未来編②
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「修業の説明は以上!各自修業場所は自分で選べ。バジルは自分の修業をしながら皆をサポートしてくれるからな。」
「宜しくお願いします!」
ディーノからの説明が終わったその瞬間、獄寺は眼鏡をかけて。
「芝生頭とアホ牛!!ノートと鉛筆を持って図書室に来い!!まずは理論を叩き込む!!」
「(獄寺君の理論指導来たー!!)」
「ありゃー大変そーだな。」
「だね…」
その光景に苦笑してから、ツナは山本に尋ねる。
「山本は修業どーするの?」
「まっ、良くわかんねーから修業が始まるまで自主練だな。」
一方ドアのそばにいたビアンキは、クロームに呼び掛ける。
「クローム来なさい、鍛えてあげるわ。」
「…はい。」
こうして全員がトレーニングルームを退室し、部屋は静寂に包まれた。
ボイコット
「……………行きましたね、」
「うん…」
バサッ、
「「ぷは~~~っ!」」
大きなバイクの後ろの壁に隠れていたのは、風呂敷を頭に巻いた京子とハル。
「バッチリ聞いちゃいましたね♪」
「ドキドキしたね!」
「いつまでも除け物にしようとしても、そうは行きませんよ!ツナさん達ばかり状況を分かってて、ハル達だけ良く分からないのに頑張るなんて出来ません!」
「でもボックスとかミルフィオーレって何だろう?ケーキのミルフィーユみたい…。ボンゴレはスパゲティの種類だし……」
「は、はひ~……多分この場合のボンゴレは、ツナさんのいるマフィアだと思いますけど……」
「まふぃあ?」
---
-------
------------
『名前は何にしよっか?』
「みっ?」
匣の中から出てきたヒナに、檸檬はふふっと笑いかける。
紫の炎と銀色の毛がそれぞれ淡く光って何だか神秘的な雰囲気を醸し出していた。
『……って、そんなこと考えてる場合じゃない!第八段階ってコレで終わり…?』
ノートの次のページをめくって、檸檬は首を傾げる。
そこには、“もう1つを受け取ってから第九段階へ”と書かれていたのだ。
『もう1つ…?未来のあたしは、匣を2つ使ってたってこと!?』
混乱する檸檬の肩に、雲ヒナがよじ登る。
それを撫でながら、檸檬は続きを読んだ。
“セレネの能力については、あたしからはヒントを出さない。自分で見つけ出してちょうだい”
『“セレネ”…?あっ、このヒナの名前!?』
「みっ!」
名前を呼ばれたのが嬉しかったのか、雲ヒナはピョンッと肩の上で跳ねる。
『(なーんだ、名前付いてたんだー…。)』
それにしても、“もう1つの匣”の預かり主の見当がつかない。
しかも、開匣さえ出来てしまえば第八段階は終わりらしい。
『うーん………部屋で考え込んでも仕方ないか!聞いてみようっ。』
「みぃー♪」
檸檬は雲ヒナ改めセレネを肩に乗せたまま、部屋を飛び出した。
---
------
------------
「始めるか…」
小さなトレーニングルームに移ったツナは、昨晩の怪物のことを思い出していた。
湧きおこる不安を拭い、リングに炎を灯す。
「いいか、今度暴れたら俺も全力で叩き潰すぞ!」
一瞬動きを止めた匣。
しかし…
ググンッと再びツナの手の中で震えだす。
「わっ、怒ってんのか!?」
凶暴化しているソレをどうすればいいのか、分からないままツナは青ざめた。
---
-------
一方、図書室。
「出でよ!漢我流ー!!」
晴のリングに炎を灯し、了平が通常の晴カンガルーを開匣した。
「あ…あいつを蹴ってみろ。」
「ぶっ!!」
了平が指を差した相手、獄寺を思い切り蹴飛ばす我流。
