未来編②
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ボンゴレ基地付近。
よろめき走りながら、入江は無線越しのツナに言う。
「何を言ってるんだ綱吉君……僕のことより、先に敵の標的を倒すんだ!!」
-「仲間を見捨てるワケにはいかない!」
ツナの意思に賛同するように、山本も「敵は俺一人で充分だ」と。
「……君達…」
「(頼む…間に合ってくれ!!)」
大きな炎を噴射し、ツナは引き返し始めた。
チョイス終了
『(さっきの爆発音……一体…)』
蜜柑と対峙する檸檬にも、ツナがX BURNERを放った地響きは伝わっていた。
それは蜜柑も同じようで、一瞬だけ関心を音がした方に向ける。
「悪足掻きが絶えないわね…」
『皆は諦めないよ。それに、信じてる。』
「信じる…?それは物理的・科学的確証を得られない未熟者が使う言葉だわ。」
『蜜柑…?』
「だから私は……数値化できる情報しか認めない。」
蜜柑は眼力を強めて、乱射する。
無数の銃弾を回避すべく檸檬は空間移動を使うが、やはり移動箇所が読まれており、そこにも銃弾が飛んでくる。
「データ化された情報ほど、確実な武器は無いのよ。」
『くっ…!』
後ろから迫る銃弾は回避しきれず、仕方なく炎を奪う。
しかし、それをブーツに移して空中に逃げても蜜柑の銃弾は追ってくる。
「疲弊が見えて来たわね……それに…」
ズガガガ…
『(また連撃…!)』
奪える炎の量にも限界がある。
それを超えてしまえば、普通に弾くしか出来ないのだ。
空間移動による回避も、使い過ぎればリバウンドを早めてしまう。
キィンッ…
ピキピキ……パリィンッ!
「さぁ、ナイフはあと何本かしら?」
『(ヤバっ…)』
檸檬としては、ナイフをこれ以上割られるワケにはいかない。
だが蜜柑は、確実に檸檬を追い詰める戦法を取ってきている。
弾切れになる気配も全くない。
「ピグ、C to “R”、炎弾。」
「ガァアーッ!」
『セレネ!』
「コァーッ!」
「…同じ防御が通用するとでも?」
『なっ…』
ピグが炎弾を放つ直前、蜜柑はセレネに向かって破壊の死ぬ気弾を撃った。
追尾型の銃弾を避けきるには、セレネには俊敏さが欠けている。
それは何より、晴の活性でセレネ自身が大きく重くなってしまったからであった。
『ダメっ…!』
檸檬は咄嗟に判断し、セレネを空間移動させた。
ところが、銃弾が外れたにも関わらず蜜柑は口角を上げて。
「…同じ過ちよ、ソレ。」
檸檬がセレネを空間移動で少し離れた上空に移動させた直後、
ピグは雨の炎弾を放った。
それは当初、銃弾と同じくセレネに向けられていたハズだったが……
『いつの間に…!』
檸檬が空間移動をさせるためにセレネの方を向いた、その一瞬の間に、ピグは矛先を変えていた。
雨の炎弾は、檸檬に迫っていたのである。
『うあっ…!!』
回避が遅れ、放たれた炎弾は檸檬の右腕に当たった。
炎の塊をぶつけられた衝撃と、雨の“鎮静”が檸檬を襲う。
「匣兵器を庇おうとするから、自身への攻撃に対する反応が遅れる。」
「コァッ…」
『来ちゃダメ!セレネっ…!』
口ではそう言ったものの、檸檬は右半身からどんどん力が抜けていくのを感じた。
右手の握力が低下し、握っていたナイフも…地に落ちた。
「終わりよ。」
---
------
-------------
「ハハン、ボンゴレX世が作戦変更でこちらに引き返してきますか……ですが、時すでに遅しですよ。」
必死に走り続ける入江を見下ろしながら、桔梗は言う。
「あの標的の炎を消すことなど、赤子の手をひねるより簡単です。フィニッシュです、白蘭様。あなたの旧い友人を殺します。」
