未来編②
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「ピグ、C to “S”。」
「キィーッ!」
再びピグを開匣し、晴の炎へと変換させた蜜柑。
一番傷の酷い右足に、ピグが噴射する炎を当てる。
すると、活性の効果でみるみる傷は塞がっていった。
「まったく、面倒なことしてくれたわ…」
一言呟いてから、ピグに「Again.」と指示を出す。
すると、一度大空属性に戻っていたピグは再び宙返りをし晴属性に変化した。
ファレノプシス・パラドックス2
「わからん!!極限にわからんぞ!!」
それまで大人しく入江の話を聞いていた了平が、ついに叫んだ。
「パラレルワールドの知識を共有できるとは、どーいうことだ!?白蘭の一体何が凄いんだ!?」
「さっきも話したように、“もしも”で分岐するパラレルワールドには色々なパターンの未来が考えられる…」
晴ゴテによる処置を終えた入江は、先ほどよりは幾分か楽そうに話す。
分岐した未来パターンの例として、軍事発達した未来、古代文明を明らかにした未来、医療を進歩させた未来、の3つを挙げた。
「つまり、色んな未来のいいトコ取りが出来るってことだな。」
「いいトコ取り?」
『全ての“もしも”を体験した白蘭は、膨大な情報を手に出来る…』
「その知識を他の世界で使ってみろ、誰よりも有利に生きられる。」
「誰よりも、有利に…」
「ありえねぇコトも起こせるってワケだ。」
そこでようやく、全てが繋がる。
白蘭は他の世界で得た知識を使い、
幻騎士の病気を治し、
ジルを見つけて部下にし、
何百という偶然の発明なくしては生まれ得ない兵器の開発に技術を提供し…
猛スピードで完成させた。
『重なる“偶然”……』
そこで檸檬は思い出す。
この時代の雲雀が、匣兵器開発において頻繁に起こっていた“偶然”について調べていたことを。
『(白蘭の影響だったんだ…)』
ここで、リボーンが新たな問いを投げかける。
今までの話から推察するに、白蘭が能力に目覚めたのは少し前。
僅かな時間でここまで力を持つのは不可能である、と。
「…それは……タイムトラベルで行き来するうちに、僕が過去の白蘭サンにまで能力に気付かせてしまったからなんだ…」
『えっ!?』
「過去の!?」
ある時、入江が過去に戻る際に白蘭の手下に発信装置を仕掛けられ、過去の白蘭にメッセージを伝えたしまったという。
「ってことは、白蘭は10年前からその能力を使えたの?」
「ああ…」
「入江!その間お前は何をしておったのだ!!白蘭の悪事を知りながら放っておいたのか!!」
「お兄さん!!」
『了平さん…!』
掴みかかるような勢いで尋ねる了平に、ツナと檸檬がストップをかける。
すると、入江は静かに答えた。
「僕は記憶を失っていたんだ。」
「え!」
8度目のタイムトラベルで未来へ行った入江は、未来の自分が仕掛けた装置によって記憶を抹消された。
タイムトラベルと白蘭についての記憶だけ、5年間封じられてしまった。
未来の入江の目的は、白蘭を倒すこと。
記憶を封じられたままの自分が白蘭に近づくことで、怪しまれずにスパイ活動を行わせるため。
過去に戻った入江は、未来の自分が残した手紙を読み、その指示に従った。
誰も知らないハズの、バラされたくない秘密も書いてあり、何も知らないまま10年バズーカを使いツナ達を未来へ送った。
「何も知らずに俺達を…?」
「ああ……だからこそ過去の僕は焦ったと思う…檸檬さん、まさか君まで被弾してしまうなんて…」
『えっ?』
「メローネ基地でも言ったけど、捕えられた檸檬さんはヴァリアーにより奪還され、イタリアの戦力として数えられるハズだった……だから僕は、君にはバズーカを当てないよう手紙に書いたんだ。」
『そうだったんだ……あの、ごめんなさい…』
檸檬が眉を下げると、入江は首を横に振って。
