未来編②
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『……ふぅ、』
修業を完成させて、明日はいよいよ白蘭の指定した日。
恭弥とディーノはまた違う場所で修業してるみたいで、あたしは一人、並中の屋上に来ていた。
『やーっぱ気持ちいいなぁ…』
ぐっと背伸びして、フェンスに寄り掛かる。
夜の並盛町は、色んな明かりでキラキラしてて、すごく綺麗だった。
決戦の日
ふと、誰かが階段を上って来る気配を感じた。
「何してんだ?こんなトコで。」
『あ、ディーノ…』
「よっ、檸檬。」
『恭弥は?』
「夜の校内見回りだってさ。」
『そっか。』
修業で怪我とかしてないなら、と思ってまた夜の街並みを見る。
すると、横に立ったディーノが尋ねた。
「なぁ檸檬、」
『ん?』
「怖いか?」
『うーん……そうだなぁ…』
ただボーッと、町の明かりを瞳に映す。
あたしは、明日戦いに行くんだ。
他ならぬ、血を分けた妹と。
蜜柑は、また全身全霊をかけてあたしを捕獲しようとする。
ううん、もしかしたら今度は殺しにかかって来るかも知れない。
それもこれも…お母さんの予言のせい。
あたしがいつか第六感を使って家族を皆殺しにするっていう、根拠のない未来視のせい。
けれどお母さんの未来視は、必ず当たると言われているから……
だから…もしかしたらこの戦いで、あたしは………
『まだ怖いな……少し。』
「…そか……」
『お母さんの予知した運命に歯向かえるっていう、絶対的な自信は……無いの。』
「それでも、信じるしかねぇ……そうだろ?」
『うん……今度こそ、蜜柑と話をつけたい。』
あたしは、蜜柑を殺さない。殺したくない。
その感情こそ、理性こそ、予知された運命を打ち砕くカギだって信じてる。
「その感情が、檸檬の強さだって俺は思うぜ。」
『ディーノ…』
「今の蜜柑には無い強さだ。」
ぽふっとあたしの頭に手を乗せて、ディーノは優しく笑った。
感情が、強さ………
『うん、そうだといいな。』
ディーノに笑い返してから、夜空の星達を見上げた。
---
-------
-------------
「目覚めの時……運命の時……約束の時。」
「ぼばっ!トリカブトが時を…トリカブトが時を告げた!!」
ミルフィオーレのアジトにて。
仮面とマントに身を包んだ巨人の言葉に、人形を持った男が半狂乱になる。
「どうしよう……僕チン興奮してきた…今日殺しちゃうのは1万人かな、10万人かな…」
「ハハンッ、落ち着きましょうデイジー。今日の務めは大量虐殺ではありません。」
カードで遊んでいた2人のうち、鮮やかな色の長髪を持つ男が興奮状態のデイジーに言う。
「我々の戦う相手はごく少人数、白蘭様からは一種のセレモニーとも聞いてます。では、白蘭様の所へ参りましょう。この日をとても楽しみにしておられた。」
そう言って彼らが立ち上がった、その時。
「やったー!!ついちゃったよ!!」
彼らが居た場所から少し離れて置いてある円柱型の水槽で、女子が騒ぐ声。
「ねぇ見て見て!!すっごいついたの!!きん肉っ。」
「そりゃあ筋肉じゃねーぜ、ペチャパイってんだ、バーロー。」
「何よザクロ!!きん肉だもん!!きんトレしたもん!!」
「そのメンチの切り方じゃ瞼の裏しか見えてねーなぁ、電波ちゃん。」
