未来編②
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「何だ!あの炎の塊は!?」
「沢田殿の足元に!!」
バジルの言葉に反応した獄寺、山本、了平の目に留まったのは……
オレンジ色のボンゴレ匣。
「って事は、10代目の匣兵器!!」
「あれが匣兵器?」
「どう見ても怪物だぞ!!」
会話が聞こえたのか、ツナが視線を移す。
「危険だ!下がってろ!!」
怪物
怪物の動きをいなしながら、ツナはその顎に蹴りを入れる。
しかし……怪物が纏う大きな炎の一部がツナの後ろから両手両足を拘束した。
「(何てパワーだ…ほどけない!!)」
そのまま怪物の頭はツナの腹部に突っ込み……
「がっ!」
ツナは壁に叩きつけられた。
---
------
--------------
「失礼します!」
イタリア、ヴァリアー本部の広間。
夕食を終えた幹部がくつろいでいる所に、1人の平隊員がやって来て言った。
「諜報部からの連絡です。数キロ先に滞在中の敵の残党が、付近の街にて略奪を行っているとのことです!」
「んだとぉ!!?」
「ししっ……ま、普通そーなるよな。」
面倒くさそうに声を上げるスクアーロと、ナイフを壁の的に当てながら言うベル。
「被害は各街に広がっており、一般人の犠牲が多数出ているとのこと…」
「ボス、いかがしますか?」
隊員の報告を聞いたレヴィはザンザスに意見を求める。
と、その時。
『それ、何処で!?』
「あら檸檬、食器洗い終わったの?ありがとね♪」
『うん、今終わったの。で、何処の街!?あたし、その残党排除しに行く!』
夕飯の食器洗いを終えて戻って来た檸檬を見て、ザンザスは指示を出した。
「レヴィ、行け。」
「はっ、了解しました。」
『えっ?あ、あたしも一緒に行っちゃダメ?』
「まだ、不完全なんだろーが。」
ザンザスの言葉と眼力に押される檸檬。
確かに、まだ第七段階から先には手を付けていないし、その修業内容すらきちんと読んでいない。
『でも…』
「檸檬、代わりに私が行くわ。レヴィのサポートもちゃんとするから、心配しないでちょうだい。」
『ルッスーリア……』
それでも腑に落ちない表情の檸檬に、今度はスクアーロが言った。
「ったく、てめーはもっと自分のことを考えやがれぇ。今のお前が相手するべきなのは、あの厄介な妹だろーがぁ!!」
『アロちゃん……そう、だよね……分かった。』
「案ずるな、檸檬の代わりに俺が全部片付けるからな。」
『ありがとう、レヴィ。気をつけてね。』
そのまま玄関までレヴィとルッスーリアを見送った檸檬は、自室に戻ろうと足を進めた。
と、部屋の前の人影に気づく。
『あれっ?どうしたの、フラン…』
「檸檬さんは、若返っても檸檬さんだなーって思いましてー。」
『へ?』
「手。」
首を傾げた檸檬に、フランは一文字で返す。
しかしその単語を聞いた瞬間、檸檬はビクッと肩を動かした。
「我慢すると、拳になりますよね。」
『……フランに気づかれたってことは、みんな分かっちゃったみたいだね。』
「アホなカス鮫は除いてな。」
「あ。」
『ベル!』
同じく広間からやって来たベルが、檸檬とフランの間に入る。
「…ベルセンパイ邪魔ですー。」
「カエルのクセに、俺の姫に近寄んなっ。」
「ちぇー。」
「んで、今度はどんな修業?」
『え?あ、ちょっと待って!見てくる!』
部屋に入ってノートをめくる。
第七段階は、炎の純度を上げる修業だった。
『(ってことは、また炎を貰わなきゃいけないのかぁ…)』
「へぇー…第六感って純度も操れんの?」
『そうみたい。けど炎が…』
「俺、あげよーか?」
『ホント!?』
見上げると、ベルは「ししっ」と笑って頷いた。
「もっちろん♪檸檬にだったらいくらでも協力するぜ♪」
『ベル……ありがとうっ!』
思わずギュッと抱きつく。
ベルは優しく頭を撫でてくれた。
---
------
--------------
「のやろ!!」
怪物に攻撃されるツナを見て、獄寺は自分のリングに炎を灯す。