それを見た了平は誇らしげに我流と肩を組む。
「おおっ!開匣できた上に俺の言うことをきいた!!何と頼もしい奴だ!!次はボンゴレ匣を開匣だ!!」
「てんめー……説明中に誰が開匣しろっつった!しかも俺を実験台にしやがって!!」
当然キレる獄寺だったが、シュルーっと現れたリボーンは了平を褒める。
いきなり開匣できる“常時死ぬ気男”である了平はさすがだ、と。
それに獄寺と違い、匣アニマルが懐いているのも感心できる、と。
「ニャオオオ!!!」
「ギャッ!瓜っ!!さっきエサやっただろ!?」
瓜に顔面を引っ掻かれる獄寺を見て、ランボが楽しそうにそれに加わる。
「いいじょ!!もっとやれー!!獄寺死ねー!!」
「ギャッ!てめーが果てろ!!」
どさくさ紛れに自分を殴ったランボを殴り返す獄寺。
そこで了平が止める。
「チビに暴力はいかんぞ!!」
「るせっ!てめーら生徒失格だ!!」
「が…ま………うわあああ!!」
痛みに耐えきれず泣きだしたランボのリングから、大きな雷の炎が放出された。
「あのバガ!獄寺のバガ!!死ね!!」
「おっ…おい!ボンゴレ匣にリングの炎を……注入しやがった!!」
すると、炎の注入口周辺が光って……
ピシャァ…!
「う…牛だ!!」
「ボンゴレ匣、開匣第1号だな。」
雷属性の巨大な牛が現れ、ランボはその背に乗っていた。
それでもまだ、ランボは泣きやまずに怒りをぶつける。
「バカ者どもぉ!!みんな死んじゃえ!!」
「おっ、おい!!」
「まさか…突進してくるんじゃねーだろーな……」
地を蹴ろうとするその前足を見て、構える了平と獄寺。
だが次の瞬間、牛の姿は2人の視界から消え……
図書室に、雷の炎が迸った。
---
------
-------------
『あ、おかえり!レヴィ!』
「た、ただいま…」
ちょうど廊下で出会ったのは、何とか怪我を治して病院から帰って来たレヴィだった。
『もう大丈夫なの?』
「これしきの傷、何ともない。ところで檸檬、何かあったのか?廊下をうろついてたようだが…」
『あ、そうだった!』
檸檬はぽんっと手を叩き、思い出したように問いかける。
『あのね、この時代のあたしって、もう1つ匣兵器持ってなかった?』
「もう1つ?」
「みーっ!」
『あ、暴れないの!落ちちゃうでしょっ。』
肩の上で跳ねるセレネを掌に乗せる檸檬。
すると、それを見ながらレヴィがぼそりと言った。
「そう言えば気になっていたのだ。ボンゴレ本部が壊滅する前、檸檬はナイフ以外の武器を所持していなかった。」
『え…?』
「それで聞いてみれば…全て預けたと。」
『誰に預けたか言わなかった!?』
「あぁ、そこまでは……すまないな。」
『ううん、ありがとうレヴィ。他の人にも聞いてみる。』
とりあえず皆がいそうな広間に向かいながら考えた。
未来のあたしは、あくまで自分が後で取りに来るかのように言って預けてる。
ってことは、同じ人に違うものを預けてるってことはあり得ない。
つまり……
ナイフを預かってた恭弥、
書類を持ってた草壁さん、
ブーツの設計図を持ってたジャンニーニ、
木箱の鍵を持ってたベル、
セレネが入った匣を預かってたボス……
この中には、もう1つの匣を所持してる人はいないってこと。
その他にも、あたしが修業をしてるのを知ってるヴァリアーの人たちは多分持ってない。
持ってたら、教えてくれるハズだから。
ツナやその守護者はみんな入れ替わっちゃったから違う。
骸は……ううん、復讐者の牢獄に危険を冒してまで匣を預けようとは考えない。
アルコバレーノはみんな非73線のせいで弱ってたから、違うハズ。
とすると、ビア姉さんとかフゥ太君…?