赤髪に髭面の男の挑発に、水槽の中にいた彼女はザバッと上がって。
「誰が電波だこのヤロー!今度言ったら頭蓋骨剥くぞ!!」
すると、傍にいた長髪の男・桔梗が仲裁して彼女を宥める。
「ブルーベルは女の子なんですから、まず足を閉じましょうか。」
「ニュニュウ~…ザクロのすっとこどっこい。絶っ対尊敬させてやるっ。」
ブルーベルが桔梗に言われた通り足を閉じたのとほぼ同時に、部屋の入口に1つの人影。
「ハハハッ、相変わらず楽しそーだなー、君達は。やっ♪」
マシュマロを食べながら現れたのは、彼らのボス・白蘭。
「ハハンッ、まさかお出でになるとは、白蘭様。」
「当たり前だろ?今回僕は君達と同じプレイヤーなんだよ。ほら、お揃いの戦闘服♪」
確かに白蘭は、ミルフィオーレの隊服とは違う黒いコートを身に纏っていた。
と、水槽から出て服を来たブルーベルが駆け寄る。
「かっくいー!びゃくらん!」
「呼び捨てるな!バーロー!」
注意するザクロにベーッと舌を出してから、ブルーベルは白蘭に聞く。
「ねぇねぇっ、あの子は来ないの?」
「“あの子”?……あぁ、蜜柑のことかい?」
白蘭はマシュマロを1つ口に入れてから、一層愉しそうな笑顔を見せて。
「プログラムの最終調整してるよ、もうすぐ終わるって。」
「にゅ~…びゃくらんは、あの子が生意気だって思わないの?」
「何言ってんだバーロー。どう考えてもお前の方が生意気なガキだろーが。」
「言ったわねザクロ!!」
「2人とも、白蘭様の前で…やめなさい。」
桔梗が静かに言うと、ブルーベルとザクロは不満そうに口を閉ざす。
「失礼しました、白蘭様。」
「んーん、実際蜜柑は君達ともあんまり喋らないしね。」
「しかしダークに関しては我々よりも詳しいと聞いています。」
「うん。だから僕は蜜柑にも、君達と同じくらいの信頼を寄せてるんだ♪」
「それはとても有難きお言葉。しかし白蘭様が今回手を汚される必要は無いでしょう。」
5人が、白蘭の近くへと足を進める。
「我々人類最強の選ばれし戦士が、史上最高のマーレリングと空前絶後の匣兵器を持ち、貴方という悪魔に仕えているのですから。」
ミルフィオーレの紋章が入った黒コートの集団。
一人欠けているものの、真6弔花の準備は、整った。
そして…
コツコツコツ…
「おっ♪」
「ハハンッ、来ましたね。」
「あの子!?」
突如廊下の向こうから響いてくるヒール音に反応する、白蘭、桔梗、ブルーベル。
現れたのは、数分前に自作の匣プログラムの最終調整を終えた蜜柑。
「白蘭、出立準備が完了しました。」
「ん、じゃあ行こうか。」
ミルフィオーレは、動き出した。
---
------
-----------
ボンゴレ地下アジトにて、ツナがある部屋のドアをノックした。
その部屋のベッドに横たわっていたのは、メローネ基地での戦いで相当なダメージを負ったラル。
「来るなと言ったハズだ。」
「いよいよなんです……白蘭と、真6弔花との決戦。」
「分かっている。俺も這ってでも行くつもりだったが足手纏いだとリボーンにハッキリ止められた。」
「ラル・ミルチ…」
「修業はうまくいったと聞いた。やれるんだろうな?」
ラルの問いに、ツナは深くしっかりと頷く。
白蘭を倒せば非73も世界から消えるから、もう少し待ってて、と。
「甘ったれが言うようになったな。」
「本当は、ラルにも修業の成果見て欲しかったんだけど…」