「待って下さい!!獄寺殿の嵐の匣兵器の特性は“分解”!!ヘタをすれば沢田殿の匣兵器を傷つける恐れがあります!!」
「だったらどーしろっつーんだ!!これ以上苦しむ10代目を見てらんねー!!」
苛立ち口調で返した獄寺に、バジルは冷静に言った。
「拙者が静めます。皆さんは下がっていて下さい。」
「おい!」
「バジル!!」
「行くぞアルフィン。開匣!!」
バジルの匣から出てきたのは………雨の炎を纏ったイルカだった。
その脳はバジルの脳と無言でコンタクトを取れるようになっており、バジルの作戦が雨イルカに伝わる。
「(アルフィン、あれでいこう。)」
「キュイッ!」
一声鳴いたアルフィンは、光らせた胸びれから複数の刃を放った。
「ドルフィンエッジ!!!」
「ギャアア!!!」
「怪物が苦しんでる……」
「ドルフィンエッジは体内を抉る雨の鎮静の炎の刃。謂わば対匣兵器用の麻酔弾です。」
“鎮静”の効力で怪物は動きを止める、ハズだった。
ツナを炎で拘束したまま、ギロッと後ろに視線をやった怪物は、ドルフィンエッジを跳ね返す。
そしてそれを放ったアルフィンに、四方八方から怪物の炎が襲いかかり……
「しまった!!(予想した力を遥かに上回っている!)」
すると、イルカの後ろから大きな波がやってきた。
「あれは……雨燕!!」
「お前だけが雨属性じゃないぜ。」
「山本殿!!」
雨燕が作った大波は、今度こそ怪物の動きを封じ鎮静させた。
ボンゴレ匣に戻っていったオレンジの炎の塊。
「助かりました!!」
「協力プレーだなっ!」
同時に、拘束されていたツナも解放されて落ちる。
「うう…」
「10代目ぇ!!」
「大丈夫か沢田!?」
「やはり今のは、沢田殿の匣兵器………」
「う、うん…普通に炎を注入したつもりだったんだけど……いきなりあんなのが飛び出してきて…」
「ですがおかしいです!匣は全て地球上の生物を模しているハズ!」
困惑気味のツナにバジルがそう答え、獄寺がハッとする。
「まさかっ、入江の奴が不良品を!!」
「そんなぁ!?」
「いいや、今のはツナが悪いぜ。」
ハッキリとそう言ったのは、ツナたち5人の声ではなかった。
もっと大人びた、しかし聞き覚えのある声。
「あれはお前の匣兵器、本来の姿じゃない。特に、大空の匣はデリケートなんだ。」
振り向いたツナたちの目には、オレンジの炎を纏ったアニマル匣と……
「こんな開匣を繰り返していたら、使い物にならなくなるぞ。」
ツナの兄弟子・跳ね馬ディーノが、その二つ名に相応しい大空属性の馬と共に現れた。
---
------
--------------
『……うっ…、』
「檸檬!?」
ナイフに赤い炎を灯したまま、突如膝をついた檸檬。
炎を提供していたベルがその背中を摩る。
「檸檬、無理すんなって。今日はもうやめた方がいんじゃね?」
『はぁっ……はぁっ……ううん、もう少し……』
「ぶっ倒れますよー、檸檬さん。」
コップ1杯の水を差しだしながら、フランが言った。
礼を言いながらそれを受け取るが、檸檬は首を横に振る。
『ダメなの…今日中に第七段階は終えないと……もう、あと8日しかない。』
「焦って失敗したら元も子もないですよー。」
「カエルはうぜーけど、一理あるぜ。檸檬、ちょっと休みなって。」
『………でも…』
コップを持つ指に力が入る。
その表情が前髪で隠れた、その時。
カタカタカタ…
『えっ?』
「今…」
「動いたのって、アレですかー?」
3人の視線を集めたのは、檸檬の机の上にあった黒い匣。
三日月の装飾がキラリと光る。
檸檬はグッと立ち上がり、それを手に取った。
『勝手に動くなんて、そんなこと…』
「あるワケねーよな、普通は。」
「ってことはー、その匣は普通じゃないとか…?」
「てか檸檬、それ開けてみた?」
『それが…まだなの。開匣は修業の第八段階だから、それまでお預け。』
「というよりそもそも、檸檬さん、リング使えないじゃないですかー。ココには雲属性の人いませんし、どうするんですー?」
『うん…』
