未来編②
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「燕と時雨金時が合体して……ロングブレードに!!」
「あれが山本殿のボンゴレ匣!!」
ボンゴレ側の観覧席と同じく、山本と対峙している幻騎士も、その炎を見て思う。
「(やはり奴は、以前戦った山本武ではないな……)」
「準備は出来たぜ、幻騎士。」
「……良かろう、貴様を全力で葬るに値する剣士として認めてやる……だが後悔するな。これで俺に、情けは無くなる。」
幻騎士の中指にあるリングが光る。
それは普通のリングではなく…
「ヘルリング!!」
禍々しく変化していくそのオーラに、山本も目を見開く。
幻騎士の体は藍色の炎に包まれ、そして……
「うおおおお!!!」
ズァァア…
メローネ基地でツナと戦った時と同じ、地獄の騎士とも言える姿と化した。
リベンジ
「あれがヘルリングの戦力倍加!!」
「おでましだな。」
「ハアァアア…フルパワーだ。ヌゥゥ…力が何倍にも増殖する…!!だが、何故だ…」
理性を失い始めた幻騎士は、心の内にある不満を露わにする。
「何故これ程の力を持つ俺を、認めてくれぬのだ……何故俺の方が優れているのにトリカブトが霧の真6弔花なのだ!!」
溢れだすようなその言葉に、山本は疑問符を浮かべる。
「神を!!白蘭様を守る霧の守護者は!!誰より俺が適任だと言うのにぃぃ!!!」
---
------
「(この気配は……ヘルリングの…)」
同じ頃、セレネのシールドに全ての攻撃を防がれていた蜜柑は、遠くからその尋常でないオーラを感じ取った。
というより、幻騎士の叫びを優れた聴覚がキャッチしたのである。
「(にしても……)」
目の前に未だ展開し続ける雲ヒナの防御壁を見て、考える。
「(これだけ増殖しているのに、まだ炎が切れない……内側から炎をチャージしてる気配も無いし…)」
ドームの内側で檸檬が何をしているのか、蜜柑には全く予想できなかった。
何せ、セレネの能力を見たのが初めてだったのだ。
「減らない壁……少しは使えるようね、そのヒナ鳥。」
そう呟いてから、ピグを呼び戻す。
反対側から爪で攻撃していたにも関わらず、ピグもセレネの防御壁を突破出来なかったようだ。
「姉さん、いつまで休憩してるつもり?そうしていれば、私が攻撃をやめるとでも思ってるのかしら。」
長時間展開していたせいで少しサイズが縮んだピグに、再び炎をチャージする蜜柑。
防御壁の内側からは、何も聞こえない。
---
------
「みっ…みぃっ…!」
『ん……セレ…ネ……』
防御ドームの内側では、分身ではないセレネの本体が、必死に檸檬の頬をつついていた。
出血で一時的に意識を失っていた檸檬は、背中の痛みを堪えながら起き上がる。
「みっ!」
『これは……セレネが、やってくれたの?』
「みぃっ!」
『凄い…こんなに増殖出来るんだね……』
檸檬が自らの波動を直接変換し、純度100%の炎をセレネに与えた為、出来上がったのだ。
「み……」
『ん?あぁ、背中は大丈夫だよ。出血は抑えてるし……』
言いながら檸檬がセレネを撫でていた、その時。
ザアアアッ…!