「いや、実際檸檬さんは本当に飛躍的な成長をしてくれたと思う。この時代の蜜柑さんと互角に渡り合うなんて、僕も計算できなかったからね。」
ともかく、入江は手紙が勧める通りに海外の大学へ進学し、白蘭と友達になる。
人生で最も楽しかったと言っても過言ではないこの時期に、チョイスも生まれた。
だが5年後、入江は全てを思い出し、白蘭が敵だという事実にパニックを起こしそうになった。
スパイとしてやっていく覚悟はできたものの、白蘭に滅ぼされていないのは唯一今いる世界のみと分かり愕然とする。
「え!?何だって!?」
「だってパラレルワールドってたくさんあるんでしょ!?」
「ココ以外の全ての世界が、白蘭のものになっているということになるぞ!!」
「その通りだ……5年前の段階で、白蘭サンの能力による世界征服を阻止できる確率は少なく見積もって8兆分の1…」
『なっ…そんな……低過ぎる…』
「つまり、無数のパラレルワールドの中でもこの世界だけが、唯一白蘭サンを倒すチャンスのある未来なんだ!!」
「そんなことって…」
絶句するツナの横で、リボーンが言う。
この世界が残った理由、それは…
未来の入江が過去の入江に指示をして作った未来だからだと。
「それだけじゃない…僕と綱吉君が唯一、偶然出会えた世界でもあるんだ。」
「お、俺と!?」
「それに…雲雀君と檸檬さんにも…」
『あたしと…恭弥…?』
「中3になった綱吉君の自転車のパンクを、僕が直すんだ。雲雀君と檸檬さんは、そこに居合わせた……」
その出会いが未来に影響し、
この世界にはボンゴレ匣が生み出されたのだという。
「それでお前は、白蘭を倒すにはこの時代しかねぇって言ってたんだな。」
「ああ、他のどのパラレルワールドでも73は奪われ、ボンゴレファミリーも壊滅しているだろう…」
『そ、そんな…』
「それと、これはのちに分かったことなんだけど……蜜柑さんが心を失って白蘭サンに協力してしまった世界は、ここが唯一だ。」
『この世界、だけ…!?』
目を見開く檸檬に、入江はゆっくりと頷く。
「僕がパラレルワールドで蜜柑さんに出会った時、彼女は笑っていた。感情を失っていなかったんだ。」
『でも、この世界では…』
「蜜柑さんの過去に何があったかは分からない……しかし、この世界にのみ特別な事件が起こったのは確かなんだ。そして……だからこそ白蘭サンに仕えた。」
『……あたしへの憎しみだけで、動いてしまったから…?』
「…恐らくは。」
泣きそうになり黙りこむ檸檬の代わりに、リボーンが尋ねる。
「何故そう思ったんだ?」
「…僕はタイムトラベルでいくつかのパラレルワールドに行ったけど…何処の世界でも白蘭サンといる蜜柑さんを見ていない。それに……」
この世界で白蘭が初めて入江と蜜柑を対面させた時、入江は尋ねた。
---「白蘭サン、彼女は一体…」
---「素性はまだ内緒♪もし勝手に調べたら、正チャンのことクビにしちゃうからね。」
---「わ、分かりました…。でもボス補佐って…彼女、そんなに強いんですか?」
---「強いよ。けどボス補佐にしたのはそんな理由じゃないんだ。」
---「え…?」
---「奇跡みたいな存在なんだよ、彼女は。全世界を探したって、二度と見つかりはしないのさ♪」
「“奇跡”…?」
「白蘭サンは確かにそう言った。それはつまり……他の世界の蜜柑さんは白蘭サンに従うことなく死んでしまった……僕は、そう推測してる…」
『う、うそ…』
「感情を失わなかったからこそ、世界征服という白蘭サンの企てに歯向かったのかも知れない……僕にはその程度の予測しかできないけど…」
堪え切れない哀しみに、檸檬は入江やツナに背を向ける。
観覧席から移動し、少し離れた場所で聞いていた雲雀には檸檬の目元が光ったのが見えた。
「……檸檬、」
『恭弥っ…』
傍に来た雲雀を見上げ、檸檬は零れそうになった涙を拭う。