フランの疑問は、実際檸檬も悩んでいるポイントだった。
ヴァリアーには雲属性の幹部がおらず、雲のヴァリアーリングも作られていない。
他の修業と違いこればっかりは、雲の炎がなければ進まない。
『ちょっと、ノート見てみる。』
第八段階のページを開いて、檸檬は驚いた。
“ファイルの最後のページに、雲系リングを入れておいたから使って”
『これって、雲系のリング…!』
「マジ!?」
「見た感じじゃ、ランクBってトコですかねー?」
『でも、どうして……あたし、リングつけたら…』
ノートの続きを読むと、以下のように書いてあった。
“第八段階 匣を開ける
・純度が高くなければ長時間保てない
・修業の時のみ、自分でリングから炎を出すこと
・第六、第七段階の終了が絶対条件”
『そっか……修業の時だけは、自分で炎を出さないといけないんだ…』
「だったら、今はやめといた方がいーぜ。檸檬、すんげー疲れてるし。」
「それと、凄く気になってたんですけどー、純度って変えられるんですかー?」
『あー…うん、一言で言うと、炎の中の歪んでる波長を正せば、純度は上がるの。』
「なるほどー。」
フランが納得したところで、檸檬は匣を机の上に戻す。
「俺らは見てもわかんねーけど、純度上げられた?」
『うん。最初に比べたらだいぶ出来てきた。ありがとね、ベル。フランも。』
「いーって。明日また付き合うから、今日はもう寝なよ。」
『そうだね…そうする。』
檸檬が見せた笑顔には、若干疲れがにじみ出ていた。
やはり、今日はかなりの体力・精神力を消耗したようだ。
「檸檬さん、もし良ければミーが添い寝しますけどー、」
「死にてーの?」
「そんなワケないじゃないですかー、ミーはただ檸檬さんが寂しくないようにと。」
「うるせっ!!」
ドシュドシュッ、
『ふ、2人とも!てゆーかベル!ナイフ投げるのダメーっ!!』
フランとベルを仲裁しながら、檸檬は思った。
もしかしてあの匣は、早く開けて欲しいと思ってるのかも知れない……と。
「沢田殿の足元に!!」
バジルの言葉に反応した獄寺、山本、了平の目に留まったのは……
オレンジ色のボンゴレ匣。
「って事は、10代目の匣兵器!!」
「あれが匣兵器?」
「どう見ても怪物だぞ!!」
会話が聞こえたのか、ツナが視線を移す。
「危険だ!下がってろ!!」
怪物
怪物の動きをいなしながら、ツナはその顎に蹴りを入れる。
しかし……怪物が纏う大きな炎の一部がツナの後ろから両手両足を拘束した。
「(何てパワーだ…ほどけない!!)」
そのまま怪物の頭はツナの腹部に突っ込み……
「がっ!」
ツナは壁に叩きつけられた。
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--------------
「失礼します!」
イタリア、ヴァリアー本部の広間。
夕食を終えた幹部がくつろいでいる所に、1人の平隊員がやって来て言った。
「諜報部からの連絡です。数キロ先に滞在中の敵の残党が、付近の街にて略奪を行っているとのことです!」
「んだとぉ!!?」
「ししっ……ま、普通そーなるよな。」
面倒くさそうに声を上げるスクアーロと、ナイフを壁の的に当てながら言うベル。
「被害は各街に広がっており、一般人の犠牲が多数出ているとのこと…」
「ボス、いかがしますか?」
隊員の報告を聞いたレヴィはザンザスに意見を求める。
と、その時。
『それ、何処で!?』
「あら檸檬、食器洗い終わったの?ありがとね♪」
『うん、今終わったの。で、何処の街!?あたし、その残党排除しに行く!』
夕飯の食器洗いを終えて戻って来た檸檬を見て、ザンザスは指示を出した。
「レヴィ、行け。」
「はっ、了解しました。」
『えっ?あ、あたしも一緒に行っちゃダメ?』
「まだ、不完全なんだろーが。」
ザンザスの言葉と眼力に押される檸檬。
確かに、まだ第七段階から先には手を付けていないし、その修業内容すらきちんと読んでいない。
『でも…』
「檸檬、代わりに私が行くわ。レヴィのサポートもちゃんとするから、心配しないでちょうだい。」