『なっ…!?』
突如ドームのてっぺんから光が差す。
どうやらピグが最深部まで抉ったようだ。
それはすなわち、セレネの防御壁が破られた、ということ。
「みっ、」
『タイムリミットね、分かった。行くよ!』
「みぃっ!」
セレネを肩に乗せ、檸檬はドームの外に出る。
「随分長いこと閉じこもってたけど…作戦は練れたかしら?」
『生憎なーんにも。だけど…』
檸檬は強い眼差しを蜜柑に向けて。
『蜜柑が言ってたことは、間違いだったでしょ?セレネは役立たずでもガラクタでもない。』
「……けれど、それが本気でしょう?」
『どういうこと?』
檸檬の言葉に一瞬黙らされたものの、蜜柑はスッと口角を上げる。
「雲ヒナの防御壁を今さっき破ったのが、私個人の力だとでも思った?」
ミルフィオーレの観覧席で、白蘭はマシュマロを1つ口に運ぶ。
「やっぱり蜜柑はちょっとやそっとじゃ折れないね、さすが僕のボス補佐だ♪」
すると隣でブルーベルが言う。
「びゃくらーん、さっきからずっと蜜柑の戦い見てるけど……あっちはいいの?」
「ん?“あっち”って?」
ブルーベルの視線を辿り、別のモニターを見ると、そこにはヘルリングに精神を食わせた幻騎士の姿。
-「何故俺が奴らの部下なのだー!!」
「あんなこと言ってるよ。」
「ははっ、だから幻ちゃん好きなんだよ。人としての器の小ささがいいんだよな~、小さい器は僕の掌にすっぽり入る♪」
白蘭がそのように言っているとはつゆ知らず、幻騎士は山本を威嚇する。
「俺は今、虫の居所が悪い!!ギッタギタにぶっ殺してやる!!!」
更に、ツナと戦った時の自分は全力でなかったと告げるが、
山本は取り乱すことなく答える。
「そう来なくっちゃ、面白くねーって。」
「グヌゥゥ…減らず口の青二才が!!剣撃と幻海牛の二重攻撃を喰らえ!!」
幻騎士の剣にパワーが集められていく。
その隙に、山本は次郎を匣に戻した。
「幻剣舞(ダンツァ・スペットロ・スパダ)!!!」
「何て剣撃だ!!しかも幻覚のミサイルまで!!」
観覧席のバジルは驚くが、山本は神経を研ぎ澄ませて。
「(時雨蒼燕流、守式四の型……五風十雨!)」
剣撃とミサイルが飛んで来たその瞬間から、山本の姿が消えた。
しかしそれこそが、“五風十雨”という技なのだとスクアーロは言う。
「五風十雨は、敵の呼吸に合わせて剣をかわす回避奥義だ。それにボンゴレ匣の推進力が足されたんだ、当たるものかぁ。」
しかしそれで終わる幻騎士ではない。
ヘルリングの力で分身を作り、それぞれが同じ技を繰り出す。
「甘いわ!!更に10倍だ!!究極幻剣舞(エクストラ・ダンツァ・スペットロ・スパダ)!!!」
道いっぱいに溢れんばかりの剣撃が放たれる。
それらは真っ直ぐ山本に向かっていく、が…
「(時雨蒼燕流、総集奥義……)」
その瞬間、時雨金時の鍔の部分が形状を変化させる。
まるで、合体していた燕が羽を広げたように。
両手でしっかりと握りしめ、山本は剣撃に突っ込んでいった。
「“時雨之化”…」
刹那、剣撃の内部から青い光が溢れだし……そして、
「なに!?」
「剣撃が…止まった!?」
「いいや、よく見るとスローモーションのように限りなく動きが抑制されている。」
「雨の“鎮静”の炎を剣撃と幻覚全てにぶつけて、攻撃そのものの動きを停止に近づけたんだな。」
ディーノとリボーンの分析は正しく、ほぼ停止してしまった剣撃の中で幻騎士は山本の姿を見失っていた。
それらをどかそうにも、分裂のせいでパワーが足りない。
仕方なく1体に戻った、その時。
「確かに俺はあんたに一回負けた。だがそれは俺の未熟さのせいで…親父のくれた時雨蒼燕流はいつだって、完全無欠・最強無敵だ!!」