「……俺は寝る!行け。」
「あの…久しぶりだしもう少し話したいんだけど……」
「とてつもなく眠い。」
「…分かった、じゃあ行ってきます!」
ツナが去った後、ラルは静かに思いだす。
自分がコロネロの教官だった頃のことを。
---「まったくあんた、冷たい教官だぜ。現地に送り出す時ぐらい“頑張れ”の一言もかけろっての。生徒ってのは、それだけでもすげー嬉しいんだぜ、コラ!」
あの時も、言わなかった。
「無理だ!」
自分の性格では、無理なのだ。
半ば自分に言い聞かせるように、形見のバンダナを握りしめながら呟いた。
---
-----
一方、獄寺は基地内を隅から隅まで探し回っていた。
「おーい!!この大事な時にどこ行きやがった!あいつっ。」
「探しているのはこの子かしら?」
「瓜!!」
背後から話しかけて来たのは、眠っている瓜を持った姉のビアンキだった。
乾燥機の上で昼寝をしていたところを、獄寺に届けたのだ。
「……サンキュ。」
「ねぇ隼人、覚えてる?メローネ基地から帰って来たら話したいことがあるって言ったでしょ?」
ビアンキが言うと、獄寺は一瞬だけ動きを止める。
が、次の瞬間、彼の腕から起き上がった瓜が逃げて行ってしまい…
「あっ、しまった……待てよ!おい瓜!」
それを追いかけようとビアンキに背を向ける獄寺。
しかし、本気で追いかけるワケでもなく。
「………臆病な子。」
面と向かって話を聞きたがらない獄寺に、ビアンキは微笑した。
と、そこに。
「ビアンキ!」
『ビア姉さん!』
ツナと、並中から戻って来た檸檬が駆け寄って来る。
「今日の為に…服を用意してくれたって聞いたんだけど。」
「ええ、更衣室に全員分あるわ。レオンの耐炎糸で作った特別な戦闘服よ。」
『なんか…大空のリング争奪戦の前みたいだね。』
「うん。ありがと、ビアンキ。」
礼を言うツナに首を振ってから、ビアンキは檸檬に言った。
「それにしても、大丈夫なの?檸檬。」
『はい、レオンに無理させるワケには行きませんから。』
「蜜柑との戦い…苦戦を強いられることは間違いないわ。少なくとも、余裕なんて生まれない。」
『それも覚悟の上です。』
きりっと答える檸檬に、ビアンキは「分かったわ」とため息。
そして、再びツナの方を向く。
「何か言いたそうね。」
「え?あ、うん……京子ちゃんやハルの様子が気になって…大丈夫かなって思って……」
『怖がったりは、してませんでした?』
「むしろ興奮してはしゃいでるわ。………今のところね。」
「そっか、ならいいんだけど…」
---
-------
入江の部屋の前。
京子とハルは鍋とフライパンを持って中を覗きこんでいた。
「どお?ハルちゃん。」
「ほとんと酔っ払いです。服を脱ごうとしたまま眠ってます。」
「わぁ…」
丸い装置を隠し終わり、チョイスの準備も済ませた入江とスパナは、ボンゴレ基地に来ていた。
しかし疲れが溜まっていたようで。
「よくあんな姿勢で…」
「ナイトキャップまでキッチリかぶって寝ていたスパナさんとは凄い違いです…。」
「それだけ疲れてるんだね、昨日こっちに来るまで毎日ほとんど徹夜だって…」
「ですがココは心を鬼にしていきますよ!」
頷きあった京子とハルは、持っていた鍋やフライパンをスッと前に出して。
「起きて下さーい!!!」
カンカンカン!
