未来編②
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-「ここまで来れば、ステルスバイクに乗ってレーダーから隠れる必要は無い!!綱吉君と山本君は空から標的に向かうんだ!!」
「「了解!!」」
返事をした直後、ツナは自分のいる周りの風景に違和感を覚えたが、構わず進み続けた。
その光景が、敵のトラップとも知らず。
---
------
------------
同じ頃、入江のターゲットマーカーを模した囮をまた一つ潰した桔梗。
その耳に、デイジーからの無線が入る。
-「桔梗~、僕チンの方に敵が向かって来てるよ。コレって王手だよねぇ…」
「ハハン、デイジーは分かっていませんね。」
桔梗は説明する。
このチョイスバトルは白蘭のためのセレモニーであり、完全勝利をする必要はない、と。
つまり…これはピンチの演出。
「もっとも、私ごときの考え、白蘭様はお見通しでしょうがね。」
観覧席では白蘭が愉しそうに笑う。
「いよいよショータイムです、白蘭様。」
暗雲
---
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同じ頃。
「ピグ、C to “H”、炎弾。」
「ガアァーッ!!」
赤い炎弾が放たれるが、檸檬は一瞬目を閉じるだけ。
それだけで、空間移動が発動され、炎弾のルートが捻じ曲げられた。
檸檬が繰り出す最小限の防御を見て、蜜柑は眉を寄せる。
「…その力を有して、何故私を一息に殺さないの?」
『さっきから言ってるでしょ、あたしは……蜜柑と話をしに来たの。』
真っ直ぐ自分を見つめる檸檬に、蜜柑は銃を硬く握り直す。
「話して何が変わるのかしら。私の存在意義は、姉さんがいる限り変わらない。」
『変わるよ。存在意義なんて、考え様で変わるから。』
「考え様、ですって…?ふざけるのも大概にしたら!?」
雨のような銃弾が、檸檬とセレネに降りかかる。
「みいっ!」
セレネの分身が銃弾一つ一つに当たり、相殺した。
『ありがとう、セレネ。』
「みっ!」
礼を言いながらセレネを撫でる檸檬。
その背後から、ピグの爪が襲いかかる。
「「檸檬ちゃん!!」」
観覧席の京子とハルが叫び、檸檬は背後からその爪を喰らった……かのように見えた。
「檸檬さんの、残像…」
「あんなデカイ猿のノロい爪が、檸檬に当たるワケねーだろぉ。」
「あぁ、集中した時の檸檬のトップスピードは相当だぜ。」
クロームが呟き、スクアーロとディーノが口々に言う。
爪に触れるか触れないかというところで、檸檬は真上に飛び上がったのだ。
『あたしはずっと、自分に害なす者を壊すために生きて来た。けど今は、護るために生きようと思ってる。』
「残念ね、それは無理な願いよ。姉さんは“人間の闇”、周りを護ることなんて不可能だわ。」
『うん……あたしも気付いたの。』
空中まで自分を追って来たピグの攻撃をいなし、最後に蹴り飛ばす。
そして、再び蜜柑の数メートル前に着地した。
『あたしがやってる事は、今も昔も変わらない。あたしは……何かを壊して生きてる。ただその目的と……痛みが違うだけなの。』
「痛み?目的のある破壊に、痛みは伴わないわ。」
『ううん、蜜柑にもきっと分かる。だから…思い出して。』
「そんなデータはとうの昔に消去したわ。」
攻防を開始する檸檬と蜜柑。
その様子をモニターで見ていた京子が、ぽつりとこぼす。
「蜜柑さん……つらそう…」
「京子ちゃん…?」
「私、初めて蜜柑さんに会った時…檸檬ちゃんと似てるなって思ったんだけど……違うって何となく感じたの。」
