未来編①
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「しししっ♪」
「あっりー?……ジル?」
目の前の存在に驚きと焦りを隠しきれないベルに、フランが尋ねた。
「確かセンパイ、兄弟は殺したって言ってましたよねー。あいつ、幻覚かなんかじゃないんですかー?」
「バーカ、それを見破んのが術士のおめーの仕事だろ。」
「あ、う~~ん……多分その手の小細工はしてないと思いますねー、勘ですけどー。」
「勘かよっ。」
「幻術見破んのって、超高度なんすよー。師匠も、結局最後は勘だって……」
「ベルよぉ、」
2人の会話に、ジルが割って入る。
「疑うのも無理はねーが、俺は偽物でもそっくりさんでもねーぜ。」
彼が提示したのは、ベルと左右対称にあるお腹のあざと、
18年前にベルによってつけられた大量の傷。
それらは、彼が本物………つまりベルの兄・ラジエルである何よりの証拠。
「本物くせぇ……」
ベルは小さく、そう口にした。
BelphegorとRasiel
東地点にて。
「ダークが動きを止めたぞ!!行け!!」
「行かせるかぁ!!」
目を閉じた檸檬に攻め寄るミルフィオーレの下っ端達を、スクアーロと匣兵器であるアーロが跳ねのける。
すると、檸檬周辺の空間がぐにゃりと歪み始め……
「き、消えた…!?」
「(よし、行ったか。)」
「くそっ!敵はヤツ一人だ!怯むな!!」
全ての矛先がスクアーロに向けられる。
しかし彼は動じないどころか、むしろ口角を上げた。
---
------
『……はぁっ、ココ…何処かな…?』
アロちゃんに教えてもらった通り、西に来たんだけど……
よくわかんない、屋内に辿りついてしまった。
う~ん、体調が悪いと微調整が上手くいかないなぁ…。
「誰だ!!」
『えっ?………あっ!』
「ぬおっ!」
『レヴィ!』
「檸檬か!?」
開け放たれた窓の向こうから現れたのは、髭を生やした10年後のレヴィだった。
「な、何故ココに…!さては幻覚か!?」
『ち、違うよっ!あのね、日本から空間移動して来たの!それで………うぅっ、』
「檸檬!?」
『ルッスーリア、何処…?怪我、治してもらえって……アロちゃんに言われて来たんだけど…』
本格的に体中が痛くなってきた。
さっき打った神経麻痺剤の効果も切れてきたみたい…
「こ、こっちだ!歩けるか!?」
『ありがとレヴィ…何とか、立てるかな…』
近くの柱に掴まって立ち上がったあたしは、窓の外、ベランダのようなトコに案内された。
「ルッスーリア!」
「あら、どうしたのレヴィ………んまぁっ!!」
『久しぶり、ルッスーリア…』
「どうしたのよ檸檬っ!酷い怪我!!」
『ちょっと…妹に撃たれて……』
レヴィとルッスーリアに、経緯を全て話した。
日本のメローネ基地は一段落ついたこと、
蜜柑をツナ達から遠ざける為にイタリアに空間移動してきたこと、
アロちゃんと再会して、怪我を治してもらうよう言われたこと。
「分かったわ、開匣するわね。」
『ありがとう。』
と、その時。
ドォォォォン………
『何?今の音…!』
「爆発かしら?」
城から向かって北の方角から、物凄い爆発音が響いてきた。
---
------
-------------
ジルの傷を見たベルは、“あの日”のことを思い返す。
生まれた時から仲が悪かったベルとジルは、“あの日”も、鼻くそのつけ合いから喧嘩を始めた。
それがいつしか投石、投岩、果てには投ナイフとエスカレートし……
ついにベルは大嫌いな兄を殺し、永遠の勝利を勝ち取ったのだ。
「センパイ、随分バイオレンスな悲劇をコミカルに語りますね。」
「ししっ、あの傷は寸分違わず俺がつけたモンだ。」
「ったく、成長してねーなベルフェゴール。自分の都合のいいようにしか記憶しないトコとかな。」
宙に浮く椅子に座ったまま、ジルはその回想に反論する。
「まずお前は、兄貴の俺には何をやっても敵わなかったことを思い出せよ。」