『…大丈夫……この世界の蜜柑はまだ、ちゃんと生きてるから…』
「……うん…」
『仲直り、しなきゃ……この世界で…絶対に…!』
決意を口にしながらもなお肩を震わせる檸檬の頭に、雲雀はそっと手を乗せた。
「他の世界で蜜柑さんが…白蘭に歯向かって死んじゃったなんて……」
「ボンゴレ壊滅ってことは、他の世界の俺達も……」
「そうだ……俺はこの世界でも死んでるんだった…」
「それは違うよ、綱吉君。」
入江は、ミルフィオーレがツナを射殺する前に弾をすり替えた。
撃たれた者を仮死状態にする“特殊弾”に。
「じゃあ、あの棺桶は……」
「敵の目を欺くためのカモフラージュだ……」
『それってつまり…』
「…10代目は、生きてた……」
「仮死状態ではあったが、彼は棺桶の中で綱吉君が来るのを楽しみに待ってたハズだ。」
「彼は処刑の前の日に言ってたよ。」
---「もうすぐ、一番可能性を持っていた頃の俺が来る。」
「え!?」
確かに、経験も体力も知力も遥かに劣っている……
でもあの時の自分が仲間との毎日の中で成長力と意外性がある…
つまり、
「白蘭を倒せる、一番の可能性を持った自分だって。」
「それなら俺も同感だぞ。お前らの伸び盛りっぷりは何度もミラクルをやってのけたからな。」
「…じゃあ未来の俺は本気で……この、10年前の俺達を…?」
「そうだ……君たちを待ってたのはボンゴレリング目的の白蘭サンだけじゃない。むしろ、この時代の綱吉君や僕だ!!」
それは、今ココにいるツナ達こそ、白蘭に対抗しうる光となる存在だからで。
「……選ばれたツナ達と…選ばれた時代か…」
「…難しくてよく分からない所もあったけど……それだけはしっかり分かった。なのに…負けちゃった……そんな大きな意味や想いがあるなんて知らずに……」
「そ、君達の負け♪」
ツナの言葉を遮った声に、場に居る全員が一斉にそちらを向く。
そこには、真6弔花と蜜柑を引き連れた白蘭。
「僕のことこんなによく分かってるのに、残念だったね、正チャン。」
「白蘭!!」
『蜜柑…!』
複雑な表情を向ける檸檬に、蜜柑はひたすら冷たい視線を返す。
その横で、白蘭は笑顔で言い放つ。
「結局どの世界でも僕には勝てないのさ。約束は守ってもらうよ。ボンゴレリングは全て頂いて、君達はどーしよーかなー……あ、檸檬チャンはまた真っ白な部屋に閉じ込めてあげようね、DARQの力を渡してくれるまで♪」
『…あの部屋、趣味悪いからイヤよ。』
「ボンゴレが負けた時点で檸檬チャンに拒否権は無いよ。これでも僕は君の第六感を評価してるんだ、極めれば時空間移動も可能だろう?」
『それで…何?今度は未来の情報を過去に送ろうっての?』
「そんなトコかな♪」
「待って下さい!約束なら、僕らにもあったハズだ……」
入江は、白蘭と2人でやった最後のチョイスで勝利したことを思い出す。
そして、「次のチョイスでは正チャンの好きな条件を何でも飲む」と言ったことも。
「僕はチョイスの再戦を希望する!!」
「うーん……悪いけど、そんな話覚えてないなぁ。」
『(あの、目…!!)』
入江と言い合いを続ける白蘭の瞳を見て、檸檬は確信する。
白蘭は確実にその約束を覚えている、と。
「そんな話無かったって。無い話は受けられないよ。」
『うそよ!絶対に覚えてる!!』
「檸檬さん…!」
『あたしの透視はごまかせな……』
「黙らないと、撃つわよ。」
スッと向けられた銃口に、檸檬は口をつぐむ。
「…そーゆーワケで、ミルフィオーレのボスとして正式にお断り♪」
「くっ…」
このまま白蘭の思うままリングを奪われてしまう……
そう思ったツナが歯を食いしばった、その時。
「私は反対です。」
それまで無かった気配が、その場に現れる。
同時に、リボーンのおしゃぶりが眩い光を放ち……
「白蘭、ミルフィオーレのブラックスペルのボスである私にも、決定権の半分はあるハズです。」
「ユニ……貴様…!」
