未来編②
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突如出現した存在に、場にいる全ての人間が驚きを隠せなかった。
「む、骸ーー!!?」
「骸様の…有幻覚……」
「あれが!?」
クロームの小さな呟きにツナが反応し、白蘭は突撃しながら右手中指のリングに炎を灯した。
その炎が、骸の槍とぶつかる。
『(凄い衝撃…!)』
ビリビリと空気を伝って来る衝撃に、檸檬は体を震わせる。
と、激突の直後に骸は右目の数字を“一”に変えた。
地獄道の発動である。
途端に白蘭の足元に亀裂が入り、下から噴き出るマグマのような火柱が現れた。
「ひいい!スゲー!!」
「お久しぶりです、沢田綱吉。」
思わず一歩下がったツナに、骸は余裕の笑みで挨拶する。
すると、ツナも骸の変化に気付いた。
「か…髪が伸びてる!!10年後の骸!?」
欲望
『ほんとに…骸なの…?』
メローネ基地突入の前に倒れたクロームの思念を辿り、骸に会った時のことを思い出した檸檬。
未だ信じられないとでも言うような、驚愕の視線を送る。
が、その心情を悟った骸はニコリと微笑んで。
「先日は心配をかけましたね、檸檬。」
『えっ…』
「この通り、舞い戻って来ましたよ。」
『骸……良かった……』
「で、でも…怪我とか大丈夫なの?」
檸檬と同じくクロームへの幻覚作用が途絶えたことを思い出したツナは、骸に尋ねる。
すると、火柱の中から白蘭の声。
「綱吉クンの言う通りだよ、骸クン。」
「ひっ、効いてない!」
幻覚で出来た火柱などまるで効果が無いのか、白蘭はその場で直立したまま続ける。
「僕の部下に憑依した君は、あの時精神ごと消したハズなんだけどな。」
『精神ごと、って…』
「少なくとも、こんな幻覚はもう作れない程にね。」
「クフフフフ……確かに、貴方の策略にはまり密閉された空間に閉じ込められた時はもうダメかと思いましたよ……一人でしたらね。」
「ん?……あっ、そっかー…お仲間に外から穴を開けてもらったのね。」
白蘭の推論は当たっているらしく、骸は特に反論らしき反論はしなかった。
「アレは僕の仲間というには、出来の悪過ぎる子供ですが。」
「子供…?」
疑問符を浮かべるツナに対し、檸檬の中にはふっと“ある可能性”が浮かぶ。
「どちらにせよ、貴方に貰ったダメージは大きかったですよ。つい先刻まで、こんなことは出来なかった程にね。」
火柱の数、太さ、リアリティ、全てが増幅し、白蘭への攻撃となる。
ツナは思わず驚くが、檸檬は透視で全くダメージを負っていない白蘭を認識した。
「ハハハ、ダメダメ骸クン。これじゃ僕には勝てないよ。」
『(これだけの有幻覚で、無傷だなんて…)』
「いくら本物に近い幻覚でも、所詮君は偽の作り物だ。僕に勝ちたいんなら少なくとも……、」
皮肉を込めたように、白蘭は言う。
「復讐者の牢獄から抜け出して、君自身の肉体で戦わないとね。」
「(本当に骸は……10年間ずっと牢獄に……)」
『骸……』
「クフフフ、ご心配なく。僕が自らの手で直接あなたを倒す日も遠くはない。」
「ん!?」
予想に反した返答に、一瞬だけ表情を変える白蘭。
「我々は既に動き出している……とだけ言っておきましょう。」
「(我々…!?)」
クロームにも何一つ伝わっていないらしく、ツナも檸檬も疑問符を浮かべる。
「それに今この場では、足止めさえできれば僕の勝ちですよ。さぁ、大空のアルコバレーノを並盛町へ連れて行くのです、沢田綱吉。」
「骸…!」
「ツナ、ココは骸に任せた方が良さそうだ。」
ディーノの意見もあり、ツナは躊躇いながらも行こうとする。
が、ふと隣で骸に何か言おうとしているクロームを見て。
「………骸!!また会えるのか!?」
クロームの代わりにツナが投げかけたその問いに、骸はクフフと笑って答えた。