勉強でも、運動でも、ベルはジルに勝てなかったと。
だからこそ、次期王座はジルのものと決まっていたのだと。
「ってことは、ヴァリアー一の天才と言われるベルセンパイより、アイツの方がより天才ってことですかー?」
「あの日も、お前の力で勝ったワケじゃねーよな?真の天才の俺にガチじゃ敵わねーと思った準天才のお前は……あの日、俺の飯に下剤をたらふく仕込んだんだもんな」
「めちゃくちゃ卑怯じゃないですかー、センパイ。」
「前の日に、ミミズ入り泥団子食わされてんだぜ?俺もあん時足元おぼつかなかったんだ、おあいこじゃん?」
思い出話はこの際どうでもいい。
ベルにとっての問題は、何故ジルが生きていて、今自分の目の前に居るのかということ。
「本物の正統王子は死なねーんだよ。俺はあの方の偉大な力に守られてんだからさ。」
「………なーに言ってんだ?」
疑問符を浮かべたベルに、ジルは右手の甲を見せる。
その中指に光るのは、丸い石に特徴的な羽根の飾りが付けられている……
「……マーレリング?」
「………じゃあセンパイのお兄さんって…」
「そう、6弔花。」
得意気な笑みを見せられ、フランはパンパンと蛙のかぶり物を叩いた。
-「スクアーロ隊長ー、6弔花、南に来ましたー。」
「ちっ、こっちはハズレか。」
-「それが驚いちゃいましたよ、バカなセンパイの死んだハズの兄貴でしたー。」
「あ"ぁ!?何言ってやがる!!」
-「どーも生きてたらしんですよー、ごっつい執事つきで。」
「………良くわかんねーが細かい話は後だ。俺も今しばらく手が空きそうには……無いんでなぁ。」
---
-------
6弔花出現の知らせは、スクアーロにより古城にいるメンバーにも告げられた。
-「レヴィ、ルッスーリア、6弔花だ。ベルとフランのフォローにまわれ。」
「それがこっちも忙しいのよー~~。今しがた北の方で爆発があって、見張りがやられたみたい。」
-「何?」
「レヴィが雷エイ(トルペディネ・フールミネ)で向かったわ。」
-「そぉかぁ……それと、檸檬はそっちに着いたかぁ?」
「えぇ、今私のクーちゃんで治してるわ。もう少しで終わりそうよ。」
無線で話すルッスーリアの隣には、既に晴クジャク(パヴォーネ・デル・セレーノ)が展開されていた。
その広げられた羽根から照射される光は、檸檬の脇腹の傷を癒すだけでなく、全身の細胞の活性化も促していく。
『ルッスーリア、アロちゃんと話してるの?』
「えぇ、檸檬が心配で心配でウズウズしてるみたいvV」
-「だっ、誰がだぁ!!///余計なこと言ってんじゃねぇルッスーリア!!掻っ捌くぞぉ!!」
無線越しに怒鳴るスクアーロに微笑を零したルッスーリアだが、ふと帰って来た隊員達に気付く。
彼らは皆怪我を負っていて、倒れこむようにやってきた。
「あらあら、怪我人もわんさか出て来たみたいだし、私も行けそうにないわ。」
-「了解だぁ、お前はそこでサポートに専念しろ。」
そこでスクアーロとルッスーリアの会話は終わる。
「はぁ~、やんなっちゃうわ。私だって本当は戦いたいのに、こんな家事ばかり任されて~~。」
『ありがとうルッスーリア!すんごい元気になった!!』
「まぁ良かったわvVじゃあほらほら、みんな傷を見せて並んでちょうだい。」
「うぅ…」
ルッスーリアのクジャク・クーちゃんのヒーリングパネルで、怪我して戻ってきた皆が元気になってく。
でも、どうやら髪の毛と爪も伸びちゃうみたい。
あたしの手も凄いことになってた。
「ちゃんと切ってくのよ~♪あらっ、檸檬のも伸びちゃったわねぇ。」
『爪切って、早くいかなくちゃ!アロちゃんにすぐ戻るって言ってきたから…』
「大丈夫よ、ちょっとくらい休んじゃいなさい。ハードだったんでしょ?今まで。」
『でも…』
「そうだわ!」
反論しようとしたあたしの前で、ルッスーリアは閃いたようにポケットを漁り始める。
首を傾げると、一つの無線機を差し出された。