幻騎士はそこで、ようやく山本の姿を捉えた。
3本の小刀による推進力で、真正面から向かって来ている。
「……速い!!いや、違う……奴が遅いのでなく、俺の動きが鈍いのだ!!」
ふと足元を見れば、剣撃を伝って自分に作用する“鎮静”の炎。
「ゲゲェッ!!」
「時雨蒼燕流、攻式八の型……篠突く雨!!」
山本の一太刀が、クリーンヒットした。
---
------
「みぃ…」
『セレネ…!?』
再び繰り出される無数の銃弾を避けながら、檸檬は右肩を見る。
と、セレネが体力を失っているのに気付いた。
『どうしたの!?』
「効いてきたようね。」
『えっ…?』
妖しく笑う蜜柑を見てから、檸檬はハッとする。
『(この症状……雨属性の“鎮静”!?でも雨属性の攻撃なんて受けてるハズがない…)』
そう思い、自分に迫るピグの属性を確認する。
やはり、尾に灯っているのは大空属性の炎。
「前に、メローネ基地で交戦した時…言ったわよね。」
『メローネ基地で…?』
「戦いにおいて重要なことは、強力な一打を持つことじゃないって。」
それを聞いて、檸檬は思い出す。
---「攻撃手段の多彩さこそ、重要なのよ。」
『確かにその理論には賛成だよ。けど、蜜柑の攻撃手段はもう全部明かしたも同然でしょ?』
「…心外ね、そんな風に思ってたの。」
何故か、背筋に冷たいものを流されたような感覚を抱いた檸檬。
垣間見えた檸檬の不安感に釘を刺すように、蜜柑は言った。
「雲ヒナの防御壁を弱らせたのは、ピグが放った“雨属性の炎弾”よ。」
『ピグが……何故…』
「姉さんが空間移動を完成させてる間に、私が何もせず待っているとでも?」
話している間に、檸檬の肩に乗っていたセレネはついに力尽きて匣に戻る。
それを待っていたかのように、蜜柑は口を開いた。
「見せてあげるわ、ピグの新しいプログラムを。」
『新しいプログラム!?』
「ピグ、C to“C”炎弾。」
「ガアァーッ!!」
眼光の鋭さを増した蜜柑は、今までに無い指示を出した。
すると……
『うそ…何で…?』
ピグが放ったのは、これまでのオレンジ色の炎の光球ではなく…
『紫……雲属性っ!?』
「気をつけないと、当たるわよ?」
『なっ…!』
檸檬に向かう間に、紫色の炎弾はどんどん分裂していく。
それはまさしく雲属性の“増殖”。
「檸檬…」
モニターで見ていた雲雀は、再びその拳を固くした。
彼は、先ほどピグがセレネの防御壁を破る時に何をしたのかも、見ていたのだ。
---「ピグ、C to“R”…ヒナを鎮静させて。」
---「ガアッ!」
蜜柑が特殊な指示を出した直後、ピグの尾に灯る炎が青に変わり、
放った炎弾が雲ヒナを鎮静させたのだ。
結果、雲ヒナの増殖力が低下し、防御壁が崩れた。
「(あの猿……まさか…)」
蜜柑が独自に製作した匣の真価は、まだ全て発揮されていない……
言い知れぬ不安が、雲雀の脳裏を過る。
十数個に増殖した雲の炎弾は、モニターにもしっかり映っていた。
「檸檬ちゃんっ!!」
「危ないです!!」
京子とハルが声を上げるが、檸檬は何を思ったかその場に立ち止まる。
そして……
『……貰うよ、』
両手のナイフで複数の炎弾を吸収していく檸檬。
奪った炎はどう見ても雲の炎。
だが、檸檬が再びピグを見た時にはもう、大空属性に戻っていた。
檸檬のナイフに残ったものだけが、雲属性。
『何をしたか分からないけど…雲の炎をくれたのは有難いな♪』
修業の第七段階を思い出し、檸檬は奪った炎の純度を上げる。
そして、再びセレネを開匣した。
「みっ!」
