた右手首に手錠をかけた。
「もう逃がさないよ。」
「恭さんが…!」
『先にデイジーを捕らえた…!!』
グッと引っ張りトンファーで殴りつけようとした、その時。
デイジーは怪しく笑った。
トンファーの届く範囲に、デイジーが引き寄せられることはなかった。
手錠で捕えられていた手首が、ブチッと取れてしまったのである。
引き寄せられたのは、切り取られた手首だけ。
これには雲雀も目を丸くし、息を呑んだ。
更に驚いたことに、デイジーは手首を瞬時に再生させ、今度こそ雲雀を殴り飛ばしたのである。
『恭弥っ…!!』
「待て檸檬!手負いの身で近づくな!」
ディーノの止血をしていた檸檬が立ち上がろうとするが、ディーノとロマーリオの手により抑えられる。
「しかし何だってんだ、今のは!?」
「自分から腕を切断したのか…」
「恭さん!!」
そこで、ディーノが気付く。
デイジーがやってみせたことは、トカゲの自切に似ている、と。
「トカゲは自ら切った尾を、再生できるという…」
「だが再生が早すぎねーか?」
『しかも…手首を切り取って、また腕と手先を繋いでた…』
「奴のリングの属性を考えれば可能だ。」
デイジーは晴属性の真6弔花。
つまり、晴属性の“活性”による細胞の超活性による能力のようだ。
「修羅開匣は、能力の掛け算なんだよ。」
崩れた校舎の壁の中から立ち上がる雲雀に、デイジーが言った。
「匣アニマルの持つ特殊能力と人間の能力が掛け合わされて、あらゆる生命体のリミッターを超えた能力を生み出すことが出来るんだ。」
『リミッターを超えた能力…』
「だから、トカゲのしっぽでは考えられないことも…」
次の瞬間、雲雀の近くに落ちていた腕が雲雀の喉元に飛んできた。
そこから全身を象るスライムのようなものが生成されていく。
「千切れた腕から体が!!全身を再生できるのか!?」
雲雀は咄嗟に喉元の物体を殴り飛ばし、散り散りにする。
再び対峙した雲雀に、デイジーは続けた。
「残念だけど、君のボンゴレ匣は僕チンと相性最悪さ。もう諦めてユニ様の居場所を吐いちゃいなよ。それとも、ダーク渡す?」
「……いらないな。」
雲雀が返した一言に、デイジーだけでなく檸檬やディーノも疑問符を浮かべた。
「その程度ならトンファーはいらない。」
「………ん?」
見ると、雲雀は両手の人差し指に手錠をかけて回していた。
「あれ!?手錠が…」
「いつの間にか2つに…」
「君の罪は重いよ。並中で暴れて校舎を壊した上、僕の檸檬を気に入らない名前で呼んだ。」
『…恭弥……』
「君は、僕が逮捕する。」
その手元を見て、全員が驚いた。
「手錠が4つ!!」
「あいつ…何をする気だ!?」
『まさか…雲の増殖で…?だけど、』
「面白い手品だね。いくつ手錠を増やしても…同じだよ!!」
デイジーは躊躇いなく雲雀に向かっていく。
「僕も同感さ。」
雲雀はそう言ってデイジーの攻撃を軽やかにかわしていく。
そして、かわす度に手錠をかけていった。
「10や、20ならね。」
4つかけた所で、雲雀のリングが光る。
その瞬間、雲のボンゴレ匣が真価を発揮した。
ガシャシャシャシャシャ…
ガシャシャシャ…
みるみるうちにデイジーを捕える手錠の輪が増えていき、
やがてそれは鎖つきの全身拘束具となった。
「ぼっ!!?」
「てっ、手錠が拘束具のように!!」
「自切するスピードを上回る雲属性の増殖!!……にしても…こんな形態になるのか!!」
草壁だけでなく、この数日間家庭教師をしていたディーノすらも驚く形態。
身動きが取れなくなったデイジーは焦って叫ぶ。
「こんなの……聞いてない!!」
「君……死にたがってたみたいだけど、そんな甘えは許されないよ。」
「え?」
「絞め上げよう。」
雲雀がそう言った途端、手錠の輪が小さくなっていく。
それはデイジーの全身に食い込んでいくようで、あらゆる部位から血が噴き出した。
「し!!しまるぅ!!!」
『(うわ…結構痛そ……)』
雲雀による制裁を受けるデイジーを、少しばかり哀れに思う檸檬。
