未来編①
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アロちゃんの言葉を思い出す。
---「いいかぁ、ベルと一緒に霧の幹部・フランってヤツもいるハズだぁ。そいつも引っ張って来い。」
---『えっ、でもあたし、その人の顔とか知らな…』
---「すぐ分かる、でっけぇカエルかぶってっからなぁ!」
---『でっかいカエル…?』
フランって人、どんな人なんだろう…。
未来のあたしは、どんな風に接してたのかな…?
『ベルーっ!フランさーんっ!』
降り立った地点には、未だに嵐の波長が散漫していた。
広範囲にわたって嵐の炎が撒かれたみたい。
でも、それだけで人間の波動が隠れるワケない。
考えられるとすれば……
『霧の幻術で、人間の波動までも隠されてる…?』
あたしはひたすらベルとフランさんを呼びながら、辺りを走った。
XANXUSvs.Rasiel
同じく南地点にて、嵐コウモリの攻撃にやられ倒れていたベルとフランの姿が、サラサラと溶けだした。
そして……
「げほっ、」
「ふー。」
その数メートル後ろの地面から、本物の2人が姿を現した。
「霧の幻覚か?」
「当たりでーす。ミー達目ん玉ボンッ、とか飛び出して、相当スプラッタな死に様だったと思いますよ。」
「てんめー………戦えよっ!!」
「ゲロッ、」
自分を蹴り飛ばしたベルに、フランは反論する。
ベルがコウモリの炎を喰らっていたから仕方なく回避を優先させた、と。
しかし、理由はそれだけではなかった。
「正直、見てみたいと思ったのは確かですしー……」
「あ?」
「怒りんぼのうちのボスですよ。ヴァリアー内暴力凄まじいし、いつも威張ってるけど、本当に強いのかなーって思うんですー。」
「弱かったら俺がとっくに寝首欠いてるっての。」
「でも、先輩のアホ兄貴とどっちが強いか見てみたいじゃないですかー。」
立ち上がり土を払っていたベルは、フランに問われ顎に手を当て………
「う~~ん…………ししっ、同感♪」
と、その時。
『あっ…!』
「あ。」
「え、」
フランが幻術を解いたことで波動を辿って来た檸檬が、目を丸くして立っていた。
---
------
--------------
東地点では、檸檬を送り出したスクアーロが大勢の敵相手に剣をふるっていた。
彼が気にかけていることは1つ。
「ルッスーリア生きてんのかぁ!?城はどーなったぁ!!?」
叫んでから無線に耳を傾けるものの、聞こえてくるのは砂嵐のみ。
それはすなわち、今のルッスーリアが応答不可な状況下にいるということを示していて。
「……ちっ、カスが…」
舌打ちを1つした後、憂さ晴らしをするように湧き出て来る敵を斬っていった。
---
------
北地点一帯は、緑色の光に包まれていた。
その中心に立つは、両手を広げるレヴィ。
「ゼェ…ハァ……SUPER・LEVI・VOLTA!!」
雷エイの力も合わさって10年前よりも更に強力になったその技。
しかし、それでも1撃では全ての敵を仕留められない。
「ハァ……次々とウジ虫のようにわきおって…」
敵の下っ端は数え切れないほど多いのだ。
ボスの安否を気にかけるレヴィは無線に向かって叫ぶ。
「XANXUS様!!応答してくれ!!」
と、その時。
背後に回り込んだ敵がレヴィの腹部に槍を刺す。
夥しい出血と喀血の後、レヴィは敵の頭を掴み……
「ぬおぉお!!」
自らの身体共々、雷の炎で焼いた。
敵は倒したものの、自身も相当なダメージを受けたレヴィはその場に倒れ込み、無線に手を当てる。
「……ボス…応答をおぉ!!!」
---
------
-「をおぉ!!!」
「るせぇっ…」
レヴィの叫びを耳障りに感じ無線を潰す人物。
ジルとオルゲルトは彼を見下ろしていた。
「あれって…」
「間違いありません。ヴァリアーのボスにして、かつてボンゴレの10代目に最も近いと言われた男………XANXUS!!!」