「ひゃ!なにーーー!?火事!!?地震!!?」
鼓膜を破るような音に、入江は飛び起きた。
「う~ん…強烈な女の子達だな~~~…まだ耳がジンジンするよ……」
『あの、大丈夫ですか?』
「あっ…檸檬さん…!」
『お水です、どうぞ。』
「ありがとう…」
イタリアから持ち帰ったヴァリアーのコートを着た檸檬が、ペットボトルを差しだす。
『色々と大変だったみたいで…』
「いいや、大変なのはこれからだ。綱吉君達もだけど……もちろん君もだ、檸檬さん。」
『…はい、頑張ります。』
そこで入江は受け取ったペットボトルの水を一口飲み、キリッと表情を変える。
「僕は年長組だからね、しっかりしないと。お水、ありがとう。」
『いえ。』
入江と檸檬は、ツナ達が待機している部屋へと入る。
と、入江はみんなの格好に目を見開いた。
「君達その格好!!決まってるじゃないか!!」
「本当は照れくさいんですけど…」
「俺がこの戦いの為にオーダーしたんだ。」
ボンゴレマフィアの起源は住民を守る自警団。
歴代ボンゴレはその役割を果たす時、この正装に身を包んで命がけで戦った。
「何だよ…マフィアをちょっとカッコ良く良いモン見たいに言って…」
「元々のボンゴレは良いモンだったってことだ。その後で口では言えねーようなこともしてるかも知れねーけど…」
「それが問題なんだよ!!」
「でも今回の戦いは間違ってない!!絶対に君達は正しいんだ!!」
マフィアとして戦うことに抵抗を感じるツナに、入江はハッキリと言う。
73が白蘭の手に渡れば大変なことになる。
だから…
「白蘭サンを倒すことが、世界を救うことになるんだ!!」
「せ、世界を救うって……」
『ちょっと実感湧かないけどね。』
ぽかんとするツナ、苦笑する檸檬を見て、リボーンが言う。
「デカい話がピンとこねーなら、世界のことなんて考えなくていーぞ。」
「え?」
「お前達は10年前の平和な並盛に戻る為に、この戦いに勝て。」
「うむ…」
「…それなら、」
「はい。」
「檸檬、お前は姉妹の仲直りの為に軽く喧嘩して来い。」
『うんっ。』
それぞれが、それぞれの思いを抱き、覚悟をする。
腰にはボンゴレ匣、
ネクタイはキッチリしめて、
耳には通信機。
檸檬も専用の匣を下げ、
ナイフを装備し、
ヴァリアーの黒いコートに身を包む。
横分けの前髪は、雲雀から貰ったピンで留めて。
「よし、準備できたな。」
戦闘員は皆、スーツに着替えていた。
女性や技術者組は、えんじ色の正装に身を包んで。
「行くぞ。」
「「「おお!!」」」
修業を完成させて、明日はいよいよ白蘭の指定した日。
恭弥とディーノはまた違う場所で修業してるみたいで、あたしは一人、並中の屋上に来ていた。
『やーっぱ気持ちいいなぁ…』
ぐっと背伸びして、フェンスに寄り掛かる。
夜の並盛町は、色んな明かりでキラキラしてて、すごく綺麗だった。
決戦の日
ふと、誰かが階段を上って来る気配を感じた。
「何してんだ?こんなトコで。」
『あ、ディーノ…』
「よっ、檸檬。」
『恭弥は?』
「夜の校内見回りだってさ。」
『そっか。』
修業で怪我とかしてないなら、と思ってまた夜の街並みを見る。
すると、横に立ったディーノが尋ねた。
「なぁ檸檬、」
『ん?』
「怖いか?」
『うーん……そうだなぁ…』
ただボーッと、町の明かりを瞳に映す。
あたしは、明日戦いに行くんだ。
他ならぬ、血を分けた妹と。
蜜柑は、また全身全霊をかけてあたしを捕獲しようとする。
ううん、もしかしたら今度は殺しにかかって来るかも知れない。
それもこれも…お母さんの予言のせい。
あたしがいつか第六感を使って家族を皆殺しにするっていう、根拠のない未来視のせい。
けれどお母さんの未来視は、必ず当たると言われているから……
だから…もしかしたらこの戦いで、あたしは………
『まだ怖いな……少し。』
「…そか……」
『お母さんの予知した運命に歯向かえるっていう、絶対的な自信は……無いの。』
「それでも、信じるしかねぇ……そうだろ?」
『うん……今度こそ、蜜柑と話をつけたい。』
あたしは、蜜柑を殺さない。殺したくない。