『え、コレ…』
「檸檬のよ。元々私たちは檸檬を助ける為にも動いてたんだもの。檸檬の分の無線があって当然でしょ♪」
『ルッスーリア……』
「それに、爪だけじゃなくて髪の毛もちゃんと切って行かなくちゃ。この時代の檸檬だと思って、皆ビックリしちゃうわ。」
『あ……うんっ、そうだね。』
常備していたのか、ポケットからハサミを取り出したルッスーリアは、あたしに後ろを向くように言う。
そして、慣れた手つきで短く切りそろえ始めた。
『何だか本当にお姉ちゃんみたい♪ありがと!』
「まぁ、嬉しいわぁ♪」
---
------
------------
-「ベル!フラン!6弔花はてめーで何とかしろぉ。」
「……ベルセンパーイ、残念なお知らせがありますー。」
「聞こえてたっての。ハナから誰にも頼んじゃいねーし。」
「ちぇっ、任務だから連絡したのによー。」
スクアーロとの無線はそこで切れ、フランは小さく悪態をつく。
しかしベルは、それも想定済みだったかのように口角を上げる。
「それに、やり残したことはしっかり自分で清算してやるぜ。」
「ししっ、それはこっちの台詞だぜ、失敗作の弟ちゃん。きっちりココで片つけてやるよ。」
「ベル様、ご覚悟下さい。」
ジルの言葉に続き、オルゲルトがリングに青い炎を灯す。
「となるとミーがあのゴツ執事の相手ですねー。」
「おめーは邪魔すんな、カエル。」
「任務だから仕方ないですよー、王子(仮)」
「(仮)とか付けんな。」
ジルが自分を正統王子だとか言うもんだから、クソカエルが(仮)とかいう余計な言葉をつける始末。
心底不快に思いながらも、俺はヤツを見上げる。
6弔花だろーが何だろーが関係ねぇ、嫌いな兄貴はとっとと潰す。
ミンクを開匣しようとした、その時だった。
---ピーッ……ガガッ、
「「ん?」」
ムカつくことに、カエルとハモッちまった。
その音は、俺達の無線から流れて来てたんだ。
「故障か…?」
「何もしてないのに壊れるんですかー?使えないにも程がありますー。」
「んなワケ……」
-『全隊員、聞こえますかっ!?』
ありっ?今………
-『あ、大丈夫っぽいよ!ルッスーリア。』
-「良かったわ!」
キモいオカマは置いといて、この声って……
呆然とする俺の隣で、カエルが無線に耳を傾ける。
「どちら様ですかー?」
そっか、こいつは10年前の“彼女の声”を知らねーんだ。
微妙にあどけなさが残ってる、俺の一番好きな声。
-『あっ、えっと……そうだ!』
投げかけられた質問に少し詰まった彼女は、思い出したように役職と名前を言った。
-『ヴァリアーボス補佐雨宮檸檬、只今より戦線に参加致します!!』
俺の耳に、間違いは無かった。
やべぇ、近くにいるんだって思っただけで口角が上がっちまう。
ふと見ると、カエルはごそっと自分のポケットを漁ってて。
「ベルセンパーイ、早く片付けましょーよ。ミーは若返った檸檬さんに会いたいですー。あ、むしろココをセンパイに任せて城に戻っていいですか?」
「ざっけんな!お前が先に檸檬に会うとか許さねーし!!」
「ちぇー。」
口を尖らせながら、カエルはリングを取り出した。
それを見て、オルゲルトとジルが反応する。
「あれはヘルリング!!」
「ほー、さすがボンゴレが誇る最強部隊じゃん。まっ、どーせココで消えるんだけどな。」
ジルの匣のデザインは趣味が悪いと思った。
ししし、やっぱ正統王子は俺だっつの。
「それは無いと思いますよー。どーせあんた、ベルセンパイに毛が生えた程度でしょ?」
「………ベル、何そいつ?」
「可愛くないコーハイ。」
このカエルだって気にくわねーけど、今は殺し損ねたジルが優先。
俺も匣を取り出す。
「愚か者め、格の違いを知るがいい。それではいざ…………開匣!!!」
とっとと片付けて、早く会いに行こう。
俺の大事なお姫さまに、さ。
「あっりー?……ジル?」
目の前の存在に驚きと焦りを隠しきれないベルに、フランが尋ねた。