「とてつもなく目つき悪ぃー。まさに不良軍団の大将だな。だけど実力は大したことねーんだってな。中学生に負けたんだろ?」
ジルの罵声に、ボスは何も返さずただ目を閉じる。
「しーしっし!!14歳の沢田綱吉に凍らされたんだぜ!激弱ってことじゃん!!」
数々の挑発にも黙りとおしたボスは、目を閉じたまま、指だけで挑発し返した。
「カッチーン。」
「ジル様、貴方の手を汚すまでもありません。ここは私にお任せを。巨雨象!!」
オルゲルトのリングが光り、呼応するように象が1頭、瓦礫の中からオルゲルトの元に戻る。
「喰らうが良い……大地の鉄槌!!」
次の瞬間、巨大な象は真っ直ぐボスへと突っ込んだ。
---
-----
------------
まるで、時間が止まったように、3人がそれぞれ動きを止める。
そんな中、徐々に瞳を潤ませる檸檬がベルに駆け寄った。
『ベルっ…!!』
「檸檬……何でココに…」
『怪我してない!?何処も痛くない!?匣とか取られてない!?』
上から下、右から左と確認する檸檬を、ベルはぐいっと抱き寄せる。
『ふわっ…!』
「俺は大丈夫だから……つーか檸檬こそ、日本にいんじゃなかったっけ?」
『あ、あのね!空間移動で……』
「センパーイ、いきなり見せつけんのやめてくれますー?てゆーか檸檬さん彼氏持ちでしょ?」
「うるせっ、黙ってろ!!」
ドシュドシュドシュッ!
『えっ…えぇっ!!?』
「檸檬、マジで縮んでるし♪超可愛いーっ!」
『ちょ、ちょっとベルっ…///』
ぎゅうっと強まるベルの腕に、思わず赤面する檸檬。
その横では、カエルのかぶり物に刺さったナイフを抜くフラン。
「ホントだ、ミーと背丈変わりませんねー。」
『あ、あの…もしかしてあなたが……』
「こんなの放っといていーからいーから。」
「……堕王子のクセに。」
「るっせ!!」
ドシュドシュッ!
『ベルっ…!』
左腕であたしを抱き寄せたまま、ベルは右手でまたナイフを投げる。
それは全部カエルのかぶり物に刺さってしまうけど、どうやらそれは日常茶飯事のようで刺された方は驚きもしない。
『あの、あなたがフランさん…?』
「そーですー。あ、もしかしてミーを探しに来てくれたんですかー?檸檬さん。」
『うんっ!ベルとフランさんの安否をって、アロちゃんが。』
「何か…檸檬さんに“さん”付けされて呼ばれるの、新鮮でゾワッとしますー。」
『え…?』
カエルちゃんに刺さったナイフを抜きながら、フランさんはあたしに言った。
「呼び捨てしちゃって下さい、その方が落ち着きますから。」
『あ、うん…分かった……じゃあフランも…!』
「ダーメ、この時代じゃカエルより檸檬のが年上なんだし。」
檸檬でいいよ、って言おうとしたら、ベルが却下した。
あたしは2歳年上のベルを呼び捨てしてるのに……変なの。
ベルの腕から解放されて、色々事情を説明した。
あたしがイタリアに来た理由も、分かる限りの状況も。
『とりあえず、2人が無事で良かったぁ…』
「ししっ、大丈夫に決まってんじゃん。だって俺、王子だもん♪」
『あ!ソレ久々に聞いたっ!』
「へぇー、ベルセンパイの意味分からない自己主張に驚く人、初めて見ましたー。」
『………フランって、いつもそうなの?』
「何がですか?」
首を傾げるフランをジーッと見る。
「……檸檬さん、ミーに見惚れましたー?それはそれで全然構いませんけど…」
「バーカ、んなワケねーだろっ。どしたんだよ檸檬。」
『んーん、何だか……ちょっと似た波動を視たことあるかなって。気のせいだと思う。』
自分でも良く分かんなかったから、笑って誤魔化した。
「にしても檸檬さん、いーんですか?」
『えっ?何が?』
「彼氏ほったらかしで来たんですよね、イタリア。」
『かっ…彼氏とかっ…!///』
スラッと出て来た単語に、一気に顔の熱が上がる。