『ルッスーリア……』
それでも腑に落ちない表情の檸檬に、今度はスクアーロが言った。
「ったく、てめーはもっと自分のことを考えやがれぇ。今のお前が相手するべきなのは、あの厄介な妹だろーがぁ!!」
『アロちゃん……そう、だよね……分かった。』
「案ずるな、檸檬の代わりに俺が全部片付けるからな。」
『ありがとう、レヴィ。気をつけてね。』
そのまま玄関までレヴィとルッスーリアを見送った檸檬は、自室に戻ろうと足を進めた。
と、部屋の前の人影に気づく。
『あれっ?どうしたの、フラン…』
「檸檬さんは、若返っても檸檬さんだなーって思いましてー。」
『へ?』
「手。」
首を傾げた檸檬に、フランは一文字で返す。
しかしその単語を聞いた瞬間、檸檬はビクッと肩を動かした。
「我慢すると、拳になりますよね。」
『……フランに気づかれたってことは、みんな分かっちゃったみたいだね。』
「アホなカス鮫は除いてな。」
「あ。」
『ベル!』
同じく広間からやって来たベルが、檸檬とフランの間に入る。
「…ベルセンパイ邪魔ですー。」
「カエルのクセに、俺の姫に近寄んなっ。」
「ちぇー。」
「んで、今度はどんな修業?」
『え?あ、ちょっと待って!見てくる!』
部屋に入ってノートをめくる。
第七段階は、炎の純度を上げる修業だった。
『(ってことは、また炎を貰わなきゃいけないのかぁ…)』
「へぇー…第六感って純度も操れんの?」
『そうみたい。けど炎が…』
「俺、あげよーか?」
『ホント!?』
見上げると、ベルは「ししっ」と笑って頷いた。
「もっちろん♪檸檬にだったらいくらでも協力するぜ♪」
『ベル……ありがとうっ!』
思わずギュッと抱きつく。
ベルは優しく頭を撫でてくれた。
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「のやろ!!」
怪物に攻撃されるツナを見て、獄寺は自分のリングに炎を灯す。
「待って下さい!!獄寺殿の嵐の匣兵器の特性は“分解”!!ヘタをすれば沢田殿の匣兵器を傷つける恐れがあります!!」
「だったらどーしろっつーんだ!!これ以上苦しむ10代目を見てらんねー!!」
苛立ち口調で返した獄寺に、バジルは冷静に言った。
「拙者が静めます。皆さんは下がっていて下さい。」
「おい!」
「バジル!!」
「行くぞアルフィン。開匣!!」
バジルの匣から出てきたのは………雨の炎を纏ったイルカだった。
その脳はバジルの脳と無言でコンタクトを取れるようになっており、バジルの作戦が雨イルカに伝わる。
「(アルフィン、あれでいこう。)」
「キュイッ!」
一声鳴いたアルフィンは、光らせた胸びれから複数の刃を放った。
「ドルフィンエッジ!!!」
「ギャアア!!!」
「怪物が苦しんでる……」
「ドルフィンエッジは体内を抉る雨の鎮静の炎の刃。謂わば対匣兵器用の麻酔弾です。」
“鎮静”の効力で怪物は動きを止める、ハズだった。
ツナを炎で拘束したまま、ギロッと後ろに視線をやった怪物は、ドルフィンエッジを跳ね返す。
そしてそれを放ったアルフィンに、四方八方から怪物の炎が襲いかかり……
「しまった!!(予想した力を遥かに上回っている!)」
すると、イルカの後ろから大きな波がやってきた。
「あれは……雨燕!!」
「お前だけが雨属性じゃないぜ。」
「山本殿!!」
雨燕が作った大波は、今度こそ怪物の動きを封じ鎮静させた。
ボンゴレ匣に戻っていったオレンジの炎の塊。
「助かりました!!」
「協力プレーだなっ!」
同時に、拘束されていたツナも解放されて落ちる。
「うう…」
「10代目ぇ!!」
「大丈夫か沢田!?」
「やはり今のは、沢田殿の匣兵器………」
「う、うん…普通に炎を注入したつもりだったんだけど……いきなりあんなのが飛び出してきて…」
「ですがおかしいです!匣は全て地球上の生物を模しているハズ!」
困惑気味のツナにバジルがそう答え、獄寺がハッとする。
「まさかっ、入江の奴が不良品を!!」
「そんなぁ!?」