ううん、もし持ってたらメローネ基地突入前に渡してくれるハズ。
『わかんないなぁ…』
ため息をつきながら、ドアを押し開けた。
「どーしたんですかー?檸檬さーん。」
『わぁっ!!?』
「ため息なんて、らしくないですねー。」
広間に入ろうとした瞬間、目の前に立っていたフランに驚く。
正確に言うと、フランにって言うより…フランがかぶってるカエルのかぶりものに。
「フラン、女のため息ってのは妖艶なものなのよ、ね?檸檬。」
『えっ?えーっと…』
「そうだ、妖艶だ。」
『あ、レヴィ。』
あたしの後から広間にやって来たレヴィが、ルッスーリアの意見に賛同する。
するとフランは無表情で毒を吐いた。
「変態雷オヤジは黙ってて下さいー。」
「なぬ!?」
ピクリと眉を動かすレヴィに、長椅子を独り占めしていたベルが追撃。
「“なぬ”じゃねーよ、タコ。」
「タコ!?フラン…ベル…貴様ら……」
「まーまー皆落ち着いてっ。ドアのトコに固まってないで、座って紅茶でも飲みましょ♪」
ルッスーリアが仲裁に入ってくれて、場は収まった。
椅子に座って頬杖をつくあたしに、ベルが改めて尋ねる。
「で、どーかしたのかよ檸檬。第八段階、そんなむずかった?」
『そーじゃないんだ、実際この子はすぐ開けられたし……』
「みっ!」
あたしの掌の上でキリッと立つセレネ。
ベルに頭を撫でられて、気持ち良さそうに目を閉じる。
「ししっ、超可愛いーじゃん、檸檬みてー♪」
『へ?』
「匣アニマルは飼い主に似るみたいですー、ベルセンパイのミンクも傲慢なところがそっくr…」
ドシュドシュドシュッ!!!
「殺されてーの?」
「冗談ですー、半分くらい。」
「半分本気じゃねーか!」
『べ、ベルってば!後輩いじめはダメだよっ。』
慌ててベルを止めるために、あたしは話した。
もう1つの匣を見つけないと、第九段階には進めないってこと。
けどその預かり主が、見当もつかないってこと。
「もう1つの匣かー…」
『やっぱり、日本にあるのかな……こっちにはほとんど手掛かりないし…』
「かも知れねーけど、檸檬が戻んなら俺も行きてーなー。ボス、許可してくんねーかなー。」
「無理よぉベルちゃん、だって私達にはまだ残党処理が嫌って程あるんだもの。」
「ま、それで鬱憤晴らし出来るならいーけどな、ししっ♪」
あたしも、日本に戻るのは嬉しいけど寂しい。
ヴァリアーのみんなと、今度はいつ会えるんだろうと思うと…。
「あのー檸檬さんって、お兄さんとかいるんですかー?」
『お兄さん?いないけど…どうして?』
「ふと気になりましてー。前に、お兄ちゃんがどうとか言ってたのを思い出したんでー。」
『“お兄ちゃん”…?』
何だろう……何か、それって大事なヒントのような気がする…。
あたしには妹しかいないけど……
もっと、別の………
---「兄貴が妹の心配するのは、いけねーことか?」
『………ディーノ……』
「ん?」
「跳ね馬がどうかしたの?」
この時代のあたしも、慕ってたんだ。
ディーノのことを、“お兄ちゃん”として。
『ディーノに、預けたんだ……』
「マジ?つーか跳ね馬って、」
「現在進行形で日本ですねー。」
何の根拠も無いけど、確信があった。
未来のあたしは、ヒントは同じ人に2つ以上預けていない。
ディーノだったら、まだ会ってないからヒントを持ってる可能性も高い…!