この時代のあたしは……もしかして…
『えと、あのっ……何てゆーか…とりあえず大丈夫!うん、大丈夫。』
「ならいーんですけどー。………ベルセンパイ?」
「…あ?こっち見んなバカガエル。」
あたしの横に立っていたベルは、フランに悪態をついてから、ふいっとそっぽを向いた。
『ベル…?』
「何でもねーから、ヘーキ♪」
ポンッと頭に手を乗せられて撫でられたけど、
その手の感触すら何だか寂しかった。
---「だって俺、諦めないもん♪」
10年前の世界で、あたしが最後にベルに会った日、そう言われた。
あれからあたしは、どんな未来を歩んで、どんな風にベルと接して、どんな距離を保ってたんだろう。
分からない。
分からないから……苦しい。
過去から来た無知なあたしは、何気ない言動でベルを傷付けちゃうかも知れない。
あたしは…恭弥が好き。
世界で一番の存在を、自己中に選んだ。
あたしがその選択をした瞬間、ベルを傷つけちゃったのかな?
ベルがもう、あたしを愛してなければいいのに。
10年で、何があった?
何が変わった?
あたしとベルの間に、事件はあったの?
聞きたい事はたくさんあるけど、
どれも口に出来ない。
泣きそうだった。
「檸檬さーん?」
『あっ、な、何でもない!そーだ、城に向かった敵ってどんな感じだった!?ベルとフラン、遭遇したんだよね?』
「それがですねー、ベルセンパイのアホ兄貴だったんですよー。」
『………へ?』
フランの言ってることが理解できなかった。
だって、ベルは祖国を抜け出す為に他の人を皆殺して……
双子のお兄さんの存在は知ってるけど、もうこの世の人じゃないハズじゃ…
「良くわかんねーけど、アレはぜってージルだった。」
「ゴツい執事もいたんですよー、ミーは完全に兄弟喧嘩に巻き添え食らった感じでしたー。」
『そうなんだ…』
ちょっと腑に落ちないけど、2人が嘘を言うワケない。
まして、ベルが相手を見間違うとかもっとあり得ない。
『じゃあ、行かなくちゃ!』
「檸檬?」
「どこへです?」
『ボスのトコ!アロちゃんから聞いたんだもん、あたし、ボス補佐らしいから……援護しないと!』
1人で納得した檸檬の後ろで、フランとベルはヒソヒソ話す。
「ミー達がわざと通した、なんて…言えませんねー…」
「…だな。つか、おめーのせいだろ。」
「センパイがグロッキーだったから…」
「うるせっ!」
『どしたの?』
ふっと振り向いた檸檬に、ベルは軽く首を横に振る。
「何でもねーよ、行こーぜ。」
『うんっ。』
「あー、ベルセンパイずるいですよ。ミーも檸檬さんの手、握りたいですー。」
『え?』
「うるせーカエル、ふざけんな。」
檸檬の手を引いて歩き出したベルに、フランは少し小走りになった。
---
-------
--------------
「あ"っはぁ"~ぶっつぶれー!!」
「(ぬ…?何か妙だ……)」
興奮するジルに対し、オルゲルトは違和感を覚え横から確認した。
すると、象はザンザスに触れておらず、止められていた。
しかも……
ピキピキ…
「(石化…!?いや、これは…!!)」
焦るオルゲルトの視界に、一瞬だけ映った黒い影。
しかしそれは瓦礫に身を隠してしまい、何であるのかは理解できなかった。
「まぁゆっくりしてけや。」
完全に動きを止めた象の目の前で、ザンザスは右手を光らせる。
「沢田綱吉の名をほざいた以上、てめーらはここで……かっ消す!!!」
右手に宿った憤怒の炎が、石化した象にぶつけられ、粉々にした。
---「いいかぁ、ベルと一緒に霧の幹部・フランってヤツもいるハズだぁ。そいつも引っ張って来い。」
---『えっ、でもあたし、その人の顔とか知らな…』
---「すぐ分かる、でっけぇカエルかぶってっからなぁ!」
---『でっかいカエル…?』
フランって人、どんな人なんだろう…。
未来のあたしは、どんな風に接してたのかな…?