「会ったんですか!?」
「うん、一人でアジトを飛び出しちゃった時に。それでね、今わかったの。蜜柑さん……何かを後悔してるみたい…」
---
------
-------------
その頃ツナは、自分が同じ場所を回っていることに気付いた。
スパナが見ていたレーダーにも、コースを外れているのが映っている。
コンタクトの故障と見た入江は、ミルフィオーレの基地ユニットを見つけ攻撃をしようとした山本にストップをかけた。
ところが……
「正一!すごい勢いでこちらの囮が破壊されている!もうあと5機しか残ってない。」
「何だって!?」
その異常なスピードに入江は悪寒を感じ、山本に攻撃開始を指示した。
また、ボンゴレ基地前方1キロ地点にいる獄寺に連絡する。
-「獄寺君!!桔梗が防衛ラインを越えて攻めてくるぞ!!」
「ああ…かすかに爆発が見えてる。」
-「相手より先に標的を倒せばいいんだ、山本君達が敵を仕留めるまで足止めしてくれ!!」
「んなことてめーに言われなくても分かってる。奴はココから一歩も通さずに、倒す。」
遠くにある桔梗の影を凝視していた獄寺だが、その影がふっと消える。
と、次の瞬間、
「ハハン、」
「ぐっ…(速ぇ!!)」
目の前に現れ手刀を突き出す桔梗。
咄嗟にかわした獄寺はボンゴレ匣を開け、15個の匣がついたベルトと瓜を出す。
が、怯まずに突っ込んできた桔梗は獄寺の前にいた瓜を手刀でふっ飛ばした。
「ニャ!!」
「瓜!!」
飛ばされてしまった瓜に気を取られる獄寺に、桔梗の手刀が迫る。
「ハハン、」
「ヤロオ!!」
仰向けにかわし、そのまま桔梗の腹部を蹴り上げた獄寺。
桔梗は空中で上手く受け身を取り、獄寺も瞬時に起き上がる。
「ここは通さねぇぞ。」
「あなたがその気でも、私は標的である入江正一のもとへ向かいます。」
「てめぇ、なめてんじゃねぇぞ。俺の5つの波動と…New SISTEMA C.A.I.をな!!」
言いながら匣に炎をいれようとした獄寺だが、ハッと気付く。
「んだこりゃ!?」
自分の匣を全てふさいでいる、蔓性植物のような何か。
獄寺のボンゴレ匣はSISTEMA C.A.I.の延長にある武器。
よって、腰にある匣を封じられてはボンゴレ匣を展開することも出来ない。
「ハハン、失礼します。」
「なっ!てめっ、逃げんのか!?」
「華麗ならば逃走もまた闘争。」
獄寺に一切の攻撃もしないまま、桔梗は真っ直ぐボンゴレ基地ユニットへと向かう。
囮は全て破壊したため、レーダーの炎反応に向かっていけばいいのだ。
「くそうっ!!抜かれた!!すまねえ入江…」
-「了解だ……でもきっと大丈夫だ…ちょうど今、綱吉君のナビが直ったところだ。」
ところが、ツナは「ナビが壊れてるんじゃない」と。
ツナが感じた異様さは、勘違いなどではなく…
「正一!」
「どうした!?」
「ボンゴレの周辺1.5キロの範囲に異常な炎反応が!」
「何だ、この歪みは!?」
その時、ツナの耳には“彼”の声が。
「哀しき者よ…」
「(あいつ!!)」
-「綱吉君、一体何が起こってるんだ!?そっちの状況を伝えてくれ!!」
「トリカブトだ!まだ、奴を倒せてなかったんだ……恐らく俺は今…トリカブトの幻覚空間の中にいる!!」
形成が、崩れ始めた。
---
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-------------
キィンッ、
『くっ…』
空間移動で炎を吸収しきれなかった銃弾を、やむを得ずナイフで防ぐ檸檬。
しかし、破壊の死ぬ気弾を受けたナイフは……
ピキピキ…パリィン…!