「セレネちゃん!」
「元気そうです!」
「だけど何なのかしら?一時的に属性を変えるあの匣は…」
「恐らく、アレこそ蜜柑がミルフィオーレで時間をかけて完成させたプログラムだな。」
ビアンキの疑問に答えるリボーン。
するとスクアーロが付け足すように言う。
「俺らの方にも僅かだが情報は入ってた。アイツは…蜜柑は、大空以外の全ての“属性の特徴”を研究してるとな。」
「大空以外の…“属性の特徴”?雨の鎮静、雲の増殖作用ってことか…?」
「だがこんな形で来るとはなぁ…」
モニターの中では、蜜柑・ピグと真っ直ぐ向き合う檸檬・セレネ。
「全部奪えたのは予想外だったわ。」
『どーだか。むしろ、リングを持たないあたしへのサービスだったように思うけど?』
「でも次は…同じようには行かないわね。」
口角を上げた蜜柑は、ピグに言う。
「C to“H”炎投(エントウ)。」
「キイーッ!!」
指示の直後、その場でくるりと宙返りをするピグ。
すると……
ボウッ、
『なっ…どうして!?』
「キイィィーッ!!」
尻尾に灯る炎は赤くなり、
手から放たれる炎も赤いものになった。
これには、観覧席も驚くばかり。
「今度は赤……嵐の炎!檸檬殿!!」
「ヨヨヨ!お、おかしいです!いくら何でも1つの匣で4属性の炎を扱うなど…!」
バジルやジャンニーニの横で、ディーノとリボーンが分析する。
「…どうやら最初の指示で属性を変えられるみたいだぜ。」
「ああ、けど一瞬みてーだな。」
『くっ…!セレネ、』
「みいっ!」
咄嗟に呼び掛け防御壁を展開させる檸檬だったが…
「嵐の特徴は何だと思ってるの?」
「み…みぃぃーっ…」
『(そうだ、“分解”!!)』
直前に思い出し、空間移動で炎投を別の場所にぶつけさせた檸檬。
少し息が荒くなったその姿に、蜜柑は嘲笑する。
「少しは分かった?私の最高傑作……ピグの秀逸さが。」
『…まったく、とんでもないの作ったわね……』
檸檬はグッとナイフを握り直した。
「あれが山本殿のボンゴレ匣!!」
ボンゴレ側の観覧席と同じく、山本と対峙している幻騎士も、その炎を見て思う。
「(やはり奴は、以前戦った山本武ではないな……)」
「準備は出来たぜ、幻騎士。」
「……良かろう、貴様を全力で葬るに値する剣士として認めてやる……だが後悔するな。これで俺に、情けは無くなる。」
幻騎士の中指にあるリングが光る。
それは普通のリングではなく…
「ヘルリング!!」
禍々しく変化していくそのオーラに、山本も目を見開く。
幻騎士の体は藍色の炎に包まれ、そして……
「うおおおお!!!」
ズァァア…
メローネ基地でツナと戦った時と同じ、地獄の騎士とも言える姿と化した。
リベンジ
「あれがヘルリングの戦力倍加!!」
「おでましだな。」
「ハアァアア…フルパワーだ。ヌゥゥ…力が何倍にも増殖する…!!だが、何故だ…」
理性を失い始めた幻騎士は、心の内にある不満を露わにする。
「何故これ程の力を持つ俺を、認めてくれぬのだ……何故俺の方が優れているのにトリカブトが霧の真6弔花なのだ!!」
溢れだすようなその言葉に、山本は疑問符を浮かべる。
「神を!!白蘭様を守る霧の守護者は!!誰より俺が適任だと言うのにぃぃ!!!」
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「(この気配は……ヘルリングの…)」
同じ頃、セレネのシールドに全ての攻撃を防がれていた蜜柑は、遠くからその尋常でないオーラを感じ取った。
というより、幻騎士の叫びを優れた聴覚がキャッチしたのである。
「(にしても……)」