桔梗の右手が光ると同時に、ミルフィオーレの基地ユニットのバリアにも大きな亀裂が出来ていた。
中にいるデイジーは、人形をぎゅっと握りしめるだけ。
「よし!次で行ける!!間に合えよ!!」
山本が放ったのは、時雨蒼燕流特式十の型・燕特攻。
バリアは破られ、山本の刃がデイジーに届いた。
しかし……
ドッ、
ズザアッ…
同じ瞬間に、入江の左側腹部を桔梗の葉が貫く。
既に炎の流出により体力を消耗していた入江が、出血に耐え走り続けることなど出来るハズもなく。
「正一!!」
ツナが到着した時にはもう、彼は道の真ん中に倒れ気を失っていた。
「ハハン、もう終わりましたよ。」
「お前!!」
超速で接近したツナの肘打ちも、桔梗は腕で受け止めるだけ。
「もう終わりと言ったでしょう。あなたと闘う理由はありません。」
「く………正一!!」
「お待ちください。」
入江の安否を確認しようとしたツナだが、チェルベッロの1人に止められる。
標的の炎をチェックするから下がっていろ、と。
「くっ…こんな時に…!!」
その時、無線から山本の声が。
-「ツナ!こっちも倒したぜ。」
観覧席側がモニターを確認すると、確かにデイジーは倒れており、チェルベッロがチェックをしていた。
「敵の標的も…」
「同時に…倒れてる!!」
「まさか…ドロー、引き分けか!?」
同時に倒れたのなら、引き分けにせざるを得ない状況。
その連絡を聞いたのか、獄寺が腕を抑えながらフラフラと歩いてきた。
バイクは爆発したものの、かろうじて軽傷で済んでいたのだ。
「野球バカにしては…よくやったじゃねーか……」
「獄寺君!無事だったんだね!!良かった、本当に良かった!!」
「申し訳ありません、10代目……俺なんかより、入江の野郎が……」
全生命エネルギーのうち2%以下になると、標的の炎は消滅する。
今、入江の生命エネルギーは2%を下回り、更に下降を続けていた。
「よって、消滅と認めます。」
-「こちらもです。デイジー氏の炎も、消滅と認めます。」
---
------
蜜柑の銃口が真っ直ぐあたしに向いた、その時。
「コァッ!」
『セレネっ!?』
遥か上空にいたハズのセレネが、あたし達の間に入って羽を広げた。
『何で…!』
もうあたしは、ナイフを1本しか握れないのに…
炎奪取量が2分の1になった今、蜜柑と互角の戦いを続けられる自信は……正直、無い。
「使用者が愚かなら、匣アニマルも低知能なのかしらね。それはそれで、良いデータだわ。」
リバウンドは、まだ来ない。
空間移動で一瞬だけでもこの場を凌げれば、また振り出しに戻せるチャンスはある。
けど、セレネがいなくちゃ意味が無い。
鎮静の炎弾を喰らった今のあたしじゃ、蜜柑とピグの両方をいっぺんに相手に出来ないのに…!
「先に破壊してあげるわ。」
『セレネ!回避して!!』
「コァッ、」
『え…?』
ズガガンッ!
羽が、ひらひらと舞った。
翼の羽と、尾羽。
銃弾の衝撃に耐えきれず、セレネは倒れて元の小さいヒナに戻ってしまった。
『あ……セレネっ……』
「使用者と匣兵器の庇い合い……下らない。両方潰せば、結果は同じよ。」
鎮静の作用が広がってきて、右足も脱力してくる。
その場に膝をついたあたしの手元に、セレネの尾羽が降りて来た。
「第六感が護る為の力?“人間の闇”がよくもそんな血迷った幻想を抱けたものね!その力は……闇の象徴よ。」
『(どうして……)』
セレネは確かに、撃たれる直前にあたしを見た。
何かを訴えるかのように……
ううん、あれは本当にあたしを見ていた?
あたしじゃなくて………
自分の尾羽を見ていた…!?