「いいや、今のはツナが悪いぜ。」
ハッキリとそう言ったのは、ツナたち5人の声ではなかった。
もっと大人びた、しかし聞き覚えのある声。
「あれはお前の匣兵器、本来の姿じゃない。特に、大空の匣はデリケートなんだ。」
振り向いたツナたちの目には、オレンジの炎を纏ったアニマル匣と……
「こんな開匣を繰り返していたら、使い物にならなくなるぞ。」
ツナの兄弟子・跳ね馬ディーノが、その二つ名に相応しい大空属性の馬と共に現れた。
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『……うっ…、』
「檸檬!?」
ナイフに赤い炎を灯したまま、突如膝をついた檸檬。
炎を提供していたベルがその背中を摩る。
「檸檬、無理すんなって。今日はもうやめた方がいんじゃね?」
『はぁっ……はぁっ……ううん、もう少し……』
「ぶっ倒れますよー、檸檬さん。」
コップ1杯の水を差しだしながら、フランが言った。
礼を言いながらそれを受け取るが、檸檬は首を横に振る。
『ダメなの…今日中に第七段階は終えないと……もう、あと8日しかない。』
「焦って失敗したら元も子もないですよー。」
「カエルはうぜーけど、一理あるぜ。檸檬、ちょっと休みなって。」
『………でも…』
コップを持つ指に力が入る。
その表情が前髪で隠れた、その時。
カタカタカタ…
『えっ?』
「今…」
「動いたのって、アレですかー?」
3人の視線を集めたのは、檸檬の机の上にあった黒い匣。
三日月の装飾がキラリと光る。
檸檬はグッと立ち上がり、それを手に取った。
『勝手に動くなんて、そんなこと…』
「あるワケねーよな、普通は。」
「ってことはー、その匣は普通じゃないとか…?」
「てか檸檬、それ開けてみた?」
『それが…まだなの。開匣は修業の第八段階だから、それまでお預け。』
「というよりそもそも、檸檬さん、リング使えないじゃないですかー。ココには雲属性の人いませんし、どうするんですー?」
『うん…』
フランの疑問は、実際檸檬も悩んでいるポイントだった。
ヴァリアーには雲属性の幹部がおらず、雲のヴァリアーリングも作られていない。
他の修業と違いこればっかりは、雲の炎がなければ進まない。
『ちょっと、ノート見てみる。』
第八段階のページを開いて、檸檬は驚いた。
“ファイルの最後のページに、雲系リングを入れておいたから使って”
『これって、雲系のリング…!』
「マジ!?」
「見た感じじゃ、ランクBってトコですかねー?」
『でも、どうして……あたし、リングつけたら…』
ノートの続きを読むと、以下のように書いてあった。
“第八段階 匣を開ける
・純度が高くなければ長時間保てない
・修業の時のみ、自分でリングから炎を出すこと
・第六、第七段階の終了が絶対条件”
『そっか……修業の時だけは、自分で炎を出さないといけないんだ…』
「だったら、今はやめといた方がいーぜ。檸檬、すんげー疲れてるし。」
「それと、凄く気になってたんですけどー、純度って変えられるんですかー?」
『あー…うん、一言で言うと、炎の中の歪んでる波長を正せば、純度は上がるの。』
「なるほどー。」
フランが納得したところで、檸檬は匣を机の上に戻す。
「俺らは見てもわかんねーけど、純度上げられた?」
『うん。最初に比べたらだいぶ出来てきた。ありがとね、ベル。フランも。』
「いーって。明日また付き合うから、今日はもう寝なよ。」
『そうだね…そうする。』
檸檬が見せた笑顔には、若干疲れがにじみ出ていた。
やはり、今日はかなりの体力・精神力を消耗したようだ。
「檸檬さん、もし良ければミーが添い寝しますけどー、」
「死にてーの?」
「そんなワケないじゃないですかー、ミーはただ檸檬さんが寂しくないようにと。」
「うるせっ!!」
ドシュドシュッ、
『ふ、2人とも!てゆーかベル!ナイフ投げるのダメーっ!!』
フランとベルを仲裁しながら、檸檬は思った。
もしかしてあの匣は、早く開けて欲しいと思ってるのかも知れない……と。