「当然です、僕以外の人間に世界を取られるのは面白くありませんからね。」
その言葉のどこまでが真意なのかは誰にも分からなかった。
それでも今はちゃんと味方でいてくれる…そう信じようと決めた檸檬に、骸は付け足した。
「それに……また会うと、約束しましたから。」
『骸………うん、絶対だよ!』
ガシッ、
『わっ…恭弥!??』
「檸檬は、僕のだよ。」
『ど、どしたの急に……』
不意に腕を掴んだ雲雀に戸惑う檸檬。
が、骸はその様子を見て目を細める。
「……檸檬の力と行く末を知ってもなお、傍にいるつもりですか。」
「…君には関係ないよ。」
自分に向けて殺気を放つ雲雀にも、骸は余裕な口元を崩さない。
「まぁいいでしょう。せいぜい繋ぎ止められるよう心掛けることです。君が“カシス”を抑えられなかったその時は……檸檬は僕が貰いますから。」
『カシスを…抑える??』
檸檬にも雲雀にも全てを把握することは出来なかったが、骸は気にも留めずツナに念を押す。
「いいですか、沢田綱吉。絶対に大空のアルコバレーノ・ユニを、白蘭に渡してはいけない。」
「黙って♪」
「ぐっ、」
「いや!!」
「あ!!」
蓮の花茎の呪縛を破り、白蘭が骸の有幻覚を素手で突き破る。
青ざめるクロームとツナを、骸は急かした。
「……さあ早く、転送システムに炎を。」
「わ、分かった………クローム!み、みんな!!」
ツナ、獄寺、山本、了平、バジル、ディーノ、クロームのリングに炎が灯る。
と、その時。
『あっ…!』
檸檬が見つけたのは、真6弔花よりも早く雲ハリネズミのトゲを抜けて来た蜜柑だった。
「逃げるの?姉さん。」
『……あたし…やっぱり戦えないよ…蜜柑……』
檸檬の台詞が終わらないうちに、複数の属性の炎は真っ直ぐ転送システムに届き、ツナ達をワープさせた。
蜜柑の視界にも眩い光が舞い込み、反射的に瞼を閉じさせる。
次に目を開けた時にはもう、檸檬を始めボンゴレ側の人間の姿は無かった。
その様子を見上げながら白蘭は言う。
「上手く逃がしたつもりだろうけど意味ないな、骸クン。綱吉クン達の寿命はほんのちょっと伸びただけだよ。」
「僕はボンゴレファミリーを助けたかったワケじゃありませんよ。」
「ん?」
「大空のアルコバレーノがあなたの手に渡らなければ、充分です。」
「…分かってるような口ぶりだね。」
探り合いのような緊迫した空気が流れる。
しかし、ふと横目で蜜柑の姿を捉えた骸が言った。
「それにしても、まだ傍に置いていたとは。」
「僕が誰を部下にしようと勝手だろ?」
「……“彼女”こそが、あなたの“願い”なんでしょうかね?」
骸の言葉にピクリと眉を動かした白蘭。
それを“不快”の表れだと感じ取った蜜柑が、骸に銃を向ける。
「いいよ蜜柑、僕が消す。」
「…分かりました。」
「少しお喋りが過ぎたね、骸クン。」
白蘭のマーレリングがオレンジ色の光を纏う。
それは、目の前の有幻覚にぶつけられた。
「バイバイ♪」
「到着、遅れて申し訳ありませんでした。」
「別にいいよ、綱吉クン達の行先は分かってるんだし。追いかけてユニちゃんを奪えばいい。」
笑顔でそういう白蘭に、蜜柑は軽いお辞儀を返す。
そこにようやく、雲ハリネズミのトゲを抜けてきた真6弔花が到着する。
「白蘭様、お怪我は!?」
「ないない。ちょっと口寂しいけどね。」
「申し訳ありません!!我々がついていながらユニ様を……」
「いやー、あの娘にはしてやられたよね。こんなことなら素直にチョイスの再戦うけときゃ良かったかなー…」
白蘭は軽く後悔したが、ユニに予知能力があることを考え、この状況は避けられなかったのだという結論に辿りつく。
すると、マシュマロの袋を渡しながらブルーベルが白蘭に文句を言った。
「何でユニなんて人形娘に振り回されてんの!?殺しちゃえばいいのにーーー!!」