その感情こそ、理性こそ、予知された運命を打ち砕くカギだって信じてる。
「その感情が、檸檬の強さだって俺は思うぜ。」
『ディーノ…』
「今の蜜柑には無い強さだ。」
ぽふっとあたしの頭に手を乗せて、ディーノは優しく笑った。
感情が、強さ………
『うん、そうだといいな。』
ディーノに笑い返してから、夜空の星達を見上げた。
---
-------
-------------
「目覚めの時……運命の時……約束の時。」
「ぼばっ!トリカブトが時を…トリカブトが時を告げた!!」
ミルフィオーレのアジトにて。
仮面とマントに身を包んだ巨人の言葉に、人形を持った男が半狂乱になる。
「どうしよう……僕チン興奮してきた…今日殺しちゃうのは1万人かな、10万人かな…」
「ハハンッ、落ち着きましょうデイジー。今日の務めは大量虐殺ではありません。」
カードで遊んでいた2人のうち、鮮やかな色の長髪を持つ男が興奮状態のデイジーに言う。
「我々の戦う相手はごく少人数、白蘭様からは一種のセレモニーとも聞いてます。では、白蘭様の所へ参りましょう。この日をとても楽しみにしておられた。」
そう言って彼らが立ち上がった、その時。
「やったー!!ついちゃったよ!!」
彼らが居た場所から少し離れて置いてある円柱型の水槽で、女子が騒ぐ声。
「ねぇ見て見て!!すっごいついたの!!きん肉っ。」
「そりゃあ筋肉じゃねーぜ、ペチャパイってんだ、バーロー。」
「何よザクロ!!きん肉だもん!!きんトレしたもん!!」
「そのメンチの切り方じゃ瞼の裏しか見えてねーなぁ、電波ちゃん。」
赤髪に髭面の男の挑発に、水槽の中にいた彼女はザバッと上がって。
「誰が電波だこのヤロー!今度言ったら頭蓋骨剥くぞ!!」
すると、傍にいた長髪の男・桔梗が仲裁して彼女を宥める。
「ブルーベルは女の子なんですから、まず足を閉じましょうか。」
「ニュニュウ~…ザクロのすっとこどっこい。絶っ対尊敬させてやるっ。」
ブルーベルが桔梗に言われた通り足を閉じたのとほぼ同時に、部屋の入口に1つの人影。
「ハハハッ、相変わらず楽しそーだなー、君達は。やっ♪」
マシュマロを食べながら現れたのは、彼らのボス・白蘭。
「ハハンッ、まさかお出でになるとは、白蘭様。」
「当たり前だろ?今回僕は君達と同じプレイヤーなんだよ。ほら、お揃いの戦闘服♪」
確かに白蘭は、ミルフィオーレの隊服とは違う黒いコートを身に纏っていた。
と、水槽から出て服を来たブルーベルが駆け寄る。
「かっくいー!びゃくらん!」
「呼び捨てるな!バーロー!」
注意するザクロにベーッと舌を出してから、ブルーベルは白蘭に聞く。
「ねぇねぇっ、あの子は来ないの?」
「“あの子”?……あぁ、蜜柑のことかい?」
白蘭はマシュマロを1つ口に入れてから、一層愉しそうな笑顔を見せて。
「プログラムの最終調整してるよ、もうすぐ終わるって。」
「にゅ~…びゃくらんは、あの子が生意気だって思わないの?」
「何言ってんだバーロー。どう考えてもお前の方が生意気なガキだろーが。」
「言ったわねザクロ!!」
「2人とも、白蘭様の前で…やめなさい。」
桔梗が静かに言うと、ブルーベルとザクロは不満そうに口を閉ざす。
「失礼しました、白蘭様。」
「んーん、実際蜜柑は君達ともあんまり喋らないしね。」
「しかしダークに関しては我々よりも詳しいと聞いています。」
「うん。だから僕は蜜柑にも、君達と同じくらいの信頼を寄せてるんだ♪」
「それはとても有難きお言葉。しかし白蘭様が今回手を汚される必要は無いでしょう。」
5人が、白蘭の近くへと足を進める。
「我々人類最強の選ばれし戦士が、史上最高のマーレリングと空前絶後の匣兵器を持ち、貴方という悪魔に仕えているのですから。」
ミルフィオーレの紋章が入った黒コートの集団。
一人欠けているものの、真6弔花の準備は、整った。
そして…
コツコツコツ…
「おっ♪」
「ハハンッ、来ましたね。」
「あの子!?」
突如廊下の向こうから響いてくるヒール音に反応する、白蘭、桔梗、ブルーベル。
現れたのは、数分前に自作の匣プログラムの最終調整を終えた蜜柑。
「白蘭、出立準備が完了しました。」