ふと、右手の先に落ちたセレネの尾羽が、目に入った。
---
-----
一方チョイスでは、同時に2つの標的の炎が消滅したことで引き分けという結果が下されようととしていた。
しかし……
「ハハン、早とちりですよ審判。」
「…う~ん……」
それまで明らかに意識不明だったデイジーが、起き上がったのだ。
まるで攻撃自体受けていなかったかのように、元通り標的の炎を灯して。
「やっぱ死ねないのか~…」
「わっ!!」
「ひゃあっ!」
「蘇った!!」
「そんな…トドメはさしてねーが……完全に倒したハズ!!」
攻撃をした山本すらも驚く中、地に降り立った桔梗が言った。
「デイジーは“不死身の体”を有していましてね。死ねないのが悩みだという変わった男なのです。」
「不死身だなんて…そんなバカなこと!!」
「ありえねーな。」
バジルとリボーンは否定するが、桔梗はこれが真6弔花の真の力なのだと言う。
チェルベッロ2人は無線で連絡し合い、確認する。
そして……
「これにより、チョイスバトルの勝者が決まりました。勝者は……ミルフィオーレファミリーです!!」
「イエーイ♪」
ミルフィオーレ観覧席ではブルーベルが歓声をあげ、ボンゴレ観覧席では皆が青ざめる。
桔梗に攻撃された正一は、ツナの呼び掛けに反応せず意識を失ったまま。
「正一君…?正一君ーーー!!」
チェルベッロは見向きもせずに、フィールドの真ん中へと向かった。
---
------
翼の羽毛とは違って、尾羽は細長く少しだけ硬そうだった。
鋭利な先端は、ナイフを連想させることも出来る。
『(もしかして……セレネ…)』
檸檬のナイフが壊されていく所を、セレネは見ていた。
最後の目配せが、ナイフの補充を促すものだとしたら…
「二度と闘えなくしてあげる……二度と、何も護れないようにね。」
『(この尾羽に、あたしの雲の波動を乗せれば……!)』
鎮静でナイフは握れなくても、雲の波動を指先に落ちた尾羽に乗せることは出来る。
『……あたしね、蜜柑があたしのことだけ嫌うんなら、全然構わない。…でもね、』
檸檬は最後の望みをかけ、第六感で波動を炎に変えて尾羽に灯した。
『これ以上、セレネを冒涜するのは許せないっ!!』
「(これは…!?)」
檸檬の炎が注ぎ込まれた瞬間、落ちていた尾羽は紫色の眩い光を放ち……
次の瞬間、宙に浮いた先端の鋭利な複数の尾羽が蜜柑を囲んだ。
「(あの白鳥の尾羽…!?姉さんの波動で増殖したの…?)」
威嚇するかのように先端は蜜柑に向いている。
一見、それはただの浮いている尾羽。
羽毛よりは硬そうに見えるが、羽の柔らかさを感じさせる。
「これが…あの匣兵器の最期の攻撃かしら?」
『そう。だから…セレネに与えた痛みだけは……蜜柑にお返しさせて貰うよ。』
檸檬がそう答えた途端、複数のナイフは同時に蜜柑に向かって一直線に動いた。
全ての角度と距離を瞬時に解析した蜜柑は、全て避け切れると踏んでいた。
万が一避けられなかったとしても、たかが尾羽では切り傷1つ付けられない、と。
しかし……
ザシュッ、
「なっ…!」
突如腕に走る僅かな痛み。
避け損なった1本が、通常のナイフのように自分に傷をつけたと理解する。
「(まさか、こんなものが…!?)」
蜜柑の計算違いはそれだけではなかった。
一瞬の動揺により、後から迫る尾羽も何本か避け損なったのだ。
「キィッ!」
「くっ……あんな物が、一体何故…」
『セレネが最後に教えてくれたの。あたしだって、今の今まで知らなかったんだよ。』
両腕に5か所、両足に4か所、背中に2か所、大小様々な傷を作り、蜜柑は檸檬から距離を置く。
増殖した尾羽は一度攻撃を終えて消滅したようだった。
しかし、檸檬の手元にはまだ尾羽が一枚ある。
蜜柑の警戒心を煽るには、それだけで充分だった。
「なるほどね……それでナイフの本数は気にしなくて済むようになった、ってワケ。」
『そういうことになるかもね。』
檸檬の返答を聞いた蜜柑は、少しだけ表情を歪ませる。
複数の傷からの出血が、ミルフィオーレの白い服をじわりと染めていた。
「キィ…」
「うるさいわね、黙ってて、ピグ。」