彼女の言う通り、白蘭がユニを生きて連れ戻すことに執着しなければツナ達の逃走は防げた。
ところが白蘭は笑みを絶やさずに。
「やだなーブルーベル、ユニちゃんを殺すなんて。」
次の瞬間、首に触れた白蘭の指先に、ブルーベルは恐怖した。
おまけに、笑顔だったのが嘘のような殺気に溢れる表情。
「次言ったら、殺す。」
思わず尻餅をついたブルーベルを宥めながら、桔梗が白蘭に問う。
何故、ユニを生きたまま連れ戻すことに固執するのか。
白蘭は話した。
ここ以外の世界でコンプリートした73は、白蘭を世界の創造主たる存在にするまでの力を発揮していなかったのだ。
つまり……おしゃぶりを光らせることが出来た存在、魂を伴ったユニこそが73の覚醒に必要なピース。
「この際、何故ユニの魂がボンゴレなんかを頼りに今この世界へ戻って来たのかなんて、どーでもいいや。」
袋から鷲掴みしたマシュマロを、口に含む。
「欲しい……あの娘が…」
ユニにこだわる理由を呆然と聞いていた真6弔花に、白蘭は笑顔を貼り付けて命令した。
「分かったら、さっさと追おうね♪一刻も早くユニを奪え。」
すぐに転送システムをこちらへ戻らせる算段を立て始める真6弔花。
その横で、蜜柑はただ一人黙りこんでいた。
脳裏に蘇る、先程の骸の言葉……
---「“彼女”こそが、あなたの“願い”なんでしょうかね?」
どういう意味なのか、毛ほども理解できなかった。
六道骸の揺さぶりなのか、それとも。
「蜜柑、どうかした?」
「…いえ、何でもありません。」
「えー?怪しいなぁ~♪」
からかうように笑う白蘭を前に、思いだす。
この時代の檸檬と闘った時、問われたこと……
---『どうして彼に従うの!?』
そこに理由は無い。
蜜柑は今、何度も自分に言い聞かせていた。
でなければ、脳内にエラーが起きてしまうような気がしたのだ。
メリットがあるから……それだけ。
ただ頭の片隅に浮かんでは消える“何か”があった。
それは確実に古傷を伴っている、蜜柑はそう確信していた。
それ故に、抑え込んだ。
もう、いらないのだ、と。
「む、骸ーー!!?」
「骸様の…有幻覚……」
「あれが!?」
クロームの小さな呟きにツナが反応し、白蘭は突撃しながら右手中指のリングに炎を灯した。
その炎が、骸の槍とぶつかる。
『(凄い衝撃…!)』
ビリビリと空気を伝って来る衝撃に、檸檬は体を震わせる。
と、激突の直後に骸は右目の数字を“一”に変えた。
地獄道の発動である。
途端に白蘭の足元に亀裂が入り、下から噴き出るマグマのような火柱が現れた。
「ひいい!スゲー!!」
「お久しぶりです、沢田綱吉。」
思わず一歩下がったツナに、骸は余裕の笑みで挨拶する。
すると、ツナも骸の変化に気付いた。
「か…髪が伸びてる!!10年後の骸!?」
欲望
『ほんとに…骸なの…?』
メローネ基地突入の前に倒れたクロームの思念を辿り、骸に会った時のことを思い出した檸檬。
未だ信じられないとでも言うような、驚愕の視線を送る。
が、その心情を悟った骸はニコリと微笑んで。
「先日は心配をかけましたね、檸檬。」
『えっ…』
「この通り、舞い戻って来ましたよ。」
『骸……良かった……』
「で、でも…怪我とか大丈夫なの?」
檸檬と同じくクロームへの幻覚作用が途絶えたことを思い出したツナは、骸に尋ねる。
すると、火柱の中から白蘭の声。
「綱吉クンの言う通りだよ、骸クン。」
「ひっ、効いてない!」
幻覚で出来た火柱などまるで効果が無いのか、白蘭はその場で直立したまま続ける。
「僕の部下に憑依した君は、あの時精神ごと消したハズなんだけどな。」
『精神ごと、って…』
「少なくとも、こんな幻覚はもう作れない程にね。」
「クフフフフ……確かに、貴方の策略にはまり密閉された空間に閉じ込められた時はもうダメかと思いましたよ……一人でしたらね。」
「ん?……あっ、そっかー…お仲間に外から穴を開けてもらったのね。」