『ベルーっ!フランさーんっ!』
降り立った地点には、未だに嵐の波長が散漫していた。
広範囲にわたって嵐の炎が撒かれたみたい。
でも、それだけで人間の波動が隠れるワケない。
考えられるとすれば……
『霧の幻術で、人間の波動までも隠されてる…?』
あたしはひたすらベルとフランさんを呼びながら、辺りを走った。
XANXUSvs.Rasiel
同じく南地点にて、嵐コウモリの攻撃にやられ倒れていたベルとフランの姿が、サラサラと溶けだした。
そして……
「げほっ、」
「ふー。」
その数メートル後ろの地面から、本物の2人が姿を現した。
「霧の幻覚か?」
「当たりでーす。ミー達目ん玉ボンッ、とか飛び出して、相当スプラッタな死に様だったと思いますよ。」
「てんめー………戦えよっ!!」
「ゲロッ、」
自分を蹴り飛ばしたベルに、フランは反論する。
ベルがコウモリの炎を喰らっていたから仕方なく回避を優先させた、と。
しかし、理由はそれだけではなかった。
「正直、見てみたいと思ったのは確かですしー……」
「あ?」
「怒りんぼのうちのボスですよ。ヴァリアー内暴力凄まじいし、いつも威張ってるけど、本当に強いのかなーって思うんですー。」
「弱かったら俺がとっくに寝首欠いてるっての。」
「でも、先輩のアホ兄貴とどっちが強いか見てみたいじゃないですかー。」
立ち上がり土を払っていたベルは、フランに問われ顎に手を当て………
「う~~ん…………ししっ、同感♪」
と、その時。
『あっ…!』
「あ。」
「え、」
フランが幻術を解いたことで波動を辿って来た檸檬が、目を丸くして立っていた。
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東地点では、檸檬を送り出したスクアーロが大勢の敵相手に剣をふるっていた。
彼が気にかけていることは1つ。
「ルッスーリア生きてんのかぁ!?城はどーなったぁ!!?」
叫んでから無線に耳を傾けるものの、聞こえてくるのは砂嵐のみ。
それはすなわち、今のルッスーリアが応答不可な状況下にいるということを示していて。
「……ちっ、カスが…」
舌打ちを1つした後、憂さ晴らしをするように湧き出て来る敵を斬っていった。
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北地点一帯は、緑色の光に包まれていた。
その中心に立つは、両手を広げるレヴィ。
「ゼェ…ハァ……SUPER・LEVI・VOLTA!!」
雷エイの力も合わさって10年前よりも更に強力になったその技。
しかし、それでも1撃では全ての敵を仕留められない。
「ハァ……次々とウジ虫のようにわきおって…」
敵の下っ端は数え切れないほど多いのだ。
ボスの安否を気にかけるレヴィは無線に向かって叫ぶ。
「XANXUS様!!応答してくれ!!」
と、その時。
背後に回り込んだ敵がレヴィの腹部に槍を刺す。
夥しい出血と喀血の後、レヴィは敵の頭を掴み……
「ぬおぉお!!」
自らの身体共々、雷の炎で焼いた。
敵は倒したものの、自身も相当なダメージを受けたレヴィはその場に倒れ込み、無線に手を当てる。
「……ボス…応答をおぉ!!!」
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-「をおぉ!!!」
「るせぇっ…」
レヴィの叫びを耳障りに感じ無線を潰す人物。
ジルとオルゲルトは彼を見下ろしていた。
「あれって…」
「間違いありません。ヴァリアーのボスにして、かつてボンゴレの10代目に最も近いと言われた男………XANXUS!!!」