「聞いてない!!白蘭様に聞いてないよ!!手錠がこんな風になるなんて!!!」
血反吐を吐きながら断末魔を発するデイジーを前に、ディーノは確信した。
「(お前の思惑通りだぜ、入江正一……)」
入江が“この世界で”白蘭を倒そうとしていた理由。
それは、他のパラレルワールドで作られなかったボンゴレ匣は、
白蘭に攻略されていない唯一の武器であるから。
「ぼ……ばふっ…」
デイジーはついに、泡を吹いて倒れた。
雲雀はゆっくりと近づいて、気絶した彼に言う。
「思ったより情けないね。君が死にたくても死ねないのは、晴の活性の炎が体内を巡ってるからだろ?」
そして、デイジーの右手からマーレリングを外した。
「これは風紀委員が没収する。」
「う…」
みるみるうちに普通の人間に戻っていくデイジーを見て、ディーノはホッと一息。
「リングを取っちまえば真6弔花と言えど…ただの人間も同然だ。」
「やりましたね恭さん!!さすが委員長!!」
草壁が歓喜しながら駆け寄って行く。
「さて、ツナ達に報告しねーとな。」
『うんっ!』
「何だ?檸檬、やけに嬉しそうじゃねーか?」
『えっ…うん、やっぱり恭弥はすごいなーって思って♪』
自分のことのように喜び笑顔を見せる檸檬に、ディーノもふっと微笑んだ。
「でもよボス、近くに敵がいたらやべーんじゃねーか?」
『とりあえずー………うん、いないみたい!』
波長で辺りを見回した檸檬の言葉を聞き、ディーノは言った。
「んじゃ、校庭にいちゃ目立つからな、校舎内に…」
「部外者は立ち入り禁止だよ。」
『恭弥!!』
「ったくおめーは…こんな時までそれかよ。」
『ここは10年後の世界なんだから、あたし達だってただの元生徒で、今は部外者でしょ?』
「恭さん、一先ず待機するためにも…」
草壁の台詞を聞きながら雲雀がそっぽを向き、檸檬にはそれが嫌々ながらの承諾だと分かった。
『ディーノ、怪我の手当はどうしよっか…保健室のガーゼとか使って…』
「そんなの檸檬がやる必要ないよ。」
『恭弥ってば…』
「それに、手当が要るのは檸檬もでしょ。背中。」
『あ、あたしは…頑張れば……すぐ治るし…』
「関係無いね。」
ぼそぼそと言う檸檬の手を引き歩き出す雲雀。
本校舎に向かっているあたり、どうやら応接室が目的地のようだ。
『ちょ、ちょっと恭弥っ!せめてディーノ達と保健室行こうよ!』
「群れたくない。」
『もーっ!!』
スタスタ行ってしまう雲雀と檸檬に苦笑しながら、ディーノは無線を繋ぐ。
ツナに、雲雀がデイジーを倒したことを告げてから、ガーゼや包帯を借りに保健室へと向かった。
ディーノからの報告を受けたツナ達は、当面の危機がないと分かり安堵した。
すると、その様子を見ていた川平が「君たちには貸し一つだ」と言って店を明け渡し去ってしまった。
自分が何者か、そのことを告げないまま…。
---
------
-----------
「やはりあれは……」
山奥、森の中に、桔梗とブルーベルは空へと伸びる一筋の白い線を見つけやって来た。
そこに現れたのは、トリカブト。
「びくっ!」
「御苦労さまですトリカブト、守ってくれていたのですね。」
「あ。蜜柑もいるじゃんっ。」
「遅かったわね、桔梗、ブルーベル。」
ピグに乗ってやって来ていた蜜柑は、白蘭を見た。
白銀の楕円に近い球体の中で、羽を広げて力を使う白蘭。
不意にその球体が弾け、中にいた白蘭が荒い息遣いをしながら言う。
「見つけた……川平という、不動産屋だ。」
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同じ頃だった。
『恭弥、やっぱり先に保健室…』
「ガーゼや包帯だったら、応接室にもあるよ。」
『けど…』
檸檬が反論しようとした、その時だった。
どくんっ、
『つぅっ……!?』
「檸檬?」
突如、激しい頭痛が檸檬を襲う。
『な、何…コレ……』
「檸檬…!?」
自分を呼ぶ雲雀の声を薄れゆく意識の中で感じ取りながら、檸檬はふっと気を失った。