『あっ…!』
「残りは何本かしら?」
言いながら追撃する蜜柑に、檸檬は叫ぶ。
『聞いて蜜柑!完全には失くしてないハズなの!!蜜柑にも、憎しみ以外の感情が…』
「それは“信頼”?それとも“愛情”?姉さんの大好物だったわね、バカげてるわ。」
鼻で笑ってから、蜜柑はピグに「C to “T”」と指示を出す。
『(今度はT…!?一体……)』
「人間の感情?くだらない。そんなものを持っているから、人は裏切られるんだわ。……ピグ、炎弾。」
「ガァアーッ!!」
檸檬の動きが停まった一瞬に、蜜柑はピグに炎弾を出させ、その後ろから破壊の死ぬ気弾を撃ち込んだ。
先ほどの指示のせいで、ピグの炎は緑……雷属性になっている。
それが蜜柑の銃弾と混ざり合い、檸檬に迫っていた。
『裏切られるって……どういうこと!?一体何が…』
「初めて私を裏切った人間は、姉さんでしょう?」
『えっ…?』
衝撃的な蜜柑の言葉に、檸檬は思わず手を止める。
『(あたしが……蜜柑を最初に裏切った…?)』
ハッタリだと言ってしまえばそれまでかも知れない。
何せ檸檬には、ストリートファイト時代以前の記憶……蜜柑と2人で広い部屋に閉じ込められていた記憶が無いのだ。
もっとも、檸檬が蜜柑と一緒にいたのは単純計算しても2歳まで。
ハッキリとした記憶が無かったとしても仕方ないのだが……
「みぃっ!!」
ショックで呆然とする檸檬を、増殖したセレネの盾が囲んだ。
おかげで、雷属性の炎弾とそれに混ざった銃弾は当たらなかったのだが……
「甘いわね。」
「み、みぃぃっ…」
『セレネ…!』
「…雷属性は“硬化”。雲属性の軟弱な盾じゃ凌げないわ。」
セレネの盾の隙間から、緑色の炎弾が迫るのが見えた。
『セレネ、増殖ストップ!』
「みっ、」
分身を消させた後、向かって来た炎弾と銃弾の炎を、檸檬は咄嗟に吸収した。
が、蜜柑は口角を上げる。
「ホント、甘いわ。」
『なっ…!』
観覧席では、バジルが目を見開いた。
「あ、あれは…!最大級の炎弾!!」
「そうか…檸檬がセレネの盾を展開している間は、檸檬の視界がきかなくなるってことだ。」
「って事は、蜜柑さんは檸檬姉がセレネの盾を長く使うように敢えて大きな合わせ技を…!?」
フゥ太の言葉に答えたのはリボーン。
「蜜柑は頭の回転が速ぇからな……あの雷の炎弾を吸収した直後の檸檬では、最大級の炎弾を吸収することが出来ねぇって計算したんだろ…」
「それだけじゃねぇ、雷属性の“硬化”を持った炎弾に、セレネが耐えきれないことも計算に入れてやがったんだぁ。」
「つまり…蜜柑には檸檬が増殖をストップさせるタイミングも分かってた、ってワケね…。」
スクアーロとビアンキの分析に、京子とハルは青ざめる。
「そんな…檸檬ちゃん!!」
「逃げて下さいっ!!」
---
----
檸檬も回避を考えた。
しかし、最大級の炎弾はその直径が4メートルを超えており、ジャンプや俊足での回避は不可能。
だが空間移動を使おうとすれば、セレネと離れる可能性がある。
セレネの防壁によるサポートがあって拮抗している今、それはあまりにも危険な選択だった。
その考えを蜜柑も読んでいたのだろう。
非情な一言を突き付ける。
「終わりね。」
ピグが内包している全ての炎が、その口元に集結していく。
それもかなりのスピードで、放射まで3秒とないだとう。
「ガアァァ…!」
「みっ…!」
『セレネ!?』
完成した炎弾が放たれようとしたその時、セレネの分身ではなく本体が、檸檬とピグの間に飛び出した。
まるで、一匹で盾になろうとでも言うように。
『(まさか……あたしだけ空間移動で回避しろって…!?)』
開匣直後は檸檬の肩の上で震えていたセレネ。
それが今、自分の何十倍、何百倍という大きさの炎の塊に対峙していた。
『(セレネだけ置いて逃げるなんて、そんなの……出来ないっ!!)』