「とてつもなく目つき悪ぃー。まさに不良軍団の大将だな。だけど実力は大したことねーんだってな。中学生に負けたんだろ?」
ジルの罵声に、ボスは何も返さずただ目を閉じる。
「しーしっし!!14歳の沢田綱吉に凍らされたんだぜ!激弱ってことじゃん!!」
数々の挑発にも黙りとおしたボスは、目を閉じたまま、指だけで挑発し返した。
「カッチーン。」
「ジル様、貴方の手を汚すまでもありません。ここは私にお任せを。巨雨象!!」
オルゲルトのリングが光り、呼応するように象が1頭、瓦礫の中からオルゲルトの元に戻る。
「喰らうが良い……大地の鉄槌!!」
次の瞬間、巨大な象は真っ直ぐボスへと突っ込んだ。
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まるで、時間が止まったように、3人がそれぞれ動きを止める。
そんな中、徐々に瞳を潤ませる檸檬がベルに駆け寄った。
『ベルっ…!!』
「檸檬……何でココに…」
『怪我してない!?何処も痛くない!?匣とか取られてない!?』
上から下、右から左と確認する檸檬を、ベルはぐいっと抱き寄せる。
『ふわっ…!』
「俺は大丈夫だから……つーか檸檬こそ、日本にいんじゃなかったっけ?」
『あ、あのね!空間移動で……』
「センパーイ、いきなり見せつけんのやめてくれますー?てゆーか檸檬さん彼氏持ちでしょ?」
「うるせっ、黙ってろ!!」
ドシュドシュドシュッ!
『えっ…えぇっ!!?』
「檸檬、マジで縮んでるし♪超可愛いーっ!」
『ちょ、ちょっとベルっ…///』
ぎゅうっと強まるベルの腕に、思わず赤面する檸檬。
その横では、カエルのかぶり物に刺さったナイフを抜くフラン。
「ホントだ、ミーと背丈変わりませんねー。」
『あ、あの…もしかしてあなたが……』
「こんなの放っといていーからいーから。」
「……堕王子のクセに。」
「るっせ!!」
ドシュドシュッ!
『ベルっ…!』
左腕であたしを抱き寄せたまま、ベルは右手でまたナイフを投げる。
それは全部カエルのかぶり物に刺さってしまうけど、どうやらそれは日常茶飯事のようで刺された方は驚きもしない。
『あの、あなたがフランさん…?』
「そーですー。あ、もしかしてミーを探しに来てくれたんですかー?檸檬さん。」
『うんっ!ベルとフランさんの安否をって、アロちゃんが。』
「何か…檸檬さんに“さん”付けされて呼ばれるの、新鮮でゾワッとしますー。」
『え…?』
カエルちゃんに刺さったナイフを抜きながら、フランさんはあたしに言った。
「呼び捨てしちゃって下さい、その方が落ち着きますから。」
『あ、うん…分かった……じゃあフランも…!』
「ダーメ、この時代じゃカエルより檸檬のが年上なんだし。」
檸檬でいいよ、って言おうとしたら、ベルが却下した。
あたしは2歳年上のベルを呼び捨てしてるのに……変なの。
ベルの腕から解放されて、色々事情を説明した。
あたしがイタリアに来た理由も、分かる限りの状況も。
『とりあえず、2人が無事で良かったぁ…』
「ししっ、大丈夫に決まってんじゃん。だって俺、王子だもん♪」
『あ!ソレ久々に聞いたっ!』
「へぇー、ベルセンパイの意味分からない自己主張に驚く人、初めて見ましたー。」
『………フランって、いつもそうなの?』
「何がですか?」
首を傾げるフランをジーッと見る。
「……檸檬さん、ミーに見惚れましたー?それはそれで全然構いませんけど…」
「バーカ、んなワケねーだろっ。どしたんだよ檸檬。」
『んーん、何だか……ちょっと似た波動を視たことあるかなって。気のせいだと思う。』
自分でも良く分かんなかったから、笑って誤魔化した。
「にしても檸檬さん、いーんですか?」
『えっ?何が?』