目の前に未だ展開し続ける雲ヒナの防御壁を見て、考える。
「(これだけ増殖しているのに、まだ炎が切れない……内側から炎をチャージしてる気配も無いし…)」
ドームの内側で檸檬が何をしているのか、蜜柑には全く予想できなかった。
何せ、セレネの能力を見たのが初めてだったのだ。
「減らない壁……少しは使えるようね、そのヒナ鳥。」
そう呟いてから、ピグを呼び戻す。
反対側から爪で攻撃していたにも関わらず、ピグもセレネの防御壁を突破出来なかったようだ。
「姉さん、いつまで休憩してるつもり?そうしていれば、私が攻撃をやめるとでも思ってるのかしら。」
長時間展開していたせいで少しサイズが縮んだピグに、再び炎をチャージする蜜柑。
防御壁の内側からは、何も聞こえない。
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「みっ…みぃっ…!」
『ん……セレ…ネ……』
防御ドームの内側では、分身ではないセレネの本体が、必死に檸檬の頬をつついていた。
出血で一時的に意識を失っていた檸檬は、背中の痛みを堪えながら起き上がる。
「みっ!」
『これは……セレネが、やってくれたの?』
「みぃっ!」
『凄い…こんなに増殖出来るんだね……』
檸檬が自らの波動を直接変換し、純度100%の炎をセレネに与えた為、出来上がったのだ。
「み……」
『ん?あぁ、背中は大丈夫だよ。出血は抑えてるし……』
言いながら檸檬がセレネを撫でていた、その時。
ザアアアッ…!
『なっ…!?』
突如ドームのてっぺんから光が差す。
どうやらピグが最深部まで抉ったようだ。
それはすなわち、セレネの防御壁が破られた、ということ。
「みっ、」
『タイムリミットね、分かった。行くよ!』
「みぃっ!」
セレネを肩に乗せ、檸檬はドームの外に出る。
「随分長いこと閉じこもってたけど…作戦は練れたかしら?」
『生憎なーんにも。だけど…』
檸檬は強い眼差しを蜜柑に向けて。
『蜜柑が言ってたことは、間違いだったでしょ?セレネは役立たずでもガラクタでもない。』
「……けれど、それが本気でしょう?」
『どういうこと?』
檸檬の言葉に一瞬黙らされたものの、蜜柑はスッと口角を上げる。
「雲ヒナの防御壁を今さっき破ったのが、私個人の力だとでも思った?」
ミルフィオーレの観覧席で、白蘭はマシュマロを1つ口に運ぶ。
「やっぱり蜜柑はちょっとやそっとじゃ折れないね、さすが僕のボス補佐だ♪」
すると隣でブルーベルが言う。
「びゃくらーん、さっきからずっと蜜柑の戦い見てるけど……あっちはいいの?」
「ん?“あっち”って?」
ブルーベルの視線を辿り、別のモニターを見ると、そこにはヘルリングに精神を食わせた幻騎士の姿。
-「何故俺が奴らの部下なのだー!!」
「あんなこと言ってるよ。」
「ははっ、だから幻ちゃん好きなんだよ。人としての器の小ささがいいんだよな~、小さい器は僕の掌にすっぽり入る♪」
白蘭がそのように言っているとはつゆ知らず、幻騎士は山本を威嚇する。
「俺は今、虫の居所が悪い!!ギッタギタにぶっ殺してやる!!!」
更に、ツナと戦った時の自分は全力でなかったと告げるが、
山本は取り乱すことなく答える。
「そう来なくっちゃ、面白くねーって。」
「グヌゥゥ…減らず口の青二才が!!剣撃と幻海牛の二重攻撃を喰らえ!!」
幻騎士の剣にパワーが集められていく。
その隙に、山本は次郎を匣に戻した。
「幻剣舞(ダンツァ・スペットロ・スパダ)!!!」
「何て剣撃だ!!しかも幻覚のミサイルまで!!」
観覧席のバジルは驚くが、山本は神経を研ぎ澄ませて。