炎弾で炎を消費したことにより最小サイズに戻ったピグが、蜜柑を見上げる。
が、蜜柑は見向きもせず銃を握り直すのみ。
『ねぇ蜜柑……もう、やめよう?』
「何を言ってるの?姉さんが生きている限り、私に平穏は訪れない!だから私は……」
「そこまでです。」
突如自分たちの間に入った存在に、檸檬も蜜柑も目を丸くした。
『…チェルベッロ……』
「終わったのね、向こうは。」
「はい。チョイスは終了しました。よって、DARQとLIGHTの戦いも強制的に終了します。」
『ど、どっちが勝ったの!?ツナ達は…』
縋るように尋ねる檸檬に、チェルベッロは相変わらずの無表情で、告げた。
「勝者は、ミルフィオーレファミリーです。」
「…でしょうね。」
蜜柑が一息吐いてそう呟く一方、檸檬は目を丸くして固まった。
『そ、んな……』
よろめき走りながら、入江は無線越しのツナに言う。
「何を言ってるんだ綱吉君……僕のことより、先に敵の標的を倒すんだ!!」
-「仲間を見捨てるワケにはいかない!」
ツナの意思に賛同するように、山本も「敵は俺一人で充分だ」と。
「……君達…」
「(頼む…間に合ってくれ!!)」
大きな炎を噴射し、ツナは引き返し始めた。
チョイス終了
『(さっきの爆発音……一体…)』
蜜柑と対峙する檸檬にも、ツナがX BURNERを放った地響きは伝わっていた。
それは蜜柑も同じようで、一瞬だけ関心を音がした方に向ける。
「悪足掻きが絶えないわね…」
『皆は諦めないよ。それに、信じてる。』
「信じる…?それは物理的・科学的確証を得られない未熟者が使う言葉だわ。」
『蜜柑…?』
「だから私は……数値化できる情報しか認めない。」
蜜柑は眼力を強めて、乱射する。
無数の銃弾を回避すべく檸檬は空間移動を使うが、やはり移動箇所が読まれており、そこにも銃弾が飛んでくる。
「データ化された情報ほど、確実な武器は無いのよ。」
『くっ…!』
後ろから迫る銃弾は回避しきれず、仕方なく炎を奪う。
しかし、それをブーツに移して空中に逃げても蜜柑の銃弾は追ってくる。
「疲弊が見えて来たわね……それに…」
ズガガガ…
『(また連撃…!)』
奪える炎の量にも限界がある。
それを超えてしまえば、普通に弾くしか出来ないのだ。
空間移動による回避も、使い過ぎればリバウンドを早めてしまう。
キィンッ…
ピキピキ……パリィンッ!
「さぁ、ナイフはあと何本かしら?」
『(ヤバっ…)』
檸檬としては、ナイフをこれ以上割られるワケにはいかない。
だが蜜柑は、確実に檸檬を追い詰める戦法を取ってきている。
弾切れになる気配も全くない。
「ピグ、C to “R”、炎弾。」
「ガァアーッ!」
『セレネ!』
「コァーッ!」
「…同じ防御が通用するとでも?」
『なっ…』
ピグが炎弾を放つ直前、蜜柑はセレネに向かって破壊の死ぬ気弾を撃った。
追尾型の銃弾を避けきるには、セレネには俊敏さが欠けている。
それは何より、晴の活性でセレネ自身が大きく重くなってしまったからであった。
『ダメっ…!』
檸檬は咄嗟に判断し、セレネを空間移動させた。
ところが、銃弾が外れたにも関わらず蜜柑は口角を上げて。
「…同じ過ちよ、ソレ。」
檸檬がセレネを空間移動で少し離れた上空に移動させた直後、
ピグは雨の炎弾を放った。
それは当初、銃弾と同じくセレネに向けられていたハズだったが……
『いつの間に…!』
檸檬が空間移動をさせるためにセレネの方を向いた、その一瞬の間に、ピグは矛先を変えていた。
雨の炎弾は、檸檬に迫っていたのである。
『うあっ…!!』
回避が遅れ、放たれた炎弾は檸檬の右腕に当たった。
炎の塊をぶつけられた衝撃と、雨の“鎮静”が檸檬を襲う。
「匣兵器を庇おうとするから、自身への攻撃に対する反応が遅れる。」
「コァッ…」
『来ちゃダメ!セレネっ…!』
口ではそう言ったものの、檸檬は右半身からどんどん力が抜けていくのを感じた。
右手の握力が低下し、握っていたナイフも…地に落ちた。
「終わりよ。」
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------