決意をしたものの、状況は絶望的だった。
飛び出してしまったセレネには、手を伸ばしても届かない。
炎弾はもう、放たれる。
『(こうなったら……イチかバチか!!)』
「檸檬ちゃん…!!」
「セレネちゃん…!!」
京子とハルがギュッと目を瞑りながら祈る。
「(檸檬…!)」
雲雀も硬く拳を握りながらモニターを見つめる。
覚悟を決め、檸檬は叫んだ。
蜜柑の声の波長を思い出しながら。
『{C to “S”!!}』
「グガァアアーッ!!」
最大級の炎弾が放たれる。
モニターには、溢れんばかりの炎が、大爆発となって映っていた…。
「「了解!!」」
返事をした直後、ツナは自分のいる周りの風景に違和感を覚えたが、構わず進み続けた。
その光景が、敵のトラップとも知らず。
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同じ頃、入江のターゲットマーカーを模した囮をまた一つ潰した桔梗。
その耳に、デイジーからの無線が入る。
-「桔梗~、僕チンの方に敵が向かって来てるよ。コレって王手だよねぇ…」
「ハハン、デイジーは分かっていませんね。」
桔梗は説明する。
このチョイスバトルは白蘭のためのセレモニーであり、完全勝利をする必要はない、と。
つまり…これはピンチの演出。
「もっとも、私ごときの考え、白蘭様はお見通しでしょうがね。」
観覧席では白蘭が愉しそうに笑う。
「いよいよショータイムです、白蘭様。」
暗雲
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同じ頃。
「ピグ、C to “H”、炎弾。」
「ガアァーッ!!」
赤い炎弾が放たれるが、檸檬は一瞬目を閉じるだけ。
それだけで、空間移動が発動され、炎弾のルートが捻じ曲げられた。
檸檬が繰り出す最小限の防御を見て、蜜柑は眉を寄せる。
「…その力を有して、何故私を一息に殺さないの?」
『さっきから言ってるでしょ、あたしは……蜜柑と話をしに来たの。』
真っ直ぐ自分を見つめる檸檬に、蜜柑は銃を硬く握り直す。
「話して何が変わるのかしら。私の存在意義は、姉さんがいる限り変わらない。」
『変わるよ。存在意義なんて、考え様で変わるから。』
「考え様、ですって…?ふざけるのも大概にしたら!?」
雨のような銃弾が、檸檬とセレネに降りかかる。
「みいっ!」
セレネの分身が銃弾一つ一つに当たり、相殺した。
『ありがとう、セレネ。』
「みっ!」
礼を言いながらセレネを撫でる檸檬。
その背後から、ピグの爪が襲いかかる。
「「檸檬ちゃん!!」」
観覧席の京子とハルが叫び、檸檬は背後からその爪を喰らった……かのように見えた。
「檸檬さんの、残像…」
「あんなデカイ猿のノロい爪が、檸檬に当たるワケねーだろぉ。」
「あぁ、集中した時の檸檬のトップスピードは相当だぜ。」
クロームが呟き、スクアーロとディーノが口々に言う。
爪に触れるか触れないかというところで、檸檬は真上に飛び上がったのだ。
『あたしはずっと、自分に害なす者を壊すために生きて来た。けど今は、護るために生きようと思ってる。』
「残念ね、それは無理な願いよ。姉さんは“人間の闇”、周りを護ることなんて不可能だわ。」
『うん……あたしも気付いたの。』
空中まで自分を追って来たピグの攻撃をいなし、最後に蹴り飛ばす。
そして、再び蜜柑の数メートル前に着地した。
『あたしがやってる事は、今も昔も変わらない。あたしは……何かを壊して生きてる。ただその目的と……痛みが違うだけなの。』
「痛み?目的のある破壊に、痛みは伴わないわ。」
『ううん、蜜柑にもきっと分かる。だから…思い出して。』
「そんなデータはとうの昔に消去したわ。」
攻防を開始する檸檬と蜜柑。
その様子をモニターで見ていた京子が、ぽつりとこぼす。