「確かセンパイ、兄弟は殺したって言ってましたよねー。あいつ、幻覚かなんかじゃないんですかー?」
「バーカ、それを見破んのが術士のおめーの仕事だろ。」
「あ、う~~ん……多分その手の小細工はしてないと思いますねー、勘ですけどー。」
「勘かよっ。」
「幻術見破んのって、超高度なんすよー。師匠も、結局最後は勘だって……」
「ベルよぉ、」
2人の会話に、ジルが割って入る。
「疑うのも無理はねーが、俺は偽物でもそっくりさんでもねーぜ。」
彼が提示したのは、ベルと左右対称にあるお腹のあざと、
18年前にベルによってつけられた大量の傷。
それらは、彼が本物………つまりベルの兄・ラジエルである何よりの証拠。
「本物くせぇ……」
ベルは小さく、そう口にした。
BelphegorとRasiel
東地点にて。
「ダークが動きを止めたぞ!!行け!!」
「行かせるかぁ!!」
目を閉じた檸檬に攻め寄るミルフィオーレの下っ端達を、スクアーロと匣兵器であるアーロが跳ねのける。
すると、檸檬周辺の空間がぐにゃりと歪み始め……
「き、消えた…!?」
「(よし、行ったか。)」
「くそっ!敵はヤツ一人だ!怯むな!!」
全ての矛先がスクアーロに向けられる。
しかし彼は動じないどころか、むしろ口角を上げた。
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『……はぁっ、ココ…何処かな…?』
アロちゃんに教えてもらった通り、西に来たんだけど……
よくわかんない、屋内に辿りついてしまった。
う~ん、体調が悪いと微調整が上手くいかないなぁ…。
「誰だ!!」
『えっ?………あっ!』
「ぬおっ!」
『レヴィ!』
「檸檬か!?」
開け放たれた窓の向こうから現れたのは、髭を生やした10年後のレヴィだった。
「な、何故ココに…!さては幻覚か!?」
『ち、違うよっ!あのね、日本から空間移動して来たの!それで………うぅっ、』
「檸檬!?」
『ルッスーリア、何処…?怪我、治してもらえって……アロちゃんに言われて来たんだけど…』
本格的に体中が痛くなってきた。
さっき打った神経麻痺剤の効果も切れてきたみたい…
「こ、こっちだ!歩けるか!?」
『ありがとレヴィ…何とか、立てるかな…』
近くの柱に掴まって立ち上がったあたしは、窓の外、ベランダのようなトコに案内された。
「ルッスーリア!」
「あら、どうしたのレヴィ………んまぁっ!!」
『久しぶり、ルッスーリア…』
「どうしたのよ檸檬っ!酷い怪我!!」
『ちょっと…妹に撃たれて……』
レヴィとルッスーリアに、経緯を全て話した。
日本のメローネ基地は一段落ついたこと、
蜜柑をツナ達から遠ざける為にイタリアに空間移動してきたこと、
アロちゃんと再会して、怪我を治してもらうよう言われたこと。
「分かったわ、開匣するわね。」
『ありがとう。』
と、その時。
ドォォォォン………
『何?今の音…!』
「爆発かしら?」
城から向かって北の方角から、物凄い爆発音が響いてきた。
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ジルの傷を見たベルは、“あの日”のことを思い返す。
生まれた時から仲が悪かったベルとジルは、“あの日”も、鼻くそのつけ合いから喧嘩を始めた。
それがいつしか投石、投岩、果てには投ナイフとエスカレートし……
ついにベルは大嫌いな兄を殺し、永遠の勝利を勝ち取ったのだ。
「センパイ、随分バイオレンスな悲劇をコミカルに語りますね。」
「ししっ、あの傷は寸分違わず俺がつけたモンだ。」
「ったく、成長してねーなベルフェゴール。自分の都合のいいようにしか記憶しないトコとかな。」
宙に浮く椅子に座ったまま、ジルはその回想に反論する。
「まずお前は、兄貴の俺には何をやっても敵わなかったことを思い出せよ。」
勉強でも、運動でも、ベルはジルに勝てなかったと。