白く大きな帽子と白いマントに身を包んだ少女の登場に、白蘭は少しだけ眉間に皺を寄せた。
「キィーッ!」
再びピグを開匣し、晴の炎へと変換させた蜜柑。
一番傷の酷い右足に、ピグが噴射する炎を当てる。
すると、活性の効果でみるみる傷は塞がっていった。
「まったく、面倒なことしてくれたわ…」
一言呟いてから、ピグに「Again.」と指示を出す。
すると、一度大空属性に戻っていたピグは再び宙返りをし晴属性に変化した。
ファレノプシス・パラドックス2
「わからん!!極限にわからんぞ!!」
それまで大人しく入江の話を聞いていた了平が、ついに叫んだ。
「パラレルワールドの知識を共有できるとは、どーいうことだ!?白蘭の一体何が凄いんだ!?」
「さっきも話したように、“もしも”で分岐するパラレルワールドには色々なパターンの未来が考えられる…」
晴ゴテによる処置を終えた入江は、先ほどよりは幾分か楽そうに話す。
分岐した未来パターンの例として、軍事発達した未来、古代文明を明らかにした未来、医療を進歩させた未来、の3つを挙げた。
「つまり、色んな未来のいいトコ取りが出来るってことだな。」
「いいトコ取り?」
『全ての“もしも”を体験した白蘭は、膨大な情報を手に出来る…』
「その知識を他の世界で使ってみろ、誰よりも有利に生きられる。」
「誰よりも、有利に…」
「ありえねぇコトも起こせるってワケだ。」
そこでようやく、全てが繋がる。
白蘭は他の世界で得た知識を使い、
幻騎士の病気を治し、
ジルを見つけて部下にし、
何百という偶然の発明なくしては生まれ得ない兵器の開発に技術を提供し…
猛スピードで完成させた。
『重なる“偶然”……』
そこで檸檬は思い出す。
この時代の雲雀が、匣兵器開発において頻繁に起こっていた“偶然”について調べていたことを。
『(白蘭の影響だったんだ…)』
ここで、リボーンが新たな問いを投げかける。
今までの話から推察するに、白蘭が能力に目覚めたのは少し前。
僅かな時間でここまで力を持つのは不可能である、と。
「…それは……タイムトラベルで行き来するうちに、僕が過去の白蘭サンにまで能力に気付かせてしまったからなんだ…」
『えっ!?』
「過去の!?」
ある時、入江が過去に戻る際に白蘭の手下に発信装置を仕掛けられ、過去の白蘭にメッセージを伝えたしまったという。
「ってことは、白蘭は10年前からその能力を使えたの?」
「ああ…」
「入江!その間お前は何をしておったのだ!!白蘭の悪事を知りながら放っておいたのか!!」
「お兄さん!!」
『了平さん…!』
掴みかかるような勢いで尋ねる了平に、ツナと檸檬がストップをかける。
すると、入江は静かに答えた。
「僕は記憶を失っていたんだ。」
「え!」
8度目のタイムトラベルで未来へ行った入江は、未来の自分が仕掛けた装置によって記憶を抹消された。
タイムトラベルと白蘭についての記憶だけ、5年間封じられてしまった。
未来の入江の目的は、白蘭を倒すこと。
記憶を封じられたままの自分が白蘭に近づくことで、怪しまれずにスパイ活動を行わせるため。
過去に戻った入江は、未来の自分が残した手紙を読み、その指示に従った。
誰も知らないハズの、バラされたくない秘密も書いてあり、何も知らないまま10年バズーカを使いツナ達を未来へ送った。
「何も知らずに俺達を…?」
「ああ……だからこそ過去の僕は焦ったと思う…檸檬さん、まさか君まで被弾してしまうなんて…」
『えっ?』
「メローネ基地でも言ったけど、捕えられた檸檬さんはヴァリアーにより奪還され、イタリアの戦力として数えられるハズだった……だから僕は、君にはバズーカを当てないよう手紙に書いたんだ。」
『そうだったんだ……あの、ごめんなさい…』
檸檬が眉を下げると、入江は首を横に振って。
「いや、実際檸檬さんは本当に飛躍的な成長をしてくれたと思う。この時代の蜜柑さんと互角に渡り合うなんて、僕も計算できなかったからね。」