「蜜柑さん……つらそう…」
「京子ちゃん…?」
「私、初めて蜜柑さんに会った時…檸檬ちゃんと似てるなって思ったんだけど……違うって何となく感じたの。」
「会ったんですか!?」
「うん、一人でアジトを飛び出しちゃった時に。それでね、今わかったの。蜜柑さん……何かを後悔してるみたい…」
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その頃ツナは、自分が同じ場所を回っていることに気付いた。
スパナが見ていたレーダーにも、コースを外れているのが映っている。
コンタクトの故障と見た入江は、ミルフィオーレの基地ユニットを見つけ攻撃をしようとした山本にストップをかけた。
ところが……
「正一!すごい勢いでこちらの囮が破壊されている!もうあと5機しか残ってない。」
「何だって!?」
その異常なスピードに入江は悪寒を感じ、山本に攻撃開始を指示した。
また、ボンゴレ基地前方1キロ地点にいる獄寺に連絡する。
-「獄寺君!!桔梗が防衛ラインを越えて攻めてくるぞ!!」
「ああ…かすかに爆発が見えてる。」
-「相手より先に標的を倒せばいいんだ、山本君達が敵を仕留めるまで足止めしてくれ!!」
「んなことてめーに言われなくても分かってる。奴はココから一歩も通さずに、倒す。」
遠くにある桔梗の影を凝視していた獄寺だが、その影がふっと消える。
と、次の瞬間、
「ハハン、」
「ぐっ…(速ぇ!!)」
目の前に現れ手刀を突き出す桔梗。
咄嗟にかわした獄寺はボンゴレ匣を開け、15個の匣がついたベルトと瓜を出す。
が、怯まずに突っ込んできた桔梗は獄寺の前にいた瓜を手刀でふっ飛ばした。
「ニャ!!」
「瓜!!」
飛ばされてしまった瓜に気を取られる獄寺に、桔梗の手刀が迫る。
「ハハン、」
「ヤロオ!!」
仰向けにかわし、そのまま桔梗の腹部を蹴り上げた獄寺。
桔梗は空中で上手く受け身を取り、獄寺も瞬時に起き上がる。
「ここは通さねぇぞ。」
「あなたがその気でも、私は標的である入江正一のもとへ向かいます。」
「てめぇ、なめてんじゃねぇぞ。俺の5つの波動と…New SISTEMA C.A.I.をな!!」
言いながら匣に炎をいれようとした獄寺だが、ハッと気付く。
「んだこりゃ!?」
自分の匣を全てふさいでいる、蔓性植物のような何か。
獄寺のボンゴレ匣はSISTEMA C.A.I.の延長にある武器。
よって、腰にある匣を封じられてはボンゴレ匣を展開することも出来ない。
「ハハン、失礼します。」
「なっ!てめっ、逃げんのか!?」
「華麗ならば逃走もまた闘争。」
獄寺に一切の攻撃もしないまま、桔梗は真っ直ぐボンゴレ基地ユニットへと向かう。
囮は全て破壊したため、レーダーの炎反応に向かっていけばいいのだ。
「くそうっ!!抜かれた!!すまねえ入江…」
-「了解だ……でもきっと大丈夫だ…ちょうど今、綱吉君のナビが直ったところだ。」
ところが、ツナは「ナビが壊れてるんじゃない」と。
ツナが感じた異様さは、勘違いなどではなく…
「正一!」
「どうした!?」
「ボンゴレの周辺1.5キロの範囲に異常な炎反応が!」
「何だ、この歪みは!?」
その時、ツナの耳には“彼”の声が。
「哀しき者よ…」
「(あいつ!!)」
-「綱吉君、一体何が起こってるんだ!?そっちの状況を伝えてくれ!!」
「トリカブトだ!まだ、奴を倒せてなかったんだ……恐らく俺は今…トリカブトの幻覚空間の中にいる!!」
形成が、崩れ始めた。
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キィンッ、
『くっ…』
空間移動で炎を吸収しきれなかった銃弾を、やむを得ずナイフで防ぐ檸檬。
しかし、破壊の死ぬ気弾を受けたナイフは……
ピキピキ…パリィン…!