『あたしっ…ボスに申請してくる!!』
「檸檬っ、」
立ちあがって走りだそうとした瞬間ベルに呼び止められて、振り向く。
ベルはいつものように笑って、ひらひらっと手を振った。
「気ーつけてな。」
『……うんっ!いってきます!』
先に自室に戻って、ファイルとノートと匣を鞄に入れる。
ナイフは腰に6本と右足に3本装着し、ルッスーリアが“あたし用に”特注してくれたヴァリアーのコートを羽織った。
Fブーツを履き、雲系リングは首からさげる。
『よしっ。行くよ、セレネ!』
「みぃーっ!」
あたしは、ボスの部屋に向かった。
---
------
------------
初日はみんな不調だった。
獄寺君とお兄さんは、ランボの匣のせいでボロボロ。
今日は続行不可能な状態になってしまった。
俺も今はまだ、開けられない。
開けてしまえば前の繰り返しだってことは、明白だった。
山本はそんな俺達を羨む。
それもそうだ、ディーノさんに「待機」って言われちゃったんだし…。
そんな俺達のところに、今まで眠ってた他の問題が突然やって来たんだ。
「あの…お話があるんですが。」
廊下に屯ってた俺達に話しかけたのは、京子ちゃんと一緒にやってきたハル。
傍の壁にはビアンキが寄り掛かる。
「どーしたんだ?ハル。京子ちゃんも一緒に…」
「誤魔化しても仕方ないので、単刀直入に言います。ハル達にも、ミルフィオーレやビャクランやボックスのこと……今起きてることを詳しく教えて下さい!!」
場が、凍りついた。
本来その口から出るハズのない言葉が、ホイホイ出て来たんだから。
「ちょっ……な、ななな何言ってんの?み、ミルフィオーレ?ビャクラン?な、何だソレ?」
こんなバレバレな対応で、2人が引き下がるハズもなく。
「もう誤魔化されるのはたくさんです!!私達だけ知らない事情を隠してるのは分かってます!ハル達も一緒に生活している以上、真実を知る権利はあります!!」
「急に…どうして……?」
そこで、ハッと傍にいる人物に目が行く。
「…ビアンキ!!」
「私は何も話してないわよ、この子たちが自分の意志と力で突き止めたの。」
「ツナ君、」
困惑する俺に、今度は京子ちゃんが。
「私達も、一緒に戦いたいの!」
「京子…!!」
そんなことを言うなんて、お兄さんも驚いてるようだった。
その真剣さは、表情や声色から痛いほど分かった。
けど……危険な世界に2人を巻き込んじゃいけない。
俺達の戦いのことなんて、知らなくていい!!
「き、気持ちは嬉しいけど……本当にもうすぐなんだ!何もかも終わって元の世界に帰れるから……」
守るために、戦ってるんだ。
話して恐怖心を煽るようなこと、していいハズがないんだ。
「だから俺達を信じて、もう少し我慢してくれないかな。」
目を合わせられずに、何とか説得だけしようとする。
そんな俺に、2人の複雑な悲しげな表情が見えるハズもなく。
「……分かりました、では私達もそれなりの措置を取らせて頂きます。」
「へ?」
「ツナさん達が真実を話してくれるまで…」
バッと出されたのは、2人が作ったらしきプレートだった。
「ハル達は家事をしませんし、」
「共同生活をボイコットします!!」
プレートに書かれていたのは、
“情報の開示を”
“秘密反対!!”