「ん、じゃあ行こうか。」
ミルフィオーレは、動き出した。
---
------
-----------
ボンゴレ地下アジトにて、ツナがある部屋のドアをノックした。
その部屋のベッドに横たわっていたのは、メローネ基地での戦いで相当なダメージを負ったラル。
「来るなと言ったハズだ。」
「いよいよなんです……白蘭と、真6弔花との決戦。」
「分かっている。俺も這ってでも行くつもりだったが足手纏いだとリボーンにハッキリ止められた。」
「ラル・ミルチ…」
「修業はうまくいったと聞いた。やれるんだろうな?」
ラルの問いに、ツナは深くしっかりと頷く。
白蘭を倒せば非73も世界から消えるから、もう少し待ってて、と。
「甘ったれが言うようになったな。」
「本当は、ラルにも修業の成果見て欲しかったんだけど…」
「……俺は寝る!行け。」
「あの…久しぶりだしもう少し話したいんだけど……」
「とてつもなく眠い。」
「…分かった、じゃあ行ってきます!」
ツナが去った後、ラルは静かに思いだす。
自分がコロネロの教官だった頃のことを。
---「まったくあんた、冷たい教官だぜ。現地に送り出す時ぐらい“頑張れ”の一言もかけろっての。生徒ってのは、それだけでもすげー嬉しいんだぜ、コラ!」
あの時も、言わなかった。
「無理だ!」
自分の性格では、無理なのだ。
半ば自分に言い聞かせるように、形見のバンダナを握りしめながら呟いた。
---
-----
一方、獄寺は基地内を隅から隅まで探し回っていた。
「おーい!!この大事な時にどこ行きやがった!あいつっ。」
「探しているのはこの子かしら?」
「瓜!!」
背後から話しかけて来たのは、眠っている瓜を持った姉のビアンキだった。
乾燥機の上で昼寝をしていたところを、獄寺に届けたのだ。
「……サンキュ。」
「ねぇ隼人、覚えてる?メローネ基地から帰って来たら話したいことがあるって言ったでしょ?」
ビアンキが言うと、獄寺は一瞬だけ動きを止める。
が、次の瞬間、彼の腕から起き上がった瓜が逃げて行ってしまい…
「あっ、しまった……待てよ!おい瓜!」
それを追いかけようとビアンキに背を向ける獄寺。
しかし、本気で追いかけるワケでもなく。
「………臆病な子。」
面と向かって話を聞きたがらない獄寺に、ビアンキは微笑した。
と、そこに。
「ビアンキ!」
『ビア姉さん!』
ツナと、並中から戻って来た檸檬が駆け寄って来る。
「今日の為に…服を用意してくれたって聞いたんだけど。」
「ええ、更衣室に全員分あるわ。レオンの耐炎糸で作った特別な戦闘服よ。」
『なんか…大空のリング争奪戦の前みたいだね。』
「うん。ありがと、ビアンキ。」
礼を言うツナに首を振ってから、ビアンキは檸檬に言った。
「それにしても、大丈夫なの?檸檬。」
『はい、レオンに無理させるワケには行きませんから。』
「蜜柑との戦い…苦戦を強いられることは間違いないわ。少なくとも、余裕なんて生まれない。」
『それも覚悟の上です。』
きりっと答える檸檬に、ビアンキは「分かったわ」とため息。
そして、再びツナの方を向く。
「何か言いたそうね。」
「え?あ、うん……京子ちゃんやハルの様子が気になって…大丈夫かなって思って……」
『怖がったりは、してませんでした?』
「むしろ興奮してはしゃいでるわ。………今のところね。」
「そっか、ならいいんだけど…」
---
-------
入江の部屋の前。
京子とハルは鍋とフライパンを持って中を覗きこんでいた。
「どお?ハルちゃん。」
「ほとんと酔っ払いです。服を脱ごうとしたまま眠ってます。」
「わぁ…」
丸い装置を隠し終わり、チョイスの準備も済ませた入江とスパナは、ボンゴレ基地に来ていた。
しかし疲れが溜まっていたようで。
「よくあんな姿勢で…」
「ナイトキャップまでキッチリかぶって寝ていたスパナさんとは凄い違いです…。」
「それだけ疲れてるんだね、昨日こっちに来るまで毎日ほとんど徹夜だって…」
「ですがココは心を鬼にしていきますよ!」
頷きあった京子とハルは、持っていた鍋やフライパンをスッと前に出して。
「起きて下さーい!!!」
カンカンカン!