だからこそ、次期王座はジルのものと決まっていたのだと。
「ってことは、ヴァリアー一の天才と言われるベルセンパイより、アイツの方がより天才ってことですかー?」
「あの日も、お前の力で勝ったワケじゃねーよな?真の天才の俺にガチじゃ敵わねーと思った準天才のお前は……あの日、俺の飯に下剤をたらふく仕込んだんだもんな」
「めちゃくちゃ卑怯じゃないですかー、センパイ。」
「前の日に、ミミズ入り泥団子食わされてんだぜ?俺もあん時足元おぼつかなかったんだ、おあいこじゃん?」
思い出話はこの際どうでもいい。
ベルにとっての問題は、何故ジルが生きていて、今自分の目の前に居るのかということ。
「本物の正統王子は死なねーんだよ。俺はあの方の偉大な力に守られてんだからさ。」
「………なーに言ってんだ?」
疑問符を浮かべたベルに、ジルは右手の甲を見せる。
その中指に光るのは、丸い石に特徴的な羽根の飾りが付けられている……
「……マーレリング?」
「………じゃあセンパイのお兄さんって…」
「そう、6弔花。」
得意気な笑みを見せられ、フランはパンパンと蛙のかぶり物を叩いた。
-「スクアーロ隊長ー、6弔花、南に来ましたー。」
「ちっ、こっちはハズレか。」
-「それが驚いちゃいましたよ、バカなセンパイの死んだハズの兄貴でしたー。」
「あ"ぁ!?何言ってやがる!!」
-「どーも生きてたらしんですよー、ごっつい執事つきで。」
「………良くわかんねーが細かい話は後だ。俺も今しばらく手が空きそうには……無いんでなぁ。」
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6弔花出現の知らせは、スクアーロにより古城にいるメンバーにも告げられた。
-「レヴィ、ルッスーリア、6弔花だ。ベルとフランのフォローにまわれ。」
「それがこっちも忙しいのよー~~。今しがた北の方で爆発があって、見張りがやられたみたい。」
-「何?」
「レヴィが雷エイ(トルペディネ・フールミネ)で向かったわ。」
-「そぉかぁ……それと、檸檬はそっちに着いたかぁ?」
「えぇ、今私のクーちゃんで治してるわ。もう少しで終わりそうよ。」
無線で話すルッスーリアの隣には、既に晴クジャク(パヴォーネ・デル・セレーノ)が展開されていた。
その広げられた羽根から照射される光は、檸檬の脇腹の傷を癒すだけでなく、全身の細胞の活性化も促していく。
『ルッスーリア、アロちゃんと話してるの?』
「えぇ、檸檬が心配で心配でウズウズしてるみたいvV」
-「だっ、誰がだぁ!!///余計なこと言ってんじゃねぇルッスーリア!!掻っ捌くぞぉ!!」
無線越しに怒鳴るスクアーロに微笑を零したルッスーリアだが、ふと帰って来た隊員達に気付く。
彼らは皆怪我を負っていて、倒れこむようにやってきた。
「あらあら、怪我人もわんさか出て来たみたいだし、私も行けそうにないわ。」
-「了解だぁ、お前はそこでサポートに専念しろ。」
そこでスクアーロとルッスーリアの会話は終わる。
「はぁ~、やんなっちゃうわ。私だって本当は戦いたいのに、こんな家事ばかり任されて~~。」
『ありがとうルッスーリア!すんごい元気になった!!』
「まぁ良かったわvVじゃあほらほら、みんな傷を見せて並んでちょうだい。」
「うぅ…」
ルッスーリアのクジャク・クーちゃんのヒーリングパネルで、怪我して戻ってきた皆が元気になってく。
でも、どうやら髪の毛と爪も伸びちゃうみたい。
あたしの手も凄いことになってた。
「ちゃんと切ってくのよ~♪あらっ、檸檬のも伸びちゃったわねぇ。」
『爪切って、早くいかなくちゃ!アロちゃんにすぐ戻るって言ってきたから…』
「大丈夫よ、ちょっとくらい休んじゃいなさい。ハードだったんでしょ?今まで。」
『でも…』
「そうだわ!」
反論しようとしたあたしの前で、ルッスーリアは閃いたようにポケットを漁り始める。