…という文字。
「悪いわね、ツナ。私はこの子たちにつくわ。」
「……私も…ボス、ごめん。」
ビアンキだけじゃなくて、クロームも京子ちゃん達の側に立つ。
そして…クロームに抱えられたイーピンも。
「えっ……えーー!!?」
とんでもない展開に、俺は困惑のあまり叫んだ。
---
------
-------------
コンコン、
「…入れ。」
『失礼します。』
入室した檸檬の格好と荷物を見て、ザンザスは言った。
「…戻るのか。」
『うん……戻って、確かめないといけないから。』
「せわしねーな、おめーはいつも。」
『……うん、ごめんね…ボス。』
少し俯いてから、檸檬は笑顔を向ける。
『けどボスは、そんな忙しないあたしをボス補佐にしてくれてる……だから、ありがとう。』
「…行け、許可する。」
『3日間、お世話になりました!行ってきます!』
「死ぬなよ。」
『らじゃ!』
ビシッと敬礼した檸檬は、すぐに第六感を発動させて……
数秒後、ザンザスの部屋から姿を消した。
「宜しくお願いします!」
ディーノからの説明が終わったその瞬間、獄寺は眼鏡をかけて。
「芝生頭とアホ牛!!ノートと鉛筆を持って図書室に来い!!まずは理論を叩き込む!!」
「(獄寺君の理論指導来たー!!)」
「ありゃー大変そーだな。」
「だね…」
その光景に苦笑してから、ツナは山本に尋ねる。
「山本は修業どーするの?」
「まっ、良くわかんねーから修業が始まるまで自主練だな。」
一方ドアのそばにいたビアンキは、クロームに呼び掛ける。
「クローム来なさい、鍛えてあげるわ。」
「…はい。」
こうして全員がトレーニングルームを退室し、部屋は静寂に包まれた。
ボイコット
「……………行きましたね、」
「うん…」
バサッ、
「「ぷは~~~っ!」」
大きなバイクの後ろの壁に隠れていたのは、風呂敷を頭に巻いた京子とハル。
「バッチリ聞いちゃいましたね♪」
「ドキドキしたね!」
「いつまでも除け物にしようとしても、そうは行きませんよ!ツナさん達ばかり状況を分かってて、ハル達だけ良く分からないのに頑張るなんて出来ません!」
「でもボックスとかミルフィオーレって何だろう?ケーキのミルフィーユみたい…。ボンゴレはスパゲティの種類だし……」
「は、はひ~……多分この場合のボンゴレは、ツナさんのいるマフィアだと思いますけど……」
「まふぃあ?」
---
-------
------------
『名前は何にしよっか?』
「みっ?」
匣の中から出てきたヒナに、檸檬はふふっと笑いかける。
紫の炎と銀色の毛がそれぞれ淡く光って何だか神秘的な雰囲気を醸し出していた。
『……って、そんなこと考えてる場合じゃない!第八段階ってコレで終わり…?』
ノートの次のページをめくって、檸檬は首を傾げる。
そこには、“もう1つを受け取ってから第九段階へ”と書かれていたのだ。
『もう1つ…?未来のあたしは、匣を2つ使ってたってこと!?』
混乱する檸檬の肩に、雲ヒナがよじ登る。
それを撫でながら、檸檬は続きを読んだ。
“セレネの能力については、あたしからはヒントを出さない。自分で見つけ出してちょうだい”
『“セレネ”…?あっ、このヒナの名前!?』
「みっ!」
名前を呼ばれたのが嬉しかったのか、雲ヒナはピョンッと肩の上で跳ねる。
『(なーんだ、名前付いてたんだー…。)』
それにしても、“もう1つの匣”の預かり主の見当がつかない。
しかも、開匣さえ出来てしまえば第八段階は終わりらしい。
『うーん………部屋で考え込んでも仕方ないか!聞いてみようっ。』
「みぃー♪」
檸檬は雲ヒナ改めセレネを肩に乗せたまま、部屋を飛び出した。
---
------
------------
「始めるか…」
小さなトレーニングルームに移ったツナは、昨晩の怪物のことを思い出していた。
湧きおこる不安を拭い、リングに炎を灯す。
「いいか、今度暴れたら俺も全力で叩き潰すぞ!」
一瞬動きを止めた匣。
しかし…
ググンッと再びツナの手の中で震えだす。
「わっ、怒ってんのか!?」
凶暴化しているソレをどうすればいいのか、分からないままツナは青ざめた。
---
-------
一方、図書室。
「出でよ!漢我流ー!!」
晴のリングに炎を灯し、了平が通常の晴カンガルーを開匣した。
「あ…あいつを蹴ってみろ。」
「ぶっ!!」
了平が指を差した相手、獄寺を思い切り蹴飛ばす我流。
それを見た了平は誇らしげに我流と肩を組む。
「おおっ!開匣できた上に俺の言うことをきいた!!何と頼もしい奴だ!!次はボンゴレ匣を開匣だ!!」
「てんめー……説明中に誰が開匣しろっつった!しかも俺を実験台にしやがって!!」
当然キレる獄寺だったが、シュルーっと現れたリボーンは了平を褒める。
いきなり開匣できる“常時死ぬ気男”である了平はさすがだ、と。
それに獄寺と違い、匣アニマルが懐いているのも感心できる、と。
「ニャオオオ!!!」
「ギャッ!瓜っ!!さっきエサやっただろ!?」
瓜に顔面を引っ掻かれる獄寺を見て、ランボが楽しそうにそれに加わる。
「いいじょ!!もっとやれー!!獄寺死ねー!!」
「ギャッ!てめーが果てろ!!」
どさくさ紛れに自分を殴ったランボを殴り返す獄寺。
そこで了平が止める。
「チビに暴力はいかんぞ!!」
「るせっ!てめーら生徒失格だ!!」
「が…ま………うわあああ!!」
痛みに耐えきれず泣きだしたランボのリングから、大きな雷の炎が放出された。
「あのバガ!獄寺のバガ!!死ね!!」
「おっ…おい!ボンゴレ匣にリングの炎を……注入しやがった!!」
すると、炎の注入口周辺が光って……
ピシャァ…!