「ひゃ!なにーーー!?火事!!?地震!!?」
鼓膜を破るような音に、入江は飛び起きた。
「う~ん…強烈な女の子達だな~~~…まだ耳がジンジンするよ……」
『あの、大丈夫ですか?』
「あっ…檸檬さん…!」
『お水です、どうぞ。』
「ありがとう…」
イタリアから持ち帰ったヴァリアーのコートを着た檸檬が、ペットボトルを差しだす。
『色々と大変だったみたいで…』
「いいや、大変なのはこれからだ。綱吉君達もだけど……もちろん君もだ、檸檬さん。」
『…はい、頑張ります。』
そこで入江は受け取ったペットボトルの水を一口飲み、キリッと表情を変える。
「僕は年長組だからね、しっかりしないと。お水、ありがとう。」
『いえ。』
入江と檸檬は、ツナ達が待機している部屋へと入る。
と、入江はみんなの格好に目を見開いた。
「君達その格好!!決まってるじゃないか!!」
「本当は照れくさいんですけど…」
「俺がこの戦いの為にオーダーしたんだ。」
ボンゴレマフィアの起源は住民を守る自警団。
歴代ボンゴレはその役割を果たす時、この正装に身を包んで命がけで戦った。
「何だよ…マフィアをちょっとカッコ良く良いモン見たいに言って…」
「元々のボンゴレは良いモンだったってことだ。その後で口では言えねーようなこともしてるかも知れねーけど…」
「それが問題なんだよ!!」
「でも今回の戦いは間違ってない!!絶対に君達は正しいんだ!!」
マフィアとして戦うことに抵抗を感じるツナに、入江はハッキリと言う。
73が白蘭の手に渡れば大変なことになる。
だから…
「白蘭サンを倒すことが、世界を救うことになるんだ!!」
「せ、世界を救うって……」
『ちょっと実感湧かないけどね。』
ぽかんとするツナ、苦笑する檸檬を見て、リボーンが言う。
「デカい話がピンとこねーなら、世界のことなんて考えなくていーぞ。」
「え?」
「お前達は10年前の平和な並盛に戻る為に、この戦いに勝て。」
「うむ…」
「…それなら、」
「はい。」
「檸檬、お前は姉妹の仲直りの為に軽く喧嘩して来い。」
『うんっ。』
それぞれが、それぞれの思いを抱き、覚悟をする。
腰にはボンゴレ匣、
ネクタイはキッチリしめて、
耳には通信機。
檸檬も専用の匣を下げ、
ナイフを装備し、
ヴァリアーの黒いコートに身を包む。
横分けの前髪は、雲雀から貰ったピンで留めて。
「よし、準備できたな。」
戦闘員は皆、スーツに着替えていた。
女性や技術者組は、えんじ色の正装に身を包んで。
「行くぞ。」
「「「おお!!」」」