白蘭の推論は当たっているらしく、骸は特に反論らしき反論はしなかった。
「アレは僕の仲間というには、出来の悪過ぎる子供ですが。」
「子供…?」
疑問符を浮かべるツナに対し、檸檬の中にはふっと“ある可能性”が浮かぶ。
「どちらにせよ、貴方に貰ったダメージは大きかったですよ。つい先刻まで、こんなことは出来なかった程にね。」
火柱の数、太さ、リアリティ、全てが増幅し、白蘭への攻撃となる。
ツナは思わず驚くが、檸檬は透視で全くダメージを負っていない白蘭を認識した。
「ハハハ、ダメダメ骸クン。これじゃ僕には勝てないよ。」
『(これだけの有幻覚で、無傷だなんて…)』
「いくら本物に近い幻覚でも、所詮君は偽の作り物だ。僕に勝ちたいんなら少なくとも……、」
皮肉を込めたように、白蘭は言う。
「復讐者の牢獄から抜け出して、君自身の肉体で戦わないとね。」
「(本当に骸は……10年間ずっと牢獄に……)」
『骸……』
「クフフフ、ご心配なく。僕が自らの手で直接あなたを倒す日も遠くはない。」
「ん!?」
予想に反した返答に、一瞬だけ表情を変える白蘭。
「我々は既に動き出している……とだけ言っておきましょう。」
「(我々…!?)」
クロームにも何一つ伝わっていないらしく、ツナも檸檬も疑問符を浮かべる。
「それに今この場では、足止めさえできれば僕の勝ちですよ。さぁ、大空のアルコバレーノを並盛町へ連れて行くのです、沢田綱吉。」
「骸…!」
「ツナ、ココは骸に任せた方が良さそうだ。」
ディーノの意見もあり、ツナは躊躇いながらも行こうとする。
が、ふと隣で骸に何か言おうとしているクロームを見て。
「………骸!!また会えるのか!?」
クロームの代わりにツナが投げかけたその問いに、骸はクフフと笑って答えた。
「当然です、僕以外の人間に世界を取られるのは面白くありませんからね。」
その言葉のどこまでが真意なのかは誰にも分からなかった。
それでも今はちゃんと味方でいてくれる…そう信じようと決めた檸檬に、骸は付け足した。
「それに……また会うと、約束しましたから。」
『骸………うん、絶対だよ!』
ガシッ、
『わっ…恭弥!??』
「檸檬は、僕のだよ。」
『ど、どしたの急に……』
不意に腕を掴んだ雲雀に戸惑う檸檬。
が、骸はその様子を見て目を細める。
「……檸檬の力と行く末を知ってもなお、傍にいるつもりですか。」
「…君には関係ないよ。」
自分に向けて殺気を放つ雲雀にも、骸は余裕な口元を崩さない。
「まぁいいでしょう。せいぜい繋ぎ止められるよう心掛けることです。君が“カシス”を抑えられなかったその時は……檸檬は僕が貰いますから。」
『カシスを…抑える??』
檸檬にも雲雀にも全てを把握することは出来なかったが、骸は気にも留めずツナに念を押す。
「いいですか、沢田綱吉。絶対に大空のアルコバレーノ・ユニを、白蘭に渡してはいけない。」
「黙って♪」
「ぐっ、」
「いや!!」
「あ!!」
蓮の花茎の呪縛を破り、白蘭が骸の有幻覚を素手で突き破る。
青ざめるクロームとツナを、骸は急かした。
「……さあ早く、転送システムに炎を。」
「わ、分かった………クローム!み、みんな!!」
ツナ、獄寺、山本、了平、バジル、ディーノ、クロームのリングに炎が灯る。
と、その時。
『あっ…!』
檸檬が見つけたのは、真6弔花よりも早く雲ハリネズミのトゲを抜けて来た蜜柑だった。
「逃げるの?姉さん。」
『……あたし…やっぱり戦えないよ…蜜柑……』
檸檬の台詞が終わらないうちに、複数の属性の炎は真っ直ぐ転送システムに届き、ツナ達をワープさせた。
蜜柑の視界にも眩い光が舞い込み、反射的に瞼を閉じさせる。
次に目を開けた時にはもう、檸檬を始めボンゴレ側の人間の姿は無かった。
その様子を見上げながら白蘭は言う。