-------------
「ハハン、ボンゴレX世が作戦変更でこちらに引き返してきますか……ですが、時すでに遅しですよ。」
必死に走り続ける入江を見下ろしながら、桔梗は言う。
「あの標的の炎を消すことなど、赤子の手をひねるより簡単です。フィニッシュです、白蘭様。あなたの旧い友人を殺します。」
桔梗の右手が光ると同時に、ミルフィオーレの基地ユニットのバリアにも大きな亀裂が出来ていた。
中にいるデイジーは、人形をぎゅっと握りしめるだけ。
「よし!次で行ける!!間に合えよ!!」
山本が放ったのは、時雨蒼燕流特式十の型・燕特攻。
バリアは破られ、山本の刃がデイジーに届いた。
しかし……
ドッ、
ズザアッ…
同じ瞬間に、入江の左側腹部を桔梗の葉が貫く。
既に炎の流出により体力を消耗していた入江が、出血に耐え走り続けることなど出来るハズもなく。
「正一!!」
ツナが到着した時にはもう、彼は道の真ん中に倒れ気を失っていた。
「ハハン、もう終わりましたよ。」
「お前!!」
超速で接近したツナの肘打ちも、桔梗は腕で受け止めるだけ。
「もう終わりと言ったでしょう。あなたと闘う理由はありません。」
「く………正一!!」
「お待ちください。」
入江の安否を確認しようとしたツナだが、チェルベッロの1人に止められる。
標的の炎をチェックするから下がっていろ、と。
「くっ…こんな時に…!!」
その時、無線から山本の声が。
-「ツナ!こっちも倒したぜ。」
観覧席側がモニターを確認すると、確かにデイジーは倒れており、チェルベッロがチェックをしていた。
「敵の標的も…」
「同時に…倒れてる!!」
「まさか…ドロー、引き分けか!?」
同時に倒れたのなら、引き分けにせざるを得ない状況。
その連絡を聞いたのか、獄寺が腕を抑えながらフラフラと歩いてきた。
バイクは爆発したものの、かろうじて軽傷で済んでいたのだ。
「野球バカにしては…よくやったじゃねーか……」
「獄寺君!無事だったんだね!!良かった、本当に良かった!!」
「申し訳ありません、10代目……俺なんかより、入江の野郎が……」
全生命エネルギーのうち2%以下になると、標的の炎は消滅する。
今、入江の生命エネルギーは2%を下回り、更に下降を続けていた。
「よって、消滅と認めます。」
-「こちらもです。デイジー氏の炎も、消滅と認めます。」
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蜜柑の銃口が真っ直ぐあたしに向いた、その時。
「コァッ!」
『セレネっ!?』
遥か上空にいたハズのセレネが、あたし達の間に入って羽を広げた。
『何で…!』
もうあたしは、ナイフを1本しか握れないのに…
炎奪取量が2分の1になった今、蜜柑と互角の戦いを続けられる自信は……正直、無い。
「使用者が愚かなら、匣アニマルも低知能なのかしらね。それはそれで、良いデータだわ。」
リバウンドは、まだ来ない。
空間移動で一瞬だけでもこの場を凌げれば、また振り出しに戻せるチャンスはある。
けど、セレネがいなくちゃ意味が無い。
鎮静の炎弾を喰らった今のあたしじゃ、蜜柑とピグの両方をいっぺんに相手に出来ないのに…!
「先に破壊してあげるわ。」
『セレネ!回避して!!』
「コァッ、」
『え…?』
ズガガンッ!
羽が、ひらひらと舞った。
翼の羽と、尾羽。
銃弾の衝撃に耐えきれず、セレネは倒れて元の小さいヒナに戻ってしまった。
『あ……セレネっ……』
「使用者と匣兵器の庇い合い……下らない。両方潰せば、結果は同じよ。」
鎮静の作用が広がってきて、右足も脱力してくる。
その場に膝をついたあたしの手元に、セレネの尾羽が降りて来た。
「第六感が護る為の力?“人間の闇”がよくもそんな血迷った幻想を抱けたものね!その力は……闇の象徴よ。」
『(どうして……)』
セレネは確かに、撃たれる直前にあたしを見た。
何かを訴えるかのように……
ううん、あれは本当にあたしを見ていた?
あたしじゃなくて………
自分の尾羽を見ていた…!?