「(時雨蒼燕流、守式四の型……五風十雨!)」
剣撃とミサイルが飛んで来たその瞬間から、山本の姿が消えた。
しかしそれこそが、“五風十雨”という技なのだとスクアーロは言う。
「五風十雨は、敵の呼吸に合わせて剣をかわす回避奥義だ。それにボンゴレ匣の推進力が足されたんだ、当たるものかぁ。」
しかしそれで終わる幻騎士ではない。
ヘルリングの力で分身を作り、それぞれが同じ技を繰り出す。
「甘いわ!!更に10倍だ!!究極幻剣舞(エクストラ・ダンツァ・スペットロ・スパダ)!!!」
道いっぱいに溢れんばかりの剣撃が放たれる。
それらは真っ直ぐ山本に向かっていく、が…
「(時雨蒼燕流、総集奥義……)」
その瞬間、時雨金時の鍔の部分が形状を変化させる。
まるで、合体していた燕が羽を広げたように。
両手でしっかりと握りしめ、山本は剣撃に突っ込んでいった。
「“時雨之化”…」
刹那、剣撃の内部から青い光が溢れだし……そして、
「なに!?」
「剣撃が…止まった!?」
「いいや、よく見るとスローモーションのように限りなく動きが抑制されている。」
「雨の“鎮静”の炎を剣撃と幻覚全てにぶつけて、攻撃そのものの動きを停止に近づけたんだな。」
ディーノとリボーンの分析は正しく、ほぼ停止してしまった剣撃の中で幻騎士は山本の姿を見失っていた。
それらをどかそうにも、分裂のせいでパワーが足りない。
仕方なく1体に戻った、その時。
「確かに俺はあんたに一回負けた。だがそれは俺の未熟さのせいで…親父のくれた時雨蒼燕流はいつだって、完全無欠・最強無敵だ!!」
幻騎士はそこで、ようやく山本の姿を捉えた。
3本の小刀による推進力で、真正面から向かって来ている。
「……速い!!いや、違う……奴が遅いのでなく、俺の動きが鈍いのだ!!」
ふと足元を見れば、剣撃を伝って自分に作用する“鎮静”の炎。
「ゲゲェッ!!」
「時雨蒼燕流、攻式八の型……篠突く雨!!」
山本の一太刀が、クリーンヒットした。
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「みぃ…」
『セレネ…!?』
再び繰り出される無数の銃弾を避けながら、檸檬は右肩を見る。
と、セレネが体力を失っているのに気付いた。
『どうしたの!?』
「効いてきたようね。」
『えっ…?』
妖しく笑う蜜柑を見てから、檸檬はハッとする。
『(この症状……雨属性の“鎮静”!?でも雨属性の攻撃なんて受けてるハズがない…)』
そう思い、自分に迫るピグの属性を確認する。
やはり、尾に灯っているのは大空属性の炎。
「前に、メローネ基地で交戦した時…言ったわよね。」
『メローネ基地で…?』
「戦いにおいて重要なことは、強力な一打を持つことじゃないって。」
それを聞いて、檸檬は思い出す。
---「攻撃手段の多彩さこそ、重要なのよ。」
『確かにその理論には賛成だよ。けど、蜜柑の攻撃手段はもう全部明かしたも同然でしょ?』
「…心外ね、そんな風に思ってたの。」
何故か、背筋に冷たいものを流されたような感覚を抱いた檸檬。
垣間見えた檸檬の不安感に釘を刺すように、蜜柑は言った。
「雲ヒナの防御壁を弱らせたのは、ピグが放った“雨属性の炎弾”よ。」
『ピグが……何故…』
「姉さんが空間移動を完成させてる間に、私が何もせず待っているとでも?」
話している間に、檸檬の肩に乗っていたセレネはついに力尽きて匣に戻る。
それを待っていたかのように、蜜柑は口を開いた。
「見せてあげるわ、ピグの新しいプログラムを。」
『新しいプログラム!?』
「ピグ、C to“C”炎弾。」