「上手く逃がしたつもりだろうけど意味ないな、骸クン。綱吉クン達の寿命はほんのちょっと伸びただけだよ。」
「僕はボンゴレファミリーを助けたかったワケじゃありませんよ。」
「ん?」
「大空のアルコバレーノがあなたの手に渡らなければ、充分です。」
「…分かってるような口ぶりだね。」
探り合いのような緊迫した空気が流れる。
しかし、ふと横目で蜜柑の姿を捉えた骸が言った。
「それにしても、まだ傍に置いていたとは。」
「僕が誰を部下にしようと勝手だろ?」
「……“彼女”こそが、あなたの“願い”なんでしょうかね?」
骸の言葉にピクリと眉を動かした白蘭。
それを“不快”の表れだと感じ取った蜜柑が、骸に銃を向ける。
「いいよ蜜柑、僕が消す。」
「…分かりました。」
「少しお喋りが過ぎたね、骸クン。」
白蘭のマーレリングがオレンジ色の光を纏う。
それは、目の前の有幻覚にぶつけられた。
「バイバイ♪」
「到着、遅れて申し訳ありませんでした。」
「別にいいよ、綱吉クン達の行先は分かってるんだし。追いかけてユニちゃんを奪えばいい。」
笑顔でそういう白蘭に、蜜柑は軽いお辞儀を返す。
そこにようやく、雲ハリネズミのトゲを抜けてきた真6弔花が到着する。
「白蘭様、お怪我は!?」
「ないない。ちょっと口寂しいけどね。」
「申し訳ありません!!我々がついていながらユニ様を……」
「いやー、あの娘にはしてやられたよね。こんなことなら素直にチョイスの再戦うけときゃ良かったかなー…」
白蘭は軽く後悔したが、ユニに予知能力があることを考え、この状況は避けられなかったのだという結論に辿りつく。
すると、マシュマロの袋を渡しながらブルーベルが白蘭に文句を言った。
「何でユニなんて人形娘に振り回されてんの!?殺しちゃえばいいのにーーー!!」
彼女の言う通り、白蘭がユニを生きて連れ戻すことに執着しなければツナ達の逃走は防げた。
ところが白蘭は笑みを絶やさずに。
「やだなーブルーベル、ユニちゃんを殺すなんて。」
次の瞬間、首に触れた白蘭の指先に、ブルーベルは恐怖した。
おまけに、笑顔だったのが嘘のような殺気に溢れる表情。
「次言ったら、殺す。」
思わず尻餅をついたブルーベルを宥めながら、桔梗が白蘭に問う。
何故、ユニを生きたまま連れ戻すことに固執するのか。
白蘭は話した。
ここ以外の世界でコンプリートした73は、白蘭を世界の創造主たる存在にするまでの力を発揮していなかったのだ。
つまり……おしゃぶりを光らせることが出来た存在、魂を伴ったユニこそが73の覚醒に必要なピース。
「この際、何故ユニの魂がボンゴレなんかを頼りに今この世界へ戻って来たのかなんて、どーでもいいや。」
袋から鷲掴みしたマシュマロを、口に含む。
「欲しい……あの娘が…」
ユニにこだわる理由を呆然と聞いていた真6弔花に、白蘭は笑顔を貼り付けて命令した。
「分かったら、さっさと追おうね♪一刻も早くユニを奪え。」
すぐに転送システムをこちらへ戻らせる算段を立て始める真6弔花。
その横で、蜜柑はただ一人黙りこんでいた。
脳裏に蘇る、先程の骸の言葉……
---「“彼女”こそが、あなたの“願い”なんでしょうかね?」
どういう意味なのか、毛ほども理解できなかった。
六道骸の揺さぶりなのか、それとも。
「蜜柑、どうかした?」
「…いえ、何でもありません。」
「えー?怪しいなぁ~♪」
からかうように笑う白蘭を前に、思いだす。
この時代の檸檬と闘った時、問われたこと……
---『どうして彼に従うの!?』
そこに理由は無い。
蜜柑は今、何度も自分に言い聞かせていた。
でなければ、脳内にエラーが起きてしまうような気がしたのだ。
メリットがあるから……それだけ。
ただ頭の片隅に浮かんでは消える“何か”があった。
それは確実に古傷を伴っている、蜜柑はそう確信していた。
それ故に、抑え込んだ。
もう、いらないのだ、と。