ともかく、入江は手紙が勧める通りに海外の大学へ進学し、白蘭と友達になる。
人生で最も楽しかったと言っても過言ではないこの時期に、チョイスも生まれた。
だが5年後、入江は全てを思い出し、白蘭が敵だという事実にパニックを起こしそうになった。
スパイとしてやっていく覚悟はできたものの、白蘭に滅ぼされていないのは唯一今いる世界のみと分かり愕然とする。
「え!?何だって!?」
「だってパラレルワールドってたくさんあるんでしょ!?」
「ココ以外の全ての世界が、白蘭のものになっているということになるぞ!!」
「その通りだ……5年前の段階で、白蘭サンの能力による世界征服を阻止できる確率は少なく見積もって8兆分の1…」
『なっ…そんな……低過ぎる…』
「つまり、無数のパラレルワールドの中でもこの世界だけが、唯一白蘭サンを倒すチャンスのある未来なんだ!!」
「そんなことって…」
絶句するツナの横で、リボーンが言う。
この世界が残った理由、それは…
未来の入江が過去の入江に指示をして作った未来だからだと。
「それだけじゃない…僕と綱吉君が唯一、偶然出会えた世界でもあるんだ。」
「お、俺と!?」
「それに…雲雀君と檸檬さんにも…」
『あたしと…恭弥…?』
「中3になった綱吉君の自転車のパンクを、僕が直すんだ。雲雀君と檸檬さんは、そこに居合わせた……」
その出会いが未来に影響し、
この世界にはボンゴレ匣が生み出されたのだという。
「それでお前は、白蘭を倒すにはこの時代しかねぇって言ってたんだな。」
「ああ、他のどのパラレルワールドでも73は奪われ、ボンゴレファミリーも壊滅しているだろう…」
『そ、そんな…』
「それと、これはのちに分かったことなんだけど……蜜柑さんが心を失って白蘭サンに協力してしまった世界は、ここが唯一だ。」
『この世界、だけ…!?』
目を見開く檸檬に、入江はゆっくりと頷く。
「僕がパラレルワールドで蜜柑さんに出会った時、彼女は笑っていた。感情を失っていなかったんだ。」
『でも、この世界では…』
「蜜柑さんの過去に何があったかは分からない……しかし、この世界にのみ特別な事件が起こったのは確かなんだ。そして……だからこそ白蘭サンに仕えた。」
『……あたしへの憎しみだけで、動いてしまったから…?』
「…恐らくは。」
泣きそうになり黙りこむ檸檬の代わりに、リボーンが尋ねる。
「何故そう思ったんだ?」
「…僕はタイムトラベルでいくつかのパラレルワールドに行ったけど…何処の世界でも白蘭サンといる蜜柑さんを見ていない。それに……」
この世界で白蘭が初めて入江と蜜柑を対面させた時、入江は尋ねた。
---「白蘭サン、彼女は一体…」
---「素性はまだ内緒♪もし勝手に調べたら、正チャンのことクビにしちゃうからね。」
---「わ、分かりました…。でもボス補佐って…彼女、そんなに強いんですか?」
---「強いよ。けどボス補佐にしたのはそんな理由じゃないんだ。」
---「え…?」
---「奇跡みたいな存在なんだよ、彼女は。全世界を探したって、二度と見つかりはしないのさ♪」
「“奇跡”…?」
「白蘭サンは確かにそう言った。それはつまり……他の世界の蜜柑さんは白蘭サンに従うことなく死んでしまった……僕は、そう推測してる…」
『う、うそ…』
「感情を失わなかったからこそ、世界征服という白蘭サンの企てに歯向かったのかも知れない……僕にはその程度の予測しかできないけど…」
堪え切れない哀しみに、檸檬は入江やツナに背を向ける。
観覧席から移動し、少し離れた場所で聞いていた雲雀には檸檬の目元が光ったのが見えた。
「……檸檬、」
『恭弥っ…』
傍に来た雲雀を見上げ、檸檬は零れそうになった涙を拭う。
『…大丈夫……この世界の蜜柑はまだ、ちゃんと生きてるから…』
「……うん…」