「彼氏ほったらかしで来たんですよね、イタリア。」
『かっ…彼氏とかっ…!///』
スラッと出て来た単語に、一気に顔の熱が上がる。
この時代のあたしは……もしかして…
『えと、あのっ……何てゆーか…とりあえず大丈夫!うん、大丈夫。』
「ならいーんですけどー。………ベルセンパイ?」
「…あ?こっち見んなバカガエル。」
あたしの横に立っていたベルは、フランに悪態をついてから、ふいっとそっぽを向いた。
『ベル…?』
「何でもねーから、ヘーキ♪」
ポンッと頭に手を乗せられて撫でられたけど、
その手の感触すら何だか寂しかった。
---「だって俺、諦めないもん♪」
10年前の世界で、あたしが最後にベルに会った日、そう言われた。
あれからあたしは、どんな未来を歩んで、どんな風にベルと接して、どんな距離を保ってたんだろう。
分からない。
分からないから……苦しい。
過去から来た無知なあたしは、何気ない言動でベルを傷付けちゃうかも知れない。
あたしは…恭弥が好き。
世界で一番の存在を、自己中に選んだ。
あたしがその選択をした瞬間、ベルを傷つけちゃったのかな?
ベルがもう、あたしを愛してなければいいのに。
10年で、何があった?
何が変わった?
あたしとベルの間に、事件はあったの?
聞きたい事はたくさんあるけど、
どれも口に出来ない。
泣きそうだった。
「檸檬さーん?」
『あっ、な、何でもない!そーだ、城に向かった敵ってどんな感じだった!?ベルとフラン、遭遇したんだよね?』
「それがですねー、ベルセンパイのアホ兄貴だったんですよー。」
『………へ?』
フランの言ってることが理解できなかった。
だって、ベルは祖国を抜け出す為に他の人を皆殺して……
双子のお兄さんの存在は知ってるけど、もうこの世の人じゃないハズじゃ…
「良くわかんねーけど、アレはぜってージルだった。」
「ゴツい執事もいたんですよー、ミーは完全に兄弟喧嘩に巻き添え食らった感じでしたー。」
『そうなんだ…』
ちょっと腑に落ちないけど、2人が嘘を言うワケない。
まして、ベルが相手を見間違うとかもっとあり得ない。
『じゃあ、行かなくちゃ!』
「檸檬?」
「どこへです?」
『ボスのトコ!アロちゃんから聞いたんだもん、あたし、ボス補佐らしいから……援護しないと!』
1人で納得した檸檬の後ろで、フランとベルはヒソヒソ話す。
「ミー達がわざと通した、なんて…言えませんねー…」
「…だな。つか、おめーのせいだろ。」
「センパイがグロッキーだったから…」
「うるせっ!」
『どしたの?』
ふっと振り向いた檸檬に、ベルは軽く首を横に振る。
「何でもねーよ、行こーぜ。」
『うんっ。』
「あー、ベルセンパイずるいですよ。ミーも檸檬さんの手、握りたいですー。」
『え?』
「うるせーカエル、ふざけんな。」
檸檬の手を引いて歩き出したベルに、フランは少し小走りになった。
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「あ"っはぁ"~ぶっつぶれー!!」
「(ぬ…?何か妙だ……)」
興奮するジルに対し、オルゲルトは違和感を覚え横から確認した。
すると、象はザンザスに触れておらず、止められていた。
しかも……
ピキピキ…
「(石化…!?いや、これは…!!)」
焦るオルゲルトの視界に、一瞬だけ映った黒い影。
しかしそれは瓦礫に身を隠してしまい、何であるのかは理解できなかった。
「まぁゆっくりしてけや。」
完全に動きを止めた象の目の前で、ザンザスは右手を光らせる。
「沢田綱吉の名をほざいた以上、てめーらはここで……かっ消す!!!」
右手に宿った憤怒の炎が、石化した象にぶつけられ、粉々にした。