『あっ…!』
「残りは何本かしら?」
言いながら追撃する蜜柑に、檸檬は叫ぶ。
『聞いて蜜柑!完全には失くしてないハズなの!!蜜柑にも、憎しみ以外の感情が…』
「それは“信頼”?それとも“愛情”?姉さんの大好物だったわね、バカげてるわ。」
鼻で笑ってから、蜜柑はピグに「C to “T”」と指示を出す。
『(今度はT…!?一体……)』
「人間の感情?くだらない。そんなものを持っているから、人は裏切られるんだわ。……ピグ、炎弾。」
「ガァアーッ!!」
檸檬の動きが停まった一瞬に、蜜柑はピグに炎弾を出させ、その後ろから破壊の死ぬ気弾を撃ち込んだ。
先ほどの指示のせいで、ピグの炎は緑……雷属性になっている。
それが蜜柑の銃弾と混ざり合い、檸檬に迫っていた。
『裏切られるって……どういうこと!?一体何が…』
「初めて私を裏切った人間は、姉さんでしょう?」
『えっ…?』
衝撃的な蜜柑の言葉に、檸檬は思わず手を止める。
『(あたしが……蜜柑を最初に裏切った…?)』
ハッタリだと言ってしまえばそれまでかも知れない。
何せ檸檬には、ストリートファイト時代以前の記憶……蜜柑と2人で広い部屋に閉じ込められていた記憶が無いのだ。
もっとも、檸檬が蜜柑と一緒にいたのは単純計算しても2歳まで。
ハッキリとした記憶が無かったとしても仕方ないのだが……
「みぃっ!!」
ショックで呆然とする檸檬を、増殖したセレネの盾が囲んだ。
おかげで、雷属性の炎弾とそれに混ざった銃弾は当たらなかったのだが……
「甘いわね。」
「み、みぃぃっ…」
『セレネ…!』
「…雷属性は“硬化”。雲属性の軟弱な盾じゃ凌げないわ。」
セレネの盾の隙間から、緑色の炎弾が迫るのが見えた。
『セレネ、増殖ストップ!』
「みっ、」
分身を消させた後、向かって来た炎弾と銃弾の炎を、檸檬は咄嗟に吸収した。
が、蜜柑は口角を上げる。
「ホント、甘いわ。」
『なっ…!』
観覧席では、バジルが目を見開いた。
「あ、あれは…!最大級の炎弾!!」
「そうか…檸檬がセレネの盾を展開している間は、檸檬の視界がきかなくなるってことだ。」
「って事は、蜜柑さんは檸檬姉がセレネの盾を長く使うように敢えて大きな合わせ技を…!?」
フゥ太の言葉に答えたのはリボーン。
「蜜柑は頭の回転が速ぇからな……あの雷の炎弾を吸収した直後の檸檬では、最大級の炎弾を吸収することが出来ねぇって計算したんだろ…」
「それだけじゃねぇ、雷属性の“硬化”を持った炎弾に、セレネが耐えきれないことも計算に入れてやがったんだぁ。」
「つまり…蜜柑には檸檬が増殖をストップさせるタイミングも分かってた、ってワケね…。」
スクアーロとビアンキの分析に、京子とハルは青ざめる。
「そんな…檸檬ちゃん!!」
「逃げて下さいっ!!」
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檸檬も回避を考えた。
しかし、最大級の炎弾はその直径が4メートルを超えており、ジャンプや俊足での回避は不可能。
だが空間移動を使おうとすれば、セレネと離れる可能性がある。
セレネの防壁によるサポートがあって拮抗している今、それはあまりにも危険な選択だった。
その考えを蜜柑も読んでいたのだろう。
非情な一言を突き付ける。
「終わりね。」
ピグが内包している全ての炎が、その口元に集結していく。
それもかなりのスピードで、放射まで3秒とないだとう。
「ガアァァ…!」
「みっ…!」
『セレネ!?』
完成した炎弾が放たれようとしたその時、セレネの分身ではなく本体が、檸檬とピグの間に飛び出した。
まるで、一匹で盾になろうとでも言うように。
『(まさか……あたしだけ空間移動で回避しろって…!?)』
開匣直後は檸檬の肩の上で震えていたセレネ。
それが今、自分の何十倍、何百倍という大きさの炎の塊に対峙していた。
『(セレネだけ置いて逃げるなんて、そんなの……出来ないっ!!)』
決意をしたものの、状況は絶望的だった。
飛び出してしまったセレネには、手を伸ばしても届かない。
炎弾はもう、放たれる。
『(こうなったら……イチかバチか!!)』
「檸檬ちゃん…!!」
「セレネちゃん…!!」
京子とハルがギュッと目を瞑りながら祈る。
「(檸檬…!)」
雲雀も硬く拳を握りながらモニターを見つめる。
覚悟を決め、檸檬は叫んだ。
蜜柑の声の波長を思い出しながら。
『{C to “S”!!}』
「グガァアアーッ!!」
最大級の炎弾が放たれる。
モニターには、溢れんばかりの炎が、大爆発となって映っていた…。