『仲直り、しなきゃ……この世界で…絶対に…!』
決意を口にしながらもなお肩を震わせる檸檬の頭に、雲雀はそっと手を乗せた。
「他の世界で蜜柑さんが…白蘭に歯向かって死んじゃったなんて……」
「ボンゴレ壊滅ってことは、他の世界の俺達も……」
「そうだ……俺はこの世界でも死んでるんだった…」
「それは違うよ、綱吉君。」
入江は、ミルフィオーレがツナを射殺する前に弾をすり替えた。
撃たれた者を仮死状態にする“特殊弾”に。
「じゃあ、あの棺桶は……」
「敵の目を欺くためのカモフラージュだ……」
『それってつまり…』
「…10代目は、生きてた……」
「仮死状態ではあったが、彼は棺桶の中で綱吉君が来るのを楽しみに待ってたハズだ。」
「彼は処刑の前の日に言ってたよ。」
---「もうすぐ、一番可能性を持っていた頃の俺が来る。」
「え!?」
確かに、経験も体力も知力も遥かに劣っている……
でもあの時の自分が仲間との毎日の中で成長力と意外性がある…
つまり、
「白蘭を倒せる、一番の可能性を持った自分だって。」
「それなら俺も同感だぞ。お前らの伸び盛りっぷりは何度もミラクルをやってのけたからな。」
「…じゃあ未来の俺は本気で……この、10年前の俺達を…?」
「そうだ……君たちを待ってたのはボンゴレリング目的の白蘭サンだけじゃない。むしろ、この時代の綱吉君や僕だ!!」
それは、今ココにいるツナ達こそ、白蘭に対抗しうる光となる存在だからで。
「……選ばれたツナ達と…選ばれた時代か…」
「…難しくてよく分からない所もあったけど……それだけはしっかり分かった。なのに…負けちゃった……そんな大きな意味や想いがあるなんて知らずに……」
「そ、君達の負け♪」
ツナの言葉を遮った声に、場に居る全員が一斉にそちらを向く。
そこには、真6弔花と蜜柑を引き連れた白蘭。
「僕のことこんなによく分かってるのに、残念だったね、正チャン。」
「白蘭!!」
『蜜柑…!』
複雑な表情を向ける檸檬に、蜜柑はひたすら冷たい視線を返す。
その横で、白蘭は笑顔で言い放つ。
「結局どの世界でも僕には勝てないのさ。約束は守ってもらうよ。ボンゴレリングは全て頂いて、君達はどーしよーかなー……あ、檸檬チャンはまた真っ白な部屋に閉じ込めてあげようね、DARQの力を渡してくれるまで♪」
『…あの部屋、趣味悪いからイヤよ。』
「ボンゴレが負けた時点で檸檬チャンに拒否権は無いよ。これでも僕は君の第六感を評価してるんだ、極めれば時空間移動も可能だろう?」
『それで…何?今度は未来の情報を過去に送ろうっての?』
「そんなトコかな♪」
「待って下さい!約束なら、僕らにもあったハズだ……」
入江は、白蘭と2人でやった最後のチョイスで勝利したことを思い出す。
そして、「次のチョイスでは正チャンの好きな条件を何でも飲む」と言ったことも。
「僕はチョイスの再戦を希望する!!」
「うーん……悪いけど、そんな話覚えてないなぁ。」
『(あの、目…!!)』
入江と言い合いを続ける白蘭の瞳を見て、檸檬は確信する。
白蘭は確実にその約束を覚えている、と。
「そんな話無かったって。無い話は受けられないよ。」
『うそよ!絶対に覚えてる!!』
「檸檬さん…!」
『あたしの透視はごまかせな……』
「黙らないと、撃つわよ。」
スッと向けられた銃口に、檸檬は口をつぐむ。
「…そーゆーワケで、ミルフィオーレのボスとして正式にお断り♪」
「くっ…」
このまま白蘭の思うままリングを奪われてしまう……
そう思ったツナが歯を食いしばった、その時。
「私は反対です。」
それまで無かった気配が、その場に現れる。
同時に、リボーンのおしゃぶりが眩い光を放ち……
「白蘭、ミルフィオーレのブラックスペルのボスである私にも、決定権の半分はあるハズです。」
「ユニ……貴様…!」
白く大きな帽子と白いマントに身を包んだ少女の登場に、白蘭は少しだけ眉間に皺を寄せた。