首を傾げると、一つの無線機を差し出された。
『え、コレ…』
「檸檬のよ。元々私たちは檸檬を助ける為にも動いてたんだもの。檸檬の分の無線があって当然でしょ♪」
『ルッスーリア……』
「それに、爪だけじゃなくて髪の毛もちゃんと切って行かなくちゃ。この時代の檸檬だと思って、皆ビックリしちゃうわ。」
『あ……うんっ、そうだね。』
常備していたのか、ポケットからハサミを取り出したルッスーリアは、あたしに後ろを向くように言う。
そして、慣れた手つきで短く切りそろえ始めた。
『何だか本当にお姉ちゃんみたい♪ありがと!』
「まぁ、嬉しいわぁ♪」
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-「ベル!フラン!6弔花はてめーで何とかしろぉ。」
「……ベルセンパーイ、残念なお知らせがありますー。」
「聞こえてたっての。ハナから誰にも頼んじゃいねーし。」
「ちぇっ、任務だから連絡したのによー。」
スクアーロとの無線はそこで切れ、フランは小さく悪態をつく。
しかしベルは、それも想定済みだったかのように口角を上げる。
「それに、やり残したことはしっかり自分で清算してやるぜ。」
「ししっ、それはこっちの台詞だぜ、失敗作の弟ちゃん。きっちりココで片つけてやるよ。」
「ベル様、ご覚悟下さい。」
ジルの言葉に続き、オルゲルトがリングに青い炎を灯す。
「となるとミーがあのゴツ執事の相手ですねー。」
「おめーは邪魔すんな、カエル。」
「任務だから仕方ないですよー、王子(仮)」
「(仮)とか付けんな。」
ジルが自分を正統王子だとか言うもんだから、クソカエルが(仮)とかいう余計な言葉をつける始末。
心底不快に思いながらも、俺はヤツを見上げる。
6弔花だろーが何だろーが関係ねぇ、嫌いな兄貴はとっとと潰す。
ミンクを開匣しようとした、その時だった。
---ピーッ……ガガッ、
「「ん?」」
ムカつくことに、カエルとハモッちまった。
その音は、俺達の無線から流れて来てたんだ。
「故障か…?」
「何もしてないのに壊れるんですかー?使えないにも程がありますー。」
「んなワケ……」
-『全隊員、聞こえますかっ!?』
ありっ?今………
-『あ、大丈夫っぽいよ!ルッスーリア。』
-「良かったわ!」
キモいオカマは置いといて、この声って……
呆然とする俺の隣で、カエルが無線に耳を傾ける。
「どちら様ですかー?」
そっか、こいつは10年前の“彼女の声”を知らねーんだ。
微妙にあどけなさが残ってる、俺の一番好きな声。
-『あっ、えっと……そうだ!』
投げかけられた質問に少し詰まった彼女は、思い出したように役職と名前を言った。
-『ヴァリアーボス補佐雨宮檸檬、只今より戦線に参加致します!!』
俺の耳に、間違いは無かった。
やべぇ、近くにいるんだって思っただけで口角が上がっちまう。
ふと見ると、カエルはごそっと自分のポケットを漁ってて。
「ベルセンパーイ、早く片付けましょーよ。ミーは若返った檸檬さんに会いたいですー。あ、むしろココをセンパイに任せて城に戻っていいですか?」
「ざっけんな!お前が先に檸檬に会うとか許さねーし!!」
「ちぇー。」
口を尖らせながら、カエルはリングを取り出した。
それを見て、オルゲルトとジルが反応する。
「あれはヘルリング!!」
「ほー、さすがボンゴレが誇る最強部隊じゃん。まっ、どーせココで消えるんだけどな。」
ジルの匣のデザインは趣味が悪いと思った。
ししし、やっぱ正統王子は俺だっつの。
「それは無いと思いますよー。どーせあんた、ベルセンパイに毛が生えた程度でしょ?」
「………ベル、何そいつ?」
「可愛くないコーハイ。」
このカエルだって気にくわねーけど、今は殺し損ねたジルが優先。
俺も匣を取り出す。
「愚か者め、格の違いを知るがいい。それではいざ…………開匣!!!」
とっとと片付けて、早く会いに行こう。
俺の大事なお姫さまに、さ。