「う…牛だ!!」
「ボンゴレ匣、開匣第1号だな。」
雷属性の巨大な牛が現れ、ランボはその背に乗っていた。
それでもまだ、ランボは泣きやまずに怒りをぶつける。
「バカ者どもぉ!!みんな死んじゃえ!!」
「おっ、おい!!」
「まさか…突進してくるんじゃねーだろーな……」
地を蹴ろうとするその前足を見て、構える了平と獄寺。
だが次の瞬間、牛の姿は2人の視界から消え……
図書室に、雷の炎が迸った。
---
------
-------------
『あ、おかえり!レヴィ!』
「た、ただいま…」
ちょうど廊下で出会ったのは、何とか怪我を治して病院から帰って来たレヴィだった。
『もう大丈夫なの?』
「これしきの傷、何ともない。ところで檸檬、何かあったのか?廊下をうろついてたようだが…」
『あ、そうだった!』
檸檬はぽんっと手を叩き、思い出したように問いかける。
『あのね、この時代のあたしって、もう1つ匣兵器持ってなかった?』
「もう1つ?」
「みーっ!」
『あ、暴れないの!落ちちゃうでしょっ。』
肩の上で跳ねるセレネを掌に乗せる檸檬。
すると、それを見ながらレヴィがぼそりと言った。
「そう言えば気になっていたのだ。ボンゴレ本部が壊滅する前、檸檬はナイフ以外の武器を所持していなかった。」
『え…?』
「それで聞いてみれば…全て預けたと。」
『誰に預けたか言わなかった!?』
「あぁ、そこまでは……すまないな。」
『ううん、ありがとうレヴィ。他の人にも聞いてみる。』
とりあえず皆がいそうな広間に向かいながら考えた。
未来のあたしは、あくまで自分が後で取りに来るかのように言って預けてる。
ってことは、同じ人に違うものを預けてるってことはあり得ない。
つまり……
ナイフを預かってた恭弥、
書類を持ってた草壁さん、
ブーツの設計図を持ってたジャンニーニ、
木箱の鍵を持ってたベル、
セレネが入った匣を預かってたボス……
この中には、もう1つの匣を所持してる人はいないってこと。
その他にも、あたしが修業をしてるのを知ってるヴァリアーの人たちは多分持ってない。
持ってたら、教えてくれるハズだから。
ツナやその守護者はみんな入れ替わっちゃったから違う。
骸は……ううん、復讐者の牢獄に危険を冒してまで匣を預けようとは考えない。
アルコバレーノはみんな非73線のせいで弱ってたから、違うハズ。
とすると、ビア姉さんとかフゥ太君…?