「ガアァーッ!!」
眼光の鋭さを増した蜜柑は、今までに無い指示を出した。
すると……
『うそ…何で…?』
ピグが放ったのは、これまでのオレンジ色の炎の光球ではなく…
『紫……雲属性っ!?』
「気をつけないと、当たるわよ?」
『なっ…!』
檸檬に向かう間に、紫色の炎弾はどんどん分裂していく。
それはまさしく雲属性の“増殖”。
「檸檬…」
モニターで見ていた雲雀は、再びその拳を固くした。
彼は、先ほどピグがセレネの防御壁を破る時に何をしたのかも、見ていたのだ。
---「ピグ、C to“R”…ヒナを鎮静させて。」
---「ガアッ!」
蜜柑が特殊な指示を出した直後、ピグの尾に灯る炎が青に変わり、
放った炎弾が雲ヒナを鎮静させたのだ。
結果、雲ヒナの増殖力が低下し、防御壁が崩れた。
「(あの猿……まさか…)」
蜜柑が独自に製作した匣の真価は、まだ全て発揮されていない……
言い知れぬ不安が、雲雀の脳裏を過る。
十数個に増殖した雲の炎弾は、モニターにもしっかり映っていた。
「檸檬ちゃんっ!!」
「危ないです!!」
京子とハルが声を上げるが、檸檬は何を思ったかその場に立ち止まる。
そして……
『……貰うよ、』
両手のナイフで複数の炎弾を吸収していく檸檬。
奪った炎はどう見ても雲の炎。
だが、檸檬が再びピグを見た時にはもう、大空属性に戻っていた。
檸檬のナイフに残ったものだけが、雲属性。
『何をしたか分からないけど…雲の炎をくれたのは有難いな♪』
修業の第七段階を思い出し、檸檬は奪った炎の純度を上げる。
そして、再びセレネを開匣した。
「みっ!」
「セレネちゃん!」
「元気そうです!」
「だけど何なのかしら?一時的に属性を変えるあの匣は…」
「恐らく、アレこそ蜜柑がミルフィオーレで時間をかけて完成させたプログラムだな。」
ビアンキの疑問に答えるリボーン。
するとスクアーロが付け足すように言う。
「俺らの方にも僅かだが情報は入ってた。アイツは…蜜柑は、大空以外の全ての“属性の特徴”を研究してるとな。」
「大空以外の…“属性の特徴”?雨の鎮静、雲の増殖作用ってことか…?」
「だがこんな形で来るとはなぁ…」
モニターの中では、蜜柑・ピグと真っ直ぐ向き合う檸檬・セレネ。
「全部奪えたのは予想外だったわ。」
『どーだか。むしろ、リングを持たないあたしへのサービスだったように思うけど?』
「でも次は…同じようには行かないわね。」
口角を上げた蜜柑は、ピグに言う。
「C to“H”炎投(エントウ)。」
「キイーッ!!」
指示の直後、その場でくるりと宙返りをするピグ。
すると……
ボウッ、
『なっ…どうして!?』
「キイィィーッ!!」
尻尾に灯る炎は赤くなり、
手から放たれる炎も赤いものになった。
これには、観覧席も驚くばかり。
「今度は赤……嵐の炎!檸檬殿!!」
「ヨヨヨ!お、おかしいです!いくら何でも1つの匣で4属性の炎を扱うなど…!」
バジルやジャンニーニの横で、ディーノとリボーンが分析する。
「…どうやら最初の指示で属性を変えられるみたいだぜ。」
「ああ、けど一瞬みてーだな。」
『くっ…!セレネ、』
「みいっ!」
咄嗟に呼び掛け防御壁を展開させる檸檬だったが…
「嵐の特徴は何だと思ってるの?」
「み…みぃぃーっ…」
『(そうだ、“分解”!!)』
直前に思い出し、空間移動で炎投を別の場所にぶつけさせた檸檬。
少し息が荒くなったその姿に、蜜柑は嘲笑する。
「少しは分かった?私の最高傑作……ピグの秀逸さが。」
『…まったく、とんでもないの作ったわね……』
檸檬はグッとナイフを握り直した。