ふと、右手の先に落ちたセレネの尾羽が、目に入った。
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一方チョイスでは、同時に2つの標的の炎が消滅したことで引き分けという結果が下されようととしていた。
しかし……
「ハハン、早とちりですよ審判。」
「…う~ん……」
それまで明らかに意識不明だったデイジーが、起き上がったのだ。
まるで攻撃自体受けていなかったかのように、元通り標的の炎を灯して。
「やっぱ死ねないのか~…」
「わっ!!」
「ひゃあっ!」
「蘇った!!」
「そんな…トドメはさしてねーが……完全に倒したハズ!!」
攻撃をした山本すらも驚く中、地に降り立った桔梗が言った。
「デイジーは“不死身の体”を有していましてね。死ねないのが悩みだという変わった男なのです。」
「不死身だなんて…そんなバカなこと!!」
「ありえねーな。」
バジルとリボーンは否定するが、桔梗はこれが真6弔花の真の力なのだと言う。
チェルベッロ2人は無線で連絡し合い、確認する。
そして……
「これにより、チョイスバトルの勝者が決まりました。勝者は……ミルフィオーレファミリーです!!」
「イエーイ♪」
ミルフィオーレ観覧席ではブルーベルが歓声をあげ、ボンゴレ観覧席では皆が青ざめる。
桔梗に攻撃された正一は、ツナの呼び掛けに反応せず意識を失ったまま。
「正一君…?正一君ーーー!!」
チェルベッロは見向きもせずに、フィールドの真ん中へと向かった。
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翼の羽毛とは違って、尾羽は細長く少しだけ硬そうだった。
鋭利な先端は、ナイフを連想させることも出来る。
『(もしかして……セレネ…)』
檸檬のナイフが壊されていく所を、セレネは見ていた。
最後の目配せが、ナイフの補充を促すものだとしたら…
「二度と闘えなくしてあげる……二度と、何も護れないようにね。」
『(この尾羽に、あたしの雲の波動を乗せれば……!)』
鎮静でナイフは握れなくても、雲の波動を指先に落ちた尾羽に乗せることは出来る。
『……あたしね、蜜柑があたしのことだけ嫌うんなら、全然構わない。…でもね、』
檸檬は最後の望みをかけ、第六感で波動を炎に変えて尾羽に灯した。
『これ以上、セレネを冒涜するのは許せないっ!!』
「(これは…!?)」
檸檬の炎が注ぎ込まれた瞬間、落ちていた尾羽は紫色の眩い光を放ち……
次の瞬間、宙に浮いた先端の鋭利な複数の尾羽が蜜柑を囲んだ。
「(あの白鳥の尾羽…!?姉さんの波動で増殖したの…?)」
威嚇するかのように先端は蜜柑に向いている。
一見、それはただの浮いている尾羽。
羽毛よりは硬そうに見えるが、羽の柔らかさを感じさせる。
「これが…あの匣兵器の最期の攻撃かしら?」
『そう。だから…セレネに与えた痛みだけは……蜜柑にお返しさせて貰うよ。』
檸檬がそう答えた途端、複数のナイフは同時に蜜柑に向かって一直線に動いた。
全ての角度と距離を瞬時に解析した蜜柑は、全て避け切れると踏んでいた。
万が一避けられなかったとしても、たかが尾羽では切り傷1つ付けられない、と。
しかし……
ザシュッ、
「なっ…!」
突如腕に走る僅かな痛み。
避け損なった1本が、通常のナイフのように自分に傷をつけたと理解する。
「(まさか、こんなものが…!?)」
蜜柑の計算違いはそれだけではなかった。
一瞬の動揺により、後から迫る尾羽も何本か避け損なったのだ。
「キィッ!」
「くっ……あんな物が、一体何故…」
『セレネが最後に教えてくれたの。あたしだって、今の今まで知らなかったんだよ。』
両腕に5か所、両足に4か所、背中に2か所、大小様々な傷を作り、蜜柑は檸檬から距離を置く。
増殖した尾羽は一度攻撃を終えて消滅したようだった。
しかし、檸檬の手元にはまだ尾羽が一枚ある。
蜜柑の警戒心を煽るには、それだけで充分だった。
「なるほどね……それでナイフの本数は気にしなくて済むようになった、ってワケ。」
『そういうことになるかもね。』
檸檬の返答を聞いた蜜柑は、少しだけ表情を歪ませる。
複数の傷からの出血が、ミルフィオーレの白い服をじわりと染めていた。
「キィ…」
「うるさいわね、黙ってて、ピグ。」
炎弾で炎を消費したことにより最小サイズに戻ったピグが、蜜柑を見上げる。
が、蜜柑は見向きもせず銃を握り直すのみ。
『ねぇ蜜柑……もう、やめよう?』
「何を言ってるの?姉さんが生きている限り、私に平穏は訪れない!だから私は……」
「そこまでです。」
突如自分たちの間に入った存在に、檸檬も蜜柑も目を丸くした。
『…チェルベッロ……』
「終わったのね、向こうは。」
「はい。チョイスは終了しました。よって、DARQとLIGHTの戦いも強制的に終了します。」
『ど、どっちが勝ったの!?ツナ達は…』
縋るように尋ねる檸檬に、チェルベッロは相変わらずの無表情で、告げた。
「勝者は、ミルフィオーレファミリーです。」
「…でしょうね。」
蜜柑が一息吐いてそう呟く一方、檸檬は目を丸くして固まった。
『そ、んな……』