ううん、もし持ってたらメローネ基地突入前に渡してくれるハズ。
『わかんないなぁ…』
ため息をつきながら、ドアを押し開けた。
「どーしたんですかー?檸檬さーん。」
『わぁっ!!?』
「ため息なんて、らしくないですねー。」
広間に入ろうとした瞬間、目の前に立っていたフランに驚く。
正確に言うと、フランにって言うより…フランがかぶってるカエルのかぶりものに。
「フラン、女のため息ってのは妖艶なものなのよ、ね?檸檬。」
『えっ?えーっと…』
「そうだ、妖艶だ。」
『あ、レヴィ。』
あたしの後から広間にやって来たレヴィが、ルッスーリアの意見に賛同する。
するとフランは無表情で毒を吐いた。
「変態雷オヤジは黙ってて下さいー。」
「なぬ!?」
ピクリと眉を動かすレヴィに、長椅子を独り占めしていたベルが追撃。
「“なぬ”じゃねーよ、タコ。」
「タコ!?フラン…ベル…貴様ら……」
「まーまー皆落ち着いてっ。ドアのトコに固まってないで、座って紅茶でも飲みましょ♪」
ルッスーリアが仲裁に入ってくれて、場は収まった。
椅子に座って頬杖をつくあたしに、ベルが改めて尋ねる。
「で、どーかしたのかよ檸檬。第八段階、そんなむずかった?」
『そーじゃないんだ、実際この子はすぐ開けられたし……』
「みっ!」
あたしの掌の上でキリッと立つセレネ。
ベルに頭を撫でられて、気持ち良さそうに目を閉じる。
「ししっ、超可愛いーじゃん、檸檬みてー♪」
『へ?』
「匣アニマルは飼い主に似るみたいですー、ベルセンパイのミンクも傲慢なところがそっくr…」
ドシュドシュドシュッ!!!
「殺されてーの?」
「冗談ですー、半分くらい。」
「半分本気じゃねーか!」
『べ、ベルってば!後輩いじめはダメだよっ。』
慌ててベルを止めるために、あたしは話した。
もう1つの匣を見つけないと、第九段階には進めないってこと。
けどその預かり主が、見当もつかないってこと。
「もう1つの匣かー…」
『やっぱり、日本にあるのかな……こっちにはほとんど手掛かりないし…』
「かも知れねーけど、檸檬が戻んなら俺も行きてーなー。ボス、許可してくんねーかなー。」
「無理よぉベルちゃん、だって私達にはまだ残党処理が嫌って程あるんだもの。」
「ま、それで鬱憤晴らし出来るならいーけどな、ししっ♪」
あたしも、日本に戻るのは嬉しいけど寂しい。
ヴァリアーのみんなと、今度はいつ会えるんだろうと思うと…。
「あのー檸檬さんって、お兄さんとかいるんですかー?」
『お兄さん?いないけど…どうして?』
「ふと気になりましてー。前に、お兄ちゃんがどうとか言ってたのを思い出したんでー。」
『“お兄ちゃん”…?』
何だろう……何か、それって大事なヒントのような気がする…。
あたしには妹しかいないけど……
もっと、別の………
---「兄貴が妹の心配するのは、いけねーことか?」
『………ディーノ……』
「ん?」
「跳ね馬がどうかしたの?」
この時代のあたしも、慕ってたんだ。
ディーノのことを、“お兄ちゃん”として。
『ディーノに、預けたんだ……』
「マジ?つーか跳ね馬って、」
「現在進行形で日本ですねー。」
何の根拠も無いけど、確信があった。
未来のあたしは、ヒントは同じ人に2つ以上預けていない。
ディーノだったら、まだ会ってないからヒントを持ってる可能性も高い…!
『あたしっ…ボスに申請してくる!!』
「檸檬っ、」
立ちあがって走りだそうとした瞬間ベルに呼び止められて、振り向く。
ベルはいつものように笑って、ひらひらっと手を振った。
「気ーつけてな。」
『……うんっ!いってきます!』
先に自室に戻って、ファイルとノートと匣を鞄に入れる。
ナイフは腰に6本と右足に3本装着し、ルッスーリアが“あたし用に”特注してくれたヴァリアーのコートを羽織った。
Fブーツを履き、雲系リングは首からさげる。
『よしっ。行くよ、セレネ!』
「みぃーっ!」
あたしは、ボスの部屋に向かった。
---
------
------------
初日はみんな不調だった。
獄寺君とお兄さんは、ランボの匣のせいでボロボロ。
今日は続行不可能な状態になってしまった。
俺も今はまだ、開けられない。
開けてしまえば前の繰り返しだってことは、明白だった。
山本はそんな俺達を羨む。
それもそうだ、ディーノさんに「待機」って言われちゃったんだし…。
そんな俺達のところに、今まで眠ってた他の問題が突然やって来たんだ。
「あの…お話があるんですが。」
廊下に屯ってた俺達に話しかけたのは、京子ちゃんと一緒にやってきたハル。
傍の壁にはビアンキが寄り掛かる。
「どーしたんだ?ハル。京子ちゃんも一緒に…」
「誤魔化しても仕方ないので、単刀直入に言います。ハル達にも、ミルフィオーレやビャクランやボックスのこと……今起きてることを詳しく教えて下さい!!」
場が、凍りついた。
本来その口から出るハズのない言葉が、ホイホイ出て来たんだから。
「ちょっ……な、ななな何言ってんの?み、ミルフィオーレ?ビャクラン?な、何だソレ?」
こんなバレバレな対応で、2人が引き下がるハズもなく。
「もう誤魔化されるのはたくさんです!!私達だけ知らない事情を隠してるのは分かってます!ハル達も一緒に生活している以上、真実を知る権利はあります!!」
「急に…どうして……?」
そこで、ハッと傍にいる人物に目が行く。
「…ビアンキ!!」
「私は何も話してないわよ、この子たちが自分の意志と力で突き止めたの。」
「ツナ君、」
困惑する俺に、今度は京子ちゃんが。
「私達も、一緒に戦いたいの!」
「京子…!!」
そんなことを言うなんて、お兄さんも驚いてるようだった。
その真剣さは、表情や声色から痛いほど分かった。
けど……危険な世界に2人を巻き込んじゃいけない。
俺達の戦いのことなんて、知らなくていい!!
「き、気持ちは嬉しいけど……本当にもうすぐなんだ!何もかも終わって元の世界に帰れるから……」
守るために、戦ってるんだ。
話して恐怖心を煽るようなこと、していいハズがないんだ。
「だから俺達を信じて、もう少し我慢してくれないかな。」
目を合わせられずに、何とか説得だけしようとする。
そんな俺に、2人の複雑な悲しげな表情が見えるハズもなく。
「……分かりました、では私達もそれなりの措置を取らせて頂きます。」
「へ?」
「ツナさん達が真実を話してくれるまで…」
バッと出されたのは、2人が作ったらしきプレートだった。
「ハル達は家事をしませんし、」
「共同生活をボイコットします!!」
プレートに書かれていたのは、
“情報の開示を”
“秘密反対!!”
…という文字。
「悪いわね、ツナ。私はこの子たちにつくわ。」
「……私も…ボス、ごめん。」
ビアンキだけじゃなくて、クロームも京子ちゃん達の側に立つ。
そして…クロームに抱えられたイーピンも。
「えっ……えーー!!?」
とんでもない展開に、俺は困惑のあまり叫んだ。
---
------
-------------
コンコン、
「…入れ。」
『失礼します。』
入室した檸檬の格好と荷物を見て、ザンザスは言った。
「…戻るのか。」
『うん……戻って、確かめないといけないから。』
「せわしねーな、おめーはいつも。」
『……うん、ごめんね…ボス。』
少し俯いてから、檸檬は笑顔を向ける。
『けどボスは、そんな忙しないあたしをボス補佐にしてくれてる……だから、ありがとう。』
「…行け、許可する。」
『3日間、お世話になりました!行ってきます!』
「死ぬなよ。」
『らじゃ!』
ビシッと敬礼した檸檬は、すぐに第六感を発動させて……
数秒後、ザンザスの部屋から姿を消した。